【実施例】
【0016】
実施例に係るマニホールド型流体制御装置につき、
図1から
図6を参照して説明する。以下、
図1の紙面下側をマニホールド型流体制御装置の正面側(前方側)とし、その前方側から見たときの上下左右方向を基準として説明する。また、
図1の紙面右側をマニホールド型流体制御装置の上流側とし、
図1の紙面左側を下流側として説明する。
【0017】
図1および
図2に示されるように、本実施例のマニホールド型流体制御装置1は、例えば半導体製造装置に組み込まれるマニホールド型流体制御装置であり、図示しない流体流入管の下流側(左側)に接続される第1連結部材21(連結部材)と、該第1連結部材の下流側に接続される第2連結部材31(連結部材)と、から主に構成されており、第1連結部材21には、第1バルブ装置2(流体制御機器)が接続されており、第2連結部材31には、第2バルブ装置3(流体制御機器)が接続されている。また、第1連結部材21と第2連結部材31とは、固定手段4により軸方向に位置決めして固定されている。尚、本実施例における軸方向(連結方向)とは、凸部24(
図3参照)の突出方向であり、言い換えるとマニホールド型流体制御装置1における左右方向(上流側から下流側に向かう方向)である。
【0018】
先ず、第1バルブ装置2の構造について詳しく説明する。
図3に示されるように、第1バルブ装置2は、下方に向けて開口する制御流入路50および制御流出路51が設けられるバルブハウジング20と、該バルブハウジング20に一体に取り付けられ制御流入路50と制御流出路51の連通部分を開閉可能な弁体22と、から主に構成され、第1連結部材21に上方から接続されている。
【0019】
また、第1バルブ装置2は、弁体22を操作することにより、バルブハウジング20に設けられた弁座との距離が変化し、バルブハウジング20の内部において制御流入路50と制御流出路51との連通部分における開度調整が行われ、制御流入路50から制御流出路51へ流れる流体の圧力や流量を制御できるようになっている。
【0020】
次いで、第1連結部材21の構造について詳しく説明する。第1連結部材21は、断面矩形状を成し、軸方向上流側には、上下方向に貫通する貫通孔52が設けられており、貫通孔52にはパイプ形状の継手60が固定され、バルブハウジング20の制御流入路50に接続されている。
【0021】
また、第1連結部材21の内部には、軸方向略中央から下流側に向けて延びる断面円形の軸方向穴である連結流出路53が設けられている。連結流出路53の上流側の開口端部には、第1連結部材21の軸方向略中央において上方に開口する取付穴54が設けられており、取付穴54にはパイプ形状の継手61が固定され、バルブハウジング20の制御流出路51に接続されている。
【0022】
また、第1連結部材21には、下流側の端部23から軸方向下流側に突出する端部23の外寸(上下寸法及び前後寸法)よりも外径が短い環状の凸部24が形成されている。凸部24の外周面には、軸方向中央下流寄りの位置に内径側に凹む環状の溝25が設けられ、該溝25には、ゴム状弾性体から構成されるOリング100(環状シール部材)が装着されている。
【0023】
次いで、第2バルブ装置3の構造について詳しく説明する。
図3に示されるように、第2バルブ装置3は、下方に向けて開口する制御流入路55および制御流出路56が設けられるバルブハウジング30と、該バルブハウジング30に一体に取り付けられ制御流入路55と制御流出路56の連通部分を開閉可能な弁体32と、から主に構成され、第2連結部材31に上方から接続されている。
【0024】
また、第1バルブ装置2は、該弁体32を操作することにより、バルブハウジング30に設けられた弁座との距離が変化し、バルブハウジング30の内部において制御流入路55と制御流出路56との連通部分における開度調整が行われ、制御流入路55から制御流出路56へ流れる流体の圧力や流量を制御できるようになっている。
【0025】
次いで、第2連結部材31の構造について詳しく説明する。第2連結部材31は、断面矩形状を成し、軸方向下流側には、上下方向に貫通する貫通孔58が設けられており、貫通孔58にはパイプ形状の継手63が固定され、バルブハウジング30の制御流出路56に接続されている。
【0026】
また、第2連結部材31の内部には、軸方向略中央から上流側に向けて延びる断面円形の軸方向穴である連結流入路57が設けられている。連結流入路57の下流側の開口端部には、第2連結部材31の軸方向略中央において上方に開口する取付穴59が設けられており、取付穴54にはパイプ形状の継手62が固定され、バルブハウジング30の制御流入路55と接続されている。また、連結流入路57には、取付穴59よりも上流側の位置で上方に分岐する分岐部70が設けられており、上方に取付けられる圧力検出センサ7と接続されている。尚、圧力検出センサ7は、連結流入路57の分岐部70から流入してくる流体の圧力を検出しており、該検出データに基づいて第1バルブ装置2の弁体22および第2バルブ装置3の弁体32を操作することにより、マニホールド型流体制御装置1の内部の各流路を流れる流体の圧力や流量を制御可能となっている。さらに尚、圧力検出センサ7は、第2連結部材31ではなく第1連結部材21に設けられていてもよい。
【0027】
また、第2連結部材31には、上流側の端部33から軸方向下流側に凹む端部33の外寸(上下寸法及び前後寸法)よりも外径が短い円形状の凹部34が形成されている。尚、凹部34は、前述した第1連結部材21に設けられる凸部24と軸方向に凹凸嵌合可能に構成されている。
【0028】
次いで、固定手段4の構造について詳しく説明する。尚、前後の固定手段4の構成は略同一であるため、前方側の固定手段4の構造について説明し、後方側の固定手段4の説明を省略する。
【0029】
図4および
図5に示されるように、固定手段4は、軸方向に長尺に構成される長方体形の金属製のプレート40(
図2参照)と、該プレート40に対して軸方向に直交する方向(前後方向)に挿通される4本のボルト42と、から構成されている。
【0030】
プレート40には、厚み方向に貫通しボルト42が挿通可能な貫通孔41が軸方向に沿って4箇所、第1連結部材21および第2連結部材31に対応して2箇所ずつ設けられている。尚、第1連結部材21および第2連結部材31の前後両面には、プレート40の貫通孔41に挿通されたボルト42の胴部43の先端部が螺合されるネジ孔26が軸方向に2箇所ずつ設けられている。
【0031】
また、貫通孔41の径D2は、ボルト42の胴部43の径D1よりも大きく構成されている(D1<D2,
図5参照)。
【0032】
次いで、第1連結部材21と第2連結部材31との連結方法について詳しく説明する。
図4に示されるように、第1連結部材21と第2連結部材31を連結する際には、第1連結部材21に設けられる凸部24と第2連結部材31に設けられる凹部34とを軸方向に凹凸嵌合させた後、前後のプレート40に設けられる各貫通孔41に挿通させたボルト42の胴部43を第1連結部材21に設けられるネジ孔26および第2連結部材31に設けられるネジ孔36に対して、それぞれ螺合させることより、第1連結部材21と第2連結部材31を軸方向に位置決めして固定する。このとき、第1連結部材21の凸部24の外周面と第2連結部材31の凹部34の内周面との間には、凸部24の溝25に装着されるOリング100が介在することにより環状のシール部Sが形成される(
図3および
図5参照)。
【0033】
これによれば、第1連結部材21の凸部24と、第2連結部材31の凹部34とを軸方向に凹凸嵌合させた状態において、凸部24の外周面と凹部34の内周面との間に介在するOリング100によって環状のシール部Sが形成されているとともに、固定手段4により第1連結部材21と第2連結部材31を軸方向に位置決めして固定されるため、凸部24と凹部34が軸方向に相対移動しても凹凸嵌合部分の隙間を閉塞することができ、第1連結部材21と第2連結部材31の相対移動を許容しながら凹凸嵌合部分において第1連結部材21の連結流出路53から第2連結部材31の連結流入路57へ流れる流体の漏れ出しを防止することができる。
【0034】
具体的には、本実施例のマニホールド型流体制御装置1は、
図5に示されるように、固定手段4のプレート40に設けられる貫通孔41の軸方向略中央にボルト42が配置され、第1連結部材21の端部23と第2連結部材31の端部33との間を軸方向に僅かに離間させた位置で固定された状態において、凸部24の外周面と凹部34の内周面との間に介在するOリング100によって形成される環状のシール部Sにより、凸部24と凹部34の凹凸嵌合部分の隙間を閉塞することができる。
【0035】
一方、参考までに、例えば、前述した背景技術として説明した構成(便宜上、本実施例と同じ用語・同じ符号を用いている。)では、第1連結部材21の凸部24の端面と第2連結部材31の凹部34の端面との間に端面シールを介在させた状態で、第1連結部材21の軸方向に貫通する貫通孔に挿通されたボルトを第2連結部材31の雌ネジ部に螺合させることよって第1連結部材21と第2連結部材31を軸方向に締め付けて固定し、凸部24と凹部34の端面間において挟まれた状態で端面シールに所定の圧力を付与して凹凸嵌合部分の隙間を閉塞するように構成されている場合、雌ネジ部へのボルトのネジ込み量によって端面シールに付与される圧力が変化することから密封性を確保するためのボルトのネジ込み量に高い精度が要求される。また、経年変化によって、例えば端面シールが変形すると端面シールに付与される圧力が変化するため、端面シールによる密封性が長期間において維持されない虞があった。
【0036】
さらに、本実施例においては、第1バルブ装置2と第2バルブ装置3はそれぞれ躯体等の剛体に取付け固定されているため、メンテナンス等により第1バルブ装置2と第2バルブ装置3から第1連結部材21と第2連結部材31を取外して分解した後、組立時に再度第1連結部材21を第1バルブ装置2に接続し、第2連結部材31を第2バルブ装置3に接続しようとしても、経年変化等により第1連結部材21と第2連結部材31の相対位置が合わず、メンテナンス前後において凸部24の端面と凹部34の端面の隙間が異なった状態となりボルトを雌ネジ部にネジ込んでも端面シールに所定の圧力が付与されず、端面シールによる密封性を維持できず、第1連結部材21の連結流出路53から第2連結部材31の連結流入路57へ流れる流体が漏れ出してしまう虞があった。
【0037】
また、固定手段4において、プレート40の貫通孔41の径D2は、ボルト42の胴部43の径D1よりも大きく構成されている。そのため、固定手段4は、貫通孔41の径D2とボルト42の胴部43の径D1との寸法差の範囲でプレート40に対する第1連結部材21と第2連結部材31の軸方向の相対位置を調整することができる。詳しくは、
図6(a)および
図6(b)に示されるように、第1連結部材21の端部23と第2連結部材31の端部33との間を固定手段4により軸方向に近接または離間させた状態で位置決めして固定された場合であっても、凸部24の外周面と凹部34の内周面との間に介在するOリング100によって形成される環状のシール部Sにおけるシール性が維持されるようになっている。
【0038】
すなわち、固定手段4のプレート40に設けられる貫通孔41による第1連結部材21と第2連結部材31の軸方向への相対移動の許容量が、凸部24の外周面と凹部34の内周面との間に介在するOリング100によって形成される環状のシール部Sの軸方向への許容量よりも小さく構成されているため、マニホールド型流体制御装置1は、固定手段4により第1連結部材21と第2連結部材31を軸方向に位置決めして固定された状態において、第1連結部材21と第2連結部材31が軸方向に相対移動しても凹凸嵌合部分のシール性を維持して、第1連結部材21の連結流出路53から第2連結部材31の連結流入路57へ流れる流体の漏れ出しを確実に防止することができる。
【0039】
また、固定手段4は、第1連結部材21と第2連結部材31に対して軸方向に直交する方向に挿入されるボルト42によりプレート40を締め付けることにより、第1連結部材21と第2連結部材31を軸方向に位置決めして固定することができるため、第1連結部材21と第2連結部材31の固定時においてOリング100に対して軸方向の圧力が作用することがなく、Oリング100の過剰な変形を抑えることができる。さらに、固定手段4の構成上、軸方向に凹凸嵌合される凸部24と凹部34に対して軸方向の圧力が付与されることがないため、固定時にボルト42の締め付けによる凸部24と凹部34の軸方向の位置ずれを防止することができる。
【0040】
また、第1連結部材21および第2連結部材31は、断面矩形状を成し、前後の固定手段4は、第1連結部材21および第2連結部材31に対して軸方向に直交する方向から挟む一対のプレート40に設けられる貫通孔41にボルト42を挿通させることにより、第1連結部材21と第2連結部材31を軸方向に位置決めして固定している。そのため、第1連結部材21と第2連結部材31を一対のプレート40の面により挟持することができ、第1連結部材21と第2連結部材31との相互の回転や捻れ等を防止して軸方向に凹凸嵌合される凸部24と凹部34に作用する外力を低減することができる。
【0041】
また、固定手段4のプレート40は、第1連結部材21および第2連結部材31に対してボルト42により軸方向に2箇所ずつ固定されることにより、第1連結部材21および第2連結部材31に対するプレート40の回動が規制されるため、第1連結部材21と第2連結部材31との相互の屈曲を防止して軸方向に凹凸嵌合される凸部24と凹部34に作用する外力を低減することができる。
【0042】
また、Oリング100は、凸部24の外周面に設けられる溝25に装着されることにより、固定手段4のプレート40がボルト42により軸方向に直交する方向に締め付けられても、凸部24の外周面と凹部34の内周面の間で圧迫されるOリング100が受ける軸方向に直交する方向の圧力を小さくすることができるため、Oリング100の過剰な変形を抑えることができる。
【0043】
また、
図5および
図6(b)に示されるように、第1連結部材21の凸部24の端面と第2連結部材31の凹部34の端面を軸方向に離間させた状態で固定手段4により位置決めして固定することにより、第1連結部材21および第2連結部材31の軸方向への移動代を確保することができるため、第1連結部材21または第2連結部材31が軸方向に応力を受けて移動し、凸部24と凹部34の端面同士が接触することによる変形や破損を防ぐことができる。
【0044】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0045】
例えば、前記実施例では、マニホールド型流体制御装置1は、第1連結部材21に第1バルブ装置2が接続され、第2連結部材31に第2バルブ装置3が接続される構成を説明したが、複数の連結部材のいずれかに圧力制御機器、流量制御機器、流路切替機器等の流体制御機器が接続されて構成されるものであればよく、連結部材に接続される流体制御機器の数や種類は自由に構成されてよく、流体制御機器が接続されない連結部材があってもよい。また、連結部材は、3つ以上が固定手段4により軸方向に連結されていてもよい。
【0046】
また、前記実施例では、第1連結部材21および第2連結部材31に対して固定手段4のプレート40が別体に設けられる態様として説明したが、少なくとも一方のプレートが一方の連結部材から軸方向に延びるように一体に設けられていてもよい。
【0047】
また、前記実施例では、第1連結部材21および第2連結部材31に対して固定手段4のプレート40がボルト42によりそれぞれ軸方向に2箇所で固定される態様として説明したが、これに限らず、プレートは、各連結部材に対してボルトにより少なくとも2箇所で固定されて回動が規制されるものであれば、各連結部材にプレートを固定するためのボルトの数や固定位置は自由に構成されてよい。
【0048】
また、前記実施例では、固定手段4のプレート40に設けられる貫通孔41の径D1がボルト42の胴部43の径D1よりも大きく構成される態様として説明したが、これに限らず、貫通孔は、各連結部材に対してプレートを固定でき、連結部材同士の軸方向への相対移動を許容することができるものであれば、例えば軸方向に長孔状に構成されてもよい。
【0049】
また、前記実施例では、固定手段4は、第1連結部材21と第2連結部材31に対して軸方向に直交する方向に挿入されるボルト42によりプレート40を締め付けることにより、第1連結部材21と第2連結部材31を軸方向に位置決めして固定する態様として説明したが、これに限らず、固定手段は、連結部材同士を軸方向に相対移動可能に固定できるものであればよく、例えば、連結部材に設けられるフランジ等に対して軸方向に挿通されるボルトにより連結部材同士が軸方向に相対移動可能に固定されるものであってもよい。
【0050】
また、前記実施例では、凸部24の外周面に設けられる環状の溝25にOリング100が装着される態様について説明したが、これに限らず、Oリング100が装着される溝が凹部34の内周面側に設けられていてもよい。また、Oリング100の代わりに環状のパッキンが装着されていてもよい。
【0051】
また、前記実施例では、第1連結部材21の端部23と第2連結部材31の端部33との間を軸方向に近接させた位置で位置決めして固定された状態において、凸部24と凹部34の端面同士が軸方向に当接する構成(
図6(a)参照)として説明したが、第1連結部材21と第2連結部材31との軸方向の相対位置にかかわらず、凸部と凹部の端面同士が軸方向に当接しないように構成されていてもよい。