特許第6810311号(P6810311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6810311
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】浮体式風車設備
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/25 20160101AFI20201221BHJP
【FI】
   F03D13/25
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-18600(P2020-18600)
(22)【出願日】2020年2月6日
【審査請求日】2020年6月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318001968
【氏名又は名称】株式会社OKYA
(72)【発明者】
【氏名】菅野優
【審査官】 山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−148320(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1034924(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 13/25
B63B 35/44
B63B 35/00
B63B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造物に据え付けられた風車で、
風車は、回転軸に交差する方向から風を受けてブレードまたは受風体が回転軸まわりを回転する型であって、
風車の回転軸を水平に、かつ風向に交差するように配置することで、風車が動揺しても風車の回転軸と風向とからなる角度が安定することを特徴とする浮体式風車設備。
【請求項2】
請求項1に記載の浮体式風車設備であって、
浮体構造物上には風を受けて推進力を得るセイルと、風車の回転軸と風向が平行にならないように浮体構造物の姿勢を制御する機構を有した浮体式風車設備。
【請求項3】
請求項1に記載した浮体式風車設備であって、
海底または他の構造物への係留索と、風車の回転軸と風向とが平行にならないための尾羽を有する浮体式風車設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波などの外乱の影響で動揺する浮体構造物上でも風車の受風角度が安定する浮体式洋上風車設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洋上風力発電設備は、陸上の面積の制約を受けず、陸上より風況がよい環境で稼働できることから開発が広がってきている。
【0003】
浮体式洋上風力発電設備は、発電効率がよく大型化しやすい、水平軸型と称される水平な回転軸まわりを、主に3枚のブレード(翼)が回転する風車が一般的に用いられている。
【0004】
浮体式洋上風力発電設備では、波により浮体構造物が動揺し傾くことがある。このとき、ブレードが風上に傾斜すると、ブレードに対する相対風速が大きくなり、発電機のロータの回転数が増加することになる。風力発電設備は発電量を時間的に一定に維持したいため、ロータの回転数を一定に保持するためにブレードのピッチを調整して回転数を低下させる制御を行う。すると、ブレードに対する風の抵抗が小さくなり、さらに浮体構造物が風上に傾斜することになる。反対に、ブレードが風下に傾斜すると、ブレードに対する相対風速が小さくなり、発電機のロータの回転数が低下することになる。ロータの回転数を一定に保持するためにブレードのピッチを調整して回転数を増加させる制御を行う。すると、ブレードに対する風の抵抗が大きくなり、さらに浮体構造物が風下に傾斜することになる。このような現象をネガティブダンピングという。
【0005】
このようなネガティブダンピングは、浮体式洋上風力発電設備において安定した発電の妨げとなる恐れがある。これらの対策として、ネガティブダンピングを抑制する技術が開発及び開示されている。
【0006】
浮体構造物または海底に据え付けられるタワーの先端に設けられる風力タービンが備える発電機のロータ軸の回転数に基づいて、風力タービンのブレードピッチ角に対してPI演算を含むピッチ角基本制御を施し、補正制御部において、発電機の出力や風力タービンの動揺等に基づきピッチ角基本制御に補正を加える技術が開示されている(特許文献1)。また、ナセルの振動の加速度に基づいて、ナセルの振動を打ち消すようなスラスト力を風車ブレードに発生させるアクティブ制振手段を備える風力発電装置が開示されている(特許文献2)。
【0007】
固定された軸受け枠の間に風車の回転軸を横軸とし、その横軸に複数のロータを連設し、そのロータは横軸から放射方向へ突設された支持腕の先端に揚力型ブレードを横軸と平行に固定し、低風速でも高い回転トルクで発電効率の高い横軸発電装置の技術が開示されている(特許文献3)。
【0008】
一方で、浮体式洋上風力発電設備は海底に着床、係留するのみでなく、浮体上に敷設したセイルに風を受けることで場所を移動する技術が開示されている(特許文献4)。また、着床、係留させない浮体式洋上風力発電設備において、浮体と風向との相対角度を取得する手段と姿勢を制御する方法が開示されており(特許文献5)、浮体の姿勢を制御する方法としては、水中のラダーの角度を変える方法、浮体の風上側または風下側に抵抗板を挿入する方法、浮体の前方または後方の補助セイルを用いる方法、水中のスラスターを用いる方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第5443629号
【特許文献2】特許第4599350号
【特許文献3】特開2019-82124
【特許文献4】特許第5807319号
【特許文献5】特開2019-189059
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
浮体構造物への外乱の影響による動揺により、水平軸風車の風上側または風下側への傾斜が大きくなった際の状態を図7に示す。風11に対し風車の基準位置が22である。風上寄りに傾斜した状態が21、風下寄りに傾斜した状態が23である。風車はいずれに傾斜しても受風面積が低減し発電効率が低下する。風向と風車の回転軸との角度が大きくなり風車の構成機構への負荷が増し、設備故障を起こし易くなる。風車の傾斜はタワーの折れ・座屈を引き起こし易くなる。
【0011】
図8にサボニウス型と呼ばれる垂直軸風車を例に、浮体構造物の動揺でタワーが風上側、風下側に傾斜する様子を示す。風11に対し風車の基準位置が32である。風上寄りに傾斜した状態が31、風下寄りに傾斜した状態が33である。風車はいずれに傾斜しても水平軸型風車と同様に、発電効率は低下し、故障発生リスクは高くなる。
【0012】
特許文献1,2に記載の発明においては、機構が複雑で故障要因が増えることとなり設備コストも増大する。
【0013】
特許文献3に記載の発明では、ロータの支持台は固定であり、常に流体の向きが一定の条件で使用される。
【0014】
解決しようとする問題点は、海面の波など外乱よる浮体構造物の動揺が風車の回転軸と風向とからなる角度と連動して変化することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、浮体構造物が波など外乱によって動揺しても風車の回転軸と風向とからなる角度を安定させるために、風車の回転軸を水平に、かつ風向に交差するように配置することを最も主要な特徴とする。
【0016】
浮体構造物は、変化する風向に対して姿勢が追従する機構を有することも特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の浮体式風車設備は、一般的に垂直軸型と称される風車を横に倒した形で使用する。回転軸が風向と直交する位置関係に配置するとき、海面の揺動や風の抵抗で浮体が傾斜しても風向と回転軸からなる角度は直交状態から変化しないため安定して風車を回転させることができるという利点がある。
【0018】
風向と風車の回転軸との角度が変わらないため、風車の受風面積も変わらない。
【0019】
大気の摩擦層と呼ばれる地表から1000mまでの範囲において、大気は地表との摩擦によって減速させられる。つまり、高所ほど風速は早くなる。風車の回転軸を水平にすることにより、受風側、向風側のブレード・受風体の特性を使い分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施例1を示した斜視図である。
図2】本発明の実施例1を示した側面図である。
図3】本発明の実施例2を示した斜視図である。
図4】本発明の実施例2を示した側面図である。
図5】本発明の実施例3を示した斜視図である。
図6】本発明の実施例3を示した側面図である。
図7】水平軸風車が風上側、または風下側に傾斜した際の斜視図である。
図8】垂直軸風車の例としてサボニウス型と呼ばれる風車が風上側、または風下側に傾斜した際の斜視図である。
図9】本発明の風車部分が風上側、または風下側に傾斜した際の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
風車の動揺によらず風車の回転軸と風向とからなる角度が安定するという目的を、風車の回転軸を水平、かつ風向に交差する配置とし、浮体構造物は風車の回転軸が風向と交差する向きとなる姿勢を維持することにより実現した。
【0022】
風車は、回転軸の側面から風を受けてブレードまたは受風体が回転軸まわりを回転する型を用いる。
【0023】
回転軸の側面から風を受ける風車は、抗力型と呼ばれる風に押されて回転するものであっても、揚力型と呼ばれる風で発生する揚力で回転するものであっても良い。
【0024】
風車の回転軸を水平に、また風向と交差させるにあたり、回転軸はその両端を支持体で支持する両持ち型であっても、片側のみ支持体で支持する片持ち型であっても良い。片持ち型の場合、支持体の両側に回転軸を取り付けると加重バランスがとりやすい。回転軸は両持ちとする方が構造強度が得られる。
【0025】
風車の回転は、機械的動力として利用してもよく、発電装置に利用してもよい。
【実施例】
【0026】
本発明設備の実施例1の斜視図を図1に、側面図を図2に示す。水面12上にある浮体構造物5上に2つの支持体4に支持された回転軸2と軸受3があり、回転軸に連結されて回転する風車1が取り付けられている。風11が風車回転軸と交差する角度で吹くと、風車は回転軸とともに回転し、回転軸は発電機と連結されており電気を発生する。
【0027】
浮体5の中に発電設備、蓄電設備、パワーコントロールユニットが入っている。
【0028】
本発明設備が風に押されて風下方向に傾斜しても、またはその反動で風上方向に傾斜しても、風向と風車回転軸との交差する角度は変化しない。
【0029】
本発明設備が外乱による動揺により風下方向に傾斜しても、または風上方向に傾斜しても、風向と風車回転軸との交差する角度は変化しない様子を図9に示す。風11に対し風車の基準位置が42である。風上寄りに傾斜した状態が41、風下寄りに傾斜した状態が43である。風車はいずれに傾斜しても受風面積が変わらない。
【0030】
本発明装置の実施例2の斜視図を図3に、側面図を図4に示す。セイル6は風を受けて揚力を発生させる。本発明設備は固定されていないため風の力で移動する。ラダー7は角度を変えて移動する設備の進行角度を変える。設備の進行角度を変えることには、風車の回転軸と風向とが平行にならないように調整することが含まれる。これらは、洋上において本発明設備が適する風況の海域に移動するのに役立つ。
【0031】
風車の発電効率は、風向と風車の回転軸が直交すると最も良い。実施例2は移動目標海域の風向に対する角度に応じて、風上寄りに、または風下寄りに斜めに進行することがある。
【0032】
本発明設備の実施例3の斜視図を図5に、側面図を図6に示す。係留索9は本発明設備を海底または他の構造体とつなげる。尾羽6は風が当たると風下を向く。風車回転軸が風向と交差する向きになるよう本発明設備の向きを合わせるのに役立つ。
【0033】
交差とは、平行ではなく、直交を含め、風向と風車の回転軸とが角度を有している状態を示す。
【産業上の利用可能性】
【0034】
風車回転軸を風向と交差し水平な位置関係になる構造、ならびに設備とすることで、風車を搭載した浮体設備が風や水面の動揺で傾斜振動する環境で、発電効率の低下がなく、設備故障が少なく、適用できる。
【符号の説明】
【0035】
1 風車
2 回転軸
3 軸受
4 支持台
5 浮体構造物
6 セイル
7 ラダー
8 尾羽
9 係留索
11 風
12 水面
21 風向に対し前傾した水平軸風車
22 風向に対し基準位置の水平軸風車
23 風向に対し後傾した水平軸風車
31 風向に対し前傾した垂直軸風車
32 風向に対し基準位置の垂直軸風車
33 風向に対し後傾した垂直軸風車
41 風向に対し前傾した本発明設備の風車部
42 風向に対し基準位置の本発明設備の風車部
43 風向に対し後傾した本発明設備の風車部
【要約】
【課題】浮体構造物に据え付けられる風車設備において、波などの外乱による浮体構造物および風車設備の動揺に影響されず風向と風車の回転軸からなる角度を安定させる。
【解決手段】浮体構造物に据え付けられた風車設備で、
風車は、その回転軸に交差する方向から風を受けてブレード(翼)または受風体が回転軸まわりを回転する型で、
風車の回転軸を水平に支持し、かつ風向に交差する配置になるように浮体構造物の姿勢を調整する機能を保持する設備とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9