(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810130
(24)【登録日】2020年12月14日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】超音波溶接トング
(51)【国際特許分類】
B23K 20/10 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
B23K20/10
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-505529(P2018-505529)
(86)(22)【出願日】2016年4月8日
(65)【公表番号】特表2018-517568(P2018-517568A)
(43)【公表日】2018年7月5日
(86)【国際出願番号】EP2016057689
(87)【国際公開番号】WO2016166019
(87)【国際公開日】20161020
【審査請求日】2019年1月29日
(31)【優先権主張番号】102015206866.8
(32)【優先日】2015年4月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517359820
【氏名又は名称】シュンク ゾノシステムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】フランク ガッセルト
(72)【発明者】
【氏名】ペーター クイルマン
(72)【発明者】
【氏名】ウド バーゲンバッハ
【審査官】
柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05906694(US,A)
【文献】
特開昭59−093320(JP,A)
【文献】
特開昭49−080674(JP,A)
【文献】
特開昭59−094592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
B29C 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の導電性を有する溶接媒体(20)に超音波溶接を行う超音波溶接トング(10)であって、
第1のトング部(11)と、該第1のトング部に対して移動可能な第2のトング部(12)と、を備え、前記第1のトング部が、超音波振動を伝達するソノトロード(14)によって形成された、第1の溶接ジョーを有し、前記第2のトング部が、アンビル(15)によって形成された、第2の溶接ジョーを有する超音波溶接トングにおいて、
前記第1の溶接ジョー又は前記第2の溶接ジョー、及び溶接媒体停止装置(21)が、前記第1及び第2の溶接ジョー間に形成された溶接媒体保持空間(19)の境界を定めると共に、それぞれが導電性を有し、かつ、互いに電気的に絶縁されるように配置され、導電性を有する前記溶接ジョー及び導電性を有する前記溶接媒体停止装置が安全回路の構成部品を形成し、前記第1及び第2の溶接ジョーの閉鎖を含む溶接工程を、前記溶接媒体を介する前記溶接ジョーと前記溶接媒体停止装置との電気接触の形成によって安全回路が閉じた後に始動させる、ことを特徴とする前記超音波溶接トング。
【請求項2】
前記溶接媒体停止装置(21)が、絶縁体(24)として実現される接続要素を介してトング部に接続される、ことを特徴とする請求項1に記載の超音波溶接トング。
【請求項3】
前記溶接媒体停止装置(21)が前記第1のトング部(11)に配置され、前記溶接ジョーが前記第2のトング部(12)に配置される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波溶接トング。
【請求項4】
前記溶接媒体停止装置(21)が2つの停止要素(22、23)を有し、該2つの停止要素(22、23)は互いに電気的に絶縁され、前記溶接媒体(20)の長手方向軸線方向(36)と平行な共通の停止面(27)に配置され、前記長手方向軸線方向が前記溶接工程の実行のために定義される、ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波溶接トング。
【請求項5】
前記2つの停止要素(22、23)は前記第1のトング部(11)に配置され、前記2つの停止要素の2つの自由接触端部(25、26)が、下側のトング部(12)の前記アンビル(15)によって形成された溶接ジョーを、前記2つの自由接触端部間に収容する、ことを特徴とする請求項4に記載の超音波溶接トング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状の導電性溶接媒体に超音波溶接を行う超音波溶接トングに関し、超音波溶接トングが、第1のトング部と、第1のトング部に対して移動可能な第2のトング部と、を備え、第1のトング部が、超音波振動を伝達するソノトロード(超音波振動子)によって形成された第1の溶接ジョーを有し、そして、第2のトング部が、アンビルによって形成された第2の溶接ジョーを有する。
【背景技術】
【0002】
上述した種類の超音波溶接トングは、特に、冷却ユニット(すなわち、具体的には、例えばエアコン又は冷蔵庫)の流体ラインなどの金属管における端部の溶接に用いられている。このような種類の端部の溶接は、流体ラインを備えた冷却回路に冷却剤が充填された後、管の端部が溶接されるのと同時に、管の自由端部に配置された充填電機子が管の端部から切り離されるように行われる。
【0003】
実際の溶接工程は溶接ジョー間で行われ、溶接ジョーは比較的小さくて狭く、そして、狭くて小さな構造により、流体ラインを備えたユニットに非常に接近させて溶接工程を行うこともできるように、最も狭くされた空間であっても溶接位置に位置決めすることが可能であるが、超音波溶接トングのトング部におけるソノトロードを備えた超音波装置の配置には、対応する質量を含む超音波溶接トングの全体的に体積の大きい構造が必要である。したがって、超音波溶接トングの取扱いでは、超音波溶接トングの重さを補償し、そして超音波溶接トングの取扱いを容易にするように、超音波溶接トングを取扱装置と組み合わせる必要がある。
【0004】
既知の超音波溶接トングには、このような種類の取扱装置が設けられているため、片手のみを使って位置決めをすることが容易であるが、既知の超音波溶接トングは、安全上の理由により、両手を使って操作されることになっている。これは、溶接工程の実行時に、作業者の手が溶接ジョーの領域に位置しないようにするためである。両手による操作では、溶接工程を始動させる2つのトリガスイッチが設けられており、これらのスイッチはそれぞれ1つのハンドルに配置されているため、作業者の両手は、溶接工程を実行するか又は始動させるように、間隔を置いて配置されたハンドルに置かれる必要がある。
【0005】
したがって、実際には、冷却ユニットの管状流体ライン端部の溶接では、作業者は、溶接工程と同時に、端部が溶接されたときに流体ラインから切り離される充填電機子が所望の位置に位置決めされるように、具体的には収容容器に落下する際に破損しないようにする必要があるため、作業者には特別の技能が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、超音波溶接トングの操作安全性に対して悪影響を及ぼすことなく、超音波溶接トングの取扱いを簡単にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有する超音波溶接トングによって達成される。
【0008】
本発明によれば、第1の溶接ジョー又は第2の溶接ジョー、及び溶接媒体停止装置は、第1及び第2の溶接ジョー間に形成された溶接媒体保持空間の境界を定めると共に、それぞれが導電性を有し、かつ、互いに電気的に絶縁されるように配置され、導電性を有する溶接ジョー及び導電性を有する溶接媒体停止装置は安全回路の構成部品を形成し、溶接ジョーの閉鎖を含む溶接工程を、溶接媒体を介する導電性溶接ジョーと溶接媒体停止装置との電気接触の形成によって安全回路が閉じた後に始動させるようにする。
【0009】
このため、本発明に係る超音波溶接トングは、溶接ジョーと溶接媒体停止装置との間にまたがる接触点として配置された溶接媒体を介して、溶接媒体停止装置と溶接ジョーとの電気接触が形成された場合にのみ、溶接工程を始動させることが可能である。このようにして、溶接媒体自体は、溶接工程を始動させるトリガ装置の構成部品を形成する。
【0010】
本発明に係る超音波溶接トングの構造により、溶接媒体、導電性を有する溶接ジョー及び溶接媒体停止装置の同時接触によって、溶接媒体が確実に溶接位置にある場合のみ、溶接工程に従って溶接ジョーの閉鎖が実際に行われるようになるために、超音波溶接トングの両手による操作はもはや必要ではない。このように、超音波溶接トングは、具体的には超音波溶接トングを取り扱うのに片手しか必要ないように、片手による操作を安全に行うものとすることが可能である。
【0011】
超音波溶接トングと通常組み合わされる取扱装置は、いずれにせよ重量の軽減を提供するため、作業者は、溶接媒体を溶接ジョー間の溶接媒体保持空間に配置するように超音波溶接トングを旋回させることによって、超音波溶接トングを溶接媒体に対して位置決めする必要しかない。超音波溶接トングの、この旋回位置決めは、片手で容易に行うことができ、作業者は、溶接時に、空いている方の手で充填電機子を保持することができ、充填電機子がいったん溶接媒体から切り離されると、その正確な位置決めを確実にすることができる。
【0012】
超音波溶接トングの好適な実施形態において、溶接媒体停止装置は、絶縁体として実現される接続要素を介して1つのトング部に接続され、このため、所望の電気的絶縁は、いずれにせよ、接続体自体、すなわち、例えば接続要素をそれぞれのトング部に接続するのに必要な接続手段により実現される。
【0013】
第1のトング部に対する第2のトング部の移動性に悪影響を及ぼさないように、第1のトング部に溶接媒体停止装置を配置し、第2のトング部に導電性溶接ジョーを配置することが特に好適である。
【0014】
溶接媒体停止装置が、2つの停止要素であって、互いに電気的に絶縁され、溶接媒体の長手方向軸線方向と平行な共通の停止面に配置された2つの停止要素を有し、長手方向軸線方向が、溶接工程の実行のために定義される場合、停止装置は、溶接工程の安全な始動に関係するだけでなく、溶接媒体の定義された位置決めを確実にするように、特に効果的に用いることができるが、これは、この場合、溶接工程の始動は、溶接媒体を介して相互に絶縁された停止要素間に確立された導電性接続部において、条件付きで追加的に行うことができるからである。
【0015】
停止要素は、停止要素が第1のトング部に配置される場合、2つの停止要素の2つの自由接触端部が、下側にあるトング部のアンビルによって形成された溶接ジョーを、2つの自由接触端部間に収容するように、特に効果的に配置される。
【0016】
以下に、図面によって、超音波溶接トングの好適な実施形態を更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】閉位置にあり、トングヘッドに配置された溶接ジョーを有する超音波溶接トングの等角図を示す。
【
図2】開位置に配置された溶接ジョーを有するトングヘッドの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、共通のトングハウジング13内に配置された、上側トング部11及び下側トング部12を有する超音波溶接トング10の等角図を示している。上側トング部11は、実質的な構成部品として超音波振動装置を有し、超音波振動装置は、その前方端部に配置されたソノトロード(超音波振動子)14を備え、ソノトロード14は第1の溶接ジョーを形成している。アンビル15は、ソノトロード14に対して移動可能にトングハウジング13に取り付けられている。図示されている実施例の場合には、アンビル15は第2の溶接ジョーを形成し、アンビル15に形成された対向面17が、すぐに利用できる場合には長手方向振動を行うソノトロード14の作動面18に対して移動するように、作動装置(図示しない。)によって、トングハウジング13の後部に形成された旋回軸線16の周りをソノトロード14に対して旋回することができる。または、ソノトロード14への方向におけるアンビル15の前進運動は、線形調整装置により行ってもよい。
【0019】
ソノトロード14及びアンビル15は、実質的に、超音波溶接トング10の溶接ヘッド35を形成し、
図2に示されている溶接ヘッド35の開位置において、溶接媒体保持空間19の境界を定め、溶接媒体保持空間内には溶接媒体20を挿入することができ、これは、すぐに利用できる場合には小型の金属管として形成される。
図2から更に理解できるように、上側トング部11には、溶接媒体停止装置21であって、絶縁体24を介して上側トング部11に接続され間隔を置いて配置された2つの停止要素22、23を有する溶接媒体停止装置が設けられている。停止要素22、23の自由接触端部25、26は、アンビル15の両側の共通の停止面27において延び、これによって、溶接媒体保持空間19内に挿入された溶接媒体20が接触端部25、26と接触すると、溶接媒体20は長手方向軸線方向28に延び、長手方向軸線方向は
図2に示され、そして、溶接ジョーの閉鎖過程の実行後に生成された溶接継ぎ目が、超音波溶接トング10の長手方向軸線36の方向に、すなわち、溶接媒体の長手方向軸線方向28に対して実質的に90°の角度αにおいて延びるようになる。
【0020】
図2に示されている実施形態において、導電性アンビル15はハウジング13に接続され、ハウジングも導電性であり、そして電気的接地電位を形成し、接地電線29を介して接地されている。
【0021】
停止要素22、23も導電性であり、ハウジング13から、そして、絶縁体24に配置されることによって互いに、電気的に絶縁されており、また、停止要素はそれぞれ、信号線31、32を介して評価ユニット(図示しない。)に接続され、信号線は、アンビル15及び停止要素22、23とともに安全回路に配置され、
図1の超音波溶接トング10のハンドル34に配置された作動スイッチ33も同様に、安全回路に組み込まれている。
【0022】
溶接ヘッド35の構造は
図2に示され、そして、相互に絶縁された停止要素22、23とアンビル15とを備え、安全回路を閉じるように、ハンドル34の作動スイッチ33がともに作動する必要があること、そして、溶接媒体20を介してアンビル15と2つの停止要素22、23との電気接触を確立する必要があるようにする。これらの2つの条件が満たされる場合にのみ、安全回路が閉じ、溶接ジョーは、溶接工程実行の前提条件として、アンビル15をソノトロード14に対して旋回させることにより閉じる。