(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記内面が初期状態である条件下で前記第1点灯パターンで前記光源部を動作させるときに前記内面にて反射されずに前記受光部に到達する第1直接光成分の光量と、前記内面にて反射されて前記受光部に到達する第1反射光成分の光量とに関する情報を含む第1初期パラメータと、前記内面が初期状態である条件下で前記第2点灯パターンで前記光源部を動作させるときに前記内面にて反射されずに前記受光部に到達する第2直接光成分の光量と、前記内面にて反射されて前記受光部に到達する第2反射光成分の光量とに関する情報を含む第2初期パラメータとを保持し、前記第1初期パラメータおよび前記第2初期パラメータを用いて前記内面変化パラメータを算出することを特徴とする請求項1に記載の流体殺菌装置。
前記第1初期パラメータにおける前記第1直接光成分と前記第1反射光成分の光量比と、前記第2初期パラメータにおける前記第2直接光成分と前記第2反射光成分の光量比とが異なる値となるように構成されることを特徴とする請求項2に記載の流体殺菌装置。
前記光源部は、前記複数の発光素子が実装される実装面を有する基板を含み、前記実装面の第1領域に前記第1点灯パターンで点灯させる発光素子が実装され、前記実装面の前記第1領域とは異なる第2領域に前記第2点灯パターンで点灯させる発光素子が実装され、
前記第1領域および前記第2領域は、前記直管の周方向に異なる位置に設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の流体殺菌装置。
前記光源部は、前記複数の発光素子が実装される実装面を有する基板を含み、前記実装面の第1領域に前記第1点灯パターンで点灯させる発光素子が実装され、前記実装面の前記第1領域とは異なる第2領域に前記第2点灯パターンで点灯させる発光素子が実装され、
前記第1領域および前記第2領域は、前記直管の径方向に異なる位置に設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の流体殺菌装置。
前記制御装置は、算出した前記内面変化パラメータに基づいて前記複数の発光素子の全てを点灯させるときの駆動電流値を制御することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の流体殺菌装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流路内を通過する紫外光の計測結果が変化する場合、その原因として、光源の光強度変化および流路内壁面への汚れの付着による流路内壁面の紫外光反射率の変化などが考えられる。殺菌装置の状態を適切にモニタリングするためには、光源変化の影響と内壁面の変化の影響とを切り分けて計測できることが好ましい。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、モニタリング精度を高めた流体殺菌装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の流体殺菌装置は、殺菌対象の流体が流れる流路を囲う内面を有する直管と、直管内に向けて紫外光を照射する複数の発光素子を含む光源部と、直管内を通過した紫外光を受光し、受光した紫外光の光量を計測する受光部と、受光部から取得する光量情報に基づいて直管内の紫外光の光量変化をモニタする制御装置と、を備える。制御装置は、複数の発光素子の一部を点灯させる第1点灯パターンで光源部を動作させるときに受光部から取得する第1光量情報と、複数の発光素子の別の一部を点灯させる第2点灯パターンで光源部を動作させるときに受光部から取得する第2光量情報とに基づいて、直管内での紫外光の光量変化のうち内面の状態変化に起因する光量変化成分を示す内面変化パラメータを算出する。
【0007】
この態様において、光源部に含まれる複数の発光素子の位置が異なることから、各発光素子から出力される紫外光はそれぞれが異なる経路で受光部に到達しうる。例えば、一部の発光素子については、直管の内面で反射されずに受光部に到達する紫外光の割合が大きく、別の発光素子については、直管の内面で反射されて受光部に到達する紫外光の割合が大きくなりうる。その結果、異なる発光素子を点灯させる複数の点灯パターンのそれぞれの光量情報を取得して解析することで、直管の内面で反射されて受光部に到達する紫外光の光量変化成分を切り分けて算出できる。これにより、直管の内面の状態を適切にモニタリングできる。
【0008】
制御装置は、内面が初期状態である条件下で第1点灯パターンで光源部を動作させるときに内面にて反射されずに受光部に到達する第1直接光成分の光量と、内面にて反射されて受光部に到達する第1反射光成分の光量とに関する情報を含む第1初期パラメータと、内面が初期状態である条件下で第2点灯パターンで光源部を動作させるときに内面にて反射されずに受光部に到達する第2直接光成分の光量と、内面にて反射されて受光部に到達する第2反射光成分の光量とに関する情報を含む第2初期パラメータとを保持し、第1初期パラメータおよび第2初期パラメータを用いて内面変化パラメータを算出してもよい。
【0009】
流体殺菌装置は、第1初期パラメータにおける第1直接光成分と第1反射光成分の光量比と、第2初期パラメータにおける第2直接光成分と第2反射光成分の光量比とが異なる値となるように構成されてもよい。
【0010】
光源部は、直管の軸方向に紫外光を照射するように直管の第1端部に配置され、受光部は、直管内を軸方向に通過した紫外光を受光するように直管の第1端部とは反対側の第2端部に配置され、かつ、直管の中心軸からずれた位置に配置されてもよい。
【0011】
光源部は、直管の軸方向に紫外光を照射するように直管の第1端部に配置され、受光部は、直管内を軸方向に通過した紫外光を受光するように直管の第1端部とは反対側の第2端部に配置され、かつ、受光部の受光面が直管の軸方向に対して傾斜するように配置されてもよい。
【0012】
光源部は、複数の発光素子が実装される実装面を有する基板を含み、実装面の第1領域に第1点灯パターンで点灯させる発光素子が実装され、実装面の第1領域とは異なる第2領域に第2点灯パターンで点灯させる発光素子が実装され、第1領域および第2領域は、直管の周方向に異なる位置に設けられてもよい。
【0013】
光源部は、複数の発光素子が実装される実装面を有する基板を含み、実装面の第1領域に第1点灯パターンで点灯させる発光素子が実装され、実装面の第1領域とは異なる第2領域に第2点灯パターンで点灯させる発光素子が実装され、第1領域および第2領域は、直管の径方向に異なる位置に設けられてもよい。
【0014】
制御装置は、算出した内面変化パラメータに基づいてアラート情報を外部出力してもよい。
【0015】
制御装置は、算出した内面変化パラメータに基づいて複数の発光素子の全てを点灯させるときの駆動電流値を制御してもよい。
【0016】
本発明の別の態様は、流体殺菌装置の制御方法である。流体殺菌装置は、殺菌対象の流体が流れる流路を囲う内面を有する直管と、直管内に向けて紫外光を照射する複数の発光素子を含む光源部と、直管内を通過した紫外光を受光し、受光した紫外光の光量を計測する受光部と、を備える。この方法は、複数の発光素子の一部を点灯させる第1点灯パターンで光源部を動作させ、受光部から第1光量情報を取得するステップと、複数の発光素子の別の一部を点灯させる第2点灯パターンで光源部を動作させ、受光部から第2光量情報を取得するステップと、第1光量情報および第2光量情報に基づいて、直管内での紫外光の光量変化のうち内面の状態変化に起因する光量変化成分を示す内面変化パラメータを算出するステップと、を備える。
【0017】
この態様において、光源部に含まれる複数の発光素子の位置が異なることから、各発光素子から出力される紫外光はそれぞれが異なる経路を辿って受光部に到達しうる。例えば、一部の発光素子については、直管の内面で反射されずに受光部に到達する紫外光の割合が大きく、別の発光素子については、直管の内面で反射されて受光部に到達する紫外光の割合が大きくなりうる。その結果、異なる発光素子を点灯させる複数の点灯パターンのそれぞれの光量情報を取得して解析することで、直管の内面で反射されて受光部に到達する紫外光の光量変化成分を切り分けて算出できる。これにより、直管の内面の状態を適切にモニタリングできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、モニタリング精度を高めた流体殺菌装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0021】
図1は、実施の形態に係る流体殺菌装置10の構成を概略的に示す図である。流体殺菌装置10は、流路12と、光源部14と、受光部16と、制御装置18とを備える。流体殺菌装置10は、筐体20の内部に区画される流路12を流れる流体に紫外光を照射して殺菌処理を施すために用いられる。
【0022】
筐体20は、第1端部21と、第2端部22と、側壁23と、流出管26と、流入管27とを有する。側壁23は、第1端部21から第2端部22に向けて軸方向(中心軸Aに沿う方向)に延びる直管であり、例えば円筒形状である。第1端部21の近傍には流出管26が設けられ、第2端部22の近傍には流入管27が設けられる。流出管26および流入管27は、側壁23から径方向外側に延びる。
【0023】
図1において、筐体20の軸方向をz方向とし、流出管26および流入管27が延びる方向をy方向とし、y方向およびz方向に直交する方向をx方向としている。
図1に示す座標軸は、説明の理解を助けるために設定されるものであり、流体殺菌装置10の設置態様等を限定するものではない。また、流出管26および流入管27が必ずしも同一方向に延びる必要はなく、例えば、流出管26がx方向に延在し、流入管27がy方向に延在してもよい。
【0024】
筐体20の材質は特に問わないが、少なくとも筐体20の内面25が紫外光に対する耐久性および反射率が高い材料であることが好ましい。筐体20の内面25は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂やアルミニウム(Al)などの金属材料で構成されることが好ましい。
【0025】
光源部14は、第1端部21に設けられる。光源部14は、複数の発光素子32と、基板34とを含む。複数の発光素子32は、基板34の実装面36上に設けられ、筐体20の軸方向に紫外光Bを照射するように配置される。光源部14から出射される紫外光Bは、窓部材30を通過して筐体20の内部に照射される。筐体20の内部に照射される紫外光Bは、所定の配光角(例えば90度〜150度程度)を有し、筐体20の中心軸Aに沿って軸方向に直線的に進む光成分と、筐体20の中心軸Aと交差する方向に進んで内面25で反射されながら軸方向に進む光成分とを含む。
【0026】
発光素子32は、紫外光を発する半導体素子であり、いわゆるUV−LED(Ultra Violet-Light Emitting Diode)である。発光素子32は、発光の中心波長またはピーク波長が約200nm〜350nmの範囲に含まれ、殺菌効率の高い波長である260nm〜290nm付近の紫外光を発することが好ましい。このような紫外光LEDとして、例えば、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を用いたものが知られている。
【0027】
窓部材30は、流路12と光源部14の間に設けられる。窓部材30は、第1端部21の近傍の凹部24に嵌め込まれ、シール部材28により凹部24との隙間が密閉される。窓部材30は、紫外光の透過率が高い材料で構成されることが好ましく、石英(SiO
2)やサファイア(Al
2O
3)、非晶質のフッ素系樹脂などで構成される。
【0028】
受光部16は、光源部14からの紫外光Bを受光する。受光部16は、例えば、紫外光の強度計測が可能なフォトダイオードなどの光量センサを含み、受光した紫外光の光量に関する情報を制御装置18に送信する。受光部16は、流路12を流れる流体を通過した紫外光Bを計測するよう配置される。受光部16は、第2端部22に設けられ、筐体20の第2端部22に到達する紫外光を受光する。図示する例において、受光部16は筐体20の中心軸Aから径方向にずれた位置に設けられ、例えば中心軸Aからy方向にずれた位置に設けられる。受光部16は、受光部16の受光面17が軸方向(z方向)と直交するように配置される。
【0029】
制御装置18は、受光部16からの光量情報をモニタする。制御装置18は、例えば、受光部16からの光量に基づいて光源部14の駆動電流を制御し、受光部16の光量情報が所定の閾値以上となるように光源部14の駆動電流を調整する。制御装置18は、光源部14の駆動電流を増加させたにも拘わらず、依然として所定の閾値を下回る場合、所望の殺菌効果が実現できない旨を示すアラート情報を外部出力する。
【0030】
図2は、光源部14の構成を概略的に示す平面図である。基板34は、円筒形状の筐体20に対応する円形状である。複数の発光素子32は、円形の実装面36上に二次元アレイ状に配列されている。実装面36は、第1領域C1と、第1領域C1とは異なる第2領域とに区分される。第1領域C1に実装される発光素子32(第1発光素子32aともいう)と、第2領域C2に実装される発光素子32(第2発光素子32bともいう)とは、それぞれが独立して点灯できるように構成される。なお、第1発光素子32aと第2発光素子32bは、実質的に同じ特性である。
【0031】
光源部14は、複数の点灯パターンで動作することが可能である。第1点灯パターンでは、第1領域C1に実装される第1発光素子32aのみが点灯し、第2領域C2に実装される第2発光素子32bは点灯しない。一方、第2点灯パターンでは、第2領域C2に実装される第2発光素子32bのみが点灯し、第1領域C1に実装される第1発光素子32aは点灯しない。また、全点灯パターンでは、第1領域C1の第1発光素子32aおよび第2領域C2の第2発光素子32bの双方が点灯する。第1点灯パターンおよび第2点灯パターンは、主に流体殺菌装置10のモニタリングのために使用される。全点灯パターンは、主に流路12を流れる流体の殺菌処理のために使用される。第1点灯パターンおよび第2点灯パターンを用いたモニタリング方法については別途後述する。
【0032】
図示する例において、第1領域C1および第2領域C2は、実装面36の全体を二等分するように設定され、y方向に異なる位置に設定される。第1領域C1および第2領域C2は、実装面36の中心付近を通ってx方向に延びる直線を境界とし、この境界線に対して線対称となるように設定されている。なお、実装面36の中心を基準とする円筒座標系を設定した場合、第1領域C1は0度〜180度の範囲に設定され、第2領域C2は180度〜360度の範囲に設定される。この場合、第1領域C1および第2領域C2は、周方向に異なる位置に設定されるということもできる。
【0033】
第1領域C1および第2領域C2がy方向に異なる位置に設けられ、かつ、受光部16が中心軸Aからずれた位置に設けられるため、受光部16が計測する紫外光の光量は、第1点灯パターンと第2点灯パターンとで異なりうる。
図1の構成において、受光部16は第2領域C2と正対する位置に設けられるため、第1点灯パターンの紫外光よりも第2点灯パターンの紫外光の方が受光量が多いといった相違が生じうる。また、第1点灯パターンでは、光源部14から出射されてから内面25にて反射されずに受光部16に到達する直接光成分(第1直接光成分ともいう)よりも、内面25にて反射されてから受光部16に到達する反射光成分(第1反射光成分ともいう)の方が多いという相違も生じうる。一方、第2点灯パターンでは、光源部14から出射されてから内面25にて反射されずに受光部16に到達する直接光成分(第2直接光成分ともいう)よりも、内面25にて反射されてから受光部16に到達する反射光成分(第2反射光成分ともいう)の方が少ないという相違も生じうる。本実施の形態では、点灯パターンに応じて受光部16が受光する直接光成分と反射光成分の比率が異なりうるという特性を利用して、受光部16が受光する光量情報から反射光成分を算出し、反射光成分の変化から内面25の状態変化をモニタする。これにより、例えば、内面25への汚れの付着による内面25の反射率低下をモニタできる。
【0034】
つづいて、本実施の形態に係る反射光成分の算出方法について説明する。
上述の通り、受光部16にて計測される受光量Iは、直接光成分の光量I
Dと反射光成分の光量I
Rの合計と言える。したがって、第1点灯パターンおよび第2点灯パターンにて計測される受光量I
1,I
2は、それぞれの直接光成分I
D1,I
D2および反射光成分I
R1,I
R2を用いて次式(1)のように記述できる。
【数1】
【0035】
式(1)において直接的に得られる値は、第1点灯パターンでの受光部16の受光量I
1および第2点灯パターンでの受光部16の受光量I
2のみである。しかしながら、流体殺菌装置10の設計時において、初期状態の直接光成分I
D1,I
D2および反射光成分I
R1,I
R2の値を実験的に求めることは可能である。ここで、初期状態とは、流体殺菌装置10が使用される前の状態であり、筐体20の内面25に汚れなどが付着していない状態のことである。
【0036】
初期状態の第1直接光成分I
D1は、例えば、筐体20の内面25を紫外光を吸収する材料(例えば黒体材料)で被覆し、第1点灯パターンでの紫外光の光量を受光部16を計測することで得ることができる。初期状態の第1反射光成分I
R1は、初期状態の第1点灯パターンでの受光量I
1から第1直接光成分I
D1を除くことで得られる。同様にして、初期状態の第2直接光成分I
D2および第2反射光成分I
R2についても実験的に求めることができる。本明細書において、初期状態での第1直接光成分I
D1および第1反射光成分I
R1を「第1初期パラメータ」ともいう。また、初期状態での第2直接光成分I
D2および第2反射光成分I
R2を「第2初期パラメータ」ともいう。
【0037】
次に、流体殺菌装置10の使用により受光部16に到達する直接光成分および反射光成分が変化した使用途中の状態(中途状態ともいう)を考える。中途状態では、流体殺菌装置10の使用に伴う汚れなどにより、初期状態と比べて直接光成分および反射光成分の双方が低下すると考えられる。ここで、直接光成分低下係数aおよび反射光成分低下係数bを導入すると、中途状態での受光部16の受光量I
1’,I
2’は、次式(2)で表すことができる。なお、I
1’は、中途状態の第1点灯パターンでの受光部16の受光量であり、I
2’は、中途状態の第2点灯パターンでの受光部16の受光量である。
【数2】
【0038】
直接光成分の変化の要因として、1)光源部14の発光素子32の出力(発光強度)の変化、2)窓部材30の汚れによる窓部材30の透過率の変化、3)流路12を流れる流体の透過率の変化、4)受光部16の受光感度の変化などが考えられる。一方、反射光成分の変化の要因として、上述の1)〜4)に加えて、5)内面25の汚れ等による内面25の反射率の変化が考えられる。これらの要因は、第1点灯パターンと第2点灯パターンのそれぞれに対して同等に作用すると考えられるため、それぞれの点灯パターンの受光量について共通の直接光成分低下係数aおよび反射光成分低下係数bを適用しうる。
【0039】
上述の式(2)において、係数a,bの値は未知であるが、それ以外の値は初期パラメータとして既知であるか、受光部16が計測する光量情報として取得できる。したがって、式(2)で示される連立方程式を解くことにより、未知の係数a,bを得ることができる。未知の係数a,bの解は、例えば、次式(3)の行列計算により求めることができる。
【数3】
【0040】
さらに、直接光成分低下係数aと反射光成分低下係数bの比率c=b/aを計算することにより、上述の1)〜4)の要因を相殺して5)内面25の反射率変化の影響のみを算出できる。本明細書において、この比率cを「内面変化パラメータ」ともいう。このようにして、第1点灯パターンおよび第2点灯パターンの受光量I
1’,I
2’から内面変化パラメータcを算出することができ、内面25の状態変化に起因する光量変化成分をモニタリングできる。
【0041】
なお、内面変化パラメータcの計算精度を向上させるためには、受光部16により計測される直接光成分と反射光成分の比率の非対称性が重要である。つまり、第1直接光成分I
D1および第1反射光成分I
R1の比率I
D1/I
R1と、第2直接光成分I
D2および第2反射光成分I
R2の比率I
D2/I
R2とが有意に異なることが好ましく、例えば、両者の差が10%以上異なることが好ましく、50%以上異なることがより好ましい。これらの比率の差は、光源部14における第1領域C1および第2領域C2の設定および光源部14に対する受光部16の相対位置を変えることにより調整可能である。したがって、このような非対称性が生じるように光源部14および受光部16の配置構成を決定することが好ましい。
【0042】
制御装置18は、上述の方法に基づいて内面変化パラメータcを算出する。制御装置18は、光源部14を第1点灯パターンで動作させ、第1点灯パターンで計測される第1受光量I
1’に関する情報を受光部16から取得する。つづいて、制御装置18は、光源部14を第2点灯パターンで動作させ、第2点灯パターンで計測される第2受光量I
2’に関する情報を受光部16から取得する。制御装置18は、上述の初期パラメータをあらかじめ保持しており、式(3)に基づいて、直接光成分低下係数aおよび反射光成分低下係数bを算出し、内面変化パラメータcを算出する。
【0043】
制御装置18は、算出した係数a,b,cの値に基づいて、光源部14の駆動電流値を制御してもよい。例えば、算出する係数a,b,cの値が所定の閾値以上となるように光源部14の駆動電流値を増やしてもよい。制御装置18は、算出した係数a,b,cの値に基づいてアラート情報を外部出力してもよい。例えば、内面変化パラメータcが所定の閾値未満となる場合、内面25が汚れていることを知らせるアラート情報を出力してもよい。
【0044】
制御装置18は、内面変化パラメータcを算出するための検査モードを定期的に実行してもよい。制御装置18は、例えば、30分、1時間、2時間、4時間、8時間または24時間毎といった間隔で検査モードを実行してもよい。検査モードでは、第1点灯パターンおよび第2点灯パターンでの紫外光の光量計測が実行される。制御装置18は、検査モード以外の時間帯において光源部14を全点灯パターンで動作させる処理モードを実行してもよい。制御装置18は、全点灯パターンでの紫外光の光量情報を受光部16から取得し、流体殺菌装置10の状態を連続的にモニタしてもよい。
【0045】
以上の構成によれば、流体殺菌装置10は、流路12を流れる流体に全点灯パターンの紫外光を照射して殺菌処理を施す。流体殺菌装置10は、定期的に検査モードを実行し、第1点灯パターンおよび第2点灯パターンの紫外光を受光部16で計測し、制御装置18にて内面変化パラメータを算出する。本実施の形態によれば、定期的に内面変化パラメータを算出することで、筐体20の内面25の状態を適切にモニタリングでき、流体殺菌装置10のモニタリング精度を高めることができる。
【0046】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0047】
図3は、変形例に係る流体殺菌装置10の構成を概略的に示す断面図である。本変形例では、受光部16の受光面17が筐体20の軸方向に対して傾斜するように配置される。本変形例によれば、受光面17を傾斜させることにより、第1直接光成分I
D1および第1反射光成分I
R1の比率I
D1/I
R1と、第2直接光成分I
D2および第2反射光成分I
R2の比率I
D2/I
R2との間に有意な非対称性を生じさせ、内面変化パラメータcの計算精度を高めることができる。
【0048】
図4は、変形例に係る光源部14の構成を概略的に示す断面図であり、
図5は、変形例に係る流体殺菌装置の構成を概略的に示す断面図である。本変形例では、第1領域C1が基板34の実装面36の中央に設けられ、第2領域C2が第1領域C1より外側の実装面36の外周に設けられる。また本変形例では、受光部16が筐体20の中心軸A上に設けられる。受光部16を中心軸A上に配置することにより、基板中央の第1領域C1から受光部16に向かう紫外光の成分比と、基板外周の第2領域C2から受光部16に向かう紫外光の成分比との間に非対称性を生じさせ、内面変化パラメータcを精度良く求めることができる。
【0049】
上述の実施の形態では、光源部14に含まれる複数の発光素子32を二領域に分ける場合について示した。さらなる変形例では、複数の発光素子32を三領域以上に区分し、それぞれの領域を点灯させる複数の点灯パターンでの受光部16の計測結果に基づいて内面変化パラメータcを算出してもよい。三領域以上に区分される各領域は、径方向に異なる位置に設定されてもよいし、周方向に異なる位置に設定されてもよい。この場合においても、各点灯パターンにおける直接光成分と反射光成分の比率が互いに異なるように光源部14の領域を設定し、受光部16を配置することが好ましい。
【0050】
複数の発光素子32を三領域以上に区分する場合、最小自乗法などのフィッティング方法を用いて内面変化パラメータcを算出してもよい。例えば、三以上の点灯パターンの識別番号をkとし、k番目の点灯パターンでの直接光成分I
Dk、反射光成分I
Rk、受光部16での中途状態の受光量I’
kを取得し、I’
k=AI
Dk+Bの数式に対して最小自乗法を適用して変数A,Bを算出してもよい。その後、A=a、B=bI
Rk、の関係式から係数a,bを算出し、内面変化パラメータcを算出してもよい。
【0051】
上述の実施の形態では、初期状態で計測される直接光成分および反射光成分の光量を初期パラメータとして用いる場合を示した。変形例においては、直接光成分および反射光成分の相対的な比率を初期パラメータとして用いてもよく、例えば、初期状態で計測される光量を規格化した値を初期パラメータとして用いてもよい。その他、式(3)の右辺に示される逆行列の値自体を初期パラメータとして用いてもよい。つまり、初期状態における直接光成分および反射光成分に関する情報を直接的または間接的に示す任意の形式の値を初期パラメータとして用いることができる。
【0052】
上述の実施の形態では、光源部14を複数の点灯パターンで点灯させることにより、内面変化パラメータを算出する場合を示した。さらなる変形例では、受光部を異なる位置に設け、それぞれの受光部の計測値を解析することで内面変化パラメータを算出してもよい。この場合、それぞれの受光部で計測される直接光成分と反射光成分の初期状態の値を実験的に求めておくことで、その値に基づいて内面変化パラメータを算出できる。上述の実施の形態と同様に、複数の受光部で計測される直接光成分と反射光成分の比率に非対称性が生じるように複数の受光部を配置することが好ましい。例えば、第1受光部を筐体20の中心軸A上に配置し、第2受光部を筐体20の中心軸Aから径方向に離れた位置に配置することでこのような非対称性が生じるようにしてもよい。
【0053】
上述の実施の形態では、光源部14が配置される第1端部21を流出側とし、反対側の第2端部22を流入側とした。さらなる変形例においては、第1端部21を流入側とし、第2端部22を流出側としてもよい。
【0054】
上述の実施の形態では、水などの流体に紫外光を照射して殺菌処理を施すための装置として説明した。変形例においては、紫外光の照射により流体に含まれる有機物を分解させる浄化処理に本装置を用いてもよい。