特許第6810058号(P6810058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6810058抗cd3ホモ二量体を検出するための細胞に基づくアッセイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810058
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】抗cd3ホモ二量体を検出するための細胞に基づくアッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6897 20180101AFI20201221BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20201221BHJP
   C12N 15/52 20060101ALN20201221BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20201221BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20201221BHJP
   C12N 9/02 20060101ALN20201221BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20201221BHJP
   C12N 9/86 20060101ALN20201221BHJP
   C12N 9/38 20060101ALN20201221BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
   C12Q1/6897 ZZNA
   C12Q1/06
   !C12N15/52 Z
   !C12N5/10
   !C07K16/46
   !C12N9/02
   !C12N9/16 B
   !C12N9/86
   !C12N9/38
   !C07K16/28
【請求項の数】17
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2017-561777(P2017-561777)
(86)(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公表番号】特表2018-521635(P2018-521635A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】US2016034868
(87)【国際公開番号】WO2016191750
(87)【国際公開日】20161201
【審査請求日】2019年5月27日
(31)【優先権主張番号】62/167,761
(32)【優先日】2015年5月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キャリー, ケンドール
【審査官】 北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】 British Journal of Cancer,2001年,Vol.84, No.8, p.1115-1121
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
C07K 1/00−19/00
C12N 15/00−15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞依存性二重特異性抗体(TDB)を含む組成物中の抗CD3ホモ二量体を検出するための方法であって、前記二重特異性抗体が、標的抗原結合断片とCD3結合断片とを含み、前記方法が、
T細胞の集団であって、前記T細胞が、T細胞活性化に応答する応答エレメントに作動可能に連結されたレポーターをコードする核酸を含み、前記T細胞の集団が、標的抗原を発現する細胞を含まない、前記T細胞の集団を前記組成物と接触させることを含み、
前記レポーターの発現が、抗CD3ホモ二量体の存在を示す、前記方法。
【請求項2】
TDBを含む組成物中の抗CD3ホモ二量体抗体の量を定量化するための方法であって、前記TDBが、標的抗原結合断片とCD3結合断片とを含み、前記方法が、
T細胞の集団であって、前記T細胞が、T細胞活性化に応答するプロモーターに作動可能に連結されたレポーターをコードする核酸を含み、前記T細胞の集団が、前記標的抗原を発現する細胞を含まない、前記T細胞の集団を前記TDBの1つ以上の濃度で前記組成物と接触させること、
前記T細胞を、異なる濃度の精製された抗CD3ホモ二量体と接触させることにより生成される標準曲線に、抗体濃度の関数としての前記レポーターの発現を相関させることを含む、前記方法。
【請求項3】
前記標準曲線が、前記T細胞を、約0.01ng/mL〜約50ng/mLの範囲である異なる濃度の精製された抗CD3抗体と接触させることにより生成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レポーターが、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ルシフェラーゼが、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ(Renilla luciferase)、またはナノルシフェラーゼである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
T細胞活性化に応答する応答エレメントが、NFATプロモーター、AP−1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
T細胞活性化に応答する前記応答エレメントが、NFAT、AP−1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのいずれか1つ以上からのT細胞活性化応答性エレメントを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(i)前記T細胞の集団が、CD4+T細胞またはCD8+T細胞の集団である、または(ii)前記T細胞の集団が、Jurkat T細胞またはCTLL−2 T細胞の集団である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
T細胞の集団が、0.01ng/mL〜50ng/mLの範囲である濃度で前記二重特異性抗体を含む組成物と接触させられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記レポーターが、前記細胞を前記組成物と接触させた後、1、2、3、4、5、6、7、8、12、16、20、または24時間後のいずれか1つ以上に検出される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
二重特異性抗体を含む組成物中の抗CD3ホモ二量体の検出のためのキットであって、前記二重特異性抗体が、標的抗原結合断片とCD3結合断片とを含み、前記キットが、操作されたT細胞を含み、前記T細胞が、T細胞活性化に応答する応答エレメントに作動可能に連結されたレポーターを含む、前記キット
【請求項12】
前記レポーターが、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである、請求項11に記載のキット
【請求項13】
前記ルシフェラーゼが、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼである、請求項12に記載のキット
【請求項14】
T細胞活性化に応答する前記応答エレメントが、NFATプロモーター、AP−1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである、請求項11〜13のいずれか一項に記載のキット
【請求項15】
T細胞活性化に応答する前記応答エレメントが、NFAT、AP−1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのいずれか1つ以上からのT細胞活性化応答性エレメントを含む、請求項14に記載のキット
【請求項16】
(i)前記T細胞の集団が、CD4+T細胞またはCD8+T細胞の集団である、または(ii)前記T細胞の集団が、Jurkat T細胞またはCTLL−2 T細胞の集団である、請求項11〜15のいずれか一項に記載のキット
【請求項17】
抗CD3ホモ二量体アッセイ標準物及び/または抗CD3ホモ二量体対照をさらに含む、請求項11〜16のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年5月28日出願の米国仮特許出願第62/167,761号の利益を主張し、この開示は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
ASCIIテキストファイルでの以下の提出物の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:コンピュータ可読形式(CRF)の配列表(ファイル名:146392022940SEQLISTING.txt、記録日:2016年5月26日、サイズ:17KB)。
【0003】
本発明は、多重特異性抗体の少なくとも1つの抗原結合断片がCD3に結合する多重特異性抗体の調製物を分析するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、多重特異性抗体の少なくとも1つの抗原結合断片がCD3に結合する、1つ以上の多重特異性抗体の組成物中の抗CD3ホモ二量体の存在を決定するための方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
T細胞依存性二重特異性(TDB)抗体は、多くの場合、T細胞受容体のCD3eサブユニットに結合することにより、細胞上で発現される標的抗原に結合し、かつT細胞に結合するように設計される。二重特異性抗体のT細胞の標的抗原及びCD3への両方の細胞外ドメインへの結合は、T細胞活性化及び標的細胞減損をもたらす標的細胞へのT細胞動員をもたらす。標的細胞の不在下で、単一の抗CD3アームは、TCRを架橋して、T細胞活性化及び標的細胞死滅を誘導することができない。抗CD3ホモ二量体は、TDB抗体の製造プロセス中に形成され、標的細胞の存在下または不在下で、TCRを架橋すること及び低レベルのT細胞活性化を誘導できる産生物関連不純物である。抗CD3ホモ二量体は、インビトロでのTDBの生物学的有効性の減少をもたらし得る高レベルで存在する場合、治療の効能にも影響を与え得る。抗CD3ホモ二量体は、標的細胞の不在下での低レベルのT細胞活性化及びT細胞による炎症性サイトカインを誘導することにより、オフターゲット効果を有し得る。したがって、TDBの製造プロセス中に存在するT細胞活性化産生物関連変異体のレベルを制御することが望ましい場合があり、感受性がある再現可能で定量的な不純物アッセイ方法が、安全かつ効能がある臨床薬物候補の開発を支援するために、精製された産生物中に存在し得る抗CD3ホモ二量体を検出するために必要とされる。
【0005】
不純物アッセイは、産生物/プロセス関連不純物と、所望の産生物とを区別できることが必要である。チャイニーズハムスター卵巣細胞タンパク質(CHOP)不純物検出のための多くの従来の手法は、結合アッセイフォーマット手法を使用し、ここで、プロセス関連CHOタンパク質の存在が、産生物の純度及び安全性を評価するために産生物中で高感度で検出され得る。これらのCHOP抗体は、CHOPタンパク質に対して特異的であるが、産生物を認識しないため、概して、最終産生物の存在下で不純物を高感度に検出することに影響がでない。二重特異性抗体に関しても同様の手法が使用され得るが、但し、最終産生物と不純物とを区別する抗体が特定され得ることを条件とする。有用な抗CD3ホモ二量体結合アッセイフォーマットの実行は、この抗原に関して可能ではない場合がある、高度に特異的な抗体、または概して他の二重特異性抗体の開発を必要とするであろう。代替的な生理化学に基づく方法(RP−HPLC、Mass Spec)も産生物関連不純物を検出するために使用され、産生物から産生物関連不純物を十分に分離する能力に依存し、それにより、存在する不純物の量を検出する。不純物の量は、材料中に存在する他の種に対して、または変異体標準物に添加し、存在する材料の添加した標準物に対するパーセントを比較することにより検出される。しかし、これらの方法の多くは、所望の産生物材料から変異体を分離するために追加の試料の取扱い及びプロセスステップを伴い得、これらのステップは材料を改変し得るか、または方法の感受性及び正確性を限定し得る。さらに、二重特異性試験物(精製された産生物、DS、DP、安定性試料、負荷試料)中に存在し得る任意の抗CD3ホモ二量体である産生物関連不純物または他の潜在的なT細胞活性化不純物の構造的なアイソフォームが、適切な危険性を不純物に割り当てるように生物学的に活性であることを理解することも望ましい。本明細書に記載される新規の抗CD3ホモ二量体アッセイ手法は、生物学的に活性な抗CD3ホモ二量体不純物を検出するための細胞に基づく手法を使用し、それにより、結合アッセイまたは生理化学に基づくフォーマットを使用する二重特異性調製物中のホモ二量体不純物検出に関する問題及び限界を回避する。
【0006】
特許出願及び公報を含む本明細書で引用される全ての参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、T細胞依存性二重特異性抗体(TDB)を含む組成物中の抗CD3ホモ二量体を検出するための方法を提供し、ここで、二重特異性抗体は、標的抗原結合断片とCD3結合断片とを含み、本方法は、T細胞の集団を本組成物と接触させることを含み、T細胞は、T細胞活性化に応答する応答エレメントに作動可能に連結されるレポーターをコードする核酸を含み、T細胞の集団は、標的抗原を含まず、レポーターの発現は、抗CD3ホモ二量体の存在を示す。
【0008】
上記の実施形態のうちのいくつかの実施形態において、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。さらなる実施形態において、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、T細胞活性化に応答する応答エレメントは、NFATプロモーター、AP−1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態において、T細胞活性化に応答する応答エレメントは、NFAT、AP−1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのいずれか1つ以上からのT細胞活性化応答性エレメントを含む。
【0009】
上記の実施形態のうちのいくつかの実施形態において、T細胞の集団は、CD4T細胞またはCD8T細胞の集団である。いくつかの実施形態において、T細胞の集団は、Jurkat T細胞またはCTLL−2 T細胞の集団である。
【0010】
上記の実施形態のうちのいくつかの実施形態において、T細胞の集団は、0.01ng/mL〜50ng/mLの範囲である濃度で二重特異性抗体を含む組成物と接触される。いくつかの実施形態において、レポーターは、細胞を本組成物と接触させた後、1、2、3、4、5、6、7、8、12、16、20、または24時間後のいずれか1つ以上に検出される。
【0011】
いくつかの態様において、本発明は、TDBを含む組成物中の抗CD3ホモ二量体抗体の量を定量化するための方法を提供し、ここで、TDBは、標的抗原結合断片とCD3結合断片とを含み、本方法は、T細胞が、T細胞活性化に応答するプロモーターに作動可能に連結されたレポーターをコードする核酸を含み、T細胞の集団が、標的抗原を含まない、T細胞の集団をTDBの1つ以上の濃度で本組成物と接触させること、抗体濃度の関数としてのレポーターの発現を、T細胞を、異なる濃度の精製された抗CD3ホモ二量体と接触させることにより生成される標準曲線と相関させることを含む。
【0012】
組成物中の抗CD3ホモ二量体抗体の量の上記の定量化のいくつかの実施形態において、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。さらなる実施形態において、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼである。
【0013】
組成物中の抗CD3ホモ二量体抗体の量の上記の定量化のいくつかの実施形態において、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。さらなる実施形態において、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、T細胞活性化に応答する応答エレメントは、NFATプロモーター、AP−1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態において、T細胞活性化に応答する応答エレメントは、NFAT、AP−1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのいずれか1つ以上からのT細胞活性化応答性エレメントを含む。
【0014】
上記の実施形態のうちのいくつかの実施形態において、T細胞の集団は、CD4T細胞またはCD8T細胞の集団である。いくつかの実施形態において、T細胞の集団は、Jurkat T細胞またはCTLL−2 T細胞の集団である。
【0015】
上記の実施形態のうちのいくつかの実施形態において、T細胞の集団は、0.01ng/mL〜50ng/mLの範囲である濃度で二重特異性抗体を含む組成物と接触される。いくつかの実施形態において、レポーターは、細胞を本組成物と接触させた後、1、2、3、4、5、6、7、8、12、16、20、または24時間後のいずれか1つ以上に検出される。
【0016】
いくつかの態様において、本発明は、二重特異性抗体を含む組成物中の抗CD3ホモ二量体の検出のための操作されたT細胞を提供し、ここで、二重特異性抗体は、標的抗原結合断片とCD3結合断片とを含み、T細胞は、T細胞活性化に応答する応答エレメントに作動可能に連結されたレポーターを含む。
【0017】
上記の態様のいくつかの実施形態において、T細胞は、レポーターを含み、ここで、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。さらなる実施形態において、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼである。
【0018】
上記の実施形態のうちのいくつかの実施形態において、T細胞は、レポーターを含み、ここで、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。さらなる実施形態において、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、T細胞活性化に応答する応答エレメントは、NFATプロモーター、AP−1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態において、T細胞活性化に応答する応答エレメントは、NFAT、AP−1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのいずれか1つ以上からのT細胞活性化応答性エレメントを含む。
【0019】
上記の実施形態のうちのいくつかの実施形態において、T細胞の集団は、CD4T細胞またはCD8T細胞の集団である。いくつかの実施形態において、T細胞の集団は、Jurkat T細胞またはCTLL−2 T細胞の集団である。
【0020】
いくつかの態様において、本発明は、二重特異性抗体を含む組成物中の抗CD3ホモ二量体の検出のためのキットを提供し、ここで、二重特異性抗体は、標的抗原結合断片とCD3結合断片とを含み、本キットは、T細胞活性化に応答する応答エレメントに作動可能に連結されたレポーターを含む操作されたT細胞を含む。いくつかの実施形態において、本キットは、抗CD3ホモ二量体アッセイ標準物及び/または抗CD3ホモ二量体対照をさらに含む。
【0021】
上記のキットのいくつかの実施形態において、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。さらなる実施形態において、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼである。
【0022】
上記のキットのいくつかの実施形態において、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、ベータラクタマーゼ、またはベータガラクトシダーゼである。さらなる実施形態において、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、T細胞活性化に応答する応答エレメントは、NFATプロモーター、AP−1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態において、T細胞活性化に応答する応答エレメントは、NFAT、AP−1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのいずれか1つ以上からのT細胞活性化応答性エレメントを含む。
【0023】
上記のキットのいくつかの実施形態において、T細胞の集団は、CD4T細胞またはCD8T細胞の集団である。いくつかの実施形態において、T細胞の集団は、Jurkat T細胞またはCTLL−2 T細胞の集団である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A図1A及び1Bは、CD20 TDB(αCD20(Mab2;VH配列番号:31/VL配列番号:32)/αCD3(Mab1;VH配列番号:19/VL配列番号:20))が、T細胞活性化及び標的細胞死滅を誘導するために抗原CD20発現標的細胞を必要とすることを示す。図1Aは、CD69及びCD25の発現により測定される場合にCD8細胞の活性化を示す。丸は、標的細胞を含む試料を表し、四角は、T細胞を含有するが標的細胞を含有しない試料を表す。
図1B図1A及び1Bは、CD20 TDB(αCD20(Mab2;VH配列番号:31/VL配列番号:32)/αCD3(Mab1;VH配列番号:19/VL配列番号:20))が、T細胞活性化及び標的細胞死滅を誘導するために抗原CD20発現標的細胞を必要とすることを示す。図1Bは、T細胞の存在下での(丸)またはCD3+T細胞がPBMCプールから減損された試料中(四角)の標的細胞の死滅を示す。
図2】抗CD3ホモ二量体が、ヒト供与体T細胞を活性化し得ることを示す。2つの異なる供与体からのヒトPBMCを、精製された抗CD3ホモ二量体(三角)またはCD20 TDB(丸)の増加量で処理した。T細胞活性化を、ヒトCD8細胞の集団中のCD69細胞%により測定した。CD20 TDBに対するEC50は、供与体1からの細胞に関して5.5ng/mL及び供与体2からの細胞に関して4.4ng/mLであった。抗CD3ホモ二量体に対するEC50は、供与体1からの細胞に関して526ng/mL及び供与体2からの細胞に関して169ng/mLであった。
図3A】抗CD3ホモ二量体が、CD20 TDBの有効性を減少し得ることを示す。CD20 TDBを多様な量の抗CD3ホモ二量体とともに添加し、標的細胞(四角)及びT細胞(ひし形)の応答を測定した。
図3B】CD20 TDBに添加した低レベルの抗CD3ホモ二量体が、CD8T細胞活性化(左パネル)またはCD4T細胞活性化(右パネル)を著しく低減しないことを示す。CHO TDBは、丸で表され、CHO TBD+2.5%HDは、四角で表され、CHO TBD+5%HDは、三角で表される。
図4A】抗CD3ホモ二量体が、標的細胞の不在下での多様なヒト供与体からのヒトCD8T細胞を弱く活性化し得ることを示す。
図4B】ヒトT細胞の抗CD3ホモ二量体の活性化が、いくつかの代表的なサイトカインの増加に対して用量依存傾向を示すことを示す。平均サイトカインレベル応答がプロットされている。
図4C】ヒトT細胞の抗CD3ホモ二量体の活性化が、いくつかの代表的なサイトカインの増加に対して用量依存傾向を示すことを示す。平均サイトカインレベル応答がプロットされている。
図4D】ヒトT細胞の抗CD3ホモ二量体の活性化が、いくつかの代表的なサイトカインの増加に対して用量依存傾向を示すことを示す。平均サイトカインレベル応答がプロットされている。
図4E】ヒトT細胞の抗CD3ホモ二量体の活性化が、いくつかの代表的なサイトカインの増加に対して用量依存傾向を示すことを示す。平均サイトカインレベル応答がプロットされている。
図5A】抗CD3ホモ二量体によるT細胞活性化が、レポーター遺伝子アッセイを使用して監視され得ることを示す。ヒトJurkat CD4T細胞株を、多様なT細胞受容体(TCR)応答転写応答エレメント(AP−1、NFAT、及びNFκB)により促進されるホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定して発現するように遺伝子操作し、安定細胞プールを選択し、10μg/mLの精製された抗CD3ホモ二量体を用いた4時間の処理に対する応答に関してプールを評価した。発光応答(ルシフェラーゼレポーター遺伝子活性)をプロットし、最も高い応答は、Jurkat/NFκBルシフェラーゼ安定プールから観察された。
図5B】Jurkat/NFκBルシフェラーゼ安定クローンを示す。
図6A図6A及び6Bは、精製された抗CD3ホモ二量体が、標的細胞の存在下または不在下でT細胞を活性化し得ることを示す。図6Aは、T細胞を活性化するのに可能性のある精製されたCD20 TDB及び精製された抗CD3ホモ二量体の比較を示す。NFκBルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するJurkat T細胞を、標的抗原発現細胞の存在下でCD20 TDBにより用量依存的に活性化する。CD20 TDBは、標的抗原発現細胞株の存在下でJurkat/NFκB−ホタルルシフェラーゼ細胞を活性化する。精製されたCD20 TDBは、共刺激標的抗原発現細胞の存在下で、精製された抗CD3ホモ二量体の1000倍活性している。
図6B図6A及び6Bは、精製された抗CD3ホモ二量体が、標的細胞の存在下または不在下でT細胞を活性化し得ることを示す。図6Bは、標的抗原発現細胞(四角)の不在下において、CD20 TDBが、Jurkat/NFκBルシフェラーゼ細胞を活性化しないが、精製された抗CD3ホモ二量体は、NFκB−依存性ルシフェラーゼ活性(ひし形)を用量依存的に誘導することを示す。
図7】CD20 TDB試料中に存在する抗CD3ホモ二量体の計算を示す。発光プレートリーダー(RLU)により測定される場合、Jurkat/NFκBLuc試料で処理した細胞から観察されたルシフェラーゼ活性を、既知量の抗CD3ホモ二量体により生成されるT細胞活性化応答と比較する。試料中に存在する抗CD3ホモ二量体の濃度を解明するために、ホモ二量体標準物応答に適合される曲線から導かれた等式が使用される。次いで、試料中に存在するCD20 TDBの総量で除算した試料中で検出されたホモ二量体の比から、試料中に存在する抗CD3ホモ二量体のパーセンテージを決定する。
図8】抗CD3T細胞活性化アッセイが、0.25%〜35%のCD20 TDB試験試料に対して正確であることを示す。抗CD3ホモ二量体の添加回収は、分析方法が、0.99のR、1.05の傾斜、及び0.078のyイントを以って、方法の範囲にわたって線状であることを示し、最小の偏向を示す。
図9】T細胞活性化アッセイが、他の産生物関連不純物を検出できることを示す。CD20 TDB材料中に存在するHMWSのレベルは、ホモ二量体アッセイにおいてT細胞活性化に影響を与える。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、T細胞依存性二重特異性抗体(TDB)を含む組成物中の抗CD3ホモ二量体を検出するための方法を提供し、ここで、二重特異性抗体は、標的抗原結合断片とCD3結合断片とを含み、本方法は、T細胞の集団を本組成物と接触させることを含み、T細胞は、T細胞活性化に応答するプロモーターに作動可能に連結されるレポーターをコードする核酸を含み、T細胞の集団は、標的抗原を含まず、レポーターの発現は、抗CD3ホモ二量体の存在を示す。
【0026】
いくつかの態様において、本発明は、TDBを含む組成物中の抗CD3ホモ二量体抗体の量を定量化するための方法を提供し、ここで、TDBは、標的抗原結合断片とCD3結合断片とを含み、本方法は、T細胞が、T細胞活性化に応答するプロモーターに作動可能に連結されたレポーターをコードする核酸を含み、T細胞の集団が、標的抗原を含まない、T細胞の集団をTDBの1つ以上の濃度で本組成物と接触させること、抗体濃度の関数としてのレポーターの発現を、T細胞を、異なる濃度の精製された抗CD3ホモ二量体と接触させることにより生成される標準曲線と相関させることを含む。
【0027】
他の態様において、本発明は、TDBを含む組成物中の抗CD3ホモ二量体の検出のための操作されたT細胞を提供し、ここで、TDBは、標的抗原結合断片とCD3結合断片とを含み、T細胞は、T細胞活性化に応答するプロモーターに作動可能に連結されたレポーターを含む。
【0028】
他の態様において、本発明は、TDBを含む組成物中の抗CD3ホモ二量体の検出のためのキットを提供し、ここで、TDBは、標的抗原結合断片とCD3結合断片とを含み、キットは、T細胞活性化に応答するプロモーターに作動可能に連結されたレポーターを含む操作されたT細胞を含む。
【0029】
I.定義
「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。ポリマーは、線状または分岐状であってもよく、それは、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸により中断されていてもよい。これらの用語は、自然にまたは介入、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識構成成分もしくは毒素とのコンジュゲーションにより修飾されているアミノ酸ポリマーも包含する。例えば、アミノ酸(例えば、非天然アミノ酸などを含む)の1つ以上の類似体を含有するポリペプチド、及び当技術分野で既知の他の修飾もこの定義に含まれる。「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体を具体的に包含する。
【0030】
「精製された」ポリペプチド(例えば、抗体またはイムノアドヘシン)は、ポリペプチドがその天然環境下で存在するよりも純粋である形態で存在するように、かつ/または実験室条件下で最初に合成及び/もしくは増幅されたときに純度が増加することを意味する。純度は、相対用語であり、必ずしも絶対純度を意味しない。
【0031】
「アンタゴニスト」という用語は、最も広義に使用され、天然ポリペプチドの生物活性を部分的または完全に遮断、阻害、または中和する任意の分子を含む。同様の様式において、「アゴニスト」という用語は、最も広義に使用され、天然ポリペプチドの生物活性を模倣する任意の分子を含む。好適なアゴニストまたはアンタゴニストの分子には具体的には、アゴニストまたはアンタゴニストの抗体または抗体断片、天然ポリペプチドの断片またはアミノ酸配列変異体などが含まれる。ポリペプチドのアゴニストまたはアンタゴニストを特定するための方法には、ポリペプチドを候補アゴニストまたはアンタゴニスト分子と接触させること、及びポリペプチドに通常関連付けられる1つ以上の生物活性の検出可能な変化を測定することを含み得る。
【0032】
目的の抗原「に結合する」ポリペプチド、例えば、腫瘍に関連付けられるポリペプチド抗原標的は、ポリペプチドが、抗原を発現する細胞もしくは組織を標的とする診断薬及び/または療法剤として有用であるように、十分な親和性を有する抗原に結合するものであり、他のポリペプチドと著しく交差反応しない。かかる実施形態において、蛍光活性化細胞分類(FACS)分析または放射性免疫沈降法(RIA)より決定される場合、ポリペプチドの「非標的」ポリペプチドへの結合の程度は、ポリペプチドのその特定の標的ポリペプチドへの結合の約10%未満になる。
【0033】
ポリペプチドの標的分子への結合に関して、特定のポリペプチド標的上の特定のポリペプチドまたはエピトープの「specific binding(特異的結合)」、またはそれに「specifically binds to(特異的に結合する)」、またはそれに「specific for(特異的な)」という用語は、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、概して結合活性を有しない同様の構造の分子である対照分子の結合と比較して分子の結合を決定することにより測定され得る。例えば、特異的結合は、標的と同様である対照分子、例えば、過剰な非標識標的との競合により決定され得る。この事例において、標識標的のプローブへの結合が、過剰な非標識標的により競合的に阻害された場合、特異的結合が示される。
【0034】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義に使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成された多重特異性抗体(例えば、TDBを含む二重特異性抗体)、及び抗体断片を具体的に網羅するが、それらが所望の生物活性を呈する場合に限る。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書における抗体と互換可能に使用される。
【0035】
抗体は、異なる構造を有する自然発生する免疫グロブリン分子であり、全ては、免疫グロブリン折り畳みに基づく。例えば、IgG抗体は、ジスルフィド結合して、機能的抗体を形成する2つの「重」鎖及び2つの「軽」鎖を有する。各重鎖及び軽鎖はそれ自身で、「定常」(C)及び「可変」(V)領域を含む。V領域が抗体の抗原結合特異性を決定する一方で、C領域は、構造的な支援を提供し、免疫エフェクターとの非抗原特異的相互作用において機能する。抗体または抗体の抗原結合断片の抗原結合特異性は、抗体が特定の抗原に特異的に結合する能力である。
【0036】
抗体の抗原結合特異性は、V領域の構造的特徴により決定される。可変性は、可変ドメインの110のアミノ酸長にわたって均等に分布していない。代わりに、V領域は、各々9〜12のアミノ酸長である「超可変領域」(HVR)と呼ばれる極度に可変性のより短い領域により分離される15〜30のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変の伸展からなる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、主にβシート構成を採用し、3つの超可変領域により連結され、βシート構造に連結し、いくつかの事例において、その一部を形成するループを形成する4つのFRを含む。各鎖内の超可変領域は、FRにより近接近して一緒に保持され、他の鎖の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合を直接伴っていないが、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)における抗体の関与などの多様なエフェクター機能を呈する。
【0037】
各V領域は典型的には、3つのHVR、例えば、相補性決定領域(各々が「超可変ループ」を含有する「CDR」)、及び4つのフレームワーク領域を含む。したがって、実質的な親和性で特定の所望の抗原に結合するのに必要な最小構造単位である抗体結合部位は典型的には、3つのCDRと、それらの間に散在する少なくとも3つ、好ましくは4つのフレームワーク領域とを含み、適切な立体配座にCDRを保持して提示する。従来の4つの鎖抗体は、協働してV及びVドメインにより定義される抗原結合部位を有する。ラクダ及びサメ抗体などのある特定の抗体は、軽鎖を欠き、重鎖のみにより形成された結合部位に依存する。結合部位がVとVとの間の協働の不在下で重鎖または軽鎖のみにより形成された単一ドメイン操作された免疫グロブリンが調製され得る。
【0038】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分は配列が抗体間で大きく異なり、各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布していない。これは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方において、超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、主にβシート構成を採用し、3つの超可変領域により連結され、βシート構造に連結し、いくつかの事例において、その一部を形成するループを形成する4つのFRを含む。各鎖内の超可変領域は、FRにより近接近して一緒に保持され、他の鎖の超可変領域とともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合を直接伴っていないが、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)における抗体の関与などの多様なエフェクター機能を呈する。
【0039】
「超可変領域」(HVR)という用語は、本明細書で使用されるとき、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、Vにおいて残基約24〜34(L1)、50〜56(L2)、及び89〜97(L3)前後、Vにおいて約31〜35B(H1)、50〜65(H2)、及び95〜102(H3)前後(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))、ならびに/または「超可変ループ」由来の残基(例えば、Vにおいて残基26〜32(L1)、50〜52(L2)、及び91〜96(L3)、Vにおいて26〜32(H1)、52A〜55(H2)、及び96〜101(H3)(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987))を含み得る。
【0040】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるような超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「T細胞依存性二重特異性」抗体または「TDB」は、多くの場合、T細胞受容体のCD3eサブユニットに結合することにより、細胞上で発現される標的抗原に結合し、かつT細胞に結合するように設計される二重特異性抗体である。
【0042】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)、及びFv断片;ダイアボディ;タンデムダイアボディ(taDb)、線状抗体(例えば、米国特許第5,641,870号、実施例2;Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057−1062(1995));一アーム抗体、単一可変ドメイン抗体、ミニボディ、一本鎖抗体分子;抗体断片から形成された多重特異性抗体(例えば、Db−Fc、taDb−Fc、taDb−CH3、(scFV)4−Fc、di−scFv、bi−scFv、またはタンデム(di,tri)−scFvが含まれるが、これらに限定されない);ならびに二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTEs)が含まれる。
【0043】
抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を有する、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、及び残留「Fc」断片を産生し、その名前は、それが容易に結晶化する能力を反映している。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原に架橋できるF(ab’)断片が得られる。
【0044】
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含有する最小抗体断片である。この領域は、密接な非共有結合性会合にある1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。この構成において、各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用して、V−V二量体の表面上に抗原結合部位を画定する。まとめて、6つの超可変領域は、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一可変ドメイン(または抗原に特異的な超可変領域を3つのみ含むFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有するが、全結合部位より親和性が低い。
【0045】
Fab断片は、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での数個の残基の付加の分だけFab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が少なくとも1つの遊離チオール基を持つFab’の本明細書における表記である。F(ab’)抗体断片は、本来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングも知られている。
【0046】
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの1つに割り当てられ得る。
【0047】
抗体は、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに割り当てられ得る。インタクトな抗体には5つの主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2にさらに分別され得る。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元構成は周知されている。
【0048】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のV及びVドメインを含み、ここで、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。いくつかの実施形態において、Fvポリペプチドは、VドメインとVドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これは、scFvが抗原結合に所望の構造を形成することを可能にする。scFvの概説に関しては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照されたい。
【0049】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(V)に連結した重鎖可変ドメイン(V)を含む(V−V)。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対合させられ、2つの抗原結合部位が作製される。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO93/11161、及びHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)でより完全に記載される。
【0050】
「多重特異性抗体」という用語は、最も広義に使用され、ポリエピトープ特異性を有する抗体を具体的に網羅する。かかる多重特異性抗体には、重鎖可変ドメイン(V)及び軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗体(V単位が、ポリエピトープ特異性を有する)、2つ以上のV及びVドメインを有し、各V単位が異なるエピトープに結合する抗体、2つ以上の単一可変ドメインを有し、各単一可変ドメインが異なるエピトープに結合する抗体、全長抗体、抗体断片、例えば、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三機能的抗体、共有連結している抗体断片または共有連結していない抗体断片が含まれるが、これらに限定されない。「ポリエピトープ特異性」は、同じかまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。「単一特異性」は、1つのエピトープにのみ結合する能力を指す。一実施形態によれば、多重特異性抗体は、5μM〜0.001pM、3μM〜0.001pM、1μM〜0.001pM、0.5μM〜0.001pM、または0.1μM〜0.001pMの親和性で各エピトープに結合するIgG抗体である。
【0051】
いくつかの例において、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である(例えば、CD3及び別のエピトープに結合する二重特異性抗体)。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製され得る。
【0052】
多重特異性抗体を作製するための技法には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の組み換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983)、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照されたい)、及び「ノブインホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、抗体Fc−ヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果を操作すること(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照されたい)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992)を参照されたい)、二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)を参照されたい)、及び一本鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照されたい)、及び例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載されるような三重特異性抗体を調製することによっても作製され得る。
【0053】
発現「単一ドメイン抗体」(sdAbs)または「単一可変ドメイン(SVD)抗体」は概して、単一可変ドメイン(VHまたはVL)が抗原結合を付与し得る抗体を指す。言い換えれば、単一可変ドメインは、標的抗原を認識するために別の可変ドメインと相互作用する必要はない。単一ドメイン抗体の例には、ラクダ科(ラマ及びラクダ)及び軟骨魚類(例えば、コモリザメ)に由来するもの、ならびにヒト及びマウス抗体からの組み換え方法に由来するものが含まれる(Ward,ES et al.,Nature(1989)341:544−546、Dooley,H.et al.,Dev Comp Immunol(2006)30:43−56、Muyldemans S et al.,Trend Biochem Sci(2001)26:230−235、Holt,LJ et al.,Trends Biotechnol(2003):21:484−490、WO2005/035572、WO03/035694、Davies,J et al.,Febs Lett(1994)339:285−290、WO00/29004、WO02/051870)。
【0054】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、その集団に含まれる個々の抗体は、同一であり、かつ/または同じエピトープに結合するが、モノクローナル抗体の産生中に生じ得る想定される変異体は除外され、かかる変異体は概して、少量で存在する。異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンにより汚染されていないという点で有利である。「モノクローナル」という修飾語句は、実質的に同種の抗体集団から得られているような抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本明細書で提供される方法に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)により最初に記載されるハイブリドーマ方法により作製され得るか、または組み換えDNA方法により作製され得る(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。また、「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991)、及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1991)に記載される技法を使用してファージ抗体ライブラリから単離され得る。
【0055】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、重鎖及び/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または同種である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびにかかる抗体の断片を特異的に含むが、これは、それらが所望の生物活性を呈する場合に限る(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984))。本明細書における目的のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、ヒヒ、アカゲザル、またはカニクイザルなどの旧世界ザル)に由来する可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体が含まれる(米国特許第5,693,780号)。
【0056】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(供与体抗体)の超可変領域由来の残基により置き換えられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの事例において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも供与体抗体にも見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに洗練するために行われる。概して、ヒト化抗体は、上述されるようなFR置換(複数可)を除いて、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、かつFRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになる。ヒト化抗体は任意に、免疫グロブリンの定常領域、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分も含むことになる。さらなる詳細に関しては、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323−329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照されたい。
【0057】
本明細書における「インタクトな抗体」は、重可変ドメイン及び軽可変ドメイン、ならびにFc領域を含むものである。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異体であり得る。好ましくは、インタクトな抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有する。
【0058】
「天然抗体」は通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合により重鎖に連結している一方で、ジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(V)を有し、いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端(V)に可変ドメインを有し、その他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0059】
「ネイキッド抗体」は、細胞傷害性部分または放射標識などの異種分子にコンシュゲートされない(本明細書に定義されるような)抗体である。
【0060】
いくつかの実施形態において、抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列変異体Fc領域)に起因する生物活性を指し、抗体アイソタイプにより異なる。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体の下方調節が含まれる。
【0061】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」及び「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞上の結合した抗体を認識し、その後、標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介反応を指す。ADCCを媒介するための初代細胞であるNK細胞がFcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現に関しては、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991)の464ページの表3に要約される。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されるものなどのインビトロADCCアッセイが行われ得る。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血液単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、または加えて、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652−656(1998)で開示されるものなどの動物モデルで評価され得る。
【0062】
「ヒトエフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、かつエフェクター機能を実行する白血球である。いくつかの実施形態において、これらの細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞、及び好中球が含まれ、PBMC及びNK細胞が好ましい。
【0063】
「補体依存性細胞傷害性」または「CDC」は、補体の存在下で分子が標的を溶解する能力を指す。補体活性化経路は、補体系(C1q)の第1の構成成分の、同種抗原と複合した分子(例えば、ポリペプチド(例えば、抗体))への結合により開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されるようなCDCアッセイが行われ得る。
【0064】
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明するために使用される。いくつかの実施形態において、FcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、これらの受容体のアレル変異体及び代替としてのスプライシング形態を含め、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含む。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンに基づく活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンに基づく阻害モチーフ(ITIM)を含有する。(Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203−234(1997)を参照されたい)。FcRsは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991)、Capel et al.,Immunomethods 4:25−34(1994)、及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)で概説される。今後特定されるものも含む他のFcRは、本明細書における「FcR」という用語により包含される。この用語は、母体IgGsの胎児への移行を担う新生児受容体FcRnも含む(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)、及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。
【0065】
「不純物」は、所望のポリペプチド産生物とは異なる材料を指す。本発明のいくつかの実施形態において、不純物には、ポリペプチドの荷電変異体が含まれる。本発明のいくつかの実施形態において、不純物には、抗体または抗体断片の荷電変異体が含まれる。本発明の他の実施形態において、不純物には、CHOPなどの宿主細胞材料;浸出タンパク質A;核酸;所望のポリペプチドの変異体、断片、集合体、または誘導体;別のポリペプチド;内毒素;ウイルス性汚染物質;細胞培養培地構成成分などが限定されることなく含まれる。いくつかの例において、不純物は、例えば、E.coli細胞などの細菌細胞、昆虫細胞、原核細胞、真核細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、鳥類細胞、真菌細胞に限定されないものからの宿主細胞タンパク質(HCP)であり得る。いくつかの例において、不純物は、ホモ二量体(例えば、抗CD3ホモ二量体)である。
【0066】
本明細書で使用される場合、「イムノアドヘシン」という用語は、異種ポリペプチドの結合特異性と、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせた抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(すなわち、「異種である」)所望の結合特異性を有するアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシンのアドヘシン部分は典型的には、受容体またはリガンドの結合部位を少なくとも含んだ連続したアミノ酸配列である。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG−1、IgG−2、IgG−3、もしくはIgG−4サブ型、IgA(IgA−1及びIgA−2を含む)、IgE、IgD、またはIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
【0067】
「レポーター分子」は、本明細書で使用される場合、その化学的性質により、抗原結合抗体の検出を可能にする分析により特定可能なシグナルを提供する分子を意味する。この型のアッセイにおいて最も一般的に使用されるレポーター分子は、酵素、フルオロフォア、または放射性核種を含有する分子(すなわち、放射性同位体)、及び化学発光分子である。
【0068】
本明細書で使用される場合、「本質的に同じ」は、値またはパラメータが、著しい影響により改変されていないことを示す。例えば、カラムの出口におけるクロマトグラフィー移動相のイオン強度は、イオン強度が著しく変化していない場合、移動相の最初のイオン強度と本質的に同じである。例えば、最初のイオン強度の10%、5%、または1%以内であるカラムの出口におけるイオン強度は、最初のイオン強度と本質的に同じである。
【0069】
本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする変動を含む(かつ記載する)。例えば、「約X」を言及する記載は、「X」の記載を含む。
【0070】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a(1つの)」、「or(または)」、及び「the(その)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書に記載される本発明の態様及び変形は、態様及び変形「consisting(からなる)」及び/または「consisting essentially of(から本質的になる)」を含むことが理解される。
【0071】
II.細胞に基づくレポーターアッセイ
本発明は、TDBの1つの抗原結合断片がCD3に結合してT細胞を活性化する、TDBを含む組成物中に存在する抗CD3ホモ二量体を検出するための細胞に基づくアッセイを提供する。
【0072】
A.T細胞活性化
TDBの作用の機序は、標的抗原発現細胞を特異的に減損することである。TDBの、T細胞受容体(TCR)のCD3eサブユニット及び標的細胞の表面上で発現された標的抗原への同時結合は、標的細胞のT細胞活性化及び細胞傷害性減損をもたらすTCRクラスター形成をもたらす。臨床において多くのTDBが存在しており(αCD3/αCD19、αCD3/αCD20、αCD3/αHER2;de Gast GC,et al.,1995,Cancer Immunol Immunother.40(6):390−396、Buhmann R,et al.,2009 Bone Marrow Transplant.43(5):383−397、Chan JK,et al.,2006,Clin Cancer Res.12(6):1859−1867)、新しいバージョンのTDBの様な二重特異性が、臨床的効能を改善するために評価されている(Chames,P.and Baty,D.2009,MAbs 1(6):539−547、Fournier,P.and Schirrmacher,V.,2013,BioDrugs 27(1):35−53)。TDB二重特異性抗体は、CD4T細胞系譜及びCD8T細胞系譜の両方を活性化できるが、但し、正しい標的発現細胞が存在することを条件とする。CD4T細胞の活性化は、CD8T細胞の拡大及び増殖を含む、他の免疫細胞の動員及び活性化をもたらすサイトカイン遺伝子発現(IL−2など)の誘導をもたらことになる。CD8CTLの活性化は、免疫学的シナプスの様な構造の形成に起因し、TDB媒介性細胞架橋を介する標的細胞は、CTLの活性化、パーフォリン及びグランザイム(A、B、C;CTLの亜型に応じる)の転写の誘導、脱顆粒、ならびに標的細胞の死滅をもたらす、標的細胞とエフェクター細胞との間の「免疫学的シナプス」の様な界面にわたるパーフォリン及びグランザイムの局在化放出をもたらす(Pores−Fernando,Pores−Fernando AT,Zweifach A,2009,Immunol Rev.,231(1):160−173、Pipkin,ME,et al.,2010,Immunol Rev.,235(1):55−72)。エフェクター細胞媒介性細胞死滅は、数時間のシナプスの安定を必要とする比較的緩慢なプロセスであり、完全な細胞死滅を確実にするためにprf1遺伝子及びグランザイム遺伝子の転写依存性活性化を必要とする。あるいは、標的細胞のCTL媒介性死滅は、Fas媒介性アポトーシスにより生じるとも示されている(Pardo,J,et al.,2003,Int Immunol.,15(12):1441−1450)。prf1、grB、及びFas媒介性細胞死滅機構の転写調節は、B細胞減損を媒介するために必要とされる遺伝子のプロモーター内に位置するNFAT、NFκB、及びSTATエンハンサーエレメントに依存する(Pipkin,ME,et al.,2010,Immunol Rev.,235(1):55−72、Pardo,J,et al.,2003,Int Immunol.,15(12):1441−1450)。標的細胞とエフェクター細胞(免疫学的シナプス)との間の相互作用の強度は、標的細胞とエフェクター細胞との間の相互作用を安定及び維持するためにもシグナル伝達が必要である、他の共刺激分子に依存する(Krogsgaard M,et al.,2003,Semin Immunol.15(6):307−315、Pattu V,et al.,2013,Front Immunol.,4:411、Klieger Y,et al.,2014,Eur J Immunol.44(1):58−68、Schwartz JC,et al.,2002,Nat Immunol.3(5):427−434)。したがって、レポーター遺伝子アッセイの使用による、標的遺伝子の転写誘導の監視は、TDBによるT細胞の活性化を観察するためのMOAを反映する代替的なアッセイ系である。
【0073】
T細胞活性化は、免疫学的シナプスを形成するための抗原提示細胞の接触部位での細胞表面タンパク質及びシグナル伝達分子の空間的及び動力学的再構築を必要とする。T細胞受容体(TCR)及び共刺激受容体(CD28、CD40、ICOSなど)及びリガンドの活性化及びシグナル伝達の整合は、T細胞活性化のために必要とされる期間及びシグナル伝達の両方を調節する。MHCによる抗原提示細胞(APC)の表面上での抗原提示は、T細胞の表面上のTCRにより認識される。MHC及びTCRクラスター形成は、T細胞活性化の調節において重要な役割を果たす、共刺激及び免疫調節性受容体の発現に応じて、T細胞活性化をもたらし得るシグナル伝達経路の動員及び活性化を開始する。CD3eなどのTCRのサブユニットに対する抗体(OKT3、Brown,WM,2006,Curr Opin Investig Drugs 7:381−388、Ferran,C et al.,1993 Exp Nephrol 1:83−89)は、TCRを架橋することによりT細胞活性化を誘導し得、それにより、免疫学的シナプスにおけるTCRのクラスター形成を模倣し、臨床的に長年の間、インビトロでのTCRシグナル伝達を試験するための代替活性化体として使用されている。共刺激がない抗CD3抗体によるTCRクラスター形成は、T細胞を弱く活性化するが、なおも、T細胞活性化、ならびに限定されたサイトカイン転写及び放出をもたらす。抗CD3媒介性シグナル伝達は、NFAT、AP1、及びNFκBを含む、いくつかの転写因子を活性化すると示されている(MF et al.,1995,J.Leukoc.Biol.57:767−773、Shapiro VS et al.,1998,J.Immunol.161(12)6455−6458、Pardo,J,et al.,2003,Int Immunol.,15(12):1441−1450)。共刺激は、T細胞活性化応答の性質に影響を与えるサイトカイン発現の転写調節に影響を与えるシグナル伝達の調節により、サイトカイン放出のレベル及び型を調節する(Shannon,MF et al.,1995,J.Leukoc.Biol.57:767−773)。TDB二重特異性抗体は、T細胞と標的抗原発現細胞との間に形成された架橋の結果としてT細胞の細胞表面上でTCRをクラスター形成する。T細胞活性化により転写誘導され得るレポーター遺伝子の発現を促進する転写調節エレメントをT細胞株中で試験し、どの事象が標的細胞の存在及び不在下でTDBにより活性化されるのかを決定した。
【0074】
B.レポーター分子
レポーターアッセイは、細胞中のレポーターの発現の誘導を監視することにより、刺激の生物学的特徴付けを可能にする分析方法である。刺激は、典型的には遺伝子転写の調節を含む細胞応答をもたらす細胞内シグナル伝達経路の誘導をもたらす。いくつかの例において、細胞シグナル伝達経路の刺激は、タンパク質産生をもたらすRNA転写の開始のために必要とされるDNAの非コーディング領域の上流への転写因子の調節及び動員による遺伝子発現の調節をもたらす。刺激に対して応答する遺伝子転写及び翻訳の制御は、細胞増殖、分化、生存、及び免疫応答などの多くの生物学的応答を誘発するために必要とされる。エンハンサーとも呼ばれるDNAのこれらの非コーディング領域は、遺伝子転写の効率を調節し、したがって、刺激に対して応答する細胞により生成されるタンパク質の量及び型を調節する、転写因子のための認識エレメントである特異的配列を含有する。レポーターアッセイにおいて、刺激に応答するエンハンサーエレメント及び最小プロモーターは、標準分子生物学方法を使用してレポーター遺伝子の発現を促進するように操作される。次いで、DNAは、刺激に特異的に応答する全ての機構を含有する細胞にトランスフェクトされ、レポーター遺伝子転写、翻訳、または活性のレベルは、生物学的応答の代替的測定値として測定される。
【0075】
いくつかの態様において、本発明は、T細胞の集団を本組成物と接触させることにより、TDBを含む組成物中の抗CD3ホモ二量体を検出する方法を提供し、ここで、T細胞は、レポーターの発現が抗CD3ホモ二量体の存在を示すように、CD3活性化に応答するプロモーターに作動可能に連結されるレポーターをコードする核酸を含む。レポーター分子は、任意の分子であり得、そのためのアッセイが、刺激に対して応答する細胞により産生されるその分子の量を測定するために開発され得る。例えば、レポーター分子は、刺激、例えば、T細胞活性化に応答するレポーター遺伝子によりコードされるレポータータンパク質であり得る。一般的に使用されるレポーター分子の例には、実験測定され得る基材の触媒作用の副産物として発光するルシフェラーゼなどの発光性タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ(フォチナスピラリス種由来)、ウミシイタケ(sea pansy)由来のウミシイタケルシフェラーゼ(ウミシイタケレニフォルミス)、コメツキムシルシフェラーゼ(ブラジル産ヒカリコメツキ由来)、海洋コペポーダ(marine copepod)ガウシアルシフェラーゼ(ガウシアプリンセプス由来)、及び深海エビナノルシフェラーゼ(オキヒメヒオドシエビ由来)を含む多くの供給源に由来する発光性タンパク質のクラスである。ホタルルシフェラーゼが光の光子の発射をもたらすルシフェリンのオキシルシフェリンへの酸素化を触媒化する一方で、ウミシイタケなどの他のルシフェラーゼは、セレンテラジンを触媒化することにより発光する。異なるルシフェラーゼにより発光された光の波長が形成され、変異体は、異なる濾過系を使用して読み取り可能であり、これにより多重化を容易にする。発光の量は、細胞中で発現したルシフェラーゼの量に比例し、ルシフェラーゼ遺伝子は、生物学的応答を誘発する刺激の影響を評価するための感受性レポーターとして使用されている。レポーター遺伝子アッセイは、基本的な研究、HTS選別を含む広範囲の目的及び有効性のために長年の間使用されている(Brogan J,et al.,2012,Radiat Res.177(4):508−513、Miraglia LJ,et al.,2011,Comb Chem High Throughput Screen.14(8):648−657、Nakajima Y,and Ohmiya Y.2010,Expert Opin Drug Discovery,5(9):835−849、Parekh BS,et al.,2012,Mabs,4(3):310−318、Svobodova K,and Cajtham L T.,2010,Appl Microbiol Biotechnol.,88(4):839−847)。
【0076】
いくつかの実施形態において、本発明は、TDB組成物中の抗CD3ホモ二量体を検出するための細胞に基づくアッセイを提供し、ここで、T細胞は、T細胞活性化に応答するレポーター構築体をコードする。いくつかの実施形態において、レポーター構築体は、ルシフェラーゼを含む。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ(例えば、フォチナスピラリス種由来)、ウミシイタケ由来のウミシイタケルシフェラーゼ(例えば、ウミシイタケレニフォルミス種由来)、コメツキムシルシフェラーゼ(例えば、ブラジル産ヒカリコメツキ種由来)、海洋コペポーダガウシアルシフェラーゼ(例えば、ガウシアプリンセプス種由来)、及び深海エビナノルシフェラーゼ(例えば、オキヒメヒオドシエビ種由来)である。いくつかの実施形態において、操作されたT細胞中のルシフェラーゼの発現は、TDB組成物中の抗CD3ホモ二量体の存在を示す。他の態様において、レポーター構築体は、β−グルクロニダーゼ(GUS);緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)などの蛍光タンパク質、及びそれらの変異体;クロラムフェニコアールアセチルトランスフェラーゼ(chloramphenicoal acetyltransferase)(CAT);β−ガラクトシダーゼ;β−ラクタマーゼ;または分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)をコードする。
【0077】
本発明のいくつかの態様において、レポーター分子をコードする核酸(例えば、レポータータンパク質)は、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーに作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、T細胞活性化に応答するプロモーター及び/またはエンハンサーは、発現制御配列である。発現及びクローニングベクターは通常、宿主生物により認識され、ポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されるプロモーターを含有する(例えば、レポーターポリペプチド)。好適には、発現制御配列は、真核宿主細胞(例えば、T細胞)を形質転換またはトランスフェクトできるベクターにおける真核生物プロモーター系である。ベクターが適切な宿主中に組み込まれると、宿主は、T細胞活性化後のヌクレオチド配列の高レベルの発現に好適な条件下で維持される。
【0078】
真核生物のプロモーター配列が知られている。実質的に全ての真核遺伝子が、転写が始まる部位からおよそ25〜30塩基上流に位置するATに富んだ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始から70〜80塩基上流に見られる別の配列は、Nが任意のヌクレオチドであり得るCNCAAT領域である。大半の真核遺伝子の3’末端は、コード配列の3’末端へのポリA尾部の付加のためのシグナルであり得るAATAAA配列である。これらの配列の全てが、真核発現ベクター中に好適に挿入される。
【0079】
本発明のいくつかの態様において、本発明は、T細胞活性化に応答するプロモーターの制御下でレポーター分子をコードする核酸を含むT細胞を提供する。T細胞活性化に応答するプロモーターが当技術分野で知られている。
【0080】
他の実施形態において、本発明は、T細胞活性化に応答するエンハンサーエレメントに作動可能に連結される最小プロモーターの制御下でレポーター分子をコードする核酸を含むT細胞を提供する。いくつかの実施形態において、最小プロモーターは、チミジンキナーゼ(TK)の最小プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)由来の最小プロモーター、SV40に由来するプロモーター、または最小伸長因子1アルファ(EF1α)プロモーターである。いくつかの実施形態において、レポーター分子をコードする核酸は、T細胞活性化応答性DNA認識エレメントにより調節される最小TKプロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態において、T細胞活性化応答性DNA認識エレメントは、NFAT(活性化T細胞の核因子)エンハンサー、AP−1(Fos/Jun)エンハンサー、NFAT/AP1エンハンサー、NFκBエンハンサー、FOXOエンハンサー、STAT3エンハンサー、STAT5エンハンサー、及びIRFエンハンサーである。エンハンサーは、ポリペプチドコード配列に対する5’位または3’位でベクターにスプライスされ得るが、いくつかの実施形態において、プロモーターから5’部位に位置する。いくつかの実施形態において、本発明は、ルシフェラーゼ遺伝子が最小TKプロモーターに作動可能に連結され、次に、NFκB応答性エンハンサーエレメントに作動可能に連結されたT細胞を提供する。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態において、真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト、または他の多細胞生物由来の有核細胞)で使用される発現レポーターベクターは、転写終結及びmRNAの安定化に必要な配列も含有することになる。かかる配列は一般的に、真核またはウイルスDNAもしくはcDNAの5’非翻訳領域、時折、3’非翻訳領域から入手可能である。1つの有用な転写終結構成成分は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026及びそこで開示される発現ベクターを参照されたい。
【0082】
いくつかの実施形態において、本発明は、T細胞中のレポーター分子の発現のためのベクターを提供する。ベクター構成成分には概して、以下のシグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、多数の制限エンドヌクレアーゼに対する多重クローニング部位含有認識配列、エンハンサーエレメント、プロモーター(例えば、T細胞活性化に応答するエンハンサーエレメント及び/またはプロモーター)、及び転写終結配列のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ベクターは、プラスミドである。他の実施形態において、ベクターは、組み換えウイルスゲノム;例えば、組み換えレンチウイルスゲノム、組み換えレトロウイルスゲノム、組み換えアデノ随伴ウイルスゲノムである。ポリヌクレオチド配列を含有するベクター(例えば、T細胞応答性プロモーター/エンハンサーに作動可能に連結されるレポーター遺伝子)は、周知の方法により宿主T細胞中に移入され得る。例えば、リン酸カルシウム処理、電気穿孔、リポフェクション、微粒子銃、またはウイルスに基づくトランスフェクトが使用され得る。(概して、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press,2nd ed.,1989を参照されたい)。哺乳類細胞を形質転換するために使用される他の方法には、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、電気穿孔、及び微量注入の使用が含まれる。
【0083】
C.細胞
いくつかの態様において、本発明は、T細胞活性化に応答するレポーター複合体を含むT細胞の集団に接触させることにより、TDBを含む組成物中の抗CD3ホモ二量体を検出するための細胞に基づくアッセイを提供する。いくつかの実施形態において、集団のT細胞は、CD4T細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞は、CD8T細胞である。さらに他の実施形態において、T細胞は、CD4/CD8T細胞である。いくつかの実施形態において、CD4及び/またはCD8T細胞は、IFN−γ、TNF−α、及びインターロイキンからなる群から選択されるサイトカインの増加した放出を呈する。いくつかの実施形態において、T細胞の集団は、不死化T細胞の集団(例えば、不死化T細胞株)である。いくつかの実施形態において、T細胞の集団は、TCR/CD3eを発現した不死化CD4及び/またはCD8細胞の集団である。いくつかの実施形態において、T細胞は、Jurkat細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞は、CTLL−2 T細胞である。
【0084】
いくつかの実施形態において、本発明のT細胞は、T細胞受容体を含む。T細胞受容体は、いくつかのタンパク質の複合体として存在する。T細胞受容体はそれ自身、独立性T細胞受容体アルファ及びベータ(TCRα及びTCRβ)遺伝子によりコードされた2つの別個のペプチド鎖からなる。複合体中の他のタンパク質には、CD3タンパク質が含まれる:CD3ε(CD3eとしても既知である)、CD3γ、CD3δ、及びCD3ζ。CD3タンパク質は、CD3εγ及びCD3εδヘテロ二量体、ならびにCD3ζホモ二量体として見られる。CD3ζホモ二量体は、これらのタンパク質周囲のシグナル伝達複合体の集合を可能にする。いくつかの実施形態において、TDBの1つのアームは、T細胞受容体複合体に結合する。いくつかの実施形態において、TDBは、CD3に結合する。いくつかの実施形態において、TDBは、CD3ε(CD3e)タンパク質に結合する。
【0085】
いくつかの実施形態において、本発明は、TDBの組成物中の抗CD3ホモ二量体を検出及び/または定量化するための細胞に基づくアッセイで使用するためのT細胞を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本組成物のT細胞は、CD4T細胞である。いくつかの実施形態において、本組成物のT細胞は、CD8T細胞である。さらに他の実施形態において、本組成物のT細胞は、CD4/CD8T細胞である。いくつかの実施形態において、本組成物のT細胞は、不死化T細胞である。いくつかの実施形態において、本組成物のT細胞は、Jurkat細胞である。いくつかの実施形態において、本組成物のT細胞は、CTLL−2 T細胞である。いくつかの実施形態において、本組成物のT細胞は、T細胞活性化に応答するレポーター複合体を含む。いくつかの実施形態において、レポーター複合体は、ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、レポーター(例えば、ルシフェラーゼ)をコードするポリヌクレオチドは、T細胞活性化応答性調節エレメント(例えば、T細胞活性化応答性プロモーター及び/またはエンハンサー)に作動可能に連結される。いくつかの実施形態において、T細胞活性化に応答するプロモーターは、NFATプロモーター、AP−1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。
【0086】
いくつかの実施形態において、T細胞活性化応答性レポーター構築体が導入されているT細胞(レポーターT細胞)は、抗CD3ホモ二量体による活性化に関して選別される。例えば、安定クローンは、限界希釈液により単離され得、精製された抗CD3ホモ二量体に対するそれらの応答に関して選別され得る。いくつかの実施形態において、安定レポーターT細胞は、約1μg/mL、約2μg/mL、約3μg/mL、約4μg/mL、約5μg/mL、約6μg/mL、約7μg/mL、約8μg/mL、約9μg/mL、または約10μg/mLのいずれかを超える精製された抗CD3ホモ二量体で選別される。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明は、T細胞活性化レポーター複合体で操作されたT細胞の組成物を提供する。いくつかの実施形態において、レポーターは、ルシフェラーゼ、蛍光タンパク質(例えば、GFP、aYFPなど)、アルカリホスファターゼ、またはベータガラクトシダーゼである。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼは、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、T細胞活性化に応答するプロモーターは、NFATプロモーター、AP−1プロモーター、NFκBプロモーター、FOXOプロモーター、STAT3プロモーター、STAT5プロモーター、またはIRFプロモーターである。いくつかの実施形態において、T細胞活性化に応答するプロモーターは、NFAT、AP−1、NFκB、FOXO、STAT3、STAT5、及びIRFのいずれか1つ以上からのT細胞応答性エレメントを含む。いくつかの実施形態において、T細胞の組成物は、CD4T細胞及び/またはCD8T細胞を含む。いくつかの実施形態において、T細胞は、Jurkat細胞またはCTLL−2細胞である。いくつかの実施形態において、T細胞は、NFκBプロモーターに作動可能に連結されるルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドを含むJurkat細胞である。
【0088】
D.CD3ホモ二量体を特定する方法
いくつかの態様において、本発明は、TDBを含む組成物中の抗CD3ホモ二量体を検出するための方法を提供し、ここで、TDB抗体は、標的抗原結合断片とCD3結合断片とを含み、本方法は、T細胞の集団を本組成物と接触させることを含み、T細胞は、T細胞活性化に応答するプロモーターに作動可能に連結されたレポーターをコードする核酸を含み、T細胞の集団は、標的抗原を含まず、レポーターの発現は、抗CD3ホモ二量体の存在を示す。いくつかの実施形態において、T細胞の集団は、TDBの標的抗原(非T細胞抗原)を発現する細胞を含まない。
【0089】
いくつかの実施形態において、T細胞の集団は、約0.01ng/mL〜約50ng/mL、約0.05ng/mL〜約50ng/mL、約0.1ng/mL〜約50ng/mL、約0.5ng/mL〜約50ng/mL、約1ng/mL〜約50ng/mL、約5ng/mL〜約50ng/mL、約10ng/mL〜約50ng/mL、約0.01ng/mL〜約40ng/mL、約0.01ng/mL〜約30ng/mL、約0.01ng/mL〜約20ng/mL、約0.01ng/mL〜約10ng/mL、約0.01ng/mL〜約5ng/mL、約0.01ng/mL〜約1ng/mL、約0.01ng/mL〜約0.5ng/mL、約0.01ng/mL〜約0.1ng/mL、約0.01ng/mL〜約0.05ng/mL、約0.1ng/mL〜約10ng/mL、約0.5ng/mL〜約10ng/mL、約1ng/mL〜約10ng/mL、または約5ng/mL〜約50ng/mLのいずれか1つの濃度範囲でTDBを含む組成物と接触される。
【0090】
いくつかの実施形態において、レポーターは、細胞を本組成物と接触させた後、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約16時間、約20時間、または約24時間後を超えるいずれか1つに検出される。いくつかの実施形態において、レポーターは、細胞を本組成物と接触させた約1時間〜約24時間、約1時間〜約12時間、約1時間〜約8時間、約1時間〜約6時間、約1時間〜約4時間、約1時間〜約2時間、約4時間〜約24時間、約4時間〜約12時間、約4時間〜約8時間、約8時間〜約24時間、約8時間〜約12時間、約16時間〜約24時間、約16時間〜約20時間、または約20時間〜約24時間後のいずれか1つの間に検出される。
【0091】
いくつかの態様において、本発明は、TDBを含む組成物中の抗CD3ホモ二量体抗体の量を定量化するための方法を提供し、ここで、TDBは、標的抗原結合断片とCD3結合断片とを含み、本方法は、T細胞が、T細胞活性化に応答するプロモーターに作動可能に連結されたレポーターをコードする核酸を含み、T細胞の集団が、標的抗原を含まない、T細胞の集団をTDBの1つ以上の濃度で本組成物と接触させること、抗体濃度の関数としてのレポーターの発現を、T細胞を、異なる濃度の精製された抗CD3ホモ二量体と接触させることにより生成される標準曲線と相関させることを含む。抗CD3ホモ二量体アッセイ標準物(既知の濃度の精製された抗CD3ホモ二量体)、抗CD3ホモ二量体対照、及びTDB試験試料の希釈液が調製され、レポーターT細胞に付加される。インキュベーション後、ホモ二量体アッセイ標準物、ホモ二量体対照、及びTDB試験試料により誘導されるレポーター活性の量が測定される。TDB試験試料中の生物学的に活性である抗CD3ホモ二量体の量は、抗CD3ホモ二量体アッセイ標準物から生成された標準曲線から決定される。試験試料中に存在する抗CD3ホモ二量体のパーセンテージは、試験試料中に存在するTDBの総量に対する、存在する抗CD3ホモ二量体の量の比により決定される。
【0092】
いくつかの実施形態において、T細胞の集団は、約0.01ng/mL〜約50ng/mL、約0.05ng/mL〜約50ng/mL、約0.1ng/mL〜約50ng/mL、約0.5ng/mL〜約50ng/mL、約1ng/mL〜約50ng/mL、約5ng/mL〜約50ng/mL、約10ng/mL〜約50ng/mL、約0.01ng/mL〜約40ng/mL、約0.01ng/mL〜約30ng/mL、約0.01ng/mL〜約20ng/mL、約0.01ng/mL〜約10ng/mL、約0.01ng/mL〜約5ng/mL、約0.01ng/mL〜約1ng/mL、約0.01ng/mL〜約0.5ng/mL、約0.01ng/mL〜約0.1ng/mL、約0.01ng/mL〜約0.05ng/mL、約0.1ng/mL〜約10ng/mL、約0.5ng/mL〜約10ng/mL、約1ng/mL〜約10ng/mL、または約5ng/mL〜約50ng/mLのいずれか1つの濃度範囲でTDBを含む組成物と接触される。
【0093】
いくつかの実施形態において、抗CD3ホモ二量体アッセイ標準物からの標準曲線は、約0.01ng/mL〜50ng/mLのいずれか1つの範囲である複数の濃度でレポーターT細胞を抗CD3ホモ二量体と接触させることにより生成される。いくつかの実施形態において、抗CD3ホモ二量体標準物の複数の濃度には、100/mL ng、150ng/mL、200ng/mL、250ng/mL、500ng/mL、750ng/mL、1μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、250μg/mL、または500μg/mLのいずれか1つが含まれる。いくつかの実施形態において、抗CD3ホモ二量体標準物の複数の濃度は、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、または10を超える濃度である。
【0094】
本方法の正確性は、既知の量の抗CD3ホモ二量体の精製量を、TDBの調製物に添加すること及び抗CD3ホモ二量体の回収パーセントを測定することにより評価される。いくつかの実施形態において、抗CD3ホモ二量体とTDBとの1つ以上の混合物は、約100ng、150ng、200ng、250ng、500ng、750ng、1μg、2.5μg、5μg、10μg、25μg、50μg、100μg、250μg、または500μgのいずれか1つを超える精製された抗CD3ホモ二量体を、約1mg/mLのαCD20/αCD3 TDBストックに付加することにより生成される。
【0095】
いくつかの実施形態において、レポーターは、細胞を本組成物と接触させた後、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約12時間、約16時間、約20時間、または約24時間後を超えるいずれか1つに検出される。いくつかの実施形態において、レポーターは、細胞を本組成物と接触させた約1時間〜約24時間、約1時間〜約12時間、約1時間〜約8時間、約1時間〜約6時間、約1時間〜約4時間、約1時間〜約2時間、約4時間〜約24時間、約4時間〜約12時間、約4時間〜約8時間、約8時間〜約24時間、約8時間〜約12時間、約16時間〜約24時間、約16時間〜約20時間、または約20時間〜約24時間後のいずれか1つの間に検出される。
【0096】
E.アッセイ開発
以下は、TDBの調製物中の抗CD3ホモ二量体を検出するための細胞に基づくアッセイを開発する、例示的かつ非限定的な方法である。
【0097】
DNA構築体:レンチウイルスは、TDB二重特異性抗体の純度を評価するために使用される安定細胞株を生成するために使用される。NFAT(活性化T細胞の核因子)、AP−1(Fos/Jun)、NFAT/AP1、NFκB、FOXO、STAT3,5、及びIRFに関するDNA認識エレメントにより調節された最小TKプロモーターの制御下でレポーター遺伝子ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼを発現するレンチウイルスベクターが構築される。安定レポーター細胞株の生成のために使用されるレンチウイルス発現カセットは、構成的プロモーター/エンハンサー(EF1アルファまたはSV40)の制御下で多様な抗生物質選択マーカーを発現して、安定細胞株の生成を可能にした第三世代自己不活性化バイシストロニックベクターであり得る。使用されるレポーターレンチウイルスベクターは、pCDH.MCS.EF1a.Puroから修飾され、市販されるベクターである(SBI biosciences;Cat No.CD510B−1)。プロモーター修飾には、CMV最小プロモーターの除去及び多様なエンハンサーエレメント(NFAT、NFκBなど)による置換、pRK5.CMV.ルシフェラーゼからの最小コアRNAポリメラーゼプロモーター(TATAボックス)の付加(Osaka,G et al.,1996 J Pharm Sci.1996,85:612−618)、及び内部DNAからの異なる選択カセットの置換(pRK5.tk.neo由来のネオマイシン抵抗性遺伝子、pRK5.tk.hygro由来のハイグロマイシン抵抗性遺伝子、及びpRK5.tk.ブラストサイジン(blastocidin)由来のブラスチサイジン抵抗性遺伝子)が含まれる。エンハンサーエレメントの活性化における選択のために使用される構成的プロモーターの影響は、プロモーター/エンハンサークロストークを最小限に抑えるように設計されたDNAの非コーディング伸展の組み込みにより最小である。pRK5.CMV.ルシフェラーゼ由来のホタルルシフェラーゼ(Osaka,1996)は、修飾レンチウイルス親ベクターのHindIII−NotI部位にクローン化される。ウミシイタケルシフェラーゼ及びナノルシフェラーゼを含む他の発光性タンパク質も、HindIII−NotI部位にサブクローン化され得る。293s(293懸濁液適合細胞株)細胞の一過性トランスフェクションによりウイルスストックを生成するために使用されるレンチウイルスパッケージング構築体(pCMV.HIVデルタ、pCMC.VSV−G、及びpCMV.Rev)を得る(pCMV.VSV−G)か、または生成することができる(pCMV.HIVデルタ、pCMV.REV)。HIV菌株MN(Nakamura,GR et al.,1993,J.Virol.67(10):6179−6191)が、pCMV.HIVデルタパッケージングベクターを生成するために使用され得、安全性を目的とした、欠失によりHIVウイルスエンベロープならびに5’及び3’LTRに対する修飾を不活性化するために内部EcoRIの部分消化欠失を含有する。HIV Revは、RT−PCRによるpCMV.HIVデルタトランスフェクト293s細胞RNAからクローン化され、pRK5.tk.neoのClaI−Xho部位中に導入される。レンチウイルスレポーターに疑似させるためのVSV−Gの使用(HIV envの代わりにVSV−Gを置換すること)は、任意の細胞型の感染を可能にする。レンチウイルス発現プラスミド及びパッケージング構築体は、Stbl2適格細胞中で増幅され(Life Technologies,Cat.第10268−019)、DNAがQiagen Maxi Prepキットを使用して精製される(Cat.第12662)。全てのDNA構築体は、DNA配列決定により確認される。
【0098】
レポーター遺伝子アッセイ細胞株開発:Jurkat CD4+T細胞株(DSMZ,Cat.第ACC 282)及びCTLL−2 CD8T細胞株(Life Technologies,Cat.第K1653)は、レポーター遺伝子アッセイの実行可能性を評価し、TDBによるT細胞の活性化を監視するために使用される。NFAT(活性化T細胞の核因子)、AP−1(Fos/Jun)、NFAT/AP1、NFκB、FOXO、STAT3,5、及びIRFに関するDNA認識エレメントにより調節された最小TKプロモーターの制御下でレポーター遺伝子ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、またはナノルシフェラーゼを発現するレンチウイルスベクターが構築される。レポーター遺伝子ウイルスストックは、標準方法を使用して、293s細胞の一過性トランスフェクションにより生成され、VSV−Gを用いて疑似され、濃縮され、滴定される(Naldini,L.,et al.,1996 Science,272:263−267)。Jurkat CTLL−2細胞は、遠心(spinoculation)により10のMOIでレンチウイルスレポーターウイルスストックに感染し、3日後、感染した細胞は、抗生物質抵抗性に関して選択される。2週間後、安定プールが生成され、精製されたTDBに対する応答に関して評価される。コピー数及び統合を評価するqPCR方法が、全ての安定プールがレポーター構築体に安定して感染することを示すために使用される。精製された抗CD3ホモ二量体は、NFAT及びNFκB Jurkatレポータープールの両方を活性化できる。他のTDBに関しても同様の応答が観察された。これらの実験に基づいて、Jurkat/NFκB−ルシフェラーゼ及びJurkat/NFAT−ルシフェラーゼの限定希釈液が産出され、単一細胞クローニング及び単一の安定レポーター細胞株の生成を可能にする。
【0099】
T細胞活性化不純物アッセイの開発及び評価:抗CD3ホモ二量体は、標的細胞の不在下でT細胞を活性化し得、したがって、TDBとは別個の活性を表す産生物関連不純物である。TDB精製調製物中の不純物として存在する抗CD3ホモ二量体種は、共有または非共有に連結し得、したがって、変異体が架橋し、それにより、T細胞の表面上でTCRを活性化することを可能にする立体配座を採用し得る。TDBが1つの抗CD3アームしか有しないため、TDBは、T細胞のみでインキュベートされるとき、TCRを架橋できず、活性しない。インビボにおいて、TDBは、エフェクター細胞(単球、マクロファージ、NK細胞)により媒介されたFcgR媒介性架橋を介してT細胞上でTCRを架橋することが可能であり得る。
【0100】
存在するaCD3ホモ二量体変異体の量を定量化するために、既知の濃度の精製されたaCD3ホモ二量体標準物がJurkat/NFκB−ホタルルシフェラーゼクローン2細胞株でインキュベートされるとき、観察されたルシフェラーゼ活性の最適合曲線からTDB試料中で観察されたルシフェラーゼ活性の量が計算される(図7)。各試料中の不純物の濃度のマトリックス効果及び影響を評価するために、段階希釈液が調製され、エンドポイントアッセイにおいて希釈直線性が査定される。存在するホモ二量体の総量は、TDBの総質量中に存在する不純物の質量により決定され、抗CD3ホモ二量体%として表される。本方法は、精製されたTDB調製物中の精製された抗CD3ホモ二量体を0.1マイクログラム(0.1ppm)の少量まで定量的に検出できる。アッセイフォーマットも、現在のプロセスの最初の精製ステップで先に精製されていないTDB材料中の不純物活性化を検出できると示されており、かつ不純物を除去するTDBに関して使用される精製手法を査定するために使用されている。精製された抗CD3ホモ二量体に添加すると、アッセイフォーマットは、TDB試験材料中、0.5%の低さのホモ二量体添加材料の正確な回収を示す(図7)。本方法は、TDBの現在の精製プロセスがアッセイの定量化の限界を下回るまでホモ二量体及び他のT細胞活性化種を除去することを示すために他の直交性アッセイと併せて使用されている。しかし、プロセス開発の間、多様な試料は、抗CD3ホモ二量体質量分析アッセイと相関しないアッセイにおいてT細胞活性化活動を有すると示された。他の直交性分析方法との相関性は、これらの他の種がいくつかの形態の集合体、またはHMWSであり得ることを提示する(図9)。TDBの集合体は、TCRクラスター形成及び活性を誘導することになる。多様な製剤試験の評価中に観察されるように、1.5%の少量のHMWSがアッセイにおいて著しい活性を誘導し得ることが観察された。これらの他の種の精製及び査定は、TDBの純度及び安全性を査定するために、多様な不純物参考標準物を使用する不純物アッセイの開発を可能にする。異なるレポーター遺伝子細胞株の使用は、存在する異なる種の分類を可能にし得る。したがって、抗CD3ホモ二量体%の現在報告されている値は、これらの試みの結果として別の値に修正されてよい。レポーター遺伝子アッセイ手法が生物学的に活性である不純物を検出する感受性は、療法剤中に存在し得る産生物変異体の分類及び受容可能なレベルの査定に関して有用な一般的な手法である。
【0101】
III.キット
本発明のいくつかの態様において、本明細書に記載されるようなT細胞活性化に応答するレポーター複合体を含む操作されたT細胞を含む組成物を保持し、かつ任意にその使用に関する指示書を提供する容器を含むキットまたは製品が提供される。いくつかの実施形態において、本キットは、抗CD3ホモ二量体アッセイ標準物(既知の濃度の精製された抗CD3ホモ二量体)、及び/または抗CD3ホモ二量体対照を提供する。本容器は、製剤を保持し、容器上のラベルまたは容器に関連するラベルは、使用上の指示を示し得る。本製品は、他の緩衝液、希釈液、培養器、レポーター分子を検出するための試薬、及び使用上の指示を有する添付文書を含む、商業的視点及び使用者の視点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0102】
IV.ポリペプチド
本明細書に記載される方法を使用して分析されるポリペプチドは概して、組み換え技法を使用して産生される。組み換えタンパク質を産生するための方法が、例えば、米国特許第第5,534,615号及び同第4,816,567号に記載され、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。いくつかの実施形態において、目的のタンパク質は、CHO細胞内で産生される(例えば、WO94/11026を参照されたい)。いくつかの実施形態において、目的のポリペプチドは、E.coli細胞内で産生される。例えば、米国特許第5,648,237号、米国特許第5,789,199号、及び米国特許第5,840,523号を参照されたい。これらは、発現及び分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)及びシグナル配列を記載する。Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.,2003),pp.245−254も参照されたい。これは、E.coli内の抗体断片の発現を記載する。組み換え技法を使用するとき、ポリペプチドは、細胞内で産生され得るか、ペリプラズム空間で産生され得るか、または培地に直接分泌され得る。
【0103】
ポリペプチドは、培養培地または宿主細胞溶解物から回収され得る。ポリペプチドの発現に用いられる細胞は、多様な物理的または化学的手段、例えば、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤により破壊され得る。ポリペプチドが細胞内で産生される場合、第1のステップとして、粒子状残屑、宿主細胞または溶解された断片が、例えば、遠心分離または限外濾過により除去される。Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992)は、E.coliのペリプラズム空間に分泌されるポリペプチドを単離するための手順を記載する。簡潔に言うと、細胞ペーストが、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で、約30分にわたって融解される。細胞残屑は、遠心分離により除去され得る。ポリペプチドが培地に分泌される場合、かかる発現系由来の上清が概して、市販のポリペプチド濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過装置を使用して最初に濃縮される。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤は、タンパク質分解を阻害するために前述のステップのいずれかに含まれ得、抗生物質は、外来性汚染物質の成長を阻止するために含まれ得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、ポリペプチド及び1つ以上の汚染物質を含む本組成物中のポリペプチドは、本発明の方法により分析前に精製または部分的に精製されている。例えば、本方法のポリペプチドは、親和性クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、及び疎水性相互作用クロマトグラフィーからの溶離液中にある。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、タンパク質Aクロマトグラフィーからの溶離液中にある。
【0105】
本発明の方法により分析され得るポリペプチドの例には、免疫グロブリン、イムノアドヘシン、抗体、酵素、ホルモン、融合タンパク質、Fc含有タンパク質、免疫コンジュゲート、サイトカイン、及びインターロイキンが含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
(A)抗体
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態において、本明細書に記載される方法によりポリペプチド及びポリペプチドを含む製剤を分析する方法のいずれかで使用するためのポリペプチドは、抗体である。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、T細胞依存性二重特異性(TDB)抗体である。
【0107】
抗体の分子標的には、(i)CD3、CD4、CD8、CD19、CD11a、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)、及びCD79β(CD79b);(ii)ErbB受容体ファミリーのメンバー、例えば、EGF受容体、HER2、HER3、またはHER4受容体;(iii)細胞接着分子、例えば、LFA−1、Mac1、p150,95、VLA−4、ICAM−1、VCAM、及びαv/β3インテグリン(それらのアルファサブユニットまたはベータサブユニット(例えば、抗CD11a、抗CD18、または抗CD11b抗体)を含む);(iv)成長因子、例えば、VEGF;IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA−4;タンパク質C、BR3、c−met、組織因子、β7など;(v)細胞表面及び膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるもの、ならびに(vi)他の標的、例えば、FcRH5、LyPD1、TenB2などに限定されないCDタンパク質、及びそれらのリガンドが含まれる。いくつかの実施形態において、抗体は、抗CD20/抗CD3抗体である。例示的な二重特異性抗体が表1に提供される。
【0108】
他の例示的な抗体には、抗エストロゲン受容体抗体、抗プロゲステロン受容体抗体、抗p53抗体、抗HER−2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗カテプシンD抗体、抗Bcl−2抗体、抗E−カドヘリン抗体、抗CA125抗体、抗CA15−3抗体、抗CA19−9抗体、抗c−erbB−2抗体、抗P−糖タンパク質抗体、抗CEA抗体、抗網膜芽細胞腫タンパク質抗体、抗ras腫瘍性タンパク質抗体、抗Lewis X抗体、抗Ki−67抗体、抗PCNA抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD9/p24抗体、抗CD10抗体、抗CD11a抗体、抗CD11c抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD35抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗LCA/CD45抗体、抗CD45RO抗体、抗CD45RA抗体、抗CD39抗体、抗CD100抗体、抗CD95/Fas抗体、抗CD99抗体、抗CD106抗体、抗ユビキチン抗体、抗CD71抗体、抗c−myc抗体、抗サイトケラチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗HPVタンパク質抗体、抗カッパ軽鎖抗体、抗ラムダ軽鎖抗体、抗メラノソーム抗体、抗前立腺特異的抗原抗体、抗S−100抗体、抗tau抗原抗体、抗フィブリン抗体、抗ケラチン抗体、及び抗Tn−抗原抗体から限定することなく選択されるものが含まれる。
【0109】
(i)モノクローナル抗体
いくつかの実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、実質的に同種の抗体の集団から得られ、すなわち、その集団に含まれる個々の抗体は、同一であり、かつ/または同じエピトープに結合するが、モノクローナル抗体の産生中に生じる想定される変異体は除外され、かかる変異体は、概して、少量で存在する。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、個別のまたはポリクローナル抗体の混合物ではないものとしての抗体の特徴を示す。
【0110】
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)に最初に記載されるハイブリドーマ方法を使用して作製され得るか、または組み換えDNA方法により作製され得る(米国特許第4,816,567号)。
【0111】
ハイブリドーマ法において、マウス、またはハムスターなどの他の適切な宿主動物が、本明細書に記載されるように免疫化されて、免疫化のために使用されるポリペプチドに特異的に結合することになる抗体を産生するか、または産生できるリンパ球が誘発される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。次いで、リンパ球は、ポリエチレングリコールなどの好適な融合剤を使用して骨髄腫細胞で融合されて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。
【0112】
このように調製されたハイブリドーマ細胞は、播種され、非融合の親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つ以上の物質を好ましくは含有する好適な培養培地で成長する。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジン(HAT培地)を含み、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の成長を阻止する。
【0113】
いくつかの実施形態において、骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体産生を支援し、HAT培地などの培地に感受性を示すものである。いくつかの実施形態において、とりわけ、骨髄腫細胞株は、Salk Institute Cell Distribution Center,San Diego,California USAから入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍、ならびにAmerican Type Culture Collection,Rockville,Maryland USAから入手可能なSP−2またはX63−Ag8−653細胞に由来するものなどのマウス骨髄腫株である。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生に関して記載されている(Kozbor,J.Immunol.133:3001(1984)、Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0114】
ハイブリドーマ細胞が成長する培養培地は、抗原を対象とするモノクローナル抗体の産生に関してアッセイされる。いくつかの実施形態において、ハイブリドーマ細胞により産生されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降によるか、または放射免疫アッセイ(RIA)もしくは酵素連結免疫吸収アッセイ(ELISA)などのインビトロ結合アッセイにより決定される。
【0115】
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson et al.,Anal.Biochem.107:220(1980)のスキャチャード分析により決定され得る。
【0116】
所望の特異性、親和性、及び/または活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、クローンは、限界希釈手順によりサブクローン化され、標準の方法により成長され得る(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice pp.59−103(Academic Press,1986))。この目的に好適な培養培地には、例えば、D−MEMまたはRPMI−1640培地が含まれる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍としてインビボで成長し得る。
【0117】
サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、従来の免疫グロブリン精製手順、例えば、ポリペプチドA−セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、または親和性クロマトグラフィーなどにより、培養培地、腹水、または血清から好適に分離される。
【0118】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)容易に単離及び配列決定される。いくつかの実施形態において、ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの供給源としての機能を果たす。単離されると、DNAは発現ベクター内に配置され得、これは次いで、宿主細胞、例えばE.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、あるいは免疫グロブリンポリペプチドを産生しない骨髄腫細胞などにトランスフェクトされて、組み換え宿主細胞内のモノクローナル抗体の合成体が得られる。抗体をコードするDNAの細菌における組み換え発現に関する概説には、Skerra et al.,Curr.Opinion in Immunol.5:256−262(1993)、及びPluckthun,Immunol.Revs.,130:151−188(1992)が含まれる。
【0119】
さらなる一実施形態において、抗体または抗体断片は、McCafferty et al.,Nature 348:552−554(1990)に記載される技法を使用して生成された抗体ファージライブラリから単離され得る。Clackson et al.,Nature 352:624−628(1991)、及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1991)は、それぞれ、ファージライブラリを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記載する。続報は、鎖シャッフリングによる高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生(Marks et al.,Bio/Technology,10:779−783(1992))、ならびに非常に大きなファージライブラリを構築するための方策としてのコンビナトリアル感染及びインビボ組み換え(Waterhouse et al.,Nuc.Acids.Res.21:2265−2266(1993))を記載する。したがって、これらの技法は、モノクローナル抗体を単離するための従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技法の実行可能な代替案である。
【0120】
DNAは、例えば、同種マウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することによって(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA 81:6851(1984))、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てもしくは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することによっても修飾され得る。
【0121】
典型的には、かかる非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインの代わりに置換されるか、またはそれらが、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換されて、抗原に対して特異性を有する1つの抗原結合部位、及び異なる抗原に対して特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作製する。
【0122】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態において、抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、またはIgMである。いくつかの実施形態において、抗体は、IgGモノクローナル抗体である。
【0123】
(ii)ヒト化抗体
いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト化抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法が当技術分野で記載されている。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれに導入される1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、典型的には「移入」可変ドメインから得られる「移入」残基と称される。ヒト化は本質的に、Winter及び共同研究者らの方法に従い(Jones et al.,Nature 321:522−525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323−327(1988)、Verhoeyen et al.,Science 239:1534−1536(1988))、超可変領域配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに置換することにより行われる。したがって、かかる「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的により少ない部分が、非ヒト種由来の対応する配列により置換されているキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際に、ヒト化抗体は典型的には、いくつかの超可変領域残基、かつ場合によってはいくつかのFR残基が、齧歯類抗体中の類似部位からの残基により置換されているヒト抗体である。
【0124】
ヒト化抗体を作製するのに使用されるヒト可変ドメインの選定は、軽ドメイン及び重ドメインの両方とも、抗原性を低減するのに非常に重要である。いわゆる「最適合」方法によると、齧歯類抗体の可変ドメインの配列は、既知のヒト可変−ドメイン配列の全ライブラリに対して選別される。次いで、齧歯類のものに最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れられる(Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993)、Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901(1987))。別の方法は、軽または重鎖可変領域の特定の下位群の全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体のために使用され得る(Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285(1992)、Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993))。
【0125】
抗体が、抗原に対する高親和性及び他の好ましい生物学的特性を保持してヒト化されることがさらに重要である。この目標に到達するために、本方法のいくつかの実施形態において、ヒト化抗体は、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用した、親配列及び多様な概念上のヒト化産生物の分析プロセスにより調製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に利用可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推定される三次元立体配座構造を例示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらのディスプレイの精査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性の高い役割の分析、すなわち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の分析を可能にする。このように、標的抗原(複数可)に対する増加した親和性などの所望の抗体特徴が到達されるように、FR残基をレシピエント及び移入配列から選択し、組み合わされ得る。概して、超可変領域残基は、抗原結合への影響を直接的に、かつ最も実質的に伴う。
【0126】
(iii)ヒト抗体
いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト抗体である。ヒト化の代替物として、ヒト抗体が生成され得る。例えば、免疫化すると内因性免疫グロブリン産生の不在下でヒト抗体の完全レパートリーを産生することのできるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが現在では可能である。例えば、キメラ及び生殖系列突然変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子のホモ接合欠失が、内因性抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。かかる生殖系突然変異マウス内にヒト生殖系免疫グロブリン遺伝子アレイを移動させると、抗原攻撃に際してヒト抗体の産生をもたらすであろう。例えば、Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993)、Jakobovits et al.,Nature 362:255−258(1993)、Bruggermann et al.,Year in Immuno.7:33(1993)、ならびに米国特許第5,591,669号、同第5,589,369号、及び同第5,545,807号を参照されたい。
【0127】
あるいは、ファージディスプレイ技術(McCafferty et al.,Nature 348:552−553(1990))は、未免疫供与体の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、ヒト抗体及び抗体断片をインビトロで産生するために使用され得る。この技法によると、抗体Vドメイン遺伝子は、M13またはfdなどの糸状バクテリオファージの主要または非主要なコートポリペプチド遺伝子にインフレームでクローン化され、ファージ粒子の表面上に機能的抗体断片として表示される。糸状粒子はファージゲノムの一本ストランドDNAコピーを含有することにより、抗体の機能的特性に基づく選択は、それらの特性を呈する抗体をコードする遺伝子の選択をもたらす。したがって、ファージは、B細胞の特性のいくつかを模倣する。ファージディスプレイは、様々なフォーマットで行われ得、それらの概説に関しては、例えば、Johnson,Kevin S.and Chiswell,David J.,Current Opinion in Structural Biology 3:564−571(1993)を参照されたい。V−遺伝子セグメントのいくつかの供給源は、ファージディスプレイのために使用され得る。Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)は、免疫化マウスの脾臓に由来するV遺伝子の小さなランダムコンビナトリアルライブラリから、抗オキサゾロン抗体の多種多様なアレイを単離した。未免疫のヒト供与体由来のV遺伝子のレパートリーは、構築され得、多種多様なアレイの抗原(自己抗原を含む)に対する抗体は、Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1991)、またはGriffith et al.,EMBO J.12:725−734(1993)により記載される技法に従って本質的に単離され得る。米国特許第5,565,332号及び同第5,573,905号も参照されたい。
【0128】
また、ヒト抗体は、インビトロ活性化B細胞により生成され得る(米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号を参照されたい)。
【0129】
(iv)抗体断片
いくつかの実施形態において、抗体は、抗体断片である。抗体断片を産生するための多様な技法が開発されている。従来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解消化により得られていた(例えば、Morimoto et al.,Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117(1992)、及びBrennan et al.,Science 229:81(1985)を参照されたい)。しかし、これらの断片は、現在、組み換え宿主細胞により直接産生され得る。例えば、抗体断片は、上記で考察される抗体ファージライブラリから単離され得る。あるいは、Fab’−SH断片は、E.coliから直接回収され、化学的にカップリングして、F(ab’)断片を形成し得る(Carter et al.,Bio/Technology 10:163−167(1992))。別の手法によると、F(ab’)断片は、組み換え宿主細胞培養物から直接単離され得る。抗体断片を産生するための他の技法が、当業者に明らかであろう。他の実施形態において、最適な抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185、米国特許第5,571,894号、及び米国特許第5,587,458号を参照されたい。抗体断片は、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されるように、「線状抗体」であってもよい。かかる線状抗体断片は、単一特異性または二重特異性であり得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される抗体の断片が提供される。いくつかの実施形態において、抗体断片は、抗原結合断片である。いくつかの実施形態において、抗原結合断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、scFv、Fv、及びダイアボディからなる群から選択される。
【0131】
(v)二重特異性抗体
いくつかの実施形態において、抗体は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。例示的な二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに結合し得る。あるいは、二重特異性抗体結合アームは、細胞防御機序を細胞に局在化するように、T細胞受容体分子(例えば、CD2またはCD3)などの白血球上の誘発分子、またはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、及びFcγRIII(CD16)などのIgG(FcγR)のFc受容体に結合するアームと組み合わされ得る。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製され得る(例えば、F(ab’)二重特異性抗体)。いくつかの実施形態において、抗体は、T細胞依存性二重特異性(TDB)抗体である。いくつかの実施形態において、TDBは、標的抗原結合断片及びT細胞受容体結合断片を含む。いくつかの実施形態において、TDBは、標的抗原結合断片及びCD3結合断片を含む。いくつかの実施形態において、TDBは、標的抗原結合断片及びCD3e結合断片を含む。
【0132】
二重特異性抗体を作製するための方法が当技術分野で知られている。全長二重特異性抗体の従来の産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づき、これらの2つの鎖は、異なる特異性を有する(Millstein et al.,Nature 305:537−539(1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダム分類により、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の混合物を産生する可能性があり、これらのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。通常は親和性クロマトグラフィーステップにより行われる正しい分子の精製は、やや煩雑であり、産生物収率は低い。同様の手順が、WO93/08829、及びTraunecker et al.,EMBO J.,10:3655−3659(1991)で開示される。
【0133】
異なる手法によると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原の組み合わせ部位)が、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。いくつかの実施形態において、融合は、ヒンジ、CH2、及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。いくつかの実施形態において、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)は、融合物のうちの少なくとも1つの中に存在する。免疫グロブリン重鎖融合物、所望される場合、免疫グロブリン軽鎖融合物をコードするDNAは、別個の発現ベクターに挿入され、好適な宿主生物に共トランスフェクトされる。これは、構築時に使用される不均等な比率の3つのポリペプチド鎖が最適収率を提供するとき、実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互割合を調整する上で優れた柔軟性を提供する。しかし、等しい比率での少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収率をもたらすとき、またはそれらの比率が特に重要でないとき、2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0134】
この手法のいくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、一方のアームにある第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアームにあるハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)とからなる。二重特異性分子の半分のみでの免疫グロブリン軽鎖の存在が容易な分離を提供するため、この非対称構造が、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離を容易にすることが見出された。この手法は、WO94/04690で開示されている。二重特異性抗体の生成のさらなる詳細に関しては、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照されたい。
【0135】
米国特許第5,731,168号に記載される別の手法によると、一対の抗体分子間の界面を操作して、組み換え細胞培養から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大にできる。いくつかの実施形態において、界面は、抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法において、第1の抗体分子の界面由来の1つ以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。大きい側鎖(複数可)と同一または同様のサイズの補償「キャビティ」は、大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置き換えることにより第2の抗体分子の界面上に作製される。これは、ホモ二量体などの他の望ましくない最終産生物よりもヘテロ二量体の収率を増加させるための機序を提供する。
【0136】
二重特異性抗体は、架橋または「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体のうちの1つはアビジンにカップリングし、他のものはビオチンにカップリングし得る。かかる抗体は、例えば、免疫系細胞の標的を望ましくない細胞に絞るため(米国特許第4,676,980号)、及びHIV感染の処理のために提唱されている(WO91/00360、WO92/200373、及びEP0308936)。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋方法を使用して作製され得る。好適な架橋剤は、当技術分野で周知されており、いくつかの架橋技法と併せて米国特許第4,676,980号で開示される。
【0137】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技法も文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学連結を使用して調製され得る。Brennan et al.,Science 229:81(1985)は、インタクトな抗体がタンパク質分解的に切断されて、F(ab’)断片を生成する手順を記載する。これらの断片は、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、隣接するジチオールを安定させ、分子間ジスルフィド形成を阻止する。次いで、生成されたFab’断片は、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。次いで、Fab’−TNB誘導体のうちの1つが、メルカプトエチルアミンを用いた還元によりFab’−チオールに再変換され、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体が形成される。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用され得る。
【0138】
組み換え細胞培養物から直接的に二重特異性抗体断片を作製及び単離するための多様な技法も記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して産生されている。Kostelny et al.,J.Immunol.148(5):1547−1553(1992)。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合により2つの異なる抗体のFab’部分に連結した。抗体ホモ二量体がヒンジ領域で還元されてモノマーが形成され、次いで、再酸化されて、抗体ヘテロ二量体が形成された。この方法は、抗体ホモ二量体の産生のためにも利用され得る。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)により記載される「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的な機序を提供している。断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーにより軽鎖可変ドメイン(V)に連結した重鎖可変ドメイン(V)を含む。したがって、1つの断片のV及びVドメインは、別の断片の相補的V及びVドメインと対合させられ、それにより、2つの抗原結合部位が形成される。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用により二重特異性抗体断片を作製するための別の方策も報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.152:5368(1994)を参照されたい。
【0139】
二価を超える抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991)。
【0140】
(v)多価抗体
いくつかの実施形態において、抗体は、多価抗体である。多価抗体は、その抗体が結合する抗原を発現する細胞により、二価抗体よりも速く内部移行(及び/または異化)され得る。本明細書で提供される抗体は、3つ以上の抗原結合部位を有する(IgMクラス以外の)多価抗体(例えば、四価抗体)であり得、これは、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組み換え発現により容易に産生され得る。多価抗体は、二量体化ドメイン及び3つ以上の抗原結合部位を含み得る。好ましい二量体化ドメインは、Fc領域またはヒンジ領域を含む(またはそれらからなる)。このシナリオにおいて、抗体は、Fc領域と、Fc領域のアミノ末端側に3つ以上の抗原結合部位とを含むことになる。本明細書における好ましい多価抗体は、3〜約8つ、しかし好ましくは4つの抗原結合部位を含む(または、それらからなる)。多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(及び、好ましくは2つのポリペプチド鎖)を含み、ここで、ポリペプチド鎖(複数可)は、2つ以上の可変ドメインを含む。例えば、ポリペプチド鎖(複数可)は、VD1−(X1)n−VD2−(X2)n−Fcを含み得、ここで、VD1は、第1の可変ドメインであり、VD2は、第2の可変ドメインであり、Fcは、Fc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1及びX2は、アミノ酸またはポリペプチドを表し、nは、0または1である。例えば、ポリペプチド鎖(複数可)は、VH−CH1−可動性リンカー−VH−CH1−Fc領域鎖、またはVH−CH1−VH−CH1−Fc領域鎖を含み得る。本明細書における多価抗体は好ましくは、少なくとも2つの(及び、好ましくは4つの)軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに含む。本明細書における多価抗体は、例えば、約2〜約8つの軽鎖可変ドメインポリペプチドを含み得る。本明細書で企図される軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、任意に、CLドメインをさらに含む。いくつかの実施形態において、多価抗体は、T細胞結合断片を含む。いくつかの実施形態において、多価抗体は、T細胞受容体結合断片を含む。いくつかの実施形態において、多価抗体は、CD3結合断片を含む。いくつかの実施形態において、多価抗体は、CD3e結合断片を含む。
【0141】
いくつかの実施形態において、抗体は、多重特異性抗体である。多重特異性抗体の例には、重鎖可変ドメイン(V)及び軽鎖可変ドメイン(V)を含む抗体(V単位が、ポリエピトープ特異性を有する)、2つ以上のV及びVドメインを有し、各V単位が異なるエピトープに結合する抗体、2つ以上の単一可変ドメインを有し、各単一可変ドメインが異なるエピトープに結合する抗体、全長抗体、抗体断片、例えば、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三機能的抗体、共有連結している抗体断片または共有連結していない抗体断片が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、その抗体は、ポリエピトープ特異性、例えば、同じかまたは異なる標的(複数可)上の2つ以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を有する。いくつかの実施形態において、抗体は、単一特異性抗体、例えば、1つのみのエピトープに結合する抗体である。一実施形態によれば、多重特異性抗体は、5μM〜0.001pM、3μM〜0.001pM、1μM〜0.001pM、0.5μM〜0.001pM、または0.1μM〜0.001pMの親和性で各エピトープに結合するIgG抗体である。
【0142】
(vi)他の抗体修飾
例えば、抗体の抗原依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)及び/または補体依存性細胞傷害性(CDC)を増強するために、エフェクター機能に関して本明細書で提供される抗体を修飾することが望ましい場合がある。これは、1つ以上のアミノ酸置換を抗体のFc領域内に導入することにより到達され得る。あるいはまたは加えて、システイン残基(複数可)は、Fc領域内に導入され得、それにより、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にする。このように生成されたホモ二量体抗体は、改善した内部移行能力、ならびに/または増加した補体媒介性細胞死滅及び抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有し得る。Caron et al.,J.Exp Med.176:1191−1195(1992)、及びShopes,B.J.,Immunol.148:2918−2922(1992)を参照されたい。また、増強された抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体は、Wolff et al.,Cancer Research 53:2560−2565(1993)に記載されるようなヘテロ二官能性架橋剤を使用して調製され得る。あるいは、二重Fc領域を有し、それにより、増強された補体媒介性溶解及びADCC能力を有し得る抗体が操作され得る。Stevenson et al.,Anti−Cancer Drug Design 3:219−230(1989)を参照されたい。
【0143】
抗体の血清の半分を増加させるために、血清半減期、アミノ酸代替物が、US2006/0067930に記載されるような抗体において作製され得、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0144】
(B)ポリペプチド変異体及び修飾
本明細書に記載される抗体を含むポリペプチドのアミノ酸配列修飾(複数可)が、本明細書に記載されるポリペプチド(例えば、抗体)を精製する方法で使用され得る。
【0145】
(i)変異体ポリペプチド
「ポリペプチド変異体」は、ポリペプチドの全長天然配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、シグナルペプチドを有するかまたは有しないポリペプチドの細胞外ドメインと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する本明細書で定義されるようなポリペプチド、好ましくは、活性ポリペプチドを意味する。かかるポリペプチド変異体には、例えば、1つ以上のアミノ酸残基が全長天然アミノ酸配列のN末端またはC末端に付加または欠失されたポリペプチドが含まれる。通常、TATポリペプチド変異体は、全長天然配列ポリペプチド配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、シグナルペプチドを有するかまたは有しないポリペプチドの細胞外ドメインと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%のいずれかのアミノ酸配列同一性を有することになる。任意に、変異体ポリペプチドは、天然ポリペプチド配列と比較して1個以下の保存的アミノ酸置換を有するか、あるいは天然ポリペプチド配列と比較して約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10個のいずれか以下の保存的アミノ酸置換を有することになる。
【0146】
変異体ポリペプチドは、N末端もしくはC末端で切断され得るか、または例えば、全長天然ポリペプチドと比較して、内部残基を欠く場合がある。ある特定の変異体ポリペプチドは、所望の生物活性にとって不可欠ではないアミノ酸残基を欠く場合がある。切断、欠失、及び挿入を有するこれらの変異体ポリペプチドは、いくつかの従来の技法のいずれかにより調製され得る。所望の変異体ポリペプチドは、化学的に合成され得る。別の好適な技法は、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)により所望の変異体ポリペプチドをコードする核酸断片の単離及び増幅することを伴う。核酸断片の所望の末端を定義するオリゴヌクレオチドは、PCRにおいて5’プライマー及び3’プライマーで用いられる。好ましくは、変異体ポリペプチドは、本明細書に開示される天然ポリペプチドと少なくとも1つの生物学的及び/または免疫学的活性を共有する。
【0147】
アミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドの範囲であるアミノ末端及び/またはカルボキシル末端の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N−末端メチオニル残基を有する抗体、または細胞傷害性ポリペプチドに融合した抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体の血清半減期を増加させる酵素またはポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が含まれる。
【0148】
例えば、ポリペプチドの結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、適切なヌクレオチド変化を抗体核酸に導入することにより、またはペプチド合成により調製される。かかる修飾には、例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/またはそれへの挿入、及び/またはその置換が含まれる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構築体を達成するためになされるが、但し、最終構築体が所望の特徴を有することを条件とする。アミノ酸変化は、ポリペプチド(例えば、抗体)の翻訳後プロセスも改変し得、例えば、グリコシル化部位の数または位置を変化できる。
【0149】
どのアミノ酸残基が所望の活性に悪影響を及ぼすことなく挿入、置換、または欠失され得るのかを決定する際の手引きは、ポリペプチドの配列を同種の既知のポリペプチド分子の配列と比較し、かつ相同性の高い領域で行われたアミノ酸配列変化の数を最小限に抑えることにより見出され得る。
【0150】
変異誘発の好ましい位置であるポリペプチド(例えば、抗体)のある特定の残基または領域の特定に有用な方法は、Cunningham and Wells,Science 244:1081−1085(1989)により記載されるような「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれる。ここで、残基または標的残基群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)が特定され、中性または負に荷電されたアミノ酸(最も好ましくはアラニンまたはポリアラニン)に置き換えられて、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を及ぼす。次いで、置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置は、さらなるまたは他の変異体を置換部位に、またはそこの代わりに導入することにより洗練される。したがって、アミノ酸配列変異を導入するための部位が予め決定されている一方で、突然変異自体の性質は予め決定される必要はない。例えば、所与の部位での突然変異の性能を分析するために、アラスキャニングまたはランダム突然変異生成が標的コドンまたは領域で実行され、発現された抗体変異体が所望の活性に関して選別される。
【0151】
別の型の変異体は、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基により置き換えられた抗体分子内に少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。置換突然変異生成のために最も重要な部位には、超可変領域が含まれるが、FR改変も企図される。保存的置換は、下記の表2の見出し「例示的な置換」の下に示される。かかる置換が生物活性の変化をもたらす場合、表2に「置換」と表示されるか、またはアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載されるより実質的な変化が導入され得、産生物が選別され得る。
【0152】
ポリペプチドの生物学的特性の実質的な修飾は、(a)置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、例えば、シートもしくは螺旋立体配座、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のバルクの維持に対するそれらの影響が著しく異なる置換を選択することにより達成される。アミノ酸は、それらの側鎖の特性の類似性に従って群分けされ得る(A.L.Lehninger,Biochemistry second ed.,pp.73−75,Worth Publishers,New York(1975))。
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
【0153】
あるいは、自然発生する残基は、共通の側鎖特性に基づいて群に分別され得る。
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln
(3)酸性:Asp、Glu
(4)塩基性:His、Lys、Arg
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
【0154】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーと別のクラスのメンバーとの交換を伴う。
【0155】
抗体の適切な立体配座の維持を伴わない任意のシステイン残基も概してセリンで置換されて、分子の酸化的安定性が改善され、異常な架橋が阻止され得る。逆に、システイン結合(複数可)がポリペプチドに付加されて、その安定性が改善され得る(具体的には、抗体がFv断片などの抗体断片である場合)。
【0156】
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。概して、さらなる開発のために選択されて得られた変異体(複数可)は、それらが生成される親抗体に対して改善された生物学的特性を有することになる。かかる置換変異体を生成するための簡便な方法は、ファージディスプレイを使用した親和性成熟を伴う。簡潔には、いくつかの超可変領域部位(例えば、6〜7つの部位)が突然変異されて、各部位に全ての想定されるアミノ置換が生成される。このように生成された抗体変異体は、各粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III産生物への融合物として糸状ファージ粒子からの一価様式で表示される。次いで、ファージディスプレイされた変異体は、本明細書で開示されるようなそれらの生物活性(例えば、結合親和性)に関して選別される。修飾のための候補超可変領域部位を特定するために、アラニンスキャニング突然変異生成が行われ、抗原結合に著しく寄与する超可変領域残基が特定され得る。あるいは、または加えて、抗原−抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体と標的との間の接触点を特定することが有益であり得る。かかる接触残基及び隣接残基は、本明細書に詳述される技法に従う置換の候補である。かかる変異体が生成されると、変異体のパネルが本明細書に記載されるように選別され、1つ以上の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体がさらなる開発のために選択され得る。
【0157】
ポリペプチドの別の型のアミノ酸変異体は、抗体の元のグリコシル化パターンを改変する。ポリペプチドは、非アミノ酸部分を含み得る。例えば、ポリペプチドは、グリコシル化され得る。かかるグリコシル化は、宿主細胞もしくは宿主生物でのポリペプチドの発現中に自然に生じ得るか、またはヒト介入に起因する計画的な修飾であり得る。改変は、ポリペプチドに見られる1つ以上の炭水化物部分の欠失、及び/またはポリペプチド中に存在しない1つ以上のグリコシル化部位の付加を意味する。
【0158】
ポリペプチドのグリコシル化は典型的には、N連結またはO連結のいずれかである。N連結は、炭水化物部分の、アスパラギン残基の側鎖への結合を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−トレオニン(式中、Xは、プロリン以外の任意のアミノ酸である)は、炭水化物部分の、アスパラギン側鎖への酵素結合の認識配列である。したがって、ポリペプチド内でのこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を作製する。O連結グリコシル化は、糖類であるN−アセイルガラクトサミン(aceylgalactosamine)、ガラクトース、またはキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはトレオニンへの結合を指すが、5−ヒドロキシプロリンまたは5−ヒドロキシリジンも使用され得る。
【0159】
グリコシル化部位のポリペプチドへの付加は、(N連結グリコシル化部位のための)上述されるトリペプチド配列のうちの1つ以上を含有するようにアミノ酸配列を改変することにより簡便に達成される。改変は、(O連結グリコシル化部位のための)元の抗体の配列への1つ以上のセリンまたはトレオニン残基の付加、またはそれによる置換によっても行われ得る。
【0160】
ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的もしくは酵素的に、またはグリコシル化の標的としての機能を果たすアミノ酸残基をコードするコドンの突然変異置換により達成され得る。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、様々なエンド−及びエキソ−グリコシダーゼの使用により到達され得る。
【0161】
他の修飾には、それぞれ、グルタミニル残基及びアスパラギニル残基の、対応するグルタミル残基及びアスパルチル残基それぞれへの脱アミド化、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
【0162】
(ii)キメラポリペプチド
本明細書に記載されるポリペプチドは、別の異種ポリペプチドまたはアミノ酸配列に融合したポリペプチドを含むキメラ分子を形成するための方法で修飾され得る。いくつかの実施形態において、キメラ分子は、ポリペプチドと、抗タグ抗体が選択的に結合し得るエピトープを提供するタグポリペプチドとの融合を含む。エピトープタグは概して、ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に位置する。かかるエピトープタグ形態のポリペプチドの存在は、タグポリペプチドに対する抗体を使用して検出され得る。エピトープタグの提供は、抗タグ抗体、またはエピトープタグに結合する別の型の親和性マトリックスを使用してポリペプチドを親和性精製により容易に精製することも可能にする。
【0163】
代替的な実施形態において、キメラ分子は、ポリペプチドと免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定の領域との融合を含み得る。キメラ分子の二価の形態は、「イムノアドヘシン」と称される。
【0164】
本明細書で使用される場合、「イムノアドヘシン」という用語は、異種ポリペプチドの結合特異性と、免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能とを組み合わせた抗体様分子を指す。構造的には、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(すなわち、「異種である」)所望の結合特異性を有するアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。イムノアドヘシンのアドヘシン部分は典型的には、受容体またはリガンドの結合部位を少なくとも含んだ連続したアミノ酸配列である。イムノアドヘシンにおける免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG−1、IgG−2、IgG−3、もしくはIgG−4サブ型、IgA(IgA−1及びIgA−2を含む)、IgE、IgD、またはIgMなどの任意の免疫グロブリンから得ることができる。
【0165】
Ig融合物は好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の代わりに、ポリペプチドの可溶性(欠失したか、または不活性化の膜貫通ドメイン)形態を置換することを含む。特に好ましい実施形態において、免疫グロブリン融合は、ヒンジ、CH及びCH、またはIgG1分子のヒンジ、CH、CH、及びCH領域を含む。
【0166】
(iii)ポリペプチドコンシュゲート
ポリペプチド製剤で使用するためのポリペプチドは、化学療法剤、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、またはそれらの断片)、または放射性同位体(すなわち、放射性コンジュゲート)などの細胞傷害性剤にコンジュゲートされ得る。
【0167】
かかるコンジュゲートの生成において有用な化学療法剤が使用され得る。加えて、使用され得る酵素的に活性な毒素及びそれらの断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(シュードモナスエルギノーサ由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンシンタンパク質、アメリカヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンが含まれる。様々な放射性核種は、放射性コンジュゲートされたポリペプチドの産生のために利用可能である。例には、212Bi、131I、131In、90Y、及び186Reが含まれる。ポリペプチドと細胞傷害性剤とのコンシュゲートは、N−サクシニミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオナート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHCLなど)、活性エステル(スベリン酸ジサクシニミジルなど)、アルデヒド(グルタレルデヒド(glutareldehyde)など)、ビス−アジド化合物(ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス−ジアゾニウム誘導体(ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トリエン(tolyene)2,6−イソシアネートなど)、及びビス−活性フッ素化合物(1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼンなど)などの様々な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されるように調製され得る。炭素−14−標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドをポリペプチドにコンジュゲートするための例示的なキレート剤である。
【0168】
ポリペプチドと、カリケアマイシン、マイタンシノイド、トリコテン(trichothene)、及びCC1065、ならびに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体などの1つ以上の小分子毒素とのコンシュゲートも本明細書で企図されている。
【0169】
マイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害することにより作用するマイトトティク阻害剤である。マイタンシンは、東アフリカ低木メイテナス・セラタ(east African shrub Maytenus serrata)から最初に単離された。その後、ある特定のマイクローブもまた、マイタンシノール及びC−3マイタンシノールエステルなどのマイタンシノイドを産生することが発見された。合成マイタンシノール、ならびにその誘導体及び類似体も企図される。例えば、米国特許第5,208,020号で開示されるものを含む、ポリペプチド−マイタンシノイドコンジュゲートを作製するための、当技術分野で既知の多くの連結基が存在する。連結基には、上記で特定される特許で開示されるようなジスフィド(disulfide)基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定基、ペプチダーゼ不安定基、またはエステラーゼ不安定基が含まれ、ジスルフィド基及びチオエーテル基が好ましい。
【0170】
連結の型に応じて、リンカーが多様な位置でマイタンシノイド分子に結合され得る。例えば、エステル結合は、従来のカップリング技法を使用するヒドロキシル基との反応により形成され得る。反応は、ヒドロキシル基を有するC−3位、ヒルドキシメチル(hyrdoxymethyl)で修飾したC−14位、ヒドロキシル基で修飾したC−15位、及びヒドロキシル基を有するC−20位で生じ得る。好ましい実施形態において、連結は、マイタンシノールまたはマイタンシノール類似体のC−3位に形成される。
【0171】
目的の別のコンジュゲートは、1つ以上のカリケアマイシン分子にコンジュゲートされたポリペプチドを含む。抗生物質のカリケアマイシンファミリーは、ピコモルを下回る濃度で二本鎖DNAの切断をもたらすことができる。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製物に関しては、例えば、米国特許第5,712,374号を参照されたい。使用され得るカリケアマイシンの構造的な類似体には、γ、α、α、N−acetyl−γ、PSAG、及びθが含まれるが、これらに限定されない。抗体がコンジュゲートされ得る別の抗腫瘍薬物は、葉酸代謝拮抗薬であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAの両方は、細胞内作用部位を有し、血漿膜を容易に横断しない。したがって、ポリペプチド(例えば、抗体)媒介性内部移行によるこれらの薬剤の細胞取り込みは概して、それらの細胞傷害性効果を増強する。
【0172】
本明細書に記載されるポリペプチドにコンジュゲートされ得る他の抗腫瘍薬剤には、BCNU、ストレプトゾイシン(streptozoicin)、ビンクリスチン、及び5−フルオロウラシル、既知の集合的LL−E33288複合体の薬剤のファミリー、ならびにエスペラマイシンが含まれる。
【0173】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、ポリペプチドと、核酸分解活性(例えば、リボヌクレアーゼまたはDNAエンドヌクレアーゼ、例えば、デオキシリボヌクレアーゼ、DNase)を有する化合物との間のコンジュゲートであり得る。
【0174】
さらに別の実施形態において、ポリペプチド(例えば、抗体)は、ポリペプチド受容体コンジュゲートが患者に投与される腫瘍事前標的で利用するために「受容体」(かかるストレプトアビジン)にコンジュゲートされ得、続いて、非結合コンジュゲートが、除去剤を使用して血液循環から除去され、次いで、細胞傷害性剤(例えば、放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートされる「リガンド」(例えば、アビジン)が投与される。
【0175】
いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、前駆薬物(例えば、ペプチジル化学療法剤)を活性抗癌薬物に変換する前駆薬物活性化酵素にコンジュゲートされ得る。免疫コンジュゲートの酵素構成成分には、前駆薬物において、それをそのより活性な細胞傷害性形態に変換するような方法で作用できる任意の酵素が含まれる。
【0176】
有用である酵素には、リン酸塩含有前駆薬物を遊離薬物に変換するのに有用なアルカリホスファターゼ;硫酸塩含有前駆薬物を遊離薬物に変換するのに有用なアリールスルファターゼ;無毒性5−フルオロシトシンを抗癌薬物、5−フルオロウラシルに変換するのに有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有前駆薬物を遊離薬物に変換するのに有用なセラチアプロテアーゼ、サーモリシン、サブチリシン、カルボキシペプチダーゼ、及びカテプシン(カテプシンB及びLなど)などのプロテアーゼ;D−アミノ酸置換基を含有する前駆薬物を変換するのに有用なD−アラニルカルボキシペプチダーゼ;グリコシル化前駆薬物を遊離薬物に変換するのに有用なβ−ガラクトシダーゼ及びノイラミニダーゼなどの炭水化物切断酵素、β−ラクタムで誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するのに有用なβ−ラクタマーゼ、ならびにアミン窒素において、フェノキシアセチル基またはフェニルアセチル基でそれぞれ誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するのに有用なペニシリンVアミダーゼまたはペニシリンGアミダーゼなどのペニシリンアミダーゼが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、酵素活性を有する抗体も「アブザイム」として当技術分野で知られており、前駆薬物を遊離活性薬物に変換するために使用され得る。
【0177】
(iv)その他
ポリペプチドの別の型の共有結合修飾は、ポリペプチドを様々な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのコポリマーのうちの1つに連結することを含む。ポリペプチドはまた、例えば、コアセルベーション技法もしくは界面重合により調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メチルメタチレート(methylmethacylate)))中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子、及びナノカプセル)中に、またはマクロ乳濁液中に取り込まれ得る。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,Gennaro,A.R.,Ed.,(1990)で開示される。
【0178】
V.本製剤及び本方法で使用するためのポリペプチドの取得
本明細書に記載される分析方法で使用されるポリペプチドは、組み換え方法を含む、当技術分野で周知の方法を使用して得ることができる。以下の段落は、これらの方法に関する手引きを提供する。
【0179】
(A)ポリヌクレオチド
本明細書で互換的に使用されるような「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。
【0180】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリペプチドmRNAを有し、検出可能なレベルでそれを発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリを含むが、これに限定されない任意の供給源から得ることができる。したがって、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリから簡便に得ることができる。ポリペプチドコード遺伝子も、ゲノムライブラリから、または既知の合成手順(例えば、自動核酸合成)により得ることができる。
【0181】
例えば、ポリヌクレオチドは、軽鎖または重鎖などの全体の免疫グロブリン分子鎖をコードし得る。完全な重鎖は、重鎖可変領域(V)だけでなく、典型的には3つの定常ドメイン:C1、C2、及びC3を含むことになる重鎖定常領域(C)、ならびに「ヒンジ」領域を含む。ある状況において、定常領域の存在が望ましい。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、TDBの1つ以上の免疫グロブリン分子鎖をコードする。
【0182】
ポリヌクレオチドによりコードされ得る他のポリペプチドは、単一ドメイン抗体(「dAbs」)、Fv、scFv、Fab’、及びF(ab’)、ならびに「ミニボディ」などの抗原結合抗体断片を含む。ミニボディは(典型的には)、C1及びCまたはCドメインが切除されている二価抗体断片である。ミニボディが従来の抗体より小さいため、それらは、臨床/診断での使用でより良好な組織浸透を達成するはずであるが、二価であるため、それらは、dAbsなどの一価抗体断片より高い結合親和性を保持するはずである。したがって、文脈が別途規定しない限り、「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、全ての抗体分子だけでなく、上記で考察される型の抗原結合抗体断片も包含する。好ましくは、コードされたポリペプチド中に存在する各フレームワーク領域は、対応するヒトアクセプターフレームワークに対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含むことになる。したがって、例えば、フレームワーク領域は、アクセプターフレームワーク領域に対して、合計で3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個のアミノ酸置換を含み得る。
【0183】
本明細書で開示される特徴は全て、任意の組み合わせで組み合わされ得る。本明細書で開示される各特徴は、同じ、同等、または同様の目的を果たす代替の特徴により置き換えられ得る。したがって、別途明確に示されない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の同等または同様の特徴の一例にすぎない。
【0184】
本発明のさらなる詳細が、以下の非限定的な実施例により例示される。本明細書における全ての参考文献の開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例】
【0185】
以下の実施例は、単に本発明の例示となるよう意図されており、したがって、決して本発明を限定するものと解釈されるべきではない。以下の実施例及び詳細な説明は、限定するものではなく、例示として提供されている。
【0186】
実施例1.抗CD3ホモ二量体によるT細胞の活性化。
T細胞依存性二重特異性(TDB)抗体(αCD20/αCD3 TDB、抗CD20(Mab2;VH配列番号:31/VL配列番号:32)/抗CD3(Mab1;VH配列番号:19/VL配列番号:20))は、T細胞活性化及び抗原細胞死滅を誘導するために、CD20抗原発現細胞を必要とする。図1Aで示されるように、CD8T細胞をヒト末梢血液から単離し、1:1の比にて抗原発現標的細胞株でインキュベートし、精製されたαCD20/αCD3 TDB抗体の増加濃度で刺激した。TDBを細胞に付加した後、24時間のインキュベーション後に、T細胞を、T細胞活性化のマーカーである、T細胞の表面上で誘導されたCD69(C型レクチンタンパク質)及びCD25(IL−2受容体)の量に関して、フローサイトメトリーにより評価した(Shipkova M,2012,Clin.Chim.Acta.413:1338−49、及びZiegler SF,et al.,1994,Stem Cells 12(5):465−465)。CD69及びCD25細胞表面発現は、αCD20/αCD3 TDBを用いた刺激に際して用量依存的に増加する。CD69及びCD25細胞表面発現の増加の欠如を根拠とするように、標的細胞(青色の矩形)の不在下ではT細胞活性化は存在しない。図1Bに示すように、T細胞は、αCD20/αCD3 TDBによる標的細胞死滅を媒介するために必要とされる。PBMC、またはネガティブ選択によりCD3+(T細胞受容体/CD3eサブユニット)が減損したPBMC(Milteny Biotec)を、1:1の比にてCD20発現標的細胞株でインキュベートし、次いで、αCD20/αCD3 TDBの増加濃度で刺激した。PBMCは、24時間後にフローサイトメトリーにより標的細胞の数の用量依存性の減少を示した(赤色の丸)。しかし、CD3+T細胞がPBMCプールから減損したとき、標的細胞の損失は検出されなかった(青色の矩形)。したがって、αCD20/αCD3 TDBによるCD20−発現標的細胞減損は、CD3+T細胞の活性化を必要とし、αCD20/αCD3 TDBだけでは、標的細胞死滅を誘導することができない。
【0187】
精製された抗CD3ホモ二量体がヒト供与体T細胞を活性化する。2つの異なる供与体からのヒト供与体PBMCを、精製された抗CD3ホモ二量体またはαCD20/αCD3 TDB二重特異性抗体の増加濃度で処理し、上述されるように24時間後に、FACSによりT細胞活性化のレベルに関して試験した。供与体1(図2、左側パネル)、及び供与体2(図2、右側パネル)を、抗CD8抗体、抗CD69、及び抗CD25抗体で染色した。抗CD3ホモ二量体またはαCD20/αCD3 TDB処理の量に対して、T細胞活性化マーカーCD69及びCD25に対するCD8T細胞の陽性パーセンテージをプロットした。抗CD3及びαCD20/αCD3 TDBは、標的細胞の存在下でT細胞を用量依存的に活性化するが、αCD20/αCD3 TDB(EC50:4〜6ng/mL)は、抗CD3ホモ二量体(EC50:169〜526ng/mL)より強力なT細胞の活性化体である。供与体の可変性にかかわらず、抗CD3ホモ二量体は、ヒトT細胞を活性化し得る。
【0188】
抗CD3ホモ二量体は、二重特異性抗体の有効性を減少し得る。αCD20/αCD3 TDBを添加し、異なる濃度の精製された抗CD3ホモ二量体の応答を測定した。抗CD3ホモ二量体は、20%を超える抗CD3ホモ二量体のレベルで、T細胞活性化のレベル及び標的細胞応答のレベルの両方においてαCD20/αCD3 TDBの有効性を用量依存的に著しく減少させる(図3A及び表3)。αCD20/αCD3 TDBに添加した低レベルの抗CD3ホモ二量体(HD)は、PBMCを使用してT細胞活性化を著しく低減しない(CD8図3B左側パネル;CD4図3B右側パネル)。PBMCを、精製された抗CD3ホモ二量体の定常量(2.5%または5%)で固定されたTDBの増加レベルで刺激し、フローサイトメトリー(FACS)により分析して、T細胞活性化(T細胞活性化マーカーCD69及びCD25に関する染色)を評価した。5%未満のレベルでの抗CD3ホモ二量体は、CD8またはCD4T細胞のαCD20/αCD3 TDBのT細胞活性化電位に影響を与えない。
【0189】
抗CD3ホモ二量体は、標的細胞の不在下での多様なヒト供与体からのヒトCD8T細胞を弱く活性化し得る。標的細胞の存在下で、αCD20/αCD3 TDBは、6つのヒト供与体から単離されたPBMCからのCD8T細胞の大半を強力に活性化することができ、低レベルの抗CD3ホモ二量体(2.5%または5%)は、TDBの平均T細胞活性化電位を著しく活性化しない(図4A;B+状態)。標的細胞の不在下で(図4A;B−状態)、抗CD3ホモ二量体は、CD8T細胞を弱く活性化し得る(わずかな平均活性化電位の増加)。ヒトT細胞の抗CD3ホモ二量体の活性化は、いくつかの代表的なサイトカインの増加に対する用量依存傾向を示す。6つのヒト供与体から単離されたPBMCを、標的細胞の存在(B+状態)または不在(B−状態)下で、1mg/mLのαCD20/αCD3 TDBで刺激し、2.5%または5%のいずれかの精製された抗CD3ホモ二量体とともに、またはそれなしで添加し、T細胞活性化の指標としての分泌サイトカインに関して試験することによりT細胞活性化電位に関して評価した。24時間後、条件付けられた培地を収集し、Luminexのサイトカイン検出キットを使用してサイトカインの存在に関して試験した。標的細胞の不在下での抗CD3ホモ二量体処理は、いくつかの供与体PBMCからのいくつかのサイトカインレベル(IL−10及びMCP−1)において、著しい用量依存性の増加を示した(図4B〜4E;B−状態)。平均サイトカインレベル応答がプロットされている。
【0190】
実施例2.抗CD3ホモ二量体不純物アッセイ
生物学的不純物アッセイは、T細胞依存性二重特異性(TDB)抗体の存在下でT細胞活性化不純物の存在を検出するために開発されている。抗CD3ホモ二量体が二価であるため、不純物の各アームは、T細胞活性化をもたらすTCRを架橋する可能性があり得る。OKT3などの抗CD3二価抗体によるTCR媒介性架橋は、サイトカインなどの標的遺伝子、またはFas、グランザイムB、及びパーフォリンなどの細胞死滅剤の転写誘導をもたらすNFAT及びNFκBを含む転写因子のリン酸化及び核局在化をもたらすT細胞シグナル伝達カスケードを活性化する(Brown,WM,2006,Curr Opin Investig Drugs 7:381−388、Ferran,C et al.,1993 Exp Nephrol 1:83−89、Shannon,MF et al.,1995,J.Leukoc.Biol.57:767−773;Shapiro,1998、Pardo,J,et al.,2003,Int Immunol.,15(12):1441−1450)。AP1、NFAT、またはNFκBの転写制御下のホタルルシフェラーゼなどのレポーター遺伝子は、シグナル伝達経路のTCR活性化及びT細胞活性化を監視するために使用されている(Shannon,MF et al.,1995,J.Leukoc.Biol.57:767−773;Shapiro,1998)。TDBが標的細胞の不在下でT細胞を活性化しないため(図1A及び1B)、TDBの存在下で抗CD3ホモ二量体を検出するための可能性のあるアッセイ方策としてレポーター遺伝子アッセイ手法を評価した。まずは、抗CD3ホモ二量体がインビトロでT細胞を活性化し得るどうかを評価するために、Jurkat T細胞(DSMZ、ACC282)を、組み換えTCR応答性レポーター遺伝子レンチウイルスストック(AP1−ルシフェラーゼ、NFAT−ルシフェラーゼ、またはNFκB−ルシフェラーゼ)で感染させ、安定プールを、10μg/mLの精製された抗CD3ホモ二量体で4時間処理した。Jurkat/AP1ルシフェラーゼ、Jurkat/NFATルシフェラーゼ、及びJurkat/NFκBルシフェラーゼの安定プールは、精製された抗CD3ホモ二量体を用いた刺激に際してルシフェラーゼの用量依存性誘導を示す。発光応答(ルシフェラーゼレポーター遺伝子活性)をプロットし、最も高い応答は、Jurkat/NFκBルシフェラーゼ安定プールから観察された。(図5A)。限定希釈液により単離されたJurkat/NFκBルシフェラーゼ安定クローンを、10μg/mLの精製された抗CD3ホモ二量体に対するそれらの応答に関して選別した。Jurkat T細胞NFκBルシフェラーゼプールは、他のTCR応答エレメントと比較して抗CD3ホモ二量体に対する最も高い応答を示したが、他の応答エレメントも抗CD3ホモ二量体を検出するのに有用である可能性があり得る。(図5B)。
【0191】
αCD20/αCD3 TDBに対するか、または抗CD3ホモ二量体に対するこのクローンの相対応答を決定するために、Jurkat/NFκBルシフェラーゼクローン2の細胞株を、CD20発現標的細胞株の存在下でαCD20/αCD3 TDBまたは抗CD3ホモ二量体の増加濃度で処理し、ルシフェラーゼ活性をプロットした(図6A)。10%のウシ胎児血清で補充したRPMI1640培地中で、細胞をαCD20/αCD3 TDBまたはCD3ホモ二量体で4時間刺激した。精製されたものは、共刺激標的細胞の存在下で、精製された抗CD3ホモ二量体より1000倍多く活性している。抗CD3ホモ二量体によるT細胞活性化のレベルは、αCD20/αCD3 TDBによる活性化レベルより低いが、それは、標的細胞の存在下で検出可能である。標的細胞の不在下で、αCD20/αCD3 TDBは、この細胞株中のルシフェラーゼ転写のNFκB−依存性活性化により測定される場合の高レベルのTDBにおいてでさえもT細胞活性化をもたらさないが、抗CD3ホモ二量体は、低レベルの産生物関連不純物においてでさえもルシフェラーゼ誘導を誘導できる(図6B)。操作されたJurkat/NFκBルシフェラーゼクローン2のレポーター遺伝子細胞株に対して観察されたこれらのT細胞活性化応答は、T細胞活性化の他の測定値を使用して、供与体末梢血液単核細胞(PBMC)から単離されたヒトT細胞を使用して観察された応答と比較可能であり、これは、T細胞活性化応答を監視するためのレポーター遺伝子の使用が比較可能であることを示す(表4)。Jurkat/NFκBルシフェラーゼクローン2の細胞株(Jurkat−NFκBLuc)を、αCD20/αCD3 TDB中の抗CD3ホモ二量体不純物の検出のための細胞に基づくアッセイ方法を開発及び最適化するために使用した。まとめて、これらのデータは、操作されたT細胞レポーター遺伝子細胞株が、TDB中の生物学的に活性である抗CD3ホモ二量体である産生物関連不純物を検出するために使用され得ることを示す。
【0192】
実施例3.抗CD3ホモ二量体を検出するための定量的方法
αCD20/αCD3 TDBの存在下で存在する生物学的に活性である不純物を検出するための感受性の定量的分析方法が開発されている。αCD20/αCD3 TDBのT細胞活性化アッセイは、操作されたT細胞レポーター遺伝子細胞株であるJurkat−NFκBLucを使用してRel/NFκBシグナル伝達経路のCD3e/TCR架橋により誘導された活性化を測定することにより、TDB試験試料中に存在する抗CD3ホモ二量体を検出する。アッセイ中に存在する標的細胞が存在しないため、抗CD3ホモ二量体のみが、T細胞レポーター細胞株を活性化し得る。活性化NFκBは核に転位置し、ルシフェラーゼの転写を促進する合成プロモーターにおいて8つのNFκB応答エレメントに結合する。アッセイにおいて、抗CD3ホモ二量体アッセイ標準物、抗CD3ホモ二量体対照、及びαCD20/αCD3 TDB試験試料の希釈液を調製し、96ウェルのアッセイプレート中の培養Jurkat−NFκBLucレポーター遺伝子細胞に付加した。aCD3ホモ二量体標準物は、αCD20/αCD3 TDB精製プロセスから単離された多数の精製されたaCD3ホモ二量体である。aCD3ホモ二量体対照は、精製されたaCD3ホモ二量体とともに添加したαCD20/αCD3 TDBであり、アッセイにおいてシステム適性基準として使用される。アッセイにおけるaCD3ホモ二量体対照の使用は、不純物アッセイ実行で使用される方法に特異的である。4時間のインキュベーションの後、ホモ二量体アッセイ標準物、ホモ二量体対照、及びαCD20/αCD3 TDB試験試料により誘導されたルシフェラーゼ活性の量を、発光プレートリーダーを使用して測定した。αCD20/αCD3 TDB試験試料中の生物学的に活性である抗CD3ホモ二量体の量を、別個のセットのプレートウェル中の抗CD3ホモ二量体アッセイ標準物から生成された発光標準曲線から決定した(図7)。試験試料中に存在する抗CD3ホモ二量体のパーセンテージを、試験試料中に存在するαCD20/αCD3 TDBの総量に対する、存在する抗CD3ホモ二量体の量の比により決定した。本方法の正確性を、既知の量の精製された抗CD3ホモ二量体をαCD20/αCD3 TDBの調製物に添加すること、及び抗CD3ホモ二量体の回収パーセントを測定することにより評価した。本方法は、全体的に良好な直線性を示し(図8)、全体的に6.8%の精密さを有する(表5)。αCD20/αCD3 TDBの1mg/mLストックにおいて、本方法は、添加レベルの抗CD3ホモ二量体を150ナノグラム、または0.02%の低さまで再現可能に検出することができた。実施された回収試験に基づいて、最適化された方法は、TDBの多様な調製物中に存在する抗CD3ホモ二量体レベルを0.25%〜35%の抗CD3ホモ二量体に確実に定量化することができ、全体的に6.8%の精密さを有した。各添加レベルにおける平均回収CV%として精密さを決定した。
【0193】
αCD20/αCD3 TDBのT細胞活性化アッセイは、別の産生物関連不純物、抗CD3集合体、及びαCD20/αCD3 TDB高分子量種の存在にも感受性を示す。SECを使用して検出される場合に2%を超えるHWMSを含有する試料は、Jurkat/NFκB−Luc細胞株のT細胞活性化をもたらし得る。T細胞活性化アッセイからのホモ二量体%として、HMWSによるこの活性化を定量化した(図9)。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]