【文献】
MOORE,J.D et al.,Quantitation and Standardization of Lipid Internal Standards for Mass Spectroscopy,Methods in Enzymology,2007年,432,351-367
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の原理の理解を助けるために好ましい実施形態を説明し、また、特定の用語を使用してこれを説明する。なお、本開示の範囲がそれにより限定されることは意図していないことを理解されたい。本開示に関する技術分野の当業者が通常想到するように、本願明細書において説明する本開示は変更や更に修正されることが意図されている。
【0020】
生体サンプル中に存在する脂質は内部標準を用いた定量を行う場合に問題がある標的である。脂質は1種類の脂質クラス内でさえも多様な化学的性質を有するからである。また、脂質には組み合わせ論的複雑さがある。例えば、12種類程度の骨格の1つに対して多くの潜在的な脂肪酸のうちの数種類がアシル化している。よって、内部標準が少ないと上記2つの基準の第1の基準を満たすことができない。そこで、以下の内部標準セットを作る方法が必要とされている。すなわち、(1)複合脂質の化学的多様性を表し、かつ、(2)サンプル中の予想脂質組成を表すため内部標準として有用な内部標準混合物を比較的大量に創製する内部標準セットである。本開示の主題は、複合脂質の化学的多様性を表す内部標準のための方法および組成物を提供する。
【0021】
各脂質クラスに対して適切な化学的性質および/または分析的性質を有する脂質標準の構造的に多様なセットのための試薬およびキットが開示される。本願明細書で使用する脂肪酸「脂質代謝物」(または「脂質分子」)の命名法について、「CE」、「DG」、「FA」、「PC」、「PE」、「LPC」、「LPE」、「O−PC」、「P−PE」、「SM」、「TG」または「CER」との接頭辞が付与された脂肪酸は、それぞれ、サンプル中の以下のものに存在する脂肪酸をいう:コレステリルエステル、ジアシルグリセロール(ジグリセリド)、遊離脂肪酸、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、1−エーテル結合ホスファチジルコリン、1−ビニルエーテル結合ホスファチジルエタノールアミン(プラズマロゲン)、スフィンゴミエリン、トリアシルグリセロール(トリグリセリド)、および、セラミド。いくつかの実施形態において、示された脂肪酸成分は、接頭辞で示された脂質クラス内の総脂肪酸に対する割合として定量される。接頭辞を付さない脂肪酸または特定の脂肪酸クラスの他の表示は、一般的に、サンプル中の全脂質中に存在する脂肪酸を示す。「CE」、「DG」、「FA」、「PC」、「PE」、「LPC」、「LPE」、「O−PC」、「P−PE」、「SM」、「TG」または「CER」との接頭辞の後の「LC」との語句は、サンプルにおける当該接頭辞が付された総脂質クラスの量(例えば、血清または血漿1g当たりのnモルとして表される、当該クラスの脂質濃度)を示す。例えば、血清または血漿から取った測定について、いくつかの実施形態では、「PC18:2n6」との略語は、血漿または血清中のリノール酸(18:2n6)から構成されるホスファチジルコリンの割合(%)を示し、「TGLC」との用語は、血漿または血清に存在するトリグリセリドの絶対量(例えば、nモル/g)を示す。「MUFA」、「PUFA」および「SFA」は、それぞれ、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸および飽和脂肪酸をいう。
【0022】
本願明細書において、「脂質骨格」は、脂質分子の脂肪酸基すなわちアシル基を除いた部分をいう。本願明細書において、「脂肪酸」および「アシル基」との用語は交換可能に使用される。本願明細書において、「脂質分子種」または「分子種」は、特定の脂質骨格に結合した特定の脂肪酸(アシル基)から構成される脂質分子(例えば、PC18:2n6、CE16:1n6など)をいう。
【0023】
本願明細書において「同位体標識(された)」とは、任意の適切な構造(例えば、重水素(
2H)、
13C、
15N)を使用して測定するためにマークされた内部標準または内部標準の任意の部分をいう。内部標準の任意の原子、または、任意の数の原子が同位体で標識され得る。例えば、同位体は重水素であり内部標準は9個の重水素原子を含み得る。他の一例では、同位体は重水素であり内部標準は11個、13個、15個、17個、19個、21個、23個、25個、27個、29個または31個の重水素原子を含み得る。
【0024】
本願明細書に記載の方法の1つの用途は、質量分析装置、または、タンデム型の複数の質量分析装置(すなわち「プラットフォーム」)の較正または較正補助である。一例において、2種類の較正が要求される。すなわち、1つは脂質クラス濃度用であり、もう1つは脂質クラスの脂肪酸組成用である。対照サンプルまたは結果の定量データベースとの比較のいずれかを使用して、プラットフォーム較正の結果が計算により較正され得る。
【0025】
内部標準混合物を生成するための本願明細書に記載の方法は、任意の脂質または脂質クラスに適用され得る。本願明細書において、「脂質クラス」との用語は、例えば、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、コレステリルエステル、遊離脂肪酸、ホスファチジルコリン、o−ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、p−ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、CDP−ジアシルグリセロール、リゾCDP−ジアシルグリセロール、セラミド、ラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、フィトセラミド、6−ヒドロキシセラミド、セレブロシド、ガングリオシド、ワックスエステル、ワックスジエステル、および、1−モノアシルグリセロールなどの脂質のクラスをいう。トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、コレステリルエステル、遊離脂肪酸は広く中性脂質である。ホスファチジルコリン、o−ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、p−ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、CDP−ジアシルグリセロール、リゾCDP−ジアシルグリセロールは、広くリン脂質である。
【0026】
内部標準混合物はリン脂質を含んでよく、各リン脂質頭部基(例えば、PC、PE、SM)は、a)sn−1位またはsn−2位に存在する同位体標識された脂肪酸と、b)別位置(すなわち、同位体標識された脂肪酸により占領されていない位置)に存在するアシル化脂肪酸混合物とを有し、アシル化脂肪酸混合物は、標的複合脂質内の脂肪酸の濃度に近似する。
【0027】
一例において、同位体標識された脂肪酸は飽和脂肪酸であり、アシル化脂肪酸混合物は、不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸の所定の混合物である。一例において、同位体標識された脂肪酸はsn−1位のパルミテート(16:0)であり、不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸のアシル化混合物はsn−2位の所定の混合物である。一例において、アシル化混合物は不飽和脂肪酸から構成される。一例において、リン脂質はリゾホスファチジルコリンであり、リン脂質頭部基は同位体標識されたパルミテート(16:0)をsn−1位に有する。他の一例おいて、リン脂質はリゾホスファチジルエタノールアミンであり、リン脂質頭部基は同位体標識されたステアレート(18:0)をsn−1位に有する。脂肪酸の混合物の製造方法は以下のとおりである:1)所定のサンプルタイプ中の脂肪酸の濃度を決定する(濃度は既知のものでも脂肪酸組成分析により決定したものでもよい);2)1または2以上の代表的な不飽和度(例えば、モノエン、ジエン、トリエン、テトラエン、ペンタエン、ヘキサエン)から1つ脂肪酸を選択する(脂質クラス中で最も多く存在する脂肪酸を選択する);3)サンプルタイプ中の上記脂肪酸の濃度に基づいて、混合物中の各脂肪酸に「高」存在量または「小」存在量を割り当てる;4)「高」存在量か「小」存在量かに応じて混合物中の脂肪酸の割合(%)値を割り当てる(例えば、「高」存在量の脂肪酸は混合物の20%を構成し、「小」存在量の脂肪酸は混合物の5%を構成する);5)混合物の残りの割合(%)については、不飽和脂肪酸の中で最も多く存在する脂肪酸を決定し、上述のように「高」存在量または「小」存在量を割り当て、混合物を完成する。
【0028】
内部標準混合物はリン脂質を含んでよく、各リン脂質クラス(例えば、PC、PE、SM)の頭部基は、a)sn−1位またはsn−2位に存在する未標識脂肪酸と、b)未標識脂肪酸により占領されていない位置に存在するMUFAまたはPUFAを有する。一例において、頭部基はa)sn−1位に存在する未標識奇数鎖飽和脂肪酸と、b)sn−2位に存在する奇数鎖MUFAまたはPUFAを有する。
【0029】
内部標準混合物は中性脂質を含んでよく、該中性脂質は同位体標識されたMUFAまたは奇数鎖MUFA(例えば、17:1、19:1など)の混合物を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、定量的脂肪酸分析により内部標準混合物の正確な組成が決定され得る。リン脂質の一例において、各リン脂質頭部基のsn−1位は1つの重水素化飽和脂肪酸(例えば、d16:0)で完全に標識されており、そのため、脂肪酸の残りはsn−2位に存在する。式は下記のとおりである。すなわち、1=A/X+B/X+C/X・・・(式中、Xは混合物中の単一の重水素化飽和脂肪酸の割合(%)であり、A、B、C・・・は混合物中の脂肪酸であり、内部標準混合物中の脂肪酸A、B、C・・・の割合(%)はXに対して既知である)。さらに、A/Xは、Aからなる混合物の量である。例えば、FAME分析で決定したPC用内部標準の組成がd16:0−50%、18:1n9−10%、18:2n6−20%、20:4n6−20%である場合、1=(0.1/0.5)+(0.2/0.5)+(0.2/0.5)、0.1/0.5=0.2;0.2/.5=0.4;0.2/0.5=0.4であり、混合物は20% PCd16:0/18:1n9、40% PCd16:0/18:2n6,および、40%PCd16:0/20:4n6から構成される。
【0031】
遊離脂肪酸は、内部標準混合物を構成し得る中性脂質の1種である。遊離脂肪酸は任意の遊離脂肪酸であってよく、例えば、単一の奇数鎖脂肪酸(例えば、17:1、17:2、17:0)および/または同位体標識された脂肪酸(例えば、16:0、16:1、17:0)を含む。遊離脂肪酸はMUFAであり得るか、PUFAであり得る。
【0032】
コレステリルエステルは内部標準混合物を構成し得る中性脂質の1種である。コレステリルエステルは任意のコレステリルエステルであってよく、例えば、サンプル中のコレステリルエステルに予想される組成を示す脂肪酸の混合物にエステル化した標識コレステロール分子から構成されるコレステリルエステルが含まれる(表1を参照)。
【0033】
ジアシルグリセロールは内部標準混合物を構成し得る中性脂質の1種である。ジアシルグリセロールは任意のジアシルグリセロールであってよく、例えば、一つの奇数鎖脂肪酸または同位体標識された脂肪酸を含む。ジアシルグリセロールの脂肪酸鎖は、a)sn−1位またはsn−2位(第1の位置)に存在する同位体標識された脂肪酸と、b)別位置(すなわち、同位体標識された脂肪酸により占領されていない位置)に存在するアシル化脂肪酸混合物とを含み得る。一例において、同位体標識された脂肪酸は飽和脂肪酸である。一例において、同位体標識された脂肪酸は第1の位置に存在するパルミテート(16:0)であり、アシル化脂肪酸混合物は別位置に存在し、16:0、18:0、18:1n9、18:2n6、18:3n3、20:4n6、20:5n3、および、22:6n3を含み得る。一例において、同位体標識された脂肪酸は第1の位置に存在するパルミテート(16:0)であり、別位置に存在するアシル化脂肪酸混合物は不飽和脂肪酸および多価不飽和脂肪酸の混合物である。他の一例において、内部標準混合物中のジアシルグリセロールの脂肪酸鎖は、a)第1の位置に存在する未標識奇数鎖飽和脂肪酸と、b)別位置に存在する奇数鎖であるMUFAまたはPUFAを含み得る。内部標準中のジアシルグリセロールは、複数の均質な内部標準(例えば、DG17:0/17:0、および、DG17:1/17:1)を使用し得る。
【0034】
トリアシルグリセロールは内部標準混合物を構成し得る中性脂質の1種である。トリアシルグリセロールは任意のトリアシルグリセロールであってよく、例えば、混合標準を作る奇数鎖脂肪酸および/または同位体標識された脂肪酸の混合物を含む。トリアシルグリセロールの脂肪酸鎖は、a)1つの位置に存在する標識された脂肪酸と、b)別位置に存在する未標識脂肪酸と、c)他の別位置に存在するアシル化脂肪酸混合物とを含み得る。一例において、標識された脂肪酸は飽和脂肪酸であって未標識脂肪酸は不飽和脂肪酸であり得る。一例において、標識は重水素標識であり得る。一例において、内部標準混合物中のトリアシルグリセロールの脂肪酸鎖は、a)1つの位置(例えば、sn−1位)に存在する同位体標識されたパルミテート(16:0)と、b)別位置、すなわち第2の位置(例えば、sn−2位)に存在するオレエート(18:1n9)と、c)他の別位置、すなわち第3の位置(例えば、sn−3位)に存在するアシル化脂肪酸混合物とを含む。第3の位置(例えば、sn−3位)のアシル化脂肪酸混合物は、例えば、16:0、18:0、18:1n9、18:2n6、18:3n3、20:3n6、20:4n6、および、22:6n3を含み得る。
【0035】
内部標準混合物は、a)sn−1位に同位体標識されたパルミテート(16:0)を有し、sn−2位にMUFAとPUFAとの混合物を有するホスファチジルコリン脂質クラス; b)sn−1位に同位体標識されたパルミテート(16:0)またはステアレート(18:0)を有し、sn−2位にMUFAとPUFAとの混合物を有するホスファチジルエタノールアミン脂質クラス;c)sn−1位に同位体標識されたパルミテート(16:0)を有するリゾホスファチジルコリン脂質クラス;d)sn−1位に同位体標識されたパルミテート(16:0)またはステアレート(18:0)を有するリゾホスファチジルエタノールアミン脂質クラス;e)同位体標識されたスフィンゴイド骨格、および、sn−2位に脂肪酸の混合物を有するスフィンゴミエリン脂質クラス;f)sn−1位に同位体標識されたパルミテートを有し、sn−2位に未標識のオレエート(または他の脂肪酸)を有し、sn−3位に脂肪酸の混合物を有するトリアシルグリセロール脂質クラス;g)脂肪酸の混合物にアシル化した同位体標識されたコレステロール頭部基を有するコレステリルエステル脂質クラス;h)sn−1位に同位体標識されたパルミテート(16:0)を有し、sn−2位に脂肪酸の混合物を有するジアシルグリセロール脂質クラス;i)同位体標識された脂肪酸または15:1または17:1を有する遊離脂肪酸脂質クラス;および/または、j)同位体標識されたスフィンゴ脂質骨格、および、そのセラミドクラスに適切な脂肪酸混合物を有するセラミド脂質クラスを含み得る。
【0036】
一例において、セラミド脂質クラスは以下のスフィンゴ脂質骨格から構成され得る:スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、または、6−ヒドロキシスフィンゴシン。
【0037】
本願明細書に記載の試薬は、例えばキットとして、製品として組み合わされ得る。
【0038】
複合脂質はクラスにより分類され、各クラスは脂質上の頭部基部分により定義される(例えば、PCはホスホコリン頭部基を有し、CEはコレステロール頭部基を有する)。ある1つの脂質クラス内で、頭部基に結合する脂肪酸によって定義される分子種が多数存在する。脂肪酸は多様な化学構造を有するため各脂質クラスは多数の多様な成分から構成され、独特な脂質分子種が生じることになる。ある1つの脂質クラスを定量するためには、それら分子種をそれぞれ定量し、正確にその量を合計する必要がある。
【0039】
広範な脂質クラス(例えば、リン脂質)毎に単一の内部標準のみを通常使用する従来のリピドミクス戦略とは対照的に、本発明では、脂肪酸の混合物(脂質クラス毎に最大10個の脂肪酸)を含む内部標準の合成方法が提供される。本方法では、内部標準混合物(IS混合物)中の脂肪酸は、分析対象のサンプルタイプに存在する脂質クラスに見出される化学構造(脂質分子種)の多様性を示すように選択される。表1は、本開示の方法に従って測定した各対応する脂質クラスの各脂肪酸の濃度を示す。各脂質クラス中の残りの脂肪酸は最も近い内部標準アナログに割り当て、その測定値を割り当てた。各脂質クラスについての総濃度は、その脂質クラスについての全ての分子種の値(測定値および割り当て値)を足すことにより計算した。
【0040】
一実施形態において、表1に示す脂肪酸の組成に従って、10種類の脂質クラスのそれぞれに対して内部標準が提供される。内部標準の脂質クラスを下記表1の第1行目に示し、脂肪酸「R」基を表1の第1列目に示す。表1中、「d」は重水素標識の付加を示す。例えば、16:0−d9とは、9個の重水素が付加されたパルミテートをいう。
【0042】
一実施形態において、ホスファチジルコリンおよびo−ホスファチジルコリンについて例示の内部標準成分が提供される。これらの内部標準用のsn−2位の脂肪酸(sn−2脂肪酸)の組成を表2に示す。内部標準混合物を構成するホスファチジルコリンおよびsn−2脂肪酸の構造を
図2に示す。sn−1位に重水素化パルミテート(16:0)を有し、sn−2位に脂肪酸(「R」と表示)を有するホスファチジルコリンの構造を(A)に示す。sn−1位に重水素化パルミテート(16:0)を有し、sn−2位に例示の脂肪酸としてオレエート(18:1n9)を有するホスファチジルコリンの構造を(B)に示す。ホスファチジルコリンのsn−2位にアシル化するための脂肪酸混合物中の10種類の脂肪酸(16:1n7、18:1n9、18:2n6、18:3n3、20:3n6、20:4n6、20:5n3、22:4n6、22:5n3、22:6n3)の構造を(C)に示す。
【0044】
一実施形態において、例示のリゾホスファチジルコリン内部標準が提供される。構造を
図3に示す。
【0045】
ホスファチジルエタノールアミン内部標準およびp−ホスファチジルエタノールアミン内部標準について、sn−2脂肪酸の組成を表3に示す。内部標準混合物を構成するホスファチジルエタノールアミンおよびsn−2脂肪酸の構造を
図4に示す。sn−1位に重水素化ステアレート(18:0)を有し、sn−2位に脂肪酸(「R」と表示)を有するホスファチジルエタノールアミンの構造を(A)に示す。sn−1位に重水素化ステアレート(18:0)を有し、sn−2位に例示の脂肪酸としてオレエート(18:1n9)を有するホスファチジルエタノールアミンの構造を(B)に示す。ホスファチジルエタノールアミンのsn−2位にアシル化するための脂肪酸ミックス中の8種類の脂肪酸(18:1n9、18:2n6、18:3n3、20:3n6、20:4n6、20:5n3、22:5n3、22:6n3)の構造を(C)に示す。
【0047】
一実施形態において、リゾホスファチジルエタノールアミンについて例示の内部標準が提供される。構造を
図5に示す。
【0048】
一実施形態において、スフィンゴミエリンについて例示の内部標準が提供される。脂肪酸の組成を表4に示す。内部標準混合物を構成するスフィンゴミエリンおよびsn−2脂肪酸の構造を
図6に示す。第1の位置に重水素標識スフィンゴシンを有し、sn−2位に脂肪酸(「R」と表示)を有するスフィンゴミエリンの構造を(A)に示す。第1の位置に重水素標識スフィンゴシンを有し、sn−2位に例示の脂肪酸としてパルミテート(16:0)を有するスフィンゴミエリンの構造を(B)に示す。スフィンゴミエリンのsn−2位にアシル化するための脂肪酸ミックス中の4種類の脂肪酸(16:0、18:1n9、24:0、24:1n9)の構造を(C)に示す。
【0050】
一実施形態において、トリアシルグリセロールについて例示の内部標準が提供される。sn−3脂肪酸の組成を表5に示す。内部標準混合物を構成するトリアシルグリセロールおよびsn−3脂肪酸の構造を
図7に示す。sn−1位に重水素標識パルミテート(16:0)を有し、sn−2位にオレエート(18:1n9)を有し、sn−3位に脂肪酸「R」を有するトリアシルグリセロールの構造を(A)に示す。sn−1位に重水素標識パルミテート(16:0)を有し、sn−2位にオレエート(18:1n9)を有し、sn−3位に例示の脂肪酸としてパルミテート(16:0)有するトリアシルグリセロールの構造を(B)に示す。トリアシルグリセロールのsn−3位を標識するための脂肪酸ミックス中の8種類の脂肪酸(16:0、18:0、18:1n9、18:2n6、18:3n3、20:3n6、20:4n6、22:6n3)の構造を(C)に示す。
【0052】
一実施形態において、ジアシルグリセロールについて例示の内部標準が提供される。sn−2脂肪酸の組成を表6に示す。内部標準混合物を構成するジアシルグリセロールおよびsn−2脂肪酸の構造を
図8に示す。sn−1位に重水素標識パルミテート(16:0)を有し、sn−2位に脂肪酸(「R」と表示)を有するジアシルグリセロールの構造を(A)に示す。sn−1位に重水素標識パルミテート(16:0)を有し、sn−2位に例示の脂肪酸としてパルミテート(16:0)を有するジアシルグリセロールの構造を(B)に示す。ジアシルグリセロールのsn−2位を標識するための脂肪酸混合物中の8種類の脂肪酸(16:0、18:0、18:1n9、18:2n6、18:3n3、20:4n6、20:5n3、22:6n3)の構造を(C)に示す。
【表6】
【0053】
一実施形態において、コレステリルエステルについて例示の内部標準が提供される。脂肪酸の組成を表7に示す。内部標準混合物を構成するコレステリルエステルおよび脂肪酸の構造を
図9に示す。n6位に重水素標識を有し、脂肪酸「R」が水酸基にアシル化したコレステリルエステルの構造を(A)に示す。n6位に重水素標識を有し、例示の脂肪酸としてリノレート(18:2n6)が水酸基にアシル化したコレステリルエステルの構造を(B)に示す。コレステリルエステルの水酸基のアシル化に使用される脂肪酸ミックス中の8種類の脂肪酸(16:0、16:1n7、18:1n9、18:2n6、20:3n6、20:4n6、20:5n3、22:6n3)の構造を(C)に示す。
【0055】
一実施形態において、遊離脂肪酸について例示の内部標準が提供される。脂肪酸の組成を表8に示す。内部標準混合物を構成する遊離脂肪酸の構造を
図10に示す。重水素標識を有する遊離脂肪酸パルミテート(16:0)を(A)に示す。遊離脂肪酸17:1n7の構造を(B)に示す。
【0057】
脂質内部標準の生成方法
本開示の一実施形態において、対象サンプル中の1または2以上の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種の組成を表す内部標準として使用するための1または2以上の脂質分子混合物の合成方法であって、アシル基を少なくとも1つ有する脂質クラスについて、同位体標識された少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を、脂質骨格上の単一位置にアシル化反応を介して付着させるステップ;アシル基を少なくとも1つ有する脂質クラスについて、少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を、同位体標識された脂質骨格上の単一位置にアシル化反応を介して付着させるステップ;および、脂肪酸を少なくとも2つ有する脂質クラスについて、1つの同位体標識された脂肪酸を脂質骨格上の第1の位置にアシル化反応を介して付着させ、かつ、少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を脂質骨格上の別位置にアシル化反応を介して付着させるステップ;のうちの1または2以上を含み、少なくとも2種類の脂肪酸の混合物は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂肪酸を表し、混合物中の各脂肪酸は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種中の脂肪酸の存在比率を表す比率で存在する、方法が提供される。対応する脂質クラスは、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、1−モノアシルグリセロール、リン脂質、ホスファチジルコリン、o−ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、p−ホスファチジルエタノールアミン、コレステリルエステル、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾCDP−ジアシルグリセロール、CDP−ジアシルグリセロール、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、セラミド、ラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、フィトセラミド、6−ヒドロキシセラミド、セレブロシド、ガングリオシド、ワックスエステル、および、ワックスジエステルの1または2以上を含み得る。1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5、表6または表7に記載の1または2以上の脂質分子種混合物を含み得る。1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5、表6または表7に記載の1または2以上の脂質分子種混合物からなり得る。
【0058】
本開示の一実施形態において、対象サンプル中の1または2以上の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種の組成を表す1または2以上の脂質分子混合物の合成方法であって、アシル基を少なくとも2つ有する脂質クラスについて、同位体標識された脂肪酸を、脂質骨格上の第1の位置にアシル化反応を介して付着させるステップ;および、少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を、脂質骨格上の別位置にアシル化反応を介して付着させるステップを含み、脂肪酸の混合物は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂肪酸を表し、脂肪酸の混合物における各脂肪酸は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子中の脂肪酸の存在比率を表す比率で存在する、方法が提供される。本方法において、アシル基を少なくとも2つ有する1または2以上の脂質クラスは、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、リン脂質、ホスファチジルコリン、o−ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、p−ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、CDP−ジアシルグリセロール、セラミド、ラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、フィトセラミド、6−ヒドロキシセラミド、セレブロシド、ガングリオシド、または、ワックスジエステルを含み得る。1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5または表6に記載の1または2以上の脂質分子種混合物を含み得る。1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5または表6に記載の1または2以上の脂質分子種混合物からなり得る。
【0059】
本開示の一実施形態において、対象サンプル中の1または2以上の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種の組成を表す1または2以上の脂質分子混合物の合成方法であって、アシル基を少なくとも1つ有する脂質クラスについて、少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を、同位体標識された脂質骨格上の単一位置にアシル化反応を介して付着させるステップを含み、脂肪酸の混合物は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂肪酸を表し、脂肪酸の混合物における各脂肪酸は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種中の脂肪酸の存在比率を表す比率で存在する、方法が提供される。本方法において、アシル基を少なくとも1つ有する1または2以上の脂質クラスは、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、1−モノアシルグリセロール、リン脂質、ホスファチジルコリン、o−ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、p−ホスファチジルエタノールアミン、コレステリルエステル、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾCDP−ジアシルグリセロール、CDP−ジアシルグリセロール、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、セラミド、ラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、フィトセラミド、6−ヒドロキシセラミド、セレブロシド、ガングリオシド、ワックスエステル、または、ワックスジエステルを含み得る。1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5、表6または表7に記載の1または2以上の脂質分子種混合物を含み得る。1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5、表6または表7に記載の1または2以上の脂質分子種混合物からなり得る。
【0060】
上述の各方法において、対象サンプルは、脂質分子から構成される複合混合物や、植物サンプルまたは動物サンプルなどの生体サンプルであり得る。動物サンプルは、ヒト、マウス、ヒト以外の霊長類、ウサギなどの哺乳類から由来するものでもよく、あるいは、ゼブラフィッシュサンプルなどの非哺乳類サンプルでもよい。対象の生体サンプルは、血液、血漿、血清、単離リポタンパク質分画、唾液、尿、リンパ液、脳脊髄液、組織サンプル、細胞サンプルまたは皮膚サンプルを含み得る。
【0061】
上述の各方法は、混合物中の各脂肪酸の量を定量するために脂肪酸の定量分析を行うステップを更に含み得る。
【0062】
上述の各方法において、脂肪酸は飽和脂肪酸であり得る。
【0063】
上述の各方法において、同位体標識は、
2H、
13Cまたは
15Nを含む、任意の同位体標識を含み得る。
【0064】
上述の各方法の一実施形態において、脂質骨格上の第1の位置はsn−1位であり得る。脂質骨格上の第1の位置はsn−1位であり脂質骨格上の別位置はsn−2位またはsn−3位であり得る。代替的の一実施形態において、脂質骨格上の第1の位置はsn−2位であり得る。第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位またはsn−3位であり得る。他の一実施形態において、脂質骨格上の第1の位置はsn−3位であり得る。第1の位置はsn−3位であり別位置はsn−1位またはsn−2位であり得る。
【0065】
上述の各方法において、アシル基を少なくとも2つ有する1または2以上の脂質クラスは、ホスファチジルコリンまたはo−ホスファチジルコリンからなり得、第1の位置はsn−1位であり別位置はsn−2位であり得るか、あるいは、第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位であり得、重水素標識ヘキサデカノイル−d9(16:0−d9)が第1の位置に存在し得、別位置の脂肪酸の混合物は、9Z−ヘキサデセノイル(16:1n7)、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノイル(18:2n6)、9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエノイル(18:3n3)、8Z,11Z,14Z−エイコサトリエノイル(20:3n6)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノイル(20:4n6)、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−エイコサペンタエノイル(20:5n3)、7Z,10Z,13Z,16Z−ドコサテトラエノイル(22:4n6)、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサペンタエノイル(22:5n3)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノイル(22:6n3)を含み得る。sn−2位の脂肪酸の混合物は表2に示す比率で存在し得る。
【0066】
上述の各方法において、アシル基を少なくとも2つ有する1または2以上の脂質クラスは、ホスファチジルエタノールアミンおよびp−ホスファチジルエタノールアミンからなり得、第1の位置はsn−1位であり別位置はsn−2位であり得るか、あるいは、第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位であり得、重水素標識オクタデカノイル−d9(18:0−d9)が第1の位置に存在し得、別位置の脂肪酸の混合物は、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノイル(18:2n6)、9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエノイル(18:3n3)、8Z,11Z,14Z−エイコサトリエノイル(20:3n6)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノイル(20:4n6)、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−エイコサペンタエノイル(20:5n3)、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサペンタエノイル(22:5n3)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノイル(22:6n3)を含み得る。別位置の脂肪酸の混合物は表3に示す比率で存在し得る。
【0067】
上述の各方法において、アシル基を少なくとも2つ有する1または2以上の脂質クラスはスフィンゴミエリンからなり得、重水素標識スフィンゴシンが第1の位置に存在し得、別位置の脂肪酸の混合物は、ヘキサデカノイル(16:0)、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、テトラコサノイル(24:0)、および、15Z−テトラコセノイル(24:1n9)を含み得る。別位置の脂肪酸の混合物は表4に示す比率で存在し得る。
【0068】
上述の各方法において、アシル基を少なくとも2つ有する1または2以上の脂質クラスはジアシルグリセロールからなり得、第1の位置はsn−1位であり別位置はsn−2位であり得るか、あるいは、第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位であり得、重水素標識パルミテート(16:0−d9)が第1の位置に存在し得、別位置の脂肪酸の混合物は、ヘキサデカノイル(16:0)、オクタデカノイル(18:0)、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノイル(18:2n6)、9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエノイル(18:3n3)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノイル(20:4n6)、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−エイコサペンタエノイル(20:5n3)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノイル(22:6n3)を含み得る。別位置の脂肪酸の混合物は表6に示す比率で存在し得る。
【0069】
上述の各方法において、アシル基を少なくとも2つ有する1または2以上の脂質クラスはトリアシルグリセロールからなり得、第1の位置はsn−1位であり別位置はsn−2位またはsn−3位であり得るか、第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位またはsn−3位であり得るか、あるいは、第1の位置はsn−3位であり別位置はsn−1位またはsn−2位であり得、重水素標識パルミテート(16:0−d9)が第1の位置に存在し得、オレエート(18:1n9)が1つの別位置に存在し得、他の別位置の脂肪酸の混合物が、ヘキサデカノイル(16:0)、オクタデカノイル(18:0)、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノイル(18:2n6)、9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエノイル(18:3n3)、8Z,11Z,14Z−エイコサトリエノイル(20:3n6)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノイル(20:4n6)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノイル(22:6n3)を含み得る。別位置の脂肪酸の混合物は、表5に示す比率で存在し得る。
【0070】
上述の各方法において、アシル基を少なくとも1つ有する1または2以上の脂質クラスはコレステリルエステルからなり得、単一位置は水酸基であり得、水酸基に付着する脂肪酸の混合物は、ヘキサデカノエート(16:0)、9Z−ヘキサデカノエート(16:1n7)、9Z−オクタデセノエート(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノエート(18:2n6)、8Z,11Z,14Z−エイコサトリエノエート(20:3n6)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノエート(20:4n6)、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−エイコサペンタエノエート(20:5n3)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノエート(22:6n3)を含み得る。水酸基における脂肪酸の混合物は、表7に示す比率で存在し得る。
【0071】
脂質内部標準として使用するための組成物
本開示の一実施形態において、対象サンプル中の1または2以上の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種の組成を表す1または2以上の脂質分子混合物を含む、内部標準として使用するための組成物であって、各脂質分子混合物は、脂質骨格上の単一位置に少なくとも2種類の同位体標識された脂肪酸の混合物を有する脂質骨格であって、アシル基を少なくとも1つ有する脂質クラスのための脂質骨格;脂質骨格上の単一位置に少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を有する同位体標識された脂質骨格であって、アシル基を少なくとも1つ有する脂質クラスのための脂質骨格;および、脂質骨格上の第1の位置に単一の同位体標識された脂肪酸を有し、かつ脂質骨格上の別位置に少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を有する脂質骨格であって、脂肪酸を少なくとも2つ有する脂質クラスのための脂質骨格;のうちの1または2以上を含み、少なくとも2種類の脂肪酸の混合物は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂肪酸を表し、混合物中の各脂肪酸は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種中の脂肪酸の存在比率を表す比率で存在する、組成物が提供される。脂質クラスは、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、1−モノアシルグリセロール、リン脂質、ホスファチジルコリン、o−ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、p−ホスファチジルエタノールアミン、コレステリルエステル、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾCDP−ジアシルグリセロール、CDP−ジアシルグリセロール、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、セラミド、ラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、フィトセラミド、6−ヒドロキシセラミド、セレブロシド、ガングリオシド、ワックスエステル、および、ワックスジエステルの1または2以上を含み得る。1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5、表6または表7に記載の1または2以上の脂質分子種混合物を含み得る。1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5、表6または表7に記載の1または2以上の脂質分子種混合物からなり得る。
【0072】
本開示の一実施形態において、対象サンプル中の1または2以上の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種の組成を表す1または2以上の脂質分子混合物を含む、内部標準として使用するための組成物であって、各脂質分子混合物は、脂質骨格上の第1の位置に同位体標識された脂肪酸を有する脂質骨格であって、アシル基を少なくとも2つ有する脂質クラスのための脂質骨格;および、脂質骨格上の別位置に存在する少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を含み、脂肪酸の混合物は、対象サンプル中の脂質クラスに存在する脂肪酸を表し、混合物中の各脂肪酸は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種中の脂肪酸の存在比率を表す比率で存在する、組成物が提供される。本組成物において、脂質クラスは、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、リン脂質、ホスファチジルコリン、o−ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、p−ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、CDP−ジアシルグリセロール、セラミド、ラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、フィトセラミド、6−ヒドロキシセラミド、セレブロシド、ガングリオシド、および、ワックスジエステルの1または2以上を含み得る。1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5または表6に記載の1または2以上の脂質分子種混合物を含み得る。1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5または表6に記載の1または2以上の脂質分子種混合物からなり得る。
【0073】
本開示の一実施形態において、対象サンプル中の1または2以上の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種の組成を表す1または2以上の脂質分子混合物を含む、内部標準として使用するための組成物であって、各脂質分子混合物は、1または2以上の同位体標識を有する脂質骨格であって、アシル基を少なくとも1つ有する脂質クラスのための脂質骨格;および、脂質骨格上の単一位置に存在する少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を含み、脂肪酸の混合物は、対象サンプル中の脂質クラスに存在する脂肪酸を表し、混合物中の各脂肪酸は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種中の脂肪酸の存在比率を表す比率で存在する、組成物が提供される。本組成物において、脂質クラスは、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、1−モノアシルグリセロール、リン脂質、ホスファチジルコリン、o−ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、p−ホスファチジルエタノールアミン、コレステリルエステル、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾCDP−ジアシルグリセロール、CDP−ジアシルグリセロール、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、セラミド、ラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、フィトセラミド、6−ヒドロキシセラミド、セレブロシド、ガングリオシド、ワックスエステル、および、ワックスジエステルの1または2以上を含み得る。1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5、表6または表7に記載の1または2以上の脂質分子種混合物を含み得る。1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5、表6または表7に記載の1または2以上の脂質分子種混合物からなり得る。
【0074】
上記各組成物において、対象サンプルは、脂質分子から構成される複合混合物や、植物サンプルまたは動物サンプルなどの生体サンプルであり得る。動物サンプルは、ヒト、マウス、ヒト以外の霊長類、ウサギなどの哺乳類から由来するものでもよく、あるいは、ゼブラフィッシュサンプルなどの非哺乳類サンプルでもよい。対象の生体サンプルは、血液、血漿、血清、単離リポタンパク質分画、唾液、尿、リンパ液、脳脊髄液、組織サンプル、細胞サンプルまたは皮膚サンプルを含み得る。
【0075】
上記各組成物において、同位体標識は、
2H、
13Cまたは
15Nを含む、任意の同位体標識を含み得る。
【0076】
上記各組成物において、脂肪酸は飽和脂肪酸であり得る。
【0077】
上記各組成物において、脂質骨格上の第1の位置はsn−1位であり得る。脂質骨格上の第1の位置はsn−1位であり脂質骨格上の別位置はsn−2位またはsn−3位であり得る。代替的な一実施形態において、脂質骨格上の第1の位置はsn−2位であり得る。第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位またはsn−3位であり得る。他の一実施形態において、脂質骨格上の第1の位置はsn−3位であり得る。第1の位置はsn−3位であり別位置はsn−1位またはsn−2位であり得る。
【0078】
上記各組成物において、脂質クラスの1つはホスファチジルコリンまたはo−ホスファチジルコリンからなり得、第1の位置はsn−1位であり別位置はsn−2位であり得るか、あるいは、第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位であり得、重水素標識ヘキサデカノイル−d9(16:0−d9)が第1の位置に存在し得、別位置の脂肪酸の混合物は、9Z−ヘキサデセノイル(16:1n7)、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノイル(18:2n6)、9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエノイル(18:3n3)、8Z,11Z,14Z−エイコサトリエノイル(20:3n6)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノイル(20:4n6)、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−エイコサペンタエノイル(20:5n3)、7Z,10Z,13Z,16Z−ドコサテトラエノイル(22:4n6)、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサペンタエノイル(22:5n3)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノイル(22:6n3)を含み得る。別位置の脂肪酸の混合物は表2に示す比率で存在し得る。
【0079】
上記各組成物において、脂質クラスの1つはホスファチジルエタノールアミンおよびp−ホスファチジルエタノールアミンからなり得、第1の位置はsn−1位であり別位置はsn−2位であり得るか、あるいは、第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位であり得、重水素標識オクタデカノイル−d9(18:0−d9)が第1の位置に存在し得、別位置の脂肪酸の混合物は、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノイル(18:2n6)、9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエノイル(18:3n3)、8Z,11Z,14Z−エイコサトリエノイル(20:3n6)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノイル(20:4n6)、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−エイコサペンタエノイル(20:5n3)、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサペンタエノイル(22:5n3)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノイル(22:6n3)を含み得る。別位置の脂肪酸の混合物は表3に示す比率で存在し得る。
【0080】
上記各組成物において、脂質クラスの1つはスフィンゴミエリンからなり得、第1の位置に重水素標識スフィンゴシンが存在し得、別位置の脂肪酸の混合物は、ヘキサデカノイル(16:0)、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、テトラコサノイル(24:0)、および、15Z−テトラコセノイル(24:1n9)を含み得る。別位置の脂肪酸の混合物は表4に示す比率で存在し得る。
【0081】
上記各組成物において、脂質クラスの1つはジアシルグリセロールからなり得、第1の位置はsn−1位であり別位置はsn−2位であり得るか、あるいは、第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位であり得、重水素標識パルミテート(16:0−d9)が第1の位置に存在し得、別位置の脂肪酸の混合物は、ヘキサデカノイル(16:0)、オクタデカノイル(18:0)、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノイル(18:2n6)、9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエノイル(18:3n3)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノイル(20:4n6)、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−エイコサペンタエノイル(20:5n3)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノイル(22:6n3)を含み得る。別位置の脂肪酸の混合物は表6に示す比率で存在し得る。
【0082】
上記各組成物において、脂質クラスの1つはトリアシルグリセロールからなり得、第1の位置はsn−1位であり別位置はsn−2位またはsn−3位であり得るか、第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位またはsn−3位であり得るか、あるいは、第1の位置はsn−3位であり別位置はsn−1位またはsn−2位であり得、重水素標識パルミテート(16:0−d9)が第1の位置に存在し得、オレエート(18:1n9)がsn−2位に存在し得、別位置の脂肪酸の混合物は、ヘキサデカノイル(16:0)、オクタデカノイル(18:0)、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノイル(18:2n6)、9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエノイル(18:3n3)、8Z,11Z,14Z−エイコサトリエノイル(20:3n6)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノイル(20:4n6)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノイル(22:6n3)を含み得る。別位置の脂肪酸の混合物は表5に示す比率で存在し得る。
【0083】
上記各組成物において、脂質クラスの1つはコレステリルエステルからなり得、単一位置は水酸基であり得、水酸基に付着する脂肪酸の混合物は、ヘキサデカノエート(16:0)、9Z−ヘキサデカノエート(16:1n7)、9Z−オクタデセノエート(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノエート(18:2n6)、8Z,11Z,14Z−エイコサトリエノエート(20:3n6)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノエート(20:4n6)、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−エイコサペンタエノエート(20:5n3)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノエート(22:6n3)を含み得る。水酸基における脂肪酸の混合物は表7に示す比率で存在し得る。
【0084】
対象サンプル中の脂質分子の検出および定量方法
本開示の一実施形態において、対象サンプル中に存在する脂質分子を検出または定量する方法であって、i)対象サンプル中の1または2以上の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種の組成を表す1または2以上の脂質分子混合物を有する既知量の組成物を対象サンプルに添加するステップであって、該組成物は、a)脂質骨格上の単一位置に少なくとも2種類の同位体標識された脂肪酸の混合物を有する脂質骨格であって、アシル基を少なくとも1つ有する脂質クラスのための脂質骨格;b)脂質骨格上の単一位置に少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を有する同位体標識された脂質骨格であって、アシル基を少なくとも1つ有する脂質クラスのための脂質骨格;および、c)脂質骨格上の第1の位置に単一の同位体標識された脂肪酸を有し、かつ脂質骨格上の別位置に少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を有する脂質骨格であって、脂肪酸を少なくとも2つ有する脂質クラスのための脂質骨格;のうちの1または2以上を含み、少なくとも2種類の脂肪酸の混合物は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂肪酸を表し、混合物中の各脂肪酸は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種中の脂肪酸の存在比率を表す比率で存在する、ステップ;および、ii)脂質分子種の組成を表す1または2以上の脂質分子混合物を有する組成物を内部標準として使用して、対象サンプル中の1または2以上の対応する脂質クラスのそれぞれに存在する脂質分子種を検出または定量するステップ、を含む方法が提供される。
【0085】
本開示の一実施形態において、対象サンプル中に存在する脂質分子を検出または定量する方法であって、対象サンプル中の1または2以上の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種の組成を表す1または2以上の脂質分子混合物を有する既知量の組成物を対象サンプルに添加するステップであって、各脂質分子混合物は、i)脂質骨格上の第1の位置に同位体標識された脂肪酸を有する脂質骨格であって、アシル基を少なくとも2つ有する脂質クラスのための脂質骨格;および、ii)脂質骨格上の別位置に存在する少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を含み、脂肪酸の混合物は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂肪酸を表し、混合物中の各脂肪酸は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種中の脂肪酸の存在比率を表す比率で存在する、ステップ;および、脂質分子種の組成を表す脂質分子混合物を内部標準として使用して、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種を検出または定量するステップ、を含む方法が提供される。
【0086】
本開示の一実施形態において、対象サンプル中に存在する脂質分子を検出または定量する方法であって、対象サンプル中の1または2以上の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種の組成を表す1または2以上の脂質分子混合物を有する既知量の組成物を対象サンプルに添加するステップであって、各脂質分子混合物は、i)1または2以上の同位体標識を有する脂質骨格であって、アシル基を少なくとも1つ有する脂質クラスのための脂質骨格;および、ii)脂質骨格上の単一位置に存在する少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を含み、脂肪酸の混合物は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂肪酸を表し、混合物中の各脂肪酸は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種中の脂肪酸の存在比率を表す比率で存在する、ステップ;および、脂質分子種の組成を表す脂質分子混合物を内部標準として使用して、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種を検出または定量するステップ、を含む方法が提供される。
【0087】
対象サンプル中に存在する脂質分子種を検出および/または定量する方法は、質量分析(MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イソクラティックHPLC、グラジエントHPLC、順相クロマトグラフィー、逆相HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、マイクロフルイディクス技術、クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、および、これらの組み合わせを含み得る。生体サンプル中に存在する脂質分子種を検出および/または定量する方法は、質量分析(MS)の使用を含み得る。
【0088】
対象サンプル中に存在する脂質分子種を検出および/または定量する方法において、対象サンプルは、脂質分子から構成される複合混合物や、植物サンプルまたは動物サンプルなどの生体サンプルであり得る。動物サンプルは、ヒト、マウス、ヒト以外の霊長類、ウサギなどの哺乳類から由来するものでもよく、あるいは、ゼブラフィッシュサンプルなどの非哺乳類サンプルでもよい。対象の生体サンプルは、血液、血漿、血清、単離リポタンパク質分画、唾液、尿、リンパ液、脳脊髄液、組織サンプル、細胞サンプルまたは皮膚サンプルを含み得る。
【0089】
対象サンプル中に存在する脂質分子種を検出および/または定量する方法において、1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5、表6または表7に記載の1または2以上の脂質分子種混合物を含み得る。1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5、表6または表7に記載の1または2以上の脂質分子種混合物からなり得る。
【0090】
キット
一般的に、本開示のキットは、1または2以上の内部標準と、対象サンプル中の脂質を検出および/または定量するために内部標準を使用するための指示書とを含む。キットは、1または2以上の対照サンプルおよびサンプル収集レセプタクルを更に含み得る。キット中の各内部標準組成物は、1または2以上の脂質クラスの様々な組み合わせで一緒にパッケージ化され得るか、あるいは、それぞれ別個のバイアルまたは容器内にパッケージ化され得る。キットは、調製・使用のための指示を記載したラベルおよび/または添付文書、試料収集用レセプタクル、輸送用容器、および/または、出荷用封筒を含み得る。別個に梱包される更なるキットのコンポーネントには、対象サンプル中の脂質を検出および/または定量するためのバッファーおよび他の試薬が含まれ得る。
【0091】
上記キットは1または2以上の内部標準混合物を含み得る。一実施形態において、キットは、同位体標識された脂肪酸を含む内部標準混合物であって、対象サンプル中の各脂質クラスに由来する、少なくとも1つの同位体標識された脂肪酸が存在するものを含み得る。一実施形態において、キットは、表1に示す脂質クラスおよび同位体標識された脂肪酸を含む内部標準セットを含み得る。更なる一実施形態において、内部標準セットにおける同位体標識された脂肪酸は表1に示す比率で存在する。
【0092】
上記キットは全量容器(volumetric container)を更に含み得る。全量容器は、液体サンプルの保持に適した任意の容器(すなわち、カップ、バイアル、マイクロ遠心チューブ、マイクロタイタープレートなど)であり得る。全量容器は、サンプルまたは他の試薬の所望量を計量するのに有用であろう目盛りを有し得る。全量容器は任意の材料(例えば、プラスチック、アルミニウム、ステンレス鋼)からなり得る。全量容器の内部容積は収集対象のサンプルの種類に依存する。いくつかの実施形態において、内部標準材料はキャップに付着され得る。いくつかの実施形態において、内部標準材料は全量容器本体内部にコーティングされ得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、全量容器はまた、想定されるサンプル収集の種類に応じて構成されて試料の収集に使用され得る。他の態様において、試料収集レセプタクルがキット中に別個に提供され、これはカップ、バイアル、マイクロ遠心チューブの形態であり得る。
【0094】
上記キットは任意で輸送用容器を含み得る。輸送用容器はサンプルの輸送に適した任意の構造であり得る。この容器はサンプル材料を容器中に詰めることができるように構成され、また、シールされ得る。
【0095】
上記キットは任意で抽出溶液を含み得る。
【0096】
本開示の一実施形態において、i)内部標準として使用するための1または2以上の脂質分子混合物であって、1または2以上の脂質分子混合物は、それぞれ、対象サンプル中の1または2以上の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種の組成を表し、各脂質分子混合物は、脂質骨格上の単一位置に少なくとも2種類の同位体標識された脂肪酸の混合物を有する脂質骨格であって、アシル基を少なくとも1つ有する脂質クラスのための脂質骨格;脂質骨格上の単一位置に少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を有する同位体標識された脂質骨格であって、アシル基を少なくとも1つ有する脂質クラスのための脂質骨格;および、脂質骨格上の第1の位置に単一の同位体標識された脂肪酸を有し、かつ脂質骨格上の別位置に少なくとも2種類の脂肪酸の混合物を有する脂質骨格であって、アシル基を少なくとも2つ有する脂質クラスのための脂質骨格;のうちの1または2以上を含み、少なくとも2種類の脂肪酸の混合物は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂肪酸を表し、混合物中の各脂肪酸は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種中の脂肪酸の存在比率を表す比率で存在する、1または2以上の脂質分子混合物と、ii)対象サンプル中の脂質クラスに存在する脂質分子種を検出または定量するために、1または2以上の脂質分子混合物を内部標準として使用するための指示と、を含むキットが提供される。脂質クラスは、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、1−モノアシルグリセロール、リン脂質、ホスファチジルコリン、o−ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、p−ホスファチジルエタノールアミン、コレステリルエステル、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾCDP−ジアシルグリセロール、CDP−ジアシルグリセロール、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、セラミド、ラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、フィトセラミド、6−ヒドロキシセラミド、セレブロシド、ガングリオシド、ワックスエステル、および、ワックスジエステルの1または2以上を含み得る。
【0097】
本開示の一実施形態において、i)内部標準として使用するための1または2以上の脂質分子混合物であって、1または2以上の脂質分子混合物は、それぞれ、対象サンプル中の1または2以上の対応する脂質クラスのそれぞれに存在する脂質分子種の組成を表し、各脂質分子混合物は、脂質骨格上の第1の位置に同位体標識された脂肪酸と、脂質骨格上の別位置に存在する少なくとも2種類の脂肪酸の混合物とを含む脂質骨格であって、アシル基を少なくとも2つ有する脂質クラスのための脂質骨格;または、1または2以上の同位体標識と、脂質骨格上の単一位置に存在する少なくとも2種類の脂肪酸の混合物とを有する脂質骨格であって、アシル基を少なくとも1つ有する脂質クラスのための脂質骨格を含み、脂肪酸の混合物は、対象サンプル中の脂質クラスに存在する脂肪酸を表し、混合物中の各脂肪酸は、対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種中の脂肪酸の存在比率を表す比率で存在する、1または2以上の脂質分子混合物と、ii)対象サンプル中の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種を検出または定量するために、1または2以上の脂質分子混合物を内部標準として使用するための指示と、を含むキットが提供される。アシル基を少なくとも2つ有する脂質クラスは、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、リン脂質、ホスファチジルコリン、o−ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、p−ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、CDP−ジアシルグリセロール、セラミド、ラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、フィトセラミド、6−ヒドロキシセラミド、セレブロシド、ガングリオシド、および、ワックスジエステルの1または2以上を含み得る。アシル基を少なくとも1つ有する脂質クラスは、トリアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、リン脂質、ホスファチジルコリン、o−ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、p−ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、CDP−ジアシルグリセロール、セラミド、ラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、フィトセラミド、6−ヒドロキシセラミド、セレブロシド、ガングリオシド、ワックスジエステル、コレステリルエステル、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾCDP−ジアシルグリセロール、ワックスエステル、1−モノアシルグリセロールの1または2以上を含み得る。
【0098】
上記各キットは、対象サンプル中の2以上の対応する脂質クラスに存在する脂質分子種の組成を表す2以上の脂質分子混合物を含み得る。2以上の脂質分子混合物は単一のコンポーネントとしてパッケージ化することができる。また、2以上の脂質分子混合物はそれぞれ別個のコンポーネントとしてパッケージ化することもできる。
【0099】
上記各キットは検出および定量用の試薬を更に含み得る。
【0100】
上記各キットは、既知濃度の脂質分子種の組成物を有する対照サンプルを更に有し得る。
【0101】
上記各キットは、対象サンプル中の遊離脂肪酸の組成を表す、内部標準として使用するための遊離脂肪酸混合物を更に有し得る。キットに使用されるこれらの遊離脂肪酸は表8に示す遊離脂肪酸を含み得る。
【0102】
上記各キットにおいて、対象サンプルは、脂質分子から構成される複合混合物や、植物サンプルまたは動物サンプルなどの生体サンプルであり得る。動物サンプルは、ヒト、マウス、ヒト以外の霊長類、ウサギなどの哺乳類から由来するものでもよく、あるいは、ゼブラフィッシュサンプルなどの非哺乳類サンプルでもよい。対象の生体サンプルは、血液、血漿、血清、単離リポタンパク質分画、唾液、尿、リンパ液、脳脊髄液、組織サンプル、細胞サンプルまたは皮膚サンプルを含み得る。
【0103】
上記各キットにおいて、脂肪酸は飽和脂肪酸であり得る。
【0104】
上記各キットにおいて、同位体標識は
2H、
13Cまたは
15Nを含み得る。
【0105】
上記各キットにおいて、1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5、表6、表7および表8の1または2以上に記載の脂質分子種混合物を含み得る。上記各キットにおいて、1または2以上の脂質分子混合物のそれぞれにおける1または2以上の脂肪酸混合物は、表1、表2、表3、表4、表5、表6、表7および表8の1または2以上に記載の脂質分子種混合物からなり得る。
【0106】
上記キットにおいて、脂質骨格上の第1の位置はsn−1位であり得る。脂質骨格上の第1の位置はsn−1位であり脂質骨格上の別位置はsn−2位またはsn−3位であり得る。
【0107】
上記キットにおいて、脂質クラスの1つはホスファチジルコリンまたはo−ホスファチジルコリンからなり得、第1の位置はsn−1位であり別位置はsn−2位であり得るか、あるいは、第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位であり得、重水素標識ヘキサデカノイル−d9(16:0−d9)が第1の位置に存在し得、別位置の脂肪酸の混合物は、9Z−ヘキサデセノイル(16:1n7)、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、9Z、12Z−オクタデカジエノイル(18:2n6)、9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエノイル(18:3n3)、8Z,11Z,14Z−エイコサトリエノイル(20:3n6)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノイル(20:4n6)、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−エイコサペンタエノイル(20:5n3)、7Z,10Z,13Z,16Z−ドコサテトラエノイル(22:4n6)、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサペンタエノイル(22:5n3)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノイル(22:6n3)を含み得る。別位置の脂肪酸基の混合物は表2に示す比率で存在し得る。
【0108】
上記キットにおいて、脂質クラスの1つはホスファチジルエタノールアミンおよびp−ホスファチジルエタノールアミンからなり得、第1の位置はsn−1位であり別位置はsn−2位であり得るか、あるいは、第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位であり得、重水素標識オクタデカノイル−d9(18:0−d9)が第1の位置に存在し得、別位置の脂肪酸の混合物は、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノイル(18:2n6)、9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエノイル(18:3n3)、8Z,11Z,14Z−エイコサトリエノイル(20:3n6)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノイル(20:4n6)、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−エイコサペンタエノイル(20:5n3)、7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサペンタエノイル(22:5n3)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノイル(22:6n3)を含み得る。別位置の脂肪酸基の混合物は表3に示す比率で存在し得る。
【0109】
上記キットにおいて、脂質クラスの1つはスフィンゴミエリンからなり得、第1の位置に重水素標識スフィンゴシンが存在し得、別位置の脂肪酸の混合物は、ヘキサデカノイル(16:0)、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、テトラコサノイル(24:0)、および、15Z−テトラコセノイル(24:1n9)を含み得る。別位置の脂肪酸基の混合物は表4に示す比率で存在し得る。
【0110】
上記キットにおいて、脂質クラスの1つはジアシルグリセロールからなり得、第1の位置はsn−1位であり別位置はsn−2位であり得るか、あるいは、第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位であり得、重水素標識パルミテート(16:0−d9)が第1の位置に存在し得、別位置の脂肪酸基の混合物は、ヘキサデカノイル(16:0)、オクタデカノイル(18:0)、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノイル(18:2n6)、9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエノイル(18:3n3)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノイル(20:4n6)、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−エイコサペンタエノイル(20:5n3)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノイル(22:6n3)を含み得る。別位置の脂肪酸基の混合物は表6に示す比率で存在し得る。
【0111】
上記キットにおいて、脂質クラスの1つはトリアシルグリセロールからなり得、第1の位置はsn−1位であり別位置はsn−2位またはsn−3位であり得るか、第1の位置はsn−2位であり別位置はsn−1位またはsn−3位であり得るか、あるいは、第1の位置はsn−3位であり別位置はsn−1位またはsn−2位であり得、重水素標識パルミテート(16:0−d9)が第1の位置に存在し得、オレエート(18:1n9)が1つの別位置に存在し得、他の別位置の脂肪酸基の混合物は、ヘキサデカノイル(16:0)、オクタデカノイル(18:0)、9Z−オクタデセノイル(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノイル(18:2n6)、9Z,12Z,15Z−オクタデカトリエノイル(18:3n3)、8Z,11Z,14Z−エイコサトリエノイル(20:3n6)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノイル(20:4n6)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノイル(22:6n3)を含み得る。別位置の脂肪酸基の混合物は表5に示す比率で存在し得る。
【0112】
上記キットにおいて、脂質クラスの1つは、コレステリルエステル、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジン酸、リゾCDP−ジアシルグリセロール、ワックスエステル、または、1−モノアシルグリセロールを含み得る。
【0113】
上記キットにおいて、脂質クラスの1つはコレステリルエステルからなり得、単一位置は水酸基であり得、水酸基に付着する脂肪酸の混合物は、ヘキサデカノエート(16:0)、9Z−ヘキサデカノエート(16:1n7)、9Z−オクタデセノエート(18:1n9)、9Z,12Z−オクタデカジエノエート(18:2n6)、8Z,11Z,14Z−エイコサトリエノエート(20:3n6)、5Z,8Z,11Z,14Z−エイコサテトラエノエート(20:4n6)、5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−エイコサペンタエノエート(20:5n3)、および、4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Z−ドコサヘキサエノエート(22:6n3)を含み得る。水酸基におけるアシル基の混合物は表7に示す比率で存在し得る。
【0114】
脂質分子の測定方法
脂質代謝物含有量または脂質分子含有量のアッセイは、体液サンプル(例えば、血液、血漿、尿、脳脊髄液(CSF))、組織サンプル、細胞サンプル、皮膚サンプル、溶液、複合混合物、in vitro培養細胞、および、細胞培地などの任意のサンプルタイプについて実施され得る。いくつかの実施形態において、脂質分子の量は、脂質の複合混合物、血液、血漿、血清、単離リポタンパク質分画、唾液、尿、リンパ液、および、脳脊髄液からなる群から選択される1または2以上のサンプルから決定される。いくつかの実施形態において、アッセイは、全血液、血漿、血清または単離リポタンパク質分画について行われ得る。またいくつかの実施形態において、1または2以上のサンプルは血漿または血清である。
【0115】
いくつかの実施形態において、複数種の脂質分子が同一サンプル中で測定される。いくつかの他の実施形態において、複数の脂質分子はそれぞれ異なるサンプルから測定される。複数のサンプルを使用する場合、これらのサンプルは、対象の同一の体液から得られたものでも、異なる体液から得られたものでもよい。
【0116】
脂質分子および他のバイオマーカーは当業者に公知の方法により容易に単離および/または定量され得る。これらの方法には、限定されないが、質量分析(MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イソクラティックHPLC、グラジエントHPLC、順相クロマトグラフィー、逆相HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、マイクロフルイディクス技術、クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、固定化金属イオン親和性クロマトグラフィー(IMAC)、親和性クロマトグラフィー、免疫アッセイ、および/または、比色アッセイを利用する方法が含まれる。いくつかの実施形態において、本発明の方法はMSを利用して脂質分子含有量を決定する。
【0117】
脂肪酸メチルエステル(FAME)分析を行うために、クロロホルム:メタノール(2:1 v/v)を使用したFolch et al.(J Biol Chem 226:497−509)の方法により脂質を抽出した。中性脂質は、固相クロマトグラフィーにより極性脂質から単離した。Agilent Technologies 1100 Series LCを使用して極性脂質分画を個々の脂質クラスに分離し、次いで、収集して各脂質クラスの分画を脂肪酸分析した。石油エーテル/ジエチルエーテル/酢酸(80:20:1)溶媒系を用いた薄層クロマトグラフィーにより中性脂質を個々の脂質クラスに分離し、各脂質クラスの分画を収集して脂肪酸分析した。各脂質クラスについて、封止バイアルに入れた1%硫酸メタノール溶液中、窒素雰囲気下、100℃で45分間エステル交換を行った。得られた脂肪酸メチルエステルを、0.05%ブチル化ヒドロキシトルエンを含むヘキサンを用いて混合物から抽出し、このヘキサン抽出物を窒素下で封止してGC分析用サンプルを調製した。30m DB 88キャピラリーカラム(Agilent Technologies)および水素炎イオン化検出器を装着したキャピラリーGC(Agilent Technologies 6890 Series GC)により、脂肪酸メチルエステルを単離・定量した。
【0118】
様々な分析方法が当業者に周知であり、これらは、その内容全体を本願明細書に援用する下記文献に更に記載されている。
【0119】
質量分析(MS)の文献:Cyr D, et al. A GCIMS validated method for the nanomolar range determination of succinylacetone in amniotic fluid and plasma: an analytical tool for tyrosinemia type I. J Chromatogr B Analyt Techno) Biomed Life Sci. 2006 Feb 17;832(1):24- 9; Vogeser M. Abstract Liquid chromatography-tandem mass spectrometry--application in the clinical laboratory. Clin Chern Lab Med. 2003 Feb;41(2):117-26
【0120】
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【0121】
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【0122】
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【0123】
クロマトグラフィーの文献: Paterson S, et al. Validation of techniques to detect illicit heroin use in patients prescribed pharmaceutical heroin for the management of opioid dependence. Addiction. 2005 Dec; 1 00( 12): 1832-9; Bottcher M, et al. Evaluation of buprenorphine CEDIA assay versus GC-MS and ELISA using urine samples from patients in substitution treatment. J Anal Toxicol. 2005 Nov-Dec;29(8):769-76; Julak J. Chromatographic analysis in bacteriologic diagnostics of blood cultures, exudates, and bronchoalveolar lavages. Prague Med Rep. 2005; 1 06(2): 175-94; Boettcher M, et al. Precision and comparability of Abuscreen OnLine assays for drugs of abuse screening in urine on Hitachi 917 with other immunochemical tests and with GC/MS. Clin Lab. 2000;46(1-2):49-52
【0124】
免疫アッセイの文献:Boettcher M, et al. Precision and comparability of Abuscreen OnLine assays for drugs of abuse screening in urine on Hitachi 917 with other immunochemical tests and with GC/MS. Clin Lab. 2000;46(1-2):49-52; Westermann J, et al. Simple, rapid and sensitive determination of epinephrine and norepinephrine in urine and plasma by non-competitive enzyme immunoassay, compared with HPLC method. Clin Lab. 2002;48(1-2):61-71; Aoyagi K, et al. Performance of a conventional enzyme immunoassay for hepatitis C virus core antigen in the early phases of hepatitis C infection. Clin Lab. 200 I ;47(3-4): 119-27; Hub I W, et al. A multi-center quality control study of different CA 15-3 immunoassays. Clin Lab. 2005;51(11-12):641-5; Haller CA, et al. Comparison of an automated and point-of-care immunoassay to GC-MS for urine oxycodone testing in the clinical laboratory. J Anal Toxicol. 2006 Mar;30(2): 106-11; Bayer M, et al. Evaluation of a new enzyme-linked immunosorbent assay for the determination of neopterin. Clin Lab. 2005 ;51 (9-1 0):495-504; Groche D, et al. Standardization of two immunological HbA 1 c routine assays according to the new IFCC reference method. Clin Lab. 2003;49( 11-12):657-6 1; Ivan 0, et al; German KIMS Board. Applicability of recently established reference values for serum insulin-like growth factor I: A comparison of two assays--an (automated) chemiluminescence immunoassay and an enzyme-linked immunosorbent assay. Clin Lab. 2005;51(7-8):381-7
【0125】
比色アッセイの文献: Kramer KA, et al. Automated spectrophotometric analysis of mitochondrial respiratory chain complex enzyme activities in cultured skin fibroblasts. Clin Chern. 2005 Nov;51(11):2110-6; Groche D, et al. Standardization of two immunological HbA 1 c routine assays according to the new IFCC reference method. Clin Lab. 2003;49(11-12):657-61; WolfPL. History of diagnostic enzymology: A review of significant investigations. Clin Chim Acta. 2006 Mar 24
【0126】
TRUEMASS分析プラットフォームも本発明の方法に使用され得る。TRUEMASSは、トリグリセリド、コレステロールエステルおよびリン脂質の代謝などの構造脂質・エネルギー脂質代謝に関わる約400種類の個々の代謝物についてサンプルから定量データを得るために使用され得る分析プラットフォームである。このプラットフォームは病気のプロファイリングに有用である。構造脂質・エネルギー脂質は代謝の中心的な成分であり、体内の全ての生物学的プロセスに実質的に組み込まれているからである。血漿、血清または他の生体サンプルなどのサンプルのデータセットは、遊離コレステロールや、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルコリン、トリグリセリド、ジグリセリド、遊離脂肪酸およびコレステロールエステルに由来する以下の脂肪酸の定量測定値を含む:すなわち、14:0、15:0、16:0、18:0、20:0、22:0、24:0、14:1n5、l6:1n7、t16:1n7、18:1n9、t18:1n9、18:ln7、18:2n6、t18:2n6、18:3n6、18:3n3、18:4n3、20:ln9、20:2n6、20:3n9、20:3n6、20:4n6、20:3n3、20:4n3、20:5n3、22:1n9、22:2n6、22:4n6、22:5n3、22:6n3、24:1n9、24:6n3、ならびに、16:0、18:0、18:1n9および18:1n7のプラズマロゲン誘導体。TRUEMASSの使用方法は当業者に周知であり、これはまた、その内容全体を本願明細書に援用する下記文献に記載されている。米国特許出願第11/296829号明細書(2012年6月5日出願);Mutch DM, et al. An integrative metabolism approach identifies stearoyi-CoA desaturase as a target for an arachidonate-enriched diet. FASEB J. 2005 Apr;19(6):599-601. Epub 2005 Jan 24;Stone SJ, et al. Lipopenia and skin barrier abnormalities in DGAT2-deficient mice. J Bioi Chern. 2004 Mar 19;279(12):11767-76;Watkins SM, et al. Phosphatidylethanolamine-N-methyltransferase activity and dietary choline regulate liver-plasma lipid flux and essential fatty acid metabolism in mice.J Nutr. 2003 Nov; 133(11 ):3386-91;Watkins SM, et al. Lipid metabolome-wide effects of the PPARgamma agonist rosiglitazone. Lipid Res. 2002 Nov;43(11):1809-17
【実施例】
【0127】
下記実施例は例示を目的としており、限定することを目的としない。
実施例1:内部標準混合物の合成組成物
広範な脂質クラス(例えば、リン脂質)毎に単一の内部標準のみを通常使用する従来のリピドミクス戦略とは対照的に、本発明では、脂肪酸の混合物(脂質クラス毎に最大10個の脂肪酸)を含む内部標準を合成した。内部標準混合物(IS混合物)中の脂肪酸は、分析対象のサンプルタイプに存在する脂質クラスに見出される化学構造(脂質分子種)の多様性を表すように選択した。表1に示す各脂肪酸の濃度は各脂質クラスについて測定したものであり、脂質クラス内の残りの全ての脂肪酸は最も近い内部標準アナログに割り当て、また、その測定値を割り当てた。各脂質クラスについての総濃度は、その脂質クラスについての全ての分子種の値(測定値および割り当て値)を足すことにより計算した。
【0128】
表1に示す脂肪酸組成に従って、10種類の脂質クラスのそれぞれの内部標準を合成した。内部標準の脂質クラスを表1の第1行目に示し、脂肪酸「R」基を表1の第1列目に示す。表1中、「d」は重水素標識の付加を示す。例えば、16:0−d9とは、9個の重水素が付加されたパルミテートをいう。
【0129】
実施例2:内部標準およびその混合物の合成および説明
リン酸グリセロール頭部基から出発して、重水素標識パルミテート(16:0)をsn−1位にアシル化し、そして不飽和脂肪酸混合物をsn−2位にアシル化することにより、ホスファチジルコリン、o−ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンおよびp−ホスファチジルエタノールアミンについて例示のリン脂質内部標準を合成した。リン脂質、ホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノールアミンの標識戦略を
図1に示す。
【0130】
例示のホスファチジルコリン内部標準成分およびo−ホスファチジルコリン内部標準成分について、sn−2位の脂肪酸(sn−2脂肪酸)の組成を表2に示す。内部標準混合物を構成するホスファチジルコリンおよびsn−2脂肪酸の構造を
図2に示す。sn−1位に重水素化パルミテート(16:0)を有し、sn−2位に脂肪酸(「R」と表示)を有するホスファチジルコリンの構造を(A)に示す。sn−1位に重水素化パルミテート(16:0)を有し、sn−2位に例示の脂肪酸としてオレエート(18:1n9)を有するホスファチジルコリンの構造を(B)に示す。ホスファチジルコリンのsn−2位にアシル化するための脂肪酸混合物中の10種類の脂肪酸(16:1n7、18:1n9、18:2n6、18:3n3、20:3n6、20:4n6、20:5n3、22:4n6、22:5n3、22:6n3)の構造を(C)に示す。
【0131】
リン脂質頭部基から出発して、重水素標識パルミテート(16:0)をアシル化して、例示のリゾホスファチジルコリン内部標準を合成した。構造を
図3に示す。
【0132】
ホスファチジルエタノールアミン内部標準およびp−ホスファチジルエタノールアミン内部標準について、sn−2脂肪酸の組成を表3に示す。内部標準混合物を構成するホスファチジルエタノールアミンおよびsn−2脂肪酸の構造を
図4に示す。sn−1位に重水素化ステアレート(18:0)を有し、sn−2位に脂肪酸(「R」と表示)を有するホスファチジルエタノールアミンの構造を(A)に示す。sn−1位に重水素化ステアレート(18:0)を有し、sn−2位に例示の脂肪酸としてオレエート(18:1n9)を有するホスファチジルエタノールアミンの構造を(B)に示す。ホスファチジルエタノールアミンのsn−2位にアシル化するための脂肪酸ミックス中の8種類の脂肪酸(18:1n9、18:2n6、18:3n3、20:3n6、20:4n6、20:5n3、22:5n3、22:6n3)の構造を(C)に示す。
【0133】
リン脂質頭部基から出発して、重水素標識ステアレート(18:0)をアシル化して、リゾホスファチジルエタノールアミン内部標準を合成した。構造を
図5に示す。
【0134】
ホスホコリン頭部基から出発して、sn−1位に重水素標識スフィンゴシンをアシル化し、sn−2位に脂肪酸の混合物をアシル化することにより、スフィンゴミエリン内部標準を合成した。sn−2位のアシル化脂肪酸混合物は、例えば、16:0、18:1n9、24:0、および、24:1n9を含み得る。
【0135】
例示のスフィンゴミエリン内部標準成分について、脂肪酸の組成を表4に示す。内部標準混合物を構成するスフィンゴミエリンおよびsn−2脂肪酸の構造を
図6に示す。第1の位置に重水素標識スフィンゴシンを有し、sn−2位に脂肪酸(「R」と表示)を有するスフィンゴミエリンの構造を(A)に示す。第1の位置に重水素標識スフィンゴシンを有し、sn−2位に例示の脂肪酸としてパルミテート(16:0)を有するスフィンゴミエリンの構造を(B)に示す。スフィンゴミエリンのsn−2位にアシル化するための脂肪酸ミックス中の4種類の脂肪酸(16:0、18:1n9、24:0、24:1n9)の構造を(C)に示す。
【0136】
ジアシルグリセロール骨格から出発して、sn−1位に重水素標識パルミテート(16:0)をアシル化し、sn−2位にオレエート(18:1n9)をアシル化し、sn−3位に脂肪酸の混合物をアシル化することにより、トリアシルグリセロール内部標準を合成した。sn−3位のアシル化脂肪酸混合物は、例えば、16:0、18:0、18:1n9、18:2n6、18:3n3、20:3n6、20:4n6、および、22:6n3を含み得る。
【0137】
例示のトリアシルグリセロール内部標準について、sn−3脂肪酸の組成を表5に示す。内部標準混合物を構成するトリアシルグリセロールおよびsn−3脂肪酸の構造を
図7に示す。sn−1位に重水素標識パルミテート(16:0)を有し、sn−2位にオレエート(18:1n9)を有し、sn−3位に脂肪酸「R」を有するトリアシルグリセロールの構造を(A)に示す。sn−1位に重水素標識パルミテート(16:0)を有し、sn−2位にオレエート(18:1n9)を有し、sn−3位に例示の脂肪酸としてパルミテート(16:0)有するトリアシルグリセロールの構造を(B)に示す。トリアシルグリセロールのsn−3位を標識するための脂肪酸ミックス中の8種類の脂肪酸(16:0、18:0、18:1n9、18:2n6、18:3n3、20:3n6、20:4n6、22:6n3)の構造を(C)に示す。
【0138】
グリセロール骨格から出発して、sn−1位に重水素標識パルミテート(16:0)をアシル化し、sn−2位に脂肪酸の混合物をアシル化することにより、例示のジアシルグリセロール内部標準を合成した。sn−2位のアシル化脂肪酸混合物は、例えば、16:0、18:0、18:1n9、18:2n6、18:3n3、20:4n6、20:5n3、および、22:6n3を含み得る。
【0139】
例えば、ジアシルグリセロールについて、sn−2脂肪酸の組成を表6に示す。内部標準混合物を構成するジアシルグリセロールおよびsn−2脂肪酸の構造を
図8に示す。sn−1位に重水素標識パルミテート(16:0)を有し、sn−2位に脂肪酸(「R」と表示)を有するジアシルグリセロールの構造を(A)に示す。sn−1位に重水素標識パルミテート(16:0)を有し、sn−2位に例示の脂肪酸としてパルミテート(16:0)を有するジアシルグリセロールの構造を(B)に示す。ジアシルグリセロールのsn−2位を標識するための脂肪酸混合物中の8種類の脂肪酸(16:0、18:0、18:1n9、18:2n6、18:3n3、20:4n6、20:5n3、22:6n3)の構造を(C)に示す。
【0140】
コレステロール骨格から出発して、n6位に重水素標識を付加し、水酸基に脂肪酸の混合物をアシル化することにより、例示のコレステリルエステル内部標準を合成した。水酸基のアシル化脂肪酸混合物は、例えば、16:0、16:1n7、18:1n9、18:2n6、20:3n6、20:4n6、20:5n3、および、22:6n3を含み得る。
【0141】
例えば、コレステリルエステルについて、脂肪酸の組成を表7に示す。内部標準混合物を構成するコレステリルエステルおよび脂肪酸の構造を
図9に示す。n6位に重水素標識を有し、脂肪酸「R」が水酸基にアシル化したコレステリルエステルの構造を(A)に示す。n6位に重水素標識を有し、例示の脂肪酸としてリノレート(18:2n6)が水酸基にアシル化したコレステリルエステルの構造を(B)に示す。コレステリルエステルの水酸基のアシル化に使用される脂肪酸ミックス中の8種類の脂肪酸(16:0、16:1n7、18:1n9、18:2n6、20:3n6、20:4n6、20:5n3、22:6n3)の構造を(C)に示す。
【0142】
遊離脂肪酸内部標準は、50%の重水素標識脂肪酸および50%の単一の奇数鎖脂肪酸からなる50:50混合物を合成することにより製造した。重水素標識脂肪酸は、例えば、パルミテート(16:0)であり得る。また、奇数鎖脂肪酸は、例えば、17:1n7であり得る。
【0143】
例えば、遊離脂肪酸について、脂肪酸の組成を表8に示す。内部標準混合物を構成する遊離脂肪酸の構造を
図10に示す。重水素標識を有する遊離脂肪酸であるパルミテート(16:0)を(A)に示す。遊離脂肪酸である17:1n7の構造を(B)に示す。
【0144】
実施例3:脂質内部標準混合物の検証および評価
メタノール:ジクロロメタン抽出手順を使用して脂質をサンプルから抽出した。ジクロロメタン:メタノール(50:50)中の内部標準を抽出液に添加し、その後、一連の遠心・沈殿層回収工程を行った。1つに合わせた沈殿層のアリコートを窒素下で濃縮し、次いで10mM酢酸アンモニウムジクロロメタン:メタノール(50:50)0.25mLで戻した。インフュージョンMSを使用した分析のために、抽出物をインサートに移し、バイアルに入れた。インフュージョンMS分析を、Sciex SelexIonおよび500 QTRAPを組み合わせたnano PEEk tubingを用いたShimazdu LCで行った。サンプルはポジティブ・モードエレクトロスプレーおよびネガティブ・モードエレクトロスプレーの両方で分析した。5500 QTRAPスキャンをMRMモードで行ったところ、内部標準を含めて合計+1100MRMであった。
【0145】
表9に示す成分を含む例示の内部標準混合物を合成し、この合成内部標準混合物を評価してその濃度および純度を求めた。標識標準混合物および未標識標準混合物は10.3mgs/mLであった。内部標準混合物中の各内部標準の実際の濃度はNMRおよび定量的脂肪酸分析に基づいて求めた。これら2つの分析結果の差は2%以内であった。表9の第2列は内部標準混合物の各内部標準成分の標的濃度を示す。表9の第3列および第4列は示された各成分の実際の濃度を示す。第3列は標識標準について得られた濃度を示し、第4列は未標識標準について得られた濃度を示す。サンプルの完璧な脂肪酸分析により、内部標準混合物の純度が>99%であることが確認された。
【0146】
【表9】
【0147】
標識の存在によってクロマトグラフ保持時間がシフトするかどうかを確認するために例示の標識内部標準混合物および未標識内部標準混合物の性能を評価した。標識標準は、未標識アナログと比較してクロマトグラフ保持時間を実質的にシフトさせなかった。
【0148】
標識内部標準混合物および未標識内部標準混合物の定量性能を、未標識標準溶液中および血清中で実験的に評価した。未標識内部標準混合液サンプルおよび血清サンプルから、いずれも標識内部標準混合物およびPC17:0/17:0(従来のリピドミクス内部標準)の存在下で、脂質を抽出した。各サンプルを5回抽出し、合計10個のサンプル(5個の血清サンプルおよび5個の未標識標準混合物サンプル)を得た。各サンプルから抽出した脂質を上述の方法を使用して分析した。各ホスファチジルコリン種の濃度を出発物質1ml当たりのnモルとして計算した。内部標準混合物および従来の内部標準PC17:0/17:0の両方を使用して、濃度を計算した。血清では、分析変動係数(CV)を計算して求めた精度が、従来の内部標準PC17:0/17:0では20%であり、内部標準混合物では11%であった。未標識内部標準混合物のサンプルでは、分析CVを計算して求めた全体精度が、従来の内部標準PC17:0/17:0では11%であり、内部標準混合物では3%であった。
【0149】
内部標準混合物および従来の内部標準を使用して脂肪酸の組成(モル%)を計算し、サンプル中の脂肪酸の実際の濃度と比較した。内部標準混合物を使用して得られた計算値は、従来の内部標準を使用して得られた値よりも実際値に近かった。結果を
図11に図示する。
【0150】
実施例4:ヒトサンプルにおける内部標準混合物の評価
内部標準混合物の定量性能を評価するために、表1に示す内部標準の混合物を使用して、15個のヒト血清サンプル中の脂質分子種を測定した(トリプリケートで実施)。標識内部標準混合物下で血清サンプルから脂質を抽出し、上述の方法で脂質抽出物を分析した。トリプリケートサンプル中の1100個の測定脂質分子種のそれぞれの平均濃度を、内部標準混合物を使用して計算し、また、分析CVを計算して精度を求めた。15個のトリプリケートサンプルの平均濃度およびCV値を1100個の測定脂質分子種全てに対してプロットした。CV(%)と脂質分子種濃度との関係を示す散布図を
図12に図示する。CVは最高濃度域における脂質分子種では低かったが、非常に低濃度(例えば、0.001μM)における所定の脂質分子種では10%と高かった。
【0151】
全ての血清サンプルから得られたCE脂質クラスの平均濃度は3676.72であり、平均CVは1.22%であった。これらの結果は
図13に箱ヒゲ図で示す。血清サンプル中のCE脂質クラスの濃度のブランクに対する比であるシグナルは1729.02であった。TAG脂質クラスの平均濃度は4105.8であり、平均CVは2.79%であった。これらの結果は
図14に箱ヒゲ図で示す。TAG脂質クラスのシグナルは1348.33であった。
【0152】
他の例において、従来の内部標準と比較した内部標準混合物の性能を25個のヒト血漿サンプルにおいて評価した。本願明細書に記載の方法および表1に記載の内部標準組成物を使用して、3つの例示の脂質クラス(CE、PC、PE)の脂肪酸組成を計算した。これらの結果を、脂質クラス毎に1つの内部標準を使用する従来法による計算値と比較し、また、定量値とも比較した。
【0153】
各脂質クラスに対して単一の内部標準を使用した定量(従来法)では、コレステリルエステルについてはdCE(16:0)内部標準を、ホスファチジルコリンについてはdPC(16:0/18:1)内部標準を、ホスファチジルエタノールアミンについてはdPE(18:0/18:1)内部標準をそれぞれ使用した。単一内部標準による定量では、CE脂質クラス、PC脂質クラスまたはPE脂質クラス内の脂肪酸を、それぞれ、これらの単一のCE内部標準、PC内部標準またはPE内部標準に割り当てた。
【0154】
例示の内部標準混合物を使用した定量では、各脂質クラスについて内部標準全てを使用した(表1)。全てのケースにおいて、定量対象の脂質分子種は、脂肪酸組成中同じ数の二重結合を有する内部標準に割り当てた。例えば、分子種PC(16:0/22:5)、PC(18:0/22:5)およびPC(14:0/22:5)は、全て、内部標準dPC(16:0/22:5)に割り当てた。
【0155】
コレステリルエステル脂質クラスの総濃度(CELC)、ホスファチジルコリン脂質クラスの総濃度(PCLC)、および、ホスファチジルエタノールアミン脂質クラスの総濃度(PELC)を、各脂質クラスについて、単一内部標準および内部標準混合物(複数IS)を使用した計算により、25個のヒト血漿サンプルから求めた(
図15)。結果を定量的GC−FID分析(上述のTrueMass)で得た値と比較した。バイアス(偏り)は下記式により計算した:
((計算値−TrueMass値)/TrueMass値)×100
【0156】
シングル内部標準法およびマルチ内部標準法についてバイアスを計算した。結果を表10に示す。
【0157】
【表10】
【0158】
次に、CE脂質クラス、PC脂質クラスおよびPE脂質クラスの脂肪酸組成を求めた。全ての値はモル(%)で表した。これは各脂質クラスに存在する脂肪酸の全脂肪酸に対する相対量を与えるデータ形式である。一例として、シングル内部標準法(dCE(16:0))およびマルチ内部標準法の場合の定量的(TrueMass)値に対するコレステリルエステル(CE)の脂肪酸組成の比較を
図16に示す。y=x線はバイアスがゼロに等しい値を示す。25個の対象全てを、CE脂質クラスで測定された22個の脂肪酸のそれぞれに対してプロットした。単一内部標準で効果的に測定された脂肪酸もあるが、著しいバイアスを示す脂肪酸もあった。しかしながら、複数の内部標準を使用するとバイアスは低い。
【0159】
特に、シングル内部標準法では多価不飽和脂肪酸のバイアスが大きいと考えられた。CE脂質クラスおよびPC脂質クラスに由来する多価不飽和脂肪酸に対するバイアスの具体例を下記に示す。上述の通り計算したバイアスを表11に示す。PC脂質クラスおよびCE脂質クラスの例示の脂肪酸についての真の(定量)値(μM)および推定値(内部標準を使用して計算)(μM)を、25個の血漿サンプルのそれぞれに対してプロットした。結果を
図17に示す。
【0160】
【表11】
【0161】
このように、脂質クラス毎に単一の内部標準を使用すると、測定結果に定量的・組成的なバイアスが生じ得ることが示される。単一の内部標準では1つの脂質クラス内の全ての分子種を正確に定量できなかったからである。本願明細書に記載の方法を使用すると、リピドミクス・アッセイの定量的・組成的なバイアスが顕著かつ実質的に低減した。
【0162】
本願明細書に記載した全ての特許または刊行物は本願発明が属する技術分野の当業者の水準を示すものである。これらの特許または刊行物は、それぞれが参照により援用されることが具体的かつ個別に明示されている場合と同程度に、本願明細書に参照により援用される。
【0163】
当業者は、本願発明が本願明細書に記載された目的を実行することができ、かつ、本願明細書に記載された目的および利点、ならびに、本願明細書に記載されているに等しい目的および利点を得ることができるように十分に構成されていることを容易に理解するであろう。本願明細書に記載の方法と共に本願の例は、好ましい実施形態を代表するものであり、また例示的なものであって、発明の範囲を限定することは意図されない。当業者は、添付の特許請求の範囲により定められる本発明に要旨に包含される変更およびその他の用途に想到するであろう。