(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
当該サイドエアバッグ装置はさらに、前記収納形態のエアバッグクッションの少なくとも一部を解放可能に覆う熱溶着布で形成されたカバーを備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在においても、サイドエアバッグ装置には、エアバッグクッションの乗員保護性能や乗員拘束力のさらなる向上が求められている。これら乗員保護性能等を向上させるには、例えばエアバッグクッションに対して何かしかの支えとなる部位を確保するなどの対策が挙げられる。しかしながら、特許文献1の
図4等に示されているように、サイドエアバッグ装置のエアバッグクッションは、車両用シートのシートバックの端に設けられていて、乗員とは反対側にはウレタン材等などの柔らかい部材しか存在していないことも多い。
【0007】
加えて、自動車の安全、環境に関する国際基準である国連欧州経済委員会規則(UN/ECE規則)の協定規則第21号には、客室の内部突起に関する規定が設けられている。この協定規則第21号では、乗員に対する傷害のリスクの増大等を防ぐために、内部突起として、剛性材料でできた鋭利な先端部があってはならないと定められている。このような規定を順守し、より安全な車両を実現するために、サイドエアバッグ装置においても内部突起に関する構成を見直す必要がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、乗員保護性能や乗員拘束力を向上可能であって客室の安全にも配慮したサイドエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるサイドエアバッグ装置の代表的な構成は、車両用シートに着座した乗員を側方から拘束するサイドエアバッグ装置であって、袋状であって巻回または折り畳まれた収納形態となっているエアバッグクッションと、車両用シートのシートバックの側部に内蔵されているサイドフレームにエアバッグクッションと共に取り付けられるインフレータと、を備え、インフレータは、サイドフレームのうちシートバックの幅方向の中央側に設置される本体部と、本体部からサイドフレームを貫通して幅方向の外側に突出するスタッドボルトと、を有し、当該サイドエアバッグ装置はさらに、サイドフレームから外側にスタッドボルトよりも突出していて、スタッドボルトの先端よりも曲率半径の大きい1つ以上の干渉防止部材を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、エアバッグクッションを車両用シートのサイドフレームの中央側に配置することで、エアバッグクッションは乗員を拘束するときにサイドフレームから反力を得やすくなる。加えて、干渉防止部材によって、スタッドボルトの先端に乗員や他の構造物が接触することがないようにし、客室の安全性を高めることができる。
【0011】
上記の干渉防止部材は、スタッドボルトの先端に被せて設置されてもよい。この構成によって、スタッドボルトの先端に丸みをもたらせ、客室の安全性を高めることが可能になる。
【0012】
当該サイドエアバッグ装置はさらに、エアバッグクッションおよびインフレータと共にサイドフレームに取り付けられる所定の保持プレートを備え、保持プレートは、エアバッグクッションとサイドフレームとの間に形成されている基礎部分と、サイドフレームの前方にて基礎部分から外側へ延びさらに前方へ延びている延長部分と、を含み、干渉防止部材は、サイドフレームのうちスタッドボルトよりも後方に設けられていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、保持プレートによってエアバッグクッションに反力を与え、エアバッグクッションをより円滑に膨張展開させて乗員保護性能の向上を図ることが可能になる。また、上記構成では、スタッドボルトの前後方向に保持プレートの延長部分と干渉防止部材とが存在することになるため、スタッドボルトの先端に他の構造物等が接触することを防ぎ、客室の安全性を高めることができる。
【0014】
上記の保持プレートの延長部分は、スタッドボルトよりも突出するように外側へ延びていてもよい。この構成によって、保持プレートの延長部分と干渉防止部材とが共にスタッドボルトよりも外側へ突出した構成となるため、他の構造物等のスタッドボルトの先端への接触を効率よく防ぐことが可能になる。
【0015】
上記の干渉防止部材は、保持プレートの基礎部分に設置されてサイドフレームを貫通していてもよい。この構成によって、干渉防止部材を好適に実施することが可能となる。
【0016】
上記の干渉防止部材は、サイドフレームの上下方向に沿って形成された複数の突起を含んでもよい。この構成の干渉防止部材によって、他の構造物等のスタッドボルトの先端への接触を効率よく防ぐことが可能になる。
【0017】
上記の保持プレートは、サイドフレームの上下方向において収納形態のエアバッグクッションよりも大きい寸法を有してもよい。この構成の保持プレートによって、エアバッグクッションを膨張展開の当初から効率よく支えることが可能になる。
【0018】
上記の干渉防止部材は樹脂で形成されているとよい。この構成によって、剛性の低い干渉防止部材を実現することが可能になる。
【0019】
当該サイドエアバッグ装置はさらに、収納形態のエアバッグクッションの少なくとも一部を解放可能に覆う熱溶着布で形成されたカバーを備えてもよい。このカバーによれば、収納形態のエアバッグクッションを効率よく保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、乗員保護性能や乗員拘束力を向上可能であって客室の安全にも配慮したサイドエアバッグ装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るサイドエアバッグ装置100を例示した図である。
図1(a)ではサイドエアバッグ装置100、およびこのサイドエアバッグ装置100が適用されている車両用シート(シート102)を、右側斜め上方から例示している。
【0024】
本願では、
図1(a)その他のすべての図面において、シート102に正規の位置で着座した乗員から見た前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Back)、その乗員から見た左右をそれぞれ矢印L(Left)、R(Right)、上下方向をそれぞれ矢印U(up)、D(down)で例示する。例えば、本実施形態ではエアバッグクッション(クッション108)を正規着座位置の乗員の左側に膨張展開させているため、クッション108の乗員側とはクッション108の右側のことである。なお、シート102は車両内で向きを変えることも可能であるため、シート102を基準とした前後左右方向は、必ずしも車両を基準とした前後左右方向に一致するとは限らない。
【0025】
図1(a)では、シート102のシートバック104のうち、表皮やシートパッド(例えばウレタン材)を省略してシートフレーム106のみを例示している。シートフレーム106は、シートバック104に内蔵された骨格となる部材である。
【0026】
サイドエアバッグ装置100は、車両に衝撃が発生した場合などの緊急時に、クッション108を利用してシートに着座した乗員を側方から拘束する。クッション108は、その表面を構成する複数の基布を重ねて縫製や接着することや、OPW(One-Piece Woven)を用いての紡織などによって、袋状に形成されている。そして、クッション108は、巻回や折畳みによって縮小された収納形態となってシート102に搭載される。
【0027】
クッション108は、シートフレーム106のうちシートバック104の側部に沿っているサイドフレーム112に、インフレータ110と共に取り付けられている。クッション108は、インフレータ110からガスを受給し、シート102に着座する乗員(図示省略)の側方に向かって膨張展開する。
【0028】
本実施形態のクッション108は、根本かつ乗員側のプリプッシュチャンバ108aと、乗員とは反対側のメインチャンバ108bとの、大きく2つの部屋に区画されている。プリプッシュチャンバ108aは、インフレータ110からのガスを最初に受給する部位であり、迅速に膨張展開して乗員をシート102の中央側へと押し戻す。メインチャンバ108bは、プリプッシュチャンバ108aが乗員を押すことで確保された空間へと広く膨張展開し、乗員を側方からより十全に拘束する。
【0029】
図1(b)は、
図1(a)のクッション108の収納時の様子を例示した図である。
図1(b)に例示するように、クッション108は、巻回や折畳み等された収納形態となって、サイドフレーム112の乗員側に保持プレート118(
図3(b)参照)およびインフレータ110と共に取り付けられている。
【0030】
収納形態のクッション108は、その表面をカバー116が覆っている。カバー116は、本実施形態では熱溶着布で形成されていて、クッション108の収納形態を保持している。カバー116は、縁同士を熱溶着した箇所やスリットやノッチなど、所定の脆弱部(図示省略)を有している。カバー116は、これら脆弱部がクッション108の膨張圧で破断することでクッション108を解放する。
【0031】
なお、カバー116は、上記熱溶着布のほかにも、クッション108の基布と同じ素材や、不織布などによっても形成可能である。また、カバー116は、クッション108の全体を覆っているが、所定の一部の範囲のみを覆う構成でもクッション108を保持することができる。
【0032】
図2は、
図1の各状態のクッション108を車両用シート(シート102)の側方から例示した図である。
図2(a)は、
図1(a)の膨張展開後のクッション108を例示している。
図2(a)に例示するように、本実施形態のクッション108は、サイドフレーム112からその前方へと膨張展開する。
【0033】
本実施形態では、サイドフレーム112には、クッション108およびインフレータ110と共に、保持プレート118が取り付けられている。保持プレート118は、ある程度の剛性を有した、膨張展開時にクッション108を支える部品である。保持プレートは、サイドフレームの上下方向に沿った長手の形状になっていて、クッション108をシート102の幅方向の外側から支える。
【0034】
図2(b)は、
図1(b)の収納形態のクッション108を例示している。収納形態のクッション108は、保持プレート118に沿って縦長の形状になっている。このとき、保持プレート118は、サイドフレーム112の上下方向において収納形態のクッション108よりも大きい寸法を有している(特に延長部分122)。この構成であれば、保持プレート118は、クッション108を膨張展開の当初から効率よく支えることができる。
【0035】
図3は、
図2(b)のサイドエアバッグ装置100の各状態を示した斜視図である。
図3(a)は、
図2(b)のサイドエアバッグ装置100をシート102の左後方上側から示している。本実施形態では、サイドフレーム112におけるシート102の幅方向の外側
の側面112a(図4参照)に、干渉防止部材130a、130bが設けられている。干渉防止部材130a、130bは、後述するスタッドボルト114a、114b(
図3(b)参照)の先端に取り付けられるキャップ状の部品であり、スタッドボルト114a、114bに他の構造物等が接触することを防いでいる。
【0036】
図3(b)は、
図3(a)のサイドエアバッグ装置100の分解図である。
図3(b)では、表面を覆うカバー116(
図3(a)参照)を省略して、保持プレート118やインフレータ110などを例示させている。
【0037】
インフレータ110はガス発生装置であって、衝撃発生時に車両側から発信される稼働信号を受けて稼働し、クッション108の内部にガスを供給する。本実施形態で採用しているインフレータ110は、シリンダ型(筒型)の本体部113を有している。本実施形態では、インフレータ110は、クッション108の内部の後方側に、本体部の長手方向を上下方向に向けて内蔵されている。
【0038】
現在普及しているインフレータには、ガス発生剤が充填されていてこれを燃焼させてガスを発生させるタイプや、圧縮ガスが充填されていて熱を発生させることなくガスを供給するタイプ、または燃焼ガスと圧縮ガスとを両方利用するハイブリッドタイプのものなどがある。インフレータ110としては、いずれのタイプのものも利用可能である。
【0039】
インフレータ110の本体部113のうち、長手方向に離れた2個所にはスタッドボルト114a、114bが設けられている。スタッドボルト114a、114bは、本体部113から延びて、クッション108(
図2(a)参照)、保持プレート118、およびサイドフレーム112を貫通し、このサイドフレーム112に締結される。
【0040】
上述したように、保持プレート118は、ある程度の剛性を有した、膨張展開時にクッション108を支える部品である。例えば、保持プレート118は、材質に樹脂を用いて形成することができる。なお、保持プレート118は、樹脂だけでなく金属を含んで形成することも可能であり、いずれの材質であっても適度な剛性を有した構成を好適に具現化することができる。
【0041】
保持プレート118のうち、基礎部分120は、サイドフレーム112のうち、シートバック104(
図3(a)参照)の幅方向の中央側の側面
112b(
図3(b)中、奥側の面
。図4も参照)に沿って平面状に形成されていて、クッション108(
図2(a)参照)とサイドフレーム112との間に挟まれるようにして取り付けられる。基礎部分120には、スタッドボルト114a、114bを通すボルト孔121a、121bも形成されている。
【0042】
延長部分122は、主にメインチャンバ108b(
図1(a)参照)を支える部分であり、クッション108のサイドフレーム112の前方にて、基礎部分120からシートバック104(
図3(a)参照)の幅方向の外側に延び、そこからさらに前方へと延びた形状になっている。
【0043】
上述したように、干渉防止部材130a、130bは、スタッドボルト114a、114bに他の構造物等が接触することを防ぐ部品である。本実施形態の干渉防止部材130a、130bは、例えば内ネジを有する、丸みをもったキャップ状の部品として実現することができ、スタッドボルト114aの先端に被せるように締結して設置される。干渉防止部材130a、130bは、材質に樹脂を用いて形成することができ、これによってより剛性の低い構成を実現することができる。
【0044】
図4は、
図2(b)の収容状態のクッション108のA−A断面図である。
図4に例示するように、保持プレート118、クッション108、およびインフレータ110の本体部113は、サイドフレーム112に対して、シートバック104の幅方向の中央側
の側面112bに取り付けられる。そして、スタッドボルト114aは、本体部113からクッション108、保持プレート118、およびサイドフレーム112を貫通して、シートバック104の幅方向の外側
の側面112aに突出する。
【0045】
干渉防止部材130aは、スタッドボルト114aの先端に被せられることで、サイドフレーム112から外側にスタッドボルト114aよりも突出した状態となる。上述したように、干渉防止部材130aは、丸みをもった、スタッドボルト114aの先端よりも曲率半径の大きい形状になっている。一例として、干渉防止部材130aは、曲率半径が3.2mm以上となるように形成することができる。この構成によって、干渉防止部材130aは、他の構造物と接触してもこれを損傷するおそれが低減するため、好適である。
【0046】
上記の干渉防止部材130aによって、万が一、シートバック104の側面に乗員が接触するようなことがあっても、シート102の表皮やシートパッド越しにスタッドボルト114aが乗員に接触することはないため、客室の安全性を高めることができる。また、丸みをもった干渉防止部材130aがスタッドボルト114aに被さっていることで、クッション108の膨張展開時にシートパッド等がスタッドボルト114等に引っ掛かることが無くなり、クッション108はシートパッド等をより円滑に押しのけて膨張展開することが可能になる。
【0047】
保持プレート118の各部位について説明する。側壁領域122aは、延長部分122のうちシート102の前後方向に延びている部分である。側壁領域122aは、シート102の左右方向においてサイドフレーム112から見てインフレータ110とは反対側(乗員とは反対側)に位置していて、膨張展開するクッション108を乗員とは反対側の側方から支え、クッション108の乗員拘束力を高める。
【0048】
後壁領域122bは、延長部分のうち、基礎部分120から側壁領域122の後端へ向かって、シート102の左右方向の外側に延びている部分である。後壁領域122bは、膨張展開時にクッション108を後方から支え、クッション108を迅速かつ円滑に膨張展開させる働きを有している。
【0049】
保持プレート118の延長部分122は、上記の後壁領域122bがサイドフレーム112からスタッドボルト114aよりもシートバック104の幅方向の外側に延びるように設けてもよい。この構成によれば、保持プレート118の延長部分122も利用して、スタッドボルト114aに他の構造物が干渉することを防ぐことが可能になる。
【0050】
保持プレート118は、基礎部分120から後壁領域122bにかけて、サイドフレーム112に噛み合うよう形成されている。例えば、サイドフレーム112の前縁126は、インフレータ110側(本実施形態では乗員側)に屈曲している。保持プレート118の基礎部分120の前端部128は、前縁126の後側に沿っていったん乗員側へと屈曲し、この前縁126を乗り越えるようにさらに屈曲して後壁領域122bとつながっている。そのため、基礎部分120から後壁領域122bにかけて、サイドフレーム112の前縁126に沿った凹形状の領域が形成されている。
【0051】
図5は、
図4のクッション108の膨張展開する過程を例示した図である。
図5(a)は、
図4の収納形態のクッション108を例示している。
図5(a)の状態において、車両に衝撃が発生すると、所定のセンサがそれを検知してインフレータ110に稼働信号を送り、インフレータ110が稼働してガスがクッションに供給される。
【0052】
図5(b)は、
図5(a)のインフレータ110が稼働した直後の様子を例示している。
図5(b)に例示するように、インフレータ110からガスが供給されると、クッション108はまずプリプッシュチャンバ108aから膨張を開始する。このときの膨張の圧力によって、カバー116はスリットやノッチ等の所定の脆弱部(図示省略)で破断し、クッション108はカバー116から解放される。そして、メインチャンバ108bも、プリプッシュチャンバ108aからガスを受給して膨張展開する。
【0053】
後壁領域122bは、膨張展開するメインチャンバ108bの後方に面接触し、メインチャンバ108bを後方から支える。側壁領域122aは、膨張展開するメインチャンバ108bの乗員とは反対側の側方に前後方向わたって面接触し、メインチャンバ108bを側方から支える。メインチャンバ108bは、これら後壁領域122bおよび側壁領域122aから反力を得ることで、シート102の前方へと迅速かつ円滑に膨張展開することが可能になっている。
【0054】
図5(c)は、
図5(b)のクッション108がさらに膨張展開した様子を例示している。膨張展開したクッション108には、乗員が側方から接触する。このとき、メインチャンバ108bの乗員とは反対側の側方には、保持プレート118の側壁領域122aが存在している。そのため、メインチャンバ108bは、側壁領域122aから反力を得て、乗員からの荷重を好適に吸収し、乗員をより十全に拘束することが可能になっている。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、まず、クッション108は、サイドフレーム112のうち、シートバック104の幅方向の中央側
の側面112bに取り付けられているため、乗員を拘束するときにサイドフレーム112から反力を得ることが可能になっている。さらに、保持プレート118の特に側壁領域122aによってクッション108のメインチャンバ108bを側方から支えることで、メインチャンバ108bの乗員拘束力をより効率よく向上させることが可能になっている。また、クッションの膨張展開の途中においても、前方へ膨張展開しようとするメインチャンバ108bを後壁領域122bによって後ろから支え、クッション108の円滑な膨張展開、ひいてはクッション108の乗員保護性能の向上を図ることが可能になっている。
【0056】
前述したように、保持プレート118は、基礎部分120と後壁領域122aとの間の凹形状の領域によって、サイドフレーム112の前縁126に噛み合った状態となっている。この構成によって、保持プレート118は、サイドフレーム112に対する位置ずれを防ぎ、クッション108の膨張展開途中において姿勢を好適に保持することが可能になっている。この作用によっても、側壁領域122aや後壁領域122bは、メインチャンバ108bをより効率よく支えることが可能になる。
【0057】
図5(b)において、保持プレート118をシート102の上方から見て、後壁領域122bと基礎部分120とがサイドフレーム112を挟んで成す角度α1は、90°以上であると好適である。この構成の後壁領域122bであれば、メインチャンバ108bに対して、シート102の前方に向かう角度か、もしくは前方のやや乗員寄りに向かう角度で反力を加えることができる。したがって、メインチャンバ108bを円滑に膨張展開させ、その乗員保護性能の向上を図ることが可能になる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のサイドエアバッグ装置100であれば、主に保持プレート118と干渉防止部材130a、130bとを利用して、クッション108の乗員保護性能や乗員拘束力を向上し、さらに客室の安全にも配慮することが可能となっている。
【0059】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係るサイドエアバッグ装置200を例示した図である。
図6(a)は、
図3(a)に対応してサイドエアバッグ装置200を例示している。当該サイドエアバッグ装置200は、干渉防止部材202(
図6(b)参照)の構成において、第1実施形態のサイドエアバッグ装置100の構成と異なっている。以降の記載において、既に説明した構成要素については、同じ符号を付することによって、その説明を省略する。また、既に説明した構成要素と同じ名称の構成要素は、異なる符号が付されていても、同じ構成および機能を有するものとする。
【0060】
干渉防止部材202(
図6(b)参照)は、サイドフレーム112の上下方向に沿って、複数の突起202aが形成された構成になっている。各突起202aは、保持プレート118から突出してサイドフレーム112を貫通し、サイドフレーム112から外側にスタッドボルト114a、114bよりも突出している。
【0061】
図6(b)は、
図6(a)のサイドエアバッグ装置200の分解図である。
図6(b)に例示するように、干渉防止部材202は、保持プレート118の基礎部分120のうち、ボルト孔121a、121bの後方側にて、接着や固定具等を使用して取り付けられている。干渉防止部材202の突起202aは、ボルト孔121aとボルト孔121bとを結ぶ範囲よりも長い範囲にわたるようにして、計5つ形成されている。干渉防止部材202のうち、突起202aは主に樹脂製で剛性を抑えた構成となっているが、突起202a以外の基部202bなどには金属も使用することができる。
【0062】
図7は、
図6(a)のサイドエアバッグ装置200のB−B断面図である。
図7に例示するように、干渉防止部材202(
図6(b)参照)はサイドフレーム112のうちスタッドボルト114aよりも後方に設けられている。そして、突起202aは、スタッドボルト114aの後方の近傍からサイドフレーム112を貫通して突出した状態となっている。
【0063】
突起202aは、サイドフレーム112からシートバック104(
図4参照)の幅方向の外側へ、スタッドボルト114aよりも突出するように延びている。突起202aの先端は、スタッドボルト114aの先端よりも曲率半径の大きい形状となっていて、例えば曲率半径が3.2mm以上に設定されている。他にも、突起202aの先端には、部分的に平坦な領域を形成することも可能である。
【0064】
干渉防止部材202(
図6(b)参照)に加えて、保持プレート118の延長部分122、特に後壁領域122bは、サイドフレーム112からスタッドボルト114aよりも外側に延びるように設けられている。本実施形態では、後壁領域122bと突起202aとが、共にスタッドボルト114aの前後においてスタッドボルト114aよりも外側へ突出した構成となるため、他の構造物等のスタッドボルト114aの先端への接触を効率よく防ぐことが可能になっている。
【0065】
以上、本実施形態のサイドエアバッグ装置200によっても、保持プレート118によってクッション108の乗員保護性能や乗員拘束力を向上したうえで、干渉防止部材202によってスタッドボルト114aの先端に乗員や他の構造物が接触することがないようにし、客室の安全性を高めることができる。
【0066】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0067】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。