(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810056
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】油圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/4008 20100101AFI20201221BHJP
F15B 1/033 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
F16H61/4008
F15B1/033
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-559824(P2017-559824)
(86)(22)【出願日】2016年5月6日
(65)【公表番号】特表2018-515730(P2018-515730A)
(43)【公表日】2018年6月14日
(86)【国際出願番号】EP2016000743
(87)【国際公開番号】WO2016184546
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年4月11日
(31)【優先権主張番号】102015006321.9
(32)【優先日】2015年5月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505468200
【氏名又は名称】ハイダック システムズ アンド サービシズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ケニー ヒンスベルガー
【審査官】
古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0036248(US,A1)
【文献】
特表2017−518213(JP,A)
【文献】
特表2013−527068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/14
F16H 61/38−61/64
F15B 1/033
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体システムとしての油圧駆動装置であって、前記油圧駆動装置は、少なくとも容積流を調節できる2個の流体押しのけユニット(1、3)を具備し、これらのうち一方の押しのけユニット(1)は駆動装置(9)と連結され、他方の押しのけユニット(3)は被動装置(11)と連結されて、互いに閉じた流体回路の形態で連通可能であり、この流体回路に蓄圧器回路(23)が接続されており、この蓄圧器回路(23)は少なくとも1個のアキュムレータ(33)を有して低圧側(27)と高圧側(25)とに区分されており、さらに全体システムを制御するためのバルブ制御装置(17)を具備し、
両押しのけユニット(1、3)は、それぞれの入口側でも出口側でもそれぞれ1本の作動管(13、15)で互いに連通されて閉じた流体回路を形成していること、及びバルブ制御装置(17)が両作動管(13、15)の間に配置されている、全体システムとしての油圧駆動装置において、
両作動管(13、15)と低圧側の蓄圧器回路(27)との間には、それぞれ1個の逆流防止機能を有する第2のバルブ装置(59、60)が配置されていることを特徴とする、全体システムとしての油圧駆動装置。
【請求項2】
バルブ制御装置(17)は、2個の第1のバルブ装置(57、58)を有しており、これらのバルブ装置(57、58)は開放位置では両押しのけユニット(1、3)をそれぞれの作動管(13、15)を介して互いに連通して、遮断位置では少なくとも前記蓄圧器回路(23)の高圧側を前記蓄圧器回路(23)の低圧側から切り離すことを特徴とする、請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項3】
被動装置側の押しのけユニット(3)は前記蓄圧器回路(23)の低圧側に割り当てられ、駆動装置側の押しのけユニット(1)は前記蓄圧器回路(23)の高圧側に割り当てられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の油圧駆動装置。
【請求項4】
両作動管(13、15)と高圧側の蓄圧器回路(25)との間に、それぞれ1個の比例制御機能を有する別の第3のバルブ装置(61、62)が配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の油圧駆動装置。
【請求項5】
低圧蓄圧器回路(27)で第2のバルブ装置(59、60)と被動装置側の押しのけユニット(3)との間に恒久的流体容積供給管(49)が接続されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の油圧駆動装置。
【請求項6】
恒久的流体容積供給管(49)が送入管(51)の入口に接続され、送入管(51)は出口側でタンク(T)内に開口していること、送入管(51)は連通部(31)を介して低圧蓄圧器回路(27)に恒久的に接続されていること、及び連通部(31)と送入管(51)の入口との間には逆止め弁(53)が配置され、連通部(31)と送入管(51)の出口との間には圧力制限弁(55)が配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の油圧駆動装置。
【請求項7】
両作動管(13、15)の間で、両第1のバルブ装置(57、58)と両第3のバルブ装置(61、62)との間の管部分に、これらのバルブ装置(61、62)に対して平行に延びて2個の比例圧力制限機能を有する別の第4のバルブ装置(63、64)が配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の油圧駆動装置。
【請求項8】
第3のバルブ対(61、62)と第4のバルブ装置(63、64)に割当て可能な連通管の間に、別の逆止め弁(69)が配置された別の連通管が延びていることを特徴とする、請求項7に記載の油圧駆動装置。
【請求項9】
蓄圧器回路(23)のアキュムレータは、ダブルピストンアキュムレータ(33)からなり、そのアキュムレータハウジング(37)内で長手方向移動可能に案内されたダブルピストン(35)は、予圧を有する第1の作動室(39)を、高圧側(25)にある第2の作動室(41)と、低圧側(27)にある第3の作動室(43)と、大気圧を有する第4の作動室(45)とから互いに分離していることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の油圧駆動装置。
【請求項10】
それぞれの押しのけユニット(1、3)は、調節可能な旋回角度を有する四象限システム(5、7)からなり、このシステムは油圧モータとしても油圧ポンプとしても駆動可能であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の油圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも容積流を調節できる2個の流体押しのけユニットを具備し、これらのうち一方の押しのけユニットは駆動装置と連結され、他方の押しのけユニットは被動装置と連結されて、互いに閉じた流体回路の形態で連通可能である、全体システムとしての油圧駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記の駆動装置はある特許文献において公知であり(例えば、特許文献1参照。)、しばしば商用車で走行駆動装置として使用されている。そのような用途では一方の押しのけユニットは通常は直接内燃機関によって駆動され、他方の被動側の押しのけユニットは当該走行機構と連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009058005A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、この先行技術から出発して、特に有利でエネルギー効率の高い運転特性を特徴とする油圧駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に従い冒頭に記載した種類の油圧駆動装置において、蓄圧器回路が存在し、これに押しのけユニットを連通する流体回路が接続されており、蓄圧器回路は少なくとも1個のアキュムレータを有して低圧側と高圧側とに区分されており、さらに全体システムを制御するためのバルブ制御装置が設けられていることによって解決される。このようなシステム構成によって純粋な駆動装置の機能を超えて、制動エネルギー回収以外にも、推進運転における制動エネルギー回収中の過回転数防止や駆動出力の油圧ブーストなどの他の特別機能も実現できる。
【0006】
有利には、両押しのけユニットは、それぞれの入口側でも出口側でもそれぞれ1本の作動管で互いに連通されて閉じた流体回路を形成しており、バルブ制御装置が実質的に両作動管の間に配置されているように設計できる。
【0007】
その際にバルブ制御装置は2個の第1のバルブ装置を有することができ、これらのバルブ装置は開放位置では両押しのけユニットをそれぞれの作動管を介して互いに連通し、遮断位置では少なくとも全体システムの高圧側を低圧側から切り離し、被動装置側の押しのけユニットは全体システムの低圧側に割り当てられ、駆動装置側の押しのけユニットは高圧側に割り当てられている。
【0008】
特に有利な実施形態において、両作動管と低圧側の蓄圧器回路との間には、それぞれ1個の逆流防止機能を有する第2のバルブ装置が配置されている。これらのバルブ装置の逆流防止機能により、走行駆動装置の運転中も最小圧力を伝達する圧力媒体が全体システム内に分布でき、それによって全体システム内でほぼ一定の低圧水準を保つことができる。
【0009】
特に有利には、両作動管と高圧側の蓄圧器回路との間に、それぞれ1個の比例制御機能を有する別の第3のバルブ装置を配置することができる。これによりそれぞれの作動管内で所望の作動圧力を比例調節する可能性が開け、さらに停止状態におけるアキュムレータ充填用の遮断バルブとして、またスタート・ストップ機能のために用いられる。
【0010】
特に有利な実施形態において、低圧蓄圧器回路で第2のバルブ装置と被動装置側の押しのけユニットとの間に恒久的流体容積供給管が接続されている。このような一定圧力供給により、低圧側がシステム固有の予圧水準に保たれることが確保される。全体システムもこの供給管を通して充満され、例えば圧力ピーク時に流体が圧力制限弁を通ってタンクに流出し、或いは漏れにより損失が生じる場合などに発生する容積損失が補償される。
【0011】
ここで特に有利には、恒久的流体容積供給管が送入管の入口に接続され、送入管が出口側でタンク内に開口するように構成することができる。その際に、送入管は連通部を介して低圧蓄圧器回路に恒久的に接続されており、連通部と送入管の入口との間には逆止め弁が配置され、連通部と送入管の出口との間には圧力制限弁が配置されている。
【0012】
さらに有利には、両作動管の間で両第1のバルブ装置と両第3のバルブ装置との間の管部分に、両第3のバルブ装置に対して平行に延びて2個の比例圧力制限機能を有する別の第4のバルブ装置を配置することができる。
【0013】
ここで有利には、第3のバルブ対と第4のバルブ装置に割当て可能な連通管の間に、別の逆止め弁が配置された別の連通管が延びることができる。
【0014】
特に有利には、蓄圧器回路のアキュムレータは、実質的にダブルピストンアキュムレータからなり、そのアキュムレータハウジング内で長手方向移動可能に案内されたダブルピストンは、予圧を有する第1の作動室を、高圧側にある第2の作動室と、低圧側にある第3の作動室と、大気圧を有する第4の作動室とから互いに分離している。この本発明による構造形態を通常は油圧システムの設置スペースが限られている走行ユニットで走行駆動装置に使用すると、ダブルピストンアキュムレータの2個の油圧アキュムレータの機能を発揮し、そのためシステムの特別コンパクトな構造形態を可能にするので非常に有利である。
【0015】
それぞれの押しのけユニットは、調節可能な旋回角度を有する
四象限システムからなることができ、このシステムは油圧モータとしても油圧ポンプとしても駆動可能であることが有利である。
【0016】
特許請求項13により、特に請求項1から12のいずれか1項に記載の油圧駆動装置として構成された全体システムのための部分システムとしてのバルブ制御装置も本発明の対象である。
【0017】
以下に本発明を図面に示した実施形態に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】走行駆動装置として設計された本発明による駆動装置の実施形態の全体システムのシステム図である。
【
図2】実施形態の配線の記号図であり、運転状態「停止中のアキュムレータ充填」に対して高圧側の流体経路は実線で記入され、低圧側の流体経路は破線で記入され、及び流動経過は流動矢印で暗示されている。
【
図3】
図2に対応する図であり、運転状態「走行運転中のアキュムレータ充填」が示されている。
【
図4】対応する図であり、運転状態「制動エネルギー回収/過回転数防止」が示されている。
【
図5】対応する図であり、運転状態「内燃機関始動」が示されている。
【
図6】対応する図であり、運転状態「ブースト」が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
最初に
図1を参照すると、駆動側の押しのけユニットは1で表され、被動側の押しのけユニットは3で表されている。各押しのけユニット1及び3は、旋回角度が調節でき完全旋回可能な
四象限システムの形態によるモータ・ポンプユニット5若しくは7を有している。駆動側の押しのけユニット1では、モータ・ポンプユニット5は駆動シャフト9を介して図示されていない内燃機関又は電動モータと連結されている。被動装置側の押しのけユニット3では、モータ・ポンプユニット7は駆動シャフト11を介して図示されていない自動車の走行機構(伝動装置)と連結されている。押しのけユニット1及び3の一方の接続部は第1の作動管13と連通し、押しのけユニット1、3のそれぞれ他方の接続部は第2の作動管15と連通している。これらの作動管13及び15に、全体として17で表したバルブ制御装置が割り当てられている。各押しのけユニット1及び3でモータ・ポンプユニット5及び7の両接続部はそれぞれシャトル弁19の入口と連通しており、その出口は圧力制限弁21を介してタンクTと連通している。そうすることによってモータ・ポンプユニット5及び7のそれぞれより高い圧力水準を伝達する接続部、並びにそれらと接続された作動管13及び15は、それぞれの圧力制限弁21によりタンク側に向かってシステム過圧に対して保護されている。
【0020】
バルブ制御装置17には、高圧側25と低圧側27を有する蓄圧器回路23が割り当てられている。高圧側25は連通部29でバルブ制御装置17と連通しており、低圧側27は連通部31でバルブ制御装置17と連通している。蓄圧器回路23はアキュムレータとして、油圧・空気圧式ダブルピストンアキュムレータ33を有している。そのアキュムレータハウジング37内で長手方向移動可能に案内されているダブルピストン35は、アキュムレータハウジング37内で予圧下にある作動ガス、特にN
2を有する第1の作動室39を、蓄圧器回路23の低圧側27と接続された第2の作動室41から、蓄圧器回路23の低圧側27と連通している第3の作動室43から、及び大気圧を有する第4の作動室45から分離している。低圧側27に追加して接続されて空気圧で与圧が掛けられた油圧アキュムレータ47は、不安定な事象が発生したり温度の影響を受けたりした場合に容積補償に用いられる。さらに、送入部49には図示されていない恒久的流体容積供給管が接続されており、これは送入管51及び逆止め弁53を通して連通部31と連通し、及びそうすることによって蓄圧器回路23の低圧側27と連通している。送入管51は連通部31から圧力制限弁55を通ってタンクTに向かって進む。この一定圧力供給により、低圧側27がシステム固有の予圧水準に保たれること、及び例えば圧力ピークで流体が圧力制限弁21及び/又は55を通ってタンクTに流出した場合に、容積損失を補償するために全体システムが送入管51を通して充満されることが確保される。
【0021】
バルブ制御装置17は作動管13、15内に1対の第1のバルブ装置を有しており、これらのバルブ装置はそれぞれいずれも逆流防止機能を有する2方向切替弁57若しくは58によって形成されており、それらの開放位置では両モータ・ポンプユニット5及び7を互いに連通し、それらの遮断位置では全体システムのそれぞれの高圧側を低圧側から切り離す。その際に、逆流防止機能の向きに応じて、押しのけユニット1は全体システムの高圧側に割り当てられ、押しのけユニット3は低圧側に割り当てられている。作動管13及び15と蓄圧器回路23の低圧側27との間には、1対の第2のバルブ装置が配置されており、それぞれ同様にいずれも逆流防止機能を有する2方向切替弁59若しくは60によって形成されている。さらに作動管13及び15と、蓄圧器回路23の高圧側25の連通部29との間には、比例及び遮断機能を有する1対の第3のバルブ装置が配置されており、それぞれ1個の2方向切替弁61若しくは62から形成されている。
【0022】
切替弁57若しくは58と切替弁61若しくは62との間の作動管13、15の管部分には、切替弁61若しくは62に対して平行に1対の別の第4のバルブ装置が配置されており、それぞれ比例圧力制限機能を有する圧力制限弁63若しくは64によって形成されている。蓄圧器回路23の高圧側25の連通部29と、圧力制限弁63及び64を結ぶ連通管67との間には、別の逆止め弁69が配置されている。全体システムは、連通部29と連通部31、即ち蓄圧器回路23の接続部の間に延びる連通管73内にある圧力制限弁71によって完全なものとなる。
【0023】
以下の
図2〜
図6には、これから説明する複数の運転状態に対する流体経路が示されている。ここで蓄圧器回路23の高圧側25とそれぞれ連通している流体経路は実線で示され、低圧側27に属する流体経路は破線で表され、流動経過は流動矢印で示されている。
【0024】
図2は、走行駆動装置を停止してダブルピストンアキュムレータ33に充填する運転状態を示している。充填のための前提は、内燃機関が作動しており、アキュムレータ容積が空いていることである。停止中の走行駆動装置ではモータ・ポンプユニット5及び7は最初に吸込み容積のないニュートラル位置にあるので、圧力流体はこれらのユニットを通って流れない。充填過程のための容積流を用意するために、モータ・ポンプユニット5を開放旋回させ、比例切替弁62を最大変位に切り替え、バルブ58も同様にする。吐出し過程のために開放旋回したモータ・ポンプユニット5は第1の作動管13から容積を吸引して、この容積はダブルピストンアキュムレータ33の低圧側の第3の作動室43から出て、連通部31を通って流れ、逆流防止機能が開くように切り替わった切替弁59と、開いた切替弁57を通ってモータ・ポンプユニット5に到達する。吐き出された容積は、最大限操作された切替弁62を通ってダブルピストンアキュムレータ33の高圧側の作動室41に到達する。このとき圧力制限弁64は容積流がそれを通って流れるのを防ぐために少なくとも第2の作動管15内の充填圧力に調節されている。最大アキュムレータ圧力を超えると圧力制限弁71が切り替わり、充填容積流は低圧側27に流出する。そこから容積流は切り替わった切替弁59の逆流防止機能を経て第1の作動管13に到達し、それによって容積バランスを平衡させる。
【0025】
図3は、走行運転中にダブルピストンアキュムレータ33に充填する運転状態を示している。充填のための前提は、やはり内燃機関が作動しており、アキュムレータ容積が空いていることである。走行運転中は両押しのけユニット1及び3においてモータ・ポンプユニット5及び7が開放旋回しており、圧力媒体が押しのけユニット1と押しのけユニット3の間を循環する。充填過程に必要な容積流を生み出すために、押しのけユニット1のモータ・ポンプユニット5はさらに開放旋回し、それによって第2の作動管15には、第2の押しのけユニット3によって吸収できるより多くの容積が送入される。そうすると作動管15内の圧力が上昇する。圧力制限弁64で調節された切替圧力に達すると、容積は後段に配置された逆止め弁69を通ってダブルピストンアキュムレータ33の高圧側の作動室41に到達して、これに充填する。ダブルピストンアキュムレータ33内で作動室43の低圧側に押しのけられた容積は、切り替わった切替弁59の逆流防止機能を経て第1の作動管13に流れ、そこで走行運転中に循環している容積と合流する。最大アキュムレータ圧力を超えると、圧力制限弁71が切り替わって充填容積流を低圧側27に導き、そこから充填容積流は切替弁59の逆流防止機能を経て第1の作動管13に送られ、それによって容積バランスが平衡する。
【0026】
図4は、運転状態「制動エネルギー回収/過回転数防止」を示している。制動エネルギーの回収と蓄積のための前提は、ダブルピストンアキュムレータ33内のアキュムレータ容積が利用可能で、自動車が動いていることである(運動エネルギー)。内燃機関が過負荷/過回転数から保護されなければならない理由は、自動車に作用する力、例えば潜在エネルギーはたいてい勾配があるからである。動いている走行駆動装置において圧力媒体が、
図4の表現で時計と反対方向に循環しているとき、走行速度とエンジン回転数は減速又は維持されるべきである。走行運転中は両押しのけユニット1及び3は活動しており、モータ・ポンプユニット5及び7は完全に又は部分的に開放旋回している。
【0027】
制動エネルギー回収のため、又は内燃機関を過負荷/過回転数から保護するために、押しのけユニット1のモータ・ポンプユニット5を戻し旋回して、シャフト9に作用するトルクを、内燃機関に作用する負荷が過回転を引き起こせなくなるまで減少させる。これに対応して第1の作動管13内の圧力が上昇する。なぜなら第2の押しのけユニット3は、押しのけユニット1がなおも吸収できるより多く吐き出すからである。この上昇する圧力はやはり押しのけユニット3内に制動モーメントを生み出して自動車を減速させる。したがってこれも制動エネルギーと呼ぶことができる。この場合に圧力制限弁63は調節された切替圧力で切り替わり、それによって作動管13内の圧力を制限する。圧力制限弁63を通過する容積は、逆止め弁69を通ってダブルピストンアキュムレータ33の高圧側25に流れて、これに充填する。ダブルピストンアキュムレータ33内で押しのけられた容積は、低圧側27から切替弁60を通り作動管15に向かって流れる。最大アキュムレータ圧力を超えると圧力制限弁71が切り替わり充填容積流を低圧側27に導く。そこから容積バランスを平衡させるために、容積は切り替わった切替弁60の逆流防止機能を経て作動管15に導かれる。さらにダブルピストンアキュムレータ33から押しのけられた低圧側27の容積も、切替弁60を通って作動管15に向かって流れる。作動管15内で合流する全容積は、このとき押しのけユニット3のモータ・ポンプユニット7の吸込み側に向かって流れ、それによってシステムの容積バランスは一定のままである。
【0028】
図5は、運転状態「内燃機関の始動」を示している。内燃機関の油圧始動/スタートのための前提は、ダブルピストンアキュムレータ33内に油圧エネルギーが蓄積されていることである。その際に、内燃機関及び全走行駆動装置は停止されており、押しのけユニット1、3のモータ・ポンプユニット5及び7は最初にニュートラル位置にある。始動手順を開始すると、押しのけユニット1のモータ・ポンプユニット5は完全に開放旋回する。続いて切替弁61及び60が切り替わり、その際に第2の押しのけユニット3で圧力ピークを回避するために切替弁57を切り替えることができる。このとき圧力媒体はダブルピストンアキュムレータ33の高圧側作動室41から切替弁61を通って作動管13に流れ、さらに第1の押しのけユニット1に向かって流れる。圧力制限弁63は容積流がそれを通って流れるのを防ぐために少なくとも作動管13内のアキュムレータ圧力に調節されているべきである。押しのけユニット1内で油圧エネルギーが機械的エネルギーに変換されて、シャフト9に始動トルクを生み出す。押しのけユニット1を通って流れる容積流は作動管15に向かって流れ、切替弁58及び切替弁60を通って最後にダブルピストンアキュムレータ33の低圧側27に向かって流れ、そこで事前に高圧側25で押しのけられた容積に取って代わる。
【0029】
図6は、運転状態「ブースト」を示している。駆動装置の油圧ブーストのための前提は、油圧アキュムレータ内に油圧エネルギーが蓄積されていることである。このとき走行駆動装置は動いて圧力媒体は押しのけユニット1と押しのけユニット3との間を時計と反対方向に循環している。例えば急な坂道のために駆動装置に突然負荷ピークが作用すると駆動装置のブーストが起こり、その間は両押しのけユニット1及び3のモータ・ポンプユニット5及び7が完全又は部分的に開放旋回している。ブーストのために最初に切替弁57が切り替わり、続いて切替弁61及び59が切り替わる。切替弁57が先に切り替わることにより、圧力勾配が発生しても圧力媒体が切替弁57を通って所定の方向にしか流れられないことが確保される。圧力制限弁63は容積流がそれを通って流れるのを防ぐために少なくとも作動管13内の作動圧力に調節されているべきである。切替弁61及び59が切り替わることにより、圧力媒体はダブルピストンアキュムレータ33の高圧側25から切替弁61を通って作動管13に向かって流れ、そして直ちにさらに押しのけユニット1に向かって流れる。そうすることによって押しのけユニット1のモータ・ポンプユニット5の吸込み側の圧力水準が引き上げられる。これにより押しのけユニット1の圧力側(作動管15内)で必要な圧力を用意するために、内燃機関によって供給されるべき必要な機械的出力は小さくなり、内燃機関の負荷が軽減される。圧力媒体は押しのけユニット1から作動管15を通って切替弁58を経て第2の押しのけユニット3に向かって流れ、そこで油圧エネルギーは機械的エネルギーに変換されて、さらに走行機構に送られる。ここで圧力制限弁64は容積流がそれを通って流れるのを防ぐために少なくとも作動管15内の作動圧力に調節されていることが必要である。第1の押しのけユニット1から出た圧力媒体は作動管15を通って押しのけユニット7を通過し、切替弁59を通ってさらにダブルピストンアキュムレータ33の低圧側27に向かって流れ、そこで事前に高圧側25で押しのけられた容積に取って代わる。
【0030】
本発明は、作動管13内の所望の作動圧力を比例調節する可能性を提供する。このために比例的に作動する切替弁61が所望の圧力に調節されて、相応の開放断面を空ける。上述したすべての過程でシステムの容積バランスは変わらない。単に容積がダブルピストンアキュムレータ33の一方の側から蓄圧器回路23及び押しのけユニット1、3を通って他方の側に送られ、その際にエネルギーを放出若しくは吸収され、蓄積される。このようにして完結した走行駆動装置システムが実現されている。逆止め弁53は閉止弁として、主としてシステムの充満過程の間は貫流され、ダブルピストンアキュムレータ33の低圧側27が、両作動管13及び15と共に調節されたシステム最小圧力に下がると、直ちに送入部49からの一定した容積供給を遮断する。ただし、後でダブルピストンアキュムレータ33の容積を「積み替える」際に追加の容積は必要なくなる。これにより圧力制限弁55は閉じたままである。これは単に低圧側27の圧力確保に役立つものであり、他の機能を考察する際には無視できる。同様のことは、ダブルピストンアキュムレータ33の高圧側25の最大圧力を制限する圧力制限弁71にも該当する。
【0031】
負荷ピークは走行駆動装置からだけでなく、油圧ポンプが原則として押しのけユニット1の駆動シャフト9によって駆動されている油圧作動装置の機能によっても内燃機関に生じることがある。上記のブースト過程により、この内燃機関に作用する負荷ピークも受け止めることができる。1対の切替弁61及び62が、好ましくは割り当てられたバルブブロックにおいて機能的に分離された2個のユニットとして実施されている。その際に、内燃機関のスタート時に高圧側25を作動管13及び押しのけユニット1に接続するために、各ユニットに対して複座式の2方向切替弁を設けることができ、また作動管13、15の圧力を調節することができるようにするために、比例圧力調節弁を設けることができる。さらに、停止中にアキュムレータに充填するために、比例弁62の代わりに閉止弁を使用できる。
【0032】
両機能を組み合わせることはむしろ問題があることが分かった。なぜなら内燃機関のスタート時にはできるだけ大きい断面が開放されなければならず(圧力損失を少なくするため)、圧力調節機能においてははるかに小さい断面と高い解像度(微細制御エッジ)が必要だからである。ただし、押しのけユニット1及び3の種々の可能な設計(例えば一定、可変、又はムアリングポンプとして)において、或いはまた走行駆動装置の種々の機能(例えば前進時とムアリングポンプのない後退時のブースト、又は前進時のみのブースト)において、切替弁61及び62の機能ユニットは、上記の両機能のうちそれぞれ必要な一方の機能のみで実施することもできる。相応に大きい容積流の場合は、バルブ制御装置17のすべての機能ユニットをパイロット制御されたバルブの解決策として実施すべきであろう。
【0033】
さらに付言すると、全体システムは鏡面対称に構成されており、上記のすべての機能は相応に反転して進行することもできる。低圧側と高圧側が定義されている場合、そのような定義はそれぞれの運転状態に依存しており、相応に変化できる。前述したバルブ装置57及び58はそれらの機能から本来逆止め弁と見なすこともできる。本発明による駆動装置の解決策により、ダブルピストンアキュムレータの影響と、低圧側におけるダイヤフラム形アキュムレータの追加的な補償容積(容量)によって、低圧側のほぼ一定の圧力水準が達成されている。この一定の圧力水準はバルブブロックにおける幾つかのパイロット制御の基準圧力としても用いられる。本発明の別の本質的な点は、ブースト運転における吸込み側作動管のシステムの大きさに依存しない比例調節可能な圧力制限である。さらに推進運転(運動エネルギー及び/又は潜在エネルギー)において作動管のシステムの大きさに依存しない比例調節可能な圧力制限が達成されている。