(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記作用電極とレドックス活性電極との間で前記印加電気バイアスが、25℃で測定されるとき1.23〜1.8V、25℃で測定されるとき1.23〜1.6V、または25℃で測定されるとき1.23〜1.5Vである、請求項1に記載のシステム。
セル内で水溶液から水素ガスおよび酸素ガスを発生させる方法であって、作用電極とレドックス活性電極との間に、25℃で測定されるとき少なくとも1.23Vである電気バイアスを印加することを含み、前記セルが、水溶液を含み、前記作用電極において前記水溶液中の水の還元をもたらしてそれによって水素ガスおよび水酸化物イオンを発生させ;
前記水素ガスを前記セルから排出させることを含み;
前記レドックス活性電極が水酸化物イオンの存在下で可逆的に酸化を受けて、少なくとも部分的に酸化されたレドックス活性電極が得られ、
電気バイアスの非存在下で前記セルに刺激を印加することによって、前記少なくとも部分的に酸化されたレドックス活性電極が還元を受けることをもたらし、それによって前記レドックス活性電極を再生し、かつ酸素ガスを発生させることを含む、方法。
水素ガスの発生が、作用電極とレドックス活性電極との間で、25℃で測定されるとき1.23〜1.8V、25℃で測定されるとき1.23〜1.6V、または25℃で測定されるとき1.23〜1.5Vである印加バイアスの下で達成される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、水素製造に関し、より詳しくは、他を排除するものではないが、水電解によって水素製造を行うための新規なシステムおよび方法に関する。
【0075】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明がその適用において、以下の記載で示されかつ/または図面および/もしくは実施例で例示される構成要素および/または方法の構成および配置の詳細に必ずしも限定されるとは限らないということを理解されたい。本発明は、その他の実施形態が可能であるかまたは、様々な方法で実施もしくは実行することができる。
【0076】
本発明者らは、可逆的な酸化および還元を受ける電極を使用することによって水素発生反応(HER)と酸素発生反応(OER)とを時間および/または空間において分離することにより、水電解(例えばアルカリ水電解)による水素ガス製造の効率および費用対効果が向上し得ると予測した。HERとOERとの分離は、得られたガスの汚染を軽減し、得られた水素ガスと酸素ガスとの危険な接触を無くしさえし、ガスを分離するために高価かつ/または易分解性である膜を使用することを防ぐ。
【0077】
本発明を具体化するうちに本発明者らは、可逆的な酸化および還元を受ける補助電極を介して(間接的に)電気接続された別個の区画の中でHERおよびOERが作用電極においてもたらされるシステム、ならびにHERとOERとが異なる時間にもたらされる単一区画システムを考案した。
【0078】
水電解:
水を還元してそれにより水素ガスおよび水酸化物イオンを発生させること(本明細書および当該技術分野では「水素発生反応」または「HER」と呼ばれる)、ならびに水酸化物イオンを酸化してそれにより酸素ガスおよび水を発生させること(本明細書および当該技術分野では「酸素発生反応」または「OER」と呼ばれる)による、水の電気分解。これらの反応はそれぞれ下記式で表され得る。
【化2】
【0079】
本明細書におけるいずれかの(本明細書に記載の実施形態のいずれかの態様による)実施形態では、水の電気分解は、作用電極において水を還元してそれにより水素ガスおよび水酸化物イオンを発生させること、ならびに作用電極において水酸化物イオンを酸化してそれにより酸素ガスおよび水を発生させることによってもたらされ得る。本明細書で詳しく記述するように、HERがOERとは異なる作用電極においてもたらされてもよく、かつ/または、同じ作用電極においてHERおよびOERが異なる時間にもたらされてもよい。
【0080】
本明細書に記載のいずれかの実施形態において、(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って)水素発生反応をもたらす作用電極は、例えばアルカリ条件下で(例えばアルカリ水溶液に関して本明細書において記載されるいずれかの実施形態に従って)水素発生反応が起こるカソードに適する任意の材料からなり得る。
【0081】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、作用電極は、(例えばアルカリ条件下で)水素発生反応が起こるカソードと酸素発生反応が起こるアノードとの両方に適する任意の材料からなる。そのような作用電極は、例えば、作用電極において水素発生反応と酸素発生反応とが異なる時間に起こる実施形態で使用され得る。
【0082】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、水素発生反応をもたらす作用電極は、炭素、1つ以上の光活性材料(例えば光カソード材料)、および/または1つ以上の金属を含む。適する金属としては、例えば、白金、ニッケルおよびステンレス鋼が挙げられる。場合によっては2つ以上の金属をそれらの任意の組み合わせとして、例えば合金として、かつ/または金属を別の金属でメッキしたもの(例えば、ニッケルメッキステンレス鋼、白金メッキステンレス鋼)として、含んでもよい。
【0083】
本明細書において、用語「光活性材料」は、本明細書において用語の定義がなされているとおりの光カソード材料および光アノード材料を包含する。
【0084】
本明細書において、用語「光カソード材料」は、光(例えば可視光)の吸収に際して電子を放出する材料を指す。
【0085】
適する光カソード材料の例としては、限定はしないが、(例えばp型形態の)シリコンおよびCu
2O、Ag−O−Cs、Sb−Cs、バイアルカリ(例えば、Sb−Rb−Cs、Sb−K−Csおよび/またはNa−K−Sb)、マルチアルカリ(例えばNa−K−Sb−Cs)、砒化ガリウム(II)ならびに砒化インジウムガリウムなどの半導体が挙げられる。
【0086】
本明細書において、用語「光アノード材料」は、光(例えば可視光)の吸収に際して電子を受け取る材料を指す。
【0087】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、水素発生反応をもたらす作用電極は、水を還元してそれにより分子状水素を発生させるなどのカソード反応の触媒として作用する少なくとも1つの追加の物質を含む。そのような物質の例としては、例えば、ホウ化ニッケルおよび白金が挙げられる。そのような触媒は、場合により、カソード反応に関連する過電圧を低下させ得、それにより、水素ガスを生成するために必要な第1電圧の最小値を低くする。
【0088】
本明細書に記載のいずれかの実施形態において、(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って)酸素発生反応をもたらす作用電極は、例えばアルカリ条件下で(例えば、アルカリ水溶液に関して本明細書において記載されるいずれかの実施形態に従って)酸素発生反応が起こるアノードに適する任意の材料からなり得る。
【0089】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、酸素発生反応をもたらす作用電極は、炭素、1つ以上の光活性材料(例えば光アノード材料)、および/または1つ以上の金属を含む。適する金属としては、例えば、白金、ニッケルおよびステンレス鋼が挙げられる。場合によっては2つ以上の金属を、それらの任意の組み合わせとして、例えば合金として、かつ/または金属を別の金属でメッキしたもの(例えば、ニッケルメッキステンレス鋼、白金メッキステンレス鋼)として、含んでもよい。
【0090】
適する光アノード材料の例としては、限定はしないが、n型形態の半導体(例えば、シリコンおよびCu
2O)、TiO
2、Fe
2O
3(例えば、ヘマタイト(α−Fe
2O
3))、WO
3およびBiVO
4が挙げられる。ヘマタイトは典型的な光アノード材料である。
【0091】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、酸素発生反応をもたらす作用電極は、水酸化物イオンを酸化してそれにより分子状酸素を発生させるなどのアノード反応の触媒として作用する少なくとも1つの追加の物質を含む。そのような物質の例としては、例えば、RuO
2、IrO
2、Fe
2O
4、Co
3O
4、0<x<2でのCoO
x、Ni(OH)
2、ニッケルオキシ水酸化物、0<x<1でのNi
1−xFe
x(OH)
2、0<x<1でのNi
1−xFe
xOOH、リン酸コバルトおよびホウ酸ニッケルが挙げられる。そのような触媒は、場合により、アノード反応に関連する過電圧を低下させ得、それにより、分子状酸素(例えば酸素ガス)を生成するために必要な第1電圧の最小値を低くする。
【0092】
本明細書に記載の各電極(例えば、本明細書に記載の作用電極)は、場合により、基材、例えば導電性基材を被覆した1つ以上の電極活物質(例えば、上記の活物質)を含み得るかまたは、(1つ以上の)活物質自体を含み得る。
【0093】
本明細書に記載の各電極(本明細書に記載のいずれかの実施形態による作用電極および/またはレドックス活性電極を包含する)は、独立して、集電体に接続された単一ユニットまたはいくつかのユニットを場合により含み得る。
【0094】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載のいずれかの態様による水溶液(例えば、本明細書に記載のいずれかのシステムにおけるいずれかの電気化学セル内の水溶液)は、電解質を含む。
【0095】
水溶液は、電気分解、例えば水の電気分解での使用に適する任意の水溶液であり得る。
【0096】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、電解質は、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、SrまたはBaである金属を例えば金属塩として含む。いくつかの実施形態において、金属はアルカリ金属である。
【0097】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、電解質は、金属水酸化物を含む。いくつかの実施形態において、金属水酸化物は、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、SrまたはBaの水酸化物を含む。いくつかの実施形態において、金属水酸化物は、アルカリ金属の水酸化物を含む。いくつかの実施形態において、金属水酸化物はNaOHまたはKOHである。
【0098】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる水溶液は、アルカリ性であり、pHが7超、場合によっては少なくとも8、場合によっては少なくとも9、場合によっては少なくとも10、場合によっては少なくとも11、場合によっては少なくとも12、場合によっては少なくとも13、および場合によっては少なくとも14であることによって特徴付けられる。
【0099】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる水溶液中の水酸化物イオンの濃度は少なくとも0.01Mである。いくつかの実施形態において、水酸化物イオンの濃度は少なくとも0.03Mである。いくつかの実施形態において、水酸化物イオンの濃度は少なくとも0.1Mである。いくつかの実施形態において、水酸化物イオンの濃度は少なくとも0.3Mである。いくつかの実施形態において、水酸化物イオンの濃度は少なくとも1Mである。典型的な実施形態において、水酸化物イオンの濃度は約1Mである。
【0100】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる水溶液中のアルカリ金属水酸化物(例えばNaOHおよび/またはKOH)の濃度は少なくとも0.01Mである。いくつかの実施形態において、アルカリ金属水酸化物(例えばNaOHおよび/またはKOH)の濃度は少なくとも0.03Mである。いくつかの実施形態において、アルカリ金属水酸化物(例えばNaOHおよび/またはKOH)の濃度は少なくとも0.1Mである。いくつかの実施形態において、アルカリ金属水酸化物(例えばNaOHおよび/またはKOH)の濃度は少なくとも0.3Mである。いくつかの実施形態において、アルカリ金属水酸化物(例えばNaOHおよび/またはKOH)の濃度は少なくとも1Mである。典型的な実施形態において、アルカリ金属水酸化物の濃度は約1Mである。
【0101】
水酸化物イオンおよび/または金属水酸化物の濃度の上限は、例えば、作動条件下(例えば温度約25℃)での溶液中の水酸化物塩の溶解度限界によって決まり得る。
【0102】
本明細書において、「水酸化物イオンの濃度」は、溶液全体の平均濃度を指す。当業者であれば、アノード付近の水酸化物イオンの濃度がカソード付近の水酸化物イオンの濃度とは実質的に異なり得ることを理解するであろう。
【0103】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる水溶液中のNaOHの濃度は、0.5〜52.6重量パーセントの範囲内である。
【0104】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる水溶液中のKOHの濃度は、0.5〜54.8重量パーセントの範囲内である。
【0105】
本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる水溶液中の電解質(例えば水酸化物イオン)の濃度は、場合により、(例えば水素ガスの製造の間)一定に留まってもよく、または(例えば水素ガスの製造の間)変化してもよい。
【0106】
別個の区画内での水素および酸素の発生:
図面を参照して、
図1は、本発明のいくつかの実施形態の一態様による水素を製造するシステム10を全体として示す。
【0107】
図1に示す代表例において、システム10は、第1容器20および第2容器60からなる。容器20および60は、好ましくは、(例えば、流体が一方から他方へと通過できないように)相互に分離されており、場合により、互いに隣り合っていてもよく、または、例えば少なくとも1メートル、少なくとも10メートル、少なくとも100メートル、さらには少なくとも1kmの距離を空けて離れていてもよい。
【0108】
容器20は、第1作用電極18および第1レドックス活性電極16を含み、システムが作動している時には、水溶液40、好ましくは電解質水溶液が容器20を少なくとも部分的に満たしている。システムの作動中、作用電極18またはその一部(例えば下部)、およびレドックス活性電極16またはその一部(例えば下部)は、水溶液40との接触が保たれる。本明細書では、容器20ならびに電極16および18を共に(水溶液40の有無に拘らず)まとめて「第1電気化学セル」と呼ぶ。
【0109】
同様に、容器60は、第2作用電極58および第2レドックス活性電極56を含み、システムが作動している時には、水溶液80、好ましくは電解質水溶液が容器60を少なくとも部分的に満たす。システムの作動中、作用電極58またはその一部(例えば下部)、およびレドックス活性電極56またはその一部(例えば下部)は、水溶液80との接触が保たれる。本明細書では、容器60ならびに電極56および58を共に(水溶液80の有無に拘らず)まとめて「第2電気化学セル」と呼ぶ。
【0110】
本明細書において、用語「電気化学セル」は、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる((電解質)水溶液の有無に拘らず)少なくとも2つの電極を含む区画を指して、簡潔さおよび読み易さのために用いられるものであり、本明細書に明確に記載されている限定を超えるいかなる限定の含蓄も意図していない。本明細書ではこの用語を、本明細書に記載の少なくとも2つの電極(例えば、作用電極および少なくとも1つの追加の電極)を含む区画と互換的に見なす。
【0111】
同様に、本明細書では、容器(例えば、第1容器または第2容器)および容器内の電極(例えば、作用電極および少なくとも1つの追加の電極)を含む電気化学セル(例えば、第1電気化学セルまたは第2電気化学セル)は、電極(例えば、作用電極および少なくとも1つの追加の電極)を含む区画と互換性があると解釈されるべきである。
【0112】
本明細書全体において、用語「レドックス活性」は、好ましくは(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)可逆的な様式で、酸化および/または還元を受けることのできる物質または材料を指し、その酸化状態、その還元状態、および任意の中間の(例えば部分的に酸化された)状態にある物質または材料を包含する。
【0113】
本明細書において、語句「レドックス活性電極」と「補助電極」とは、特に(レドックス活性電極が互いに電気接続可能であるか、かつ/または電気接続された)一対のセルに関連して本明細書において記載される実施形態に関して、互換的に用いられる。
【0114】
いくつかの実施形態において、容器20および/または60は仕切られていない、つまり、(1つ以上の)容器は、電極18と電極16との間(または電極58と電極56との間)に、一方の電極から他方へのガスの流れを防止するものである仕切り(例えばイオン交換膜)を有していない。しかしながら、容器20および/または60が(場合によりイオン交換膜で)仕切られている実施形態もまた本明細書において想到される。
【0115】
いくつかのそのような実施形態では、システム10は、いかなるイオン交換膜も有していない。膜の欠如は、場合によってはコストを低減しかつ/またはシステムの耐久性を向上させ得、かつ/またはより高いガス圧でのシステムの作動を可能にし得る。
【0116】
第1レドックス活性電極16および第2レドックス活性電極56は、互いに電気接続可能であり、場合により選択されるいくつかの実施形態では、電気接続部50(それは場合により金属線である)によって互いに接続されている。
【0117】
レドックス活性電極に関して本明細書において記載されるいずれかの実施形態、および場合によっては(別個の区画内での水素および酸素の発生に関して)この節において記載されるいずれかの実施形態によれば、第1レドックス活性電極16および第2レドックス活性電極56の各々は、水酸化物イオンの存在下で可逆的に酸化を受けることおよび水の存在下で還元を受けることができる(還元は場合によって水酸化物イオンを生成する)。いくつかの実施形態において、レドックス活性電極16および/またはレドックス活性電極56は、Ni(OH)
2および/またはニッケルオキシ水酸化物を含み、その少なくとも一部は、通常は電極16および/または56の表面、好ましくはそれぞれ溶液40または80に触れている部分に、見受けられる。
【0118】
本明細書全体において、酸化および/または還元を「可逆的に受ける」とは、(例えば電極内の)初期物質の表示の酸化およびそれに続く還元の(例えば電極内の)生成物が、本質的に初期物質と同じである、ということを意味する。酸化反応と還元反応とは、場合によって互いに鏡像関係にあってもよい。あるいは、例えば、酸化および還元の可逆的サイクルを完結させるために酸化および還元の際に追加の反応(例えば、自発的および/または非レドックス反応)が起こらなければならない場合では、酸化反応と還元反応とは互いに鏡像関係にない。
【0119】
いくつかの実施形態において、第1レドックス活性電極16および第2レドックス活性電極56は、レドックス活性電極16が容器60内のレドックス活性電極56に取って代わることができかつ/またはレドックス活性電極56が容器20内のレドックス活性電極16に取って代わることができるように、(
図1に描写されている)それらの各々の容器から取り外し可能でありかつ相互交換可能であるように構成されている。いくつかのそのような実施形態では、所与の電圧でシステム10を作動させ続けるのに必要なレドックス活物質が電極16および18のうちの片方または両方から枯渇し始めたときにレドックス活性電極16をレドックス活性電極56で置き換える(その逆も同様)ことによって、水素ガスがレドックス活性電極16において連続的またはほぼ連続的にシステム10によって製造され得る。
【0120】
溶液40および80は、同一であっても異なっていてもよい。本発明のいくつかの実施形態による溶液40および/または80は、本明細書において記述される金属水酸化物電解質、例えば、水溶液中に溶解または懸濁した金属アルカリ水酸化物などを含む。
【0121】
いくつかの実施形態において、電極18および58は、直流電源などの電源に接続可能である。電源は、場合により、電池、蓄電器、(例えば発電所の)発電装置、太陽光発電(PV)電源またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0122】
本明細書において用いられる語句「電源に接続可能」は、電源への接続を可能とするように構成されていること、電源に接続されていること、および電源を含むことを包含する。例えば、電極18および/または58は場合により、電源としての働きをする(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)光カソードおよび/または光アノードであって電極18および58が互いに対して接続可能である光カソードおよび/または光アノードを含んでもよい。
【0123】
本発明の典型的な種々の実施形態において、システム10は、電極18と電極58との間に電位差を発生させるために、電極18および/または58を電源に接続するための電気導線24および/または64をさらに含む。そのような接続をすると、電位差の極性に応じて電子が電極58から電極18へ(および、電極16から電極56へ)、またはその逆へと流れ始める。このように閉じられた電気回路内を流れる電流は、電源(図示せず)に直列で接続可能な(場合によっては接続された)電流測定装置を使用して測定および場合によっては監視することができる。その他のパラメータ、例えば電圧もまた、当該技術分野において既知であるとおり必要に応じて測定することができる。
【0124】
いくつかの実施形態において、システムは、例えば本明細書に例示するように、任意の1つ以上の容器内に参照電極(図示せず)をさらに含む。参照電極は、場合により、例えば電圧を監視するために構成されている。
【0125】
本発明の典型的な種々の実施形態において、電子が電極58から電極18へと流れる時、溶液40中の負に帯電した水酸化物イオンは、電極18から遠ざかって電極16へ向かって流れ、レドックス活性電極16を酸化するように反応し、溶液80中の負に帯電した水酸化物イオンは、電極56から遠ざかって電極58へ向かって流れ、酸素ガスを発生させるように作用電極58において酸化される。さらに、作用電極18の近傍およびレドックス活性電極56の近傍は結果としてより酸性になり、それにより、水素ガスを発生させるように作用電極18での水中の水素イオンの還元を容易にし、かつ(例えば水酸化物イオンを発生させるように)レドックス活性電極56の還元を容易にする。
【0126】
あるいは、またはさらに、電子が電極18から電極58へと流れる時、溶液40中の負に帯電した水酸化物イオンは、電極16から遠ざかって電極18へ向かって流れ、酸素を発生させるように電極18において酸化され、溶液80中の負に帯電した水酸化物イオンは、電極58から遠ざかって電極56へ向かって流れ、レドックス活性電極56を酸化するように反応する。さらに、作用電極58の近傍およびレドックス活性電極16の近傍は結果としてより酸性になり、それにより、水素ガスを発生させるように作用電極58での水中の水素イオンの還元を容易にし、かつ(例えば水酸化物イオンを発生させるように)レドックス活性電極16の還元を容易にする。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態において、システム10はさらに、水素ガスおよび/もしくは酸素ガスを容器20の外へ排出するのを可能にするための少なくとも1つのガス出口30ならびに/または、水素ガスおよび/もしくは酸素ガスを容器60の外へ排出するのを可能にするための少なくとも1つのガス出口70を含む。いくつかの実施形態(例えば、水素ガスが容器20内でのみ発生し酸素ガスが容器60内でのみ発生する実施形態)では、ガス出口30を通って排出されたガスが、出口70を通って排出されたガスから隔離されるように、出口が構成される。
【0128】
ガス出口30および/または70を通じたガスの排出は、例えば任意選択の弁32または72によってそれぞれ場合により制御され、当該弁32または72は、閉じているときにそれぞれガス出口30または70を通じたガスの放出を防止し、先に排出されたガスを容器20および/または60から隔離するものである。排出された水素ガスおよび/または酸素ガスは、場合により、ガスを捕集するために構成された貯留器(図示せず)内に捕集することができる。好ましくは、排出された水素ガスは、水素ガス、場合によっては出口30からの水素ガスを捕集するために構成された貯留器(図示せず)内に捕集される。このように、本発明のいくつかの実施形態において、ガス(例えば水素ガス)は、例えばガス搬送管(図示せず)によって貯留器またはその他の任意の外部位置へと搬送される。
【0129】
いくつかの実施形態において、排出されたガスは、酸素ガス、場合によっては出口70からの酸素ガスを捕集するために構成された、貯留器(図示せず)内に捕集される。あるいは、またはさらに、排出された酸素ガスを周囲環境へ放出してもよい。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態では、容器20が少なくとも1つの入口34をさらに含み、かつ/または容器60が少なくとも1つの入口74をさらに含み、当該入口は、水溶液を各容器内に受け入れる(場合によっては除去もする)ために構成されたものである。入口34および74は、例えば(例えば管と連通するために構成された)比較的狭い入口、および各容器の窓または着脱可能な蓋を含めて、任意の適切な大きさおよび配置を有し得る。入口34および/または74を通じた溶液の受け入れは、例えば任意選択の弁36または76によってそれぞれ場合により制御され、当該弁36または76は、閉じているときにそれぞれガス出口34または74を通じたガスまたは液体の放出を防止するものである。入口34および出口32は、場合により、(本明細書に記載の)ガス出口と(本明細書に記載の)入口との両方としての働きをするために構成された単一構造体(図示せず)として構成されていてもよい。さらに、またあるいは、入口74および出口72は、場合により、単一構造体(図示せず)として構成されていてもよい。
【0131】
場合により、電極16、18、56および/または58における電気化学反応は、例えば、(例えば、電極16および/または18での反応を監視するための)第1電気化学セルおよび/または(例えば、電極56および/または58での反応を監視するための)第2電気化学セルに連通し、場合によってそれぞれ容器20および/または60の中に位置している、1つ以上の電気化学ユニット(図示せず)によって監視することが好ましい。電気化学ユニットは、システム10の作動および/または状態に関係する任意のパラメータを測定するように構成され得る。これらとしては、限定はしないが、電極16、18、56および/または58における電位、溶液40および/または80のpH、(例えば、容器20および/または60の中の)ガスの圧力および/または組成などが挙げられる。電気化学ユニットによって生成された電気信号は、例えば通信線(図示せず)を介して遠隔位置(図示せず)へと送信することができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の水素ガスを製造するシステムはさらに、容器20および/または60のために溶液のための1つ以上の容器を含み、当該1つ以上の容器は、作動可能に容器20および/または60に連結可能な(場合によっては連結された)ものであり、かつ、溶液を(場合により入口34および/または74を通じて)中の電極へと供給するように構成されたものである。
【0133】
電極16、18、56および/または58ならびに溶液40および80の、性質および特性、ならびにシステム内に含むことのできるその他の構成要素の性質および特性については、本明細書中でさらに詳しく述べる。
【0134】
電極16および18、電極56および58、容器壁ならびにその他の構成要素の間での距離、ならびに種々の構成要素の形状は、操作することができ、概して当業者によって認識されるとおりである。例えば、各容器内のレドックス活性電極は、抵抗損および/または濃度分極損失を最小限に抑えるために、各々の容器内で作用電極のすぐ近くに配置することが好ましい。さらに、レドックス活性電極の活性面積は、印加電圧を増大させることによって補償しなければならないであろう動的過電位を最小限に抑えるために、作用電極間の外部電流に適合するほど十分に広いことが好ましい。
【0135】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極(第1および/または第2レドックス活性電極)の酸化および/または還元は、0〜1.6V
RHEの範囲内の標準酸化還元電位によって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態において、標準酸化還元電位は0.05〜1.55V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.1〜1.5V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.15〜1.45V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.2〜1.4V
RHEの範囲内である。
【0136】
本明細書全体を通して、語句「標準酸化還元電位」は、当該技術分野において用いられる標準条件下、例えば、温度25℃、反応の一部である各ガスについての分圧1気圧、および反応の一部である各溶質(以下に記述するように、標準電極がRHEである場合は水素および水酸化物イオンは除く)の濃度1Mの下での、表示の標準電極(例えば、可逆水素電極)に対する酸化還元電位を指す。
【0137】
本明細書において、用語「RHE」は、当該技術分野において使用される可逆水素電極を指し、「V
RHE」は、標準電極としてのRHEに対して決定された電位を指す。RHEに対する電位に関して、標準条件は、使用される溶液、例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる水溶液の任意のpHを包含する。
【0138】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極(第1および/または第2レドックス活性電極)の酸化および還元は、0〜1.5V
RHEの範囲内の標準酸化還元電位によって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態において、標準酸化還元電位は0.05〜1.45V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.1〜1.4V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.15〜1.35V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.2〜1.3V
RHEの範囲内である。
【0139】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、0〜0.8V
RHEの範囲内の標準酸化還元電位によって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態において、標準酸化還元電位は0.05〜0.8V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.1〜0.8V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.15〜0.8V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.2〜0.8V
RHEの範囲内である。
【0140】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、0.8〜1.6V
RHEの範囲内の標準酸化還元電位によって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態において、標準酸化還元電位は0.8〜1.55V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.8〜1.5V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.8〜1.45V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.8〜1.4V
RHEの範囲内である。
【0141】
いかなる特定の理論にもとらわれず、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極における少なくとも0V
RHEの標準酸化還元電位は、レドックス活性電極を、(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)水素発生反応(そのための標準酸化還元電位は定義によって0V
RHEである)の間に(例えば第1電気化学セル内の)アノードとしての働きをするのに適したものにする、と考えられる。
【0142】
さらに、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極における1.6V
RHE以下の標準酸化還元電位は、レドックス活性電極を、(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)酸素発生反応の間に(例えば第2電気化学セル内の)カソードとしての働きをするのに適したものにする、と考えられる。酸素発生反応の標準酸化還元電位は通常は1.23V
RHEであるが、約1.6V未満の電位では通常、反応が著しく阻害される。
【0143】
したがって、さらに、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極における0〜1.6V
RHEの範囲内の標準酸化還元電位は、レドックス活性電極を、(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)水素発生反応の間のアノードおよび酸素発生反応の間のカソードとしての働きをするのに適したものにする、と考えられる。
【0144】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極が可逆的に酸化および還元を受ける容量(例えば充電容量)は、可逆的に酸化を受ける際に水溶液1リットルあたり少なくとも0.01モルの電子、場合によっては水溶液1リットルあたり少なくとも0.03モルの電子、場合によっては水溶液1リットルあたり少なくとも0.1モルの電子、場合によっては水溶液1リットルあたり少なくとも0.3モルの電子、および場合によっては水溶液1リットルあたり少なくとも1モルの電子を供与する能力によって特徴付けられる。
【0145】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極が可逆的に酸化および還元を受ける容量(例えば充電容量)は、可逆的に酸化を受ける際に、電極10,000グラムあたり少なくとも1モルの電子、場合によっては電極3,000グラムあたり少なくとも1モルの電子、場合によっては電極1,000グラムあたり少なくとも1モルの電子、場合によっては電極300グラムあたり少なくとも1モルの電子、および場合によっては電極100グラムあたり少なくとも1モルの電子を供与する能力によって特徴付けられる。
【0146】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極が可逆的に酸化および還元を受ける容量(例えば充電容量)は、可逆的に酸化を受ける際に、電極1,000cm
2あたり少なくとも1モルの電子、場合によっては電極300cm
2あたり少なくとも1モルの電子、場合によっては電極100cm
2あたり少なくとも1モルの電子、場合によっては電極30cm
2あたり少なくとも1モルの電子、および場合によっては電極10cm
2あたり少なくとも1モルの電子を供与する能力によって特徴付けられる。
【0147】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、可逆的に酸化および還元を受ける物質を含む。いくつかの実施形態において、そのような物質は、遷移金属(場合により、Ni、Cu、Znおよび/またはCd)および/またはpブロック元素からの金属(場合により、Pbおよび/またはSn)を含む。
【0148】
第1レドックス活性電極において可逆的に酸化および還元を受ける物質、ならびに第2レドックス活性電極において可逆的に酸化および還元を受ける物質は、場合により、同じであってもよく(例えば、同じ金属および/または金属の組み合わせを含む)、または異なっていてもよい(例えば、異なる金属および/または金属の組み合わせを含む)。
【0149】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、金属(場合により、Ni、Ptおよび/またはステンレス鋼)などの導電体を含む母材を含む。母材は、好ましくは、可逆的に酸化および還元を受ける物質へおよび物質からの電子の往来を容易にするように構成されている。
【0150】
(中に母材が存在する場合での)第1レドックス活性電極内の母材および(中に母材が存在する場合での)第1レドックス活性電極内の母材は、場合により、同じであってもよく、または異なっていてもよい。
【0151】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法および/またはシステムにおいて(1つ以上の)レドックス活性電極を使用する前に、本明細書に記載の任意の1つ以上のレドックス活性電極に対して充放電の活性化サイクルを行う。いくつかの実施形態において、活性化は、電極の放電容量(充電段階の間に移動した電荷に対する放電段階の間に移動した電荷の比率)を増大させる。
【0152】
いくつかの実施形態において、活性化は、対極としてのPt電極(および/または参照電極としての飽和Ag/AgCl電極)を場合によって使用しながら3電極型セルにおいて作用電極としてレドックス活性電極(例えば、Ni(OH)
2を含む電極)を接続することによって、成し遂げられる。電解液は、場合により(例えばNaOHが約1Mの)NaOH溶液である。クロノポテンシオメトリーによる充放電サイクルは、場合により、活性化段階を構成している平坦域に放電容量が到達するまで行われる。
【0153】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、ニッケルを例えばNi(OH)
2および/またはニッケルオキシ水酸化物の形態で含む。いくつかの実施形態において、レドックス活性電極の可逆的な酸化は、水酸化物イオンの存在下で(例えばβ−Ni(OH)
2相の)Ni(OH)
2を(例えばβ−ニッケルオキシ水酸化物相の)ニッケルオキシ水酸化物へと酸化することを含み、レドックス活性電極の可逆的な還元は、水の存在下でニッケルオキシ水酸化物(例えばβ−ニッケルオキシ水酸化物)をNi(OH)
2(例えばβ−Ni(OH)
2)へと還元することを含む。
【0154】
本明細書において、用語「ニッケルオキシ水酸化物」は、式Ni(O)
i(OH)
2−iを有する任意の化合物を包含し、式中、iは2未満の正数(場合により分数)である。本明細書において「NiOOH」(つまり、iが1である場合)への言及は、ニッケルオキシ水酸化物を簡便に記載するために用いられる(当該技術分野における一般的慣例による)慣習を表し、異なるiの値を有するニッケルオキシ水酸化物を排除することが意図されないことを理解されたい。本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、iは0.5〜1.5の範囲内である。いくつかのそのような実施形態において、iは約1である。
【0155】
本明細書において、用語「Ni(OH)
2」および「ニッケルオキシ水酸化物」はそれぞれ、本明細書に記載の各々の式による化合物の水和物および/または複合体(例えば、水酸化物イオンおよび/またはH
2Oとの複合体)を包含する。
【0156】
Ni(OH)
2の(例えば第1レドックス活性電極における)可逆的な酸化は、場合により、式:
【化3】
で表され得る。
【0157】
そのような反応によって消費される水酸化物イオンは、例えば、同じ電気化学セル内で(例えば第1作用電極において)水を還元して水素ガスを発生させる際に生じた水酸化物イオンであり得る。
【0158】
NiOOHの(例えば第2レドックス活性電極における)可逆的な還元は、場合により、式:
【化4】
で表され得る。
【0159】
そのような反応によって生じる水酸化物イオンは、例えば、同じ電気化学セル内で(例えば第2作用電極において)酸化されて酸素ガスおよび水を発生させ得る。
【0160】
各セルがNi(OH)
2/NiOOH系レドックス活性電極を有して連結可能でありかつ/または連結された2つの電気化学セルに関して本明細書において記載される、いずれかの実施形態のいくつかの実施形態では、セル内でもたらされる主要なレドックス反応およびそのエネルギー収支は、スキーム1:
【化5】
で表され得る。
【0161】
スキーム1において、ニッケル反応の電位は、HERの電位(0V)とOERの電位(1.6V)との間にある。Ni(OH)
2/NiOOHの酸化還元電位は約1.4Vであり、実際の電位は約0.5Vの過電圧ゆえに還元が1.35Vであり酸化が1.45Vである。0.1Vの差は、水電解自体に必要な1.6Vに加えて(レドックス活性電極の酸化および還元のために)水電解に必要となる、過電位を表す。スキーム1で挙げた電位は全て単に例示的なものであり、特定の電極、水溶液のpH、および/またはその他の条件に応じて変動するものであることを理解されたい(電位の単位はV
RHEである)。
【0162】
本発明のいくつかの実施形態によるNi(OH)
2/NiOOH系レドックス活性電極を有する2つの区画を含むシステム、ならびにその中での酸化反応および還元反応を
図8に描写する。
【0163】
いかなる特定の理論にもとらわれず、Ni(OH)
2/ニッケルオキシ水酸化物は、サイクル耐久性に優れた電極ならびに、可逆性の高い酸化反応および還元反応を提供すると考えられる。さらに、β−Ni(OH)
2相とβ−NiOOH相との間でのサイクルは、著しく可逆的な酸化反応および還元反応を提供すると考えられる。
【0164】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、レドックス活性電極内のNi(OH)
2および/またはNiOOHの少なくとも一部はβ−Ni(OH)
2相またはβ−NiOOH相である。いくつかの実施形態において、Ni(OH)
2および/またはNiOOHの(Niのモルパーセントとして)少なくとも50%は、β−Ni(OH)
2相またはβ−NiOOH相である。いくつかの実施形態において、Ni(OH)
2および/またはNiOOHの少なくとも75%はβ−Ni(OH)
2相またはβ−NiOOH相である。いくつかの実施形態において、Ni(OH)
2および/またはNiOOHの少なくとも80%はβ−Ni(OH)
2相またはβ−NiOOH相である。いくつかの実施形態において、Ni(OH)
2および/またはNiOOHの少なくとも90%はβ−Ni(OH)
2相またはβ−NiOOH相である。いくつかの実施形態において、Ni(OH)
2および/またはNiOOHの少なくとも95%はβ−Ni(OH)
2相またはβ−NiOOH相である。いくつかの実施形態において、Ni(OH)
2および/またはNiOOHの少なくとも98%はβ−Ni(OH)
2相またはβ−NiOOH相である。いくつかの実施形態において、Ni(OH)
2および/またはNiOOHの少なくとも99%はβ−Ni(OH)
2相またはβ−NiOOH相である。いくつかの実施形態において、Ni(OH)
2および/またはNiOOHの実質的に全てがβ−Ni(OH)
2相またはβ−NiOOH相である。
【0165】
いかなる特定の理論にもとらわれず、Ni(OH)
2および/またはNiOOHの可逆的な酸化および還元は、(例えば、Olivaら[Journal of Power Sources 1982、8:229−255]、BriggsおよびFleischmann[Transactions of the Faraday Society 1971、67:2397−2407]、Bodeら[Electrochimica Acta 1966、11:1079−1087]および/またはBodeら[Zeitschrift fur anorganische und allgemeine Chemie 1969、366]に記載されている)下記の一般スキーム2によって表されると考えられる。
【化6】
【0166】
上記スキームによればさらに、β−Ni(OH)
2の過充電はβ−NiOOHからのγ−NiOOHの形成を引き起こし得ると考えられ、それは4.7Åから7Åへの層間隔の増大に関連するものであり、それは電極の膨張をもたらし得る。
【0167】
γ−NiOOHの形成は、サイクル時の容量低下をもたらす水分子およびカチオンの層間挿入に関連し得る。γ−NiOOHが形成されると、絶縁されるかまたは不活性になる水酸化ニッケルの利用不可領域が電極内に作り出され得る。
【0168】
さらに、いかなる特定の理論にもとらわれず、充電時間の増加は、(例えば、NiOOHへの変換に少なくとも一部起因する)Ni(OH)
2の減少、および/または電圧の増大につながり得る、と考えられる。ある限界において酸素発生反応は顕著な(支配的でさえある)反応となり始める可能性があり、酸素ガス気泡がニッケル含有レドックス活性電極上に出現する可能性がある。酸素発生とγ−NiOOHの形成に関連した悪化とが、例えば過剰な酸化により促進されるγ−NiOOHの形成およびOERによって結び付いている可能性がある。
【0169】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第1電圧および/またはそれを印加する期間は、電極の過充電およびその結果としてのγ−NiOOH形成を最小限に抑えるかまたは回避するように選択される。
【0170】
いくつかの実施形態において、β−Ni(OH)
2を含むレドックス活性電極の活性化は、(例えば本明細書に記載の)3電極型セルにおいてその電極を作用電極として接続し、過充電およびγ−NiOOH形成を回避しながらβ−Ni(OH)
2が(部分的にβ−NiOOHに変換されることにより)充電されるように作用電極と対極との間に電流を印加することによって、成し遂げられる。その後、場合により、逆電流を印加して、部分的に充電されたβ−Ni(OH)
2/β−NiOOHの放電をもたらすことによって活性化サイクルを継続してもよい。その後、場合により、任意の回数で活性化サイクルを繰り返してもよい。
【0171】
本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる第1作用電極は、例えば水素発生反応をもたらす電極に関して本明細書において記載されるいずれかの実施形態に従って水素発生反応が起こるカソードに適する任意の材料からなり得る。
【0172】
いくつかの実施形態において、第1作用電極は、本明細書に記載の光カソード材料を含む。
【0173】
いくつかの実施形態において、第1作用電極は、水素発生反応が起こるカソードと、例えば酸素発生反応をもたらす電極に関して本明細書において記載されるいずれかの実施形態に従って(例えばアルカリ条件下で)酸素発生反応が起こるアノードとの両方に適する任意の材料からなる。そのような作用電極は、例えば、第1作用電極において水素発生反応と酸素発生反応とが異なる時間に起こる実施形態で使用され得る。
【0174】
本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる第2作用電極は、例えば酸素発生反応をもたらす電極に関して本明細書において記載されるいずれかの実施形態に従って酸素発生反応が起こるアノードに適する任意の材料からなり得る。
【0175】
第2作用電極は、場合により、化学組成が(例えば、中の物質の種および/または濃度に関して)第1作用電極と同一であってもよく、または第1作用電極とは異なっていてもよい。
【0176】
いくつかの実施形態において、第2作用電極は、本明細書に記載の光アノード材料を含む。いくつかのそのような実施形態において、第1作用電極は、本明細書に記載の光カソード材料を含む。
【0177】
いくつかの実施形態において、第2作用電極は、(例えば水素発生反応をもたらす電極に関して本明細書において記載されるいずれかの実施形態に従って)水素発生反応が起こるカソードと、(例えばアルカリ条件下で)酸素発生反応が起こるアノードとの両方に適する任意の材料からなる。そのような作用電極は、例えば、第2作用電極において水素発生反応と酸素発生反応とが異なる時間に起こる実施形態で使用され得る。
【0178】
光カソードまたは光アノードを含む作用電極に関するいずれかの実施形態のいくつかの実施形態では、水素発生が第1作用電極においてのみ起こる(例えば、第1電圧とは反対の極性を有する第2電圧は印加されない)。
【0179】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第2作用電極は(場合によっては第1作用電極も)、2.0V
RHE以下のOER(酸素発生反応)動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.9V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.8V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.7V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.6V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.55V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.5V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.45V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.4V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.35V
RHE以下である。
【0180】
本明細書において、語句「OER動的電位」は、場合によっては標準酸化還元電位の決定に用いるのと同様の条件下で、OERがもたらされる電極を通過する電流が(OERがもたらされる電極の面積)1cm
2あたり100mAとなる(例えば可逆水素電極(RHE)に対する)電位を指す。
【0181】
動的電位は、場合により、OER酸化還元電位(例えば1.23V
RHE)とOERに関連する過電位との合計であると見なされ得る。
【0182】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第2作用電極は(場合によっては第1作用電極も)、第1および/または第2レドックス活性電極の可逆的な酸化および還元に関連する酸化還元電位(例えば標準酸化還元電位)よりも少なくとも0.05V高いOER(酸素発生反応)動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、第2作用電極は(場合によっては第1作用電極も)、第1および/または第2レドックス活性電極の可逆的な酸化および還元に関連する酸化還元電位よりも少なくとも0.1V高いOER動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、第2作用電極は(場合によっては第1作用電極も)、第1および/または第2レドックス活性電極の可逆的な酸化および還元に関連する酸化還元電位よりも少なくとも0.15V高いOER動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、第2作用電極は(場合によっては第1作用電極も)、第1および/または第2レドックス活性電極の可逆的な酸化および還元に関連する酸化還元電位よりも少なくとも0.2V高いOER動的電位によって特徴付けられる。
【0183】
いかなる特定の理論にもとらわれず、作用電極における酸化還元電位と(より高い)OER動的電位との間のかなりの電圧差は、第1および第2レドックス活性電極におけるレドックス反応によって一方の作用電極から他方へと電流が流れる時に、作用電極においてOERをかなりの速度で進行させると考えられる。
【0184】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第1レドックス活性電極は(場合によっては第2レドックス活性電極も)、レドックス活性電極の可逆的な酸化および還元に関連する酸化還元電位(例えば標準酸化還元電位)よりも少なくとも0.1V高いOER(酸素発生反応)動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、第1レドックス活性電極は(場合によっては第2レドックス活性電極も)、レドックス活性電極の可逆的な酸化および還元に関連する酸化還元電位よりも少なくとも0.1V高いOER動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、第1レドックス活性電極は(場合によっては第2レドックス活性電極も)、レドックス活性電極の可逆的な酸化および還元に関連する酸化還元電位よりも少なくとも0.15V高いOER動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、第1レドックス活性電極は(場合によっては第2レドックス活性電極も)、レドックス活性電極の可逆的な酸化および還元に関連する酸化還元電位よりも少なくとも0.2V高いOER動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、第1レドックス活性電極は(場合によっては第2レドックス活性電極も)、レドックス活性電極の可逆的な酸化および還元に関連する酸化還元電位よりも少なくとも0.25V高いOER動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、第1レドックス活性電極は(場合によっては第2レドックス活性電極も)、レドックス活性電極の可逆的な酸化および還元に関連する酸化還元電位よりも少なくとも0.3V高いOER動的電位によって特徴付けられる。
【0185】
いかなる特定の理論にもとらわれず、酸化還元電位と(より高い)OER動的電位との間のかなりの電圧差は、水素ガスを(作用電極において)製造している電気化学セルの中のレドックス活性電極における酸化を、水酸化物イオンを酸化し酸素ガス(それは水素ガスを汚染し得る)を発生させることが実質的にないレドックス活性電極の酸化によって進行させる、と考えられる。
【0186】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、水溶液から水素ガスを発生させる方法が提供される。方法は、第1電気化学セルの(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)第1作用電極と第2電気化学セルの(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)第2作用電極との間に電圧(本明細書において「第1電圧」と呼ぶ)を印加することを含み、第1電気化学セルはさらに、(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)第1レドックス活性電極と(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)第2レドックス活性電極とを含み、第1および第2レドックス活性電極は、(例えば、場合によってレドックス活性電極に対する電圧の印加の際に、一方のレドックス活性電極から他方へと電子を流れさせる電気線などの導電体によって)互いに対して電気接続されている。
【0187】
いくつかの実施形態において、第1および/または第2電気化学セルはさらに、水溶液(例えば、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる水溶液)を含む。
【0188】
いくつかの実施形態において、方法は、例えば水溶液への電極の導入または電極を含む区画への水溶液の導入によって、第1および/または第2電気化学セル内の作用電極およびレドックス活性電極を水溶液(例えば、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる水溶液)に触れさせることを含む。
【0189】
方法は、好ましくは:
第1作用電極において第1電気化学セル内の水溶液中の水を還元してそれによって水素ガスおよび水酸化物イオンを発生させることと;
第2作用電極において(例えば第2電気化学セル内の水溶液中の)水酸化物イオンを酸化してそれによって酸素ガスおよび水を発生させることと;
水酸化物イオンの存在下での第1レドックス活性電極の酸化(場合によっては水酸化物イオンを消費することを含む)と;
水の存在下での第2レドックス活性電極の還元(場合によっては水酸化物イオンを発生させることを含む)と
を(例えば十分に高い第1電圧の印加の際に)同時にもたらすことを含む。
【0190】
上記の4つのステップをもたらすことにより、例えば:
第1電気化学セル内の負に帯電した水酸化物イオンの、(作用電極による電子の供与に際して水酸化物イオンが発生する)第1作用電極から(電極の酸化に際して水酸化物イオンが場合により消費される)第1レドックス活性電極(それは電子を受け取る)への移動;
電子の第1レドックス活性電極から第2レドックス活性電極(それは後に電子を供与する)への移動;および
第2電気化学セル内の水酸化物イオンの、(水酸化物イオンが場合により発生する)第2レドックス活性電極から(水酸化物イオンが酸素ガスと水とに酸化される)第2作用電極(それは、後に第1作用電極へ向かって流れて回路を完結させることのできる電子を受け取る)への移動
によって回路を完結させるように電流が第1作用電極と第2作用電極との間で場合により流れ得る。
【0191】
電気化学セル内でのイオン(例えば水酸化物イオン)の移動と、一方のセルのレドックス活性電極から他方のセルのレドックス活性電極への電子の移動との組み合わせは、電気回路を閉じるのを容易にする上で、単純な電気化学セル内での(例えばイオン交換膜および/または塩橋を介した)イオンの移動に類似した作用を有する。
【0192】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、適する第1電圧は少なくとも1.5Vである。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.5〜2.2Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.5〜2.0Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.5〜1.8Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.5〜1.7Vの範囲内である。
【0193】
いくつかの実施形態において、適する第1電圧は少なくとも1.6Vである。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.6〜2.2Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.6〜2.0Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.6〜1.8Vの範囲内である。
【0194】
いくつかの実施形態において、適する第1電圧は少なくとも1.7Vである。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.7〜2.2Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.7〜2.0Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.7〜1.9Vの範囲内である。
【0195】
くつかの実施形態において、適する第1電圧は少なくとも1.8Vである。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.8〜2.2Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.8〜2.0Vの範囲内である。
【0196】
適する第1電圧は、固有の条件、例えば、使用する特定の作用電極および/またはレドックス活性電極ならびに、そのような条件下での水の電気分解ならびにレドックス活性電極の酸化および/または還元に関連する過電位(例えばそのような電極に関連する過電位)に依存し得る。任意の所与の条件に適する電圧(例えば、本明細書に記載の水の電気分解をもたらすのに十分高い電圧)を決定することは、十分に当業者の能力の範囲内にあるであろう。
【0197】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第1および第2電気化学セルはいずれもシステム(例えば、第1電気化学セルおよび第2電気化学セルを有するシステムに関して本明細書において記載されるいずれかの態様によるシステム)の中に含まれる。
【0198】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第1電気化学セルは、第1容器ならびに、第1容器内にある第1作用電極および第1レドックス活性電極を含み、第1容器は中に水溶液を有している。
【0199】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第2電気化学セルは、第2容器ならびに、第2容器内にある第2作用電極および第2レドックス活性電極を含み、第2容器は中に水溶液を有している。第2電気化学セル内の水溶液は、場合により、例えば化学組成、溶質濃度、温度、圧力、体積、流速および/または循環速度に関して第1電気化学セル内の水溶液と同じであってもよく、または異なっていてもよい。
【0200】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態では、第1容器と第2容器とが相互に分離されている。
【0201】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態では、第1および第2レドックス活性電極のうちの少なくとも1つ、好ましくは第1および第2レドックス活性電極のそれぞれが、可逆的に酸化および還元を受けることができる。
【0202】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、レドックス活性電極の可逆的な酸化は、水酸化物イオンの存在下での酸化を含み(場合によっては水酸化物イオンを消費することを含み)、レドックス活性電極の可逆的な還元は、(場合によっては水分子を消費することを含みつつ)水の存在下で還元されてそれによって水酸化物イオンを生成することを含む。いくつかの実施形態において、酸化反応および還元反応は互いに、例えば酸化が水酸化物イオンを消費して水を発生させ、還元が水を消費して水酸化物イオンを発生させる、という鏡像関係にある。
【0203】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、方法はさらに、発生した水素ガスの少なくとも一部を(例えば水素ガスを第1電気化学セルから捕集することによって)捕集することを含む。
【0204】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、方法はさらに、発生した酸素ガスの少なくとも一部を(例えば酸素ガスを第2電気化学セルから捕集することによって)捕集することを含む。
【0205】
第1レドックス活性電極の酸化および/または第2レドックス活性電極の還元に際して、第1レドックス活性電極における酸化可能な還元材料の枯渇および/または第2レドックス活性電極における還元可能な酸化材料の枯渇は、結果的にはさらなる水素ガス発生への障害をもたらし得る。
【0206】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、方法は(第1電圧の印加に続いて)さらに、酸化可能な還元材料を第1レドックス活性電極に補充し、かつ/または還元可能な酸化材料を第2レドックス活性電極に補充して、それによってさらなる水素ガス発生を可能にすることを含む。
【0207】
本明細書において、材料を電極に「補充すること」は、限定はしないが、電極を、その材料を含む別の電極で置き換えることを含む。
【0208】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、方法はさらに、(例えば第1レドックス活性電極の酸化および第2レドックス活性電極の還元に続いて)第1レドックス活性電極を第2レドックス活性電極で置き換えることおよび/または第2レドックス活性電極を第1レドックス活性電極で置き換えることを含む。そのようにして、酸化可能な還元材料(前には第2レドックス活性電極であった電極)で補充された第1レドックス活性電極および/または、還元可能な酸化材料(前には第1レドックス活性電極であった電極)で補充された第2レドックス活性電極が場合により提供され得る。
【0209】
いくつかの実施形態において、第2レドックス活性電極による第1レドックス活性電極の置き換えおよび/または第1レドックス活性電極による第2レドックス活性電極の置き換えに際して、場合により、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる第1電圧をその後に印加して、それによってさらなる水素ガスを発生させてもよい。いくつかの実施形態において、第1および/または第2レドックス活性電極の置き換えに続く第1電圧の印加のサイクルは、少なくとも1回、場合によっては任意の回数、例えば、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも30回、少なくとも100回、少なくとも300回、および場合によっては少なくとも1,000回繰り返され得る。そのような実施形態による方法の各サイクルにおいて、場合により水素ガスを第1電気化学セルから捕集してもよく、場合により酸素ガスを第2電気化学セルから捕集してもよい。
【0210】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、方法はさらに、第1電圧の印加に続いて第2電圧を第1作用電極と第2作用電極との間に印加することを含み、第2電圧は、(例えば、第2電圧によって誘起される電流が、第1電圧によって誘起される電流とは反対方向になるように)、第1電圧に対して反対の極性を有する。
【0211】
場合により、例えば第1および/または第2レドックス活性電極の補充に適した期間で第1および/または第2レドックス活性電極の補充をもたらすように、第2電圧を印加してもよい。
【0212】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第2電圧は、本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って(例えば水酸化物イオンの存在下での)第2レドックス活性電極の酸化と(例えば水の存在下での)第1レドックス活性電極の還元とを同時にもたらすのに十分である。
【0213】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第2電圧は、(本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って)水溶液中の水を還元してそれによって第2作用電極において水素ガスおよび水酸化物イオンを発生させることと、(本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って)水酸化物イオンを酸化してそれによって第1作用電極において酸素ガスおよび水を発生させることとを同時に、場合によっては上記の第2レドックス活性電極の酸化および第1レドックス活性電極の還元と同時にもたらすのに十分である。いくつかのそのような実施形態において、方法はさらに、第2電気化学セルからの(第2作用電極で発生した)水素ガスおよび/または第1電気化学セルからの(第1作用電極で発生した)酸素ガスを、例えば第2電圧の印加の後かつ/またはそれと同時に、捕集することを含む。
【0214】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態では、例えば、作用電極で発生した水素ガス(または酸素ガス)が同じ作用電極において異なる電圧に応答して発生した酸素ガス(または水素ガス)によって汚染されるのを最小限に抑えるために、第1電圧の印加と第2電圧の印加との合間(例えば、第1電圧の印加の後であって第2電圧の印加の前、かつ/またはその逆も同様)にガスを第1および/または第2電気化学セルから排出させる。
【0215】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第2電圧は、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる第1電圧に適するとして記載されている電圧である。いくつかの実施形態において、(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)第2電圧は、少なくとも1.5V、場合によっては少なくとも1.6V、場合によっては少なくとも1.7V、および場合によっては少なくとも1.8Vである。
【0216】
本明細書における実施形態のいくつかによる第2電圧を印加することによって、場合により別個の場所で水素および酸素を発生(および場合により捕集)し続けながら、酸化可能な還元材料で補充された第1レドックス活性電極および/または還元可能な酸化材料で補充された第2レドックス活性電極が場合により提供され得る。
【0217】
いくつかの実施形態では、第2電圧の印加に続いて、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる第1電圧を場合により次に印加し、それによってさらなる水素ガスを発生させてもよい。いくつかの実施形態において、第1電圧の印加に続く第2電圧の印加のサイクルは、少なくとも1回、場合によっては任意の回数、例えば、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも30回、少なくとも100回、少なくとも300回、および場合によっては少なくとも1,000回繰り返され得る。
【0218】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる第1電圧および/または第2電圧の印加は、作用電極間の電位差が所定の電流において所定の限界(例えば、約2.5V、約2.75V、約3V、約3.25V)に達する(例えば、プロセスが電流測定的に行われるとき)まで、かつ/または電流に対する電位差の比率が所定の限界に達するときまで、成し遂げられる。
【0219】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる第1電圧および/または第2電圧の印加は、作用電極間の電流が所定の電圧において所定の限界(例えば、約2.5V、約2.75V、約3V、約3.25V)へと落ち込む(例えば、プロセスが電位差測定的に行われるとき)まで、場合により本明細書に記載の一定の第1電圧および/または第2電圧で、成し遂げられる。
【0220】
本明細書に記載のいずれかの態様によるシステムに関するいずれかの実施形態によれば、システムは、場合により、回分プロセス、半連続プロセスおよび/または連続プロセスで作動するように構成され得る。
【0221】
本明細書に記載のいずれかの態様による方法に関するいずれかの実施形態によれば、方法は、場合により、回分プロセス、半連続プロセスおよび/または連続プロセスとして成し遂げられ得る。
【0222】
回分プロセスに関して本明細書において記載されるいずれかの実施形態では、場合により、作動中に電解質および/または電解液を本明細書に記載の1つ以上の電気化学セル内に入れて再生させて濃度、体積および/または化学組成を維持してもよい。
【0223】
連続プロセスおよび/または半連続プロセスに関して本明細書において記載されるいずれかの実施形態では、電解質および/または電解液は場合によって常に再生され得る。
【0224】
単一区画内での分離された水素および酸素の発生:
再び図を参照して、
図2は、本発明のいくつかの実施形態の態様による水素を製造するシステム100を全体的に示す。
【0225】
図2に示す代表例において、システム100は、作用電極118とレドックス活性電極116とを含む容器120からなり、システムが作動しているときには水溶液140、好ましくは電解質水溶液が容器120を少なくとも部分的に満たしている。作用電極118またはその一部(例えば下部)、およびレドックス活性電極116またはその一部(例えば下部)は、システムが作動する間、水溶液140との接触が保たれる。本明細書では、容器120ならびに電極116および118を共に(水溶液140の有無に拘らず)まとめて「電気化学セル」と呼ぶ。
【0226】
いくつかの実施形態において、容器120は仕切られていない、つまり、容器は、電極118と電極116との間(または電極58と電極56との間)に、電極118から電極116へ、またはその逆へのガスの流れを防止するものである仕切り(例えばイオン交換膜)を有していない。しかしながら、容器120が(場合によりイオン交換膜で)仕切られている実施形態もまた本明細書において想到される。
【0227】
いくつかのそのような実施形態では、システム110は、いかなるイオン交換膜も有していない。膜の欠如は、場合によってはコストを低減しかつ/またはシステムの耐久性を向上させ得、かつ/またはより高いガス圧でのシステムの作動を可能にし得る。
【0228】
いくつかの代替的な実施形態において、容器120は、例えば溶液中に配置されているがしかしガスの入った容器の容積(例えば溶液の上の容積)の少なくとも一部には配置されていない仕切りによって電極118から電極116へ、またはその逆へのガスの流れを防止せずに電極118と電極116との間での溶液の流れを阻止する、仕切り(例えばイオン交換膜)を収容している。そのような仕切りは、ガス圧が仕切りの両側で等しくなりそれによって応力が減少するため、場合によりシステムの耐久性を向上し得るおよび/またはより高いガス圧でのシステムの作動を可能にする。
【0229】
レドックス活性電極に関して本明細書において記載されるいずれかの実施形態および場合によっては(単一区画内での分離された水素および酸素の発生に関する)この節において記載されるいずれかの実施形態によれば、レドックス活性電極116は、水酸化物イオンの存在下で(場合によって第1印加電圧に応答して)可逆的に酸化を受けることおよび水の存在下で(場合によって第2印加電圧および/または熱刺激に応答して)還元を受けることができ、還元は場合によって水酸化物イオンおよび/または分子状酸素を生成する。いくつかの実施形態において、レドックス活性電極116は、Ni(OH)
2および/またはニッケルオキシ水酸化物を含み、その少なくとも一部は、通常は電極116の表面上、好ましくは溶液140に触れている部分に見受けられる。
【0230】
本発明のいくつかの実施形態によれば、溶液140は、水溶液中に溶解または懸濁した、本明細書において記述される金属水酸化物電解質、例えば、金属アルカリ水酸化物などを含む。
【0231】
いくつかの実施形態において、電極118および116は、(本明細書で語句の定義がなされている)電源、例えば直流電源に接続可能である。電源は、場合により、電池、蓄電器、(例えば発電所の)発電装置、太陽光発電(PV)電源またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0232】
電極118は、場合により、電源としての働きをする(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)光カソードであって電極116が電極118に接続可能である光カソードを含み得る。
【0233】
本発明の典型的な種々の実施形態において、システム100はさらに、電極116と電極118との間に電位差を発生させるために、電極116および/または118を電源に接続するための導線122および/または124を含む。そのような接続をすると、電位差の極性に応じて電極116から電極118へ、またはその逆へと、電子が流れ始める。このように閉じられた電気回路内を流れる電流は、直列で電源(図示せず)に操作上接続可能な(場合によっては接続された)電流測定装置を使用して測定および場合により監視をすることができる。その他のパラメータ、例えば電圧もまた、当該技術分野において既知であるように必要に応じて測定することができる。
【0234】
いくつかの実施形態において、システムはさらに、(例えば本明細書において例示される)参照電極を含む。参照電極は、場合により、例えば電圧を監視するために構成されている。
【0235】
本発明の典型的な種々の実施形態において、電子が電極116から電極118へと流れる時、溶液140中の負に帯電した水酸化物イオンは、電極118から遠ざかって電極116へ向かって流れ、レドックス活性電極116を酸化するように反応する。さらに、作用電極118の近傍は結果としてより酸性になり、それにより、水素ガスを発生させるように作用電極118での水中の水酸化物イオンの還元を容易にする。
【0236】
あるいは、またはさらに、(本明細書に記載のいくつかの実施形態に従って)電子が電極118から電極116へと流れる時、溶液140中の負に帯電した水酸化物イオンは、電極116から遠ざかって電極118へ向かって流れ、酸素を発生させるように電極118において酸化される。さらに、レドックス活性電極116の近傍は結果としてより酸性になり、それにより、(例えば水酸化物イオンを発生させるように)レドックス活性電極116の還元を容易にする。
【0237】
本発明の典型的な種々の実施形態において、レドックス活性電極116は、場合によってはシステムに印加する電圧の非存在下で、(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って)分子状酸素の生成によってもたらされる還元を受けることができる。いくつかの実施形態において、分子状酸素の生成速度は、(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)レドックス活性電極116の近傍での温度の上昇によって増大する。
【0238】
いくつかの実施形態において、システム100はさらに、レドックス活性電極116の温度上昇を生じさせるために構成された熱源(図示せず)を含む。熱源は、場合によって、電極116の中および/またはその近傍に(場合により電極に隣接して)配置され得る。あるいは、またはさらに、熱源は、(例えば容器120内に溶液が進入する前、後および/または同時に)システム内の水溶液を加熱するように構成される。
【0239】
本発明のいくつかの実施形態において、システム100はさらに、容器120の外への水素ガスおよび/または酸素ガスの排出を可能にするための少なくとも1つのガス出口130を含む。ガス出口130を通じたガスの排出は、例えば任意選択の弁132によって場合により制御され、当該弁132は、閉じているときにガス出口130を通じたガスの放出をそれぞれ防止し、先に排出されたガスを容器120から隔離するものである。排出された水素ガスおよび/または酸素ガスは、場合により、ガスを捕集するために構成された貯留器(図示せず)内に捕集することができる。好ましくは、排出された水素ガスは、水素ガスを捕集するために構成された貯留器(図示せず)内に捕集される。こうして、本発明のいくつかの実施形態において、ガス(例えば水素ガス)は例えばガス搬送管(図示せず)によって貯留器またはその他の任意の外部位置へと搬送される。
【0240】
本発明のいくつかの実施形態において、システム100は、ガス出口130(個別には図示せず)のうちの少なくとも2つを含み、その各々は、独立して(上記の)弁132を場合によって含む。場合により、任意の2つ以上のガス出口が単一の開口部を介して容器120の主容積と連通して(例えば、2つ以上のガス出口が合流して、主容積と直接連通した単一の導管を形成して)いてもよく、かつ/または任意の2つ以上のガス出口の各々が容器120の主容積と個別に連通していてもよい。
【0241】
いくつかの実施形態において、第1ガス出口は、容器120の外への水素ガスの排出を可能にするために構成され、第2ガス出口は、容器120の外への酸素ガスの排出を可能にするために構成され、第1ガス出口を通じて排出されたガス(例えば水素ガス)は、第2ガス出口を通じて排出されたガス(例えば酸素ガス)から隔離される。排出された水素ガスおよび/または酸素ガスは、場合により、(上記の)ガスを捕集するために構成された貯留器内に捕集することができる。好ましくは、排出された水素ガスは、第1ガス出口からの水素ガスを捕集するために構成された貯留器(図示せず)内に捕集される。
【0242】
いくつかの実施形態において、システム100および/または容器120は、水素発生モードと酸素発生モードとが交互に起こるために構成される。場合により、水素発生モードは、少なくとも、(例えば、第1ガス出口の弁132が開いており、かつ/または第1ガス出口が水素ガス貯留器と連通している場合に)容器から水素ガスを排出するために構成されている(本明細書に記載の)第1ガス出口130と、(例えば第2ガス出口の弁132が閉じている場合に)閉じている(本明細書に記載の)第2ガス出口130とによって特徴付けられる。場合により、酸素発生モードは、少なくとも、(例えば、第2ガス出口の弁132が開いており、かつ/または第2ガス出口が酸素ガス貯留器と連通している場合に)容器から酸素ガスを排出するために構成されている(本明細書に記載の)第2ガス出口130と、(例えば第1ガス出口の弁132が閉じている場合に)閉じている(本明細書に記載の)第1ガス出口130とによって特徴付けられる。
【0243】
本発明のいくつかの実施形態において、容器120はさらに、容器内に水溶液を受け入れる(場合によっては除去もする)ために構成された少なくとも1つの入口134を含む。入口134は、例えば(例えば管と連通するために構成された)比較的狭い入口、および容器120の窓または着脱可能な蓋を含めて、任意の適切な大きさおよび配置を有する。入口134を通じた溶液の受け入れは、例えば任意選択の弁136によって場合により制御され、当該136弁は、閉じているときに入口134を通じたガスまたは液体の放出を防止するものである。入口134および出口132は、場合により、(本明細書に記載の)ガス出口と(本明細書に記載の)入口との両方としての働きをするために構成された単一構造体(図示せず)として構成されていてもよい。
【0244】
場合により、好ましくは、電極116および/または118における電気化学反応は、例えば、電気化学セルに連通した1つ以上の電気化学ユニット(図示せず)によって監視されるが、当該電気化学ユニットは、場合によって容器20内に配置される。電気化学ユニットは、システム100の作動および/または状態に関係する任意のパラメータを測定するように構成され得る。これらとしては、限定はしないが、電極116および/または118における電位、溶液40のpH、(例えば、容器20内の)ガスの圧力および/または組成などが挙げられる。電気化学ユニットによって生成される電気信号は、例えば通信線(図示せず)を介して遠隔位置(図示せず)へと送信することができる。
【0245】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の水素ガスを発生させるシステムは、さらに、溶液140のための1つ以上のチャンバ(図示せず)を含み、当該チャンバは、容器120に作動可能に接続可能であり(場合によっては接続されており)、溶液を(場合によって入口134を通じて)その中の電極へと供給しかつ/または(例えば容器から溶液を除去するために)容器120からの溶液を受け入れるように構成される。いくつかの例示的な実施形態において、システムは、溶液140を様々な温度で(場合により入口134を通じて)供給する(場合によっては受け入れもする)ように構成された2つのチャンバ、例えば、一方のチャンバが常温で溶液を供給するために構成され、もう一方のチャンバが高い温度で溶液を供給するために構成された、2つのチャンバを含む。場合により溶液を特定温度で供給するために構成されたチャンバは、溶液を加熱および/または冷却するために構成された加熱用および/または冷却用の器械(図示せず)、例えば熱源および/またはヒートシンクを場合により含み得る。
【0246】
電極116および/または118ならびに溶液140の、性質および特性、ならびにシステム内に含むことのできるその他の構成要素の性質および特性については、本明細書中でさらに詳しく述べる。
【0247】
電極116および/または118、容器壁ならびにその他の構成要素の間での距離、ならびに種々の構成要素の形状は、操作することができ、概して当業者によって認識されるとおりである。例えば、各容器内のレドックス活性電極は、抵抗損および/または濃度分極損失を最小限に抑えるために、各々の容器内で作用電極のすぐ近くに配置することが好ましい。さらに、レドックス活性電極の活性面積は、印加電圧を増大させることによって補償しなければならないであろう動的過電位を最小限に抑えるために、作用電極とレドックス活性電極との間の外部電流に適合するほど十分に広いことが好ましい。
【0248】
場合によってシステム100は、本明細書において
図1に描写されるようなシステムを形成するように、本明細書に記載の別のシステム100に接続可能であり得る(場合によっては接続され得る)。
【0249】
好ましい実施形態において、システム100は、本明細書に記載のレドックス活性電極を含むたった1つの電気化学セルを含み、そのような電気化学セルを含む別のシステム100に接続されていない。
【0250】
いくつかの実施形態において、システム100は、本明細書に記載のガス出口および/または入口のうちの少なくとも一方を含み、かつまたはシステムは、本明細書に記載されるように、仕切られていない。
【0251】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、水溶液から水素ガスを発生させる方法が提供される。方法は、電気化学セルの作用電極とレドックス活性電極との間に電圧(本明細書において「第1電圧」と呼ぶ)を印加することを含む。
【0252】
方法は、好ましくは、(例えば適切な第1電圧の印加の際に):
作用電極において電気化学セル内の水溶液中の水を還元してそれによって水素ガスおよび水酸化物イオンを発生させることと;
水酸化物イオンの存在下でのレドックス活性電極の酸化(場合によっては水酸化物イオンを消費することを含む)と
をもたらすこと、および場合によってはそれらを同時にもたらすことを、含む。
【0253】
上記のステップをもたらすことにより、例えば、負に帯電した水酸化物イオンの(それらが発生する)作用電極から(電極の酸化の際にそれらが場合によって消費される)レドックス活性電極への移動によって回路を完結させるように電流が作用電極とレドックス活性電極との間で場合により流れ得る。
【0254】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、適する第1電圧は少なくとも0.05Vである。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.05〜2.2Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.05〜2.0Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.05〜1.8Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.05〜1.7Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.05〜1.6Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.05〜1.5Vの範囲内である。
【0255】
いくつかの実施形態において、第1電圧は少なくとも0.1Vである。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.1〜2.2Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.1〜2.0Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.1〜1.8Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.1〜1.7Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.1〜1.6Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.1〜1.5Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.1〜1.4Vの範囲内である。
【0256】
いくつかの実施形態において、第1電圧は少なくとも0.15Vである。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.15〜2.2Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.15〜2.0Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.15〜1.8Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.15〜1.7Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.15〜1.6Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.15〜1.5Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.15〜1.4Vの範囲内である。
【0257】
いくつかの実施形態において、第1電圧は少なくとも0.2Vである。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.2〜2.2Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.2〜2.0Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.2〜1.8Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.2〜1.7Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.2〜1.6Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.2〜1.5Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.2〜1.4Vの範囲内である。
【0258】
いくつかの実施形態において、第1電圧は少なくとも0.8Vである。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.8〜2.2Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.8〜2.0Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.8〜1.8Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.8〜1.7Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.8〜1.6Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.8〜1.5Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は0.8〜1.4Vの範囲内である。
【0259】
いくつかの実施形態において、第1電圧は少なくとも1.23Vである。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.23〜2.2Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.23〜2.0Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.23〜1.8Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.23〜1.7Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.23〜1.6Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.23〜1.5Vの範囲内である。いくつかの実施形態において、第1電圧は1.23〜1.4Vの範囲内である。
【0260】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第1電圧は、水素ガスへの水酸化物イオンの還元に関連する酸化還元電位(例えば0V
RHE)とレドックス活性電極の酸化に関連する酸化還元電位(例えば本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極に関連する標準酸化還元電位)とのおおよその差よりも大きいかまたはそれに等しい。
【0261】
適する第1電圧は、固有の条件、例えば、使用する特定の作用電極および/またはレドックス活性電極ならびに、そのような条件下での水の電気分解(例えば、水素を生成するための水の還元)ならびにレドックス活性電極の酸化および/または還元に関連する過電位(例えばそのような電極に関連する過電位)に依存し得る。任意の所与の条件に適する電圧を決定することは、十分に当業者の能力の範囲内にあるであろう。
【0262】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、電気化学セルは、システム(例えば、第1電気化学セルおよび第2電気化学セルを有するシステムに関して本明細書において記載されるいずれかの態様によるシステム)に含まれる。
【0263】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、電気化学セルは、容器ならびに、第1容器内にある作用電極およびレドックス活性電極を含み、容器は中に水溶液を有している。
【0264】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、レドックス活性電極は、例えば可逆的な酸化および還元に関して本明細書において記載されるいずれかの実施形態に従って可逆的に(本明細書において定義される)酸化および還元を受けることができる。酸化は、例えば、1つ以上の電子を電流へ供与することおよび/または酸化種(例えば分子状酸素)を消費することを含み得る。同様に、還元は、例えば、1つ以上の電子を電流から受け取ることおよび/または酸化種(例えば分子状酸素)を放出することを含み得る。
【0265】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、レドックス活性電極の還元は、本明細書に記載の刺激(例えば電気刺激および/または熱刺激)に応答したものである。
【0266】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、レドックス活性電極の可逆的な酸化は、水酸化物イオンの存在下での酸化(場合によって水酸化物イオンを消費することを含む)を含み、レドックス活性電極の可逆的な還元は、水の存在下での還元(場合によっては水分子を消費することを含む)を含む。いくつかの実施形態において、酸化反応と還元反応とは互いに、例えば酸化が(例えば少なくとも1つの電子の供与に際して)水酸化物イオンを消費して水を発生させ、還元が(例えば少なくとも1つの電子の受け取りに際して)水を消費して水酸化物イオンを発生させる、という鏡像関係にある。いくつかの実施形態において、例えば酸化が(例えば少なくとも1つの電子の供与に際して)水酸化物イオンを消費して水を発生させ、還元が(例えば電子の供与または受け取りがなく)水を消費して分子状酸素を発生させる場合では、酸化反応と還元反応とは互いに鏡像関係にない。
【0267】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、方法はさらに、(例えば電気化学セルの容器から)発生した水素ガスの少なくとも一部を捕集することを含む。
【0268】
レドックス活性電極の酸化に際して、レドックス活性電極における酸化可能な還元材料の枯渇は、結果的にはさらなる水素ガス発生への障害をもたらし得る。
【0269】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、方法はさらに、(上記の圧力の印加に続いて)酸化可能な還元材料で(本明細書において定義される)レドックス活性電極を補充しかつ/またはレドックス活性電極を、酸化可能な還元材料を含む別のレドックス活性電極で置き換えて、それによってさらなる水素ガス発生を可能にすることを含む。
【0270】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、方法はさらに、(上記の圧力の印加に続いて)レドックス活性電極を刺激してレドックス活性電極の還元をもたらすことを含む。いくつかの実施形態において、還元は酸素ガスの発生をもたらす。いくつかのそのような実施形態において、方法はさらに、第1電気化学セルから酸素ガスの少なくとも一部を捕集することを含む。
【0271】
レドックス活性電極の還元は、場合により、例えば電気刺激(例えば適切な電圧の印加)および/または熱刺激(すなわち温度の変化)を含めて任意の適切な刺激によって、場合により本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って、もたらされ得る。
【0272】
還元をもたらす刺激に関するいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、刺激は、加熱、例えば、レドックス活性電極の少なくとも一部の加熱を含む。いくつかの実施形態において、加熱は、(例えば、電気化学セル内に溶液を入れる前、それと同時、かつ/またはその後に)水溶液を加熱することによってもたらされ、それは場合によって、加熱された水溶液と電極との接触に際してレドックス活性電極を加熱することをもたらし得る。
【0273】
本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って刺激(例えば熱刺激)によりレドックス活性電極の還元をもたらす際、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる第1電圧を場合によってその後に印加して、それによってさらなる水素ガスを発生させてもよい。いくつかの実施形態において、刺激に続く第1電圧の印加のサイクルは、少なくとも1回、場合によっては任意の回数、例えば、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも30回、少なくとも100回、少なくとも300回、および場合によっては少なくとも1,000回繰り返され得る。そのような実施による方法の各サイクルにおいて、場合により、第1電圧の印加の間および/または後に電気化学セルから水素ガスを捕集してもよく、場合により、刺激の間および/または後に電気化学セルから酸素ガスを捕集してもよい。
【0274】
還元をもたらす刺激に関するいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、刺激は電気刺激であり、いくつかの実施形態において電気刺激は、(例えば、第2電圧によって誘起される電流が、第1電圧によって誘起される電流とは反対方向になるように)第1電圧に対して反対の極性を有する第2電圧を(例えば作用電極とレドックス活性電極との間に)印加することを含む。
【0275】
第2電圧は、場合により、レドックス活性電極の補充をもたらすように、例えばレドックス活性電極の補充に適する時間、印加され得る。
【0276】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第2電圧は、本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って(例えば水の存在下で)レドックス活性電極の還元をもたらしてそれによってレドックス活性電極において水酸化物イオンを発生させるのに十分である。
【0277】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第2電圧は、(例えば作用電極において)水酸化物イオンの酸化をもたらしてそれによって酸素ガスおよび水を発生させることと、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる(例えば水の存在下での)レドックス活性電極の還元(例えば、それによってレドックス活性電極において水酸化物イオンを発生させること)とを同時にもたらすのに十分である。いくつかのそのような実施形態において、方法はさらに、例えば第2電圧の印加の後および/またはそれと同時に、第1電気化学セルからの酸素ガス(例えば、作用電極において発生した酸素ガス)を捕集することを含む。
【0278】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、第1電圧と第2電圧との(絶対値の)合計は、少なくとも1.5V、場合によっては少なくとも1.6V、場合によっては少なくとも1.7V、および場合によっては少なくとも1.8Vである。
【0279】
本明細書における実施形態のいくつかに従って第2電圧を印加することにより、酸化可能な還元材料で補充されたレドックス活性電極が、場合により酸素ガスを発生させる(かつ場合によって捕集する)間に、場合によって提供され得る。
【0280】
いくつかの実施形態では、第2電圧の印加に続いて、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる第1電圧を場合によってその後に印加して、それによってさらなる水素ガスを発生させてもよい。いくつかの実施形態において、第1電圧の印加に続く第2電圧の印加のサイクルは、少なくとも1回、場合によっては任意の回数、例えば、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも30回、少なくとも100回、少なくとも300回、および場合によっては少なくとも1,000回繰り返され得る。
【0281】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、システムは、本明細書に記載のレドックス活性電極を含むたった1つの電気化学セルを含む。
【0282】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の2つの電気化学セルは、場合により、各電気化学セルのレドックス活性電極が互いに対して接続されるように、電気接続され得る。接続された2つの電気化学セルをまたいで(つまり、一方のセルの作用電極と他方の作用電極との間に)適切な電圧を印加すると、電圧は、(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)一方のセルに対して第1電圧としての働きをすると同時に、(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)他方のセルに対して第2電圧としての働きをする。その後、電圧の極性を任意の回数で逆転させてもよい。そのようなセルの配置は、本明細書における別個の区画に関する節においてより詳しく記載されている。
【0283】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態では、例えば第1電圧の印加に際して発生した水素ガスが刺激時の酸素ガスによって汚染されること(および/または水素ガスによる酸素ガスの汚染)を最小限に抑えるために、第1電圧の印加と、本明細書に記載の刺激の印加との合間(例えば、第1電圧の印加の後であって刺激の印加の前、かつ/またはその逆も同様)にガスを電気化学セルから排出させる。
【0284】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる第1電圧および/または第2電圧の印加は、作用電極とレドックス活性電極との間の電位差が所定の電流において所定の限界(例えば、約2.5V、約2.75V、約3V、約3.25V)に達する(例えば、プロセスが電流測定的に行われるとき)まで、かつ/または電流に対する電位差の比率が所定の限界に達するときまで、成し遂げられる。
【0285】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる第1電圧および/または第2電圧の印加は、作用電極とレドックス活性電極との間の電流が所定の電圧において所定の限界(例えば、約2.5V、約2.75V、約3V、約3.25V)へと落ち込む(例えば、プロセスが電位差測定的に行われるとき)まで、場合により本明細書に記載の一定の第1電圧および/または第2電圧で、成し遂げられる。
【0286】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極の酸化および/または還元は、0〜1.6V
RHEの範囲内の標準酸化還元電位によって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態において、標準酸化還元電位は0.05〜1.55V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.1〜1.5V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.15〜1.45V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.2〜1.4V
RHEの範囲内である。
【0287】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、0〜1.5V
RHEの範囲内の標準酸化還元電位によって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態において、標準酸化還元電位は0.05〜1.45V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.1〜1.4V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.15〜1.35V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.2〜1.3V
RHEの範囲内である。
【0288】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、0〜0.8V
RHEの範囲内の標準酸化還元電位によって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態において、標準酸化還元電位は0.05〜0.8V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.1〜0.8V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.15〜0.8V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.2〜0.8V
RHEの範囲内である。
【0289】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、0.8〜1.6V
RHEの範囲内の標準酸化還元電位によって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態において、標準酸化還元電位は0.8〜1.55V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.8〜1.5V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.8〜1.45V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は0.8〜1.4V
RHEの範囲内である。
【0290】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、少なくとも1.23V
RHEの標準酸化還元電位によって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態において、標準酸化還元電位は1.23〜1.6V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.23〜1.55V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.23〜1.5V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.23〜1.45V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.23〜1.4V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.23〜1.35V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.23〜1.3V
RHEの範囲内である。
【0291】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、少なくとも1.28V
RHEの標準酸化還元電位によって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態において、標準酸化還元電位は1.28〜1.6V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.28〜1.55V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.28〜1.5V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.28〜1.45V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.28〜1.4V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.28〜1.35V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.28〜1.3V
RHEの範囲内である。
【0292】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、少なくとも1.33V
RHEの標準酸化還元電位によって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態において、標準酸化還元電位は1.33〜1.6V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.33〜1.55V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.33〜1.5V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.33〜1.45V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.33〜1.4V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.33〜1.35V
RHEの範囲内である。
【0293】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、少なくとも1.38V
RHEの標準酸化還元電位によって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態において、標準酸化還元電位は1.38〜1.6V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.38〜1.55V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.38〜1.5V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.38〜1.45V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.38〜1.4V
RHEの範囲内である。
【0294】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、少なくとも1.43V
RHEの標準酸化還元電位によって特徴付けられる。いくつかのそのような実施形態において、標準酸化還元電位は1.43〜1.6V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.43〜1.55V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.43〜1.5V
RHEの範囲内である。いくつかの実施形態において、標準酸化還元電位は1.43〜1.45V
RHEの範囲内である。
【0295】
いかなる特定の理論にもとらわれず、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極における少なくとも1.23V、例えば1.23〜1.6V
RHEの範囲内の標準酸化還元電位は、(例えば少なくとも1.23Vの第1電圧の印加と組み合わせて)、(例えば第2電圧の印加によってではなく)分子状酸素の生成によってレドックス活性電極の還元がもたらされる実施形態に適していると考えられる、というのも、電極の同時の(上記酸化還元電位によって特徴付けられる)還元と(少なくとも1.23V
RHEの標準酸化還元電位によって特徴付けられる)分子状酸素を形成する水の反応とが、システムへのエネルギーの印加を必要とすることなくもたらされ得、かつ場合によって発熱性になり得るからである。さらに、酸化状態の相対的安定性は、酸化還元電位と(例えば本明細書に記載の酸化還元電位範囲による)1.23V
RHEとの差が比較的小さいことに関連している可能性があると考えられる。
【0296】
さらに、(例えば0.05〜2.0Vの範囲内の第1電圧の印加と組み合わせて)レドックス活性電極における0〜1.6V
RHEの範囲内の標準酸化還元電位は、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによれば、(本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って)第1電圧および第2電圧を印加する実施形態に適し得ると考えられる。
【0297】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、レドックス活性電極が可逆的に酸化および還元を受ける容量(例えば充電容量)は、レドックス活性電極の容量に関する本明細書に記載のいずれかの実施形態によるものである。
【0298】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、可逆的に酸化および還元を受ける物質を含む。いくつかの実施形態において、そのような物質は、遷移金属(場合により、Ni、Cu、Znおよび/またはCd)および/またはpブロック元素からの金属(場合により、Pbおよび/またはSn)を含む。
【0299】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の各実施形態のいずれかによるレドックス活性電極は、導電体(導電性材料)を含む母材を(そのような母材に関して本明細書に記載される実施形態のいずれかに従って)含む。
【0300】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法および/またはシステムにおいて(1つ以上の)レドックス活性電極を使用する前に、レドックス活性電極に対して充放電の活性化サイクルを(本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って)行う。
【0301】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、レドックス活性電極は、レドックス活性電極におけるニッケルに関する本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って、ニッケルを例えばNi(OH)
2および/またはニッケルオキシ水酸化物の形態で含む。
【0302】
レドックス活性電極におけるNi(OH)
2の可逆的な酸化は、場合により、式:
【化7】
で表され得る。
【0303】
そのような反応によって消費される水酸化物イオンは、例えば、作用電極において生じた水酸化物イオンであり得る。
【0304】
レドックス活性電極におけるNiOOHの可逆的な還元は、場合により、式:
【化8】
で表され得る。
【0305】
そのような反応によって生じる水酸化物イオンは、例えば、作用電極において酸化され得る。
【0306】
あるいは、またはさらに、レドックス活性電極におけるNiOOHの可逆的な還元(例えば、熱刺激に際して刺激された還元)は、場合により、式:
【化9】
で表され得る。
【0307】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、作用電極は、(例えば本明細書に記載の第1作用電極に関する各実施形態のいずれかによる)水素発生反応が起こるカソードに適する任意の材料からなる。
【0308】
本発明のいくつかの実施形態によるNi(OH)
2/NiOOH系レドックス活性電極を含むシステム、ならびにその酸化反応および還元反応を、(レドックス活性電極の酸化を描写する)
図20Aおよび(レドックス活性電極の還元を描写する)
図20Bに描写する。
【0309】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、作用電極は、例えば本明細書に記載の第1作用電極に関する各実施形態のいずれかに従って(例えばアルカリ条件下で)水素発生反応が起こるカソードおよび/または酸素発生反応が起こるアノードに適する、任意の材料からなる。そのような作用電極は、例えば、本明細書に記載の各実施形態のいずれかに従って第2電圧を印加する際に作用電極において酸素発生反応がもたらされる実施形態で使用され得る。
【0310】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、作用電極は、炭素、1つ以上の光活性材料(例えば光カソード材料)、および/または(例えば、本明細書に記載の第1作用電極に関する各実施形態のいずれかによる)1つ以上の金属、ならびに場合により(本明細書に記載の各実施形態のいずれかによる)カソード反応および/またはアノード反応の触媒として作用する少なくとも1つのさらなる物質を含む。
【0311】
光カソード材料を含む作用電極に関するいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、酸素発生は、作用電極においてではなく(例えば、熱刺激に際して)レドックス活性電極においてもたらされる。
【0312】
この態様によるいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、作用電極は、2.0V
RHE以下の(本明細書において定義される)OER(酸素発生反応)動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.9V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.8V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.7V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.6V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.55V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.5V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.45V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.4V
RHE以下である。いくつかの実施形態において、OER動的電位は1.35V
RHE以下である。上記の実施形態のうちのいくつかにおいて、OERは作用電極においてもたらされる。
【0313】
本明細書に記載のいずれかの実施形態のいくつかの実施形態において、レドックス活性電極は、レドックス活性電極の可逆的な酸化に関連する酸化還元電位(例えば標準酸化還元電位)よりも少なくとも0.05V高いOER(酸素発生反応)動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、レドックス活性電極は、レドックス活性電極の可逆的な酸化に関連する酸化還元電位よりも少なくとも0.1V高いOER動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、レドックス活性電極は、レドックス活性電極の可逆的な酸化に関連する酸化還元電位よりも少なくとも0.15V高いOER動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、レドックス活性電極は、レドックス活性電極の可逆的な酸化に関連する酸化還元電位よりも少なくとも0.2V高いOER動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、レドックス活性電極は、レドックス活性電極の可逆的な酸化に関連する酸化還元電位よりも少なくとも0.25V高いOER動的電位によって特徴付けられる。いくつかの実施形態において、レドックス活性電極は、レドックス活性電極の可逆的な酸化に関連する酸化還元電位よりも少なくとも0.3V高いOER動的電位によって特徴付けられる。
【0314】
この出願から満期へと向かう特許期間の間に、関連性のある多くのレドックス活性電極およびその中に含むのに適するレドックス活性材料、HER電極、OER電極、ならびにその他の電気化学セル構成要素が開発されることが予想され、「レドックス活性電極」、「作用電極」などの用語は、全てのそのような新規技術を先験的に包含することを意図するものである。
【0315】
本明細書において用いられる用語「約」は、±10%を指し、いくつかの実施形態では±5%を指す。
【0316】
用語「含む」、「含んでいる」、「包含する」、「包含している」、「有している」およびそれらの活用形は、「限定はしないが含む」ことを意味する。
【0317】
用語「から構成される」は、「限定はしないが含む」ことを意味する。
【0318】
用語「から本質的に構成される」は、組成物、方法または構造体はさらなる原料、ステップおよび/または部品を含み得るがそれは、さらなる原料、ステップおよび/または部品が特許請求の範囲に記載の組成物、方法または構造体の基本的かつ新規な特性を実質的に変化させない場合に限る、ということを意味する。
【0319】
本明細書で用いる単数形「1つ」、「一」および「その」は、複数形への言及を(そうでないことが文脈から明らかに示されているのでない限り)含む。例えば、用語「化合物」または「少なくとも1つの化合物」は、混合物を含めた複数の化合物を包含し得る。
【0320】
本出願の全体を通して本発明の様々な実施形態は範囲形式で示され得る。範囲形式での記載は、単に便宜および簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する固定的な限定として解釈すべきでないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な全ての小範囲およびその範囲内の個別の数値を具体的に開示したものと見なされるべきである。例えば、1〜6などの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの小範囲、ならびにその範囲内の個別の数値、例えば1、2、3、4、5および6を具体的に開示したものと見なされるべきである。これは範囲の広さに拘らず当てはまる。
【0321】
本明細書において数値範囲が示される場合はいつでも、表示範囲内の任意の引用数字(分数または整数)を包含することを意味している。第1指示数と第2指示数との「間の範囲内の/範囲内にある」という語句および、第1指示数「から」第2指示数「までの範囲内の/範囲内にある」という語句は、本明細書において互換的に用いられ、第1指示数および第2指示数ならびにそれらの間の全ての分数および整数を含むことを意味している。
【0322】
本明細書で用いる用語「方法」は、化学、薬理学、生物学、生物化学および医学の分野の専門家に既知であるかまたは彼らによって容易に既知の様式、手段、技術および手順から開発される様式、手段、技術および手順を非限定的に含めた、所与の作業を遂行するための様式、手段、技術および手順を指す。
【0323】
明瞭さのために別個の実施形態の文脈において記載された本発明の特定の特徴は、組み合わせて単一の実施形態において提供されてもよいということが理解される。逆に、簡潔さのために単一の実施形態の文脈において記載された本発明の様々な特徴は、単独もしくは任意の適切な小結合で、または適切となるように、記載された本発明のその他の任意の実施形態において提供されてもよい。様々な実施形態の文脈において記載された特定の特徴は、それらの要素がないと実施形態が機能しないというわけでない限り、それらの実施形態の必須の特徴として見なされるべきではない。
【0324】
上に詳述され、添付の特許請求の範囲に記載される、本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験に基づく支持がなされる。
【実施例】
【0325】
これより以下の実施例に言及するが、それは上記の記載と併せて本発明のいくつかの実施例を非限定的に例示するものである。
【実施例1】
【0326】
水酸化ニッケル電極の作製
最適化された比率[Freitas,M.(2001)Journal of Power Sources、93(1)、pp.163−173]に従って52重量%のNi(OH)
2、21重量%の黒鉛および27重量%のLDPEを使用してNi(OH)
2混合物を作製した。
【0327】
以下のとおりにNi(OH)
2混合物を発泡ニッケルに貼り付けて熱プレスすることにより、
図3に示す水酸化ニッケル[Ni(OH)
2]電極を作製した。
【0328】
乾燥混合物に合計25重量%の水を添加し、湿性混合物を、予め洗浄しておいた厚み1.6mmの発泡ニッケルの両側に配置した。型板およびペーストを真空下で3時間室温で乾燥させた。その後、電極を140℃で7分間、840kg・cm
−2で熱プレスして、1.6mmの最終厚みにした。得られた電極の全体面積は3.75cm
2であった。
【0329】
混合物の貼り付けに先立って耐熱テープをマスキングのために使用し、プロセスの最後に取り除いて、電極を電気回路に接続するための純ニッケル表面を残した。
【0330】
得られた電極の写真を
図3に示す。
【0331】
作製した電極のXRD測定によってβ−Ni(OH)
2粉末の存在が確認された。XRDデータの例示的なセットを
図4に示す。
【0332】
熱プレス後、外部ペースト層が発砲ニッケルマトリックスの外側に留まった。前処理として、この不安定な外層を(剥離によって)機械的に除去した。この電極に反復的な正および負の電流を印加することによって電極をアルカリ溶液中で電気化学的にサイクルさせると、この層のさらなる自己除去が起こった。この前処理手順の後、外層は比較的安定に留まった。
【実施例2】
【0333】
水酸化ニッケル[Ni(OH)
2]からニッケルオキシ水酸化物[NiOOH]への活性化および電気化学的変換
上に記述したように、β−Ni(OH)
2およびβ−NiOOHのレドックス反応については下記の一般反応スキームが提案されている。
【化10】
【0334】
β−Ni(OH)
2からβ−NiOOHへの変換は一般には可逆的であると考えられる。IUPAC[IUPAC「Selected Constants」、G.Chariot、Butterworths編集、ロンドン(1971)p.34]によれば、Ni(OH)
2/NiOOH対の形式電位E
0はHg/HgO/1M KOHに対して0.42Vである。他の研究者ら[Barnardら(1980)Journal of Applied Electrochemistry、10(1)、pp.109−125]は、「活性化」および「不活性化」されたβ相の対についてのE
0の値が、電解質濃度に依存してHg/HgO/1M KOHに対して0.443〜0.470Vの範囲内にあることを見出した。
【0335】
当該技術分野では、β−Ni(OH)
2の過充電がβ−NiOOHからのγ−NiOOHの形成およびそれに続く電極の不活性化をもたらし得るという報告がある。例えば、Sunら(2007)Chinese Journal of Chemical Engineering、15(2)、pp.262−267;Snookら(2007)Journal of power sources、168(2)、pp.513−521;Oshitaniら(1986)Journal of Applied Electrochemistry、16(3)、pp.403−412;およびProvaziら(2001)Journal of power sources、102(1)、pp.224−232を参照されたい。
【0336】
Oshitaniら(1986)は、75%の充電容量までは充電するにつれて電極の厚みが減少するものの、容量が75%を上回ると電極厚みが増加して電極が膨張し始め、寄生反応β−NiOOH→γ−NiOOHがおおよそ75%の充電で始まることを指し示している、ということを報告した。
【0337】
上記報告に基づき、本発明者らは、過充電によるγ−NiOOH形成が防止されれば、作製したβ−Ni(OH)
2電極をβ−Ni(OH)
2とβ−NiOOHとの間で電気化学的にサイクルさせることができると想定した。それゆえ、過充電を回避するために特別の注意を払い、全ての電極の充電を最大充電容量の37.5%(0.5×75%)に制限した。
【0338】
1MのNaOH電解液中で参照電極(RE)としての飽和Ag/AgCl電極と対極としてのPt電極(1cm×1cmのPtシート)とを使用して3電極型セルにおいてNi(OH)
2電極を作用電極(WE)として接続することにより、単一セル型システムを組み立てた。Ni(OH)
2電極をβ−Ni(OH)
2←→β−NiOOHの間で電気化学的にサイクルさせた。セルの充電配置および放電配置を
図5Aおよび5Bにそれぞれ描写する。
【0339】
電極を、±5mAの定電流の下で一連の短い(10分の)充放電サイクルに供し、それは、見積もった37.5%の充電容量の範囲内に十分に入っていた。外側の電極層は、ほぼ完全に自己除去された。その後、活物質の単位重量あたりの最大充電容量を見積もるために電極を蒸留水で洗浄し、40℃で真空乾燥させて重さを量った。
【0340】
Ni原子1つあたり0.9e
−の充電効率[Fierroら、(2001)、上記および国際公開第2000/014818号]を仮定すれば電極の最大充電容量を下記のとおりに計算することができる。
【数1】
【0341】
この計算は、発泡ニッケルの中のペースト組成物が均質であるという仮定に基づいている。
【0342】
本明細書において記載されるように作製および使用される2つのβ−Ni(OH)
2電極の最大充電容量は、一方の電極について5(mA)×8.4(時間)、もう一方の電極について5(mA)×6.9(時間)と計算された。
【0343】
最小値をもとにすると37.5%は5(mA)×2.5(時間)であり、この充電容量を次の段階の実験のために用いた。したがって、以下の全ての実験は、充電時に5mAで2.5時間を超えずに行った。
【0344】
図5A〜Bに描写される3電極型単一セル構成におけるβ−Ni(OH)
2電極をそれぞれ、5mAで2.5時間それらの電極を充電してその後に逆の電流で同じ時間放電するという活性化サイクルに10回供した。得られたデータを
図6に示す。
図7に示すように、これらの条件下で放電容量は、放電容量85%の平坦域に達するまでサイクルの度に増加した。活性化段階は、一方の電極が、大部分においてβ−Ni(OH)
2から構成されるその放電型であり、もう一方の電極が、おおよそ40%のβ−NiOOHから構成されるその充電型である状態で、終了した。
【0345】
便宜上、充電した電極および放電した電極をそれぞれ「NiOOH」電極および「Ni(OH)
2」電極と呼ぶ。
【実施例3】
【0346】
2セルでの水電解
各セル内に1つのPtシート電極(1cm×1cm)と1つのNi(OH)
2/NiOOH電極とを収容した2セル型システムを組み立てた。Pt電極を2セル配置で「VersaSTAT3」ポテンショスタット/ガルバノスタットに接続し、外部金属線を介してNi(OH)
2/NiOOH電極を互いに対して接続した。セル内の電解質は1MのNaOHとした。システムならびにその酸化反応および還元反応を
図8に模式的に示す。最初のシステム配置を
図9Aに模式的に示す。提案される機構は上記のスキーム1の等式で表される。
【0347】
5mAの電流で電流測定を行った。WEとCEとの間の初期電位差(電圧)は2Vであり、それは、NiOOH電極の完全放電を示す急な電圧上昇に至るまで徐々に上昇した。電圧が3Vに達したときに測定を停止した。この測定を本明細書では「ステップ1」と呼ぶ。
【0348】
次の電気分解ステップのために、2つの配置を下記のとおりに試験した。
【0349】
A)電流方向の逆転:WEとCEとの間の電位差が3Vに達した時に、
図9Bに模式的に示すように、電極の位置を変えることなく電流方向を逆転させた。電流方向を逆転させた時点で初期電位差は−2Vとなり、それは、−3Vで停止させる急低下に至るまで徐々に低下した。Ni(OH)
2電極およびNiOOH電極をそれらの初期組成に変換し戻して完全なサイクルを構成させた。電位差が−3Vに達した時に電流方向を再び逆転させ、その後は同様に行った。全部で20回の逐次的電流逆転ステップ(10サイクル)を行った。時間の関数として記録した電圧を
図10に示す。
【0350】
各逐次的ステップの放電容量は、前のステップで導入して充電値に対して計算した。そのデータを
図11に示す。逐次的電流逆転ステップの度に、放電容量は前のステップに比べて0〜5%低下した。全体として放電容量は10サイクルの後に32%低下した。
【0351】
B)電極位置の逆転:WEとCEとの間の電位差が3Vに達した時に、
図9Cに模式的に示すようにNi(OH)
2/NiOOH電極の位置を逆転させた。放電した電極を、充電した電極の代わりに配置し、その逆も同様にした。同じ電流および電流方向を適用して電位差を3Vに達するまで測定した。この時点で電極位置を再び逆転させた。得られたデータを
図12に示す。
【0352】
図13は、2つの配置の10サイクルについての規格化ステップ時間(t
i/t
l、iはステップ数)を示す。規格化ステップ時間の結果は上記の2つの配置間で6%の最大誤差を有して非常に似通っている。ガス気泡がPt電極上に形成されて速やかに漏れ出ているのが明確に観察され、水素発生反応および酸素発生反応を指し示していた。
【0353】
第1サイクルの間に、Ni(OH)
2/NiOOH反応同士の電位差(「ΔV」と呼ぶ)を測定した。得られたデータを
図14に示す。Ni(OH)
2/NiOOH反応同士の電位差は測定の最初の110分で0.226V増大し、その後に電位差の急速な増大が観察された。電位の急速な増大は、NiOOH電極の完全放電に起因している。電位差は、2セル配置において電気分解反応を進行させるために供給しなければならない過電位(電圧)として見なされる。
【0354】
全体として、本明細書に示すデータは、2つのセルの間に塩橋による連結を有さずに一方のセルでHERが起こりもう一方のセルでOERが起こる2つの別個のセルを有するシステムを使用して、水分解を行うことができる、ということを実証する。
【0355】
プロセスは、β−Ni(OH)
2←→β−NiOOHの間での可逆反応に基づいている。一方のセルではPt電極上で水酸化物イオンと共に水素が生じる。これらのイオンは、今度は同じセル内に配置されたにNi(OH)
2電極によって取り込まれ、Ni(OH)
2がNiOOHへと変換されて電子を放出する。電子は金属線を通って、第2セル内に配置されたNiOOH電極へと移動する。第2セルでは、水酸化物イオンを生成するプロセスにおいてNiOOHがNi(OH)
2へと変換される。これらのイオンは、同じセル内のPt電極上で起こる酸素発生反応に取り込まれる。2つのPt電極は直流電源に接続されて電気回路網を閉じている。
【0356】
このプロセスは、標準的な単一セル内での水電解と同程度の外部電圧を印加する間に成し遂げられる。本明細書に記載の単一セル型システムでは2〜2.2ボルトの電位が測定されたので、本明細書に記載の2セル型システムには2〜2.6の範囲内の電位を印加する。過電位は、Ni(OH)
2が1.45V
RHEでNiOOHに変換され、その一方でNiOOHが平均して1.35V
RHEで放電するように、Ni(OH)
2/NiOOH反応を進行させるのに役立つ。
【実施例4】
【0357】
ヘマタイト光アノードを使用した水電解
単一光電気化学(PEC)セルを有するシステムを本明細書に記載の2セル型システムと比較すべく実験を計画した。暗条件下および太陽光刺激装置を使用する明条件下で0.5〜1.9Vの線形走査測定を2電極配置で行った。
【0358】
単一セル型システムでは、[Dotanら(2013)Nature materials、12(2)、pp.158−164]に記載されているようにFTO被覆ガラス基材上へのパルスレーザー堆積によって作製したヘマタイト光アノードを2電極(2E)配置でPt対極(CE)に接続した。
【0359】
2セル型システムでは、一方のセルは、ヘマタイト光アノードと5(mA)×2.5(時間)で予備充電したNi(OH)
2/NiOOH電極とを収容していた。もう一方のセルは、Pt電極と完全放電させたNi(OH)
2/NiOOH電極とを収容していた。2E測定において、ヘマタイト電極およびPt電極をそれぞれWEおよびCEとして接続した。これらの測定で得られたデータを
図15に示す。示されているように、I対Vのデータは1セル型システムと2セル型システムとでほぼ同一である。わずかな差異は、システム間での幾何学配置の違いに起因している可能性がある。
【0360】
2セル型システムにおいてクロノポテンシオメトリー測定を、交互の明条件/暗条件において300秒間1.6Vで行った。得られたデータを
図16に示す。
【0361】
例となるそのようなシステムの写真を
図17A〜Cに示す。
図17Aは、
図1に示した一般スキームに従うシステムを示しており、セル(1)は、
図1中の容器60に相当し、作用電極58としてのヘマタイト光アノード(3)と、作用電極18としてのPt電極(6)とレドックス活性電極16としてのNi(OH)
2/NiOOH電極(7)とを収容した(容器20に相当する)セル(2)に(導体50に相当する)線(5)を介して接続されたレドックス活性電極56としてのNi(OH)
2/NiOOH電極(4)とを収容している。
【0362】
図18および19に示すように、水素発生反応および酸素発生反応を指し示して2セル型システム内のWE上およびCE上に気泡が現れた。
(実施例5)
【0363】
別個の水素発生モードと酸素発生モードとを有する単一セルでの水電解
1MのNaOHに浸したニッケル酸化物/水酸化物電極を有し
図20A中に模式的に示される初期システム配置を有する単一セル型システムを組み立てた。
【0364】
1.45V
RHEのバイアスを45分間印加することによって水素が目に見えて生じた。しかし、電極内のニッケルがニッケルオキシ水酸化物へと変換されるにつれて反応は衰え、目に見える水素ガス気泡形成および(分子状水素形成に比例する)電流が減少した。
【0365】
図21に示すように、(電位降下なしで)ニッケル酸化物/水酸化物電極を一時的に取り外すことによってもたらされる5分間の中断は、クロノアンペロメトリー測定により決定される電流の部分的保存をもたらし、電流の部分的保存および水素生成は、ニッケル酸化物/水酸化物電極を高温(60℃)の1MのNaOHに浸したときに大幅に大きくなった。
【0366】
さらに、ニッケル酸化物/水酸化物電極を高温の1MのNaOHに浸したとき、気泡形成が明瞭に視認された。
【0367】
全ての測定は、(OCP測定によって検証される)ニッケル酸化物/水酸化物電極の酸化還元電位を1.35V
RHEに調節して安定させた後に行われた。
【0368】
これらの結果は、
図20Bに模式的に示すように、ニッケルオキシ水酸化物が不安定であり、分解して水酸化ニッケルを再生させつつ酸素を放出する、ということを指し示す。
【0369】
再生化学反応:
【化11】
は、一連の2つの電気化学反応:
【化12】
として見なすことができる。
【0370】
これは、電子がニッケルオキシ水酸化物および水と反応して水酸化ニッケルおよび水酸化物イオンを形成し、このイオンが反応して水および酸素を形成し、その一方で電子を戻し与えて反応を継続させる、ということを意味する。そうすることで、反応が自発的反応となるように系はその自由エネルギーを1電子あたり120meV(それはまた1分子あたり120meVを意味する)減少させる。
【0371】
上記の結果はさらに、電解液温度を適度に上昇させることによって再生反応の速度が大幅に増加することを示唆する。
【実施例5】
【0372】
別個の水素発生モードと酸素発生モードとを有する大型化単一セルでの水電解
大型化した熱電気化学的電解装置の例示的な見取り図を
図22Aおよび22Bに示す。
【0373】
熱電気化学的電解装置は、水および電気を消費し、圧縮された水素および酸素を発生させる。作動原理は、上記実施例5で記述したような
図20Aおよび20Bで描写されるものに対応する。
【0374】
電解装置は、主容器(場合により、円筒)から作られており、それは、
図22Aに描写するように排気管および2つの電解液タンク(高温および低温)に連結されている。主容器の内部には、
図22Bでより詳しく描写される活性電極を運搬するピストンがある。
【0375】
電解装置は下記の4つのステップに従って作動する:
1)電気化学的水素発生:(約1.5Vの)電圧を水素発生電極とニッケル酸化物/水酸化物電極との間に印加する。水素が発生し、チャンバ内の圧力が増大する。チャンバ圧は、チャンバ容積を変化させることによって(ピストンの高さを変えることによって)制御される。このステップは、ニッケル酸化物/水酸化物電極のかなりの部分がニッケルオキシ水酸化物へと変換されるまで継続する。
2)水素の圧縮および排気:ピストンを上げることにより、水素をさらに圧縮して排気として過圧水素タンク内へ放出する。そうする間に、低温の電解液もまた排出物として低温電解液タンクへと放出する。
3)酸素の化学的発生および排気:ピストンを下げつつ高温電解液タンクから高温の電解液をチャンバ内に送り込む。高温の電解液は、ニッケル酸化物/水酸化物電極における再生反応を加速させる。反応を遅らせる酸素圧の上昇を防ぐために、必要に応じて酸素を排気として酸素タンク内または環境中へと放出する。(プロセスの間に冷える可能性がある)電解液の交換、および酸素の排気は、場合により、必要に応じてピストンを上下させることによって行われ得る。このプロセスは、ニッケル酸化物/水酸化物電極のかなりの部分が水酸化ニッケルへと変換されるまで継続する。
4)次のサイクルのための準備:ピストンを上げることにより、残存する酸素を排気として放出する。そうする間に、高温の電解液もまた排出物として高温電解液タンクへと放出する。その後、ステップ1〜4のさらなるサイクルのためにシステムを準備するように、ピストンを下げつつ低温電解液タンクから低温の電解液をチャンバ内に送り込む。
【0376】
本発明をその特定の実施形態と関連付けて記載してきたが、当業者にとって多くの代替策、改変および変形が明らかであろうことは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲の内に入る全てのそのような代替策、改変および変形を包含することが意図される。
【0377】
本明細書において言及した全ての刊行物、特許および特許出願は、あたかも各個別の刊行物、特許または特許出願を具体的かつ個別に示して参照により本明細書に組み込んだのと同じ程度に、本明細書においてその全体が参照により明細書中に組み込まれる。さらに、この出願におけるいかなる参考文献の引用または特定も、本発明にそのような参考文献が先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきでない。見出し項目を使用している限り、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきでない。