特許第6810043号(P6810043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810043
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】粘着シート及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20201221BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20201221BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   H01L21/56 T
   C09J133/00
   C09J183/04
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-538094(P2017-538094)
(86)(22)【出願日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】JP2016075600
(87)【国際公開番号】WO2017038913
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2019年6月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-172399(P2015-172399)
(32)【優先日】2015年9月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 健
(72)【発明者】
【氏名】菊池 和浩
(72)【発明者】
【氏名】淵 恵美
【審査官】 平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−226797(JP,A)
【文献】 特開2014−103257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
C09J 133/00
C09J 183/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と前記基材の上に形成された粘着剤層とを有する粘着シートに、複数の開口部が形成された枠部材を貼着させる工程と、前記枠部材の前記開口部にて露出する前記粘着剤層に半導体チップを貼着させる工程と、前記半導体チップを封止樹脂で覆う工程と、前記封止樹脂を熱硬化させる工程と、熱硬化させた後、前記粘着シートを剥離する工程と、前記粘着シートを剥離した後、露出した前記半導体チップの回路面に対して再配線層またはバンプを形成する工程と、を有する半導体装置製造プロセスにおいて使用される粘着シートであって、
前記基材は、屈曲可能であり、
前記基材の厚みと前記粘着剤層の厚みとの和をtAS[μm]とし、前記枠部材の厚みをtFR[μm]とした場合に、tAS[μm]<tFR[μm]の関係を満たす、
粘着シート。
【請求項2】
前記基材は、ガラス転移温度50℃以上である樹脂フィルムである、
請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層は、100℃における、測定周波数を1Hzとしたときの貯蔵弾性率が1×10Pa以上である、
請求項1又は請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記基材の厚みは、10μm以上100μm以下である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層の厚みは、1μm以上100μm以下である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記基材の厚みと前記粘着剤層の厚みの和をtAS[μm]とし、前記枠部材の厚みをtFR[μm]とした場合に、0.1≦tAS/tFR≦0.9の関係を満たす、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記枠部材の厚みは、100μm以上1000μm以下である、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項8】
150℃で30分間加熱した際の前記基材のMD方向の熱収縮率が、2.0%以下であり、
150℃で30分間加熱した際の前記基材のCD方向の熱収縮率が、2.0%以下である、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記粘着剤層に含まれる粘着剤は、アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤である、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項10】
前記粘着剤層の5%重量減少温度は、250℃以上である、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項11】
屈曲可能な基材と前記基材の上に形成された粘着剤層とを有する粘着シートに、複数の開口部が形成された枠部材を貼着させる工程と、
前記枠部材の前記開口部にて露出する前記粘着剤層に半導体チップを貼着させる工程と、
前記半導体チップを封止樹脂で覆う工程と、
前記封止樹脂を熱硬化させる工程と、
熱硬化させた後、前記粘着シートを剥離する工程と、
前記粘着シートを剥離した後、露出した前記半導体チップの回路面に対して再配線層またはバンプを形成する工程と、を有し、
前記基材の厚みと前記粘着剤層の厚みとの和をtAS[μm]とし、前記枠部材の厚みをtFR[μm]とした場合に、tAS[μm]<tFR[μm]の関係を満たす、
半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記半導体チップを前記封止樹脂で覆う工程において、シート状の封止樹脂を用いる、
請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
基材と前記基材の上に形成された粘着剤層とを有する粘着シートに、複数の開口部が形成された枠部材を貼着させる工程と、前記枠部材の前記開口部にて露出する前記粘着剤層に半導体チップを貼着させる工程と、前記半導体チップを封止樹脂で覆う工程と、前記封止樹脂を熱硬化させる工程と、熱硬化させた後、前記粘着シートを剥離する工程と、を有する半導体装置製造プロセスにおいて使用される粘着シートであって、
前記基材は、屈曲可能であり、
前記基材の厚みと前記粘着剤層の厚みとの和をtAS[μm]とし、前記枠部材の厚みをtFR[μm]とした場合に、tAS[μm]<tFR[μm]の関係を満たし、
前記粘着剤層に含まれる粘着剤は、アクリル系粘着剤である、
粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの実装技術において、小型化と高集積の面で特にファンアウトタイプのウエハレベルパッケージ(FanOutWaferLevelPackage:FOWLP)が提案されている。FOWLPは、ウエハレベルの再配線技術を用いて、チップ領域外にも再配線層を形成するパッケージの総称である。一般的なBGA(Ball Grid Array)などでは、チップを基板に実装して、ワイヤでボンディングする必要があるが、FOWLPではそれらを薄膜の配線体で代替してチップと接合することにより、ベアチップレベルの小型パッケージが可能になる。具体的には、個片化された半導体チップを、後に除去する支持体の上に複数個並べ、封止材としての樹脂組成物で覆い、その樹脂組成物を硬化させ、樹脂封止を行った後に、再配線を行い、切断することによって得られた半導体パッケージである。
【0003】
特許文献1には、支持体として所定温度以上で粘着性能を失う感温性粘着剤を用いた方法が記載されている。具体的には、特許文献1には、感温性粘着剤を表面上に有する支持体の、前記感温性粘着剤側に、複数の半導体チップを配置し、配置された半導体チップをプラスチックで埋め込んだ後に、所定温度以上に加熱して、前記感温性粘着剤の粘着性能を失わせて、支持体を剥離する半導体パッケージの製造方法が記載されている。
特許文献1に記載の方法において、支持体が硬くて曲がらない硬質基板を用いた場合、支持体から剥離する際、半導体パッケージが損傷して、所望の形状の成形体が得られない場合があった。一方、支持体としてフレキシブルな基板を用いる場合には、樹脂封止する面積が比較的大きいため、樹脂組成物を硬化させると、硬化収縮に起因して発生する半導体パッケージの反りを充分に抑制できない場合がある。
特許文献2には、粘着テープ上にパネルサイズの複数の開口部を有する枠部材を配置し、その開口部に半導体チップをフェースダウンで配置し、枠部材と半導体チップの隙間を埋めるように絶縁材料をラミネートし、粘着テープを剥離し、再配線を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0183269号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0008566号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、FOWLPのような比較的広い面積を封止する半導体パッケージの反りを抑制でき、かつ樹脂封止後に剥離しやすい粘着シートを提供することを目的とする。本発明の別の目的は、当該粘着シートを用いた半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、基材と前記基材の上に形成された粘着剤層とを有する粘着シートに、複数の開口部が形成された枠部材を貼着させる工程と、前記枠部材の前記開口部にて露出する前記粘着剤層に半導体チップを貼着させる工程と、前記半導体チップを封止樹脂で覆う工程と、前記封止樹脂を熱硬化させる工程と、熱硬化させた後、前記粘着シートを剥離する工程と、を有する半導体装置製造プロセスにおいて使用される粘着シートであって、前記基材は、屈曲可能であり、前記基材の厚みと前記粘着剤層の厚みとの和をtAS[μm]とし、前記枠部材の厚みをtFR[μm]とした場合に、tAS[μm]<tFR[μm]の関係を満たす、粘着シートが提供される。
【0007】
本発明の一態様に係る粘着シートにおいて、前記基材は、ガラス転移温度50℃以上である樹脂フィルムであることが好ましい。
【0008】
本発明の一態様に係る粘着シートにおいて、前記粘着剤層は、100℃における、測定周波数を1Hzとしたときの貯蔵弾性率が1×10Pa以上であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る粘着シートにおいて、前記基材の厚みは、10μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る粘着シートにおいて、前記粘着剤層の厚みは、1μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る粘着シートにおいて、前記基材の厚みと前記粘着剤層の厚みの和をtAS[μm]とし、前記枠部材の厚みをtFR[μm]とした場合に、0.1≦tAS/tFR≦0.9の関係を満たすことが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る粘着シートにおいて、前記枠部材の厚みは、100μm以上1000μm以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る粘着シートにおいて、150℃で30分間加熱した際の前記基材のMD方向の熱収縮率が、2.0%以下であり、150℃で30分間加熱した際の前記基材のCD方向の熱収縮率が、2.0%以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る粘着シートにおいて、前記粘着剤層に含まれる粘着剤は、アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤であることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係る粘着シートにおいて、前記粘着剤層の5%重量減少温度は、250℃以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法は、屈曲可能な基材と前記基材の上に形成された粘着剤層とを有する粘着シートに、複数の開口部が形成された枠部材を貼着させる工程と、前記枠部材の前記開口部にて露出する前記粘着剤層に半導体チップを貼着させる工程と、前記半導体チップを封止樹脂で覆う工程と、前記封止樹脂を熱硬化させる工程と、熱硬化させた後、前記粘着シートを剥離する工程と、を有し、前記基材の厚みと前記粘着剤層の厚みとの和をtAS[μm]とし、前記枠部材の厚みをtFR[μm]とした場合に、tAS[μm]<tFR[μm]の関係を満たす。
【0017】
本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法において、前記半導体チップを封止樹脂で覆う工程において、シート状の封止樹脂を用いることが好ましい。
【0018】
本発明によれば、FOWLPのような比較的広い面積を封止する半導体パッケージの反りを抑制でき、かつ樹脂封止後に剥離しやすい粘着シートを提供することができる。また、本発明によれば、当該粘着シートを用いた半導体装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る粘着シートの断面概略図である。
図2A】実施形態に係る粘着シートを用いた半導体装置の製造工程の一部を説明する図である。
図2B】実施形態に係る粘着シートを用いた半導体装置の製造工程の一部を説明する図である。
図2C】実施形態に係る粘着シートを用いた半導体装置の製造工程の一部を説明する図である。
図2D】実施形態に係る粘着シートを用いた半導体装置の製造工程の一部を説明する図である。
図2E】実施形態に係る粘着シートを用いた半導体装置の製造工程の一部を説明する図である。
図3】粘着シートの厚みと枠部材の厚みとの関係を説明する断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(粘着シート)
本実施形態に係る粘着シートは、基材と前記基材の上に形成された粘着剤層を有する粘着シートに、複数の開口部が形成された枠部材を貼着させる工程と、前記枠部材の前記開口部にて露出する前記粘着剤層に半導体チップを貼着させる工程と、前記半導体チップを封止樹脂で覆う工程と、前記封止樹脂を熱硬化させる工程と、熱硬化させた後、前記粘着シートを剥離する工程と、を有する半導体装置製造プロセスにおいて使用されることが好ましい。
【0021】
図1には、本実施形態の粘着シート10の断面概略図が示されている。
粘着シート10は、基材11及び粘着剤層12を有する。粘着剤層12の上には、図1に示されているように、剥離シートRLが積層されていてもよい。粘着シート10の形状は、例えば、シート状、テープ状、ラベル状などあらゆる形状をとり得る。
【0022】
(基材)
基材11は、屈曲可能である。本発明において、「屈曲可能」とは、例えば、ロール状に巻くことが可能であり、かつロール状に巻いても損傷が充分に抑制される程度の柔軟性を有していることを言う。具体的には、基材11は、直径10mmφのステンレス棒に巻付角180°で巻き付け可能であることが好ましい。より具体的には、「基材11が屈曲可能」とは、直径10mmφのステンレス棒に巻付角180°で巻き付けても、基材11に折り目や損傷が発生しないことが好ましい。基材11が、上記のような柔軟性を有していれば、半導体チップを樹脂で封止した後に基材11を屈曲させながら容易に剥離することができる。
基材11は、第一面11a、及び第一面11aとは反対側の第二面11bを有する。本実施形態の粘着シート10においては、第一面11aに粘着剤層12が積層されている。基材11と粘着剤層12との密着性を高めるために、第一面11aは、プライマー処理、コロナ処理、及びプラズマ処理等の少なくともいずれかの表面処理が施されてもよい。基材11の第一面11aには、粘着剤が塗布されて粘着処理が施されていてもよい。基材の粘着処理に用いられる粘着剤としては、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、及びウレタン系等の粘着剤が挙げられる。
【0023】
基材11の厚みは、後述する基材11の厚みと粘着剤層12の厚みとの和をtAS[μm]とし、半導体装置製造プロセスで使用される前記枠部材の厚みをtFR[μm]とした場合に、tAS[μm]<tFR[μm]の関係を満たす範囲で適宜決定される。具体的には、基材11の厚みは、10μm以上100μm以下であることが好ましい。基材11の厚みは、15μm以上90μm以下であることがより好ましく、20μm以上60μm以下であることが特に好ましい。基材11の厚みが10μm以上であれば、粘着シート10を封止体から剥離する際に基材11が破断したりすることを防止できる。基材11の厚みが100μm以下であれば、粘着シート10の取り扱い性や、粘着シート10を貼着後の被着体の取り扱い性が向上する。
【0024】
基材11としては、屈曲可能であれば特に限定されないが、例えば、合成樹脂フィルム、及び金属箔などのシート材料などを用いることができる。合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、及びイミド系フィルム等が挙げられる。ポリエステル系フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、及びポリブチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。イミド系フィルムとしては、例えば、ポリアミドイミドフィルム、及びポリイミドフィルムが挙げられる。その他、基材11としては、これらの架橋フィルム及び積層フィルム等が挙げられる。
【0025】
基材11の片面、又は両面には、機能性層が設けられていてもよい。機能性層は、例えば、剥離剤層、ハードコート層、オリゴマー防止層、易接着層、及び着色層からなる群から選択されるいずれかの層であることが好ましい。基材11の両面に機能性層が設けられている場合、一方の面に設けられている第一の機能性層と、他方の面に設けられている第二の機能性層とが、互いに同じであることも好ましく、互いに異なることも好ましい。
【0026】
基材11に機能性層が設けられている場合、基材11と機能性層との合計厚みは、10μm以上100μm以下であることが好ましく、15μm以上90μm以下であることがより好ましく、20μm以上60μm以下であることが特に好ましい。
基材11の両面に機能性層が設けられている場合、一方の面に設けられている第一の機能性層の厚みと、他方の面に設けられている第二の機能性層の厚みとが、互いに同じであることも好ましく、互いに異なることも好ましい。
【0027】
基材11は、合成樹脂フィルムであることが好ましく、ポリエステル系フィルム又はイミド系フィルムであることがより好ましい。
基材11としては、汎用性の観点から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、及びポリイミドフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及びポリイミドフィルムがより好ましい。
【0028】
基材11は、ガラス転移温度50℃以上である樹脂フィルムであることが好ましい。基材11のガラス転移温度は、55℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。基材11のガラス転移温度が50℃以上であれば、封止樹脂を熱硬化させる工程でも、形状を維持できる。基材11のガラス転移温度の上限は、封止樹脂を熱硬化させる工程で形状を維持できれば特に限定されないが、通常、500℃以下である。ガラス転移温度は、DMA法(引っ張り法)において、昇温速度5℃/min、サンプル幅5mm、チャック間距離20mm、周波数10Hzの条件において確認される損失正接(tanδ)のピークを示す温度を意味する。DMAは、Dynamic Mechanical Analysisの略称である。
【0029】
基材11の収縮に伴う半導体パッケージの反りを防止する観点から、基材11の熱収縮率は、以下の範囲であることが好ましい。
150℃で30分間加熱した際の基材11のMD方向の熱収縮率は、2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。
150℃で30分間加熱した際の基材11のCD方向の熱収縮率は、2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましい。
基材11のMD方向の熱収縮率の下限、及びCD方向の熱収縮率の下限は、それぞれ、小さいほど好ましく、特に限定されない。
150℃で30分間加熱した際の基材11のMD方向の熱収縮率の下限は、0.01%以上であることが好ましい。
150℃で30分間加熱した際の基材11のCD方向の熱収縮率の下限は、0.01%以上であることが好ましい。
MD方向とは、フィルムを長尺で製膜した場合における、フィルムを搬送する方向と並行する方向である。CD方向とは、フィルムの同一面上においてMD方向と直交する方向である。
半導体パッケージの反りをより効果的に防止する観点から、基材11のMD方向の熱収縮率、及び基材11のCD方向の熱収縮率を上記の範囲とし、かつ、MD方向の熱収縮率と、CD方向の熱収縮率との比{MD方向の熱収縮率/CD方向の熱収縮率}を、0.03以上30以下の範囲にすることが好ましく、1.0以上25以下の範囲にすることがより好ましい。
なお、基材の熱収縮率は、例えば、所望の範囲を満たすような材質を選択することや、基材をアニール処理することや、基材の成膜方法を変更すること(例えば、延伸方法を変えること)などにより調整することもできる。
【0030】
(粘着剤層)
粘着剤層12は、100℃における、測定周波数を1Hzとしたときの貯蔵弾性率が1×10Pa以上であることが好ましい。粘着剤層12がこのような貯蔵弾性率を有していれば、封止樹脂を熱硬化させる工程の後に、粘着シート10を容易に剥離することができ、かつ被着体の表面に粘着剤が残るという不具合(いわゆる糊残り)を防止することができる。粘着剤層12の100℃における、測定周波数を1Hzとしたときの貯蔵弾性率の上限は、特に限定されないが、1×10Pa以下であることが好ましい。なお、本明細書において、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて、ねじりせん断法により測定した値である。
【0031】
粘着剤層12の厚みは、後述する基材11の厚みと粘着剤層12の厚みとの和をtAS[μm]とし、半導体装置製造プロセスで使用される前記枠部材の厚みをtFR[μm]とした場合に、tAS[μm]<tFR[μm]の関係を満たす範囲で適宜決定される。本実施形態において、粘着剤層12の厚みは、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上60μm以下であることがより好ましく、10μm以上50μm以下であることがさらにより好ましい。基材11の厚みtBS[μm]と、粘着剤層12の厚みtAD[μm]とは、tAD[μm]≦tBS[μm]の関係を満たすことが好ましい。
粘着剤層12の厚みが薄過ぎると、半導体チップの回路面の凹凸に粘着剤層12が追従できずに隙間が生じるおそれがある。その隙間に層間絶縁材や封止樹脂等が入り込み、チップ回路面の配線接続用の電極パッドが塞がれるおそれがある。また、粘着剤層12の厚みが厚過ぎると、半導体チップが粘着剤層に沈み込んでしまい、半導体チップ部分と、半導体チップを封止する樹脂部分との段差が生じるおそれがある。このような段差が生じると再配線の際に配線が断線するおそれがある。
粘着剤層12の厚みが1μm以上100μm以下であれば、適度な粘着力が得られ、半導体チップを適切に保持することができる。粘着剤層12の厚みが5μm以上であれば、チップ回路面の凹凸に粘着剤層12が追従し易くなり、前述のような隙間の発生を防止できる。粘着剤層12の厚みが60μm以下であれば、前述のような段差が生じ難くなる。
【0032】
本実施形態に係る粘着剤層12は、粘着剤組成物を含んでいる。粘着剤層12の粘着剤組成物に含まれる粘着剤としては、特に限定されず、様々な種類の粘着剤を粘着剤層12に適用できる。粘着剤層12に含まれる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、及びウレタン系粘着剤が挙げられる。また、耐熱性を有する熱可塑性のポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルアミドイミド樹脂、ブロック共重合体(スチレン−エチレンブチレン−スチレン(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソブタジエン−スチレン(SIS)等)、及びフッ素化合物含有樹脂等の各種粘着剤を用いることもできる。粘着剤層12に含まれる粘着剤としては、耐熱性やコストの観点から、アクリル系粘着剤、又はシリコーン系粘着剤が好ましい。粘着剤の種類は、用途や貼着される被着体の種類等を考慮して選択される。
【0033】
・アクリル系粘着剤
粘着剤層12がアクリル系粘着剤組成物を含む場合、アクリル系粘着剤組成物は、アクリル酸2−エチルヘキシルを主たるモノマーとするアクリル系共重合体を含むことが好ましい。
また、粘着剤層12がアクリル系粘着剤組成物を含む場合、アクリル系共重合体と、粘着助剤と、を含んでいることが好ましい。アクリル系共重合体は、アクリル酸2−エチルヘキシルを主たるモノマーとする共重合体であることが好ましい。粘着助剤は、反応性基を有するゴム系材料を主成分として含むことが好ましい。
【0034】
本明細書において、アクリル酸2−エチルヘキシルを主たるモノマーとするとは、アクリル系共重合体全体の質量に占めるアクリル酸2−エチルヘキシル由来の共重合体成分の質量の割合が50質量%以上であることを意味する。本実施形態においては、アクリル系共重合体におけるアクリル酸2−エチルヘキシルに由来する共重合体成分の割合は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であることが好ましく、80質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、85質量%以上93質量%以下であることがさらに好ましい。アクリル酸2−エチルヘキシルに由来する共重合体成分の割合が50質量%以上であれば、加熱後に粘着力が高くなり過ぎず、被着体から粘着シートをより剥離し易くなり、80質量%以上であればさらに剥離し易くなる。アクリル酸2−エチルヘキシルに由来する共重合体成分の割合が95質量%以下であれば、初期密着力が不足して加熱時に基材が変形したり、その変形によって粘着シートが被着体から剥離したりすることを防止できる。
【0035】
アクリル系共重合体におけるアクリル酸2−エチルヘキシル以外の共重合体成分の種類や数は、特に限定されない。例えば、第二の共重合体成分としては、反応性の官能基を有する官能基含有モノマーが好ましい。第二の共重合体成分の反応性官能基としては、後述する架橋剤を使用する場合には、当該架橋剤と反応し得る官能基であることが好ましい。この反応性官能基は、例えば、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、置換アミノ基、及びエポキシ基からなる群から選択される少なくともいずれかの置換基であることが好ましく、カルボキシル基及び水酸基の少なくともいずれかの置換基であることがより好ましく、カルボキシル基であることがさらに好ましい。
【0036】
カルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、及びシトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。カルボキシル基含有モノマーの中でも、反応性及び共重合性の点から、アクリル酸が好ましい。カルボキシル基含有モノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
水酸基を有するモノマー(水酸基含有モノマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。水酸基含有モノマーの中でも、水酸基の反応性及び共重合性の点から、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。水酸基含有モノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の双方を表す場合に用いる表記であり、他の類似用語についても同様である。
【0038】
エポキシ基を有するアクリル酸エステルとしては、例えば、グリシジルアクリレート、及びグリシジルメタクリレート等が挙げられる。
【0039】
アクリル系共重合体におけるその他の共重合体成分としては、アルキル基の炭素数が2〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、及び(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が2〜4の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸n−ブチルがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
アクリル系共重合体におけるその他の共重合体成分としては、例えば、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル、脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、非架橋性のアクリルアミド、非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、及びスチレンからなる群から選択される少なくともいずれかのモノマーに由来する共重合体成分が挙げられる。
アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、及び(メタ)アクリル酸エトキシエチルが挙げられる。
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルが挙げられる。
非架橋性のアクリルアミドとしては、例えば、アクリルアミド、及びメタクリルアミドが挙げられる。
非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸(N,N−ジメチルアミノ)エチル、及び(メタ)アクリル酸(N,N−ジメチルアミノ)プロピルが挙げられる。
これらのモノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本実施形態においては、第二の共重合体成分として、カルボキシル基含有モノマー、又は水酸基含有モノマーが好ましく、アクリル酸がより好ましい。アクリル系共重合体が、アクリル酸2−エチルヘキシル由来の共重合体成分、及びアクリル酸由来の共重合体成分を含む場合、アクリル系共重合体全体の質量に占めるアクリル酸由来の共重合体成分の質量の割合が1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。アクリル酸由来の共重合体成分の質量の割合が1質量%以下であれば、粘着剤組成物に架橋剤が含まれる場合にアクリル系共重合体の架橋が早く進行し過ぎることを防止できる。
【0042】
アクリル系共重合体は、2種類以上の官能基含有モノマー由来の共重合体成分を含んでいてもよい。例えば、アクリル系共重合体は、3元系共重合体であってもよく、アクリル酸2−エチルヘキシル、カルボキシル基含有モノマー及び水酸基含有モノマーを共重合して得られるアクリル系共重合体が好ましく、このカルボキシル基含有モノマーは、アクリル酸であることが好ましく、この水酸基含有モノマーは、アクリル酸2−ヒドロキシエチルであることが好ましい。アクリル系共重合体におけるアクリル酸2−エチルヘキシルに由来する共重合体成分の割合が80質量%以上95質量%以下であり、アクリル酸由来の共重合体成分の質量の割合が1質量%以下であり、残部がアクリル酸2−ヒドロキシエチル由来の共重合体成分であることが好ましい。
【0043】
アクリル系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、30万以上200万以下であることが好ましく、60万以上150万以下であることがより好ましく、80万以上120万以下であることがさらに好ましい。アクリル系共重合体の重量平均分子量Mwが30万以上であれば、被着体への粘着剤の残渣なく粘着シートを剥離することができる。アクリル系共重合体の重量平均分子量Mwが200万以下であれば、被着体へ粘着シートを確実に貼り付けることができる。
アクリル系共重合体の重量平均分子量Mwは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定される標準ポリスチレン換算値である。GPCは、Gel Permeation Chromatographyの略称である。
【0044】
アクリル系共重合体は、前述の各種原料モノマーを用いて、従来公知の方法に従って製造することができる。
【0045】
アクリル系共重合体の共重合の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体のいずれでもよい。
【0046】
粘着助剤は、反応性基を有するゴム系材料を主成分として含むことが好ましい。粘着剤組成物が反応性粘着助剤を含んでいると、糊残りを減少させることができる。粘着剤組成物中の粘着助剤の含有率は、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。粘着剤組成物中の粘着助剤の含有率が5質量%以上であれば、糊残りの発生を抑制でき、50質量%以下であれば粘着力の低下を抑制できる。
本明細書において、反応性基を有するゴム系材料を主成分として含むとは、粘着助剤全体の質量に占める反応性基を有するゴム系材料の質量の割合が50質量%を超えることを意味する。本実施形態においては、粘着助剤における反応性基を有するゴム系材料の割合は、50質量%超であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。粘着助剤が実質的に反応性基を有するゴム系材料からなることも好ましい。
【0047】
反応性基としては、水酸基、イソシアネート基、アミノ基、オキシラン基、酸無水物基、アルコキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される一種以上の官能基であることが好ましく、水酸基であることがより好ましい。ゴム系材料が有する反応性基は、1種類でも、2種類以上でもよい。水酸基を有するゴム系材料は、さらに前述の反応性基を有していてもよい。また、反応性基の数は、ゴム系材料を構成する1分子中に1つでも、2つ以上でもよい。
【0048】
ゴム系材料としては、特に限定されないが、ポリブタジエン系樹脂、及びポリブタジエン系樹脂の水素添加物が好ましく、ポリブタジエン系樹脂の水素添加物がより好ましい。
ポリブタジエン系樹脂としては、1,4−繰り返し単位を有する樹脂、1,2−繰り返し単位を有する樹脂、並びに1,4−繰り返し単位及び1,2−繰り返し単位の両方を有する樹脂が挙げられる。本実施形態のポリブタジエン系樹脂の水素添加物は、これらの繰り返し単位を有する樹脂の水素化物も含む。
【0049】
ポリブタジエン系樹脂、及びポリブタジエン系樹脂の水素添加物は、両末端にそれぞれ反応性基を有することが好ましい。両末端の反応性基は、同一でも異なっていてもよい。両末端の反応性基は、水酸基、イソシアネート基、アミノ基、オキシラン基、酸無水物基、アルコキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基からなる群より選択される一種以上の官能基であることが好ましく、水酸基であることがより好ましい。ポリブタジエン系樹脂、及びポリブタジエン系樹脂の水素添加物においては、両末端が水酸基であることがより好ましい。
【0050】
本実施形態に係る粘着剤組成物は、前述のアクリル系共重合体及び粘着助剤の他に、さらに架橋剤を配合した組成物を架橋させて得られる架橋物を含むことも好ましい。また、粘着剤組成物の固形分は、実質的に、前述のように前述のアクリル系共重合体と、粘着助剤と、架橋剤とを架橋させて得られる架橋物からなることも好ましい。ここで、実質的にとは、不可避的に粘着剤に混入してしまうような微量な不純物を除いて、粘着剤組成物の固形分が当該架橋物だけからなることを意味する。
【0051】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アミン系架橋剤、及びアミノ樹脂系架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着剤組成物の耐熱性や粘着力を向上させる観点から、これら架橋剤の中でも、イソシアネート基を有する化合物を主成分とする架橋剤(イソシアネート系架橋剤)が好ましい。イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、及びリジンイソシアネート等の多価イソシアネート化合物が挙げられる。
また、多価イソシアネート化合物は、前述の化合物のトリメチロールプロパンアダクト型変性体、水と反応させたビュウレット型変性体、又はイソシアヌレート環を有するイソシアヌレート型変性体であってもよい。
【0052】
粘着剤組成物中の架橋剤の含有量は、アクリル系共重合体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下、より好ましくは1質量部以上15質量部以下、さらに好ましくは5質量部以上10質量部以下である。粘着剤組成物中の架橋剤の含有量がこのような範囲内であれば、粘着剤層12と基材11との接着性を向上させることができ、粘着シートの製造後に粘着特性を安定化させるための養生期間を短縮できる。
【0053】
本実施形態においては、粘着剤組成物の耐熱性の観点から、イソシアネート系架橋剤は、イソシアヌレート環を有する化合物(イソシアヌレート型変性体)であることがさらに好ましい。イソシアヌレート環を有する化合物は、アクリル系共重合体の水酸基当量に対して、0.7当量以上1.5当量以下配合されていることが好ましい。イソシアヌレート環を有する化合物の配合量が0.7当量以上であれば、加熱後に粘着力が高くなり過ぎず、粘着シートを剥離し易くなり、糊残りを減少させることができる。イソシアヌレート環を有する化合物の配合量が1.5当量以下であれば、初期粘着力が低くなり過ぎることを防止したり、貼付性の低下を防止したりすることができる。
【0054】
本実施形態における粘着剤組成物が架橋剤を含む場合、粘着剤組成物は、架橋促進剤をさらに含むことが好ましい。架橋促進剤は、架橋剤の種類などに応じて、適宜選択して用いることが好ましい。例えば、粘着剤組成物が、架橋剤としてポリイソシアネート化合物を含む場合には、有機スズ化合物などの有機金属化合物系の架橋促進剤をさらに含むことが好ましい。
【0055】
・シリコーン系粘着剤
シリコーン系粘着剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサンを含有する粘着剤が挙げられる。シリコーン系粘着剤としては、オルガノポリシロキサン構造、好ましくはジメチルポリシロキサン構造とビニル基等の不飽和基、SiH基により架橋し、白金系触媒により硬化された付加重合型シリコーン系粘着剤、又はBPO等の有機過酸化物により硬化して得られるシリコーン系粘着剤を使用することができる。BPOは、Benzoyl peroxideの略称である。耐熱性の観点から付加重合型シリコーン系粘着剤が好ましい。この場合、得られる粘着力を考慮して該不飽和基の密度に応じて架橋密度を調整することが可能である。このシリコーン樹脂層の形成には付加重合させるために加熱等を行うことが必要である。
【0056】
粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分が含まれていてもよい。粘着剤組成物に含まれ得るその他の成分としては、例えば、有機溶媒、難燃剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、可塑剤、消泡剤、及び濡れ性調整剤などが挙げられる。
【0057】
封止樹脂を加熱硬化させる工程で、粘着シート10の粘着剤層12からの発生ガスにより半導体パッケージが汚染されて、再配線層を形成する工程で不具合が生じる場合がある。
このため、粘着剤層12の5%重量減少温度は、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。5%重量減少温度は、熱重量分析装置を用いて次の条件下で測定される。
・昇温速度 :10℃/分
・雰囲気ガス:大気
・ガス流量 :100ml/分
【0058】
(剥離シート)
剥離シートRLとしては、特に限定されない。例えば、取り扱い易さの観点から、剥離シートRLは、剥離基材と、剥離基材の上に剥離剤が塗布されて形成された剥離剤層とを備えることが好ましい。また、剥離シートRLは、剥離基材の片面のみに剥離剤層を備えていてもよいし、剥離基材の両面に剥離剤層を備えていてもよい。剥離基材としては、例えば、紙基材、この紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、並びにプラスチックフィルム等が挙げられる。紙基材としては、グラシン紙、コート紙、及びキャストコート紙等が挙げられる。プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、並びにポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等が挙げられる。剥離剤としては、例えば、オレフィン系樹脂、ゴム系エラストマー(例えば、ブタジエン系樹脂、イソプレン系樹脂等)、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、及びシリコーン系樹脂が挙げられる。
【0059】
剥離シートRLの厚みは、特に限定されない。剥離シートRLの厚みは、通常、20μm以上200μm以下であり、25μm以上150μm以下であることが好ましい。
剥離剤層の厚みは、特に限定されない。剥離剤を含む溶液を塗布して剥離剤層を形成する場合、剥離剤層の厚みは、0.01μm以上2.0μm以下であることが好ましく、0.03μm以上1.0μm以下であることがより好ましい。
剥離基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、当該プラスチックフィルムの厚みは、3μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上40μm以下であることがより好ましい。
【0060】
本実施形態に係る粘着シート10は、加熱後に、次のような粘着力を示すことが好ましい。まず、粘着シート10を被着体(銅箔、又はポリイミドフィルム)に貼着させ、100℃及び30分間の条件で加熱し、続いて180℃及び30分間の条件で加熱し、さらに190℃及び1時間の条件で加熱した後、粘着剤層12の銅箔に対する室温での粘着力、及び粘着剤層12のポリイミドフィルムに対する室温での粘着力が、それぞれ0.7N/25mm以上2.0N/25mm以下であることが好ましい。このような加熱を行った後の粘着力が0.7N/25mm以上であれば、加熱によって基材や被着体が変形した場合に粘着シート10が剥離することを防止できる。また、加熱後の粘着力が2.0N/25mm以下であれば、剥離力が高くなり過ぎず、粘着シート10を被着体から剥離し易い。
なお、本明細書において室温とは、22℃以上24℃以下である。
【0061】
(粘着シートの製造方法)
粘着シート10の製造方法は、特に限定されない。
例えば、粘着シート10は、次のような工程を経て製造される。まず、基材11の第一面11aの上に粘着剤を塗布し、塗膜を形成する。次に、この塗膜を乾燥させて、粘着剤層12を形成する。その後、粘着剤層12を覆うように剥離シートRLを貼着する。
また、粘着シート10の別の製造方法としては、次のような工程を経て製造される。まず、剥離シートRLの上に粘着剤を塗布し、塗膜を形成する。次に、塗膜を乾燥させて、粘着剤層12を形成し、この粘着剤層12に基材11の第一面11aを貼り合わせる。
【0062】
粘着剤組成物を塗布して粘着剤層12を形成する場合、有機溶媒で粘着剤組成物を希釈してコーティング液を調製して用いることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、及びメチルエチルケトン等が挙げられる。コーティング液を塗布する方法は、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、及びグラビアコート法等が挙げられる。
有機溶媒や低沸点成分が粘着剤層12に残留することを防ぐため、コーティング液を基材11や剥離シートRLに塗布した後、塗膜を加熱して乾燥させることが好ましい。また、粘着剤組成物に架橋剤が配合されている場合には、架橋反応を進行させて凝集力を向上させるためにも、塗膜を加熱することが好ましい。
【0063】
(半導体装置の製造方法)
本実施形態に係る粘着シート10を用いて半導体装置を製造する方法を説明する。
図2A図2Eには、本実施形態に係る半導体装置の製造方法を説明する概略図が示されている。
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、粘着シート10に複数の開口部21が形成された枠部材20を貼着させる工程(粘着シート貼着工程)と、枠部材20の開口部21にて露出する粘着剤層12に半導体チップCPを貼着させる工程(ボンディング工程)と、半導体チップCPを封止樹脂30で覆う工程(封止工程)と、封止樹脂30を熱硬化させる工程(熱硬化工程)と、熱硬化させた後、粘着シート10を剥離する工程(剥離工程)と、を実施する。必要に応じて、熱硬化工程の後に、封止樹脂30で封止された封止体50に補強部材40を貼着させる工程(補強部材貼着工程)を実施してもよい。以下に各工程について説明する。
【0064】
・粘着シート貼着工程
図2Aには、粘着シート10の粘着剤層12に枠部材20を貼着させる工程を説明する概略図が示されている。なお、粘着シート10に剥離シートRLが貼着されている場合には、予め剥離シートRLを剥離する。
本実施形態に係る枠部材20は、格子状に形成され、複数の開口部21を有する。開口部21は、正方格子状に配列されていることが好ましい。
枠部材20は、耐熱性を有する材質で形成されていることが好ましい。枠部材20の材質としては、例えば、金属、及び耐熱性樹脂が挙げられる。金属としては、銅、及びステンレス等が挙げられる。耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂、及びガラスエポキシ樹脂等が挙げられる。
枠部材20の厚みtFRは、100μm以上1000μm以下であり、100μm以上800μm以下であることが好ましく、100μm以上500μm以下であることがより好ましい。
枠部材20の厚みtFRが100μm以上であれば、比較的広い面積を封止する際にも半導体パッケージの反りを抑制できる。工程のコストメリットの観点から、封止する領域は、例えば、平面視で縦30cm以上、横30cm以上の大きさであることが好ましい。
枠部材20の厚みtFRが1000μm以下であれば、半導体装置の製造プロセスの生産性低下を防止できる。
開口部21は、枠部材20の表裏面を貫通する孔である。開口部21の形状は、半導体チップCPを枠内に収容可能であれば、特に限定されない。開口部21の孔の深さも、半導体チップCPを収容可能であれば、特に限定されない。
【0065】
図3には、粘着シート10と枠部材20との厚みの関係を説明する断面概略図が示されている。本実施形態では、基材11の厚みと粘着剤層12の厚みとの和tASが、枠部材20の厚みtFRよりも小さい。すなわち、tAS<tFRの関係を満たす。粘着シート10の厚み、特に基材11の厚みが大きすぎると、基材の熱収縮の影響を受けて枠部材が反ってしまうが、粘着シート10と枠部材20とがこのような厚みの関係を満たすことにより、樹脂封止後に発生する半導体パッケージの反りを抑制できる。
さらに、基材11の厚みと粘着剤層12の厚みの和をtAS[μm]とし、枠部材20の厚みをtFR[μm]とした場合に、0.1≦tAS/tFR≦0.9の関係を満たすことが好ましく、0.2≦tAS/tFR≦0.8の関係を満たすことがより好ましい。tAS/tFRが0.9以下であれば、封止工程後、又は熱硬化工程後に基材の熱収縮の影響を受け難くなり、枠部材が反り難くなる。一方、tAS/tFRが0.1以上であれば、粘着シートの厚みが薄すぎて半導体装置の製造方法の一連の工程で粘着シートが破けたり損傷したりするといった不具合が起こり難くなる。
【0066】
・ボンディング工程
図2Bには、粘着剤層12に半導体チップCPを貼着させる工程を説明する概略図が示されている。
枠部材20に粘着シート10を貼着させると、それぞれの開口部21において開口部21の形状に応じて粘着剤層12が露出する。各開口部21の粘着剤層12に半導体チップCPを貼着させる。半導体チップCPは、半導体チップCPの回路面が粘着剤層12で覆われるように貼着させることが好ましい。
【0067】
・封止工程及び熱硬化工程
図2Cには、粘着シート10に貼着された半導体チップCP及び枠部材20を封止する工程を説明する概略図が示されている。
封止樹脂30の材質は、熱硬化性樹脂であり、例えば、エポキシ樹脂などが挙げられる。封止樹脂30として用いられるエポキシ樹脂には、例えば、フェノール樹脂、エラストマー、無機充填材、及び硬化促進剤などが含まれていてもよい。
封止樹脂30で半導体チップCP及び枠部材20を覆う方法は、特に限定されない。封止樹脂30で覆う方法としては、例えば、シート状の封止樹脂30を用いる方法、又はトランスファーモールド法が挙げられる。FOWLPのような比較的広い面積を封止する場合には、封止工程は、シート状の封止樹脂30を用いることが好ましい。
本実施形態では、シート状の封止樹脂30を用いた態様を例に挙げて説明する。シート状の封止樹脂30を半導体チップCP及び枠部材20を覆うように載置し、封止樹脂30を加熱硬化させて、封止樹脂層30Aを形成する。このようにして、半導体チップCP及び枠部材20が封止樹脂層30Aに埋め込まれる。シート状の封止樹脂30の厚みをtMO[μm]とし、枠部材20の厚みをtFR[μm]とした場合、0.5≦tMO/tFR≦1.5の関係を満たすことが好ましく、0.7≦tMO/tFR≦1.2の関係を満たすことがより好ましい。シート状の封止樹脂30の厚みと枠部材20の厚みとがこのような厚みの関係を満たすことにより、封止工程後に発生する半導体パッケージの反りを抑制できる。tMO/tFRが1.5以下の場合、封止樹脂層の硬化収縮の影響を受けて枠部材が反ることを抑制できる。一方、tMO/tFRが0.5以上の場合、封止樹脂層30Aの厚みが薄すぎて半導体チップCP及び枠部材20の間に、封止樹脂の未充填部分が生じたり、半導体チップCPの上面を封止樹脂で覆えなかったりする不具合を抑制できる。
シート状の封止樹脂30を用いる場合には、真空ラミネート法により半導体チップCP及び枠部材20を封止することが好ましい。この真空ラミネート法により、半導体チップCPと枠部材20との間に空隙が生じることを防止できる。真空ラミネート法による加熱硬化の温度条件範囲は、例えば、80℃以上120℃以下である。
【0068】
封止工程では、シート状の封止樹脂30がポリエチレンテレフタレート等の樹脂シートに支持された積層シートを用いてもよい。この場合、半導体チップCP及び枠部材20を覆うように積層シートを載置した後、樹脂シートを封止樹脂30から剥離して、封止樹脂30を加熱硬化させてもよい。このような積層シートとしては、例えば、ABFフィルム(味の素ファインテクノ株式会社製)が挙げられる。
【0069】
半導体チップCP及び枠部材20を封止する方法としては、トランスファーモールド法を採用してもよい。この場合、例えば、封止装置の金型の内部に、粘着シート10に貼着された半導体チップCP及び枠部材20を収容する。この金型の内部に流動性の樹脂材料を注入し、樹脂材料を硬化させる。トランスファーモールド法の場合、加熱及び加圧の条件は、特に限定されない。トランスファーモールド法における通常の条件の一例として、150℃以上の温度と、4MPa以上15MPa以下の圧力を30秒以上300秒以下の間維持する。その後、加圧を解除し、封止装置から硬化物を取り出してオーブン内に静置して、150℃以上の温度を2時間以上15時間以下、維持する。このようにして、半導体チップCP及び枠部材20を封止する。
【0070】
前述の封止工程においてシート状の封止樹脂30を用いる場合、封止樹脂30を熱硬化させる工程(熱硬化工程)の前に、第一加熱プレス工程を実施してもよい。第一加熱プレス工程においては、封止樹脂30で被覆された半導体チップCP及び枠部材20付き粘着シート10を両面から板状部材で挟み込み、所定の温度、時間、及び圧力の条件下でプレスする。第一加熱プレス工程を実施することにより、封止樹脂30が半導体チップCPと枠部材20との空隙にも充填され易くなる。また、加熱プレス工程を実施することにより、封止樹脂30により構成される封止樹脂層30Aの凹凸を平坦化することもできる。板状部材としては、例えば、ステンレス等の金属板を用いることができる。
【0071】
熱硬化工程の後、粘着シート10を剥離すると、封止樹脂30で封止された半導体チップCP及び枠部材20が得られる。本明細書において、これを封止体50と称する場合がある。
【0072】
・補強部材貼着工程
図2Dには、封止体50に補強部材40を貼着させる工程を説明する概略図が示されている。
粘着シート10を剥離した後、露出した半導体チップCPの回路面に対して再配線層を形成する工程やバンプ付け工程が実施される。このような再配線工程やバンプ付け工程における封止体50の取り扱い性を向上させるため、必要に応じて、封止体50に補強部材40を貼着させる工程(補強部材貼着工程)を実施してもよい。補強部材貼着工程を実施する場合には、粘着シート10を剥離する前に実施することが好ましい。図2Dに示すように、封止体50が粘着シート10及び補強部材40によって挟まれた状態で支持されている。
【0073】
本実施形態では、補強部材40は、耐熱性の補強板41と、耐熱性の接着層42とを備える。補強板41としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂等の耐熱性樹脂を含む板状の部材が挙げられる。接着層42は、補強板41と封止体50とを接着させる。接着層42としては、補強板41及び封止樹脂層30Aの材質に応じて適宜選択される。
【0074】
補強部材貼着工程では、封止体50の封止樹脂層30Aと補強板41との間に接着層42を挟み込み、さらに補強板41側及び粘着シート10側からそれぞれ板状部材で挟み込み、所定の温度、時間、及び圧力の条件下でプレスする第二加熱プレス工程を実施することが好ましい。第二加熱プレス工程により、封止体50と補強部材40とを仮固定する。第二加熱プレス工程の後に、接着層42を硬化させるために、仮固定された封止体50と補強部材40とを所定の温度及び時間の条件下で加熱することが好ましい。加熱硬化の条件は、接着層42の材質に応じて適宜設定され、例えば、185℃、80分間、及び2.4MPaの条件である。第二加熱プレス工程においても、板状部材としては、例えば、ステンレス等の金属板を用いることができる。
【0075】
・剥離工程
図2Eには、粘着シート10を剥離する工程を説明する概略図が示されている。
本実施形態では、粘着シート10の基材11が屈曲可能であるため、粘着シート10を屈曲させながら、枠部材20、半導体チップCP、及び封止樹脂層30Aから容易に剥離することができる。剥離角度θは、特に限定されないが、90度以上の剥離角度θで粘着シート10を剥離することが好ましい。剥離角度θが90度以上であれば、粘着シート10を、枠部材20、半導体チップCP、及び封止樹脂層30Aから容易に剥離することができる。剥離角度θは、90度以上180度以下が好ましく、135度以上180度以下がより好ましい。このように粘着シート10を屈曲させながら剥離を行うことで、枠部材20、半導体チップCP、及び封止樹脂層30Aにかかる負荷を低減しながら剥離することができ、粘着シート10の剥離による、半導体チップCP、及び封止樹脂層30Aの損傷を抑制することができる。粘着シート10を剥離した後、前述の再配線工程やバンプ付け工程等が実施される。粘着シート10の剥離後、再配線工程やバンプ付け工程等の実施前に、必要に応じて、前述の補強部材貼着工程を実施してもよい。
【0076】
補強部材40を貼着させた場合、再配線工程やバンプ付け工程等が実施された後、補強部材40による支持が不要になった段階で、補強部材40を封止体50から剥離する。
その後、封止体50を半導体チップCP単位で個片化する(個片化工程)。封止体50を個片化させる方法は特に限定されない。例えば、半導体ウエハをダイシングする方法と同様の方法で個片化させることができる。ダイシング方法としては、例えば、ダイシングソーなどの切断手段を用いる方法、又はレーザ照射方法が挙げられる。封止体50を個片化させる工程は、封止体50をダイシングシート等に貼着させた状態で実施してもよい。封止体50を個片化することで、半導体チップCP単位の半導体パッケージが製造され、この半導体パッケージは、実装工程においてプリント配線基板等に実装される。
【0077】
本実施形態によれば、FOWLPのような比較的広い面積を封止する半導体パッケージの反りを抑制でき、かつ樹脂封止後に剥離しやすい粘着シート10を提供することができる。
【0078】
〔実施形態の変形〕
本発明は、前記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良等は、本発明に含まれる。なお、以下の説明では、前記実施形態で説明した部材等と同一であれば、同一符号を付してその説明を省略、又は簡略化する。
【0079】
前記実施形態では、粘着シート10の粘着剤層12が剥離シートRLによって覆われている態様を例に挙げて説明したが、本発明は、このような態様に限定されない。
また、粘着シート10は、枚葉であってもよく、複数枚の粘着シート10が積層された状態で提供されてもよい。この場合、例えば、粘着剤層12は、積層される別の粘着シートの基材11によって覆われていてもよい。
また、粘着シート10は、長尺状のシートであってもよく、ロール状に巻き取られた状態で提供されてもよい。ロール状に巻き取られた粘着シート10は、ロールから繰り出されて所望のサイズに切断するなどして使用することができる。
【0080】
前記実施形態では、封止樹脂30の材質として熱硬化性樹脂である場合を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されない。例えば、封止樹脂30は、紫外線等のエネルギー線で硬化するエネルギー線硬化性樹脂でもよい。
【0081】
前記実施形態では、格子状に形成された枠部材を例に挙げて説明したが、本発明は、このような態様に限定されない。例えば、枠部材は、半導体チップを収容可能な複数の開口部を有し、枠部材に粘着シートが貼着された際に粘着剤層が開口部から露出すればよい。
【実施例】
【0082】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0083】
〔評価方法〕
粘着シートの評価は、以下に示す方法に従って行った。
【0084】
(工程適性評価)
得られた粘着シート上に、8mm×8mmサイズの開口部を有する次に示す枠部材のいずれかを貼着させた。
・銅製の枠部材(厚み:130μm)
・銅製の枠部材(厚み:800μm)
・耐熱性樹脂製の枠部材(厚み:130μm)
【0085】
次いで、実施例1〜3および比較例1〜2においては、半導体チップとして、5mm×5mmサイズのダミーチップ(厚さ130μm)を準備し、枠部材の開口部の所定位置に配置した。次いで、シート状の封止樹脂(厚さ100μm)を、半導体チップ及び枠部材を覆うように載置し、加熱硬化させて、封止樹脂層を形成した。その後、加熱により樹脂の硬化を促進(ポストモールドキュア)させ、半導体チップを封止樹脂で封止した。次いで、粘着シートを剥離角度180°で剥離し、半導体パッケージを得た。比較例3においては、半導体チップとして、5mm×5mmサイズのダミーチップ(厚さ450μm)に変更し、シート状の封止樹脂の厚さを540μmに変更した以外は実施例1〜3および比較例1,2と同様にして半導体パッケージを得た。
得られた半導体パッケージの反りを目視で観察した。また、粘着シートを剥離後のパッケージ表面を目視で観察し、粘着剤の残渣の有無、及び半導体パッケージ損傷の有無を確認した。半導体パッケージの反りがなく、糊残りなく、かつ半導体パッケージ損傷もなく剥離できた場合を「A」と判定し、半導体パッケージの反り、糊残り、及び半導体パッケージ損傷の少なくともいずれかが確認できた場合を「B」と判定した。
【0086】
(粘着力評価)
25mm幅に切断した粘着シートを室温で被着体としての銅箔及びポリイミドフィルムにラミネートし、銅箔付きシート及びポリイミドフィルム付きシートを得た。銅箔としては、C1220R−H規格の厚み0.08mmの延伸銅箔を用いた。ポリイミドフィルムとしては、東レ・デュポン(株)製の厚み25μmのカプトン100H(製品名)を用いた。
この銅箔付きシート及びポリイミドフィルム付きシートを、100℃及び30分間の条件で加熱し、続いて180℃及び30分間の条件で加熱し、さらに190℃及び1時間の条件で加熱した。加熱後、剥離角度を180度とし、剥離速度を300mm/minとし、室温でシートを銅箔及びポリイミドフィルムから剥離した際の粘着力を測定した。粘着力の測定装置として、(株)オリエンテック製、「テンシロン」(製品名)を用いた。
【0087】
(貯蔵弾性率測定)
実施例又は比較例の粘着剤組成物を用いて、直径8mm×厚さ2mmの円柱試験片を作製した。この円柱試験片を貯蔵弾性率測定用のサンプルとして用いた。
貯蔵弾性率測定用のサンプルについて、JIS K7244−6に準拠し、粘弾性測定装置(Physica社製,MCR300)を用いてねじりせん断法により、以下の条件で貯蔵弾性率(MPa)を測定した。
測定周波数:1Hz
測定温度 :100℃
【0088】
(熱収縮率測定)
実施例又は比較例の基材から、当該基材のMD方向に沿う方向の長さが150mmであり、当該基材のCD方向に沿う方向の長さが20mmである、短冊状試料を切り出した。この短冊状試料を、MD方向用サンプルとして用いた。
実施例又は比較例の基材から、当該基材のMD方向に沿う方向の長さが20mmであり、当該基材のCD方向に沿う方向の長さが150mmである、短冊状試料を切り出した。この短冊状試料を、CD方向用サンプルとして用いた。
MD方向用サンプルの長手方向に100mm間隔で2つの印を付けた。無荷重下で2つの印の間隔Aを測定した。
次に、MD方向用サンプルの長手方向の一方の端部をクリップを用いてカゴに取り付けて、MD方向用サンプルを無荷重下で吊るした。カゴに吊るしたMD方向用サンプルを150℃の雰囲気下のオーブンに30分間入れた後、取り出した。その後、30分間室温で放置した。室温放置後、無荷重下で、2つの印の間隔Bを測定した。読み取った間隔A及び間隔Bより、MD方向用サンプルの150℃での熱収縮率を下記式1により算出した。
熱収縮率(%)=((A−B)/A)×100 …式1
CD方向用サンプルについても、MD方向用サンプルと同様にして間隔A及び間隔Bを測定し、上記式1によりCD方向用サンプルの150℃での熱収縮率を算出した。
以下において、MD方向用サンプルの150℃での熱収縮率を、MD方向熱収縮率と表記し、CD方向用サンプルの150℃での熱収縮率をCD方向熱収縮率と表記する。
【0089】
(5%重量減少温度)
熱重量分析装置((株)島津製作所製:DTG60)を用いて、次の条件下で測定した。
・昇温速度 :10℃/分
・雰囲気ガス:大気
・ガス流量 :100ml/分
【0090】
〔粘着シートの作製〕
(実施例1)
【0091】
(1)粘着剤組成物の作製
以下の材料(ポリマー、粘着助剤、架橋剤、及び希釈溶剤)を配合し、十分に撹拌して、実施例1に係る塗布用粘着剤液(粘着剤組成物)を調製した。
【0092】
・ポリマー:アクリル酸エステル共重合体、40質量部(固形分)
アクリル酸エステル共重合体は、アクリル酸2−エチルヘキシル92.8質量%と、アクリル酸2−ヒドロキシエチル7.0質量%と、アクリル酸0.2質量%とを共重合して調製した。
【0093】
・粘着助剤:両末端水酸基水素化ポリブタジエン〔日本曹達(株)製;GI−1000〕、5質量部(固形分)
【0094】
・架橋剤:ヘキサメチレンジイソシアネートを有する脂肪族系イソシアネート〔日本ポリウレタン工業(株)製;コロネートHX〕、3.5質量部(固形分)
【0095】
・希釈溶剤:メチルエチルケトンを用い、塗布用粘着剤液の固形分濃度は、30質量%に調製した。
【0096】
(2)粘着剤層の作製
調製した塗布用粘着剤液を、ロールコーターを用いて乾燥後の膜厚が50μmになるように、シリコーン系剥離層を設けた38μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる剥離フィルム〔リンテック(株)製;SP−PET382150〕の剥離層面側に塗布し、90℃及び90秒間の加熱を行い、続いて115℃及び90秒間の加熱を行い、塗膜を乾燥させ、粘着剤層を作製した。
【0097】
(3)粘着シートの作製
塗布用粘着剤液の塗膜を乾燥させた後、粘着剤層と、基材とを貼り合わせて実施例1に係る粘着シートを得た。なお、基材として、透明ポリエチレンテレフタレートフィルム〔東洋紡(株)製;PET50A−4300、厚み50μm、ガラス転移温度Tg67℃、MD方向熱収縮率:1.2%、CD方向熱収縮率:0.6%〕を用い、基材の易接着面に粘着剤層を貼り合わせた。この透明ポリエチレンテレフタレートフィルムは、直径10mmφのステンレス棒に180°の巻付角で巻き付けても、折り目や損傷が発生せず、屈曲可能であった。また、粘着剤層の100℃における、測定周波数を1Hzとしたときの貯蔵弾性率は、2.36×10Paだった。また、粘着シートの銅箔に対する粘着力は、1.2N/25mmだった。粘着シートのポリイミドフィルムに対する粘着力は、1.1N/25mmだった。また、粘着剤層の5%重量減少温度は、304℃であった。
実施例1では、銅製の枠部材(厚み:130μm)を用いて半導体パッケージを作製した。
【0098】
(実施例2)
実施例2の粘着シートは、実施例1における粘着剤組成物及び基材を下記の通り変更したこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
実施例2の粘着剤組成物は、付加型シリコーン系粘着剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:SD−4587L)100重量部に白金触媒(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:SRX212)0.7重量部を配合して得た。この粘着剤組成物を、基材としてのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、カプトン100H、厚み25μm、Tg402℃、MD方向熱収縮率:0.2%、CD方向熱収縮率:0.02%)に厚み10μmとなるように塗布して粘着シートを得た。ポリイミドフィルムは、直径10mmφのステンレス棒に180°の巻付角で巻き付けても、折り目や損傷が発生せず、屈曲可能であった。また、粘着剤層の100℃における、測定周波数を1Hzとしたときの貯蔵弾性率は1.26×10Paだった。また、粘着剤層の5%重量減少温度は、330℃であった。
実施例2では、銅製の枠部材(厚み:130μm)を用いて半導体パッケージを作製した。
【0099】
(実施例3)
実施例3では、実施例1に係る粘着シートを用いた。工程適性評価においては、耐熱性樹脂製の枠部材(厚み:130μm)を用いて半導体パッケージを作製した。
【0100】
(比較例1)
比較例1の粘着シートは、実施例1における基材を下記の通り変更したこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
比較例1で用いた基材は、透明ポリエチレンテレフタレートフィルム〔東洋紡(株)製;PET100A−4300、厚み100μm、Tg67℃〕とした。この透明ポリエチレンテレフタレートフィルムは、直径10mmφのステンレス棒に180°の巻付角で巻き付けても、折り目や損傷が発生せず、屈曲可能であった。
【0101】
(比較例2)
比較例2の粘着シートは、実施例1における基材をソーダライムガラス板((株)水戸理化ガラス製,テンパックスフロート(登録商標),厚み:0.7mm)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして作製した。なお、このソーダライムガラス板は屈曲可能ではなかった。比較例2では、銅製の枠部材(厚み:130μm)を用いて半導体パッケージを作製した。
【0102】
(比較例3)
比較例3の粘着シートは、実施例1における基材をソーダライムガラス板((株)水戸理化ガラス製,テンパックスフロート(登録商標),厚み:0.7mm)に変更し、枠部材の厚みを800μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして作製した。比較例3では、銅製の枠部材(厚み:800μm)を用いて半導体パッケージを作製した。
【0103】
表1に、実施例1〜3、及び比較例1〜3の粘着シート及び半導体パッケージの条件を示し、表2に評価結果を示す。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
屈曲可能な基材を用い、基材の厚みと粘着剤層の厚みとの和tAS[μm]と、枠部材の厚みtFR[μm]とが、tAS[μm]<tFR[μm]の関係を満たす実施例1〜3に係る粘着シートは、半導体パッケージの反りも糊残りも半導体パッケージの損傷も発生しなかった。
基材の厚みと粘着剤層の厚みとの和tAS[μm]が、枠部材の厚みtFR[μm]よりも大きい比較例1に係る粘着シートにおいては、半導体パッケージの反りが発生した。これは、シート状の封止樹脂を加熱硬化及びポストモールドキュアすると、基材が熱収縮するが、比較例1で用いた基材は、枠部材よりも厚みが大き過ぎたため、基材が熱収縮による影響を抑えることができず、半導体パッケージの反りが発生したと考えられる。
また、比較例2、3では、半導体パッケージの反りは発生しなかったが、屈曲性を有さない基材を用いたために、剥離後の半導体パッケージに糊残りや損傷が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明に係る粘着シートは、例えば、半導体装置製造用の耐熱性粘着シートとして利用できる。
【符号の説明】
【0108】
10…粘着シート、11…基材、12…粘着剤層、20…枠部材、21…開口部、30…封止樹脂、50…封止体、CP…半導体チップ(半導体素子)。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3