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アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の前記1種以上のアルカリ土類金属塩が、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のカルシウム塩である、請求項1から2のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
酸化防止剤、無灰分散剤、清浄剤、防錆剤、曇り除去剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、補助溶媒、腐食防止剤、染料、極圧剤及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物添加剤を更に含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書中で使用される「船舶用ディーゼルシリンダー潤滑剤」又は「船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油」の用語は、低速又は中速の2ストローククロスヘッド船舶用ディーゼルエンジンのシリンダーを潤滑する際に使用される潤滑剤を意味すると理解されるものとする。船舶用ディーゼルシリンダー潤滑剤は、多数の注入点を通ってシリンダー壁に供給される。船舶用ディーゼルシリンダー潤滑剤は、シリンダーライナーとピストンリングとの間に膜を形成し、そして部分的に燃焼した燃料残渣を懸濁液中に保持し、それによってエンジンの清浄性を促進し、そして例えば燃料中の硫黄化合物の燃焼によって形成される酸を中和することができる。
【0022】
「船舶用残渣燃料」は、国際標準化機構規格ISO 8217:2005、“Petroleum Products−Fuels(class F)−Specifications of marine fuels”において定義された船舶用残渣燃料等の、国際標準化機構(ISO)10370において少なくとも2.5重量%(例えば、少なくとも5重量%、又は少なくとも8重量%)(燃料の全重量に対して)と定義された炭素残渣を有し、50℃で14.0cStより高い粘度する大型船舶用エンジンにおける可燃性材料を意味し、その内容の全体を本明細書に援用する。
【0023】
「残渣燃料」は、ISO 8217:2010国際標準に規定される残渣船舶用燃料の仕様に適合する燃料を意味する。「低硫黄船舶用燃料」は、ISO 8217:2010の仕様に規定される残渣船舶用燃料の仕様に適合し、加えて、燃料の全重量に対して、約1.5重量%以下、又は約0.5%重量%以下の硫黄を有する燃料を意味する。
【0024】
「留出燃料」は、ISO 8217:2010国際標準に規定される留出船舶用燃料の仕様に適合する燃料を意味する。「低硫黄留出燃料」は、ISO 8217:2010国際標準に規定される留出船舶用燃料の仕様に適合し、加えて、燃料の全重量に対して、約0.1重量%以下又は約0.005重量%以下の硫黄を有する燃料を意味する。
【0025】
当業者によって使用される「ブライトストック」の用語は、溶媒抽出及び/又は脱ろう等の更なる処理後の脱アスファルト石油減圧残渣から誘導される基油又は脱アスファルト石油減圧残油の直接の生成物である基油を意味する。本発明の目的では、それは、減圧残渣プロセスの脱アスファルト留出物カットもまた意味する。ブライトストックは、一般的に、100℃で28から36mm
2/sの動粘度を有する。このようなブライトストックの一例は、ESSO(商標)Core 2500 Base Oilである。
【0026】
「II族金属」又は「アルカリ土類金属」の用語は、カルシウム、バリウム、マグネシウム及びストロンチウムを意味する。
【0027】
「カルシウム塩基」の用語は、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、カルシウムアルコキシド等及びそれらの混合物を意味する。
【0028】
「石灰(lime)」の用語は、消石灰(slaked lime)又は消石灰(hydrated lime)としても知られる水酸化カルシウムを意味する。
【0029】
「アルキルフェノール」の用語は、1つ以上のアルキル置換基を有するフェノールであって、そのアルキル置換基の少なくとも1つが、得られるフェナート添加剤に油溶性を付与するのに十分な数の炭素原子を有するフェノール基を意味する。
【0030】
「フェナート」の用語は、フェノールの塩を意味する。
【0031】
「低級アルカン酸」の用語は、1から3個の炭素原子を有するアルカン酸、即ち、ギ酸、酢酸及びプロピオン酸並びにそれらの混合物を意味する。
【0032】
「ポリオール促進剤」の用語は、2つ以上のヒドロキシ置換基を有する化合物、一般的に、ソルビトール型、例えばアルキレングリコール及びその誘導体、並びにポリオールエーテル及びヒドロキシカルボン酸等の官能基等価物もまた意味する。
【0033】
「全塩基価」又は「TBN」の用語は、油試料中のアルカリ度のレベルを意味し、これは、ASTM標準番号D2896又は同等の手順に従って、腐食性の酸を中和し続ける組成物の能力を示す。当該試験では、電気伝導率の変化を測定し、そして、その結果を、mgKOH/g(1グラムの生成物を中和するのに必要なKOHのミリグラム当量数)として表す。従って、高いTBNは、強い過塩基性生成物を表し、そして結果として、酸を中和するためのより高い塩基予備力(base reserve)を表す。
【0034】
本明細書で使用される「基油」の用語は、単一の製造者によって同じ仕様に(供給源又は製造者の所在地とは無関係に)製造され;同じ製造者の仕様に適合し;そして独自の配合、製品識別番号、又はその両方によって識別される潤滑剤成分であるベースストック又はベースストックのブレンドを意味すると理解されるものとする。
【0035】
「活性基準で」の用語は、希釈油でも溶媒でもない添加剤材料を意味する。
【0036】
「異性化オレフィン」の用語は、オレフィンを異性化することによって得られるオレフィンを意味する。一般的に、異性化オレフィンは、それらが誘導される出発オレフィンとは異なる位置に二重結合を有し、そして異なる特性もまた有し得る。
【0037】
一実施態様では、(a)主要量の1種以上のグループIIのベースストック、並びに
(b)(i)250超過のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩、及び(ii)1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩、を含む清浄剤組成物;を含む船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物であって:
前記アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩の前記芳香族部分は、ヒドロキシル基を含有せず;そして、前記船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、約5から約120のTBNを有する、前記潤滑油組成物を提供する。
【0038】
一般に、本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、約5から約120のTBNを有するであろう。一実施態様では、本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、約20から約100のTBNを有することができる。一実施態様では、本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、約40から約100のTBNを有することができる。一実施態様では、本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、約55から約80のTBNを有することができる。一実施態様では、本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、約60から約80のTBNを有することができる。一実施態様では、本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、約10から約40のTBNを有することができる。一実施態様では、本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、約15から約35のTBNを有することができる。
【0039】
一実施態様では、本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、未硫化テトラプロペニルフェノール化合物及びその未硫化金属塩、例えば、TTP及びそのカルシウム塩を実質的に含まない。本明細書で使用される「実質的に含まない」の用語は、未硫黄化テトラプロペニルフェノール及びその未硫化金属塩が存在する場合は、比較的低いレベル、例えば、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物中約1.5重量%未満を意味する。別の実施態様では、「実質的に含まない」の用語は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物中約1重量%未満である。別の実施態様では、「実質的に含まない」の用語は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物中約0.3重量%未満である。別の実施態様では、「実質的に含まない」の用語は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物中約0.1重量%未満である。別の実施態様では、「実質的に含まない」の用語は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物中約0.0001重量%から約0.3重量%である。
【0040】
船舶用エンジンの低動作速度及び高負荷に起因して、高粘度油(例えば、SAE 40、50、及び60)が典型的に必要となる。本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、100℃で約12.5から約26.1センチストークス(cSt)の範囲の動粘度を有することができる。別の実施態様では、潤滑油組成物は、100℃で約12.5から約21.9、又は約16.3から約21.9cStの粘度を有する。船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の動粘度は、ASTM D445によって測定される。
【0041】
本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物を製造するための当業者に既知の方法によって調製することができる。成分は、任意の順序で且つ任意の方法で添加することができる。任意の適切な混合又は分散装置を、成分をブレンド、混合又は可溶化するために使用することができる。ブレンド、混合又は可溶化は、ブレンダー、撹拌器、分散機、ミキサー(例えば、プラネタリーミキサー及びダブルプラネタリーミキサー)、ホモジナイザー(例えば、ゴーリン(Gaulin)ホモジナイザー若しくはラニー(Rannie)ホモジナイザー)、ミル(例えば、コロイドミル、ボールミル若しくはサンドミル)又は当該技術分野で既知の任意の他の混合若しくは分散装置を用いて実施することができる。
【0042】
本発明で使用するためのグループIIのベースストックは、API刊行物1509、第14版、補遺I、1998年12月に定義されている潤滑粘度の石油誘導基油とすることができる。APIガイドラインは、多様な異なるプロセスを使用して製造することができる潤滑剤成分としてベースストックを定義している。グループIIのベースストックは、一般的に、全硫黄含量が300ppm以下(ppm:parts per million)(ASTM D2622、ASTM D4294、ASTM D4297又はASTM D3120により定量)、飽和含量が90重量%以上(ASTM D2007により定量)、そして、粘度指数(VI)が80と120の間(ASTM D2270により定量)である石油誘導潤滑基油を意味する。
【0043】
一実施態様では、1種以上のグループIIのベースストックは、異なる分子量及び粘度を有する2種以上、3種以上、又は4種以上のグループIIのベースストックのブレンド又は混合物とすることができ、この場合、当該ブレンドは、船舶用ディーゼルエンジンで使用するための適切な特性(上で議論した粘度及びTBN値等)を有する基油を作るのに適切な方法で加工処理される。
【0044】
本発明の船舶用ディーゼルエンジン潤滑油組成物で使用するための1種以上のグループIIのベースストックは、典型的に、主要量で、例えば、組成物の全重量に基づいて、約50重量%超過の量、又は約70重量%超過の量で存在する。一実施態様では、1種以上のグループIIのベースストックは、組成物の全重量に基づいて、70重量%から約95重量%の量で存在する。一実施態様では、1種以上のグループIIのベースストックは、組成物の全重量に基づいて、70重量%から約85重量%の量で存在する。
【0045】
必要に応じて、本発明の船舶用ディーゼルエンジン潤滑油組成物は、グループIIのベースストック以外の少量(minor amount)のベースストックを含有することができる。例えば、船舶用ディーゼルエンジン潤滑油組成物は、API刊行物1509、第16版、補遺I、2009年10月に定義される、少量のグループI又はIII〜Vのベースストックを含有することができる。グループIVの基油はポリアルファオレフィン(PAO)である。
【0046】
上記のように、船舶用ディーゼルエンジンで使用するための船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、100℃で12.5から26.1cStの範囲の動粘度を有する。このような潤滑剤を配合するために、ブライトストックを、低粘度油、例えば100℃で4から6cStの粘度を有する油と組合せることができる。しかし、ブライトストックの供給は次第に減少しているので、船舶用シリンダー潤滑剤の粘度を製造者が推奨する所望の範囲に高めるために、ブライトストックに頼ることはできない。この問題への1つの解決策は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物を濃厚にするために、ポリイソブチレン(PIB)等の増粘剤又はオレフィンコポリマー等の粘度指数向上剤化合物を使用することである。PIBは、幾つかの製造者から市販されている材料である。PIBは、典型的に、約1,000から約8,000、又は約1,500から約6,000の範囲の重量平均分子量、及び、約2,000から約5,000又は約6,000cSt(100℃にて)の範囲の粘度を有する粘性の油混和性液体である。船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物に添加されるPIBの量は、通常、最終的な油の約1から約20重量%、又は最終的な油の約2から約15重量%、又は最終的な油の約4から約12重量%であろう。
【0047】
グループIの基油は、一般的に、飽和含量が90重量%未満(ASTM D2007により定量)、及び/又は全硫黄含量が300ppm超過(ASTM D2622、ASTM D4294、ASTM D4297又はASTM D3120により定量)であり、そして、粘度指数(VI)が80以上且つ120未満(ASTM D2270により定量)である石油誘導潤滑基油を意味する。
【0048】
グループIの基油は、減圧蒸留カラムからの軽質オーバーヘッドカット及びより重質のサイドカットを含むことができ、そして例えば、ライトニュートラル、ミディアムニュートラル及びヘビーニュートラルのベースストックもまた含むことができる。更に、石油誘導基油は、例えば、ブライトストック等の残渣ストック又は底部留分もまた含むことができる。ブライトストックは、従来から残留ストック又は底部から製造され、高度に精製且つ脱ろうされた高粘度基油である。ブライトストックは、40℃で約180cSt超過、又は40℃で約250cSt超過、又は40℃で約500から約1100cStの範囲の動粘度を有し得る。一実施態様では、グループIのベースストックには、ExxonMobil CORE(登録商標)100、ExxonMobil CORE(登録商標)150、ExxonMobil CORE(登録商標)600、ExxonMobil CORE(登録商標)2500又はそれらの混合物が含まれる。
【0049】
グループIIIのベーッストックは、一般的に、全硫黄含量が0.03重量%以下(ASTM D2270により定量)、飽和含量が90重量%以上(ASTM D2007により定量)、及び粘度指数(VI)が120以上(ASTM D4294、ASTM D4297又はASTM D3120により定量)である。一実施態様では、ベースストックは、グループIIIのベースストック又は、2種以上の異なるグループIIIのベースストックのブレンドである。
【0050】
一般に、石油系油から誘導されるグループIIIのベースストックは、高度に水素化処理された鉱油である。水素化処理には、水素を処理すべきベースストックと反応させて、炭化水素からヘテロ原子を除去し、オレフィン及び芳香族をそれぞれアルカン及びシクロパラフィンに還元し、そして、非常に高度な水素化処理では、ナフテン系環状構造を非環状のノルマル及びイソアルカン(「パラフィン類」)に開環することが含まれる。一実施態様では、グループIIIのベースストックは、少なくとも約70%のパラフィン系炭素含量(%C
p)を有し、それは、試験方法ASTM D3238−95(2005),“Standard Test Method for Calculation of Carbon Distribution and Structural Group Analysis of Petroleum Oils by the n−d−M Method”により定量される。別の実施態様では、グループIIIのベースストックは、少なくとも約72%のパラフィン系炭素含量(%C
p)を有する。別の実施態様では、グループIIIのベースストックは、少なくとも約75%のパラフィン系炭素含量(%C
p)を有する。別の実施態様では、グループIIIのベースストックは、少なくとも約78%のパラフィン系炭素含量(%C
p)を有する。別の実施態様では、グループIIIのベースストックは、少なくとも約80%のパラフィン系炭素含量(%C
p)を有する。別の実施態様では、グループIIIのベースストックは、少なくとも約85%のパラフィン系炭素含量(%C
p)を有する。
【0051】
別の実施態様では、グループIIIのベースストックは、約25%以下のナフテン系炭素含量(%C
n)を有し、それは、ASTM D3238−95(2005)により定量される。別の実施態様では、グループIIIのベースストックは、約20%以下のナフテン系炭素含量(%C
n)を有する。別の実施態様では、グループIIIのベースストックは、約15%以下のナフテン系炭素含量(%C
n)を有する。別の実施態様では、グループIIIのベースストックは、約10%以下のナフテン系炭素含量(%C
n)を有する。
【0052】
グループIIIのベースストックの多くが市販されており、例えば、Chevron UCBOベースストック;Yukong Yubaseベースストック;Shell XHVI(登録商標)ベースストック;及びExxonMobil Exxsyn(登録商標)ベースストックである。
【0053】
一実施態様では、本発明で使用するためのグループIIIのベースストックは、フィッシャー・トロプシュ誘導基油である。「フィッシャー・トロプシュ誘導」の用語は、生成物、留分、又はフィードが、フィッシャー・トロプシュプロセスから生じるか、又はフィッシャー・トロプシュプロセスによってある段階で生成されることを意味する。例えば、フィッシャー・トロプシュ基油は、フィードがフィッシャー・トロプシュ合成から回収されるロウ状のフィードであるプロセスから製造することができ、例えば、米国特許出願公開第2004/0159582号;第2005/0077208号;第2005/0133407号;第2005/0133409号;第2005/0139513号;第2005/0139514号;第2005/0241990号;第2005/0261145号;第2005/0261146号;第2005/0261147号;第2006/0016721号;第2006/0016724号;第2006/0076267号;第2006/013210号;第2006/0201851号;第2006/020185号及び第2006/0289337号;米国特許第7,018,525号及び第7,083,713号並びに米国出願番号第11/400,570号;第11/535,165号及び第11/613,936号が参照され、それらの各々を本明細書に参照により援用する。一般に、当該プロセスには、パラフィンを選択的に異性化することができる触媒又は二元機能触媒を利用する、完全な又は部分的な水素化異性化脱ろう工程が含まれる。水素化異性化脱ろうは、ロウ状のフィードを、水素化異性化条件下にて異性化ゾーンで水素化異性化触媒と接触させることによって達成される。
【0054】
フィッシャー・トロプシュ合成の生成物は、例えば、商業的なSASOL(登録商標)Slurry Phase Fischer−Tropsch技術、商業的なSHELL(登録商標)Middle Distillate Synthesis(SMDS)プロセス等の周知のプロセス、又は非商業的なEXXON(登録商標)Advanced Gas Conversion(AGC−21)プロセスによって得ることができる。これらのプロセス及びその他の詳細は、例えば、国際公開第9934917号;国際公開第9920720号;国際公開第05107935号;欧州特許出願公開第776959;欧州特許出願公開第668342号;米国特許第4,943,672号,第5,059,299号;第5,733,839号;及び米国再発行特許第39073号;及び米国特許出願公開第2005/0227866号に記載されている。フィッシャー・トロプシュ合成の生成物は、1から約100個の炭素原子、場合によっては100個より多い炭素原子を有する炭化水素を含有することができ、典型的にはパラフィン、オレフィン及び含酸素生成物が含まれる。
【0055】
グループIVのベースストック、即ちポリアルファオレフィン(PAO)は、典型的に、低分子量のアルファオレフィン、例えば少なくとも6個の炭素原子を含有するアルファオレフィン、をオリゴマー化することによって作られる。一実施態様では、アルファオレフィンは、10個の炭素原子を含有するアルファオレフィンである。PAOは、二量体、三量体、四量体等の混合物であり、最終的なベースストックの所望の粘度に応じて正確に混合される。PAOは、典型的に、オリゴマー化後に水素化されて、残りの不飽和を除去する。
【0056】
グループVの基油には、グループI、グループII、グループIII、又はグループIVに含まれない全ての他の基油が含まれる。
【0057】
本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、更に、
(i)250超過のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩、及び(ii)1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩、を含む清浄剤組成物であって、前記アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩の前記芳香族部分は、ヒドロキシル基を含有しない清浄剤組成物、を含む。
【0058】
一般に、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩及び1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩は、濃縮物として提供され、添加剤の各々は、例えば鉱油、ナフサ、ベンゼン、トルエン又はキシレン等の実質的に不活性な通常は液体の有機希釈剤中に混合されて、添加剤濃縮物を形成する。これらの濃縮物は、普通、約10%から約90重量%のこのような希釈剤又は約20%から約80重量%のこのような希釈剤を含有し、残りの量は特定の添加剤である。典型的に、100℃で約4から約8.5cSt及び好ましくは100℃で約4から約6cStの粘度を有する中性油が希釈剤として使用されるであろう、しかし、合成油、並びに添加剤及び最終的な潤滑油と相溶性を有する他の有機液体もまた使用することができる。
【0059】
一実施態様では、濃縮物は、未硫化テトラプロペニルフェノール化合物及びその未硫化金属塩、例えばTPP及びそのカルシウム塩を実質的に含まない。本明細書で使用される「実質的に含まない」の用語は、未硫黄化テトラプロペニルフェノール及びその未硫化金属塩が存在する場合は、比較的低いレベル、例えば濃縮物中約1.5重量%未満を意味する。別の実施態様では、「実質的に含まない」の用語は、濃縮物中約1重量%未満である。別の実施態様では、「実質的に含まない」の用語は、濃縮物中約0.3重量%未満である。別の実施態様では、「実質的に含まない」の用語は、濃縮物中約0.1未満である。別の実施態様では、「実質的に含まない」の用語は、濃縮物中約0.0001から約0.3重量%である。
【0060】
本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物に利用される清浄剤組成物には、250超過のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩が含まれる。アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩のTBNは、活性基準である。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、250超過且つ約800までのTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、250超過且つ約750までのTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、250超過且つ約700までのTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、250超過且つ約650までのTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、250超過且つ約600までのTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、250超過且つ約410までのTBNを有する。
【0061】
別の実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約260から約800のTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約260から約750のTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約260から約700のTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約260から約650のTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約260から約600のTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約260から約410のTBNを有する。
【0062】
別の実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約300以上のTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約300から約800のTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約300から約750のTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約300から約700のTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約300から約650のTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約300から約600のTBNを有する。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約300から約410のTBNを有する。
【0063】
1つの好ましい実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、250超過のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の1種以上のアルカリ土類金属塩である。1つの好ましい実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、250超過のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸カルシウムである。別の好ましい実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、主要量の、250超過のTBNを有するモノ−アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩を有する。
【0064】
1つの好ましい実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約300以上のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ安息香酸の1種以上のアルカリ土類金属塩である。1つの好ましい実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、約300以上のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸カルシウムである。別の好ましい実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩は、主要量の、約300以上のTBNを有するモノアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩を有する。
【0065】
適切なヒドロキシ芳香族化合物には、1から4個及び好ましくは1から3個のヒドロキシル基を有する単核モノヒドロキシ及びポリヒドロキシ芳香族炭化水素が含まれる。適切なヒドロキシ芳香族化合物には、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾール等が含まれる。好ましいヒドロキシ芳香族化合物はフェノールである。
【0066】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩のアルキル置換部分は、約10から約80個の炭素原子を有するアルファオレフィンから誘導することができる。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩のアルキル置換部分は、約10から約40個の炭素原子を有するアルファオレフィンから誘導することができる。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩のアルキル置換部分は、約12から約28個の炭素原子を有するアルファオレフィンから誘導することができる。利用されるオレフィンは、線状、異性化した線状、分枝状又は部分的に分枝した線状であってもよい。オレフィンは、線状オレフィンの混合物、異性化した線状オレフィンの混合物、分枝状オレフィンの混合物、部分的に分枝した線状オレフィンの混合物又は前記ものの任意の混合物であってもよい。
【0067】
一実施態様では、使用することができる線状オレフィンの混合物は、1分子当り約12から約28個、又は約20から28個の炭素原子を有するオレフィンから選択されるノルマルアルファオレフィンの混合物である。一実施態様では、ノルマルアルファオレフィンは、固体又は液体の触媒の少なくとも1種を使用して異性化される。
【0068】
別の実施態様では、オレフィンには、プロピレン、ブチレン又はそれらの混合物から選択されるモノマーのC
9からC
18オリゴマーを含む1種以上のオレフィンが含まれる。一般的に、1種以上のオレフィンは、主要量の、プロピレン、ブチレン又はそれらの混合物から選択されるモノマーのC
9からC
18オリゴマーを含有するであろう。このようなオレフィンの例には、プロピレン四量体、ブチレン三量体等が含まれる。当業者に容易に理解されるように、他のオレフィンが存在してもよい。例えば、C
9からC
18オリゴマーに加えて使用することができる他のオレフィンには、線状オレフィン、環状オレフィン、ブチレン又はイソブチレンオリゴマー等のプロピレンオリゴマー以外の分枝状オレフィン、アリールアルキレン等及びそれらの混合物が含まれる。適切な線状オレフィンには、1−ヘキセン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン等及びそれらの混合物が含まれる。特に適切な線状オレフィンは、C
16からC
30ノルマルアルファオレフィン等の高分子量ノルマルアルファオレフィンであり、それらは、エチレンオリゴマー化又はワックスクラッキング等のプロセスから得ることができる。適切な環状オレフィンには、シクロヘキセン、シクロペンテン、シクロオクテン等及びそれらの混合物が含まれる。適切な分枝状オレフィンには、ブチレン二量体又は三量体又は更に高分子量のイソブチレンオリゴマー等及びそれらの混合物が含まれる。適切なアリールアルキレンには、スチレン、メチルスチレン、3−フェニルプロペン、2−フェニル−2−ブテン等及びそれらの混合物が含まれる。
【0069】
一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩のアルキル置換部分は、C
12アルキル基とC
20からC
28線状オレフィンとの混合物を含有することができる。一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩のアルキル置換部分は、少なくとも50重量%のC
20からC
28線状オレフィンと混合して約50重量%までのC
12アルキル基を含有することができる。
【0070】
一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩のアルキル置換部分は、少なくとも50重量%の、プロピレンオリゴマーから誘導された分枝状ヒドロカルビルラジカルと混合して50重量%までのC
20からC
28線状オレフィンを含有することができる。別の実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩のアルキル置換部分は、少なくとも15重量%の、プロピレンオリゴマーから誘導された分枝状ヒドロカルビルラジカルと混合して85重量%までのC
20からC
28線状オレフィンを含有することができる。
【0071】
一実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩に含有されるアルキル基の少なくとも約75モル%(例えば、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、又は少なくとも約99モル%)は、C
20以上のアルキル基である。別の実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩は、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸から誘導されるアルキル置換ヒドロキシ安息香酸のアルカリ土類金属塩であり、当該アルキル基は少なくとも75モル%のC
20以上のノルマルアルファオレフィンを含有するノルマルアルファオレフィンの残基である。
【0072】
別の実施態様では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩に含有されるアルキル基の少なくとも約50モル%(例えば、少なくとも約60モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、又は少なくとも約99モル%)は、約C
14から約C
18である。
【0073】
得られる250超過のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩は、オルト及びパラ異性体の混合物であり得る。一実施態様では、生成物は、約1から99%のオルト異性体と99から1%のパラ異性体とを含有するであろう。別の実施態様では、生成物は、約5から70%のオルト異性体と95から30%のパラ異性体とを含有するであろう。
【0074】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩は、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩のBNが、塩基源(例えば、石灰)及び酸性過塩基化化合物(例えば、二酸化炭素)の添加等のプロセスによって増加したものである。過塩基化の方法は、当業者の理解の範囲内である。
【0075】
一般的に、約5から約120のTBNを有する船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物に存在する250超過のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩の量は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて、活性基準で約0.1重量%から約35重量%の範囲とすることができる。一実施態様では、約20から約100のTBNを有する船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物に存在する250超過のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩の量は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて、活性基準で約1重量%から約25重量%の範囲とすることができる。一実施態様では、約20から約60のTBNを有する船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物更に船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物に存在する250超過のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩の量は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて、活性基準で約3重量%から約20重量%の範囲とすることができる。一実施態様では、約30から約50のTBNを有する船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物に存在する250超過のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩の量は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて、活性基準で約3重量%から約15重量%の範囲とすることができる。
【0076】
本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物で利用される清浄剤組成物には、1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩もまた含まれる。アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩には、芳香族化合物のアルキル化によって得られるアルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩が含まれる。アルキル芳香族化合物は、その後、スルホン化されてアルキル芳香族スルホン酸を形成する。必要に応じて、アルキル芳香族スルホン酸は、苛性アルカリ(caustic)で中和して、アルカリ又はアルカリ土類金属のアルキル芳香族スルホナート化合物を得ることができる。
【0077】
少なくとも1種の芳香族化合物又は芳香族化合物の混合物を使用して、アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩を形成することができる。適切な芳香族化合物又は芳香族化合物の混合物には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン又はそれらの混合物等の単環式芳香族の少なくとも1種が含まれる。1つの好ましい実施態様では、アルキル芳香族スルホン酸又は塩の少なくとも1種の芳香族部分は、ヒドロキシル基を含有しない。1つの好ましい実施態様では、アルキル芳香族スルホン酸又は塩化合物の少なくとも1種の芳香族部分はフェノールではない。一実施態様では、少なくとも1種の芳香族化合物又は芳香族化合物の混合物は、トルエンである。
【0078】
少なくとも1種のアルキル芳香族化合物又は芳香族化合物の混合物は、市販されているか又は当該技術分野で周知の方法によって調製することができる。
【0079】
芳香族化合物をアルキル化するのに利用されるアルキル化剤は、多様な供給源から誘導することができる。このような供給源には、ノルマルアルファオレフィン、線状アルファオレフィン、異性化線状アルファオレフィン、二量化及びオリゴマー化オレフィン、並びにオレフィンメタセシスから誘導されるオレフィンが含まれる。オレフィンは、単一炭素数のオレフィン(single carbon number olefin)であってもよく、又は、線状オレフィンの混合物、異性化線状オレフィンの混合物、分枝状オレフィンの混合物、部分的に分枝状のオレフィンの混合物、又は前記の任意のものの混合物であってもよい。オレフィンが誘導される別の供給源は、石油又はフィッシャー・トロプシュワックスのクラッキングによるものである。フィッシャー・トロプシュワックスを、クラッキングの前に水素化処理してもよい。他の市販されている供給源には、パラフィンの脱水素化並びにエチレン及び他のオレフィンのオリゴマー化、MTO(methanol−to−olefin)プロセス(メタノールクラッカー)等から誘導されるオレフィンが含まれる。
【0080】
オレフィンは、約8個の炭素原子から約60個の炭素原子の範囲の炭素数を有するオレフィンから選択することができる。一実施態様では、オレフィンは、約10から約50個の炭素原子の範囲の炭素数を有するオレフィンから選択される。一実施態様では、オレフィンは、約12から約40個の炭素原子の範囲の炭素数を有するオレフィンから選択される。
【0081】
別の実施態様では、オレフィン又はオレフィンの混合物は、約8から約60個の炭素原子を含有する線状アルファオレフィン又は異性化アルファオレフィンから選択される。一実施態様では、オレフィンの混合物は、約10から約50個の炭素原子を含有する線状アルファオレフィン又は異性化アルファオレフィンから選択される。一実施態様では、オレフィンの混合物は、約12から約40個の炭素原子を含有する線状アルファオレフィン又は異性化オレフィンから選択される。
【0082】
アルキル化反応のために使用することができる線状オレフィンは、1分子当り約8から約60個の炭素原子を有するオレフィンから選択されるノルマルアルファオレフィンの1種又は混合物とすることができる。一実施態様では、ノルマルアルファオレフィンは、1分子当り約10から約50個の炭素原子を有するオレフィンから選択される。一実施態様では、ノルマルアルファオレフィンは、1分子当り約12から約40個の炭素原子を有するオレフィンから選択される。
【0083】
一実施態様では、分枝状オレフィンの混合物は、C
3又はこれより高級なモノオレフィン(例えば、プロピレンオリゴマー、ブチレンオリゴマー、又はコオリゴマー等)から誘導することができるポリオレフィンから選択される。一実施態様では、分枝状オレフィンの混合物は、プロピレンオリゴマー又はブチレンオリゴマー又はそれらの混合物のいずれかである。
【0084】
一実施態様では、芳香族化合物は、C
8からC
60炭素原子を含有するノルマルアルファオレフィンの混合物を用いてアルキル化される。一実施態様では、芳香族化合物は、C
10からC
50炭素原子を含有するノルマルアルファオレフィンの混合物を用いてアルキル化される。別の実施態様では、芳香族化合物は、C
12からC
40炭素原子を含有するノルマルアルファオレフィンの混合物を用いてアルキル化されて、芳香族アルキラートを生ずる。
【0085】
アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩を作るために利用されるノルマルアルファオレフィンは、市販されているか又は当該技術分野で周知の方法によって調製することができる。
【0086】
一実施態様では、ノルマルアルファオレフィンを、固体又は液体の酸触媒を使用して異性化する。固体触媒は、好ましくは、少なくとも1種の金属酸化物及び5.5オングストローム未満の平均細孔径を有する。一実施態様では、固体触媒は、SM−3、MAPO−11、SAPO−11、SSZ−32、ZSM−23、MAPO−39、SAPO−39、ZSM−22又はSSZ−20等の、一次元細孔システムを有する分子ふるいである。異性化に有用な他の可能な酸性固体触媒には、ZSM−35、SUZ−4、NU−23、NU−87及び天然又は合成のフェリエライトが含まれる。これらの分子ふるいは、当該技術分野で周知であり、そして、Rosemarie Szostak著のHandbook of Molecular Sieves(New York, Van Nostrand Reinhold、1992年)に記載されており、それは全ての目的のために参照により本明細書に援用する。使用することができる液体タイプの異性化触媒は、鉄ペンタカルボニル(Fe(CO)
5)である。
【0087】
ノルマルアルファオレフィンの異性化プロセスは、バッチ式又は連続式で行うことができる。プロセス温度は、約50℃から約250℃の範囲とすることができる。バッチ式では、使用される典型的な方法は、撹拌オートクレーブ又はガラスフラスコであり、それを所望の反応温度に加熱することができる。連続的なプロセスは、固定床プロセスで最も効率的に行われる。固定床プロセスにおける空間速度は、約0.1から約10以上の単位時間当たりの重量空間速度の範囲とすることができる。
【0088】
固定床プロセスでは、異性化触媒を反応器に入れ、減圧下で又は不活性乾燥ガスを流しながら、少なくとも125℃の温度で活性化又は乾燥させる。活性化後、異性化触媒の温度を所望の反応温度に調整し、そして、オレフィンの流れを反応器に導入する。部分的に分枝状の異性化オレフィンを含有する反応器流出物を回収する。得られる部分的に分枝状の異性化オレフィンは、未異性化オレフィンとは異なるオレフィン分布(即ち、アルファオレフィン、ベータオレフィン、内部オレフィン、三置換オレフィン、及びビニリデンオレフィン)及び分枝含量を含有しており、所望のオレフィン分布及び分枝度を得るために条件を選択する。
【0089】
典型的に、アルキル化芳香族化合物は、ブレンステッド酸触媒、ルイス酸触媒、又は固体酸性触媒を使用して調製することができる。
【0090】
ブレンステッド酸触媒は、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、硫酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、及び硝酸等を含む群から選択することができる。一実施態様では、ブレンステッド酸触媒は、フッ化水素酸である。
【0091】
ルイス酸触媒は、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素等含むルイス酸の群から選択することができる。一実施態様では、ルイス酸触媒は三塩化アルミニウムである。
【0092】
固体酸性触媒は、ゼオライト、酸性白土、及び/又はシリカアルミナを含む群から選択することができる。望ましい固体触媒は、酸形態の陽イオン交換樹脂、例えば、架橋スルホン酸触媒である。触媒は、分子ふるいとすることができる。適切な分子ふるいは、シリカアルミノホスファート分子ふるい又は金属シリカアルミノホスファート分子ふるいであり、金属は例えば、鉄、コバルト又はニッケルとすることができる。固体酸性触媒の他の適切な例は、米国特許第7,183,452号に開示され、その内容を参照により本明細書に援用する。
【0093】
ブレンステッド酸触媒は、失活後(即ち、触媒が、その触媒活性の全て又は一部を失った後)、再生することができる。当該技術分野で周知の方法を、酸触媒、例えばフッ化水素酸を再生するために使用することができる。
【0094】
アルキル芳香族を生成するのに使用されるアルキル化技術には、約0から約300℃の間で操作されるバッチ、セミバッチ又は連続のプロセスで利用されるブレンステッド酸触媒及び/又はルイス酸触媒、並びに固体酸触媒が含まれる。
【0095】
酸触媒は、連続プロセスで使用される場合、リサイクルすることができる。酸触媒は、バッチプロセス又は連続プロセスで使用される場合、リサイクル又は再生することができる。
【0096】
一実施態様では、アルキル化プロセスは、第1の量の少なくとも1種の芳香族化合物又は芳香族化合物の混合物を、第1の量のオレフィン化合物の混合物と、ブレンステッド酸触媒、例えば、フッ化水素酸の存在下で、攪拌が維持されている第1の反応器中で反応させ、これにより、第1の反応混合物を生成することにより行われる。得られた第1の反応混合物を、第1のアルキル化ゾーンに、アルキル化条件下で、オレフィンを芳香族アルキラート(即ち、第1の反応生成物)に転化するのに十分な時間保持する。所望の時間後、第1の反応生成物は、アルキル化ゾーンから除去され、そして第2の反応器に供給されるが、そこで、第1の反応生成物を、追加量の少なくとも1種の芳香族化合物又は芳香族化合物の混合物及び追加量の酸触媒、並びに任意選択的に、追加量のオレフィン化合物の混合物と、攪拌を維持して反応させる。第2の反応混合物が得られ、これを第2のアルキル化ゾーンに、アルキル化条件下で、オレフィンを芳香族アルキラート(即ち、第2の反応生成物)に転化するのに十分な時間保持する。第2の反応生成物を、液−液セパレーターに供給して、炭化水素(即ち、有機)生成物を、酸触媒から分離させることができる。酸触媒を、閉ループサイクル中の反応器(単数又は複数)にリサイクルすることができる。炭化水素生成物を、所望のアルキラート生成物から、過剰の未反応の芳香族化合物、及び任意選択的にオレフィン系化合物を除去するために更に処理する。過剰の芳香族化合物を、反応器(単数又は複数)にリサイクルすることもできる。
【0097】
別の実施態様では、反応は、直列に配置された2個よりも多い反応器中で行われる。第2の反応生成物を液−液セパレーターに供給する代わりに、第2の反応生成物を、第3の反応器に供給し、そこで、第2の反応生成物を、追加量の少なくとも1種の芳香族化合物又は芳香族化合物の混合物及び追加量の酸触媒、及び任意選択的に、追加量のオレフィン化合物の混合物と、撹拌を維持して反応させる。第3の反応混合物が得られ、これを第3のアルキル化ゾーンに、アルキル化条件下で、オレフィンを芳香族アルキラート(即ち、第3の反応生成物)に転化するのに十分な時間保持する。反応は、所望のアルキル化芳香族反応生成物を得るのに必要な数の反応器中で行われる。
【0098】
ブレンステッド酸触媒対オレフィン化合物の全仕込みモル比は、組合せた反応器では約0.1から約1である。一実施態様では、ブレンステッド酸触媒対オレフィン化合物の仕込みモル比は、第1の反応器では約0.7以下から約1であり、そして第2の反応器では約0.3以上から約1である。
【0099】
芳香族化合物対オレフィン化合物の全仕込みモル比は、組合せた反応器では約7.5:1から約1:1である。一実施態様では、芳香族化合物対オレフィン化合物の仕込みモル比は、第1の反応器では約1.4:1以上から約1:1であり、そして第2の反応器では約6.1:1以下から約1:1である。
【0100】
多くのタイプの反応器形状を、反応器ゾーンに使用することができる。これらには、非制限的に、バッチ式及び連続式攪拌タンク反応器、反応器ライザー形状、沸騰床(ebulating bed)反応器、及び当該技術分野で周知の他の反応器形状が含まれる。多くのこのような反応器は、当業者に既知であり、そしてアルキル化反応に適切である。撹拌は、アルキル化反応には重要であり、そして、バッフルを備えるか又は備えない回転インペラー、スタティックミキサー、ライザー中の動力学的混合、又は当該技術分野で周知の任意の他の撹拌装置によって行うことができる。アルキル化プロセスは、約0℃から約100℃の温度で行うことができる。当該プロセスは、フィード成分の実質的な部分が液相に残るような十分な圧力下で行われる。典型的に、0から150psigの圧力が、液相にフィード及び生成物を維持するのに十分である。
【0101】
反応器における滞留時間は、オレフィンの実質的な部分をアルキラート生成物に転化するのに十分な時間である。必要な時間は、約30秒から約30分である。より正確な滞留時間は、アルキル化プロセスの反応速度を測定するためのバッチ式攪拌タンク反応器を使用して、当業者によって決定することができる。
【0102】
少なくとも1種の芳香族化合物又は芳香族化合物の混合物及びオレフィン化合物は、反応ゾーンに別々に注入してもよいし、又は注入前に混合してもよい。単一及び多数の反応ゾーンの両方を、芳香族化合物及びオレフィン化合物を1つ、幾つか、又は全ての反応ゾーンへの注入に使用することができる。反応ゾーンを、同じプロセス条件に維持する必要はない。アルキル化プロセス用の炭化水素フィードは、芳香族化合物対オレフィン化合物のモル比が約0.5:1から約50:1又はこれ以上である芳香族化合物とオレフィン化合物の混合物を含むことができる。芳香族化合物対オレフィンのモル比が、>1.0対1である場合、過剰量の芳香族化合物が存在する。一実施態様では、過剰の芳香族化合物を使用して、反応速度を高め且つ生成物選択性を改良する。過剰の芳香族化合物を使用する場合、反応器流出物中の過剰の未反応芳香族は、例えば、蒸留によって分離して、反応器にリサイクルすることができる。
【0103】
アルキル芳香族生成物が上記のようにして得られると、更に、それを反応させて、アルキル芳香族スルホン酸を形成し、そしてその後、中和して、対応するスルホナートを得ることができる。アルキル芳香族化合物のスルホン化は、当業者に既知の任意の方法で行うことができる。スルホン化反応は、典型的に、約45℃から約75℃に維持された連続式流下薄膜管状反応器(continuous falling film tubular reactor)で行われる。例えば、アルキル芳香族化合物を、空気で希釈した三酸化硫黄と共に反応器中に入れ、それによってアルキルアリールスルホン酸を生成する。硫酸、クロロスルホン酸又はスルファミン酸等の他のスルホン化試薬もまた利用することができる。一実施態様では、アルキル芳香族化合物を、空気で希釈した三酸化硫黄でスルホン化する。三酸化硫黄対アルキラートの仕込みモル比は、約0.8から約1.1:1に維持される。
【0104】
必要に応じて、アルキル芳香族スルホン酸の中和を、当業者に既知の任意の方法によって、連続式又はバッチ式プロセスで行って、アルキル芳香族スルホナートを生成することができる。典型的に、アルキル芳香族スルホン酸を、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の供給源又はアンモニアを用いて中和し、それによってアルキル芳香族スルホナートを生成する。適切なアルカリ金属の非限定的な例には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムが含まれる。一実施態様では、適切なアルカリ金属には、ナトリウム及びカリウムが含まれる。別の実施態様では、適切なアルカリ金属は、ナトリウムである。適切なアルカリ土類金属の非限定的な例には、カルシウム、バリウム、マグネシウム、又はストロンチウム等が含まれる。一実施態様では、適切なアルカリ土類金属はカルシウムである。一実施態様では、その供給源は、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属塩基である。一実施態様では、供給源は、アルカリ土類金属水酸化物、例えば水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属塩基である。
【0105】
1種以上のアルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩は、1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩である。上記のように、過塩基化は、アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩のTBNが、例えば塩基源(例えば、石灰)及び酸性過塩基化化合物(例えば、二酸化炭素)の添加等のプロセスによって高められることである。過塩基化の方法は、当該技術分野において周知である。
【0106】
一実施態様では、1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩は、250超過のTBNを有するであろう。一実施態様では、1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩は、約250から約700のTBNを有するであろう。一実施態様では、1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩は、約300以上のTBNを有するであろう。一実施態様では、1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩は、約300から約700のTBNを有するであろう。
【0107】
一般的に、約5から約120のTBNを有する船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物に存在する1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩の量は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて、活性基準で約0.1重量%から約34重量%の範囲とすることができる。一実施態様では、約20から約100のTBNを有する船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物に存在する1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩の量は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて、活性基準で約1重量%から約30重量%の範囲とすることができる。一実施態様では、約20から約60のTBNを有する船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物に存在する1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩の量は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて、活性基準で約2重量%から約24重量%の範囲とすることができる。一実施態様では、約30から約50のTBNを有する船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物に存在する1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩の量は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて、活性基準で約5重量%から約16重量%の範囲とすることができる。
【0108】
本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、前記の、250超過のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩及び1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩以外の、従来の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の添加剤もまた含有することができ、それは、補助的機能を付与して、これらの添加剤が分散又は溶解した船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物を与えるためである。例えば、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、酸化防止剤、無灰分散剤、他の清浄剤、抗摩耗剤、防錆剤、曇り除去剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤(antifoaming agents)、補助溶媒、腐食防止剤、染料、極圧剤等及びそれらの混合物とブレンドすることができる。多様な添加剤は既知であり、市販されている。これらの添加剤又はそれらの類似の化合物は、普通のブレンド手順によって本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の調製に利用することができる。
【0109】
一実施態様では、本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、増粘剤(即ち、粘度指数向上剤)を本質的に含有しない。
【0110】
酸化防止剤の例には、非制限的に、アミン系、例えば、ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチル−アミン、N,N−ジ(アルキルフェニル)アミン;及びアルキル化フェニレン−ジアミン;フェノール類、例えば、BHT、立体障害アルキルフェノール、例えば、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール及び2,6−ジ−tert−ブチル−4−(2−オクチル−3−プロパン酸)フェノール;及びそれらの混合物が含まれる。
【0111】
本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物で利用される無灰分散剤化合物は、一般的に、使用の間に酸化から生じる不溶性物質を懸濁液中に維持するために使用され、こうして、スラッジ凝集及び沈殿又は金属部品上への堆積を防止する。分散剤は、潤滑剤中での大きい汚染物質粒子の成長を妨げることによって、潤滑油粘度の変化を低減する機能も発揮することができる。本発明で利用される分散剤は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物で使用するための任意の適切な無灰分散剤又は多数の無灰分散剤の混合物であってもよい。無灰分散剤は、一般的に、分散すべき粒子と結合することができる官能基を有する油溶性重合体炭化水素骨格から構成される。
【0112】
一実施態様では、無灰分散剤は、1種以上の塩基性窒素含有無灰分散剤である。窒素含有塩基性無灰(金属フリー)分散剤は、追加の硫酸塩灰分を導入することなく、それが添加される潤滑油組成物の塩基価又はBN(ASTM D2896によって測定することができる)に寄与する。本発明に有用な塩基性窒素含有無灰分散剤には、ヒドロカルビルスクシンイミド;ヒドロカルビルスクシンアミド;ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤を段階的に又はアルコール及びアミンの混合物と及び/又はアミノアルコールと反応させることによって形成されるヒドロカルビル置換コハク酸の混合エステル/アミド;ヒドロカルビル−置換フェノール、ホルムアルデヒド及びポリアミンのマンニッヒ縮合生成物;及び高分子量脂肪族又は脂環式ハロゲン化物をポリアルキレンポリアミン等のアミンと反応させることによって形成されるアミン分散剤が含まれる。このような分散剤の混合物もまた使用することができる。
【0113】
無灰分散剤の代表的な例には、非制限的に、架橋基を介してポリマー骨格に結合したアミン、アルコール、アミド、又はエステル極性部分が含まれる。本発明の無灰分散剤は、例えば、長鎖炭化水素置換モノ及びジカルボン酸又はそれらの無水物の油溶性塩、エステル、アミノエステル、アミド、イミド、及びオキサゾリン;長鎖炭化水素のチオカルボキシラート誘導体、直接結合したポリアミンを有する長鎖脂肪族炭化水素;並びに長鎖置換フェノールをホルムアルデヒド及びポリアルキレンポリアミンと縮合させることによって形成されるマンニッヒ縮合生成物から選択することができる。
【0114】
カルボン酸分散剤は、少なくとも約34個、好ましくは少なくとも約54個の炭素原子を含むカルボン酸アシル化剤(酸、無水物、エステル等)と、窒素含有化合物(アミン等)、有機ヒドロキシ化合物(一価及び多価アルコールを含む脂肪族化合物、又はフェノール及びナフトールを含む芳香族化合物等)、及び/又は塩基性無機材料との反応生成物である。これらの反応生成物には、イミド、アミド、及びエステルが含まれる。
【0115】
スクシンイミド分散剤は、カルボン酸分散剤(carboxylic dispersant)の一種である。それらは、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤を、有機ヒドロキシ化合物と、又は窒素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を含むアミンと、又はヒドロキシ化合物とアミンとの混合物と反応させることによって生成される。「コハク酸アシル化剤」(“succinic acylating agent”)の用語は、炭化水素置換コハク酸又はコハク酸生成化合物を意味し、後者には酸それ自体が包含される。このような材料には、典型的に、ヒドロカルビル置換コハク酸、無水物、エステル(半エステルを含む)及びハロゲン化物が含まれる。
【0116】
コハク酸系分散剤は、多種多様な化学構造を有する。コハク系分散剤の1つのクラスは、以下の式によって表わすことができる:
【化1】
式中、各R
1は、独立的に、ポリオレフィン誘導基等のヒドロカルビル基である。典型的に、ヒドロカルビル基は、ポリイソブチル基等のアルキル基である。或いは、R
1基は、約40から約500個の炭素原子を含有することができ、そしてこれらの原子は脂肪族の形態で存在することができる。R
2はアルキレン基であり、一般的にエチレン(C
2H
4)基である。スクシンイミド分散剤の例には、例えば、米国特許第3,172,892号、第4,234,435号及び第6,165,235号に記載されたものが含まれる。
【0117】
置換基が誘導されるポリアルケンは、典型的に、2から約16個の炭素原子、通常は2から6個の炭素原子の重合性オレフィンモノマーのホモポリマー及びインターポリマーである。コハク酸アシル化剤と反応してカルボン酸分散剤組成物を形成するアミンは、モノアミン又はポリアミンであり得る。
【0118】
アミド官能基は、アミン塩、アミド、イミダゾリン及びそれらの混合物の形態をとり得るが、スクシンイミド分散剤は、通常は、大部分がイミド官能基の形態で窒素を含有するので、スクシンイミド分散剤は、このように称される。スクシンイミド分散剤を調製するために、1種以上のコハク酸生成化合物及び1種以上のアミンを加熱して、典型的に水を除去するが、これは任意選択的に、実質的に不活性な有機液体溶媒/希釈剤の存在下で行われる。反応温度は、約80℃から混合物又は生成物の分解温度までの範囲とすることができるが、これは、典型的に約100℃から約300℃の間に入る。本発明のスクシンイミド分散剤を調製する手順の追加的な詳細及び例には、例えば、米国特許第3,172,892号、第3,219,666号、第3,272,746号、第4,234,435号、第6,165,235号及び第6,440,905号に記載されたものが含まれる。
【0119】
適切な無灰分散剤には、アミン分散剤もまた含ませることができるが、これは、比較的高分子量の脂肪族ハロゲン化物とアミン、好ましくはポリアルキレンポリアミンとの反応生成物である。このようなアミン分散剤の例には、例えば、米国特許第3,275,554号、第3,438,757号、第3,454,555号及び第3,565,804号に記載されたものが含まれる。
【0120】
適切な無灰分散剤には、更に「マンニッヒ分散剤」を含ませることができるが、それは、少なくとも約30個の炭素原子を含有するアルキル基を有するアルキルフェノールと、アルデヒド(特に、ホルムアルデヒド)及びアミン(特に、ポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。このような分散剤の例には、例えば、米国特許第3,036,003号、第3,586,629号、第3,591,598号及び第3,980,569号に記載のものを含む。
【0121】
適切な無灰分散剤は、後処理された無灰分散剤、例えば後処理されたスクシンイミドとすることもでき、例えば、後処理プロセスには、例えば、米国特許第4,612,132号及び第4,746,446号等に開示されたホウ酸塩又は炭酸エチレンを伴う後処理プロセス並びに他の後処理プロセスが挙げられる。カーボナート処理されたアルケニルスクシンイミドは、分子量が約450から約3000、好ましくは約900から約2500、より好ましくは約1300から約2400、及び最も好ましくは約2000から約2400、並びにこれらの分子量の混合したものであるポリブテンから誘導されるポリブテンスクシンイミドである。好ましくは、これは、反応条件下で、ポリブテンコハク酸誘導体、不飽和酸性試薬とオレフィンとの不飽和酸性試薬コポリマー、及びポリアミンを反応させることによって調製されるが、それは、例えば、米国特許第5,716,912号に開示されており、その内容を本明細書に参照により援用する。
【0122】
金属含有又は灰形成清浄剤は、堆積物を低減又は除去する清浄剤、及び酸中和剤又は防錆剤の両方として機能し、それによって摩耗及び腐食を低減して、エンジン寿命を伸ばす。清浄剤は、一般的に、長い疎水性尾部を有する極性頭部から構成される。極性頭部には、酸性有機化合物の金属塩が含まれる。塩は、実質的に化学量論的量の金属を含有することができ、その場合、それらは、通常、正塩又は中性塩として記載され、そして典型的に、0から約80の全塩基価、即ちTBN(ASTM D2896で測定することができる)を有するであろう。大量の金属塩基を、過剰の金属化合物(例えば、酸化物又は水酸化物)と酸性ガス(例えば、二酸化炭素)とを反応させることによって、組み入れることができる。得られる過塩基性清浄剤には、金属塩基(例えば、カーボナート)ミセルの外層として中和された清浄剤が含まれる。このような過塩基性清浄剤は、約50以上のTBN、又は約100以上のTBN、又は約200以上のTBN、又は約250から約450以上のTBNを有することができる。
【0123】
本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物中に含むことができる他の金属清浄剤の代表的な例には、フェナート、脂肪族スルホナート、250以下のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ土類金属塩、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリ金属塩、ホスホナート、及びホスフィナートが含まれる。アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の塩は、上記のようであり得る。
【0124】
市販の生成物は、一般的に、中性又は過塩基性と称される。過塩基性金属清浄剤は、一般的に、炭化水素、清浄剤酸(detergent acid)、例えば:スルホン酸、カルボキシラート等、金属酸化物又は水酸化物(例えば酸化カルシウム又は水酸化カルシウム)及び促進剤、例えばキシレン、メタノール及び水の混合物をカーボナート化することによって生成される。例えば、カルボナート化において、過塩基性スルホン酸カルシウムを調製するために、酸化カルシウム又は水酸化カルシウムを、気体の二酸化炭素と反応させて、炭酸カルシウムを形成する。スルホン酸を過剰のCaO又はCa(OH)
2で中和して、スルホナートを形成する。
【0125】
過塩基性清浄剤は、低過塩基性、例えば約100未満のBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施態様では、低過塩基性塩のBNは、約5から約50であり得る。別の実施態様では、低過塩基性塩のBNは、約10から約30であり得る。更に別の実施態様では、低過塩基性塩のBNは、約15から約20であり得る。
【0126】
過塩基性清浄剤は、中過塩基性、例えば約100から約250のBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施態様では、中過塩基性塩のBNは、約100から約200であり得る。別の実施態様では、中過塩基性塩のBNは、約125から約175であり得る。
【0127】
過塩基性清浄剤は、高過塩基性、例えば250を超えるBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施態様では、高過塩基性塩のBNは、約250から約550であり得る。
【0128】
防錆剤の例には、非限定的に、非イオン性ポリオキシアルキレン剤、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアラート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレアート、及びポリエチレングリコールモノオレアート;ステアリン酸及び他の脂肪酸;ジカルボン酸;金属セッケン;脂肪酸アミン塩;重質スルホン酸の金属塩;多価アルコールの部分カルボン酸エステル;リン酸エステル;(短鎖)アルケニルコハク酸;それらの部分エステル及びそれらの窒素含有誘導体;合成アルカリルスルホナート、例えば、ジノニルナフタレンスルホン酸金属塩;等並びにそれらの混合物が含まれる。
【0129】
摩擦調整剤の例には、非制限的に、アルコキシル化脂肪族(fatty)アミン;ホウ酸化(borated)脂肪族エポキシド;脂肪族ホスファイト、脂肪族エポキシド、脂肪族アミン、ホウ酸化アルコキシ化脂肪族アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪酸アミド、グリセロールエステル、ホウ酸化グリセロールエステル;及び脂肪族イミダゾリン(これらは、米国特許第6,372,696号に開示されており、その内容を、参照により本明細書に援用する);C
4からC
75、好ましくはC
6からC
24、及び最も好ましくはC
6からC
20の脂肪酸エステルと、アンモニア及びアルカノールアミン(例えばモノ−又はジアルカノールアミン)等並びにこれらの混合物から成る群から選択される窒素含有化合物との反応生成物から得られる摩擦調整剤等が含まれる。
【0130】
抗摩耗剤の例には、非限定的に、ジアルキルジチオリン酸亜鉛及びジアリールジチオリン酸亜鉛、例えば、Lubrication Science 4−2(1992年1月)(参照:例えば97から100頁)に掲載されているBornらによる題名“Relationship between Chemical Structure and Effectiveness of Some Metallic Dialkyl− and Diaryl−dithiophosphates in Different Lubricated Mechanisms”の記事に記載のもの;アリールホスファート及びホスファイト、硫黄含有エステル、ホスホ硫黄(phosphosulfur)化合物、金属又は無灰ジチオカルバマート、キサンタート、アルキルスルフィド等及びそれらの混合物が含まれる。
【0131】
消泡剤の例には、非限定的に、アルキルメタクリラートのポリマー;ジメチルシリコーンのポリマー等及びそれらの混合物が含まれる。
【0132】
流動点降下剤の例には、非限定的に、ポリメタクリラート、アルキルアクリラートポリマー、アルキルメタクリラートポリマー、ジ(テトラ−パラフィンフェノール)フタラート、テトラ−パラフィンフェノールの縮合物、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物及びそれらの組合せが含まれる。一実施態様では、流動点降下剤は、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリアルキルスチレン等及びそれらの組合せが含まれる。流動点降下剤の量は、約0.01重量%から約10重量%で変化させることができる。
【0133】
抗乳化剤の例には、非限定的に、陰イオン界面活性剤(例えば、アルキル−ナフタレンスルホナート、アルキルベンゼンスルホナート等)、非イオン性アルコキシ化アルキルフェノール樹脂、アルキレンオキシドのポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシドやプロピレンオキシド等のブロックコポリマー)、油溶性酸のエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル等及びそれらの組合せが含まれる。抗乳化剤の量は、約0.01重量%から約10重量%で変化させることができる。
【0134】
腐食抑制剤の例は、非限定的に、ドデシルコハク酸の半エステル又はアミド、リン酸エステル、チオホスファート、アルキルイミダゾリン、サルコシン等及びそれらの組合せが含まれる。腐食抑制剤の量は、約0.01重量%から約0.5重量%で変化させることができる。
【0135】
極圧剤の例には、非限定的に、硫化した動物性又は植物性の油脂、硫化した動物性又は植物性の脂肪酸エステル、リンの3価又は5価の酸の完全に又は部分的にエステル化したエステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリスルフィド、硫化ディールス−アルダー付加物、硫化ジシクロペンタジエン、脂肪酸エステルとモノ不飽和オレフィンの硫化又は共硫化混合物、脂肪酸、脂肪酸エステル及びアルファオレフィンの共硫化ブレンド、官能基置換ジヒドロカルビルポリスルフィド、チアアルデヒド、チアケトン、エピチオ化合物、硫黄含有アセタール誘導体、テルペン及び非環式オレフィンの共硫化ブレンド、及びポリスルフィドオレフィン生成物、リン酸エステル又はチオリン酸エステルのアミン塩等及びそれらの組合せが含まれる。極圧剤の量は、約0.01重量%から約5重量%まで変化させることができる。
【0136】
前記添加剤の各々は、使用する場合には、潤滑剤に所望の特性を付与するのに機能的有効量で使用される。従って、例えば、添加剤が摩擦調整剤の場合、この摩擦調整剤の機能的有効量は、潤滑剤に所望の摩擦調整特性を付与するのに十分な量となるであろう。一般的に、これらの添加剤の各々の濃度は、使用する場合には、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%から約20重量%、そして一実施態様では約0.01重量%から約10重量%の範囲である。
【0137】
更に、前記の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の添加剤は、添加剤パッケージ又は濃縮物として提供することができ、添加剤は、上記のような実質的に不活性で通常は液体の有機希釈剤中に混合されている。添加剤パッケージは、典型的に、必要量の潤滑粘度の油と直接組合せるのを促進する所望の量及び比率で、上記のような一つ以上の多様な添加剤を含有するであろう。
【0138】
一実施態様では、本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、分散剤及び/又は亜鉛化合物、例えばジチオリン酸亜鉛を実質的に含まないか、又は含まない。本発明で使用される「実質的に含まない」の用語は、含まれている場合、分散剤及び/又は亜鉛化合物の各々が比較的低いレベル、例えば船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物中分散剤及び/又は亜鉛化合物の各々が約0.5重量%未満であることを意味する。別の実施態様では、「実質的に含まない」の用語は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物中分散剤及び/又は亜鉛化合物の各々が約0.1重量%未満であることを意味する。別の実施態様では、「実質的に含まない」の用語は、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物中分散剤及び/又は亜鉛化合物の各々が約0.01重量%未満であることを意味する。
【0139】
本明細書に開示され、以下に例示される本発明の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物中の全TPP及びその未硫化金属塩(即ち、「全TPP」又は「全残留TPP」)並びに潤滑剤及び硫化アルキル置換ヒドロキシ芳香族組成物の塩を含有する油添加剤の濃度は、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定される。HPLC法では、正確に80から120mgの試料を10ml容のメスフラスコに秤量し、塩化メチレンでレベルマークまで希釈し、そして試料が完全に溶解するまで混合することによって分析用の試料を調製した。
【0140】
HPLC法で使用したHPLCシステムには、HPLCポンプ、サーモスタットHPLCカラムコンパートメント、HPLC蛍光検出器、及びPCベースのクロマトグラフィーデータ取得システムが含まれる。記載の特定のシステムは、ChemStationソフトウェアを使用したAgilent 1200 HPLCに基づく。HPLCカラムは、Phenomenex Luna C8(2)150×4.6mm5μm100Å、P/N00F4249E0であった。
【0141】
以下のシステム設定を分析の実施に使用した:
【0144】
蛍光波長:225励起313発光:利得=9
【0148】
勾配:0から7分間で85/15メタノール/水を100%メタノール直線勾配に切り替え。
【0150】
得られたクロマトグラフには、典型的に、幾つかのピークが含有される。遊離の未硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物(即ち、TPP)に起因するピークは、典型的に、早い保持時間で一緒に溶出する;一方、硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物に起因するピークは、典型的に、より長い保持時間で溶出する。定量の目的で、遊離の未硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩の単一の最大ピークの面積を測定し、次いで、その面積を、その全遊離未硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物及びその未硫化金属塩種の濃度を定量するために使用した。アルキルヒドロキシ芳香族化合物の種は変化しないと仮定するが、何らかにより、アルキルヒドロキシ芳香族化合物の種が変わった場合には、再較正が必要となる。
【0151】
選択されたピークの面積を較正曲線と比較して、遊離アルキルフェノール及びアルキルフェノールの遊離未硫化塩の重量%を得る。校正曲線は、フェナート生成物を作成するために使用した遊離未硫化アルキルヒドロキシ芳香族化合物について得られたクロマトグラフの同じピークを使用して作成した。
【0152】
以下の非限定的な例により、本発明を説明する。
【0153】
高温清浄性及び熱安定性の程度は、以下に記載するコマツホットチューブ(Komatsu Hot tube:“KHT”)試験を使用して、以下の例の各々について評価した。例の各々の結果を表1に記載する。
【0154】
コマツホットチューブ(Komatsu Hot tube)(KHT)試験
【0155】
コマツホットチューブ試験は、潤滑油の清浄性並びに熱及び酸化安定性を測定する潤滑産業ベンチテストである。清浄性並びに熱及び酸化安定性は、潤滑油の満足な全体的な性能に必須であるとして産業界で一般的に受け入れられている性能領域である。テストの間、特定量の試験油を、特定の温度に設定されたオーブン内に配置されたガラス管を通って上方に圧送する。油がガラス管に入る前に、空気は油流れに導入され、そして油と共に上方に流れる。船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油の評価は、300から330℃の間の温度で行った。試験結果を、ガラス試験管に堆積したラッカーの量を、1.0(非常に黒い)から10.0(完全にクリーン)の範囲の評定尺度と比較することによって決定する。結果を、0.5の倍数で報告する。閉塞は、堆積状態であり、ラッカーが非常に厚く、且つガラス試験管の殆どが塞がれて、試験管を通る正常な油及び空気の流れが妨げられている状態である。ブロッキングは、1.0の評定より劣る結果と看做すことができるが、その発生は、同じテスト実験で同時にテストされる他の試験管のブロッキングによって非常に影響を受ける場合がある。
【0156】
以下の成分を、船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物を配合する際に、下記のように使用する。
【0157】
Chevron 600N RLOP:グループIIをベースとする潤滑油は、Chevron 600N RLOPベースストックであり、これは、Chevron Productgs Company (カリフォルニア州、サン・ラモン)から入手可能であった。
【0158】
ExxonMobil CORE(登録商標)2500BS:グループIをベースとする潤滑油は、ExxonMobil CORE(登録商標)2500BSベースストックであり、ExxonMobil(テキサス州、アービング)から入手可能であった。
【0159】
表1の例で使用した清浄剤を、以下に記載する。
【0160】
清浄剤A:C
20からC
28線状オレフィンから誘導されるアルキル置換基を有する中性(非過塩基性)アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム添加剤の油濃縮物であり、米国特許出願第2007/0027043号の例1に記載された方法に従って調製したが、後続の過塩基化工程は行っていない。この添加剤濃縮物には、2.17重量%のCa及び約43.0重量%の希釈油が含有され、そして、TBNは61であった。活性基準で、この添加剤(希釈油不存在)のTBNは107である。
【0161】
清浄剤B:プロピレン四量体から誘導される過塩基性硫化カルシウムフェナートの油濃縮物である。この添加剤には、9.6重量%のCa及び約31.4重量%の希釈油が含有され、そして、TBNは260であった。清浄剤Bは、製造された清浄剤の重量に基づいて、約5から7重量%の全TPP含量、即ちTPP及びその未硫化金属塩を有すると考えられる。
【0162】
清浄剤C:約50重量%のC
20からC
28線状オレフィン及び50重量%の分枝状ヒドロカルビルラジカルプロピレン四量体から誘導されるアルキル置換基を有する、未硫化、非過塩基性アルキルヒドロキシベンゾアート含有、フェノール蒸留添加剤の油濃縮物であり、米国特許出願第2004/0235686号の例1に記載された方法に従って調製した。この添加剤には、5.00重量%のCa及び約33.0重量%の希釈油が含有され、そして、TBNは140であった。活性基準で、この添加剤(希釈油不存在)のTBNは210である。清浄剤Cは、製造された清浄剤の重量に基づいて、約2から3重量%の全TPP含量、即ちTPP及びその未硫化金属塩を有すると考えられる。
【0163】
清浄剤D:C
20からC
28線状オレフィンから誘導されるアルキル置換基を有する、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム添加剤の油濃縮物であり、米国特許出願2007/0027043の例1に記載された方法に従って調製した、この添加剤には、5.35重量%のCa及び約35.0重量%の希釈油が含有され、そして、TBNは150であった。活性基準で、この添加剤(希釈油不存在)のTBNは230である。
【0164】
清浄剤E:C
20からC
28線状オレフィンから誘導されるアルキル置換基を有する、過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム添加剤の油濃縮物であり、米国特許出願第2007/0027043号の例1に記載された方法に従って調製した。この添加剤には、12.5重量%のCa及び約33.0重量%の希釈油が含有され、そして、TBNは350であった。活性基準で、この添加剤(希釈油不存在)のTBNは522である。
【0165】
清浄剤F:アルキル基がC
20からC
24線状アルファオレフィンから誘導される、過塩基性アルキルトルエンスルホン酸カルシウム清浄剤の油濃縮物である。この添加剤濃縮物には、16.1重量%のCa及び約38.7重量%の希釈油が含有され、そして、TBNは420であった。活性基準で、この添加剤(希釈油不存在)のTBNは685である。
【0166】
清浄剤G:C
14からC
18線状アルファオレフィンから誘導されるアルキル置換基を有する過塩基性アルキルヒドロキシ安息香酸カルシウム添加剤の油濃縮物である。この添加剤には、6.25重量%のCa、及び約41.0重量%の希釈油が含有され、そしてTBNは175であった。活性基準では、この添加剤(希釈油は不存在)のTBNは296である。
【0167】
例1〜3及び比較例A〜J
例1〜3及び比較例A〜Jの船舶用ディーゼルエンジン潤滑油組成物を、表1及び以下に記載するように調製した。例1及び比較例A〜Jの各船舶用ディーゼルエンジン潤滑油組成物は、SAE 40粘度等級油であり、動粘度は100℃で約14.5cStであり、そしてTBNは約40mgKOH/gであった。例2は、SAE 50粘度油であり、動粘度は100℃で約18.7cStであり、そしてTBNは約70mgKOH/gであった。例3は、SAE 50粘度油であり、動粘度は100℃で約18.9cStであり、そしてTBNは約20mgKOH/gであった。例1〜3及び比較例A〜Jの船舶用ディーゼルエンジン潤滑油組成物は、主要量のグループIIのベースストック及び少量のグループIのベースストック、表1に規定の清浄剤組成物、及び0.04重量%の抑泡剤(foam inhibitor)を使用して配合した。比較例Dは、約31.7重量%の希釈油を有する、1000MWのポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)及び重ポリアミン(HPA)/ジエチレントリアミン(DETA)から誘導されるビススクシンイミド分散剤の油濃縮物0.57重量%を更に含んだ。例1〜3の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の各々は、TPP及びその未硫化金属塩を含有していなかった。
【表1】
【0168】
表1に記載の結果が示すように、本発明の清浄剤組成物を含有する例1〜3の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、比較例A〜Jの船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物よりも驚く程改良された清浄特性を示した。これは、より高い温度範囲に亘って保持された、より高いKHT値により示されており、そして、例1〜3の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物が、それらの組成物が、ホットチューブを汚染する潤滑油の酸化又は分解生成物を殆ど生じない点で、優れた清浄性及び熱安定性をホットチューブ試験において発揮することを示している。更に、例1〜3は、TPP及びその未硫化金属塩を実質的に含まない。
【0169】
種々の変更を、本明細書に開示された実施態様に対して行い得ることが理解されるであろう。従って、上記の説明は、限定的なものとしてではなく、単に好ましい実施態様の例示として解釈されるべきである。例えば、上記され、且つ本発明を行うための最良の形態として実施された機能は、単に例示目的のためである。他の構成及び方法を、本発明の範囲及び本質から逸脱することなく当業者は実施できる。更に、当業者は、本明細書に添付された特許請求の範囲及び本質の中で他の変更を想起するであろう。
本発明に関連して、以下の内容を更に開示する。
[1]
(a)主要量の1種以上のグループIIのベースストック、並びに
(b)(i)250超過の全塩基価(TBN)を有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のアルカリ土類金属塩、及び(ii)1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩、を含む清浄剤組成物;
を含む船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物であって:
前記アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩の前記芳香族部分は、ヒドロキシル基を含有せず;そして、前記船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物は、約5から約120のTBNを有する、
前記潤滑油組成物。
[2]
約20から約100のTBNを有する、[1]に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[3]
約10から約40のTBNを有する、[1]に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[4]
テトラプロペニルフェノール(TPP)及びその未硫化金属塩を実質的に含まない、[1]から[3]のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[5]
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の前記1種以上のアルカリ土類金属塩が、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の1種以上のカルシウム塩である、[1]から[4]のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[6]
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の前記アルカリ土類金属塩の前記アルキル置換部分が、C10からC40アルキル基である、[1]から[5]のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[7]
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の前記1種以上のアルカリ土類金属塩が、250超過且つ約800までのTBNを有する、[1]から[6]のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[8]
前記1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩が、1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸アルカリ土類金属である、[1]から[7]のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[9]
前記1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩が、1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸カルシウムである、[1]から[8]のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[10]
前記1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩が、250超過のTBNを有する、[1]から[9]のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[11]
前記船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて、活性基準で約0.1から約35重量%の、250超過のTBNを有するアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸の前記1種以上のアルカリ土類金属塩;及び
前記船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の全重量に基づいて、活性基準で約0.1から約34重量%の、前記1種以上の高過塩基性アルキル芳香族スルホン酸又はそれらの塩、
を含む、[1]から[10]のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[12]
酸化防止剤、無灰分散剤、清浄剤、防錆剤、曇り除去剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、流動点降下剤、消泡剤、補助溶媒、腐食防止剤、染料、極圧剤及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物添加剤を更に含む、[1]から[11]のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[13]
分散剤及び/又は亜鉛化合物を実質的に含まない、[1]から[12]のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物。
[14]
船舶用2ストローククロスヘッドディーゼルエンジンを潤滑する方法であって、前記方法が、[1]から[13]のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物を用いて、前記エンジンを動作することを含む、方法。
[15]
2ストローククロスヘッド船舶用ディーゼルエンジンにおける高温清浄性及び熱安定性を改良するための、[1]から[13]のいずれか一項に記載の船舶用ディーゼルシリンダー潤滑油組成物の使用。