特許第6810075号(P6810075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810075
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】焼成治具
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/12 20060101AFI20201221BHJP
   C04B 35/64 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   F27D3/12 S
   C04B35/64
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-43469(P2018-43469)
(22)【出願日】2018年3月9日
(65)【公開番号】特開2019-158201(P2019-158201A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】石丸 詩門
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−281359(JP,A)
【文献】 特開2006−183972(JP,A)
【文献】 特開平04−131692(JP,A)
【文献】 特開平07−082038(JP,A)
【文献】 特開2011−052909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/12
C04B 35/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼成物の底面を、載置面に当接した状態で載置して熱処理を行う焼成治具であって、
基部と、先端面が該載置面となるように該基部の表面から突出した突出部と、を有し、
該焼成治具は、該載置面に該被焼成物を載置したときに、該底面が該載置面と当接する当接面部と、該底面が該載置面と当接しない非当接面部と、を有するように、該載置面が形成され、
該当接面部の面積が、該非当接面部の面積より小さく形成され、
該基部の気孔率を1としたときの、該突出部の気孔率が1より大きく、かつ1.75以下であり、
該基部の1000℃以下の熱膨張係数の値より該突出部の1000℃以下の熱膨張係数の値が大きい場合には、該基部の熱膨張係数を1としたときに、該突出部の熱膨張係数の値が2.48以下であり、
該突出部の熱膨張係数の値より該基部の熱膨張係数の値が大きい場合には、該突出部の熱膨張係数を1としたときに、該基部の熱膨張係数の値が2.48以下であることを特徴とする焼成治具。
【請求項2】
前記被焼成物の前記底面は、平面である請求項1記載の焼成治具。
【請求項3】
前記非当接面部の下方に凹部が形成される請求項1〜2のいずれか1項に記載の焼成治具。
【請求項4】
前記凹部は、外部と連通する連通部を有する請求項3記載の焼成治具。
【請求項5】
前記突出部は、柱状の形状を有する請求項1〜2のいずれか1項に記載の焼成治具。
【請求項6】
前記突出部は、前記基部から先端部にかけて、縮径する先細形状をなす請求項5記載の焼成治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成治具に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品や半導体デバイス等のデバイスは、焼成プロセス(熱処理プロセス)を経て製造されている。このようなデバイスは、一般に、原料を調合・成形した後、表面(載置面)が平滑な板状のセッター(焼成治具)に載置し、加熱炉で高温にて焼成(熱処理)することによりセラミック焼成体とし、次いで、これに電極を形成する等の加工をした後、最終的に組み立てることにより製造される。
【0003】
電子部品等のデバイスは、例えば、セラミックコンデンサ、セラミック圧電材料、マイクロ波誘電体、高周波用フィルタ、半導体コンデンサ、サーミスタ、セラミックバリスタ、セラミックセンサ等をあげることができ、その原料として、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、希土類酸化物、あるいはこれらの複合物等のセラミックス材料をあげることができる。
【0004】
これらのデバイスは、セラミックス材料に樹脂系等のバインダを含んだ原料を焼成して製造される。このバインダは、焼成時の高温によりガス化して蒸散することで焼成体(製造されるデバイス)に含まれなくなる。
【0005】
バインダの蒸散が不十分となると、製造されるデバイス中にバインダが残留することとなる。デバイスに残留したバインダは、部分的に抵抗値の特性を変化させる。つまり、デバイスが所望の特性を発揮できなくなる。すなわち、焼成されて製造されるデバイスは不良品となる。このため、焼成時にデバイス(被焼成物)が搭載されるセッターには、バインダの蒸散を妨げないことが求められている。
【0006】
この問題に対し、焼成時にバインダの蒸散を妨げないように、セッターの表面に表面ブラスト処理を施して、表面(被焼成物の載置面)に微細な凹凸を形成し、微細な隙間を形成する方法(具体的には、)がある。この方法では、被焼成物からのバインダが形成された隙間を通過して拡散する。
しかしながら、表面ブラスト処理する方法では、表面が微細な凹凸形状となるため、その効果が十分に発揮されなかった。
【0007】
別の方法としては、特許文献1に記載のように、表面に凹凸を形成する方法がある。具体的には、凹凸部の大きさが1mm以下、凹凸間の底面の距離が0.5mm以下、高さが0.2mm以下であるセッターが記載されている。このセッターは、被焼成物との反応性、すなわち、被焼成物が融着することも防止している。
しかしながら、この特許文献1に記載のセッターは、その効果が十分に発揮されなかった。
【0008】
さらに別の方法としては、特許文献2に記載のように、表面に微細な凹凸を有する所定の平面状態として形成する方法がある。具体的には、表面のレベル差(Rk)を調節した焼成治具が記載されている。この焼成治具は、被焼成物との反応性、すなわち、被焼成物が融着することも防止している。
しかしながら、この特許文献2に記載の焼成治具においても、同様にその効果が十分に発揮されなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−225186号公報
【特許文献2】特開2014−148435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ブラスト処理により形成される表面(被焼成物が載置される載置面)の凹凸は、微細な凹凸であり、蒸散したバインダが凹凸内に充満した場合に、凹凸が被焼成物との間で閉じた空間を形成すると、バインダが被焼成物から拡散できないおそれがあった。
本発明は上記実状に鑑みてなされたものであり、熱処理時にバインダを拡散できる焼成治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明者等は、焼成治具について検討を重ねた結果、本発明をなすに至った。
【0012】
本発明の焼成治具は、被焼成物の底面を、載置面に当接した状態で載置して熱処理を行う焼成治具であって、基部と、先端面が載置面となるように基部の表面から突出した突出部と、を有し、焼成治具は、載置面に被焼成物を載置したときに、底面が載置面と当接する当接面部と、底面が載置面と当接しない非当接面部と、を有するように、載置面が形成され、当接面部の面積が、非当接面部の面積より小さく形成され、基部の気孔率を1としたときの、突出部の気孔率が1より大きく、かつ1.75以下であり、基部の1000℃以下の熱膨張係数の値より突出部の1000℃以下の熱膨張係数の値が大きい場合には、基部の熱膨張係数を1としたときに、突出部の熱膨張係数の値が2.48以下であり、突出部の熱膨張係数の値より基部の熱膨張係数の値が大きい場合には、突出部の熱膨張係数を1としたときに、基部の熱膨張係数の値が2.48以下であることを特徴とする。
【0013】
本発明の焼成治具は、被焼成物を熱処理するときに、焼成治具の載置面が被焼成物と当接する当接面部の面積が非当接面部の面積より小さい。この構成によると、熱処理時に被焼成物からバインダ等のガスが蒸散したときに、当接面部よりも大きな非当接面部となる空間にガスが拡散する。この結果、被焼成物の表面に高濃度のガスが残留しなくなり、被焼成物が残留したガスによる不具合が生じることが抑えられる。
【0014】
さらに、本発明の焼成治具は、基部と、先端面が載置面となる突出部とを有する。そして、突出部が基部より多孔質をなすとともに、基部と突出部との熱膨張係数の差が所定の範囲内にある。この構成によると、本発明の焼成治具の耐熱衝撃性に優れたものとなる。
特に、載置面を形成する突出部の気孔率が基部より大きいことから、バインダの蒸散がより均一に行える。また、熱膨張係数の差が限定されることで、焼成治具が高温にさらされても、突出部と基部の境界での欠けや亀裂の発生が抑えられる。すなわち、突出部の脱落が抑えられ、焼成治具の損傷が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1形態のセッターの上面図である。
図2】第1形態のセッターの断面図である。
図3】第1形態のセッターに被焼成物を載置した状態での上面図である。
図4】第1形態のセッターに被焼成物を載置した状態での断面図である。
図5】第1形態のセッターを用いて被焼成物を加熱炉で加熱する時のセッター及び被焼成物の配置を示す構成図である。
図6】第2形態のセッターの上面図である。
図7】第3形態のセッターの断面図である。
図8】第4形態のセッターの上面図である。
図9】第4形態のセッターの断面図である。
図10】第4形態のセッターに被焼成物を載置した状態での断面図である。
図11】第5形態のセッターの断面図である。
図12】第6形態のセッターの下面図である。
図13】第6形態の別の形態のセッターの下面図である。
図14】第7形態のセッターの上面図である。
図15】第7形態のセッターに被焼成物を載置した状態での断面図である。
図16】第8形態のセッターの断面図である。
図17】第9形態のセッターの断面図である。
図18】第10形態のセッターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、焼成治具をセッターとして実施した形態を図に基づいて説明する。なお、本発明の焼成治具は、セッターのみに限定されるものではなく、被焼成物を載置した状態で熱処理(焼成)する際に用いられる焼成治具に適用できる。さらに、本発明は、各実施形態のみに限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、以下の各形態は、適宜組み合わせることもできる。
【0017】
[第1形態]
本形態のセッター1は、全体として略板状を有し、上面が被焼成物2を載置する載置面1aとなる。本形態のセッター1の上面である載置面1aは、全体として、被焼成物が載置可能な平面をなす。本形態のセッター1は、全体が方形状の外周形状を有する。セッター1の外周形状とは、上面から見たときの形状を示す。なお、セッター1の外周形状は本形態の形状に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
【0018】
本発明のセッター1の載置面1aは、図1〜2に示したように、平面部10と、平面部10からくぼんだ凹部11と、を有する。図1は上面図であり、図2図1中のII−II線での矢視断面図である。
【0019】
平面部10は、板状のセッター1の上面に位置し、載置面1aに被焼成物2が載置されたときに、被焼成物2の底面2bと当接可能な部分である。平面部10のうち、被焼成物2と当接する部分が当接面部となる。平面部10は、平面から形成される。平面部10は、セッター1を使用するときに水平方向に沿って広がるように形成される。なお、平面部10は、その表面に微細な凹凸を形成していてもよい。微細な凹凸とは、凹となっている部分の開口が0.1mm以下の凹凸を示し、従来のブラスト処理により形成された凹凸を示すことができる。
【0020】
凹部11は、載置面1aに被焼成物2が載置されたときに、被焼成物2の底面2bと当接しない部分である非当接面部となる位置に形成される。凹部11は、平面部10からくぼんで形成されている。凹部11は、非当接面部の下方に非当接面部に対向して形成される。
凹部11は、図1に示したように、方形状(本形態では正方形状)の開口形状を有する。開口形状(開口部の外周形状)は、限定されるものではない。また、複数の凹部11のそれぞれの開口形状が異なっていてもよい。また、凹部11の断面形状(深さ方向に沿った断面の外周形状、図2に示した断面での凹部11の内部空間の形状)についても限定されない。
【0021】
本形態のセッター1において、複数の凹部11は、所定の間隔を隔てた状態で形成される。所定の間隔とは、載置面1aにおける凹部11間の距離(最短距離)である。所定の間隔の長さは限定されるものではないが、被焼成物2を載置面1aに載置したときに、被焼成物2の底面2bと当接する当接面部の面積が、底面2bと当接しない非当接面部の面積よりも小さくなるように形成される。本形態では、所定の間隔(L1)は、方形状の凹部11の一辺の長さ(L2)よりも短く、L1は、L2の50%より短いことが好ましい。L1は、L2の30%より短いことがより好ましく、20%より短いことがさらに好ましい。
なお、本形態では、開口形状が方形状の複数の凹部11は、所定の間隔で配列している。複数の凹部11の間の距離は、全て同じであっても、特定の部分が異なる長さとなっていても、いずれでもよい。
【0022】
凹部11は、その断面形状(図2に示した断面での空間の外周形状)についても、被焼成物2からのガスを拡散できる形状であれば限定されない。本形態では、図2に示したように、断面凹字形状を有する。すなわち、平面部10に対して垂直方向に形成した壁部11cと、平面部10に対して平行に形成された底面部11aと、を有する。
【0023】
本形態のセッター1は、図2に断面図で示したように、板状の基部12と、基部12から突出した突出部13と、を有する。本形態のセッター1は、基部12及び突出部13が一体をなすように形成されている。
基部12は、セッター1の載置面1a側の表面から突出部13が突出する板状の部材である。基部12は、セッター1の外周形状と同じ外周形状を有する。基部12は、上面12aと下面12bの間の厚さが略一定の平板形状をなしている。本形態のセッター1では、上面12a及び下面12bが、水平方向に沿って広がる。
【0024】
突出部13は、基部12の上面12aから突出して設けられる。突出部13は、基部12に所定の間隔を隔てて複数が設けられる。本形態の突出部13は、図2に示したように、厚さが一定の板状を有する。突出部13は、基部12の上面12aに対して垂直な方向に突出して設けられる。突出部13は、図1に示したように、セッター1の載置面1aを見たときに先端面13aが、格子状をなすように形成されている。
突出部13は、基部12から突出した突出方向の先端面13aが、セッター1の載置面1aとなる。突出部13の先端面13aは、平面をなしている。突出部13の先端面13aは、同一平面上に位置する。
突出部13は、凹部11を区画する。すなわち、突出部13の側面は、凹部11の内部の空間を区画する。
【0025】
本形態のセッター1は、その材質が限定されるものではない。従来公知のセッターに用いられている材質を用いることができる。たとえば、ジルコニア、アルミナ、ムライト、スピネル、窒化ケイ素、炭化ケイ素、コージェライト、又はそれらの複合材料よりなるセラミックスをあげることができる。これらのうち、被焼成物2が電子部品である場合に、その汚染を防止できることから、ジルコニアセラミックスよりなることがより好ましい。
本形態のセッター1では、基部12及び突出部13の全体がジルコニアセラミックスよりなる。
【0026】
ジルコニアは、酸化ジルコニウム(ZrO)よりなることのみを示すものではなく、イットリウム、セリウム、カルシウム、マグネシウム、希土類元素などの元素が酸化ジルコニウムに添加されている部分安定化ジルコニアを含む。この部分安定化ジルコニアにおける添加元素の割合は、特に限定されるものではなく、従来公知の割合(たとえば、3.0〜8.0mol%)とすることができる。そして、酸化ジルコニウムは、分離困難な酸化ハフニウム(HfO)を含有していてもよい。
【0027】
本形態のセッター1は、全体の密度(見かけ密度)が限定されない。すなわち、緻密なセラミックスであっても、多孔質セラミックスであっても、いずれでもよい。緻密になるほど、セッター1の強度が高くなる。また、多孔質になるほど、耐熱衝撃性が高まる。
【0028】
本形態のセッター1は、突出部13が基部12より気孔率が大きくなるように形成される。つまり、突出部13が多孔質に、基部12が突出部13より緻密に、それぞれ形成される。そして、本形態のセッター1は、基部12の気孔率を1としたときの、突出部13の気孔率が1より大きく、かつ1.75以下である。
具体的には、本形態のセッター1は、基部12の気孔率が10%であり、突出部13の気孔率が15%である。すなわち、基部12の気孔率を1としたときの、突出部13の気孔率が1.5である(1より大きく、かつ1.75以下の範囲に含まれている。)。
なお、セッター1(基部12及び突出部13)の気孔率は、公知の方法で測定できる。セッター1の基部12又は突出部13の気孔率は、測定対象の所定の部分(基部12又は突出部13)のそれぞれの平均気孔率である。
【0029】
本形態のセッター1は、突出部13と基部12が同じ材質より形成されていても、異なる材質より形成されていても、いずれでもよい。そして、本形態のセッター1は、基部12の1000℃以下の熱膨張係数の値より、突出部13の1000℃以下の熱膨張係数の値が大きい場合には、基部12の熱膨張係数を1としたときに、突出部13の熱膨張係数の値が2.48以下であり、突出部13の熱膨張係数の値より基部12の熱膨張係数の値が大きい場合には、突出部13の熱膨張係数を1としたときに、基部12の熱膨張係数の値が2.48以下である。
なお、セッター1(基部12及び突出部13)の熱膨張係数は、公知の方法で測定できる。
【0030】
本形態のセッター1を形成する代表的なセラミックスの1000℃以下の熱膨張係数は、ジルコニア:10.5×10−6/℃、アルミナ:7.9×10−6/℃、ムライト:5.8×10−6/℃、スピネル:5.9×10−6/℃、窒化ケイ素:3.2×10−6/℃、炭化ケイ素:4.4×10−6/℃である。
具体的には、本形態のセッター1は、基部12の熱膨張係数が5.8×10−6/℃であり、突出部13の熱膨張係数が10.5×10−6/℃である。すなわち、基部12の熱膨張係数を1としたときの、突出部13の熱膨張係数が1.81である(2.48以下の範囲に含まれている。)。
【0031】
なお、基部12及び突出部13のそれぞれが異なる材質を組み合わせて形成されている場合には、基部12については突出部13が突出する部分の、突出部13については突出方向の先端部(先端面13aを形成する部分)の、気孔率及び熱膨張係数が上記の特性を満たす。
【0032】
本形態のセッター1は、その製造方法が限定されるものではない。例えば、以下の製造方法を用いて製造できる。
(第1の製造方法)
本形態のセッター1は、所定の材質より形成されたセラミックス粉末を、所定の粒径分布をもつように、かつ所定の気孔率を得られるように調製し、セッター1の外周形状(所定形状)をなすように成形し、成形体を焼成(成形体を焼結)することで製造できる。
【0033】
例えば、微細なジルコニア粒子よりなる微細粉末と、粗大なジルコニア粒子よりなる粗大粉末とを均一に混合して混合粉末を調製する。ここで、混合粉末は、水系や有機系の溶媒(好ましくは、水)が加えられてもよい。
【0034】
この場合、微細粉末と粗大粉末のそれぞれの粉末の粒子の粒子径(平均粒子径、あるいは最大粒子径や最小粒子径)や、それぞれの粉末を混合する割合については、目的とする焼成治具の細孔特性により適宜決定できる。例えば、平均粒径が1〜5(μm)の粗大なジルコニア粒子よりなる粗大粉末と、平均粒径が0.1〜0.55(μm)の微細なジルコニア粒子よりなる微細粉末と、を用いて製造できる。
【0035】
さらに、セラミックス粉末は、造孔剤を含有していてもよい。特に、多孔質体を形成する場合には、造孔剤を含有することで、気孔率を調節することができる。造孔剤は、焼成したときに消失して、セッターを多孔質体とする。造孔剤は、製造されるセッター1に微細な細孔を形成できる微粒子(よりなる粉末)であれば、その材質は限定されるものではない。造孔剤としては、たとえば、マイクロビーズをあげることができる。
【0036】
マイクロビーズは、アクリル樹脂,フェノール樹脂の少なくとも一方よりなることが好ましい。マイクロビーズがこれらから選ばれる樹脂よりなることで、焼成体の細孔を所望の細孔径(細孔特性)とすることができる。アクリル樹脂,フェノール樹脂の少なくとも一方よりなるマイクロビーズは、焼成時に消失させるときに発生する熱量が、マイクロビーズがカーボンのみからなる場合よりも小さい。
さらに、マイクロビーズは、中実体であっても、内部が空洞(閉じた又は開いた空間)となっている中空体であっても、いずれでもよい。
【0037】
セラミックス粉末に含有する溶媒や造孔剤は、焼成温度よりも低い温度で焼失や蒸発する。すなわち、これらを用いる場合、成形体を焼成(焼結)させる前に、焼成温度より低い温度で加熱して、これらの成分を消失(焼失や蒸発)させる脱脂工程を施すことが好ましい。
【0038】
混合粉末を、上記の基部12及び突出部13を備えた一体の形状(すなわち、平面部10及び凹部11を備えた形状)に成形して成形体を得る。このとき、突出部13には、造孔剤がより多く含有するように成形される。成形体を製造する成形方法は限定されず、所定のキャビティをもつ成形型を用いて加圧成形する方法を用いることができる。より具体的には、まず、成形型の突出部13を成形する部分に多くの造孔剤が含まれる混合粉末を投入し、その後、基部12を成形する部分に少量の造孔剤が含まれる乃至造孔剤が含まれない混合粉末を投入し、加圧成形することで製造できる。あるいは、成形型の突出部13を成形する部分に多くの造孔剤が含まれる混合粉末を投入した後に加圧成形して突出部13を成形し、その後、基部12を成形する部分に少量の造孔剤が含まれる乃至造孔剤が含まれない混合粉末を投入した後に加圧成形して突出部13と基部とを一体に成形することで製造できる。
ここで、成形時の加圧力等の成形条件については、製造する成形体により決定される。すなわち、所望の成形体を得ることができる条件とする。
製造された成形体は、加熱して焼成(焼結)する。加熱温度や雰囲気等の加熱条件は限定されない。
【0039】
(第2の製造方法)
本形態のセッター1は、所定の材質より形成されたセラミックス粉末を、所定の粒径分布をもつように、かつ所定の気孔率を得られるように調製し、基部12及び突出部13の外周形状(所定形状)をなすようにそれぞれ成形し、成形体を焼成(成形体を焼結)し、接合(接着)することで製造できる。
上記の第1の製造方法と同様に、基部12を製造するための混合粉末及び突出部13を製造するための混合粉末をそれぞれ調製する。そして、各混合粉末を、基部12あるいは突出部13に対応した形状のキャビティ内に投入し、型成形する。そして、成形体を接着剤で接合し、第1の製造方法と同様に、焼成することで、製造できる。
あるいは、基部12と突出部13のそれぞれの成形体を焼成し、その後、接合して製造できる。
【0040】
(作用効果)
本形態のセッター1は、例えば、以下のように使用できる。
本形態のセッター1は、図3〜5に示したように、載置面1aに被焼成物2を載置した状態で、加熱炉3内に配置し、加熱炉3を昇温して被焼成物2を熱処理(焼成、焼結)する。図3は、載置面1aに被焼成物2を載置した状態の拡大上面図であり、図4図3中のIV−IV線での拡大部分断面図である。
【0041】
本形態のセッター1により熱処理に供される被焼成物2は、載置面1aに対向し、その一部が当接する底面2bを備えるものであり、板状、柱状、ブロック状(塊状)、パイプ状等の所定の形状を備えている。被焼成物2は、粉末原料を所定形状に成形した成形体であることが好ましい。
【0042】
被焼成物2は、その形状が限定されない。また、セッター1の載置面1aに載置したときに、載置面1aに当接する当接面部2cと非当接面部2dとを備える。すなわち、被焼成物2の底面2bがセッター1の凹部11より大きい形状であれば、その大きさが限定されない。
【0043】
被焼成物2は、図3に示したように、一辺が(L3)の正方形の板状を有する。方形状の一辺の長さ(L3)は、凹部11の一辺の長さ(L2)よりも長い。このため、載置面1aに載置した被焼成物2は、少なくとも一部が平面部10(先端面13a)上に載置する。凹部11内に落ちることなく載置される。
【0044】
本形態のセッター1の載置面1a上に被焼成物2が載置されると、被焼成物2の底面2bは、載置面1aと当接する。平面部10と凹部11とを有するように載置面1aが形成されており、被焼成物2の底面2bは、平面部10と当接する部分が当接面部2cとなり、凹部11に対応する部分が非当接面部2dとなる。被焼成物2の当接面部2cは、セッター1の載置面1aに被焼成物2の底面2bが当接するセッター1の当接面部に対応し、被焼成物2の非当接面部2dは、セッター1の非当接面部に対応する。以下、セッター1の載置面1aの当接面部と非当接面部は、被焼成物2の当接面部2cと非当接面部2dを用いて説明する。
図3に示すように、正方形状の被焼成物2は、各辺が、平面部10の延びる方向と平行な方向で載置される。
【0045】
この状態は、図4に断面図で示したように、被焼成物2の底面2bが載置面1a(の平面部10)と当接する当接面部2cと、載置面1aと当接しない(凹部11に対応する)非当接面部2dと、を備え、当接面部2cの面積が非当接面部2dの面積より小さい。この面積の比較は、L1、L2、L3を用いて行うことができる。すなわち、図4に示したように、当接面部2cの面積は、平面部10の長さ(幅)のL1で援用する。非当接面部2dの面積は、被焼成物2の底面2bの一辺の長さL3からL1を除いた長さ(L3−L1)で援用する。L3はL2より長く、L1はL2の50%より短いことから、(L3−L1)>(L2−L1)>(2×L1−L1)=L1との関係となる。すなわち、非当接面部2dの面積は、当接面部2cの面積より大きい。
この状態で、図5に示したように、加熱炉3で被焼成物2を熱処理(焼成、あるいは焼結)する。
【0046】
以上に示すように、本形態のセッター1は、被焼成物2を熱処理するときに、セッター1の載置面1aが被焼成物2と当接する当接面部2cの面積が非当接面部2dの面積より小さい。この構成によると、熱処理時に被焼成物2からバインダ等のガスが蒸散しても、当接面部2cよりも大きな非当接面部2dを形成する凹部11内の空間にガスが拡散する。結果、被焼成物2の表面近傍に高濃度のガスが残留(存在)しなくなり、被焼成物2が残留したガスによる不具合が生じることが抑えられる。
【0047】
さらに、本形態のセッター1は、基部12と、先端面13aが載置面1aとなるように基部12の上面12aから突出した突出部13とを有する。
基部12の気孔率を1としたときの、突出部13の気孔率が1.5である(すなわち、1より大きく、かつ1.75以下の範囲内にある)。この構成によると、基部12と突出部13の気孔率の比が所定の範囲内となっており、突出部13が基部12より多孔質の材質よりなることとなる。そうすると、本形態のセッター1の突出部13は、耐熱衝撃性により優れたものとなっている。
さらに、本形態のセッター1では、載置面1aを形成する突出部13の気孔率が基部12の気孔率より大きいことから、熱処理時に被焼成物2からバインダ等のガスが蒸散しても、このガスがより均一に蒸散される。
【0048】
加えて、本形態のセッター1は、基部12の1000℃以下の熱膨張係数の値と、突出部13の1000℃以下の熱膨張係数の値とを比較したときに、基部12の値が突出部13の値よりも大きい。そして、基部12の熱膨張係数を1としたときに、突出部13の熱膨張係数の値が1.81である(すなわち、2.48以下である)。この構成によると、基部12と突出部13の熱膨張係数の差が小さい。このため、セッター1を使用して熱処理を行っても、基部12と突出部13とが接続する部分で損傷を生じることが抑えられる。すなわち、耐熱衝撃性により優れたものとなっている。
さらに、本形態のセッター1では、基部12と突出部13の熱膨張係数の差が所定の範囲内となっている。この構成によると、セッター1が熱処理時に高温にさらされても、基部12と突出部13の境界での欠けや亀裂の発生が抑えられる。すなわち、突出部13が基部12から脱落することが抑えられ、セッター1の損傷が抑えられる。
【0049】
本形態のセッター1は、当接面部2cに対応する平面部10が平面をなし、非当接面部2dに対応する凹部11が平面部10よりくぼんだ状態で形成され、非当接面部2dが凹部11により形成されている。この構成によると、平面状の平面部10が被焼成物2を面接触により支持することができる。すなわち、平面部10と被焼成物2とが面接触することで当接面部2cにおいて圧力の集中が生じない。このため、焼成時に被焼成物2が変形することが抑えられる。
【0050】
被焼成物2の底面2bがはるかに大きい場合、すなわち、本形態のセッター1の載置面1aに被焼成物2を載置したときに、被焼成物2の底面2bが複数の凹部11を被覆可能な場合においても、非当接面部2dの面積は、当接面部2cの面積より大きくなる。すなわち、上記の効果を発揮できる。
【0051】
[第2形態]
本形態は、凹部11の形状が異なること以外は、第1形態と同様なセッター1である。
本形態のセッター1は、凹部11が溝条であること以外は、第1形態と同様なセッター1である。本形態のセッター1は、第1形態のセッターにおいて複数の凹部11がつながって溝条を形成している。本形態のセッター1を、図6に上面図で示す。
【0052】
本形態のセッター1は、凹部11を形成する溝条の断面形状(溝条の延びる方向に垂直な断面での内周形状)は第1形態と同様である。凹部11を形成する溝条の長さについても、限定されず任意の長さとすることができる。また、溝条の長さ方向の端部は、セッター1の端部まで延びていてもよい。すなわち、溝条の長さ方向の端部は、板状のセッター1の側面に開口していてもよい。
本形態のセッター1は、凹部11の載置面1aでの開口形状が異なること以外は第1形態と同様なセッター1であり、同様な効果を発揮する。
【0053】
[第3形態]
本形態は、凹部11の断面形状が異なること(すなわち、突出部13の断面形状が異なること)以外は、第2形態と同様なセッター1である。
本形態のセッター1は、凹部11の断面形状が略U字状であること以外は、第2形態と同様なセッター1である。すなわち、凹部11の底面部11aが深さ方向に湾曲した形状を有している。本形態のセッター1の凹部11の断面形状を、図7に示す。
図7に示したように、突出部13は、基部12と接続する接続部が滑らかな湾曲形状をなすように形成されている。
本形態のセッター1は、凹部11の溝条の断面形状及び突出部13の断面形状が異なること以外は第2形態と同様なセッター1であり、同様な効果を発揮する。
【0054】
[第4形態]
本形態は、凹部11に更に貫通孔14が形成されていること以外は、第1形態と同様なセッター1である。
本形態のセッター1は、凹部11の底面部11aに、板状のセッター1を貫通する貫通孔14が形成されていること以外は、第1形態と同様なセッター1である。本形態のセッター1の上面を図8に、図8中のIX−IX線での拡大部分断面図を図9に示す。
【0055】
本形態のセッター1は、凹部11の底面部11aに貫通孔14が形成されている。貫通孔14は、底面部11aからセッター1の基部12の板厚方向に延びて、基部12を貫通して形成される。貫通孔14は、基部12の板厚方向に垂直な断面での形状(内周形状)が、底面部11aよりも小さな円形を有する。貫通孔14の断面形状は限定されず、方形状や多角形状、楕円形状等の形状であってもよい。さらに、本形態の貫通孔14は、断面一定に形成されているが、この形状に限定されない。厚さ方向で径が変化する形状(例えば、階段状に径が変化する形状、徐々に径が変化する形状)であってもよい。
本形態のセッター1は、凹部11の底面部11aに基部12を貫通する貫通孔14が形成されたこと以外は第1形態と同様なセッター1であり、同様な効果を発揮する。
【0056】
本形態のセッター1は、凹部11がその底面部11a(底面)に、基部12を貫通することで外部と連通する貫通孔14(連通部)を備えた構成を有する。この構成によると、被焼成物2からのガスが凹部11及び貫通孔14を通って外部に拡散することができる。図10に示したように、被焼成物2が凹部11の開口部を完全に覆う状態であっても、被焼成物2からのガスを凹部11内に残留させることなく、板状のセッター1の載置面1aから裏面1b側に抜けて外部に拡散することができる。
【0057】
[第5形態]
本形態は、貫通孔14の断面形状が異なること以外は、第4形態と同様なセッター1である。
本形態のセッター1は、貫通孔14の断面形状が凹部11の開口部の形状と同じ形状であること以外は、第4形態と同様なセッター1である。本形態のセッター1は、突出部13(に対応する部分)及び基部12(に対応する部分)から形成された構成を有している。基部12(に対応する部分)は、突出部13(に対応する部分)に対応した形状を有している。本形態のセッター1は、基部12(に対応する部分)と突出部13(に対応する部分)が、貫通孔14が形成された同じ形状を有し、これら各部12,13(に対応する部分)が一体に形成された構成を有している。本形態のセッター1において、各部12,13(に対応する部分)は、第4形態(すなわち、第1形態)の基部12又は突出部13と同様に、気孔率や熱膨張係数が調整されている。本形態のセッター1において、基部12はセッター1の裏面1bを形成する。本形態のセッター1において、各部12,13(に対応する部分)の厚さ(又は厚さの割合)は、第4形態と同様に設定される。各部12,13(に対応する部分)の厚さは、合計がセッター1の厚さとなる範囲で任意に設定できる。本形態のセッター1の貫通孔14近傍の断面形状を、図11に示す。なお、図11では、突出部13(に対応する部分)及び基部12(に対応する部分)の境界を、断面となる部分では破線で、壁部11cの内周面では実線でそれぞれ示した。この境界は、見かけ上消失している場合もある。
【0058】
本形態のセッター1は、凹部11と貫通孔14とが一体の孔(孔径及び孔の形状が一定の孔)となり、この一体の孔がセッター1の上面(載置面1a)から裏面1bまでセッター1を厚さ方向に貫通して形成されていること以外は第4形態と同様なセッター1であり、第4形態と同様な効果を発揮する。
【0059】
[第6形態]
本形態は、裏面1bに更に溝条15が形成されたこと以外は、第4形態と同様なセッター1である。
本形態のセッター1は、第4形態と同様に凹部11の底面部11aに一端が開口した貫通孔14を有する。そして、セッター1の裏面1bには、複数の溝条15が形成されている。溝条15のそれぞれには、貫通孔14が開口する。複数の貫通孔14は、セッター1の裏面1b側の開口が、いずれかの溝条15に設けられる。本形態のセッター1の裏面1bを図12に示す。
【0060】
溝条15の断面形状は、限定されない。ここで、溝条15の断面形状とは、その伸びる方向(図12では、横方向)に垂直な方向(図12では、縦方向)での断面形状(内周面の形状)である。本形態のセッター1での溝条15の断面形状は、方形状(断面凹字形状をなす形状)である。溝条15の断面形状において、セッター1の載置面1a側に位置する面(裏面1b側から溝条15を見た場合の底面)に貫通孔14が開口している。本形態の溝条15の断面形状は方形状であるが、この形状に限定されない。例えば、三角形状や半円形状等の湾曲した形状であってもよい。
【0061】
本形態のセッター1は、複数の貫通孔14の裏面1b側の開口部が溝条15に開口していること以外は第4形態と同様なセッター1であり、同様な効果を発揮する。
さらに、本形態のセッター1は、貫通孔14を通過したガスが、溝条15内を流れてセッター1の側面からも外部に拡散するため、ガスを確実に外部に拡散できる。
【0062】
なお、本形態では、溝条15は図12に示したように、図12での横方向(複数の凹部11が配列する方向、方形状のセッター1の横方向に平行な方向)に沿ってのびるように形成されているが、このパターンに限定されない。例えば、図13に示したように、斜め方向(複数の凹部11が配列するななめ方向、方形状のセッター1の対角線方向に平行な方向)に沿って形成されていてもよい。
【0063】
さらに、本形態では、溝条15が裏面1b側(具体的には、基部12の下面12b)で開口する開口部の幅(図12での縦方向の幅)が貫通孔14の径より広い形状であるが、この形状に限定されない。すなわち、溝条15の開口部の幅が貫通孔14の径と同じであっても、狭くても、よい。
また、本形態では、溝条15が横方向(又は斜め方向)に沿って伸びる状態で複数が並んで形成されているが、この形状に限定されない。少なくとも2本の溝条が交差して十字状をなすように形成されていてもよい。
さらに、本形態では、溝条15が基部12の下面12bに設ける形状で形成しているが、載置面1a側に設けてもよい。この形状は、例えば、第1形態において、隣接して配置した複数の凹部11が一体となった形状である。
【0064】
[第7形態]
本形態のセッター1において、特に言及しない構成は、第1形態と同様である。
本形態のセッター1は、上面が被焼成物を載置する載置面1aとなる略板状を有する。本形態のセッター1の上面の載置面1aは、全体として、被焼成物が載置可能な平面をなす。本形態のセッター1は、全体が方形状の外周形状を有する。なお、セッター1の外周形状は限定されるものではない。
【0065】
本発明のセッター1の載置面1aは、図14〜15に示したように、基部16と、基部16から突出した突出部17と、を有する。図14は上面図であり、図15図14中のXV−XV線での拡大部分断面図である。
基部16は、セッター1の載置面1a側に設けられ、その表面から突出部17が突出する板状の部材である。基部16は、第1形態の基部12と同様な構成を有する。
【0066】
突出部17は、基部16の上面16aから突出して設けられる(基部16の板厚方向に対して立設して設けられる)。突出部17は、基部16の上面16aに所定の間隔を隔てて複数が設けられる。本形態では、図14に示したように、所定の間隔を隔てた状態で、等間隔に設けられる。
【0067】
本形態での突出部17は、図14に示したように、軸方向がセッター1の板厚方向に沿ってのびる断面一定の柱状を有する。本形態では、突出部17の軸方向に垂直な断面での断面形状が円形状であるが(すなわち、突出部17は、円柱形状を有する)、この断面形状は限定されない。たとえば、正方形や長方形の方形状、多角形状、楕円形状等の形状をあげることができる。
【0068】
突出部17は、基部16の上面16aから突出した突出方向の先端面17aが、セッター1の載置面1aとなる。突出部17の先端面17aは、平面をなしている。複数の突出部17のそれぞれの先端面17aは、同一平面上に位置する。
【0069】
本形態のセッター1において、複数の突出部17の先端面17aが同一平面上に位置するように形成されていれば、基部16の板厚方向の形状が限定されない。基部16は、その上面が載置面1aと略平行に設けられることが好ましい。
【0070】
本形態のセッター1において、複数の突出部17は、所定の間隔を隔てた状態で形成される。所定の間隔は限定されるものではないが、被焼成物2を載置面1aに載置したときに、被焼成物2の底面2bと当接する当接面部2cの面積が、底面2bと当接しない非当接面部2dの面積よりも小さくなるように形成される。本形態では、隣接する2つの突出部17の軸(円柱状の突出部17の中心軸に相当)の間隔(L4)は、円柱状の突出部17の外径(L5)よりも長い。
本形態のセッター1は、当接面部2cの面積が非当接面部2dの面積より小さい。このため、第1形態と同様な効果を発揮できる。
【0071】
本形態のセッター1は、板状の基部16と、基部16の上面16aから突出し、その先端部が当接面部となる突出部17と、を有する。この構成によると、複数の突出部17の間の空間が大きく設定でき、この大きな空間にガスが拡散する。この結果、上記の効果をより確実に発揮できる。
【0072】
本形態のセッター1は、突出部17が柱状を有する。この構成によると、突出部17の先端面17aと被焼成物2との接触面積を大きくすることができ、上記の効果をより確実に発揮できる。
【0073】
[第8形態]
本形態は、突出部17の形状が異なること以外は、第7形態と同様なセッター1である。
本形態のセッター1の突出部17は、断面を図16に示したように、基端(基部16)から先端(先端面17a)に進むにつれての径が徐々に縮径している。すなわち、図16に示すように断面が台形形状の円錐台形状を有する。
本形態のセッター1は、載置面1aと被焼成物2との当接面部2c及び非当接面部2dが同じ構成であることから、第7形態と同様な効果を発揮する。
【0074】
本形態のセッター1は、突出部17が基端(基部16)から先端(先端面17a)にかけて、縮径する先細形状をなす柱状を有する。この構成によると、突出部17の強度が高くなり、上記の効果をより確実に発揮できる。
【0075】
本形態のセッター1は、突出部17が別の突出部17と間隔を隔てて設けられているが、この構成に限定されない。たとえば、突出部の基端(基部16)が別の突出部17の基端(基部16)と当接していてもよい。
さらに、本形態では突出部17の断面形状が台形形状の円錐台形状をなしているが、多角形の角錐台形状を有していてもよい。
【0076】
[第9形態]
本形態は、突出部17の形状が異なること以外は、第7形態と同様なセッター1である。
本形態のセッター1の突出部17は、断面を図17に示したように、基端(基部16側)から先端(先端面17a側)に進むにつれて、その径が徐々に縮径し、先端が点となっている。すなわち、突出部17は、円錐形状(図17に示す、突出方向に沿った断面での断面形状が三角形状)をなしている。
本形態のセッター1は、第7形態と同様な効果を発揮する。
【0077】
本形態のセッター1は、突出部17が基端(基部16)から先端(先端面17a)にかけて、縮径する先細形状の円錐形状を有する。この構成によると、突出部17と被焼成物2とが当接する当接面部2cを可能な限り小さくできる。そうすると、被焼成物2からのガスが直ちに拡散し、被焼成物2の近傍に残留しなくなる。つまり、本形態のセッター1は、被焼成物2からのガスの拡散性がより高まっている。
【0078】
[第10形態]
本形態は、突出部17の形状が異なること以外は、第9形態と同様なセッター1である。
本形態のセッター1の突出部17は、断面を図18に示したように、基端(基部16)から先端(先端面17a)に進むにつれての径が徐々に縮径し、先端が点となる半球状をなしている。すなわち、突出部17は、半球状(外周面が円弧面をなす、断面が半円形状)をなしている。
本形態のセッター1は、第9形態と同様な効果を発揮する。
【0079】
本形態のセッター1は、突出部17が基端(基部16)から先端(先端面17a)にかけて、縮径する先細形状の半球形状を有する。この構成によると、被焼成物2の底面2bが突出部17の先端部に外接する(断面図において、半円形状の突出部17の先端部での接線を底面2bが形成する)。
【0080】
この状態で焼成した場合でも、被焼成物2が体積変化(収縮)を生じることがある。特に、焼結時に収縮が生じる。本形態では、載置面1a上で被焼成物2が収縮しても、突出部17の先端部が滑らかな形状(半球状)であるため、被焼成物2の収縮が突出部17により阻害されない。すなわち、焼成時に被焼成物2が体積変化を生じても、載置面1a上で滑らかに収縮を生じることから、被焼成物2の寸法精度の低下が抑えられる。すなわち、目的の形状の製品(熱処理後の処理品)を得られる。
【符号の説明】
【0081】
1:セッター 10:平面部 11:凹部
12,16:基部 13,17:突出部
2:被焼成物
3:加熱炉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図16
図17
図18