特許第6810082号(P6810082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810082
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20201221BHJP
   B60K 13/02 20060101ALI20201221BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   E02F9/00 D
   B60K13/02 A
   B62D25/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-58097(P2018-58097)
(22)【出願日】2018年3月26日
(65)【公開番号】特開2019-167775(P2019-167775A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2020年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 正雄
(72)【発明者】
【氏名】菅原 浩紀
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−140852(JP,A)
【文献】 特開2007−170130(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0101375(US,A1)
【文献】 実開昭62−063295(JP,U)
【文献】 特開2013−064256(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/015798(WO,A1)
【文献】 特開2004−352036(JP,A)
【文献】 実開昭60−054625(JP,U)
【文献】 実開昭49−048602(JP,U)
【文献】 特開2012−225197(JP,A)
【文献】 実開昭57−097723(JP,U)
【文献】 実開昭50−023821(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0211483(US,A1)
【文献】 国際公開第02/044479(WO,A1)
【文献】 特開平08−268091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B60K 11/00−15/10
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
F01P 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、前記下部走行体の上側に旋回可能に設けられた上部旋回体とを備え、
前記上部旋回体は、
旋回中心に対して前,後方向および前,後方向と直交した左,右方向にそれぞれ延びて設けられた旋回フレームと、
前記旋回フレームの後部位置に設けられたカウンタウエイトと、
前記旋回フレーム上に前記カウンタウエイトの前側に間隔を有すると共に前記旋回フレームの前記左,右方向に延びて立設された仕切板と、
前記カウンタウエイトと前記仕切板との間に形成されたエンジン収容室と、
前記エンジン収容室に位置して前記旋回フレームに横置き状態で設けられたエンジンと、
前記エンジンに対して前記左,右方向の一側に位置して前記エンジン収容室に配置された熱交換器と、
外部から吸込んだ冷却風を前記熱交換器に流通させる吸込式の冷却ファンと、
前記エンジン収容室を覆う左,右の側面板および上面板を有する外装カバーと、
前記熱交換器と対面し前記左,右の側面板のうちで前記一側に位置する一側の側面板と前記熱交換器との間に位置して前記エンジン収容室に配置され、前記エンジンに吸気管を介して接続されたエアクリーナとを備えた建設機械において、
前記仕切板に対し、前記カウンタウエイトとは反対に位置し、前記エンジン収容室に隣接したエンジン用吸気室が設けられ、
前記外装カバーを形成する前記一側の側面板には、前記仕切板の位置よりも後側に位置して前記エンジン収容室に向けて前記熱交換器用の冷却風が流入する冷却風流入口が設けられると共に、前記仕切板の位置よりも前側に位置して前記エンジン用吸気室に向けて前記エンジン用の外気が流入するエンジン用外気流入口が設けられ、
前記仕切板には、前記エンジン用吸気室に開口し前記エアクリーナの吸込側と連結された吸込口が設けられ、
前記仕切板には、前記エンジン用外気流入口から前記エンジン用吸気室に流入した外気を前記吸込口に向けて導く導風板が設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記導風板は、前記エンジン用外気流入口と対面している面が前記エンジン用吸気室に開口して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記導風板は、前記エンジン用外気流入口と離間した位置に設けられ、
前記エンジン用外気流入口と前記導風板との間には、前記エンジン用外気流入口から流入する異物を排除するための異物排除空間部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記導風板は、前記吸込口と間隔をもって対面する側面部と、前記側面部の上部から前記仕切板に向けて延び前記仕切板に取付けられた上面部とを有しており、
前記側面部と前記仕切板との間は、前記吸込口よりも下側が下向きに開口していることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
前記導風板の前記側面部は、前記エンジン用外気流入口に接近した位置で前記仕切板との距離寸法が大きくなり、前記エンジン用外気流入口と離れた位置で前記仕切板との距離寸法が小さくなる傾斜板として形成されていることを特徴とする請求項4に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに清浄な外気を供給するためのエアクリーナを備えた油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走が可能な下部走行体と、下部走行体の上側に旋回可能に設けられた上部旋回体とにより構成され、上部旋回体には、フロント装置が俯仰の動作が可能に設けられている。
【0003】
上部旋回体は、旋回中心に対して前,後方向および前,後方向と直交した左,右方向にそれぞれ延びて設けられた旋回フレームと、旋回フレームの後部位置に設けられたカウンタウエイトと、旋回フレーム上にカウンタウエイトの前側に間隔を有すると共に旋回フレームの左,右方向に延びて立設された仕切板と、カウンタウエイトと仕切板との間に形成されたエンジン収容室と、エンジン収容室に位置して旋回フレームに横置き状態で設けられたエンジンと、エンジンに対して左,右方向の一側に位置してエンジン収容室に配置された熱交換器と、外部から吸込んだ冷却風を熱交換器に流通させる吸込式の冷却ファンと、エンジン収容室を覆う左,右の側面板および上面板を有する外装カバーと、熱交換器と対面し左,右の側面板のうちで一側に位置する一側の側面板と熱交換器との間に位置してエンジン収容室に配置され、エンジンに吸気管を介して接続されたエアクリーナとを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−352036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によるものでは、エンジン冷却用の空気取入口と、エアクリーナ吸気用の外気取入口とを切離して配置することにより、熱交換器やエンジンが発生する熱によって温度上昇した空気をエアクリーナが吸い込まないようにしている。しかし、熱交換器やエンジンが発生する熱は、周囲の空気ばかりではなく、外装カバー内の全体の空気を温めるから、この温められた空気をエアクリーナが吸い込むことでエンジンの吸気効率が低下するという問題がある。
【0006】
そこで、エアクリーナに冷えた外気を供給するために、エアクリーナの吸気口を外装カバーの側面板に直接開口させることが考えられる。しかし、この構成では、外気と一緒に異物や雨水を吸い込む虞が高まるという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、清浄で冷えた空気をエアクリーナに供給することにより、エンジンの吸気効率を向上できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自走可能な下部走行体と、前記下部走行体の上側に旋回可能に設けられた上部旋回体とを備え、前記上部旋回体は、旋回中心に対して前,後方向および前,後方向と直交した左,右方向にそれぞれ延びて設けられた旋回フレームと、前記旋回フレームの後部位置に設けられたカウンタウエイトと、前記旋回フレーム上に前記カウンタウエイトの前側に間隔を有すると共に前記旋回フレームの前記左,右方向に延びて立設された仕切板と、前記カウンタウエイトと前記仕切板との間に形成されたエンジン収容室と、前記エンジン収容室に位置して前記旋回フレームに横置き状態で設けられたエンジンと、前記エンジンに対して前記左,右方向の一側に位置して前記エンジン収容室に配置された熱交換器と、外部から吸込んだ冷却風を前記熱交換器に流通させる吸込式の冷却ファンと、前記エンジン収容室を覆う左,右の側面板および上面板を有する外装カバーと、前記熱交換器と対面し前記左,右の側面板のうちで前記一側に位置する一側の側面板と前記熱交換器との間に位置して前記エンジン収容室に配置され、前記エンジンに吸気管を介して接続されたエアクリーナとを備えた建設機械において、前記仕切板に対し、前記カウンタウエイトとは反対に位置し、前記エンジン収容室に隣接したエンジン用吸気室が設けられ、前記外装カバーを形成する前記一側の側面板には、前記仕切板の位置よりも後側に位置して前記エンジン収容室に向けて前記熱交換器用の冷却風が流入する冷却風流入口が設けられると共に、前記仕切板の位置よりも前側に位置して前記エンジン用吸気室に向けて前記エンジン用の外気が流入するエンジン用外気流入口が設けられ、前記仕切板には、前記エンジン用吸気室に開口し前記エアクリーナの吸込側と連結された吸込口が設けられ、前記仕切板には、前記エンジン用外気流入口から前記エンジン用吸気室に流入した外気を前記吸込口に向けて導く導風板が設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、清浄で冷えた空気をエアクリーナに供給することができ、エンジンの吸気効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る油圧ショベルを示す正面図である。
図2図1の油圧ショベルの上部旋回体を外装カバーの一部を省略した状態で拡大して示す平面図である。
図3】上部旋回体の左後部をカウンタウエイト、キャブおよび外装カバーを省略した状態で示す要部拡大の斜視図である。
図4】上部旋回体の左後部を図1中の矢示IV−IV方向から拡大して見た断面図である。
図5】仕切板の一部、吸込口および導風板を組立てた状態で示す斜視図である。
図6】仕切板の一部から導風板を分離した状態を図5と同様位置から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、後方超旋回型の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図6に従って詳細に説明する。なお、本実施の形態では、上部旋回体の前,後方向に対し、この前,後方向に直交した水平方向を左,右方向とし、各機器、部材の構成、配置、空気の流れ方向について説明する。
【0012】
図1図2において、建設機械としての油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回中心Oを中心として旋回可能に設けられた上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に俯仰の動作が可能に設けられたフロント装置4とを備えている。フロント装置4は、土砂の掘削作業等を行うものである。
【0013】
ここで、後方超小旋回型の油圧ショベル1の上部旋回体3は、旋回中心Oを基準として下部走行体2の左,右方向の幅寸法(全幅)に対して予め定められた範囲内で旋回するように構成されている。詳しくは、下部走行体2の全幅に対して予め定められた範囲とは、下部走行体2の全幅の130%以内の範囲を示している。後方超小旋回型の油圧ショベル1の上部旋回体3は、後述するカウンタウエイト6の後面が描く円弧状の軌跡が、前述した全幅の130%以内の範囲に収まるように設定されている。
【0014】
旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体を構成している。図2に示すように、旋回フレーム5は、旋回中心Oに対して(基準として)前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる平板状の底板5Aと、底板5A上に立設され、旋回中心Oに対して左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板5B、右縦板5Cと、底板5A、各縦板5B,5Cから左,右方向の外側に向けて張出し、前,後方向に間隔をもって複数本設けられた張出しビーム5D(1本のみ図示)と、各縦板5B,5Cの左,右方向に間隔をもって前,後方向に延び、各張出しビーム5Dの先端側に取付けられた左サイドフレーム5E、右サイドフレーム5Fとを含んで構成されている。
【0015】
左縦板5Bと右縦板5Cの前部位置には、フロント装置4のフート部が回動可能に支持されている。一方、左縦板5Bと右縦板5Cの後部位置には、後述するカウンタウエイト6が取付けられている。
【0016】
カウンタウエイト6は、フロント装置4との重量バランスをとるもので、旋回フレーム5の後部位置に設けられている。ここで、カウンタウエイト6は、上部旋回体3の旋回中心Oに近い位置に配置され、カウンタウエイト6の後面は、上部旋回体3の旋回中心Oを中心とした円弧状に形成されている。
【0017】
仕切板7は、旋回フレーム5上にカウンタウエイト6の前側に間隔を有すると共に、旋回フレーム5の左,右方向に延びて立設されている。具体的には、仕切板7は、後述する外装カバー14の左側面板14Aと作動油タンク26との間に位置して後述のエンジン10と熱交換器12の前側を覆う前壁として形成されている。これにより、仕切板7は、エンジン10、熱交換器12等が配置されている後述のエンジン収容室9をカウンタウエイト6との間に形成するものである。
【0018】
ここで、左,右方向に延びた仕切板7のうち、熱交換器12よりも左,右方向の外側、即ち、後述するエアクリーナ15の前側は、エンジン収容室9の冷却風流入室9Aの前側を覆う流入室前閉塞板7Aとなっている。図3ないし図6に示すように、この仕切板7を構成する流入室前閉塞板7Aには、上部位置の上側閉塞部7A1に位置して後述の吸込口22が設けられている。流入室前閉塞板7Aは、冷却風流入室9Aと後述のエンジン用吸気室21との間を仕切っている。
【0019】
図4に示すように、上側閉塞部7A1には、冷却風流入室9A側に膨出するようにダクト接続部7A2が設けられている。このダクト接続部7A2は、ダクト18の接続部位が上側閉塞部7A1に対して傾斜するように、左側面板14A側で大きく膨出している。これにより、ダクト接続部7A2は、左側面板14Aのエンジン用外気流入口14Fから流入する空気の流れに対してダクト18を鈍角に開口させることができる。この構成により、エンジン用外気流入口14Fから流入する空気は、ダクト18に向けてスムーズに流れることができる。
【0020】
また、流入室前閉塞板7Aには、上側閉塞部7A1の下部に位置して吸気管挿通孔7A3が形成されている。この吸気管挿通孔7A3には、エアクリーナ15をエンジン10に接続する吸気管17が挿通されている。
【0021】
図2に示すように、後閉塞板8は、カウンタウエイト6の前面に沿って延びるように旋回フレーム5の後部位置に左,右方向に延びて立設されている。この後閉塞板8は、カウンタウエイト6の前面と共に、エンジン収容室9の後側を閉塞するものである。
【0022】
エンジン収容室9は、カウンタウエイト6(後閉塞板8)と仕切板7との間に形成されている。また、エンジン収容室9は、左,右両側と上側が後述の外装カバー14によって覆われている。これにより、エンジン収容室9は、上部旋回体3の左,右方向の全長に亘って形成されている。エンジン収容室9は、その内部にエンジン10、油圧ポンプ11、熱交換器12、エアクリーナ15を収容するものである。
【0023】
旋回中心Oを基準として左,右方向に長尺に形成されたエンジン収容室9のうち、左,右方向の一側となる左側位置は、熱交換器12用の冷却風の流れ方向の上流側に位置して冷却風流入室9Aとなっている。この冷却風流入室9Aは、仕切板7、後閉塞板8、熱交換器12および外装カバー14の左側面板14A、上面板14Cによって囲まれている。冷却風流入室9Aには、外装カバー14の左側面板14Aに設けられたメイン流入口14Dと冷却風流入口14Eとを通じて外部の空気が流入する。
【0024】
エンジン10は、エンジン収容室9に位置して旋回フレーム5に左,右方向に延在する横置き状態で設けられている。エンジン10の左,右方向の一側となる左側位置には、後述する吸込み式の冷却ファン13が設けられ、左,右方向の他側となる右側位置には、後述する油圧ポンプ11が設けられている。
【0025】
一方、例えば、エンジン10の前側には、排気マニホールド10Aが設けられ、この排気マニホールド10Aには、排気ガスを利用してエンジン10の各気筒内に空気を強制的に送り込む過給機10Bが設けられている。過給機10Bの給気口には、後述の吸気管17が接続されている。さらに、エンジン10の内部には、冷却水が流通するウォータジャケット(図示せず)が設けられ、この冷却水は熱交換器12のラジエータ12Bによって冷却される。
【0026】
油圧ポンプ11は、エンジン10の右側に設けられている。油圧ポンプ11は、エンジン10によって駆動されることにより、後述の作動油タンク26から供給される作動油を昇圧(加圧)し、フロント装置4等の各種アクチュエータに供給するものである。各種アクチュエータを駆動した作動油は、後述する熱交換器12のオイルクーラ12Cによって冷却された後、作動油タンク26に環流する。
【0027】
熱交換器12は、エンジン10に対して左,右方向の左側に位置してエンジン収容室9に配置されている。この熱交換器12は、後述の冷却ファン13に対面して旋回フレーム5の後側に設けられている。熱交換器12は、温度上昇した各種の流体を冷却風により冷却するものである。
【0028】
具体的には、熱交換器12は、冷却風の流れ方向に対して直交する前,後方向が横幅方向となるように配置された角枠状の枠体12Aと、枠体12A内に並列となるように前,後方向に並べられたラジエータ12B、オイルクーラ12C、インタクーラ12Dとを含んで構成されている。
【0029】
ここで、ラジエータ12Bは、エンジン10を冷却して温度上昇した冷却水を冷却するものである。オイルクーラ12Cは、油圧ショベル1の各種アクチュエータに供給されて温度上昇した作動油を、冷却して作動油タンク26に戻すものである。さらに、インタクーラ12Dは、エンジン10の過給機10Bで温度上昇した吸気を冷却し、エンジン10の各気筒内に供給するものである。
【0030】
冷却ファン13は、エンジン10と熱交換器12との間に設けられ、例えばエンジン10によって回転されるものである。この冷却ファン13は、エンジン10および熱交換器12と左,右方向の一直線上に配置され、後述する外装カバー14の外部から吸込んだ冷却風を熱交換器12に流通させる吸込式の冷却ファンとして構成されている。そして、冷却ファン13は、外部から冷却風を吸込むことにより、この冷却風を熱交換器12に供給することができる。なお、冷却ファン13は、エンジン10と切離し、電動モータまたは油圧モータを用いて回転させる構成としてもよい。
【0031】
外装カバー14は、カウンタウエイト6と後述のキャブ25との間に位置して旋回フレーム5上に設けられている。外装カバー14は、エンジン10、油圧ポンプ11、熱交換器12を含む旋回フレーム5上の搭載機器を覆うものである。外装カバー14は、エンジン収容室9を覆う左側面板14A、右側面板14Bおよび上面板14Cにより構成されている。
【0032】
具体的には、外装カバー14は、熱交換器12の左側を覆うように旋回フレーム5の左サイドフレーム5E上に立設された左側面板14Aと、油圧ポンプ11の右側を覆うように右サイドフレーム5F上に立設された右側面板14Bと、各側面板14A,14Bの上部に亘って左,右方向に延び、エンジン10、油圧ポンプ11および熱交換器12の上側を覆う上面板14C(図1参照)とを含んで構成されている。
【0033】
ここで、冷却風の流れ方向の上流側となる左側面板14Aには、上,下方向の中間部から下部に亘る広範囲に位置してメイン流入口14Dが設けられている。このメイン流入口14Dは、主にエンジン収容室9に向けて熱交換器12用の冷却風が流入するものである。また、メイン流入口14Dよりも上側となる左側面板14Aの上部位置には、仕切板7の位置よりも後側に位置して冷却風流入口14Eが設けられている。この冷却風流入口14Eは、熱交換器12用の冷却風をエンジン収容室9に向けて流入する熱交換器12の専用開口となっている。
【0034】
一方、左側面板14Aの上部位置には、仕切板7の位置よりも前側に位置してエンジン用外気流入口14Fが設けられている。このエンジン用外気流入口14Fは、エンジン10が吸込むための空気(外気)を後述のエンジン用吸気室21に向けて流入する専用の開口となっている。エンジン用外気流入口14Fは、後述する導風板23と左,右方向で対面して配置されているから、エンジン用外気流入口14Fから流入した外気は、積極的に導風板23に向けて流れるようになっている。
【0035】
エアクリーナ15は、熱交換器12と対面し、外装カバー14の左側面板14Aと熱交換器12との間に位置してエンジン収容室9に配置されている。即ち、エアクリーナ15は、エンジン収容室9の冷却風流入室9Aに位置して、取付台16上に取付けられている。この取付台16は、例えば、仕切板7の流入室前閉塞板7Aと後閉塞板8とに亘って前,後方向に延びて設けられている。
【0036】
エアクリーナ15は、エンジン10が吸込む空気を清浄化するもので、塵埃等の異物を遠心力を利用して除去する遠心分離型のエアクリーナとして構成されている。エアクリーナ15は、後述の導風板23、吸込口22、ダクト18を介して吸込んだ空気(外気)を清浄化し、吸気管17を介してエンジン10の過給機10Bに供給する。エアクリーナ15は、前,後方向に延びる円筒状の容器内にフィルタエレメント(図示せず)を内蔵しており、上部前側寄りには、吸気口15A(図4参照)が設けられている。この吸気口15Aには、ダクト18の下流側が接続されている。一方、ダクト18の上流側は、仕切板7の流入室前閉塞板7Aに設けられたダクト接続部7A2を介して吸込口22に連結されている。
【0037】
ここで、エアクリーナ15には、導風板23が左側面板14Aのエンジン用外気流入口14Fに向けて開口することにより、後述のエンジン用吸気室21に流入したばかりの冷えた空気を吸込んで、エンジン10に供給することができる。
【0038】
前閉塞板19は、仕切板7の流入室前閉塞板7Aの前側に間隔をもって対面するように旋回フレーム5に立設されている。前閉塞板19の奥部となる右端部には、仕切板7に向けて後側に延びた奥閉塞板20が設けられている。これにより、仕切板7、外装カバー14の左側面板14A、前閉塞板19および奥閉塞板20によって囲まれた範囲が後述のエンジン用吸気室21となっている。
【0039】
エンジン用吸気室21は、仕切板7に対し、カウンタウエイト6とは反対となる前側に位置し、エンジン収容室9に隣接して設けられている。エンジン用吸気室21は、仕切板7よりも前側位置に、エンジン収容室9と別個に設けられている。このエンジン用吸気室21は、仕切板7、外装カバー14の左側面板14A、前閉塞板19および奥閉塞板20によって囲まれている。エンジン用吸気室21には、外装カバー14の左側面板14Aに設けられたエンジン用外気流入口14Fを通じて外部流入される。エンジン用吸気室21には、後述の導風板23が設けられている。
【0040】
吸込口22は、仕切板7の流入室前閉塞板7Aを形成する上側閉塞部7A1に設けられている。吸込口22は、例えば左,右方向に長尺な長方形状の開口として形成され、ダクト接続部7A2と接続されている。吸込口22は、エンジン用吸気室21に開口することにより、エアクリーナ15の吸込側となるダクト18と連結されている。吸込口22は、熱源となるエンジン10、熱交換器12側(左,右方向の右側)が導風板23によって覆われている。
【0041】
次に、本実施の形態の特徴部分となる導風板23の構成および機能について詳細に説明する。
【0042】
導風板23は、外装カバー14の左側面板14Aに設けられたエンジン用外気流入口14Fからエンジン用吸気室21に流入した外気を吸込口22に向けて導くために仕切板7に設けられている。導風板23は、エンジン用外気流入口14Fと対面している面、即ち、左側の面がエンジン用吸気室21に開口して形成されている。
【0043】
具体的には、図5図6に示すように、導風板23は、吸込口22と間隔をもって対面する長方形状の側面部23Aと、側面部23Aの上縁部から仕切板7に向けて延びた三角形状ないし台形状の上面部23Bとを有している。また、側面部23Aの右縁部には、導風板23のエンジン10側の開口を閉塞するように奥底面部23Cが設けられている。導風板23は、上面部23Bと奥底面部23Cが仕切板7に取付けられている。なお、導風板23は、仕切板7を形成する板体の一部を折曲げることにより、仕切板7と一体的に形成することもできる。
【0044】
導風板23は、吸込口22の左,右方向の全長のうち、熱源となるエンジン10、熱交換器12が配置された右側の半分程度を覆うように設けられている。この場合、導風板23の上面部23Bは、仕切板7側となる後側の端縁部が吸込口22の上側近傍に位置して流入室前閉塞板7Aの上側閉塞部7A1に固着されている。また、導風板23の奥底面部23Cは、後側の端縁部が吸込口22の右側近傍に位置して上側閉塞部7A1に固着されている。なお、側面部23Aの右側端部を上側閉塞部7A1に固着した場合には、奥底面部23Cを省略することができる。
【0045】
これにより、導風板23は、外装カバー14の左側面板14Aに設けられたエンジン用外気流入口14Fと対面している左側の面が流入開口23Dとなって開口している。これにより、導風板23は、エンジン用外気流入口14Fからエンジン用吸気室21に流入した外気を、流入開口23Dから吸込口22へと導くことができる。
【0046】
一方、側面部23Aと仕切板7(上側閉塞部7A1)との間は、吸込口22よりも下側が下向きに開口することによって排出開口23Eとなっている。排出開口23Eは、導風板23内を吸込口22に向けて空気が矢示A方向に流れるときに、この空気中の異物や雨水が自重によって落下しようとしたときに、矢示Bで示すように落下を許可することにより、異物や雨水が吸込口22に入り込むのを防止するものである。
【0047】
導風板23の側面部23Aは、下側が吸込口22を越えて延びている。側面部23Aは、外装カバー14のエンジン用外気流入口14Fに接近した左側位置23A1で仕切板7との距離寸法が大きくなっている。一方、側面部23Aは、エンジン用外気流入口14Fと離れた右側位置23A2で仕切板7との距離寸法が小さくなっている。これにより、側面部23Aは、エンジン用外気流入口14F側が大きく開口した傾斜板として形成されている。このように、側面部23Aを傾斜させることにより、図4中に矢示Cで示すように、エンジン用外気流入口14Fからエンジン用吸気室21に流入した外気は、大きく開口した流入開口23Dから導風板23内に流入し、傾斜した側面部23Aに沿って流れることで吸込口22に向けて円滑に案内される。
【0048】
さらに、導風板23は、外装カバー14のエンジン用外気流入口14Fと離間した位置に設けられている。従って、エンジン用外気流入口14Fと導風板23との間には、異物排除空間部24が設けられている。この異物排除空間部24は、エンジン用外気流入口14Fからエンジン用吸気室21に流入した空気(外気)が吸込口22に向けて流れるときに、空気中に含まれる異物(塵埃、植物片、雨水等)が自重で落下できる空間を形成している。これにより、異物排除空間部24は、エンジン用外気流入口14Fから吸込口22に向けて流れる空気から異物を排除することができる。
【0049】
なお、図1図2に示すように、キャブ25は、旋回フレーム5の左前側に位置して設けられている。このキャブ25は、オペレータが搭乗するもので、その内部には、オペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー等(いずれも図示せず)が配設されている。また、作動油タンク26は、作動油を貯えるもので、油圧ポンプ11の前側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。燃料タンク27は、エンジン10に供給される燃料を貯えるもので、作動油タンク26の右側に隣接して旋回フレーム5上に設けられている。
【0050】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0051】
油圧ショベル1のオペレータは、上部旋回体3のキャブ25に搭乗し、エンジン10を始動して油圧ポンプ11を駆動する。これにより、油圧ポンプ11から圧油が吐出され、この圧油は制御弁装置(図示せず)を介して、各種油圧アクチュエータに供給される。
【0052】
キャブ25に搭乗したオペレータが走行用の操作レバー(図示せず)を操作したときには、下部走行体2により車両を前進または後退させることができる。一方、キャブ25内のオペレータが作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、フロント装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0053】
外装カバー14には、旋回中心Oに対して左,右方向の左側に位置して、左側面板14Aが設けられ、左側面板14Aには、メイン流入口14Dおよび冷却風流入口14Eが設けられている。従って、油圧ショベル1を稼動しているときには、冷却ファン13は、メイン流入口14Dおよび冷却風流入口14Eを通じてエンジン収容室9の冷却風流入室9A内に外気を吸込み、冷却風として熱交換器12に供給する。これにより、熱交換器12では、エンジン冷却水や作動油を冷却することができる。
【0054】
一方、外装カバー14のエンジン用外気流入口14Fからエンジン用吸気室21に流入した空気(外気)は、吸込口22、ダクト18を介してエアクリーナ15に流入し、このエアクリーナ15で異物が除去されて清浄化される。清浄化された空気は、吸気管17を通じてエンジン10に供給される。
【0055】
かくして、本実施の形態によれば、仕切板7に対し、カウンタウエイト6とは反対となる前側に位置し、即ち、仕切板7よりも前側位置には、エンジン収容室9(冷却風流入室9A)に隣接してエンジン用吸気室21が設けられている。外装カバー14の左側面板14Aには、仕切板7の位置よりも後側に位置してエンジン収容室9に向けて熱交換器12用の冷却風が流入する冷却風流入口14Eが設けられると共に、仕切板7の位置よりも前側に位置してエンジン用吸気室21に向けてエンジン10用の外気が流入するエンジン用外気流入口14Fが設けられている。また、仕切板7には、エンジン用吸気室21に開口しエアクリーナ15の吸込側と連結された吸込口22が設けられている。この上で、仕切板7には、エンジン用外気流入口14Fからエンジン用吸気室21に流入した外気を吸込口22に向けて導く導風板23が設けられている。
【0056】
従って、導風板23は、外装カバー14のエンジン用外気流入口14Fからエンジン用吸気室21に流入した外気を、吸込口22へと導くことができる。これにより、エンジン10や熱交換器12によって周囲の空気が温度上昇しても、導風板23は、エンジン用外気流入口14Fから流入する冷えた外気だけを吸込口22へと導くことができる。この結果、冷えた空気をエアクリーナ15に供給することができ、エンジンの吸気効率を向上することができる。
【0057】
また、導風板23は、エンジン用外気流入口14Fと対面している面がエンジン用吸気室21に開口して形成されている。これにより、エンジン用外気流入口14Fからエンジン用吸気室21に流入した外気は、エンジン用外気流入口14F側に開口した流入開口23Dによって導風板23に積極的に導くことができる。
【0058】
導風板23は、エンジン用外気流入口14Fと離間した位置に設けられている。従って、エンジン用外気流入口14Fと導風板23との間には、エンジン用外気流入口14Fから流入する異物を排除するための異物排除空間部24が設けられている。これにより、異物排除空間部24では、空気中に含まれる異物が自重で落下するのを許すことができる。これにより、異物排除空間部24は、エンジン用外気流入口14Fから吸込口22に向けて流れる空気から異物を排除することができる。この結果、清浄な空気をエアクリーナ15に供給することができ、エアクリーナ15の清掃作業を簡略化することができる。
【0059】
導風板23は、吸込口22と間隔をもって対面する側面部23Aと、側面部23Aの上部から仕切板7に向けて延び仕切板7に取付けられた上面部23Bとを有している。側面部23Aと仕切板7との間は、吸込口22よりも下側が排出開口23Eとなって下向きに開口している。これにより、排出開口23Eは、導風板23内を吸込口22に向けて空気が流れるときに、この空気中の異物や雨水を自重によって落下させることができ、異物等が吸込口22に入り込むのを防止することができる。
【0060】
さらに、導風板23の側面部23Aは、エンジン用外気流入口14Fに接近した位置で仕切板7との距離寸法が大きくなり、エンジン用外気流入口14Fと離れた位置で仕切板7との距離寸法が小さくなる傾斜板として形成されている。従って、側面部23Aは、エンジン用外気流入口14F側が大きく開口した傾斜板として形成されている。この結果、エンジン用外気流入口14Fからエンジン用吸気室21に流入した外気は、大きく開口した流入開口23Dから導風板23内に流入できる上に、傾斜した側面部23Aに沿って吸込口22に向け円滑に流通することができる。
【0061】
なお、実施の形態では、導風板23の側面部23Aは、平坦な傾斜板として形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、側面部を円弧状の湾曲面として形成してもよい。また、側面部を仕切板と平行な板体として形成してもよい。
【0062】
実施の形態では、側面部23Aと仕切板7との間に、吸込口22よりも下側を下向きに開口させることによって排出開口23Eを形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、側面部23Aの下部と仕切板7との間に下面部を設けて閉塞する構成としてもよい。
【0063】
実施の形態では、建設機械として後方超旋回型のクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、超小旋回型の油圧ショベル、ホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
5 旋回フレーム
6 カウンタウエイト
7 仕切板
9 エンジン収容室
10 エンジン
12 熱交換器
13 冷却ファン
14 外装カバー
14A 左側面板(一側の側面板)
14B 右側面板
14C 上面板
14E 冷却風流入口
14F エンジン用外気流入口
15 エアクリーナ
17 吸気管
21 エンジン用吸気室
22 吸込口
23 導風板
23A 側面部
23B 上面部
23D 流入開口
23E 排出開口
24 異物排除空間部
O 旋回中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6