特許第6810099号(P6810099)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6810099内歯を有するワークピースの面取りを行うための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810099
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】内歯を有するワークピースの面取りを行うための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B23F 19/10 20060101AFI20201221BHJP
   B23F 23/12 20060101ALI20201221BHJP
   B23F 5/16 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B23F19/10
   B23F23/12
   B23F5/16
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-100569(P2018-100569)
(22)【出願日】2018年5月25日
(65)【公開番号】特開2019-22925(P2019-22925A)
(43)【公開日】2019年2月14日
【審査請求日】2018年9月26日
(31)【優先権主張番号】10 2017 112 416.0
(32)【優先日】2017年6月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】594012634
【氏名又は名称】リープヘル−フェアツァーンテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワイクスラー ヨハン
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0294530(US,A1)
【文献】 特開2011−212762(JP,A)
【文献】 特表2017−505238(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0121779(US,A1)
【文献】 米国特許第02135819(US,A)
【文献】 特開2006−224228(JP,A)
【文献】 特開2006−341364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00 − 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯を有するワークピースの手前側で前記内歯の少なくとも一方の縁部を面取りするための装置であって、前記装置は、
前記ワークピースを保持するための、回転可能に支持された少なくとも1つのワークピースホルダと、
少なくとも1つの面取ホブを保持するための、回転可能に支持された少なくとも1つの工具ホルダとを備え、
前記工具ホルダが配置された機械加工ヘッドは、前記ワークピースホルダの回転軸C3と平行な方向に移動するための軸Z3を備え、
前記工具ホルダは、前記ワークピースホルダに保持されたワークピースに前記内歯が形成する前記ワークピースの中央開口部の領域外で隣接して配置された状態で、
前記工具ホルダに保持された面取ホブは、工具軸によって、前記内歯が形成する前記ワークピースの中央開口部の領域内に配置され、前記ワークピースの上側及び下側の少なくとも一方において前記内歯の縁部と係合可能である
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、
前記ワークピースの上側及び下側の少なくとも一方における前記内歯の縁部の面取時には、前記工具軸は、前記工具ホルダから延びて、前記内歯を有するワークピースの環状領域で前記ワークピースの外側領域から内側領域へと延びる
ことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の装置において、
前記工具軸に配置された前記面取ホブには、上側及び下側の少なくとも一方からアクセス可能であり、
前記工具ホルダは、機械加工ヘッドを介して機械スタンドに配置され、前記機械加工ヘッドは前記ワークピースホルダ及び前記工具ホルダの少なくとも一方の回転軸に直交するように、前記機械スタンドから離れるように延びており、
前記ワークピースホルダに面する機械スタンドの前面と平行に前記工具ホルダが延びるように、前記工具ホルダが前記機械加工ヘッドに配置されている
ことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、
前記装置は、
前記ワークピースを保持するための、回転可能に支持された第1のワークピースホルダと、
ワークピースを保持するための、回転可能に支持された第2のワークピースホルダとを有し、
前記ワークピースが前記第1のワークピースホルダに保持された状態では、前記ワークピースの第1の手前側、すなわち上側で歯縁部を面取加工可能であり、
前記ワークピースが前記第1のワークピースホルダのかわりに前記第2のワークピースホルダに保持された状態では、前記ワークピースの第2の手前側、すなわち下側で前記歯縁部を面取加工可能である
ことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置において、
前記装置は、機械軸に沿って移動可能で、前記第1の手前側及び第2の手前側の両方で前記歯縁部を面取加工を可能にする機械加工ヘッドを有し、
前記工具ホルダが、前記機械加工ヘッドに配置されており、
前記第1及び第2の手前側における前記歯縁部の面取加工が、同一の面取ホブ又は同一の工具ホルダに保持された複数の面取ホブにより実施される
ことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の装置において、
前記ワークピースを、第1のワークピースホルダから第2のワークピースホルダに向かう方向と、その逆方向との少なくとも一方の方向に移送する装置を備え、
前記第1のワークピースホルダ及び前記第2のワークピースホルダのうちの少なくとも一方は、移動して他方のワークピースホルダに保持されているワークピースを把持可能であり、
ワークピースを前記一方のワークピースホルダから他方のワークピースホルダに移動させるためのワークピース移送部が設けられている
ことを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1つに記載の装置において、
前記第1のワークピースホルダ及び前記第2のワークピースホルダが、作業領域における互いに反対の2つの側に配置されているか配置可能であり、
前記ワークピースがどちらのワークピースホルダに保持されているかによって、前記ワークピースの前記第1の手前側又は第2の手前側が前記作業領域に面する
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか1つに記載の装置において、
前記第1のワークピースホルダ及び前記第2のワークピースホルダが、互いに並行な回転軸を有し、又は同軸状に配置されている
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項4から8のいずれか1つに記載の装置において、
前記工具ホルダは、前記第1のワークピースホルダ及び前記第2のワークピースホルダに隣接して配置された状態で、
前記ワークピースが前記第1のワークピースホルダに配置されている場合、少なくとも1つの面取ホブが、工具軸によって前記内歯が形成する前記ワークピースの中央開口部の上方に配置され、前記ワークピースの上側において前記内歯の縁部と係合可能であり、
前記ワークピースが前記第2のワークピースホルダに配置されている場合、前記少なくとも1つの面取ホブが、工具軸によって前記内歯が形成する前記ワークピースの前記中央開口部の下方に配置され、前記ワークピースの下側において前記内歯の縁部と係合可能であり、
同一の工具ホルダを使用して、前記上側及び下側において前記内歯の縁部を面取加工する
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、
同一の工具軸に配置された別々の面取ホブを使用して、前記上側及び下側において前記内歯の機械加工を行う
ことを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項9に記載の装置において、
同一の面取ホブを使用して前記上側及び下側において前記内歯の縁部が機械加工され、
前記同一の面取ホブは、前記第1のワークピースホルダの回転軸に対する第1の径方向に、前記ワークピースの第1側の前記内歯の縁部領域と係合し、
前記ワークピースを前記第2のワークピースホルダに移送した後、前記第2のワークピースホルダの回転軸に対する第2の径方向に前記工具ホルダを移動させることにより、前記同一の面取ホブは、前記ワークピースの第2側の前記内歯の径方向反対側の縁部領域と係合する
ことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1つに記載の装置において、
1つの工具軸に配置された前記1つ又は複数の面取ホブは、2つの側からアクセス可能であることで、ワークピースの縁部と係合可能である
ことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1つに記載の装置において、
前記ワークピースの少なくとも一方の手前側の前記内歯の縁部を面取りするための機械軸を自動制御する制御部を備え、
前記工具ホルダに保持された少なくとも1つの面取ホブを備える
ことを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1つに記載の装置と、歯切り盤と、ワークピース移送部とを備える歯車製造機械加工センターであって、
前記歯切り盤は内歯を機械加工するよう構成されており、歯車ホブ切り盤、面取切削バリ取り装置、又は、スカイビング機であり、
前記ワークピースの歯切り加工及び面取りは、並行して行われ、
ワークピース移送部は、循環型自動制御機械であり、請求項1〜13のいずれか1つに記載の前記装置と歯切り盤とが、循環型自動制御機械の互いに異なる角度位置に配置されており前記歯切り盤から請求項1〜13のいずれか1つに記載の前記装置へ前記ワークピースを移送させるように構成されている
ことを特徴とする歯車製造機械加工センター。
【請求項15】
請求項1に記載の前記装置を使用して、回転可能に支持された工具ホルダに保持された少なくとも1つの面取ホブによって、内歯を有するワークピースの前記内歯の少なくとも一方の手前側縁部を面取りする方法であって、
前記工具ホルダは、ワークピースホルダに保持されたワークピースに隣接して配置され、
前記工具ホルダに保持された前記面取ホブは、工具軸によって、前記内歯が形成する前記ワークピースの中央開口部の領域内に配置され、前記ワークピースの上側及び下側の少なくとも一方おいて前記内歯の縁部と係合可能にされる
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
前記ワークピースが第1のワークピースホルダに保持された状態では、前記ワークピースの第1の手前側の前記内歯の縁部が面取加工され、
前記ワークピースが第2のワークピースホルダに保持された状態では、前記ワークピースの第2の手前側の前記内歯の縁部が面取加工される
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の方法を実施するための面取ホブの使用方法。
【請求項18】
請求項1に記載の装置において、
前記機械加工ヘッドが、前記ワークピースホルダの回転軸C3と工具ホルダの回転軸B3とに直交する方向に移動するための軸X3をさらに備えている
ことを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置において、
前記工具ホルダを、前記工具ホルダの回転軸B3の方向に移動可能とするシフト軸V3を備え、又は、前記機械加工ヘッドを、X3軸とZ3軸とに直交する方向に移動可能とするY3軸をさらに備えている
ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内歯を有するワークピースの内歯の少なくとも一方の手前側縁部を面取りするための装置及び方法に関する。この装置及び方法は、ワークピースを保持するための、回転可能に支持された少なくとも1つのワークピースホルダと、少なくとも1つの面取ホブを保持するための、回転可能に支持された少なくとも1つの工具ホルダとを備える。面取ホブは、特に、面取切削ホブであってもよい。
【0002】
ワークピース素材片に歯切りを行うことによるワークピースの機械加工では、機械加工されたワークピースの縁部から材料が鋭い突起として突出する。バリと呼ばれるこれらの突起は、後のプロセスの妨げになる可能性があり、また、手作業時にはマシンオペレータが負傷する原因となり得るので、歯の縁部のバリ取りを行うことによって、取り除かなくてはならない。さらには、歯縁部に特別な保護的面取りが施されることも多い。
【0003】
ワークピースの面取は、典型的には、ワークピースに歯を作製した後に、特殊なバリ取り工具を使用して行われる。従来技術によれば、この面取プロセスのための複数の方法が存在する。特許文献1のバリ取り方法や、特許文献2、3の面取切削バリ取りは、特に、大量生産において利用されている。
【0004】
特許文献2には、いわゆる面取切削ホブを使用する面取切削バリ取りが開示されている。この面取切削ホブは、ディスク型バリ取り工具11である。バリ取り工具11は、切削歯12を有し、好ましくは同じ周囲間隔で周囲部に縦溝を彫る工具である。切削歯は、周囲方向に螺旋状に延びる。面取切削ホブは複数のネジ山を有し、1つのネジ山に1つの歯が設けられている。ただし、回転方向における前方の歯の側部に形成された切削エッジは、共通の回転円上に配置されている。
【0005】
上記の面取方法は、典型的には、外歯を有するワークピースを面取するために使用される。この面取では、例えば、バリ取り工具をホブ切り工具とともに同じ工具軸に固定し、ホブ切りプロセス後、バリ取り工具を歯の縁部に係合させる。
【0006】
特許文献4からは、面取ホブ、特に、面取切削ホブが工具スピンドルにおける唯一の工具として使用される、面取ホブ切りユニットの使用が公知である。この文献には、内歯を面取りするための記載の装置を、内歯を有するワークピースの内部に配置できることも記載されている。より大きい内歯では、加工台の中央又は加工台の上方の支持部に設けられた固定位置コンソール上の歯付きワークピースの内部に装置を配置して、内歯の面取加工を行うことになる。より内径の小さい内歯では、この態様のためのスペースは十分ではなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第8328237号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第20320294号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第202007016740号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102013015240号明細書
【0008】
本発明の目的は、内歯を有するワークピースの内歯の手前側縁部を面取りするための改良された装置及び改良された方法を提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この目的は、本出願の独立請求項に記載の装置及び方法により達成される。本発明の好適な実施形態は、従属請求項の主題を構成する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ある態様によると、本発明は、内歯を有するワークピースの内歯の少なくとも一方の手前側縁部を面取りするための装置を包含する。この装置は、ワークピースを保持するための、回転可能に支持された少なくとも1つのワークピースホルダと、面取ホブ、特に、面取切削ホブを保持するための、回転可能に支持された少なくとも1つの工具ホルダとを備える。本発明の第1の態様は、工具ホルダが、ワークピースホルダに保持されたワークピースに隣接して配置され及び/又は配置可能であって、工具ホルダに保持された面取ホブは、工具軸によって、内歯が形成するワークピースの中央開口部の領域内に配置され、ワークピースの上側及び/又は下側において前記内歯の縁部と係合可能である。
【0011】
本発明の発明者らは、内歯の面取りのために、面取りを行う装置全体を内歯が形成する中央開口部内に配置する必要はないことを認識した。本発明の発明者らは、さらに、工具ホルダをこの領域内に配置することさえも不要であることを認識した。
【0012】
本発明によれば、工具ホルダをワークピースに隣接して配置し、面取ホブだけを工具軸を使用してワークピースの内部領域に配置する。これにより、わずかな構造変更をするだけで、従来設計のホブ切りヘッドを本発明の装置に使用することができる。中央開口部領域内に配置された面取ホブの複数の歯は、工具軸の径方向に突出している。したがって、工具軸がワークピースの上方又は下方に延びた状態で、面取ホブの歯がワークピースの中央孔部の内部に入り込んで、内歯の縁部を機械加工することができる。
【0013】
内歯縁部の面取時には、工具軸は、工具ホルダから延びて、内歯を有するワークピースの環状領域の上側及び/又は下側を、ワークピースの外側領域から内側領域へと通るのが好ましい。
【0014】
したがって、本発明は、内歯を有するワークピースの環状領域を超えて延びて、面取ホブをワークピースの内部領域に配置する、比較的長い工具軸を必要とするだけである。
【0015】
工具ホルダから、工具軸に配置された少なくとも1つの面取ホブまでの長さは、好ましくは、ワークピースの内歯の内半径の10%以上であることが好ましく、20%よりも大きく、30%以上であることが好ましい。特に好ましい実施形態では、この長さは40%よりも大きい。複数の面取ホブが工具軸に設けられる場合は、好ましくは、これらの寸法仕様は、工具ホルダと工具ホルダに面する第1の面取ホブとの間の工具軸の長さに適用される。さらに、工具軸に配置された2つの面取ホブの間の軸長さは、好ましくは、ワークピースの内歯の内半径の10%以上であることが好ましく、20%よりも大きいことが好ましく、30%以上又は40%以上であることがさらに好ましい。
【0016】
可能な実施形態では、工具ホルダを、ワークピースホルダに隣接させて又はワークピースホルダの上方に配置された機械加工ヘッドに配置して、機械加工ヘッドを介してワークピースホルダに対して移動させてもよい。特に好ましくは、機械スタンドに設けた機械加工ヘッドを、ワークピースホルダに隣接させて又はワークピースホルダの上方に配置する。機械スタンドは、機械台上に配置してもよい。この機械台もまたワークピースホルダを支持している。
【0017】
好ましくは、機械加工ヘッドは、工具ホルダをワークピースホルダの軸方向に動かすための機械軸、及び/又は、ワークピースホルダの回転軸及び/又は工具ホルダの回転軸に直交する方向に工具ホルダを移動させるための機械軸を有する。
【0018】
好ましくは、機械加工ヘッドは、工具ホルダの回転軸及び/又はワークピースホルダの回転軸に直交する旋回軸周りに工具ホルダを旋回させる旋回軸をさらに有していてもよく、及び/又は、工具ホルダ回転軸の方向に工具ホルダを移動させるための機械軸を有していてもよい。
【0019】
工具軸に配置された面取ホブには、上側及び/又は下側からアクセス可能であることが好ましい。
【0020】
本願において、ワークピースの上側又は下側と言うとき、又は、構成要素がワークピースの上方、下方、又はワークピースに隣接して配置されていると言うとき、ワークピースホルダが垂直な回転軸を有していなければならないこと,又は、垂直方向において上側が下側の上方に配置されていること、又は、構成要素が実際に垂直方向におけるワークピースの上方又は下方、若しくは、水平方向にワークピースに隣接して配置されていることを意味するものではない。
【0021】
これらの用語は、むしろ、ワークピースの回転軸により予め定義される方向であって、ワークピースの上側と下側とが規定される方向における相対的配置を示しているだけである。本発明の枠組みにおいて、ワークピースのいずれの側を上側と見なし、いずれの側が下側であるかには意味がない。
【0022】
機械の概念によっては、例えば、機械加工中にワークピースの軸が水平に配置され、これにより、ひいては本発明の装置の水平方向の位置合わせが必要となる配置も想定され得る。
【0023】
その代わりに、あるいはそれに加えて、工具ホルダを、機械加工ヘッドを介して機械スタンドに配置してもよい。機械加工ヘッドは、ワークピースホルダの回転軸及び/又は工具ホルダの回転軸に直交する方向に、機械スタンドから離れるように延びることが好ましい。これにより、工具ホルダの回転軸は、特に、機械スタンドから一定の距離を空けて延びる。
【0024】
さらには、その代わりに、あるいはそれに加えて、ワークピースホルダに面する機械スタンドの前面と平行に工具ホルダが延びるように、工具ホルダを機械加工ヘッドに配置してもよい。
【0025】
本発明の装置は、特に、内歯を有し面取ホブにより面取りされるワークピースの環状領域が、工具軸の上方又は下方において、機械スタンドと工具ホルダの回転軸との間にあるように設計されていてもよい。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の装置は、ワークピースの内歯に面取ホブを進入させる及び/又は噛み合わせるためのセンサを備える。
【0027】
このようなセンサは、特に、本発明の装置が独立設置用に設計される場合に必要である。又は、縁部が面取りされるワークピースが、歯切り工程中には別のワークピースホルダに配置されており、例えば、ワークピース移送部により本発明の装置のワークピースホルダに移送される場合には、必要である。なぜなら、このような場合には、装置に対する内歯の位置がわからないからである。
【0028】
センサとしては、非接触型センサが好ましい。例えば、誘導センサ及び/又は光学センサが使用できる。
【0029】
面取ホブを進入させる及び/又は噛み合わせるためのセンサは、別体として設けられたアームに配置されることが好ましい。このアームにより、センサは内歯内に移動可能である。好ましくは、センサ用のアームは、工具ホルダとともに装置の機械加工ヘッドに配置され、及び/又は、同じ機械軸に沿って移動可能である。例えば、光学センサを使用する場合には、内歯の外側にセンサを配置することもさらに想定される。
【0030】
第2の態様によると、本発明は、内歯を有するワークピースの内歯の少なくとも一方の手前側縁部を面取りするための装置を包含する。この装置は、ワークピースを保持するための、回転可能に支持された第1のワークピースホルダと、少なくとも1つの面取ホブ、特に、面取切削ホブを保持するための、回転可能に支持された少なくとも1つの工具ホルダとを備える。本発明の第2の態様は、装置が、回転可能に支持された、ワークピースを保持するための第2のワークピースホルダを有することを特徴とする。ワークピースを第1のワークピースホルダに保持した状態では、内歯縁部は工具の第1の手前側に接触して面取加工され得る。ワークピースを第2のワークピースホルダに保持した状態では、当該ワークピースの第2の手前側の内歯縁部が面取加工され得る。
【0031】
本発明の発明者らは、内歯を有するワークピースをワークピースホルダに保持して、ワークピースの上側及び下側の両方において内歯縁部を面取加工することは、特にワークピースにおける工具ホルダに面する側での内歯縁部へのアクセスが非常に難しいことが理由で、特に複雑であることを認識した。
【0032】
本発明の第2の態様によると、2つのワークピースホルダが設けられ、ワークピースホルダから遠く、よって容易にアクセスできる側の縁部を面取加工可能であることにより、この問題は解決される。
【0033】
本発明の第2の態様に係る装置は、好ましくは、機械軸に沿って移動可能で、第1の手前側及び第2の手前側の両方の内歯縁部の面取加工を可能とする機械加工ヘッドを有する。したがって、同一の機械加工ヘッドを使用して、第1のワークピースホルダに保持されているワークピースと、第2のワークピースホルダに保持されているワークピースの両方を機械加工できる。特に、同一の機械軸を使用して、面取加工を行ってもよい。
【0034】
本発明の装置の工具ホルダは、好ましくは、機械加工ヘッドに配置され、その機械軸上を移動可能である。
【0035】
その代わりに、あるいはそれに加えて、第1及び第2の手前側の内歯縁部の面取加工は、同一の面取ホブ又は同一の工具ホルダに保持された複数の面取ホブによって行われてもよい。特に好ましくは、ワークピースの第1の手前側及び第2の手前側の内歯縁部の面取加工は、同一の工具軸に把持された2つの別々の面取ホブによって行われる。
【0036】
本発明の装置は、好ましくは、第1のワークピースホルダから第2のワークピースホルダへ、及び/又は、第2のワークピースホルダから第1のワークピースホルダへ、ワークピースの移送を行う装置を備える。したがって、特に、第1のワークピースホルダにワークピースを保持した状態で、第1の手前側の内歯縁部を機械加工した後、ワークピースを第2のワークピースホルダに移送して、第2の手前側の内歯縁部を面取加工してもよい。
【0037】
この移送は、ワークピースを第2のワークピースホルダに保持した状態で、このワークピースの第2の手前側が第1のワークピースホルダに面するように、そして、ワークピースを第1のワークピースホルダに保持した状態で、ワークピースの第1の手前側が第2のワークピースホルダに面するようして行われ、それぞれの場合の他方の手前側がアクセス可能となり機械加工できる。
【0038】
本発明の可能な実施形態では、ワークピースを移送するための装置は、2つのワークピースホルダのうちの1つが移動可能で、他方のワークピースホルダに保持されているワークピースを掴むことができるように構成されていてもよい。
【0039】
その代わりに、あるいはそれに加えて、ワークピース移送部を設けて、ワークピースを一方のワークピースホルダから他方のワークピースホルダに移送してもよい。
【0040】
ワークピース移送時の、ワークピースの回転位置は、第1のワークピースホルダから第2のワークピースホルダへ電子的に伝送され、ワークピースの移送後も回転位置がわかることが好ましい。特に、ワークピースの第2の手前側の内歯の面取りのために面取ホブを正確に位置づけする目的で行われる、面取ホブの再進入プロセスが不要となり得る。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、2つのワークピースホルダが、作業領域における互いに反対の2つの側に配置されているか、配置可能である。好ましくは、どちらのワークピースホルダに保持されているのかによって、ワークピースの第1の手前側又は第2の手前側が作業領域に面する。作業領域に面した手前側の内歯縁部を加工するために、1つ又は複数の面取ホブが、作業領域に配置されているか、配置予定であることが好ましい。
【0042】
本発明の可能な実施形態では、2つのワークピースホルダそれぞれの回転軸が互いに平行である。特に好ましくは、2つのワークピースホルダを同軸上に配置する。この場合、一方のワークピースホルダが、その回転軸方向に他方のワークピースホルダにまで移動して、ワークピースを引き取ることができることが特に好ましい。
【0043】
本発明の第1及び第2の態様は、最初は互いに独立しており、別々に実施できる。
【0044】
ただし、本発明の2つの態様を、1台の装置において組み合わせることが特に好ましい。特に、本発明の第2の態様に係る装置の第1及び/又は第2のワークピースホルダに保持されているワークピースの面取加工を、第1の態様に従って行うことができる。
【0045】
特に好ましくは、ワークピースが第1のワークピースホルダに配置され、ワークピースの上側で内歯縁部を係合させようとする場合、工具ホルダを2つのワークピースホルダに隣接して配置し及び/又は配置可能であり、工具軸を介して、少なくとも1つの面取ホブをワークピースの内歯が形成する中央開口部の上方に配置可能であることが特に好ましい。さらに、ワークピースが第2のワークピースホルダに配置され、ワークピースの下側で内歯縁部を係合させようとする場合、工具軸を介して、面取ホブを内歯が形成する中央開口部の下方に配置することも可能である。同一の工具ホルダを使用して、上側及び下側において内歯縁部を面取加工することが好ましい。
【0046】
本発明の第1の代替的態様では、好ましくは同一の工具軸に配置された別々の面取ホブを使用して、上側及び下側において内歯縁部の面取加工を行う。
【0047】
工具ホルダの回転方向を逆にして、上側及び下側における内歯縁部の機械加工を行い、上側及び下側における内歯縁部の面取りの際に、工具とワークピースとの間で同じ切削方向になるように、作業を行うことが好ましい。特に、回転方向は、上側における内歯の面取り時と下側における内歯の面取り時との両方で、機械加工が手前側から内歯の方向(奥側)に行われるように選択される。又は、回転方向は、内歯縁部の機械加工が、内歯から手前側への切削方向で行われるように選択される。これには、面取中に残るバリが、手前側のみ、又は内歯内のみに残るという利点がある。各ワークピースホルダの回転方向は、面取ホブの回転方向に適合される。
【0048】
あるいは、同一の面取ホブを使用して、上側及び下側において内歯縁部を機械加工してもよい。第1の代替的態様では、同じ面取ホブを、ワークピースの同一の径領域において、上側における内歯縁部及び下側における内歯縁部と係合させることができる。しかし、これには、上側及び下側における内歯縁部の面取加工において、異なる切削方向が生じるという欠点がある。
【0049】
したがって、面取ホブを、ワークピースの回転軸に対する第1の径方向に、ワークピースの第1側の内歯縁部領域と係合させることが好ましい。そして、ワークピースを第2のワークピースホルダに移送した後、ワークピースの回転軸に対する第2の径方向に工具ホルダを移動させることによって、面取ホブをワークピースの第2側の内歯の径方向反対に位置する縁部領域と係合させるのが好ましい。これには、ワークピースの両側で同じ切削方向になるという利点がある。係合点の変更の際には、工具ホルダの回転方向を適合させなくてはならない。
【0050】
1つの工具軸に配置された1つ又は複数の面取ホブは、2つの側からアクセス可能であって、それぞれの側がワークピースの縁部と係合可能であることが好ましい。特に、上側と下側の両側からアクセス可能である。
【0051】
本発明の装置は、典型的には量産用に使用され、特に、大量生産用に使用される。ワークピースの機械加工、及び、よってこの場合には面取プロセスは、装置の制御部によって自動的に行われる。
【0052】
したがって、本発明の装置は、ワークピースの少なくとも一方の手前側、好ましくは両方の手前側の内歯縁部を面取りする目的で、装置の機械軸を自動制御する制御部を備えることが好ましい。
【0053】
好ましくは、本発明の装置がその作用及び/又は使用について上述した工程を自動的に行うように、本発明の装置の制御部はプログラムされている。
【0054】
特に、制御部は、マイクロプロセッサと、装置の制御プログラムが保存されるメモリとを備える。制御プログラムは、マイクロプロセッサにより実行される。
【0055】
本発明は、まず、面取ホブ、特に、面取切削ホブを工具ホルダに保持して、上記のアプリケーションを実行するのに適した、上記で詳述したような装置を提供する。
【0056】
ただし、本発明は、少なくとも1つの面取ホブが工具ホルダに保持される上述のような装置、又は、複数の工具ホルダにそれぞれ面取ホブが保持される装置も同様に包含する。複数の面取切削ホブは、特に、1つ又は複数の工具ホルダに保持される。
【0057】
本発明は、さらに、上述のような装置、歯切り盤、及びワークピース移送部等を備える歯車製造機械加工センターに関する。歯切り盤は、好ましくは、内歯を機械加工するための機械であり、特に、フライス盤、面取切削バリ取り装置、又は、スカイビング機であってよい。好ましくは、ワークピースの歯切り加工及び面取りは、歯車製造機械加工センターにおいて、同時に並行して行われる。歯切り盤によって歯切りされたワークピースは、特に、ワークピース移送部によって、本発に係る面取装置に移送されて、面取りされる。その間に、歯切り盤によって次のワークピースの歯切りがすでに行われている。ワークピースの面取りを、荒加工工程と仕上げ加工工程との間に行うことも想定される。この目的で、ワークピースは歯切り盤から本発明の装置に移送され、その後、歯切り盤に戻される。
【0058】
ワークピース移送部は、好ましくは、循環型自動制御機械であり、より好ましくは、本発明の面取装置と歯切り盤とが、循環型自動制御機械における異なる角度位置に配置されている。
【0059】
好ましくは、歯切り盤と本発明の装置とは、別々のワークピースホルダを有する。この場合、ワークピース移送部は、歯切り盤による歯切り加工の後、歯切り盤のワークピースホルダから本発明の面取装置のワークピースホルダに、ワークピースを移送する。
【0060】
ただし、代替的実施形態では、歯車製造機械加工センターは、複数のワークピースホルダを有していてもよく、これらのワークピースホルダに保持したままの状態でワークピースを歯切り加工及び面取加工してもよい。この場合、ワークピースホルダは、歯切り盤から本発明の装置へ、及び/又は、その逆に移動することが好ましい。
【0061】
好ましくは、ワークピース移送部を使用して、外部運搬経路又は他の機械加工ユニットから、1つ又は複数のワークピースホルダにワークピースを配置し、及び、1つ又は複数のワークピースホルダからワークピースを取り除く。
【0062】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の装置は独立した機械として設計されてもよい。この機械は、運搬経路及び/又は自動制御装置から歯切り済みのワークピースを受け取って、面取加工を行う。このようにして機械加工されたワークピースは、好ましくは、再度、運搬経路及び/又は自動制御装置に移送される。
【0063】
本発明は、本発明の装置に加え、これに対応する方法を包含する。特に、本発明はまた、本発明の装置に関連して上述した方法を包含する。
【0064】
これとは別に、第1の態様の展開によると、本発明は、内歯を有するワークピースの内歯の少なくとも一方の手前側縁部を、回転可能に支持された工具ホルダに保持された面取ホブ、特に、面取切削ホブで面取りする方法を包含する。本発明の方法は、工具ホルダをワークピースホルダに保持されたワークピースに隣接させて配置し、工具ホルダに保持された面取ホブを、工具軸によって、前記内歯が形成する前記ワークピースの中央開口部の領域内に配置し、前記ワークピースの上側及び/又は下側において前記内歯の縁部と係合させる、ことを特徴とする。
【0065】
本発明の方法は、本発明の第1の態様に係る装置に関連して詳述したように実施されるのが好ましい。本発明の方法は、特に、上記のような装置を使用して実施してもよい。
【0066】
第2の態様によると、本発明は、内歯を有するワークピースの内歯の少なくとも一方の手前側縁部を、回転可能に支持された工具ホルダに保持された面取ホブ、特に、面取切削ホブで面取りする方法を包含する。第2の態様によれば、ワークピースを第1のワークピースホルダに保持した状態では、ワークピースの第1の手前側の内歯縁部が面取加工され、ワークピースを第2のワークピースホルダに保持した状態では、ワークピースの第2の手前側の内歯縁部が面取加工され得る。
【0067】
また、この方法は、第2の態様に係る本発明の装置に関連して上記で詳述したように実施されるのが好ましい。特に好ましくは、この方法はこのような装置を使用して実施されるのが好ましい。
【0068】
本発明の第1及び第2の態様に係る方法は、組み合わせて使用することが特に好ましい。
【0069】
本発明は、さらに、上記のような本発明に係る方法の1つを実施するための、面取ホブの使用、特に、面取切削ホブの使用を包含する。
【0070】
本発明は、さらに、上記のような本発明に係る装置の1つにおける、面取ホブの使用、特に、面取切削ホブの使用を包含する。
【0071】
本発明の方法及び装置は、スプールギヤの縁部を面取りするために使用されることが好ましい。
【0072】
好ましくは、本発明に係るワークピースは、歯車、特に、内歯を有する歯車である。内歯を有するこのような歯車は、環形状を有し、内周面に内歯が配置されている。
【0073】
好ましくは、本発明によれば、面取は、面取切削ホブを使用して行われる。面取切削ホブは、特に、独国特許出願公開第10330474号明細書に記載のバリ取り工具のように設計されていてもよい。さらに好ましくは、面取は、独国特許出願公開第10330474号明細書がバリ取りプロセス用として記載しているような、面取切削ホブによって行われる。
【0074】
独国特許出願公開第10330474号明細書に記載のものとは異なり、本発明では、面取切削ホブは歯切りのために使用される工具が設けられた同じ工具軸に把持されるのではなく、面取切削ホブ用の工具ホルダに、好ましくは、面取切削ホブ用の工具ホルダにおける唯一の工具として把持される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1図1は、内歯を有するワークピースの縁部を面取りするための本発明に係る装置の実施形態を示す。この装置では、本発明の両方の態様が実施される。
図2図2は、第1のワークピースホルダに保持されたワークピースの上側で内歯縁部を面取りする様子を示す。
図3図3は、第1のワークピースホルダから第2のワークピースホルダへのワークピースの移送を示す。
図4図4は、第2のワークピースホルダに保持されたワークピースの下側で内歯縁部を面取りする様子を示す。
図5図4に示す機械加工を、ワークピースの部分断面において示す図である。
図6図6は、本発明に係る装置及びワークピース移送部を備える歯車切削センターを示す。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、実施形態及び図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0077】
図1図5に示す本発明に係る装置の実施形態及びこの装置により実行される方法によって、本発明の第1の態様及び第2の態様の両方が実施される。ただし、第1及び第2の態様に関して記載される実施形態の各構成を、それ自体で個別に、他方の態様なしに実施することも可能である。
【0078】
図1は、内歯を有するワークピース21の内歯の縁部を面取りするための、本発明に係る装置を示す。この装置は、工具ホルダ10を備えており、工具ホルダ10には、少なくとも1つの面取ホブ11,11’が工具軸13を介して保持されている。さらに、ワークピースホルダ20が設けられている。このワークピースホルダ20でワークピース21を保持し、ワークピース21の少なくとも一方の手前側の内歯縁部を、工具ホルダ10に保持された面取ホブ11,11’で面取加工する。
【0079】
この目的のために、好ましくは、面取ホブが内歯縁部に係合される。工具ホルダ10の回転運動をワークピースホルダ20の回転運動と同期させて、面取ホブによってワークピース21の内歯縁部を加工する。
【0080】
本発明の第1の態様によると、工具ホルダ10はワークピース21の外側に配置されるが、縁部領域を面取りするための面取ホブ11又は11’は、工具軸13によってワークピース21の中央開口部の領域に配置される。図2に具体的に示すように、この目的のために、工具軸13は、ワークピースホルダ20に隣接して配置された工具ホルダ10から延び、ワークピース21の内歯付環状領域を超えて中央開口部領域内に達する。したがって、面取ホブは、ワークピース21の中央開口部領域に配置されて、同領域から内歯縁部を機械加工する。
【0081】
図2に示す実施形態では、この目的のために、面取ホブ11は中央孔部の上方の領域に配置される。工具ホルダ10は、ワークピースホルダ20に隣接し且つわずかにその上方に位置する領域に配置されている。面取ホブ11の複数の歯12は、工具軸13の径方向に突出しているので、ワークピース21の中央孔部の内部に入り込んで、内歯縁部を機械加工できる。
【0082】
図2に示す機械加工プロセスにおいては、ワークピース21の下側がワークピースホルダ20に向けられ、一方、上側では、面取ホブ11によって内歯縁部に歯切り加工が施される。この目的のために、面取ホブ11は、ワークピース21の中央開口部内に上方から係合する。工具軸13は、ワークピース21の上側よりも上方で、ワークピース21の環状領域を超えて延びる。
【0083】
例えば図4及び図5からわかるように、ワークピース21の下側においても同様の方法で内歯縁部を機械加工可能である。この場合には、したがって、ワークピース21が工具軸13又は面取ホブ11’の上方に配置される。この機械加工については、追って、本発明の第2の態様に関連してより詳細に説明する。ただし、当然のことながら、この機械加工は、第1の態様の枠組み内でも実施可能である。
【0084】
図1に示す実施形態では、工具ホルダ10は、機械加工ヘッド40に配置されており、その機械軸を介してワークピースホルダ20に対して移動可能に構成されている。
【0085】
この実施形態では、機械加工ヘッド40は、機械スタンド55に配置されている。機械スタンド55は、ワークピースホルダ20に隣接して配置されたフレーム50内に設けられており、これらは共通のコンソール60上に配置されている。このコンソール60を介して、装置全体が機械台に固定されている。本実施形態では、機械加工ヘッド40を移動させるための機械軸として、X3軸及びZ3軸がある。X3軸は、機械加工ヘッド40が、ワークピースホルダ20の回転軸C3と工具ホルダ10の回転軸B3とに直交する方向に移動するための軸である。Z3軸は、機械加工ヘッド40が、ワークピースホルダ20の回転軸C3と平行な方向に移動するための軸である。
【0086】
さらに、機械加工ヘッド40を旋回可能とする旋回軸A3が設けられている。旋回軸A3により、機械加工ヘッド40は、工具ホルダ10の回転軸B3とワークピースホルダ20の回転軸C3とに直交する軸周りに旋回可能である。また、工具ホルダ10をその回転軸B3の方向に移動可能とするシフト軸V3が設けられている。あるいは、機械加工ヘッド40を、X3軸とZ3軸とに直交する方向に移動可能とするY3軸を設けてもよい。
【0087】
好ましくは、X3軸、Z3軸、及びV3軸は、例えば往復台によって実現可能な直線軸である。
【0088】
ただし、機械加工ヘッド40を移動するための他の機械軸も想定される。本実施形態で示す個々の軸を省略することも想定される。
【0089】
この実施形態では、工具ホルダ10がその駆動部14ともに、機械加工ヘッド40に配置されている。この配置は、工具ホルダ10の回転軸B3が、ワークピースに面する機械スタンド55の前面から離間して延びるように、つまり、X3軸に直交する面内に延びるように実施される。
【0090】
機械加工ヘッド40及びワークピースホルダ20をこのように構成することは、外歯を有するワークピース用の機械加工ヘッドにおいても一般的である。
【0091】
ただし、外歯を有するワークピースの機械加工の場合とは異なり、面取ホブにおける機械スタンド55から遠い側部ではワークピースとの係合は行われず、面取ホブにおける機械スタンド55に面する側部で係合が行われる。
【0092】
この目的のためには、工具ホルダ10に保持された面取ホブは、特にアクセスし易いよう構成されている必要がある。内歯の縁部を機械加工するためには、特に、機械加工対象であるワークピース21の環状領域は、面取ホブ11の機械スタンド55に面する側において、ワークピースホルダ20の回転軸C3から径方向に延びていなければならない。
【0093】
機械加工対象であるワークピース21の環状領域は、ワークピース21に面する機械スタンド55の前面と面取ホブとの間にあってもよい。その代わりに、あるいはそれに加えて、工具軸13を、面取ホブ11又は11’が機械スタンド55の側面の前の軸V3の方向に配置されるような長さに設計してもよい。このようにすると、機械加工対象であるワークピース21の環状領域を、機械スタンド55に隣接して位置させることができる。
【0094】
なお、本発明では、工具ホルダ10に保持された1つ又は複数の面取ホブへのアクセスし易さが確保されるのであれば、機械加工ヘッド40及び/又は工具ホルダ10を他の配置とすることも想定される。
【0095】
好ましくは、本発明の装置は、ワークピースの内歯に面取ホブを進入させる及び/又は噛み合わせるためのセンサ(本実施形態では図示せず)を備える。センサとしては、非接触型センサが好ましい。例えば、誘導センサ及び/又は光学センサを使用できる。
【0096】
面取ホブを進入させる及び/又は噛み合わせるためのセンサは、別体として設けられたアームに配置されることが好ましい。センサは、このアームによって、ワークピースホルダ20に保持されたワークピース21の内歯内に移動可能である。好ましくは、センサ用のアームは、装置の機械加工ヘッド40及び/又は機械スタンド55に配置され、その機械軸上を移動可能である。
【0097】
ここまで説明した第1の態様に係る本発明の実施形態は、まず、ワークピースホルダ20に保持されたワークピースの第1の手前側の内歯縁部、つまり、ワークピースホルダ20から遠い方の手前側、よって、本実施形態では上側における内歯縁部の機械加工のみを可能にする。
【0098】
ただし、本発明の第2の態様に係る実施形態と組み合わせることによって、ワークピースの上側と下側との両方において内歯縁部を面取加工することも可能である。なお、第2の態様を、第1の態様から独立して実施することも可能である。
【0099】
本発明の第2の態様によれば、本発明の装置は、第1のワークピースホルダ20に加え、第2のワークピースホルダ30を備え、ワークピースの上下両側で内歯縁部を面取加工可能である。
【0100】
この実施形態では、ワークピース21の上側での内歯縁部の面取加工は、ワークピース21が第1のワークピースホルダ20に保持された状態で行われ、ワークピース21の下側での内歯縁部の面取加工は、ワークピース21が第2のワークピースホルダ30に配置された状態で行われる。よって、ワークピース21は、その下側を第1のワークピースホルダ20に向けるとともに、その上側には自由にアクセスできる状態で、第1のワークピースホルダ20に保持される。また、上側を第2のワークピースホルダ30に向けるとともに、下側には自由にアクセスできる状態で、第2のワークピースホルダ30に保持される。
【0101】
2つのワークピースホルダは、第1のワークピースホルダ20に保持されるワークピースと、第2のワークピースホルダ30に保持されるワークピースとの両方を1つの機械加工ヘッドで機械加工できるように、互いに対して反対に配置されている。
【0102】
特に、同一の工具ホルダを両方の面取加工工程に使用可能である。
【0103】
ワークピースの一方側の内歯縁部を機械加工したのち、一方のワークピースホルダから他方のワークピースホルダへワークピースを移動させる。どちらの側を最初に機械加工するかは、所望に合わせて選択できる。
【0104】
本実施形態では、第1及び第2のワークピースホルダ20及び30の回転軸C3及びC4は、互いに平行且つ一直線上に並んでいる。
【0105】
図1図6に示す実施形態では、一方のワークピースホルダから他方のワークピースホルダへのワークピースの移動は、第2のワークピースホルダ30が、回転軸C4に平行に延びる移動軸Z4に沿って移動可能であることにより実現される。
【0106】
これにより、図3に示すように、第2のワークピースホルダ30を、第1のワークピースホルダ20に保持されているワークピース21に接触するように位置させ、第2のワークピースホルダ30によりワークピース21を掴んで、第1のワークピースホルダ20から持ち上げることができる。
【0107】
この目的のために、ワークピースホルダ20及び30はクランプジョー22及び32を有する。これらのクランプジョーは、ワークピース21に同時に係合可能である。第2のワークピースホルダ30をワークピース21に到達するまで下げ、クランプジョー32でワークピース21を第2のワークピースホルダ30に固定すると、第1のワークピースホルダ20のクランプジョー22が解除されてワークピース21が解放される。
【0108】
好ましくは、第2のワークピースホルダ30に保持されるワークピース21の内歯の、第2のワークピースホルダ30に対する位置は、第1のワークピースホルダ20に対するワークピース21の内歯の既知の位置、及び、第1のワークピースホルダ20と第2のワークピースホルダ30との相対的位置から、移動の間に計算される。そのため、第2のワークピースホルダ30に保持されたワークピース21の内歯に面取ホブを進入させ及び/又は噛み合わせるためのセンサは不要である。
【0109】
第2のワークピースホルダ30に保持されたワークピース21をZ4軸に沿って持ち上げた後、図4に示すように、ワークピース21の下側で内歯縁部の機械加工を行うことができる。
【0110】
本実施形態では、Z4軸は、ガイド80において移動可能で、第2のワークピースホルダ30を支持する往復台70によって実現される。
【0111】
本発明の装置は、第1又は第2のワークピースホルダに保持されているワークピースが、歯切り方法の第1の態様に従って機械加工されるように設計されている。この目的のために、工具ホルダ10に保持された少なくとも1つの面取ホブが、工具軸13によってワークピースの中央開口部の領域に配置される。工具軸13は、ワークピースの上方又は下方で、ワークピースの外側領域から内側領域の方向に延びる。
【0112】
この手順とは別に、互いに反対方向に回転する2つの面取ホブ11,11’も、工具ホルダ10に保持されている。下側及び上側において、内歯縁部は面取ホブ11又は面取ホブ11’によって、工具ホルダ10の回転方向を反転させることにより歯切り加工される。したがって、ワークピースの上下両側において、面取ホブとワークピースとの間では、切削方向が同じになる。
【0113】
本発明の第1の態様に係る方法を、図2を参照してより詳細に再度説明する。
【0114】
ワークピース21をワークピースホルダ20に保持する。面取ホブ11及び11’を工具ホルダ10とともに、ワークピースホルダ20に隣接させて配置するか、又は、ワークピースの移動時に面取ホブのエッジが干渉しない程度に、ワークピースホルダ20の上方に離間して配置する。
【0115】
そして、X3軸及び/又はZ3軸上を移動させることにより、面取ホブ11をワークピースホルダ20に保持されたワークピース21の上側の内歯の縁領域に係合させる。面取ホブ11を前もってワークピースホルダ20に隣接させて配置している場合には、内歯を有するワークピース21の中央開口部の上方に面取ホブ11が位置するまで、機械加工ヘッド40全体をX3軸に沿ってワークピースホルダ20に向けて移動させる。そして、機械加工ヘッド40をZ3軸に沿って下方に移動させることにより、面取ホブが縁部に係合して、縁部を歯切り加工する。面取ホブ11がすでにワークピースホルダ20の上方に配置されている場合は、Z3軸に沿っての下方への移動のみが必要である。
【0116】
A3軸とV3軸は、ワークピース21に対して面取ホブを正確に配置するために使用される。
【0117】
ワークピース21の上側での内歯縁部の面取加工を行った後、機械加工ヘッド40をZ3軸に沿って上昇させて、面取ホブ11が歯車の中央開口部から出るようにする。その後、X3軸又はV3軸に沿って、機械加工ヘッド40をワークピースホルダ20に隣接する位置まで移動させる。
【0118】
本発明の第2の態様によれば、第2のワークピースホルダ30は、ワークピース21に到達するまで下方に移動して、ワークピース21を引き取る。
【0119】
再度持ち上げた後、図4及び図5により詳細に示すように、ワークピース21の下側で内歯縁部の面取歯切り加工を行う。ここでの面取歯切り加工は、選択されたワークピースの上側での縁部の面取加工とは回転方向を逆にして、上記の本発明の第1の態様と同じ方法で行われる。さらに、特にV3軸に沿って移動させることにより、機械加工ヘッド40の位置を面取ホブ11’から工具ホルダ10までのより長い距離に適合させる。
【0120】
図2図4及び図5からわかるように、内歯を有するワークピースの内歯の縁部の機械加工時には、この目的で設けられた面取ホブだけがワークピースの中央孔部の領域に配置される。一方、他方の面取ホブは、ワークピースの外側に配置される。この目的のために、共通の工具軸13上での面取ホブ11及び11’の間の距離は、これに応じた長さとなるよう選択されなくてはならない。
【0121】
また、好ましくは、具体的な実施形態とは独立して、面取切削ホブが、本発明の枠組みにおける面取ホブとして構成される。面取切削ホブは、切削歯12を有するディスク形状のバリ取り工具11であって、好ましくは等しいピッチで周囲部に縦溝を彫るものである。
【0122】
面取切削ホブの切削歯12の歯形は、内歯の縁部を面取加工するために特殊設計されていることが好ましい。
【0123】
切削歯は、周方向に螺旋状に延びる。面取切削ホブは複数のネジ山を有し、1つのネジ山に1つの歯が設けられている。ただし、歯の回転方向前方の側部に形成された切削エッジは、共通の回転円上に配置されている。面取切削ホブで内歯縁部を面取りするには、各切削歯がワークピースの内歯の間隙に合致するように、面取切削ホブとワークピースとの間で回転運動を同期する。
【0124】
直線歯歯車では、切削歯の切削エッジの歯形は、バリ取り工具の中心面について対称である。一方、斜歯歯車では、切削エッジの歯形は非対称である。
【0125】
面取りのために、面取切削ホブ11は、図5に示すような位置に配置される。歯溝の手前側縁部の機械加工の間、ワークピース21及び面取切削ホブ11が所定の速度比で回転し、該当する切削歯12により歯溝の手前側縁部が機械加工される。面取切削ホブ11又は切削歯12は、歯溝の手前側縁部との所望の係合がなされるように、ワークピース21の内歯のパラメータに従って構成されることを理解されたい。
【0126】
本発明の装置は、好ましくは、工具ホルダ及びワークピースホルダの回転軸ならびに機械軸を制御して、工具ホルダとワークピースホルダとの相対位置を調節するための制御部を備える。制御部は、本発明の装置を自動的に制御することが好ましい。制御部は、上記で詳述した本発明の装置の適用方法又は適用手順が自動的に実行されるように、特別にプログラムされている。
【0127】
ワークピースを面取りするための本発明の装置は、マシニングセンターにおいて、ワークピースに予め歯を創成する歯切り盤と組み合わせて使用可能である。歯切り盤は、例えば、内歯を機械加工するためのホブ切り盤、面取切削バリ取り装置、又は、スカイビング機であってよい。これらの機械、装置は、内歯の作製に特に適している。
【0128】
歯切り盤及び本発明の装置は、それぞれ、別々のワークピースホルダを有していてもよい。この場合、ワークピースを歯切り盤から本発明の面取装置に移送するためにワークピース移送部が設けられる。あるいは、ワークピースは、ワークピースホルダに把持されたままの状態でワークピースホルダごと、歯切り盤から本発明の装置に移送されてもよい。
【0129】
上記でより詳細に説明した本発明に係る装置1を備える、歯車切削センターの実施形態を図6に示す。
【0130】
この実施形態では、ワークピースホルダ20は、本発明に係る装置と固定的に関連付けられており、リングローダー3を介して、ワークピースの供給を受ける。歯切り盤(図6には図示せず)は、別の角度位置2に配置されている。この位置は、例えば、リングローダー3について、本発明の装置1まで90°の角度位置である。したがって、リングローダー3は、歯切り盤で歯切りされたワークピースを、本発明の装置に移送可能である。必要に応じて、ワークピースを歯切り盤に戻して、例えば、荒加工工程と仕上げ加工工程との間での面取りを可能にしてもよい。
【0131】
本実施形態では、第2のワークピースホルダ30が移動するZ4軸を設けるためのレール80が機械スタンドに配置されている。機械スタンドも、リングローダー3を支持している。一方、機械加工ヘッド40は、リングローダー3の反対側に配置されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6