特許第6810052号(P6810052)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許6810052-フィブリン組成物、方法及び創傷物品 図000008
  • 特許6810052-フィブリン組成物、方法及び創傷物品 図000009
  • 特許6810052-フィブリン組成物、方法及び創傷物品 図000010
  • 特許6810052-フィブリン組成物、方法及び創傷物品 図000011
  • 特許6810052-フィブリン組成物、方法及び創傷物品 図000012
  • 特許6810052-フィブリン組成物、方法及び創傷物品 図000013
  • 特許6810052-フィブリン組成物、方法及び創傷物品 図000014
  • 特許6810052-フィブリン組成物、方法及び創傷物品 図000015
  • 特許6810052-フィブリン組成物、方法及び創傷物品 図000016
  • 特許6810052-フィブリン組成物、方法及び創傷物品 図000017
  • 特許6810052-フィブリン組成物、方法及び創傷物品 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810052
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】フィブリン組成物、方法及び創傷物品
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/36 20060101AFI20201221BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20201221BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20201221BHJP
   A61L 15/32 20060101ALI20201221BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20201221BHJP
   A61L 24/10 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   A61K38/36
   A61P17/02
   A61P7/04
   A61K9/70
   A61K47/02
   A61L15/32 100
   A61L15/44 100
   A61L24/10
【請求項の数】13
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2017-550479(P2017-550479)
(86)(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公表番号】特表2018-509455(P2018-509455A)
(43)【公表日】2018年4月5日
(86)【国際出願番号】US2016024141
(87)【国際公開番号】WO2016160541
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2019年2月15日
(31)【優先権主張番号】62/139,117
(32)【優先日】2015年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ダブリュ.ビョーク
(72)【発明者】
【氏名】アレクシー ジェイ.ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ラハ エー.ビーン
(72)【発明者】
【氏名】ヤナ ニンコビッツ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン エー.ベイカー
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−312467(JP,A)
【文献】 特開昭49−041584(JP,A)
【文献】 特開2000−140088(JP,A)
【文献】 特開2008−044950(JP,A)
【文献】 特表2017−506089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61L 15/00−33/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィブリノゲン、フィブリン形成酵素、フィブリンハイドロゲルを形成する塩、及び水を含む溶液を形成することであって、前記フィブリンハイドロゲルを形成する塩が、フィブリンハイドロゲルを形成するのに要する閾値塩濃度以上の塩濃度で存在する、溶液を形成することと、
前記溶液から、重合させたフィブリンハイドロゲルを形成することと、
形成された前記フィブリンハイドロゲルの前記塩濃度を、フィブリンハイドロゲルを形成する前記閾値塩濃度未満に低減することと、
形成された前記フィブリンハイドロゲルの前記フィブリン形成酵素を0.05U/mg以下の量に低減することと、
前記フィブリンハイドロゲルを脱水することと、
を含み、
前記塩濃度を低減することと、前記フィブリン形成酵素の量を低減することが、水溶液で前記フィブリンハイドロゲルをすすぐことを含む、
フィブリンハイドロゲル組成物の形成方法。
【請求項2】
前記フィブリンハイドロゲルを形成する塩が、カルシウム塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液の前記閾値塩濃度が、少なくとも0.45重量%である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水溶液が、可塑剤又は緩衝剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記フィブリンハイドロゲルを、シート、発泡体又は複数の断片に形成することを更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記脱水が、凍結乾燥、オーブン乾燥、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記脱水されたフィブリンハイドロゲルの塩濃度が、20重量%以下の水分含量に対して、20重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記脱水されたハイドロゲルを複数の断片に形成することを更に含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
創傷の再上皮化用のフィブリンハイドロゲル組成物であって、
前記フィブリンハイドロゲル組成物が、
フィブリンハイドロゲルであって、当該フィブリンハイドロゲル中のフィブリン形成酵素の量が、0.05U/mg以下である、フィブリンハイドロゲル、及び
前記フィブリンハイドロゲル組成物の重量に対し、0.45重量%未満のフィブリンハイドロゲルを形成する塩を含む、
フィブリンハイドロゲル組成物。
【請求項10】
フィブリン濃度が少なくとも10重量%の脱水されたフィブリンハイドロゲルであって当該フィブリンハイドロゲル中のフィブリン形成酵素の量が、0.05U/mg以下である、フィブリンハイドロゲルと、
フィブリンハイドロゲルを形成する塩と、を含み、前記フィブリンハイドロゲルを形成する塩の濃度が、前記フィブリンハイドロゲルを形成する閾値塩濃度未満である、フィブリン組成物。
【請求項11】
前記フィブリンハイドロゲルが、少なくとも部分的に脱水され、かつ、20重量%以下の水分含量に対して、20重量%以下の塩濃度を有する、請求項10に記載のフィブリン組成物。
【請求項12】
前記フィブリンハイドロゲル又は前記脱水されたフィブリンハイドロゲルが、シート、発泡体又は複数の断片の形態である、請求項10又は11に記載のフィブリン組成物。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載のフィブリン組成物を含む、創傷被覆材。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フィブリノゲンは、特徴が十分に解明されたプロセスにおいてトロンビンを使用し、フィブリンへと切断及び重合される。トロンビンはフィブリノゲンを切断し、フィブリンモノマーを形成する。一旦フィブリノゲンが切断されると、第XIII因子等の、血液中に通常存在する因子の存在下でフィブリンモノマーが集合し、共有結合によって架橋されたフィブリン網を形成する。創傷部位において、フィブリン網は、創傷の閉鎖及び治癒の促進を助ける。
【0002】
創傷の治療に有用な形態のフィブリンを提供するため、様々な試みがなされてきた。恐らく、最も一般的に知られているのは、フィブリン糊のin situの生成であり、これは通常、デュアルバレルシリンジからフィブリノゲン及びトロンビンの別々の溶液を送達することによって実施される。
【0003】
国際公開公報第97/44015号(Heathら)は、フィブリノゲン又はトロンビンを自由流動性の形態で含む、可溶性微粒子を記載している。記載によると、これらの微粒子は、混合して乾燥粉末とし、創傷部位でのみ活性化されるフィブリン組織接着剤として使用することが可能である。
【0004】
米国特許第6,486,377(B2)号(Rappら)は、フィブリンをベースとする生分解性で可撓性の創傷被覆材及びその調製について記載しており、これによると、フィブリノゲン溶液が単段階又は多段階の透析にかけられた後、フィブリノゲン溶液に対するトロンビン溶液の作用により可撓性のフィブリン網が形成され、これは引き続いて凍結乾燥される。
【0005】
国際公開公報第2009/120433(A2)号(Delmotteら)は、フィブリン材料及び同製造方法を記載している。
【0006】
国際公開第2014/209620号は、フィブリンでコーティングされた創傷被覆材物品を記載している。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態において、フィブリンハイドロゲル組成物の形成方法を記載する。方法は、フィブリノゲン、フィブリン形成酵素及びフィブリンハイドロゲルを形成する塩を含む水溶液を形成することを含む。フィブリンハイドロゲルを形成する塩の濃度は、フィブリンハイドロゲルを形成する閾値濃度以上である。方法は、塩の濃度を、フィブリンハイドロゲルを形成する閾値濃度未満に低減することを更に含む。塩は、典型的には、カルシウム塩を、NaCl等のその他のフィブリンハイドロゲルを形成する塩と組み合わせて含む。水溶液の閾値塩濃度は、少なくとも0.45重量%、又は0.50重量%、又は0.6重量%、又は0.7重量%、又は0.8重量%又は0.9重量%である。いくつかの実施形態において、水溶液は、可塑剤を更に含む。
【0008】
他の一実施形態において、フィブリン濃度が0.1〜10重量%の範囲であるフィブリンハイドロゲルと、フィブリンハイドロゲルを形成する塩と、を含むフィブリン組成物を記載する。フィブリンハイドロゲルを形成する塩の濃度は、フィブリンハイドロゲルを形成する閾値濃度未満である。いくつかの実施形態において、フィブリンハイドロゲル塩を形成する濃度は、ハイドロゲルの0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15又は0.10重量%未満である。典型的な実施形態において、フィブリンハイドロゲルは、少なくとも部分的に脱水されている。脱水されたフィブリンハイドロゲルに関して、20重量%以下の水分含量に対して、塩濃度が20、15、10又は5重量%以下である。フィブリンハイドロゲル又は脱水されたフィブリンハイドロゲルは、シート、発泡体又は複数の断片等の各種の物理的形態とすることができる。
【0009】
他の一実施形態において、本明細書に記載のような(例えば脱水された)フィブリン組成物を提供することと、担体上又は担体内にフィブリン組成物を配置することと、を含む、フィブリン物品の形成方法を記載する。担体は、皮膚接着剤等の材料、又は剥離ライナー、ポリマーフィルム、ポリマー発泡体等の担体層、又は不織材若しくは織布のファイバー材料であってもよい。
【0010】
他の実施形態において、本明細書に記載のフィブリン組成物を単独又は担体との組み合わせで含む創傷被覆材を記載する。
【0011】
他の一実施形態において、本明細書に記載のフィブリン組成物又は創傷被覆材を提供することと、フィブリン組成物を創傷に近接して提供することと、を含む、創傷の治療方法を記載する。フィブリン組成物は、再上皮化の速度、及び/又はVEGF、EGF、MMP1、MMP8、MMP9及びTIMP−1等の創傷治癒生物学的マーカーを増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】フィブリン組成物をシートの形態で含む、創傷被覆材に好適なフィブリン物品の例示的な一実施形態の断面の概略図である。
図2】フィブリン組成物を発泡体のシートの形態で含む、創傷被覆材に好適なフィブリン物品の例示的な一実施形態の断面の概略図である。
図3】発泡体のシート及びフィブリン粒子を含む、創傷被覆材に好適なフィブリン物品の例示的な一実施形態の断面の概略図である。
図4】フィブリン含有層及び担体層を含む、創傷被覆材に好適なフィブリン物品の例示的な一実施形態の断面の概略図である。
図5】フィブリン含有層、担体層及び(例えば感圧)接着剤を含む、創傷被覆材に好適なフィブリン物品の例示的な一実施形態の断面の概略図である。
図6】担体層、(例えば感圧)接着剤及び(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲル含有粒子を含む、創傷被覆材に好適なフィブリン物品の例示的な一実施形態の断面の概略図である。
図7】担体層、吸収剤、(例えば感圧)接着剤及びフィブリン含有層を含む、創傷被覆材に好適なフィブリン物品の例示的な一実施形態の断面の概略図である。
図8】例示的な、担体層と、不連続な皮膚接着剤及び(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲル含有粒子を含むフィブリン含有層と、の断面の概略図である。
図9】担体層、フィブリン含有層、皮膚接触感圧接着剤及び剥離ライナーを含む、創傷被覆材に好適なフィブリン物品の他の例示的な一実施形態の断面の概略図である。
図10図10の物品の創傷対向表面の平面図である。
図11】担体層、フィブリン含有層、皮膚接触感圧接着剤及び剥離ライナーを含む、創傷被覆材に好適なフィブリン物品の他の例示的な一実施形態の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施形態において、フィブリンハイドロゲル組成物の形成方法を記載する。本明細書で使用する場合、「フィブリン」は、フィブリノゲンのフィブリン形成酵素(例えばトロンビン)による反応によって形成されるタンパク質を指す。このような酵素は、フィブリンAペプチド及びフィブリンBペプチドをフィブリノゲンから切断し、それをフィブリンに変換する。フィブリノゲンは、フィブリンへの前駆体である。
【0014】
方法は、フィブリノゲン、フィブリン形成酵素及び塩を含む水溶液を形成することを含む。トロンビンは、最も一般的なフィブリン形成酵素である。他のフィブリン形成酵素としては、バトロキソビン、クロタラーゼ、アンクロッド、レプチラーゼ、グスロビン(gussurobin)、組換え型トロンビン用酵素、並びに20〜30の異なる種類のヘビの毒が挙げられる。フィブリン形成酵素は、このようなフィブリン形成酵素のいずれか1つ又は組み合わせとすることができる。
【0015】
フィブリノゲン及びトロンビンの任意の好適な供給源を、フィブリンハイドロゲルの調製に使用することができる。例えば、フィブリノゲンを得ることができる種は、ヒト、ウシ、ブタ又はその他の動物源とすることが可能である。同様に、トロンビンもまた、ヒト、ウシ、ブタ又はその他の動物源から得ることができる。フィブリノゲン及びトロンビンは両方とも、組換え型供給源から得ることもできる。フィブリノゲン及びトロンビンは、水溶液として市販されているものを入手することもでき、これらの溶液の濃度は様々であり得る。あるいは、フィブリノゲン及びトロンビンは、凍結乾燥された形態で提供され、また、非常に低温で保存される場合がある。凍結乾燥されたフィブリノゲンは、典型的には、使用前に滅菌水で再構成される。トロンビンもまた、使用前に、滅菌した塩化カルシウム及び水によって再構成される。食塩水、リン酸緩衝溶液又はその他の再構成液を使用することもできる。フィブリンの調製において、次に、再構成されたフィブリノゲン及びトロンビンを混合し、フィブリンを形成する。
【0016】
水溶液は、概して、所望の量のフィブリンを生成するのに十分な量のフィブリノゲン及びフィブリン形成酵素(例えばトロンビン)を含む。いくつかの実施形態において、水溶液中のフィブリノゲンの量は、少なくとも1mg/mL、かつ典型的には120mg/mL以下である。いくつかの実施形態において、フィブリノゲンの量は、75、50、25、20、15、10又は5mg/mL以下である。更に、水溶液中のフィブリン形成酵素(例えばトロンビン)の量は、少なくとも0.01、0.02、0.03、0.04又は0.05単位/ミリリットル(U/mL)、かつ典型的には500U/mL以下である。いくつかの実施形態において、水溶液中のフィブリン形成酵素(例えばトロンビン)の量は、250、125、50、25、20、15、10U/mL以下、又は5、4、3、2若しくは1U/mLである。フィブリノゲンの水溶液は、典型的には塩を含む(例えば食塩水)。塩濃度は、フィブリノゲンが溶液を形成するのに十分な程度である。あるいは、固体のフィブリノゲンを、食塩水又はその他の塩溶液中で再構成することができる。典型的な一実施形態において、実質的に全てのフィブリノゲンが、フィブリンに変換される。余剰のフィブリン形成酵素(例えばトロンビン)は、フィブリンハイドロゲルをすすいで塩含量を低減する際に除去される。
【0017】
水溶液は、フィブリン含有ハイドロゲルの生成に好適な塩を更に含む。したがって、このような塩は、フィブリンハイドロゲルを形成する塩と見なすことができる。フィブリンは、概して、ハイドロゲル中に一様に分散され、かつ可溶性である。したがって、ハイドロゲルは、典型的にはフィブリンの沈殿物をほとんど又は全く含まない。フィブリンハイドロゲルが形成される際、ハイドロゲルは、概して、単一の集合体として取り扱うことが可能な、連続的な二相系である。
【0018】
カリウム、ナトリウム、リチウム、マグネシウム及びカルシウム等の、I族及び/又はII族金属カチオンとの各種の塩が、タンパク質の可溶化に利用されてきた。タンパク質合成に利用されるその他のカチオンとしては、アンモニウム及びグアニジンが挙げられる。
【0019】
各種のアニオンもまた、タンパク質の可溶化に利用されてきた。塩素アニオンが最も一般的ではあるが、ホフマイスター系列、すなわち、例えばタンパク質を塩析する(例えば析出させる)又は塩溶する(例えば可溶化する)能力の順でのイオンの分類によると、硝酸アニオン及び酢酸アニオンが最も塩素アニオンに類似している。
【0020】
いくつかの実施形態において、塩は塩化ナトリウムを含む。脱水前の水溶液及びフィブリンハイドロゲル中の塩化ナトリウムの量は、典型的には、溶液の0.09重量%超である。塩化ナトリウムの濃度は、少なくとも0.10、0.20、0.30、0.04、0.50、0.60、0.70、0.80重量%、又は「生理食塩水」の0.90重量%、かつ典型的には、1重量%以下であり得る。塩濃度を最小化することは、後に除去される塩を最小化するのに適している。
【0021】
塩は、典型的には、塩化カルシウム等のカルシウム塩を含む。脱水前の水溶液及びフィブリンハイドロゲル中のカルシウム塩の量は、典型的には、少なくとも0.0015%、0.0020%又は0.0030%重量%であり、かつ典型的には、0.5重量%以下である。
【0022】
典型的な実施形態において、緩衝剤も存在し、所望のpH範囲を維持する。いくつかの実施形態において、フィブリンの形成中のpH範囲は、6〜8又は7〜8である。各種の緩衝剤が知られている。緩衝剤は、典型的には、弱酸又は弱塩基である。1つの好適な緩衝剤は、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)として知られる双極性イオンである。グッド緩衝液として一般的に知られるもの等の、その他の緩衝剤も利用することができる。いくつかの実施形態において、緩衝剤は、フィブリンハイドロゲルの形成には、実質的に寄与しない。例えば、塩が塩化ナトリウム及び塩化カルシウムを含む場合、緩衝剤HEPESは、フィブリンハイドロゲルの形成には、実質的に寄与しない。これは、フィブリンハイドロゲルが、HEPES不在下において、ナトリウム塩及びカルシウム塩によって形成することが可能であることを意味している。したがって、この例におけるHEPES、並びにフィブリンハイドロゲルの形成に実質的には寄与しない任意のその他の塩の濃度は、フィブリンハイドロゲルを形成する閾値濃度には含まれない。
【0023】
後述の実施例の表1に示したように、フィブリンハイドロゲルの塩(例えばNaCl+CaCl)の濃度が水溶液の0.423重量%であったとき、フィブリンハイドロゲルは形成することはできなかった。理論による束縛を意図するものではないが、塩(例えばNaCl+CaCl)濃度0.423重量%は、フィブリノゲンの可溶化には不十分であると考えられる。しかしながら、塩の濃度が0.423重量%よりも高かったとき、フィブリンハイドロゲルは容易に形成した。したがって、フィブリンハイドロゲルを形成する閾値濃度は、0.423重量%超である。ゲルを形成する塩の閾値濃度は、水溶液の少なくとも0.430重量%又は0.440重量%、また、いくつかの実施形態においては、少なくとも0.450、0.500、0.550、0.600、0.650、0.700、0.750、0.800、0.850又は0.900重量%である。閾値濃度は、塩(複数可)の選択に応じて、ある程度変動し得るものであることを理解されたい。ハイドロゲル(すなわち、最初に形成されたハイドロゲル)中の塩の濃度は、水溶液中の塩の濃度と同一である。
【0024】
塩の閾値濃度を使用してフィブリンハイドロゲルを形成し、かつハイドロゲルを脱水する場合、得られる脱水されたフィブリンハイドロゲルは、塩濃度がより高い。例えば、後述の実施例の表1に示したように、フィブリンハイドロゲルを形成する塩(例えばNaCl+CaCl)の濃度は、10、15、20、25又は30重量%超である。後述の実施例において更に詳述するとおり、高塩濃度は、炎症細胞の浸潤並びにコラーゲンの変性及び石灰化によって表される、治癒プロセス中の(例えば真皮)組織の刺激及び損傷を引き起こす場合がある。
【0025】
フィブリン組成物を調製する本方法は、前述のような水性組成物からフィブリンハイドロゲルを形成することと、塩濃度を、フィブリンハイドロゲルを形成する閾値塩濃度未満に低減することと、を含む。(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルが創傷治癒に利用される実施形態の場合、方法は、塩濃度を、治癒プロセス中に(例えば真皮)組織の刺激及び損傷を引き起こし得る濃度未満に低減することを含む。
【0026】
典型的な実施形態において、塩濃度を低減する工程は、フィブリンハイドロゲルを、塩を溶解可能な溶液ですすぐことを含む。溶液は、典型的には、少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90若しくは95重量%、又は体積%でこれらを超える水を含む水溶液である。すすぎ溶液は、可塑剤等の、その他の水混和性の液体を更に含んでもよい。フィブリンハイドロゲルは、典型的には、ハイドロゲルの体積の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10倍超の体積の溶液ですすぐ。塩濃度を更にまた低減するため、フィブリンハイドロゲルは、ハイドロゲルの体積の少なくとも11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20倍超の体積の溶液ですすぐ場合がある。塩を低減する別の方法としては、塩のカチオン及び/又はアニオンを反応させること、すなわち、換言すれば、塩が創傷の体液等の水溶液中でそれ以上イオンを形成できないように、塩を錯体化することが挙げられる。塩濃度を低減する別の方法は、可塑剤によって希釈することである。更に、これらの方法の様々な組み合わせを使用することができる。
【0027】
フィブリンハイドロゲルから除去されるフィブリンハイドロゲルを形成する塩(例えばNaCl+CaCl)の量は、(例えば開始時の)水溶液中の塩の量、したがって、最初に形成されたハイドロゲル中の塩の量によって異なり得る。例えば、(例えば開始時の)水溶液が約0.9重量%の塩を含む場合、少なくとも約35重量%の塩が、フィブリンハイドロゲルから除去される。しかしながら、(例えば開始時の)水溶液が約1.25重量%の塩を含む場合、50%超の塩が、フィブリンハイドロゲルから除去される。いくつかの実施形態においては、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%又は90%の塩がハイドロゲルから除去される。他の実施形態においては、少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の塩がハイドロゲルから除去される。閾値濃度が0.9重量%未満である場合、除去される塩の量は、35重量%未満であり得る。このような実施形態においては、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%又は45%の塩がハイドロゲルから除去される。
【0028】
フィブリンハイドロゲルを形成する塩の含量が低下したフィブリンハイドロゲルは、次いでいくつかの方法を使用して脱水される。この工程は、ハイドロゲルの脱水又は乾燥(drying又はdesiccating)と呼ばれる場合があり、これらの全ては、本明細書において、ハイドロゲルから水分含量を可能な限り除去する方法を指す。したがって、脱水は、熱、減圧、凍結乾燥、乾燥(desiccation)、濾過、空気乾燥等を使用して実施することができる。いくつかの実施形態においては、得られたフィブリン材料が、一旦水溶液と接触すると膨潤する可能性が低いため、凍結乾燥が好まれる場合がある。しかしながら、オーブンで乾燥したフィブリンゲルシートは、凍結乾燥したシートよりも、より透明かつより均一であることが観察された。脱水工程は、使用される特定の方法及びハイドロゲルの体積に応じ、様々な時間にわたって実施され得る。例えば、工程は数分、数時間又は数日間続く場合がある。本開示は、この点に関して限定を意図するものではない。
【0029】
脱水されたフィブリンハイドロゲルに関して、概して、20重量%以下の水分含量に対して、ハイドロゲルを形成する塩の濃度が30重量%又は25重量%未満である。脱水されたフィブリンハイドロゲルを創傷治癒に使用することを目的とする場合、塩濃度は20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2若しくは1重量%未満である、又は、水分含量が20重量%以下である脱水されたフィブリンハイドロゲル未満である。いくつかの実施形態においては、脱水されたハイドロゲルに関して、水分含量が19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2若しくは1重量%以下又は未満である。いくつかの実施形態においては、緩衝塩を含む総塩濃度もまた、上記の濃度範囲内である。いくつかの実施形態においては、脱水されたハイドロゲルは、水と混合(すなわち、再水和)した際に、膨潤する。
【0030】
脱水されたフィブリンハイドロゲルに関して、典型的には、水分含量が、少なくとも1、2、3、4又は5重量%である。いくつかの実施形態においては、脱水されたフィブリンハイドロゲルに関して、水分含量が、少なくとも約10、15又は20重量%である。
【0031】
フィブリンハイドロゲルは脱水され、水分含量が低減され、かつそれによってフィブリン濃度が増加される。フィブリン濃度がより高いほど、より低いフィブリン濃度よりも、概して、治癒をより迅速に促進する。フィブリンハイドロゲルは、脱水前、典型的には約0.5重量%〜5重量%のフィブリンを含む。脱水後、フィブリン組成物は、典型的には、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45又は50重量%のフィブリンを含む。脱水されたハイドロゲルのフィブリン濃度は、典型的には99重量%以下、また、いくつかの実施形態においては、95、90、85又は80重量%以下である。
【0032】
フィブリンの形成には低濃度のフィブリン形成酵素(例えばトロンビン)のみが必要とされ、また、余剰のフィブリン形成酵素(例えばトロンビン)はすすぎの間に除去されるため、フィブリン形成酵素(例えばトロンビン)の濃度もまた、脱水されたフィブリンハイドロゲル中では低い。脱水されたフィブリンハイドロゲルは、典型的には、フィブリン形成酵素(例えばトロンビン)を、0.05U/mg、又は0.005U/mg、又は0.0005U/mg、又は0.00005U/mg以下のトロンビンの量で含む。いくつかの実施形態においては、フィブリン形成酵素(例えばトロンビン)の量は、フィブリンの濃度に対して1又は0.1ppmである。
【0033】
(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルは、フィブリノゲンを、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルの総重量に対して、0.1重量%〜10若しくは15重量%の範囲の量、又は、その範囲内の任意の量で含み得る。いくつかの実施形態においては、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルは、フィブリノゲンを、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルの総重量に対して、5、4、3、2、1、0.1又は0.05重量%以下の量で含む。フィブリノゲンからフィブリンへの変換が100%である場合、脱水されたフィブリンハイドロゲルは、フィブリンを実質的に含まない。
【0034】
いくつかの実施形態において、フィブリンハイドロゲル、可塑剤を更に含む。各種の水混和性可塑剤が、ハイドロゲルに好適である。このような可塑剤は、典型的には、水酸基を含む。好適な可塑剤としては、例えば、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロール、キシリトール及びマンニトール等のC〜C24糖アルコール、並びに、ブタンジオール及びプロパンジオール等のC〜C24アルカンジオールが挙げられる。いくつかの実施形態においては、可塑剤は、12個以下の炭素原子を有するアルキレン基を含む。(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルは、単一の可塑剤又は可塑剤の組み合わせを含んでもよい。可塑剤が存在する場合、濃度は、典型的には、開始時の水溶液の0.5重量%〜2重量%の範囲である。脱水されたハイドロゲルは、少なくとも5、10、15又は20重量%、かつ典型的には80、70、60、50又は40重量%以下の可塑剤を含み得る。
【0035】
可塑剤を含むことにより、可撓性の脱水されたハイドロゲル組成物を得ることができ、その特性は、標準的な引張及び伸長試験によって測定することができる。試験用の可撓性の脱水されたハイドロゲルのフィルムは、厚さが少なくとも10、15又は20μm、かつ典型的には、2mm、1mm、500μm又は250μm以下であり得る。いくつかの実施形態においては、厚さは200、150、100、75又は60μm以下である。伸長は、10、15又は20%〜1000%の範囲であり得る。いくつかの実施形態においては、(例えば50μmのフィルムの)伸長は、少なくとも50%又は75%かつ200%、150%又は100%以下である。最終的な引張強度は、典型的には、少なくとも0.1、0.2又は0.3MPa、かつ典型的には150MPa以下である。いくつかの実施形態においては、(例えば50μmのフィルムの)最終的な引張強度は、50、25、10又は5MPa以下である。ヤングの弾性率は、典型的には少なくとも0.5、0.6、0.7、0.8、0.9又は1MPa、かつ典型的には約2000MPa以下である。いくつかの実施形態においては、(例えば50μmのフィルムの)ヤングの弾性率は、少なくとも2又は3MPa、かつ典型的には100、75又は50MPa以下である。
【0036】
(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルは、各種の添加剤を含むことができる。ただし、添加剤が、フィブリンハイドロゲルの形成及びフィブリンハイドロゲルからの塩濃度の低減を損なわないことを条件とする。添加剤の例としては、抗菌剤、抗炎症薬、局所麻酔薬(例えば、リドカイン)、その他の薬物、成長因子、多糖類、グリコサミノグリカンのいずれかを挙げることができる。添加剤が含まれる場合、添加剤は、創傷の治癒の促進に関して、フィブリン含有層の活性を阻害しない濃度で含まれなくてはならない。
【0037】
抗菌剤は、細菌、マイコバクテリア、ウイルス、真菌及び寄生虫等の微生物の成長を阻害する、又は、これらを殺す作用剤である。したがって、抗菌剤は、抗細菌剤、抗マイコバクテリア剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤及び抗寄生虫剤を含む。感染の防止又は制御を目的として備えられたフィブリン含有層は、感染の防止又は制御のために使用することができる。
【0038】
抗炎症薬は、炎症を低減又は除去する作用剤である。例としては、アルクロフェナック、アルクロメタゾン、ジプロピオネート、アルゲストンアセトニド、α−アミラーゼ、アンシナファル、アンシナフィド、アンフェナックナトリウム、塩酸アミプリロース、アナキンラ、アニロラク、アニトラザフェン、アパゾン、バルサラジド二ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、クロベタゾール、プロピオネート、クロベタゾンブチレート、クロピラク、クロチカゾンプロピオネート、コルメタゾンアセテート、コルトドキソン、デフラザコルト、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾンジプロピオネート、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジフロラゾンジアセテート、ジフルミドンナトリウム、ジフルニサール、ジフルプレドナート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリゾン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラク、エトフェナメート、フェルビナック、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナック、フェンクロラク、フェンドサール、フェンピパロン、フェンチアザック、フラザロン、フルアザコルト、フルフェナミン酸、フルミゾール、フルニソリドアセテート、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、フルオロメトロンアセテート、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、フルチカゾンプロピオネート、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、ハロベタゾールプロピオネート、ハロプレドンアセテート、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、イソフルプレドンアセテート、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロルノキシカム、ロテプレドノールエタボネート、メクロフェナメートナトリウム、メクロフェナミン酸、メクロリゾンジブチレート、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニゾロンスレプタネート、モルニフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、フェンブタゾンナトリウムグリセレート、ピルフェニドン、ピロキシカム、ピロキシカムシンナメート、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドリン酸、プロクアゾン、プロキサゾール、プロキサゾールシトレート、リメキソロン、ロマザリット、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、サンギナリウムクロリド、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、スリンダック、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナック、チキソコルトールピバレート、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン及びゾメピラックナトリウムが挙げられる。
【0039】
(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルは、各種の物理的形態を有することができる。いくつかの実施形態において、フィブリンハイドロゲルは、塩含量を低減する前に形成される。フィブリンハイドロゲルは、典型的には、フィブリンハイドロゲルが、フィブリンハイドロゲルを取り囲む容器の物理的形態を取るように、0℃〜37℃の範囲の温度において十分に流動性である。例えば、フィブリンハイドロゲルを矩形パンに入れて成形すると、フィブリンハイドロゲルはシートの形態になる。このように、フィブリンハイドロゲルは、様々な形状の容器に入れて成形することができ、すなわち換言すれば、成形して、様々な形状及びサイズの(例えば脱水された)ハイドロゲルを提供することができる。
【0040】
一実施形態において、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルは、フィブリン発泡体として提供される場合がある。これは、トロンビンの添加前にフィブリノゲン溶液に通気する、又は、重合工程の初期にフィブリンハイドロゲルに通気することにより、遂行することができる。フィブリン発泡体の形成後に、前述のとおり、塩を除去することができる。
【0041】
他の一実施形態において、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルは、粒子として提供される場合がある。例えば、米国特許第6,552,172号(Marxら)に記載の方法等により、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルのマイクロビーズを形成することができる。更に他の一実施例において、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲル粒子は、米国特許出願公開第2010/0291219号(Karpら)に記載のように、マイクロキャリアとして利用することができる。マイクロビーズ及びマイクロキャリアの塩含量は、前述のように、フィブリンハイドロゲルを形成する閾値濃度未満に低減される。
【0042】
他の実施形態において、脱水されたフィブリンハイドロゲルは、塩含量を低減した後に形成することができる。例えば、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルのシートを、様々な形状及びサイズを有する断片に(例えばレーザー又はダイスで)切断することができる。他の一実施例において、脱水されたハイドロゲルは、国際公開第2014/209620号に記載のように、磨砕する(ground)、微粉化する(pulverized)、粉砕する(milled)、破砕する(crushed)、造粒する(granulated)、打ち砕く(pounded)等により、フィブリン粉末を生成することができる。この実施形態において、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルの作製に使用される方法は、水中油型エマルションには依存しない。
【0043】
(例えば脱水された)フィブリン粒子が形成される場合、方法は、粒子のサイズ分離を更に伴う場合がある。これは、粒子組成物を、所望の孔径を有する1種以上の適切なふるい又はフィルタによって篩過することにより、最も容易に遂行することができる。いくつかの実施形態において、粒子は篩過することにより、平均直径が約85〜180、90〜170、100〜160、100〜150、110〜150、120〜140の範囲、又は平均直径が約130μmである集合へと達することができる。フィブリン粒子は、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170又は180μm以下であってもよいが、ただし、これらの最小平均直径は少なくとも10、20、30、40又は50μmである。これらの平均直径は、再水和されたものの直径ではなく、脱水された粒子の直径をさすものと理解されたい。再水和後、粒子の体積は、最初の体積の10〜250%増加し得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、フィブリン粒子は、サイズを限定することができる。いくつかの態様において、組成物は複数種のフィブリン粒子を含み、これらのうちの少なくとも50%は、水和前の平均直径が85〜180μmである。いくつかの実施形態において、フィブリン粒子の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%以上が、85〜180μmの平均直径を有する。
【0045】
フィブリン粒子は、球状の形状又は不規則な非球状の形状及びサイズを有し得る。非球状の粒子の直径は、その最長及びその最短の寸法を合計し、その合計を2で除算することによって求めることができる。これは、単一粒子の平均直径と見なされる。粒子の集合の平均直径は、篩過分析に基づいて推定することができる(すなわち、篩過分析は、粒子の保持画分及び/又は通過画分に基づき、平均直径の範囲を提供し得る)。「その最長及びその最短の寸法を合計し、その合計を2で除算する」ものとして定義される、粒子の集合の「平均直径」という用語は、粒子の集合における粒子の「最大の寸法」を指す用語「平均粒径」と、概念的には、同様である。
【0046】
いくつかの実施形態において、表面のトポロジー、トポグラフィー又は粗さによって規定されたフィブリン粒子が提供される。表面のトポロジー又は粗さは、粒子の表面上の特徴(又は突出物)の数及び/又はサイズによって表すことができる。粗さは、光学的プロフィロメトリー及び原子間力顕微鏡を含む、当該技術において一般に使用される技術を使用して観察することができる。これらの粒子状の特徴の数は、典型的には2〜100の範囲であり得る。これらの特徴(又は突出物)のサイズは、絶対的な長さによって、又は、特徴(又は突出物)と粒子の平均直径との比によって表すことができる。いくつかの実施形態において、特徴のサイズは、約1μm、約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、約7μm、約8μm、約9μm、約10μm、又はより大きい。他の実施形態においては、特徴のサイズは、10μm超、15μm超、20μm超、25μm超、30μm超、35μm超、40μm超、45μm超、50μm超、又はより大きい。更に他の実施形態においては、サイズは10〜100μmである。他の実施形態においては、サイズは1〜10μmである。特徴のサイズと粒子の平均直径との比は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%若しくは50%、又はより大きい場合がある。結合組織の前駆細胞等の細胞は、表面粗さの程度がより高い粒子に、より良好に結合できることが見出されているため、この表面粗さは重要である。
【0047】
いくつかの実施形態において、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルの粒子の平均粒径は、0.1μm〜最大100μmの範囲である。フィブリン粒子の平均粒径は、少なくとも0.1、1、2、5又は10μmであり得る。平均的な粒子は、典型的には1000μm、500、200又は100μm以下である。
【0048】
本明細書に記載の(例えば脱水された)フィブリン組成物は、創傷の治療に利用することができる。フィブリン組成物の送達を促進するため、フィブリン組成物(例えば粒子)を好適な担体材料に組み込み、各種のフィブリン含有ゲル、ペースト、ローション、クリーム及び軟膏を形成することができる。他の一実施形態において、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲル粒子を(例えば水性の)液体担体材料(例えばエマルション)中に分散させ、フィブリン含有スプレーを形成することができる。
【0049】
他の実施形態において、(例えば脱水された)フィブリンを、コラーゲン、ケラチン、ゼラチン、炭水化物及びセルロース誘導体等の天然の、又は、化学的に修飾された、及び、合成の生物担体材料と混合することができる。前述の米国特許出願公開第2010/0291219(Karpら)に記載のような、合成の生物担体材料も利用することができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、生物担体材料は、生分解性ハイドロゲル、例えば、ポリヒアルロン酸、カゼイン、ゼラチン、グルチン、ポリ酸無水物、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)及びポリ(オクタデシルアクリレート)を含む。
【0051】
他の実施形態において、生物担体材料は、生分解性合成ポリマー、例えば、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリ−ハロゲン化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びポリウレタンのコポリマー、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、フタル酸酢酸セルロース、カルボキシエチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、乳酸とグリコール酸とのポリマー、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、並びにポリ(ラクチド−コカプロラクトン)及びポリビニルピロリドンである。
【0052】
更に他の一実施形態において、本明細書に記載のフィブリン粒子は、各種の(例えばアクリル系又はシリコーン系)皮膚接着剤と混合し、フィブリン含有皮膚接着剤を形成することができる。
【0053】
典型的な実施形態において、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲル粒子は、担体層上又は担体層内に、所望の効果(例えば創傷の再上皮化の促進)をもたらすのに十分なコーティング重量で提供される。いくつかの実施形態において、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲル粒子のコーティング重量は、典型的には少なくとも0.2、0.5又は1mg/cm、かつ典型的には20、10又は5mg/cm以下である。
【0054】
本明細書に記載の(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲル組成物は、創傷被覆材物品として利用することができる。本明細書に記載の創傷被覆材物品は、(例えば脱水された)フィブリン組成物を、シート(すなわち、フィルム)、発泡体シート、又は担体層上又は担体層内に配置されたフィブリン(例えば粒子)等の、好適な物理的形態で含む。したがって、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲル層は、連続的な又は不連続な層として、各種の形態で提供され得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲル組成物は、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲル組成物を担体材料又は担体層と混合する前に形成される。他の実施形態において、担体層は、フィブリノゲン、フィブリン形成酵素(例えばトロンビン)、及びフィブリンハイドロゲルを形成する塩、又は塩の低減及び/若しくは脱水前のフィブリンハイドロゲルを含む水溶液と混合される。例えば、繊維(例えば織布又は不織材)基材を、フィブリンハイドロゲルを加える前に矩形のパンに配置し、これによって、ハイドロゲル内に埋め込まれた繊維スクリムを有するフィブリンハイドロゲルのシートを形成することができる。図1〜10は、以下のとおり、いくつかの典型的な創傷被覆材物品を示す。
【0056】
図1は、創傷被覆材としての使用に好適な、フィブリン物品の一実施形態を示す。フィブリン物品は、(例えば脱水された)フィブリンゲル組成物を含む、又は、からなる、(例えば可撓性)シート130を含む。
【0057】
図2は、創傷被覆材としての使用に好適な、フィブリン物品の他の一実施形態を示す。フィブリン物品は、(例えば脱水された)フィブリンゲル組成物を含む、又は、からなる発泡体230のシートを含む。発泡体は、例えば、フィブリンハイドロゲル組成物を(例えば水和前に)成形する、又は、組成物の形成後に発泡体を断片に切断することによって形成された、各種の他の形態を有してもよい。
【0058】
図1及び2に示したようなフィブリンシート物品は、典型的には、厚さが少なくとも10、15又は20μm、かつ典型的には、2mm、1mm、500μm又は250μm以下である。いくつかの実施形態においては、厚さは200、150、100、75又は60μm以下である。坪量は、典型的には、2〜10、15、20、25又は30mg/cmの範囲である。
【0059】
シート物品のフィブリン濃度は、前述の(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルと同一である。
【0060】
図3は、創傷被覆材としての使用に好適な、フィブリン物品の他の一実施形態を示す。フィブリン物品は、フィブリン含有発泡体230又はフィブリンを含まない発泡体310の担体シートを含む。発泡体230又は310は、発泡体の創傷対向表面の細孔上及び/又は細孔内に配置された、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルを含む、複数のフィブリン粒子332を更に含む。粒子は、前述のとおり、フィブリンマイクロビーズ、フィブリンマイクロキャリア又はフィブリン粉末とすることができる。
【0061】
図1〜3の実施形態のそれぞれは、フィブリン含有シート物品の主表面上に配置された担体層を更に含む場合がある。担体層は、典型的には、創傷対向表面とは反対側の主表面上に配置される。例えば、図4は、創傷被覆材としての使用に好適な、フィブリン物品の一実施形態を示す。フィブリン物品は、(例えば脱水された)フィブリンゲル組成物(例えば130、230、又は332を伴う310)及び担体層410を含む、又は、からなる、シート430を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、担体層410は剥離ライナーである。剥離ライナー担体は、フィブリン含有シートが剥離ライナーの間になるように、両方の主表面(図示せず)の反対側の主表面上に配置してもよい。
【0063】
(例えばクラフト)紙、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、又はポリエステル等の、各種の剥離ライナーが知られている。フィルムは、好ましくは、フッ素化合物又はシリコーン等の剥離剤でコーティングされている。例えば、米国特許第4,472,480号は、低表面エネルギーペルフルオロ化合物ライナーを記載している。市販のシリコーンコーティングされた剥離紙の例としては、Rexam Release(Bedford Park,Ill.)より入手可能なシリコーン剥離紙、POLYSLIK(商標)、及びLOPAREX(Willowbrook,Ill.)により供給されるシリコーン剥離紙がある。このような市販の剥離ライナーのその他の非限定的な実施例として、H.P.Smith Co.より市販されているシリコーン処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム、及びブランド「ScotchPak(商標)」剥離ライナーで3Mより市販されているフルオロポリマーコーティングされたポリエステルフィルムが挙げられる。
【0064】
他の実施形態において、担体層410は、ポリマーフィルム及び発泡体、並びに、ガーゼ等の各種の不織材及び織布のファイバー材料等の、各種の他の(例えば可撓性及び/又は形状適合性)担体材料を含んでもよい。いくつかの実施形態において、担体層は、吸収剤発泡体等の吸収剤である。他の実施形態において、担体層は、ポリマーフィルム等の非吸収剤である。
【0065】
いくつかの実施形態において、創傷被覆材としての使用に好適なフィブリン物品は、(例えば感圧)接着剤を更に含む。接着剤は、フィブリン組成物(例えばシート又は粒子)を担体層に接着させるのに利用することができる。例えば、図5は、(例えば脱水された)フィブリンゲル組成物と、ポリマーフィルム又は発泡体等の担体層510と、を含む、又は、からなる、フィブリン含有シート530を示す。(例えば感圧)接着剤層520は、フィブリン含有シート530を担体層510に接着する。フィブリン含有シート530は、図1〜3に関して前述した、130、230、又は332を伴う310であってもよい。
【0066】
いくつかの実施形態において、フィブリン物品は、物品を(例えばヒト等の哺乳動物の)皮膚に接着するための、皮膚接触接着剤を含む。このような皮膚接触接着剤は、典型的には、感圧接着剤である。いくつかの実施形態において、感圧接着剤は、フィブリン粒子を担体層に接着する場合がある。フィブリン粒子、及び、場合によっては感圧接着剤の一部が、使用中に創傷と接触する場合がある。例えば、図6は、創傷被覆材としての使用に好適な、フィブリン物品の他の一実施形態を示す。フィブリン物品は、剥離ライナー、ポリマーフィルム又は発泡体等であり得る担体層610を含み、感圧接着剤層620は担体層610上に配置され、かつ本明細書に記載のフィブリン粒子630は、感圧接着剤層上に配置されている、また、場合により、感圧接着剤層中に少なくとも部分的に埋め込まれている。皮膚接触接着剤は、典型的には、取り外し可能な剥離ライナーによって、使用まで被覆される。
【0067】
いくつかの実施形態において、創傷被覆材は、吸収剤層を含む。吸収剤層は、典型的には、創傷に対向するフィブリン含有層とポリマーフィルムとの間に配置される。例えば、図7は、創傷被覆材としての使用に好適な、フィブリン物品の他の一実施形態を示す。フィブリン物品は、(例えば可撓性)ポリマーフィルムであり得る担体層710を含む。ポリマー発泡体等の吸収剤層760は、担体材料710上に配置される。感圧接着剤(「PSA」)層720は、吸収剤層760上に配置され、かつフィブリン含有層730は、感圧接着剤層720上に配置される。フィブリン含有層は、シート130、発泡体シート230又はフィブリン粒子332等の、前述のフィブリン含有層のうちのいずれかであってもよい。
【0068】
図8に示すように、接着剤層820は、吸収剤層860の外面において、不連続な形態で提供される場合があり、創傷液及び細胞破片を吸収剤発泡体層中に浸透させる。いくつかの実施形態において、接着剤は感圧接着剤である。他の実施形態において、接着剤は感圧接着剤ではない。したがって、フィブリン層830中のフィブリン粒子832は、吸収剤層860の外面において、同様に不連続な様相で表出される。接着剤層820は、吸収剤層860の一部中に、また、一部を通って広がってもよい。接着剤層820の一部は、開放セル870の上方に広がることができるが、吸収剤層860の外面におけるセルの少なくとも一部(例えば、少なくとも10%又は少なくとも50%)は、接着剤によって閉鎖されない。吸収剤層860は、好適な接着剤層によって、(例えば可撓性の)フィルム層810に接着することができる。この実施形態において、粒子は、前述のとおり、フィブリンマイクロビーズ、フィブリンマイクロキャリア又はフィブリン粉末であってもよい。一実施形態において、感圧接着剤の溶液を、開放セル発泡体等の担体層上に、好適なコーティング重量(例えば、5〜15mg/cm)で噴霧することができ、PSA層の乾燥後に、フィブリン粒子を、接着剤でコーティングした表面上にコーティングすることができる。したがって、フィブリン粒子は、発泡体の外面上に堆積することができ、若干の付加的なフィブリン粒子が、開放セル発泡体の細孔中に導入される。このような、フィブリン粒子/PSA/吸収剤発泡体の構造物は、容易に湿気を吸収することが観察されている。この手法はまた、フィブリン粒子を、エラストマー担体材料上に組み込むためにも好適である。
【0069】
他の一実施形態において、フィブリン粒子層を感圧接着剤層上に配置することができ、この感圧接着剤層は、次いで、可撓性、多孔質の不織布バッキング層上に配置される。不織布バッキング層は、フィラメント(例えば、ポリエステルフィラメント)によって補強し、更に強度を加えることができる。(低アレルギー性の)感圧接着剤でコーティングされた、このような不織布バッキングの例としては、滅菌皮膚閉鎖ストリップ(例えば、3M Co.(St.Paul,MN)より入手可能なSTERI−STRIPS)を挙げることができる。このような滅菌皮膚閉鎖ストリップへのフィブリン(例えば粒子)層の追加は、例えば、切開又は創傷部位における瘢痕の管理において有益な効果(すなわち、瘢痕化を低減すること)をもたらすことができる。
【0070】
他の実施形態において、皮膚接触接着剤は物品の周縁部に配置され、その結果、接着剤は、典型的には、創傷の周縁部付近等の、創傷の外側の皮膚に接触する。皮膚接触接着剤は、典型的には、取り外し可能な剥離ライナーによって、使用まで被覆される。例えば、図9は、創傷被覆材としての使用に好適な、フィブリン物品の他の一実施形態を示す。フィブリン物品は、典型的にはポリマーフィルムである担体層960を含み、感圧皮膚接着剤920はフィルムの周縁部領域に配置され、フィブリンシート930は接着剤920の間の中央領域に配置され、取り外し可能な剥離ライナー910は、フィブリンシート及び接着剤の上に配置される。あるいは、剥離ライナーは、図10に示したように、接着剤の上のみに配置される場合もある。図11では、(例えば同一の)皮膚接触接着剤が、フィブリンシートをポリマーフィルム担体層960に接着するために利用される。
【0071】
いくつかの実施形態において、創傷被覆材の担体層は、可撓性のフィルム層(「バッキング」層とも呼ばれる)であり、典型的には、液体不透過性で水蒸気透過性の(例えば、通気性の)ポリマーフィルムを含む。液体不透過性で水蒸気透過性のポリマーフィルムは、好ましくは多湿環境下で構造的完全性を保持する、形状適合性の有機ポリマー材料である。本明細書において、「形状適合性の」フィルムは、身体部分の表面と共にフィルム表面が動く場合であっても、身体表面に形状適合するフィルムである。こうしたことから、可撓性フィルム層が解剖学的特徴に適用された場合、その表面が動いた場合であっても、その表面に形状適合する。好ましい可撓性フィルム層はまた、動物の解剖学的関節に対しても形状適合性である。関節が屈曲してから非屈曲位置に戻るとき、可撓性フィルム層は、十分に伸長して関節の屈曲に適応するが、関節が非屈曲状態に戻るとき、関節に形状適合し続けるのに十分な弾力性がある。本開示の創傷被覆材での使用に好ましい、可撓性フィルム層のこの特徴に関する記載は、例えば、米国特許第5,088,483号(Heineke)及び同第5,160,315号(Heineke)に見出すことができる。
【0072】
好適なフィルムは、水蒸気を透過させるような組成及び厚さを有する。フィルムは、被覆材の下の創傷領域からの水蒸気の損失の調節を補助する。フィルムはまた、細菌及び液体の水又はその他の液体の両方に対する障壁としても機能する。
【0073】
本発明において可撓性フィルム層として使用するための水蒸気透過性ポリマーフィルムは、様々な厚さのものであり得る。いくつかの実施形態において、可撓性フィルム層の厚さは、少なくとも10又は12μm〜最大250μmの範囲である。いくつかの実施形態において、可撓性フィルム層の厚さは、75μm以下である。
【0074】
創傷被覆材物品の水蒸気透過率(「MVTR」)特性は、創傷の周囲の皮膚を浸軟させることなく、創傷被覆材の下の創傷を多湿条件で治癒させ、かつ最適な装着時間を確保し、かつ取り外しを容易にする上で重要である。
【0075】
創傷被覆材、又は可撓性フィルム層を含むその各種構成成分の乾燥時MVTR(又は直立MVTR)は、ASTM E−96−80(米国材料試験協会)により、40℃及び相対湿度20%で、直立カップ法を使用して測定することができる。湿潤時MVTR(又は倒立MVTR)は、水が試験試料に直接接触するように試料瓶を倒立させること以外は、同一の方法により測定することができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、フィルムに関して、乾燥時MVTRが、フィルムの湿潤時MVTRよりも小さい。例えば、フィルムに関して、乾燥時MVTRが少なくとも300g/m/24時間であり、かつ湿潤時MVTRが少なくとも500、1000、2000又は3000g/m/24時間であり得る。いくつかの実施形態において、フィルムの湿潤時MVTRは10,000g/m/24時間又は15,000g/m/24時間より大きい。
【0077】
可撓性フィルム層の液体不透過性で水蒸気透過性のポリマーフィルムに好適な材料としては、合成有機ポリマーが挙げられ、これらに限定されるものではないが、B.F.Goodrich(Cleveland,OH)より商標表記ESTANE(例えばESTANE 58237及びESTANE 58245)で市販されているポリウレタン、Elf Atochem(Philadelphia,PA)より商標表記PEBAX(例えばPEBAX MV 1074)で市販されているポリエーテルアミドブロックコポリマー、DuPont(Wilmington,DE)より商標表記HYTRELで市販されているポリエーテル−エステルブロックコポリマー、DSM Engineering Plastics(Evansville,IN)より商標表記ARNITEL VTで市販されている熱可塑性エラストマーが挙げられる。ポリマーフィルムは、1種以上のモノマー(例えば、コポリマー)又はポリマーの混合物(例えば、ブレンド)から作製することができる。好ましい材料は熱可塑性ポリマー、例えば、熱に暴露した際に軟化し、かつ冷却すると元の状態に戻るポリマーである。特に好ましい材料は、熱可塑性ポリウレタンである。
【0078】
本開示の創傷被覆材物品の可撓性フィルムはまた、例えば、不織布、織布、及びニットウェブ、多孔質フィルム(例えば、穿孔又は微細多孔質構造体により提供される)、発泡体、紙、又はその他の既知の可撓性フィルムといった、その他の通気性材料を含むことができる。好ましい可撓性フィルムは、液体不透過性で水蒸気透過性のポリマーフィルムと、水蒸気透過性の不織布ウェブとの組み合わせを含み、この組み合わせにより、他の利点のうち特に、被覆材の構造的完全性を高め、美観を改善することができる。フィルム及びウェブのこれらの層は、同一の広がりを有してもよい、又は、有していなくてもよい。好ましいこのような不織布ウェブは、溶融加工したポリウレタン(Morton International(Seabrook,NH)より商標表記MORTHANE PS−440で入手可能なもの等)、又は水流交絡不織布ポリエステル若しくはレーヨン−ポリエステルウェブ(DuPont(Wilmington,DE)より商標表記SONTARA 8010又はSONTARA 8411で入手可能なもの等)である。
【0079】
いくつかの実施形態において、可撓性フィルム層は、半透明(translucent、semi-transparent)又は透明であるが、これは必要条件ではない。透明又は半透明の可撓性フィルム層を含む創傷被覆材のいくつかの例は、商標表記TEGADERMで、3M Co.(St.Paul,MN)より入手可能である。
【0080】
低接着性コーティング(低接着性バックサイズ又はLAB)を、可撓性フィルム層上の、適宜備えられる支持層と接触し得る側に提供することができる。低接着性コーティングにより、他のテープ又はデバイスが被覆材上に配置され、取り外された場合の、不要な被覆材の取り外しによる被覆材の交換の必要性が低減され、また、リネン又は他の布地上での被覆材の表面摩擦が低減され、これにより、被覆材が偶発的に外れてしまうことに対し、追加的な保護が提供される。本開示の創傷被覆材物品と共に使用するのに好適な低接着性コート剤に関する記載は、米国特許第5,531,855号(Heineke)及び同第6,264,976号(Heineke)に見出すことができる。
【0081】
いくつかの実施形態において、創傷被覆材は、吸収剤層を含む。いくつかの実施形態において、吸収剤層は、吸収剤発泡体層、又は可撓性フィルム層上に配置された吸収剤発泡体層の少なくとも一部を含むことができる。好適な発泡体層としては、例えば、米国特許第6,548,727号(Swenson)に記載の開放セル発泡体の中から選択される開放セル発泡体を挙げることができる。好適な開放セル発泡体は、好ましくは、走査型電子顕微鏡法(SEM)又は光学顕微鏡によって測定される平均セルサイズ(典型的には、直径等の、セルの最長の寸法)が、少なくとも約30μm、より好ましくは少なくとも約50μm、かつ好ましくは約800μm以下、より好ましくは約500μm以下である。このような開放セル発泡体が本開示の創傷被覆材で使用された場合、体液及び細胞破片を発泡体中にかつ発泡体内に移動させる。いくつかの実施形態において、発泡体は、創傷滲出液を吸収する形状適合性の開放セル発泡体の形成に適応された合成ポリマーを含む。吸収剤で、実質的に非膨潤性の発泡体に好適な材料の例としては、合成有機ポリマーが挙げられ、これらに限定されるものではないが、ポリウレタン、カルボキシル化ブタジエン−スチレンゴム、ポリエステル及びポリアクリレートが挙げられる。これらのポリマー発泡体は、1種以上のモノマー(例えば、コポリマー)又はポリマーの混合物(例えば、ブレンド)から製造することができる。好ましい発泡体材料は、ポリウレタンである。特に好ましい発泡体は、商標表記POLYCRIL 400でFulflex,Inc.(Middleton,R.I.)より入手可能なポリウレタンである。他の実施形態において、発泡体は、(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルを含む、又は、からなる。
【0082】
他の一実施形態において、吸収剤層は、不織布又は繊維材料を含んでもよい。吸収剤材料が繊維材料を含む一実施形態において、繊維材料は、吸収剤繊維の中心コアと、感圧接着剤を含むシースとを有する、シースコア繊維とすることができる。
【0083】
いくつかの実施形態において、吸収剤層は創傷被覆材の周縁部領域の周囲に広がってもよく、吸収剤層無しでは、皮膚上に蓄積し、望ましくない皮膚の劣化(例えば、浸軟)を来す可能性のある体液を吸収することができる。このような実施形態において、吸収剤層は、創傷被覆材のより中央の領域(例えば、創傷と接触している、又は、創傷の上を覆うように配置されている創傷被覆材の一部)に含まれる必要はなくなる。
【0084】
創傷被覆材としての使用に好適なフィブリン物品は、物品の層を接着するための各種の接着剤を含んでもよい。フィブリン物品はまた、物品を皮膚に接着するための各種のPSAを含んでもよい。(例えばPSA)接着剤層は、例えば、連続コーティング、不連続コーティング、パターンコーティング又はメルトブローすることができる。
【0085】
PSAに関して、典型的には、貯蔵弾性率(G’)が、25℃及び振動数1ヘルツにおいて1×10ダイン/cm未満である。いくつかの実施形態において、PSAに関して、貯蔵弾性率(G’)が、25℃及び振動数1ヘルツにおいて9、8、7、6、5、4又は3×10ダイン/cm未満である。
【0086】
PSAの例としては、ゴム系接着剤(例えば、粘着力を高めた天然ゴム、合成ゴム及びスチレンブロックコポリマー)、アクリル(例えば、(メタ)アクリレート重合体)、ポリ(α−オレフィン)、ポリウレタン及びシリコーンが挙げられる。主鎖、主鎖のペンダント又はこれらの組み合わせにアミン基を有する、アミン含有ポリマーも使用することができる。好適な例としては、ポリ(エチレンイミン)が挙げられる。
【0087】
有用な接着剤は、米国特許第Re.24,906号(Ulrich)、同第5,849,325号(Heineckeら)及び同第4,871,812号(Lucastら)(水系及び溶媒系接着剤);同第4,833,179号(Youngら)(ホットメルト接着剤);同第5,908,693号(Delgadoら)(微小球粘着剤);同第6,171,985号及び同第6,083,856号(両方ともJosephら)(低障害繊維接着剤);並びに米国特許第6,198,016号(Lucastら)、同第6,518,343号(Lucastら)及び同第6,441,082号(Gieselman)(湿潤皮膚接着剤)等の、皮膚と適合性があり、かつ創傷被覆材に有用なもののいずれかとすることができる。米国特許第4,310,509号(Berglund)及び同第4,323,557号(Rosso)に記載のように、薬剤又は抗菌剤が接着剤に含まれることも企図される。
【0088】
接着剤は、直接コーティング、ラミネーション及び熱ラミネーションを含む、各種の方法によって担体層上にコーティングすることができる。いくつかの実施形態において、接着剤は、微細構造化接着剤層としてコーティングされる場合がある。
【0089】
シリコーン系及びアクリル系感圧性接着剤が、皮膚への接着には最も一般的に利用されるが、その他の部類の接着剤が、創傷被覆材としての使用に好適なフィブリン物品の層の接着に利用されることもできる。
【0090】
シリコーン系PSAは2つの主要な構成成分、すなわちポリマー又はゴム、及び粘着付与樹脂を含む。ポリマーは、典型的には、高分子量のポリジメチルシロキサン若しくはポリジメチルジフェニルシロキサンであり、ポリマー鎖の末端上に残留シラノール官能基(SiOH)を含有する、又は、ポリジオルガノシロキサンのソフトセグメントと尿素末端のハードセグメントとを含むブロックコポリマーである。粘着付与樹脂は、概して、トリメチルシロキシ基(OSiMe)でエンドキャップされ、かつまた若干の残留シラノール官能基を含有する、三次元ケイ酸塩構造体である。粘着付与樹脂の例としては、General Electric Co.,Silicone Resins Division(Waterford,NY)のSR 545、及びShin−Etsu Silicone of America,Inc.(Torrance,CA)のMQD−32−2が挙げられる。典型的なシリコーン系PSAの製造は、米国特許第2,736,721号(Dexter)に記載されている。シリコーン尿素ブロックコポリマー系PSAの製造は、米国特許第5,214,119号(Leirら)に記載されている。
【0091】
いくつかの実施形態において、シリコーン系接着剤は、米国特許出願公開第2011/0212325号、同第2011/0206924号、同第2011/0206923号、同第2013/0040073号、米国特許第7407709号及び同第787268号に記載のとおり、皮膚に対して優しいことを特徴とし得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、PSAに関して、典型的には、ガラス転移温度が約−20℃以下のアクリル系PSAであり、100〜60重量%のC4〜C12アルキルエステル構成成分、例えば、各種の(メタ)アクリレートモノマー等(イソオクチルアクリレート、2−エチル−ヘキシルアクリレート及びn−ブチルアクリレート等)、及び0〜40重量%の極性構成成分(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン及びスチレンマクロマー等)を含み得る。
【0093】
(メタ)アクリル系PSAの調製に好適な酸性モノマーとしては、カルボン酸官能基を含有するもの、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等;スルホン酸官能基を含有するもの、例えば、2−スルホエチルメタクリレート;並びにホスホン酸官能基を含有するものが挙げられる。好ましい酸性モノマーとしては、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。
【0094】
更なる有用な酸性モノマーとしては、これらに限定されるものではないが、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和ホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。このような化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、β−カルボキシエチルアクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸等、及びこれらの混合物から選択されたものが挙げられる。
【0095】
それらの入手の可能性により、本発明の酸性モノマーは、典型的には、エチレン性不飽和カルボン酸である。更により強い酸が所望の場合、酸性モノマーとしては、エチレン性不飽和スルホン酸及びエチレン性不飽和ホスホン酸が挙げられる。一般的に、スルホン酸及びホスホン酸により、塩基性ポリマーとのより強い相互作用がもたらされる。このより強い相互作用によって、接着剤の凝集力、並びにより高い耐熱性及び耐溶媒性を、より向上させることができる。
【0096】
(メタ)アクリル系PSAを調製するのに好適な塩基性モノマーとしては、アミン官能基を含有するもの、例えば、ビニルピリジン、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノ−エチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート及びN−t−ブチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。好ましい塩基性モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート及びN,N−ジメチルアミノエチルアクリレートが挙げられる。
【0097】
(メタ)アクリル系PSAは自己粘着性であっても、又は、粘着化されてもよい。(メタ)アクリルに有用な粘着付与剤は、ロジンエステル(Hercules,Inc.より商品名FORAL 85で入手可能なもの等)、芳香族樹脂(Hercules,Inc.より商品名PICCOTEX LC−55WKで入手可能なもの等)、脂肪族樹脂(Hercules,Inc.より商品名PICCOTAC 95で入手可能なもの等)及びテルペン樹脂(Arizona Chemical Co.より商品名PICCOLYTE A−115及びZONAREZ B−100で入手可能なもの等)である。水素添加ブチルゴム、顔料、及び接着剤を部分的に加硫処理するための硬化剤等の、その他の材料を、特別な目的のために加えることができる。酸性改質粘着付与剤の例としては、米国特許第5,120,781号(Johnson)に記載のような、酸性改質多価アルコールロジンエステル粘着付与剤が挙げられる。
【0098】
特定の実施形態において、(例えばアクリル系)PSAは、ポリ(エチレンオキシド)及び/又はポリ(プロピレンオキシド)等のポリ(アルキレンオキシド)の重合単位を含む。PSAは、典型的には少なくとも5、10又は15重量%、かつ典型的には約30重量%以下のポリ(アルキレンオキシド)重合体を含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、ポリ(アルキレンオキシド)コポリマーは、(メタ)アクリルコポリマーとブレンドされる。有用なポリ(アルキレンオキシド)コポリマーの例としては、これらに限定されるものではないが、商標表記TETRONIC(親水性の末端ブロックを有するエチレンジアミンへのプロピレンオキシド及びエチレンオキシドの連続添加から誘導された、4官能ブロックコポリマー)及びTETRONIC R(疎水性の末端ブロックを有するエチレンジアミンへのプロピレンオキシド及びエチレンオキシドの連続添加から誘導された、4官能ブロックコポリマー)でBASF(Mt.Olive,N.J.)より入手可能なコポリマー;商標表記PLURONIC(ポリ(エチレンオキシド)末端ブロック及びポリ(プロピレンオキシド)中間ブロックを有するトリブロックコポリマー)及びPLURONIC R(ポリ(プロピレンオキシド)末端ブロック及びポリ(エチレンオキシド)中間ブロックを有するトリブロックコポリマー)でBASFより入手可能なコポリマー;商標表記UCON Fluids(エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのランダムコポリマー)でUnion Carbide(Danbury,Conn)より入手可能な、ポリ(アルキレンオキシド)コポリマーが挙げられる。ポリ(アルキレンオキシド)コポリマーの様々な組み合わせもまた、使用することができる。好ましい非反応性の親水性ポリマー構成成分は、BASF(Germany)より商品名PLURONICで入手可能な、ポリエチレングリコールとプロピレングリコールとのブロックコポリマーである。
【0100】
他の実施形態において、共重合性(例えばビニル)基を有するポリ(アルキレンオキシド)モノマーが、アクリル系ポリマーの重合中に含まれる。市販のモノマーとしては、商標表記「SR−256」でSartomer Company(West Chester,PA)より入手可能な2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート;商標表記「No.8816」でMonomer−Polymer & Dajac Laboratories,Inc.(Trevose,PA)より入手可能なメトキシポリ(エチレンオキシド)アクリレート;それぞれ、商標表記「No.16664」、「No.16665」及び「No.16666」でPolysciences,Inc.(Warrington,PA)より入手可能な、200ダルトン、400ダルトン及び1000ダルトンのメトキシポリ(エチレンオキシド)メタクリレート;並びに、商標表記「No.16712」でPolysciences,Inc.(Warrington,PA)より入手可能なヒドロキシポリ(エチレンオキシド)メタクリレートが挙げられる。
【0101】
アクリル系接着剤組成物の例としては、97:3のイソ−オクチルアクリレート:アクリルアミドコポリマー及び65:15:20の2−エチルヘキシルアクリレート:アクリル酸:商標表記PLURONICの非反応性ポリアルキレンオキシドコポリマーとブレンドしたコポリマーが挙げられる。その他の好適な例としては、90:10のイソ−オクチルアクリレート:アクリル酸コポリマー、70:15:15のイソオクチルアクリレート:エチレンオキシドアクリレート:アクリル酸ターポリマー、及び25:69:6の2−エチルヘキシルアクリレート:ブチルアクリレート:アクリル酸ターポリマーが挙げられる。更なる有用な接着剤は、米国特許第3,389,827号、同第4,112,213号、同第4,310,509号及び同第4,323,557号に記載されている。
【0102】
米国特許第4,310,509号及び同第4,323,557号に記載のように、薬剤又は抗菌剤が接着剤に含まれることも企図される。
【0103】
創傷被覆材用の感圧接着剤は、好ましくは、人間の皮膚と同等以上の速度で水蒸気を透過させる。このような特徴は適切な接着剤の選択により達成できるが、一方、本開示においては、米国特許第4,595,001号(Potterら)に記載のように、バッキング上に接着剤をパターンコーティングする等の、高い相対速度の水蒸気透過をもたらす他の方法を使用し得ることも、企図される。
【0104】
感圧接着剤層によってコーティングされた可撓性フィルム層の複合材料に関して、米国特許第4,595,001号に記載のような倒立カップ法を使用した場合、水蒸気透過率が少なくとも300g/m/24時間/37℃/100%〜10%相対湿度(「RH」)、より好ましくは少なくとも700g/m/24時間/37℃/100%〜10% RH、また、更により好ましくは少なくとも2000g/m/24時間/37℃/100%〜10% RHである。
【0105】
いくつかの実施形態において、フィブリン物品の製造方法は、概して、(例えば脱水された)フィブリン組成物を提供することと、担体上又は担体内にフィブリン組成物を配置することと、を含む。いくつかの実施形態において、担体は、剥離ライナー、ポリマーフィルム若しくはポリマー発泡体、又は不織材若しくは織布のファイバー材料等の担体層である。フィブリン組成物が粒子形態である場合、創傷被覆材の製造方法は、フィブリン粒子を、担体上に配置された(例えば感圧)接着剤層に分散させることを含む場合がある。あるいは、フィブリン粒子を、液体(例えば、不活性、揮発性フッ素化液体)中に懸濁し、担体層上に配置された(例えば感圧接着剤)層の表面上に、脱水された形態で噴霧乾燥する場合がある。可撓性フィルム層上に配置された感圧接着剤層を含む好適な創傷被覆材の例としては、3M Co.(St.Paul,MN)より入手可能なTEGADERM創傷被覆材(例えば、TEGADERM 1626)が挙げられる。一実施形態において、フィブリン含有層(例えばシート又は粒子)が、TEGADERM創傷被覆材の感圧接着剤層の表面に塗布される。
【0106】
本記載の創傷被覆材物品は、典型的には、包装形態で提供される(すなわち、密封された包装中に配置される)。密封された包装の内部は、典型的には無菌である。創傷被覆材及び本開示の方法との使用に好適な創傷被覆材包装の例としては、例えば、ポリマー包装及びホイル包装が挙げられる。多種多様なポリマー材料を、創傷被覆材との使用に好適な、非多孔質包装の製造に使用することができる。包装材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとプロピレンとのコポリマー、ポリブタジエン、エチレンビニルアセテート、エチレンアクリル酸又はアイオノマーフィルムとすることができる。好適なホイル包装としては、アルミニウム箔包装を挙げることができる。いくつかの実施形態において、包装材料は、創傷被覆材の上方及び下方に配置された後、4辺でシールされて包装を作製する材料のシートとして使用することができる。他の実施形態において、3辺が既にシールされている、あらかじめ作製された小袋が利用される。創傷被覆材物品を小袋内に配置した後、4つ目の辺をシールして包装を形成する。包装のシールは、熱融着によって実施することができる(すなわち、加熱及び加圧によってシールを形成する)、又は、接着剤シーラント(例えば感圧性接着剤シーラント又は低温シールシーラント)を使用して包装をシールすることができる。典型的には、熱融着が使用される。更に、創傷被覆材を多孔質包装中に配置した後にホイル包装等の非多孔質包装中に配置することを含む、包装システムを使用することができる。ホイル包装は使用前の水分の損失を防止し、また、多孔質包装により、使用中の取り扱いが容易になる。
【0107】
本開示の創傷被覆材物品の利点は、エチレンオキシド、又は有利には、γ線照射への暴露を含む、最終滅菌プロセスによって滅菌が可能であることである。この照射は、創傷被覆材物品が包装内に含まれているか否かを問わず、実施することができる。滅菌を達成するために創傷被覆材に適用される暴露時間及び照射線量レベルは、創傷被覆材に使用されるγ線の装置並びに創傷被覆材に存在する固有のバイオバーデンレベル等の、様々な要因に基づいて変動し得る。典型的には、創傷被覆材の滅菌を達成するためには、滅菌保証レベル(SAL)10−6が必要とされる。このSALレベルは、典型的には、創傷被覆材を最小累積γ線照射線量に暴露することによってもたらされる。滅菌されていない被覆材におけるバイオバーデンレベル及び被覆材のサイズに応じて、最小累積線量は、約10kGy〜約35kGyの範囲となり得る。典型的には、最小累積線量は、約15〜30kGyである。滅菌を達成するのに必要なγ線照射は、γ線照射滅菌器の単回通過又は複数回通過によって達成することができる。例えば、創傷被覆材をサイクル当たり5kGyの線量を使用し、5回の滅菌サイクルに暴露すると、創傷被覆材を25kGyのγ線照射に1回暴露するのと同等となる。労力及び時間的制約のため、創傷被覆材がγ線照射滅菌器によって照射される通過の回数を最小化することが、一般的には望ましい。典型的には、滅菌器を通過する回数を5回以下とすることが望ましく、通過回数を2回以下とするが、より望ましい場合もある。暴露時間は、滅菌される試料がγ線に暴露される時間と見なすことができる。典型的には、暴露時間は、数時間のオーダーである。
【0108】
γ線照射は、本開示の創傷被覆材を滅菌するための好適な方法である。本開示の創傷被覆材を好適なレベルのγ線照射に露出する場合、再上皮化性能の同等の低下を生じることはない。
【0109】
最終滅菌を使用できることにより、例えば液体等のその他の形態の創傷被覆材よりも、利点がもたらされる。理論に束縛されるわけではないが、フィブリノゲン及びトロンビン等のタンパク質の水溶液又は懸濁液は、γ線照射を伴う最終滅菌中に鎖間の架橋を受けることが予想され得る。乾燥形態では、タンパク質は、鎖の切断(すなわち、分解)を受けることが多く、またその結果酵素活性を失う。したがって、重合のための試薬(例えば、フィブリノゲン及び/又はトロンビン)をγ線照射すると、別の試薬の架橋及び/又は鎖の切断を来し、その結果、フィブリンを形成する反応(又は重合)が起こらなくなってしまう場合があり得る。γ線照射のレベルによっては、フィブリンは若干の鎖の切断も受ける場合があるが、低度の分解があっても、γ線照射されたフィブリンはそれでもなお細胞に認識され、所望の再上皮化作用を得ることができる。
【0110】
(例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルは、その各種の物理的形態で、創傷の治療に利用することができる。したがって、他の一実施形態において、本明細書に記載のようなフィブリン組成物又は記載のフィブリン組成物を含む創傷被覆材を提供し、かつフィブリン組成物を創傷に近接して提供する、(例えば哺乳動物又はヒトの)創傷の治療方法が記載される。典型的な実施形態において、フィブリン含有層(例えばシート、発泡体、粒子)は、創傷の少なくとも一部分又は複数部分と直接接触している。あるいは、フィブリン含有層は、ごく近接することはできるが、直接は接触していないものと推測される。例えば、ガーゼ等の吸収性の多孔質担体層は、フィブリン含有層を、創傷対向表面とは反対側の表面上に含む場合があることが企図される。使用中に、創傷の液が、吸収性の多孔質担体層に浸透し、その結果フィブリン含有層を可溶化する。
【0111】
フィブリン組成物は、ブタのin vivo試験及びヒトの初代分離細胞を使用したin vitro試験の両方において、再上皮化の速度を増加させることが示されている。いくつかの実施形態において、再上皮化は、対照((例えば脱水された)フィブリンハイドロゲルを含まない同一の被覆材)よりも2倍超速かった。
【0112】
脱水されたフィブリン組成物はまた、増殖因子、プロテアーゼ、サイトカイン等の当該技術分野において既知の治癒促進性及び抗治癒性のバイオマーカーの形成にも影響を及ぼすことが見出された。(Murphy,K.(2012).Janeway’s Immunobiology(E.Lawrence Ed.8th ed.):Garland scienceを参照)。いくつかの実施形態において、VEGF(血管内皮増殖因子)の形成は、対照よりも少なくとも1、2、3又は4倍超高かった。いくつかの実施形態において、EGF(上皮増殖因子)は、対照よりも少なくとも1又は2倍超高かった。いくつかの実施形態において、マトリックスメタロプロテイナーゼ−MMP1及び/又はMMP8−の形成は、対照よりも少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8又は9倍超高かった。いくつかの実施形態において、マトリックスメタロプロテイナーゼ−MMP9−の形成は、対照よりも少なくとも10、20、30、40、50、60、70又は80倍超高かった。いくつかの実施形態において、TIMP−1−メタロプロテイナーゼの組織阻害剤の形成は、対照よりも少なくとも1、2、3又は4倍超高かった。治癒促進性マーカーIL−4、IL−6、IL−10、EGF、塩基性FGFは対照と同じであり、効果がないことが示された。更に、抗治癒性バイオマーカーTNF−α、IL−1α、IL−1β、IL−2は、全てアッセイの検出限界未満であり、炎症促進性は低いことが示された。
【0113】
本明細書における全ての特許及び特許出願の引用は、参照により本明細書に組み込まれる。本開示に対するその他の改変及び変形は、当業者によって、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく実施することができる。様々な実施形態の態様を、全体的に若しくは部分的に相互変換する、又は、様々な実施形態のその他の態様と組み合わせることができるものと理解される。先行する記載は、特許請求した開示を当業者が実施することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈してはならず、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって規定される。
【実施例】
【0114】
特に断りのない限り、実施例及び本明細書の残りの部分における全ての部、割合、比率等は、重量によるものとする。「重量パーセント」は、いくつかの箇所において、「重量%」と省略される。
【0115】
材料
HEPES、CaCl、NaClは、SIGMA−Aldrich(Milwaukee,WI)より入手した。その他の材料は、下記の実施例中での使用ごとに掲載した。
【0116】
実施例1〜3及び比較例C1〜C6−各種塩濃度のフィブリンゲルシートの調製。
フィブリンゲルは、フィブリノゲン(SIGMAカタログ番号F8630、SIGMA−Aldrich(Milwaukee,WI)より入手可能)2.7gを、下記の表1に示した各種の塩と、1重量%グリセロール(SIGMAカタログ番号G2025)とを含む水592.5mLに溶解することにより、成形容器に入れた。次に、フィブリノゲン1mg当たりトロンビン(SIGMAカタログ番号T7009)0.6単位を、フィブリノゲン溶液に加え、重合を開始した。この混合溶液を20〜30秒間混合した後、6ウェルのプレートに移し、重合を終了した。混合物を37℃で30分間インキュベートした後、ゲルの形成について定性的に評価した。
【0117】
構成成分がゲルを形成した場合、連続的な不透明な白色の物質がプレートのウェルに形成され、それは単一の集合体としてプレートから取り出すことができた。構成成分がゲルを形成しなかった場合、2つの不良様式のうちの1つを記録した。不良様式1の場合、構成成分の沈殿が観察され、かつ沈殿した固形物は、重合していない非重合の水溶液によって取り囲まれていた。不良様式2の場合、構成要素の混合前後で差異は観察されなかった。したがって、組成物は、ゲル化していない水溶液中に残存していた。乾燥後の塩含量は、水分含量を約10%まで脱水した1重量%のフィブリンシートを含む溶液の伝導率を、25℃において18.2メグオーム−cmの水中で測定することによって求めた。
【0118】
水分含量は、同一のフィルムの(完全に)脱水された試料の重量減少を算出することによって求めた。(完全に)脱水された試料を対流オーブン中、60℃で24時間コンディショニングした。
【0119】
【表1】
【0120】
実施例4−in vivo試験用のフィブリンゲルシートの調製
フィブリンゲルは、フィブリノゲン(SIGMAカタログ番号F8630)2.7gを、0.9% NaCl及び1重量%グリセロール(SIGMA catalog number G2025)を含む20mM HEPES、pH7.4(AMRESCOカタログ番号0511)の592.5mLに溶解することにより、成形容器に入れた。この溶液に、CaCl(SIGMAカタログ番号C5670)2.0gを加えた。次に、フィブリノゲン1mg当たり、トロンビン(SIGMAカタログ番号T7000)0.06単位を、フィブリノゲン溶液に加え(その結果、トロンビン濃度0.27U/mLとなった)、重合を開始した。この溶液を20〜30秒間混合した後、凍結乾燥器のパン(10インチ×14インチ×1インチ、316Lのステンレス鋼パンで、ステンレス鋼の厚さは0.060インチ)に入れて成形し、厚さ約7mmのゲルを得た。ゲルは、37℃で30〜60分間インキュベートした。脱水前のフィブリンハイドロゲルに関して、フィブリン含量が約0.45重量%、塩含量が約0.6重量%、グリセロール含量が約1%で、残りが水であった(約98%)。
【0121】
フィブリンハイドロゲルは、次に、超純水(25℃において18.2メグオーム−cm)と1重量%グリセロールとの溶液中に定置した。この溶液の体積は、ゲルの体積よりも10倍超大きかった。ゲルをこの溶液中で終夜すすいだ後、成形に使用した凍結乾燥器のパンに戻して配置した。凍結乾燥器のパンを、3Mより3M Tegoderm(商標)非被着接触層、製品番号5644として市販されているナイロン織布で覆った。続いて、標準的な方法を使用してゲルを凍結乾燥した。ナイロン織布は、乾燥したゲルから除去した。得られたシートは、厚さが約50μmの可撓性のフィブリンゲルシートであった。得られた、すすいで脱水されたフィブリンゲルのフィルムに関して、フィブリン含量が約50重量%、グリセロール含量が約30重量%、また水分含量が約10重量%であった。得られた、すすいで脱水されたフィブリンゲルシートは、1重量%のフィブリンシートを含む溶液の伝導率を25℃において18.2メグオーム−cmの水中で測定することによって求めたところ、塩含量が約10%であることが判明した。次に、シートを5cm×7.6cmの薄片に切断し、ブタモデルを使用したin vivoの部分肥厚創傷試験に使用した。
【0122】
実施例4−in vivo試験手順
フィブリンゲルシートのin vivo試験は6頭のブタの試験で、72時間のエンドポイントで、ブタモデルを使用した部分肥厚創傷試験から構成された。ブタ1頭当たり、それぞれ面積5cm×7.6cm(2×3インチ)かつ深さ500μmの創傷が6個存在した。試験は、IACUCにより承認された手順を使用し、適切な動物の取り扱いを確保し、無用な苦痛を最小化するよう配慮して実施した。
【0123】
創傷作製の当日、創傷部分を剃毛し、無菌手術に備えた。創傷部分を無菌のマーカーでマークし、無菌の鉱油を創傷部分上に施し、皮膚切除を処置しやすくした。創傷の作製後、吸収性のガーゼを軽く加圧しながら5分間適用し、止血した。続いて創縁にベンゾインチンキを塗り、接着性バンデージの付着を向上させた。創傷は、実施例4のフィブリンゲルシートのいずれかで処置した後、3M TEGADERM HP FOAM DRESSING(3Mカタログ番号90601)で被覆した、又は、対照は、創傷ケアの標準と見なされる、3M TEGADERM HP FOAM DRESSINGのみで被覆した(フィブリンゲルシート無し)。個々の被覆材が適用される場合、3M 1363動物用弾性接着テープを使用して留めた。続いて、全ての創傷をオーガンザ布を重ねて被覆した。
【0124】
試験の終了時に、動物は承認された手順に従い、安楽死させた。続いて組織試料を、組織学的検査及び生化学的分析用に採取した。組織学的検査の試料は、10%中性緩衝ホルマリン(Thermo Scientificカタログ番号534801)中に入れて固定した。続いて、試料を調製してパラフィン包埋し、ミクロトームで6個の薄片とし、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。
【0125】
実施例4−in vivoの評価結果
H&E試料を分析し、角化細胞で覆われた創傷の幅を測定し、その値を測定された創傷の幅で除算することにより、再上皮化率を求めた。実施例4のフィブリンゲルシートで処置した創傷は、49.8±4.9%の再上皮化率を呈し、発泡体被覆材対照は、23.8±4.1%の再上皮化率を呈した(平均±95%信頼区間、n=16)。結論としては、実施例4の凍結乾燥されたフィブリンゲルシートによる処置の結果、標準的なケア(発泡体被覆材の対照)に比べ、約2倍超速い再上皮化がもたらされた。
【0126】
実施例4:創傷治癒の生化学的指標
再上皮化率に加え、実施例4及び発泡体被覆材の対照によって処置した創傷の組織試料を、バイオマーカーについても分析した。創傷は、フィブリンゲルシートによる処置72時間後に生検を行った。創傷の生検材料は、ブレンダによって均質化し、創傷治癒及び炎症性バイオマーカーについて分析した。多重ELISAを使用して、治癒促進性及び抗治癒性の創傷の結果を測定した。選択したスクリーニングパネルは以下を含んだ:(A)治癒促進性バイオマーカー:IL−4、IL−6、IL−10、EGF、塩基性FGF、VEGF、MMP−1、MMP−3、MMP−8、MMP−9、TIMP−1;並びに(B)抗治癒性バイオマーカー:TNF−alpha、IL1−alpha、IL−1beta、IL−2。表2に示したデータは、4頭のブタについて、各処置について2つの創傷の2つの生検結果を表している。表2は、創傷治癒のバイオマーカーの結果を示し、実施例4における対照(3M TEGADERM HP発泡体被覆材)に対してX倍の増加として要約した。結果によると、フィブリンによる処置には、標準的なケア(対照)と比べて顕著な変化、並びに創傷治癒を示す、フィブリンの媒介によるバイオマーカーの誘発傾向(5倍超の上方制御)が認められた。試験した抗治癒性バイオマーカーは、全てアッセイの検出限界未満であり(データは示さず)、炎症促進性が低いことが示され、実施例4のフィブリンゲルシートの、創傷治癒プロセスを完了へと促進する能力が更に確認された。統計的有意性はステューデントのt検定により判定し、有意性をp<0.05で判定した。
【0127】
【表2】
【0128】
実施例4:機械的試験及び結果
実施例4のフィブリンゲルシート(ナイロン織布の除去後)を、5kg重のロードセルを有するINSTRON引張試験機モデル5943を使用して、機械的特性について試験した。実施例4の乾燥した(凍結乾燥した)ゲルシートを幅6.2mmに切断した。ゲルシートの厚さをマイクロメータで測定し、試験した試料の断面積を求めた。引張試験装置は、測定ごとに、グリップの間隔について較正した。試料を引張グリップアダプタの間に固定し、50mm/分の速度で引き伸ばした。データの取得は、0.02Nの力が加わった際に開始した。生成したひずみを、in situで、各試験について試料測定の入力によって明らかとなった断面積を使用して算出した。ヤング率を、応力−ひずみ曲線の直線部分及び0.2%〜2%のひずみで規定される部分から計算した。
【0129】
【表3】
【0130】
実施例5−フィブリンゲルシート調製物の他の乾燥方法
フィブリンゲルシートは、実施例4に記載の同一の方法によって調製した。変更は、(1)フィブリノゲン及びトロンビンは両方ともCambryn Biologics LLC(Sarasota,FL)より入手し、(2)2つの異なる乾燥法を評価した点のみである。フィブリンゲルシートの試料は、(i)上記で概説した凍結乾燥法を使用して乾燥した、又は、(ii)対流オーブン中、60℃で3〜5時間乾燥した。両方のフィルムの水分含量は10%以下であった。
【0131】
この実施例の目的は、フィブリンゲルの乾燥方法として、オーブン乾燥を凍結乾燥と比較することであった。タンパク質のオーブン乾燥は、加熱されるとタンパク質の三次構造が容易に失われてしまうため、一般的には許容できるものではない。
【0132】
オーブンで乾燥したフィブリンゲルシートは、凍結乾燥したシートよりも、より透明かつより均一であることが観察された。凍結乾燥されたフィブリンゲルシートは、同様の組成であるものの、この脱水方法の一部としてのシート内での氷晶の形成のため、より不透明であった。また、凍結乾燥によって乾燥したフィブリンゲルシートは、より不規則な不透明度の変動を呈した。
【0133】
実施例5−in vivo試験手順
実施例5のフィブリンゲルシートのin vivo試験は、実施例4と同様に実施した。2頭のブタの試験を、72時間のエンドポイントで実施した。処置群(凍結乾燥されたフィブリンゲルシート、オーブン乾燥されたフィブリンゲルシート、又は比較−3M発泡体被覆材のみ)の他には、実施例4で実施されたものと比べ、手順に違いはなかった。
【0134】
実施例5−in vivo試験結果
H&E試料を分析し、実施例4で実施したように、角化細胞で覆われた創傷の幅を測定し、その値を測定された創傷の幅で除算することにより、再上皮化率を求めた。実施例5の試料のin vivo試験の再上皮化率の結果(平均±SEM、処置ごとにn=4)の概略を、下記の表4に示す。平均すると、実施例5のフィブリンゲルシートによる処置は、対照群(3M発泡体被覆材のみ)よりも2倍超高い再上皮化を呈した。再上皮化に関し、乾燥方法の間には、統計的有意差はなかった。
【0135】
【表4】
【0136】
比較例C7
比較例C7は、グリセロールの不在下で、不十分な洗浄がフィブリンの形成に及ぼす影響及び創傷治癒に対する影響を明らかにするために調製した。
【0137】
フィブリンゲル粉末の調製。まず、フィブリンゲルを、以下を除き、実施例4と同一の手順を使用して調製した。トロンビンは、SIGMA−Aldrich、カタログ番号T6634より入手した。また、グリセロールを加えず、得られたゲルは洗浄しなかった。フィブリンゲルの重合用の溶液は、50mLの遠心管中で調製した。ゲルの重合体を、−40℃に凍結した後、約500mTorrまで減圧し、真空を維持しながら温度を20℃まで上げることにより、凍結乾燥した。次に、乳鉢及び乳棒により、乾燥したゲルを粉末に粉砕(crushed)した。
【0138】
感圧接着剤(PSA)溶液(イソオクチルアクリレート及びアクリルアミドを97:3の重量比で混合し、固形分33重量%で、51重量%のヘプタンと49重量%の酢酸エチル(EtOAc)の混合溶媒中に溶解した)を、ペンタン中で体積比1:1に希釈した。続いて、この溶液をエアゾール化ジャーに入れた後、吸収剤発泡体(3M Co.(St.Paul,MN)より商標表記「3M 90600 TEGADERM FOAM DRESSING(NONADHESIVE)」で入手)の層上に噴霧し、続いて50℃で10分間乾燥し、吸収剤発泡体上に、重量11.5mg/cmの接着剤コーティングを得た。フィブリン粉末(上記の未洗浄かつグリセロールを含まないもの)を、得られた接着剤でコーティングされた表面上に、乾式「振とう」コーティングし、重量3.7mg/cmのフィブリン粉末コーティングを得た。
【0139】
塩を除去するためのゲルの洗浄は行わなかったため、得られた乾燥材料は、塩が65.5重量%、フィブリンが28.9%及び残りが水であった。塩含量は、1重量%のフィブリンシート材料を含む溶液の伝導率を、25℃において18.2メグオーム−cmの水中で測定することによって求めた。
【0140】
比較例C7:in vivo試験及び結果
実施例4に記述の手順に従ったin vivoのブタの試験を、比較例C7を使用して実施した。比較例C7で処置した創傷組織は、高度に炎症を起こしていることが判明した。組織学的検査により、この高塩含量の材料の存在下における治癒過程中の皮膚の損傷の痕跡が示され、これは、真皮全体にわたる多数の好中球の存在並びにコラーゲンの分解及び石灰化によって明らかとなった。上記のとおり、実施例6及び7(上記)から得た組織の組織学的検査の薄片は、この影響は示さなかった。
【0141】
実施例6及び比較例C8
実施例6及び比較例C8は、グリセロールの存在下で、不十分な洗浄がフィブリンの形成に及ぼす影響及び創傷治癒に対する影響を明らかにするために調製した。フィブリノゲン及びトロンビンは、両方とも、これらの実施例については、Cambryn Biologics,LLCより入手した。1つのゲルは、実施例4におけるように調製したが、1%のグリセロールを含み、ゲルの元の体積の10倍超の体積の18.2メガオーム(megaohm)−cmの水で2回洗浄した。もう一方のゲルは、実施例4において列挙した組成を2倍して調製し、1%のグリセロールを含み、ゲルの元の体積の10倍超の体積の18.2メガオーム−cmの水で1回洗浄した。調製した実施例の塩含量は、1重量%のフィブリンシート材料を含む溶液の伝導率を、25℃において18.2メグオーム−cmの水中で測定することによって求めた。完成品のフィブリンゲルシート中のグリセロール含量は、液体クロマトグラフィ−質量分析法(LC/MS)によって測定した。
【0142】
実施例6のフィブリンゲルシートは、示量的な洗浄により、塩濃度を0.2重量%まで低減して調製し、グリセロール含量は33%であった。
【0143】
比較例C8のフィブリンゲルシートは、意図的に、十分には洗浄せず、塩濃度が23.6%かつグリセロール含量が約50%であるゲルを得た。
【0144】
実施例6及び比較例C8:in vivo試験及び結果
実施例6及び比較例C8のゲルシートを、実施例4に記述の手順に従い、in vivoのブタの試験において評価した。創傷を再上皮化について3日後に検査したところ、実施例6は、低炎症性の部分及び再上皮化を示す色合いから明らかなように、創傷治癒を促進したことが示された。実施例6によって処置した創傷の組織学的検査によると、創傷領域にわたり、角化細胞の遊走が増加した痕跡が示された。比較例C8で処置したブタの創傷は、組織の損傷及び壊死の痕跡を示し、創傷領域は褐色/黒色化した。比較例C8で処置した創傷の組織学的検査によると、アポトーシス細胞、細胞破片、コラーゲンの変性及び脈管の壊死も示された。再上皮化の定量化により、実施例6(洗浄した低塩含量の配合物)で処置した創傷は、3M 90600 TEGADERM FOAM DRESSING対照の約2倍超速く治癒したことが示された。
【0145】
実施例7−グリセロールの代わりの可塑化構成成分を評価した。
フィブリンゲルを、フィブリノゲン(SIGMA−Aldrich,カタログ番号F8630)0.54gを20mMのHEPES緩衝食塩水(pH 7.4)60mL中に溶解することによって成形容器に入れ、原液とした。続いて、2重量%の可塑剤(表5)を原液5mLに加えることにより、フィブリノゲンと、異なる可塑剤との混合液を調製した。CaCl(SIGMA−Aldrich,カタログ番号C5670)の0.4gの量を、1.2U/mLのトロンビンの溶液に加えた。等量のフィブリノゲン溶液及びトロンビン溶液を加えることにより、重合を開始した。得られた溶液を20〜30秒間混合した後、6ウェルプレートの1つのウェル中に成形するために入れた。ゲルを37℃で30〜60分間インキュベートした後、水(25℃において18.2メグオーム−cm)と1重量%の可塑剤との溶液中に定置した。この溶液の体積は、ゲルの体積よりも10倍超大きかった。ゲルをこの溶液中で終夜すすいだ後、乾燥するまで60℃のオーブンに入れた。試験した可塑剤の全てにより、可撓性フィブリンシートが得られた。
【0146】
【表5】
【0147】
実施例8
実施例8は、グリセロールは含まないが、適切なすすぎによって最終的な物品中の塩含量を低減して調製したフィブリンゲルシートを評価するために調製した。シートは、洗浄工程のグリセロール含量のみを変更し、実施例4と同様に調製した。シートは、洗浄水中のグリセロールが0%と1%の両方によって調製した。この塩除去工程の後、試料を対流オーブン中60℃で、水分含量が10%以下になるまで乾燥した。典型的には、3〜5時間で乾燥された。可塑剤を含まないフィブリン調製物を、より小さい、典型的には1cm〜約0.1mmの不規則なサイズの薄片に粉砕した。ほとんどの粒子は約0.5cm〜1cmであったが、これらは、例えば円板、正方形等の特定の形状には調節されず、不規則な形状であった。
【0148】
実施例8:in vivo試験及び結果
実施例8の試料を、実施例4に記述の手順に従い、in vivoの(ブタ1頭の)ブタの試験において、72時間のエンドポイントで評価した。処置群の他には、実施例4で示したものと比べ、手順に違いはなかった。処置群は、フィブリン薄片(可塑剤を含まないフィブリンシートの大型の断片)、実施例4の可撓性フィブリンゲルシート及び3M TEGADERM発泡体被覆材からなった。
【0149】
H&E試料を分析し、実施例4で実施したように、角化細胞で覆われた創傷の幅を測定し、その値を測定された創傷の幅で除算することにより、再上皮化率を求めた。実施例8の試料のin vivo試験の再上皮化率の結果(平均±SEM、処置ごとにn=4)の概略を、下記の表6に示す。
【0150】
【表6】
【0151】
実施例9:フィブリンマイクロビーズ物品
フィブリンマイクロビーズの実施例は、以下のように調製することができる。1Lの容器に、トウモロコシ油200mL及びイソオクタン200mLを加えることができる。溶液は、半月型の羽根車を備えたオーバーヘッドミキサで撹拌しながら、75℃まで加熱する。40mg/mLのフィブリノゲンを含む0.9% NaCl水溶液を調製する。食塩水中のフィブリノゲンの25mLの量と5mMのCaCl溶液とをトロンビンと混合し、最終的なトロンビン濃度を5U/mLとする。タンパク質が凝集する前に、上記のタンパク質混合物をトウモロコシ油/イソオクタン溶液に加え、小さな水相の液滴が油相に分散され、フィブリンマイクロビーズを形成するように、羽根車で混合する。マイクロビーズのサイズは、50〜200μmの範囲であると推定される。混合及び加熱を75℃で6〜8時間継続する。フィブリンマイクロビーズを、油相から濾取する。続いて、フィブリンマイクロビーズを過剰の脱イオン水で洗浄して最終塩含量を0.5%とした後、48時間凍結乾燥してもよい。
【0152】
実施例10−発泡体フィブリン物品
発泡体フィブリン物品は、以下のように調製した。フィブリンゲルを、実施例4のようにフィブリノゲン溶液を調製することによって調製した。トロンビンを加えてフィブリンの重合を開始した直後に、溶液に通気するように、溶液を激しく20〜30秒間混合した。得られた通気された容器をパンに移し、重合を完了した。発泡体を37℃で30分間インキュベートした後、18.2メグオーム−cmの水と1重量%のグリセロールとの溶液中に定置した。この溶液の体積は、元のフィブリノゲン溶液の体積よりも10倍超大きかった。実施例5と同様に、発泡体を終夜すすいだ後、成形に使用したパンに戻して配置した。続いて発泡体を、実施例4と同様に凍結乾燥した。得られた、乾燥された発泡体は可撓性であり、塩濃度は5%未満であった。本開示の実施態様の一部を以下の[項目1]−[項目32]に記載する。
[項目1]
フィブリノゲン、フィブリン形成酵素及びフィブリンハイドロゲルを形成する塩を含む水溶液を形成することであって、前記フィブリンハイドロゲルを形成する塩の濃度がフィブリンハイドロゲルを形成する閾値濃度以上である、水溶液を形成することと、
前記塩濃度を、フィブリンハイドロゲルを形成する前記閾値濃度未満に低減することと、を含む、フィブリンハイドロゲル組成物の形成方法。
[項目2]
前記フィブリンハイドロゲルを形成する塩が、カルシウム塩を含む、項目1に記載の方法。
[項目3]
前記水溶液の前記閾値濃度が、少なくとも0.45重量%、又は0.50重量%、又は0.6重量%、又は0.7重量%、又は0.8重量%又は0.9重量%である、項目1又は2に記載の方法。
[項目4]
前記水溶液が、可塑剤を更に含む、項目1〜3のいずれか一項に記載の方法。
[項目5]
前記可塑剤が、糖アルコール、アルカンジオール、又はこれらの組み合わせを含む、項目4に記載の方法。
[項目6]
前記水溶液が、緩衝剤を更に含む、項目1〜5のいずれか一項に記載の方法。
[項目7]
前記フィブリンハイドロゲルを、シート、発泡体又は複数の断片に形成することを更に含む、項目1〜6のいずれか一項に記載の方法。
[項目8]
前記フィブリンハイドロゲルを形成する塩の濃度を低減する工程が、水溶液で前記ハイドロゲルをすすぐことを含む、項目1〜7のいずれか一項に記載の方法。
[項目9]
前記塩濃度の低減後に前記フィブリンハイドロゲルを脱水することを更に含む、項目1〜8のいずれか一項に記載の方法。
[項目10]
前記脱水が、凍結乾燥、オーブン乾燥、又はこれらの組み合わせを含む、項目9に記載の方法。
[項目11]
前記脱水されたフィブリンハイドロゲルの塩濃度が、20重量%以下の水分含量に対して、20、15、10又は5重量%以下である、項目1に記載の方法。
[項目12]
前記脱水されたハイドロゲルを複数の断片に形成することを更に含む、項目1〜11のいずれか一項に記載の方法。
[項目13]
項目1〜12のいずれか一項に記載の方法によって調製された、フィブリンハイドロゲル組成物。
[項目14]
フィブリン濃度が0.1〜10重量%の範囲であるフィブリンハイドロゲルと、
フィブリンハイドロゲルを形成する塩と、を含み、前記フィブリンハイドロゲルを形成する塩の濃度が、前記フィブリンハイドロゲルを形成する閾値濃度未満である、フィブリン組成物。
[項目15]
前記フィブリンハイドロゲルを形成する塩の濃度が、前記ハイドロゲルの0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15又は0.10重量%未満である、項目14に記載のフィブリン組成物。
[項目16]
前記フィブリンハイドロゲルを形成する塩が、カルシウム塩を含む、項目14に記載のフィブリン組成物。
[項目17]
前記フィブリンハイドロゲルが、可塑剤を更に含む、項目14〜16のいずれか一項に記載のフィブリン組成物。
[項目18]
前記可塑剤が、糖アルコール、アルカンジオール、又はこれらの組み合わせを含む、項目16に記載のフィブリン組成物。
[項目19]
前記フィブリンハイドロゲルが、少なくとも部分的に脱水されている、項目18に記載のフィブリン組成物。
[項目20]
前記脱水されたフィブリンハイドロゲルの塩濃度が、20重量%以下の水分含量に対して、20、15、10又は5重量%以下である、項目9に記載のフィブリン組成物。
[項目21]
前記フィブリンハイドロゲル又は前記脱水されたフィブリンハイドロゲルが、シート、発泡体又は複数の断片の形態である、項目14〜20のいずれか一項に記載のフィブリン組成物。
[項目22]
項目14〜21のいずれか一項に記載のフィブリン組成物を提供することと、担体上又は担体内に前記フィブリン組成物を配置することと、を含む、フィブリン物品の形成方法。
[項目23]
前記担体が、皮膚接着剤、剥離ライナー、ポリマーフィルム、ポリマー発泡体、又は不織材若しくは織布のファイバー材料である、項目22に記載の方法。
[項目24]
照射を使用して前記フィブリン組成物を滅菌することを更に含む、項目22又は23に記載の方法。
[項目25]
項目14〜21のいずれか一項に記載のフィブリン組成物を含む、創傷被覆材。
[項目26]
前記フィブリン組成物が担体上又は担体内に配置された、項目25に記載の創傷被覆材。
[項目27]
前記担体が、皮膚接着剤、剥離ライナー、ポリマーフィルム、ポリマー発泡体、又は不織材若しくは織布のファイバー材料から選択される、項目26に記載の創傷被覆材。
[項目28]
前記フィブリン組成物が、坪量2〜30mg/cmを有するシートの形態である、項目25〜27のいずれか一項に記載の創傷被覆材。
[項目29]
前記シートの厚さが10μm〜200μmの範囲である、項目28に記載の創傷被覆材。
[項目30]
項目14〜21のいずれか一項に記載のフィブリン組成物、又は項目25〜29のいずれか一項に記載の創傷被覆材を提供することと、
前記フィブリン組成物を創傷に近接して提供することと、を含む、創傷の治療方法。
[項目31]
前記フィブリン組成物が、再上皮化の速度を増加させる、項目30に記載の方法。
[項目32]
前記フィブリン組成物が、VEGF、EGF、MMP1、MMP8、MMP9、TIMP−1、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの創傷治癒生物学的マーカーを増加させる、項目30又は31に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11