特許第6810013号(P6810013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810013
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】走行式散布機
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20201221BHJP
   B05B 17/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   A01M7/00 J
   A01M7/00 D
   B05B17/00 101
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-203448(P2017-203448)
(22)【出願日】2017年10月20日
(65)【公開番号】特開2019-75996(P2019-75996A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2019年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】八木 直
(72)【発明者】
【氏名】梶 賢一郎
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0146735(US,A1)
【文献】 特開2008−289417(JP,A)
【文献】 特開2002−336752(JP,A)
【文献】 特開2000−093062(JP,A)
【文献】 特開2002−034423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00−11/00
B05B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を散布する走行式散布機(1)であって、
走行体(2)と、
前記薬液を散布する第1ノズル(4b)を備える第1ノズルユニット(4)と、
前記薬液を散布する第2ノズル(5b)を備える第2ノズルユニット(5)と、
一方の端部(40a)が前記走行体(2)に固定され、前記第1ノズルユニット(4)を支持する第1マスト体(40)と、
前記第2ノズルユニット(5)を支持する第2マスト体(50)と、
前記第1マスト体(40)の他方の端部(40b)と前記第2マスト体(50)の一方の端部(50a)とを連結する連結部(60)と、
を備え、
前記第1マスト体(40)の他方の端部(40b)は、前記連結部(60)の第1連結位置(P1)において前記連結部(60)に回動可能に連結され、
前記第2マスト体(50)の一方の端部(50a)は、前記連結部(60)の第2連結位置(P2)において前記連結部(60)に回動可能に連結され、
前記第1マスト体(40)に対する前記連結部(60)の回動の軸線方向に沿って見たときに、前記第1連結位置(P1)と前記第2連結位置(P2)とは互いに位置が異なっており、
前記第1マスト体(40)に対する前記連結部(60)の回動の軸線方向と、前記連結部(60)に対する前記第2マスト体(50)の回動の軸線方向とは互いに平行であり、
さらに、
前記第1マスト体(40)に対する前記連結部(60)の回動の軸線方向に沿って見たときに、前記第1連結位置(P1)及び前記第2連結位置(P2)をつなぐ連結部基準線(L)と前記第1マスト体(40)の延在方向とが一致する状態で、前記第1マスト体(40)に対する前記連結部(60)の回動位置を固定する第1ボルト(B1)と、
前記第1マスト体(40)に対する前記連結部(60)の回動の軸線方向に沿って見たときに、前記連結部基準線(L)と前記第2マスト体(50)の延在方向とが一致する状態で、前記連結部(60)に対する前記第2マスト体(50)の回動位置を固定する第2ボルト(B2)と、
を備え、
前記第1ボルト(B1)のネジ部(B1b)の先端部は、前記第1マスト体(40)に係合し、
前記第2ボルト(B2)のネジ部(B2b)の先端部は、前記第2マスト体(50)に係合し、
前記連結部(60)は、
前記第1マスト体(40)の延在方向と前記連結部基準線(L)とが一致する状態で、前記第1ボルト(B1)の頭部(B1a)と前記第1マスト体(40)とに挟まれることで前記第1マスト体(40)に固定される第1固定板部(63a)と、
前記連結部基準線(L)と第1マスト体(40)の延在方向とが一致する状態で、前記第2ボルト(B2)の頭部(B2a)と前記第2マスト体(50)とによって挟まれることで前記第2マスト体(50)に固定される第2固定板部(63b)と、
を備え、
前記第1固定板部(63a)には、前記第1マスト体(40)の延在方向と前記連結部基準線(L)とが一致するように前記連結部(60)が回動させられたときに、前記第1ボルト(B1)の前記ネジ部(B1b)を前記第1固定板部(63a)内に侵入させる第1切欠部(S1)が設けられ、
前記第2固定板部(63b)には、前記連結部基準線(L)と前記第2マスト体(50)の延在方向とが一致するように前記第2マスト体(50)が回動させられたときに、前記第2ボルト(B2)の前記ネジ部(B2b)を前記第2固定板部(63b)内に侵入させる第2切欠部(S2)が設けられている、走行式散布機(1)。
【請求項2】
前記連結部(60)は、
前記第1マスト体(40)に当接することによって、前記第1マスト体(40)に対する前記連結部(60)の回動範囲を規制する第1規制部(71)と、
前記第2マスト体(50)に当接することによって、前記連結部(60)に対する前記第2マスト体(50)の回動範囲を規制する第2規制部(72)と、
を備え、
前記第1規制部(71)は、前記第1マスト体(40)に対する前記連結部(60)の回動の軸線方向に沿って見たときに、前記連結部基準線(L)と、前記第1マスト体(40)との間の角度(α)が90°未満となることを規制し、
前記第2規制部(72)は、前記第1マスト体(40)に対する前記連結部(60)の回動の軸線方向に沿って見たときに、前記連結部基準線(L)と、前記第2マスト体(50)との間の角度(β)が90°未満となることを規制する、請求項1に記載の走行式散布機(1)。
【請求項3】
前記第1マスト体(40)に対する前記連結部(60)の回動の軸線方向は、前記走行体(2)の前後方向に沿って延びている、請求項1又は2に記載の走行式散布機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行式散布機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行しながら薬液を散布する走行式散布機がある。このような走行式散布機は、上下方向に延在するマストに複数のノズルが設けれている。また、例えば、ビニールハウス内等への出入りを容易にするため、マストを折りたたむことができる走行式散布機がある。このようなマストを折りたたみ可能な走行式散布機が、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−289417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マストには複数のノズルが取り付けられているため、マストを折りたたんだときにノズル同士が干渉又はノズルがマストに干渉することがある。このため、マストを折りたたんだときに、ノズルが他の部材と干渉することを防止することが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、ノズルの干渉を防止しつつマストを折りたたみ可能な走行式散布機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、薬液を散布する走行式散布機(1)であって、走行体(2)と、薬液を散布する第1ノズル(4b)を備える第1ノズルユニット(4)と、薬液を散布する第2ノズル(5b)を備える第2ノズルユニット(5)と、一方の端部(40a)が走行体(2)に固定され、第1ノズルユニット(4)を支持する第1マスト体(40)と、第2ノズルユニット(5)を支持する第2マスト体(50)と、第1マスト体(40)の他方の端部(40b)と第2マスト体(50)の一方の端部(50a)とを連結する連結部(60)と、を備え、第1マスト体(40)の他方の端部(40b)は、連結部(60)の第1連結位置(P1)において連結部(60)に回動可能に連結され、第2マスト体(50)の一方の端部(50a)は、連結部(60)の第2連結位置(P2)において連結部(60)に回動可能に連結され、第1マスト体(40)に対する連結部(60)の回動の軸線方向に沿って見たときに、第1連結位置(P1)と第2連結位置(P2)とは互いに位置が異なっており、第1マスト体(40)に対する連結部(60)の回動の軸線方向と、連結部(60)に対する第2マスト体(50)の回動の軸線方向とは互いに平行であり、さらに、第1マスト体(40)に対する連結部(60)の回動の軸線方向に沿って見たときに、第1連結位置(P1)及び第2連結位置(P2)をつなぐ連結部基準線(L)と第1マスト体(40)の延在方向とが一致する状態で、第1マスト体(40)に対する連結部(60)の回動位置を固定する第1ボルト(B1)と、第1マスト体(40)に対する連結部(60)の回動の軸線方向に沿って見たときに、連結部基準線(L)と第2マスト体(50)の延在方向とが一致する状態で、連結部(60)に対する第2マスト体(50)の回動位置を固定する第2ボルト(B2)と、を備え、第1ボルト(B1)のネジ部(B1b)の先端部は、第1マスト体(40)に係合し、第2ボルト(B2)のネジ部(B2b)の先端部は、第2マスト体(50)に係合し、連結部(60)は、第1マスト体(40)の延在方向と連結部基準線(L)とが一致する状態で、第1ボルト(B1)の頭部(B1a)と第1マスト体(40)とに挟まれることで第1マスト体(40)に固定される第1固定板部(63a)と、連結部基準線(L)と第1マスト体(40)の延在方向とが一致する状態で、第2ボルト(B2)の頭部(B2a)と第2マスト体(50)とによって挟まれることで第2マスト体(50)に固定される第2固定板部(63b)と、を備え、第1固定板部(63a)には、第1マスト体(40)の延在方向と連結部基準線(L)とが一致するように連結部(60)が回動させられたときに、第1ボルト(B1)のネジ部(B1b)を第1固定板部(63a)内に侵入させる第1切欠部(S1)が設けられ、第2固定板部(63b)には、連結部基準線(L)と第2マスト体(50)の延在方向とが一致するように第2マスト体(50)が回動させられたときに、第2ボルト(B2)のネジ部(B2b)を第2固定板部(63b)内に侵入させる第2切欠部(S2)が設けられている。
【0007】
この走行式散布機(1)では、第1マスト体(40)が連結部(60)に連結される第1連結位置(P1)と、第2マスト体(50)が連結部(60)に連結される第2連結位置(P2)とが互いに異なっている。このため、走行式散布機(1)は、第1マスト体(40)及び第2マスト体(50)によって構成されるマスト(3)が折りたたまれたときに、第1マスト体(40)と第2マスト体(50)との間に隙間を設けることができる。すなわち、走行式散布機(1)は、マスト(3)が折りたたまれたときに、第1ノズルユニット(4)と第2ノズルユニット(5)との間に隙間を設けることができる。このように、走行式散布機(1)は、ノズル(4b,5b)の干渉を防止しつつマスト(3)を折りたたむことができる。また、走行式散布機(1)は、第1ボルト(B1)及び第2ボルト(B2)を用いて、第1マスト体(40)と第2マスト体(50)とを直線状に伸ばした状態で、第1マスト体(40)と第2マスト体(50)を固定することができる。
【0008】
連結部(60)は、第1マスト体(40)に当接することによって、第1マスト体(40)に対する連結部(60)の回動範囲を規制する第1規制部(71)と、第2マスト体(50)に当接することによって、連結部(60)に対する第2マスト体(50)の回動範囲を規制する第2規制部(72)と、を備え、第1規制部(71)は、第1マスト体(40)に対する連結部(60)の回動の軸線方向に沿って見たときに、第1連結位置(P1)及び第2連結位置(P2)をつなぐ連結部基準線(L)と、第1マスト体(40)との間の角度(α)が90°未満となることを規制し、第2規制部(72)は、第1マスト体(40)に対する連結部(60)の回動の軸線方向に沿って見たときに、連結部基準線(L)と、第2マスト体(50)との間の角度(β)が90°未満となることを規制してもよい。この場合、マスト(3)を折りたたんだときに、第1規制部(71)及び第2規制部(72)によって、第1マスト体(40)と第2マスト体(50)とが干渉することが防止できる。このため、走行式散布機(1)は、ノズル(4b,5b)の干渉をより一層防止できる。
【0010】
第1マスト体(40)に対する連結部(60)の回動の軸線方向は、走行体(2)の前後方向に沿って延びていてもよい。この場合、走行式散布機(1)の横方向に第2マスト体(50)を回動させることができる。これにより、マスト(3)の折りたたみ及びマスト(3)の設置が容易となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノズルの干渉を防止しつつマストを折りたたむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る防除機のマストを伸ばした状態を示す斜視図である。
図2図1のマストの連結部周りを示す拡大図である。
図3図1のマストの連結部周りを他の方向から見た拡大図である。
図4】実施形態に係る防除機のマストを折りたたんだ状態を示す斜視図である。
図5図4のマストの連結部周りを示す拡大図である。
図6図4のマストの連結部周りを他の方向から見た拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1に示されるように、防除機1は、走行しながら薬液を散布する走行式散布車を構成する。防除機1は、外部に設けられた薬液タンクから供給された薬液を散布する。防除機1は、走行体2と、マスト3と、第1ノズルユニット4と、第2ノズルユニット5とを備えている。走行体2は、タイヤ2aを備え、タイヤ2aの回転によって走行する。走行体2には、タイヤ2aを回転させる駆動源となるモータと、バッテリ等が搭載されている。また、走行体2には、走行体2の走行及び薬液の散布の制御を行うコントローラ2bが設けられている。
【0015】
マスト3は、走行体2の前端部において、上下方向に延在するように取り付けられている。マスト3は、第1ノズルユニット4と、第2ノズルユニット5とを支持している。第1ノズルユニット4は、送液パイプ4aと、送液パイプ4aに取り付けられた複数のノズル(第1ノズル)4bとを備えている。送液パイプ4aは、上下方向に延在するようにマスト3に支持されている。送液パイプ4aは、防除機1に供給された薬液を送液するホース(図示せず)に接続されている。ノズル4bは、送液パイプ4aに供給された薬液を噴霧(散布)する。第2ノズルユニット5は、第1ノズルユニット4と同様に、送液パイプ5aと、送液パイプ5aに取り付けられた複数のノズル(第2ノズル)5bとを備えている。送液パイプ5aは、上下方向に延在するようにマスト3に支持されている。送液パイプ5aは、送液パイプ4aと図示しないホースによって接続され、薬液が供給される。ノズル5bは、送液パイプ5aに供給された薬液を噴霧(散布)する。
【0016】
ここで、マスト3は、折りたたみ可能な構成となっている。以下、マスト3の詳細について説明する。図1図3に示されるように、マスト3は、第1マスト体40と、第2マスト体50と、連結部60とを備えている。第1マスト体40は、上下方向に延在するように配置されている。第1マスト体40の下端部(一方の端部)40aが、走行体2の前端部に固定されている。第1マスト体40には、第1ノズルユニット4が取り付けられている。第1マスト体40は、第1ノズルユニット4を支持する。第1マスト体40の延在方向と、第1ノズルユニット4の送液パイプ4aの延在方向とは略一致している。
【0017】
第2マスト体50には、第2ノズルユニット5が取り付けられている。第2マスト体50は、第2ノズルユニット5を支持する。第2マスト体50の延在方向と、第2ノズルユニット5の送液パイプ5aの延在方向とは略一致している。
【0018】
連結部60は、第1マスト体40の上端部(他方の端部)40bと、第2マスト体50の連結側端部(一方の端部)50aとを連結する。より詳細には、連結部60は、平行板部61及び62と、連結板部63とを有している。平行板部61と平行板部62とは、互いに平行に配置されている。連結板部63は、平行板部61の一方の端部と、平行板部62の一方の端部とを連結している。すなわち、、平行板部61、62、及び連結板部63は、断面が略コ字状に連結されている。平行板部61、62、及び連結板部63によって囲まれる空間内には、第1マスト体40の上端部40bと、第2マスト体50の連結側端部50aとが収容されている。
【0019】
第1マスト体40の上端部40bは、平行板部61及び62の第1連結位置P1(図6参照)において、平行板部61及び62間に通されたピンR1によって、連結部60に対して回動可能に連結されている。これにより、連結部60は、ピンR1の軸線を中心に第1マスト体40に対して回動することができる。第2マスト体50の連結側端部50aは、平行板部61及び62の第2連結位置P2(図6参照)において、平行板部61及び62間に通されたピンR2によって、連結部60に対して回動可能に連結されている。これにより、第2マスト体50は、ピンR2の軸線を中心に連結部60に対して回動することができる。
【0020】
なお、第1マスト体40に対する連結部60の回動の軸線方向(すなわちピンR1の軸線方向)に沿って見たときに、第1連結位置P1と第2連結位置P2とは互いに位置が異なっている。また、ピンR1の延在方向と、ピンR2の延在方向とは互いに平行となっている。すなわち、第1マスト体40に対する連結部60の回動の軸線方向と、連結部60に対する第2マスト体50の回動の軸線方向とは互いに平行である。
【0021】
第1マスト体40の上端部40b近傍には、第1マスト体40に対する連結部60の回動位置を固定する第1ノブボルト(第1ボルト)B1が取り付けられている。ここで、図6に示されるように、第1マスト体40に対する連結部60の回動の軸線方向(ピンR1の軸線方向)に沿って見たときに、第1連結位置P1(ピンR1)及び第2連結位置P2(r2)をつなぐ線を、連結部基準線Lとする。図3に示されるように、第1ノブボルトB1は、連結部基準線Lが上下方向に延在するように連結部60が回動させられた状態で、第1マスト体40に対する連結部60の回動位置を固定する。すなわち、第1マスト体40に対する連結部60の回動の軸線方向(ピンR1の軸線方向)に沿って見たときに、第1ノブボルトB1は、第1マスト体40の延在方向と連結部基準線Lとが一致する状態で、第1マスト体40に対する連結部60の回動位置を固定する。
【0022】
連結板部63は、第1マスト体40の延在方向と連結部基準線Lとが一致した状態で、第1マスト体40(ナット40c)に当接し、連結部60の回動範囲を規制する。
【0023】
より詳細には、図6に示されるように、第1ノブボルトB1のネジ部B1bの先端部は、第1マスト体40の上端部40bの近傍に固定されたナット40cに係合している。図3に示されるように、第1ノブボルトB1が絞め込まれることによって、第1ノブボルトB1の頭部B1aと第1マスト体40(ナット40c)とによって連結板部63が挟まれる。これにより、連結部60は、第1マスト体40に固定される。このように、連結板部63における第1連結位置P1が設けられる側の端部(以下「第1固定板部63a」という)が、第1ノブボルトB1によって第1マスト体40に固定される。
【0024】
なお、第1固定板部63aには、第1ノブボルトB1のネジ部B1bを第1固定板部63a内に侵入させる第1切欠部S1が設けられている。これにより、第1ノブボルトB1は、ネジ部B1bが第1切欠部S1内に入り込んだ状態で、第1マスト体40(ナット40c)とによって第1固定板部63aを挟み込むことができる。第1切欠部S1について詳しくは後述する。
【0025】
第2マスト体50の連結側端部50a近傍には、連結部60に対する第2マスト体50の回動位置を固定する第2ノブボルト(第2ボルト)B2が取り付けられている。図3に示されるように、第2ノブボルトB2は、第2マスト体50が上下方向に延在するように回動させられた状態で、連結部60に対する第2マスト体50の回動位置を固定する。すなわち、第1マスト体40に対する連結部60の回動の軸線方向(ピンR1の軸線方向)に沿って見たときに、第2ノブボルトB2は、連結部基準線Lと、第2マスト体50の延在方向が一致する状態で、連結部60に対する第2マスト体50の回動位置を固定する。
【0026】
連結板部63は、連結部基準線Lと第2マスト体50の延在方向とが一致した状態で、第2マスト体50(ナット50c)に当接し、第2マスト体50の回動範囲を規制する。
【0027】
より詳細には、図6に示されるように、第2ノブボルトB2のネジ部B2bの先端部は、第2マスト体50の連結側端部50aの近傍に固定されたナット50cに係合している。図3に示されるように、第2ノブボルトB2が絞め込まれることによって、第2ノブボルトB2の頭部B2aと第2マスト体50(ナット50c)とによって連結板部63が挟まれる。これにより、第2マスト体50は、連結部60に固定される。このように、連結板部63における第2連結位置P2が設けられる側の端部(以下「第2固定板部63b」という)が、第2ノブボルトB2によって第2マスト体50に固定される。
【0028】
なお、第2固定板部63bには、第2ノブボルトB2のネジ部B2bを第2固定板部63b内に侵入させる第2切欠部S2が設けられている。これにより、第2ノブボルトB2は、ネジ部B2bが第2切欠部S2内に入り込んだ状態で、第2マスト体50(ナット50c)とによって第2固定板部63bを挟み込むことができる。第2切欠部S2について詳しくは後述する。
【0029】
このように、第1ノブボルトB1によって第1マスト体40に対する連結部60の回動位置が固定され、第2ノブボルトB2によって連結部60に対する第2マスト体50の回動位置が固定されることで、第1マスト体40及び第2マスト体50が上下方向に延在する状態(マスト3が伸ばされた状態)となる。
【0030】
次に、マスト3が上下方向に伸びた状態からマスト3を折りたたむ構成について説明する。図4図6に示されるように、第2ノブボルトB2が緩められて第2マスト体50の回動位置の固定が解除されることで、第2マスト体50は、ピンR2を軸として連結部60に対して回動可能となる。第1ノブボルトB1が緩められて連結部60の回動位置の固定が解除されることで、連結部60は、ピンR1を軸として第1マスト体40に対して回動可能となる。このように、第1マスト体40に対して連結部60を回動させることにより、且つ、連結部60に対して第2マスト体50を回動させることにより、マスト3が折りたたまれる。
【0031】
なお、連結部60に対して第2マスト体50を回動させることにより、第2切欠部S2内に侵入していた第2ノブボルトB2のネジ部B2bは、第2切欠部S2外へ移動する。すなわち、第2切欠部S2は、連結部基準線Lと第2マスト体50の延在方向とが一致するように第2マスト体50が回動させられたとき(マスト3を伸ばしたとき)に、第2ノブボルトB2のネジ部B2bを第2切欠部S2内に侵入させる。反対に、第2切欠部S2は、マスト3を折りたたむ方向に第2マスト体50が回動させられたときに、第2切欠部S2内から第2切欠部S2外へ第2ノブボルトB2のネジ部B2bを移動させる。このように、第2切欠部S2は、第2マスト体50が回動させられたときに第2ノブボルトB2のネジ部B2bが第2固定板部63bを横切る方向に沿って設けられている。
【0032】
同様に、第1マスト体40に対して連結部60を回動させることにより、第1切欠部S1内に侵入していた第1ノブボルトB1のネジ部B1bは、第1切欠部S1外へ移動する。すなわち、第1切欠部S1は、第1マスト体40の延在方向と連結部基準線Lとが一致するように連結部60が回動させられたとき(マスト3を伸ばしたとき)に、第1ノブボルトB1のネジ部B1bを第1切欠部S1内に侵入させる。反対に、第1切欠部S1は、マスト3を折りたたむ方向に連結部60が回動させられたときに、第1切欠部S1内から第1切欠部S1外へ第1ノブボルトB1のネジ部B1bを移動させる。このように、第1切欠部S1は、連結部60が回動させられたときに第1ノブボルトB1のネジ部B1bが第1固定板部63aを横切る方向に沿って設けられている。
【0033】
ここで、連結部60は、マスト3を折りたたむときの連結部60及び第2マスト体50の回動範囲を規制する規制部70を更に備えている。規制部70は、平行板部61の他方の端部と、平行板部62の他方の端部とに固定されている。すなわち、規制部70は、連結板部63と対向している。
【0034】
規制部70は、第1規制部71と、第2規制部72とを有している。第1規制部71は、第1マスト体40に当接することによって、マスト3を折りたたむときの、第1マスト体40に対する連結部60の回動範囲を規制する。第2規制部72は、第2マスト体50に当接することによって、マスト3を折りたたむときの、連結部60に対する第2マスト体50の回動範囲を規制する。
【0035】
具体的には、第1規制部71は、図6に示されるように、ピンR1の軸線方向に沿って見たときに、連結部基準線Lと第1マスト体40(第1マスト体40の軸線)との間の角度αが90°未満となることを規制する。同様に、第2規制部72は、ピンR1の軸線方向に沿って見たときに、連結部基準線Lと第2マスト体50(第2マスト体50の軸線)との間の角度βが90°未満となることを規制する。上記の角度αが90°となるように第1規制部71が連結部60の回動範囲を規制し、且つ、上記の角度βが90°となるように第2規制部72が第2マスト体50の回動範囲を規制することで、第1ノズルユニット4が折りたたまれたときに第1マスト体40と第2マスト体50とが平行となる。
【0036】
本実施形態において、第1マスト体40に対する連結部60の回動の軸線方向(ピンR1の軸線方向)は、走行体2の前進方向に沿って延びている。同様に、連結部60に対する第2マスト体50の回動の軸線方向(ピンR2の軸線方向)は、走行体2の前後方向に沿って延びている。このため、作業者は、第2マスト体50を横方向(左右側)に回動させて、マスト3を折りたたむ、又はマスト3を伸ばすことができる。
【0037】
本実施形態は以上のように構成され、この防除機1では、第1マスト体40が連結部60に連結される第1連結位置P1と、第2マスト体50が連結部60に連結される第2連結位置P2とが互いに異なっている。このため、防除機1は、マスト3が折りたたまれたときに、第1マスト体40と第2マスト体50との間に隙間を設けることができる。すなわち、防除機1は、マスト3が折りたたまれたときに、第1ノズルユニット4と第2ノズルユニット5との間に隙間を設けることができる。このように、防除機1は、ノズル4b,5bの干渉を防止しつつマスト3を折りたたむことができる。
【0038】
このように、マスト3の折りたたみが可能であるため、防除機1は、ビニールハウス等の建物への出入りや、移動、運搬が容易となる。防除機1は、マスト3を伸ばすことによって、長さの短い2本のノズルユニット(第1ノズルユニット4及び第2ノズルユニット5)を上下に並べて使用する構成である。このように、長さが長い特別のノズルユニットを用いる必要が無いため、防除機1の部品を容易に調達できる。また、マスト3を折りたたむことができるため、作業者は、第2ノズルユニット5のメンテナンスを低い位置で容易に行うことができる。
【0039】
第1規制部71は、連結部基準線Lと第1マスト体40との間の角度αが90°未満となることを規制する。第2規制部72は、連結部基準線Lと第2マスト体50との間の角度βが90°未満となることを規制する。この場合、マスト3を折りたたんだときに、第1規制部71及び第2規制部72によって、第1マスト体40と第2マスト体50とが干渉することが防止できる。すなわち、第2マスト体50の先端部50bが、第1マスト体40に当たらない。このため、防除機1は、ノズル4b,5bの干渉をより一層防止できる。
【0040】
防除機1は、第1マスト体40に対する連結部60の回動位置を固定する第1ノブボルトB1と、連結部60に対する第2マスト体50の回動位置を固定する第2ノブボルトB2とを備えている。これにより、防除機1は、第1ノブボルトB1及び第2ノブボルトB2を用いて、マスト3を直線状に伸ばした状態で、第1マスト体40と第2マスト体50とを固定することができる。また、防除機1は、第1ノブボルトB1及び第2ノブボルトB2が緩められて固定が解除されることで、マスト3を折りたたむことができる。
【0041】
防除機1は、防除機1の横方向に第2マスト体50及び連結部60を回動させることによってマスト3を折りたたむことができる。これにより、マスト3の折りたたみ及びマスト3の設置(マスト3を伸ばすこと)が容易となる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、防除機1のマスト3を折りたたみ可能な構成としたが、防除機1に限定されず、薬液を散布する他の走行式散布機に本発明が適用されてもよい。
【0043】
第1ノブボルトB1及び第2ノブボルトB2を用いて連結部60等の回動位置を固定したが、ノブボルトに限定されず、他のボルトであってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…防除機(走行式散布機)、2…走行体、4…第1ノズルユニット、4b…ノズル(第1ノズル)、5…第2ノズルユニット、5b…ノズル(第2ノズル)、40…第1マスト体、40a…下端部(一方の端部)、40b…上端部(他方の端部)、50…第2マスト体、50a…連結側端部(一方の端部)、60…連結部、63a…第1固定板部、63b…第2固定板部、71…第1規制部、72…第2規制部、B1…第1ノブボルト(第1ボルト)、B1a,B2a…頭部、B1b、B2b…ネジ部、B2…第2ノブボルト(第2ボルト)、L…連結部基準線、P1…第1連結位置、P2…第2連結位置、S1…第1切欠部、S2…第2切欠部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6