(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属触媒が、アルミニウム、バナジウム、クロム、チタン、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、アンチモン、亜鉛、ランタン、タンタルおよびタングステンから選ばれる少なくとも1種の金属を含む、請求項3に記載の方法。
前記反応において、1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペンとともに、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、1,3,3−トリクロロ−3−フルオロプロペンまたは1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが生成される、請求項1に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232zd)の効率的な(工業的に採用容易な)製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を加熱することにより、1232zdを製造することができることを見出し、本発明を完成させた。本発明は以下に述べる実施形態によって具現化される。
【0008】
すなわち、本発明の実施形態の一つは1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペンの製造方法であり、この製造方法は、一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を加熱する反応を含む。
【化1】
式中、aは0〜2の整数であり、a=0のとき、bは1か2であり、a=1のとき、bは0か1であり、a=2のとき、bは0である。
【0009】
この反応は、気相中で行うことができる。また、この反応は金属触媒の存在下、または非存在下で行ってもよい。金属触媒は、アルミニウム、バナジウム、クロム、チタン、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、アンチモン、亜鉛、ランタン、タンタルおよびタングステンから選ばれる少なくとも1種の金属を含むことができる。金属触媒は、金属の酸化物、金属のオキシハロゲン化物または金属のハロゲン化物から選択することができる。また、金属触媒は、少なくともフッ素原子を有してもよい。
【0010】
金属触媒は担持触媒、または非担持触媒でもよい。担持触媒の担体は、炭素、金属の酸化物、金属のオキシハロゲン化物もしくは金属のハロゲン化物から選択することができる。
【0011】
この反応は、充填材の存在下または非存在下で行うことができる。充填材は、炭素、プラスチック、セラミックスおよび金属から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0012】
この反応は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,3,3−テトラフルオロプロペンおよび1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンから選ばれる少なくとも1種の存在下で行ってもよい。
【0013】
この反応においては、1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペンとともに、1,1,3,3−テトラクロロプロペン、1,3,3−トリクロロ−3−フルオロプロペンまたは1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが生成されてもよい。
【0014】
この反応は、100℃〜500℃の温度で行うことができる。である、発明1〜11のいずれかに記載の方法。
【0015】
この反応は、液相中で行ってもよい。また、この反応は塩基の存在下で行ってもよい。
【0016】
この反応では、実質的にフッ化水素を供給しなくてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施形態によれば、1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232zd)の効率的な(工業的に採用容易な)製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る方法について説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0019】
本発明の実施形態に係る方法は、一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を加熱する反応を含む。
【化2】
【0020】
一般式(1)中、aは0〜2の整数であり、a=0のとき、bは1か2であり、a=1のとき、bは0か1であり、a=2のとき、bは0である。
【0021】
一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物としては、具体的には、1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(以下、241faともいう)、1,1,1,3−テトラクロロ−3−フルオロプロパン(以下、241fbともいう)、1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(以下、242faともいう)、1,1,3−トリクロロ−1,3−ジフルオロプロパン(以下、242fbともいう)、1,1,1−トリクロロ−3,3−ジフルオロプロパン(以下、242fcともいう)が挙げられ、これらは単独であってもよいし、複数を併用してもよい。これらの中でも、1232zdが優先的に生成することから、242fa、242fb、242fcが特に好ましい。これらの化合物は、公知の方法により製造することができる公知の化合物である。
【0022】
本反応は、気相中で行なってもよいし、液相中で行なってもよい。
【0023】
本反応は、気相中、触媒の存在下または非存在下で行なってもよい。触媒としては金属触媒を用いることができる。金属触媒は、具体的には、アルミニウム、バナジウム、クロム、チタン、マグネシウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、スズ、アンチモン、亜鉛、ランタン、タンタルおよびタングステンから選ばれる少なくとも1種の金属を含み、上記金属の化合物が好ましく、上記金属の酸化物、オキシハロゲン化物、ハロゲン化物がより好ましい。ハロゲン化合物のハロゲンは、沃素、臭素、塩素、フッ素のいずれでも良い。金属触媒としては、上記金属の部分ハロゲン化物または全ハロゲン化物がさらに好ましく、上記金属の部分フッ化物または全フッ化物が特に好ましい。
【0024】
金属触媒は、担持触媒であってもよいし、非担持触媒であってもよい。担持触媒の場合の担体は特に限定されないが、炭素や、前述の金属の酸化物、オキシハロゲン化物(好ましくはオキシフッ化物)、ハロゲン化物(フッ化物)などを採用することが好ましい。このような担体の中でも特に好ましくは、活性炭または、アルミニウム、クロム、ジルコニウムおよびチタニウムから選ばれる少なくとも一種の金属の酸化物、オキシハロゲン化物(特に好ましくはオキシフッ化物)、ハロゲン化物(特に好ましくは、フッ化物)である。担持触媒の場合、担体に担持される担持物は前述の金属の化合物であり、例えば、前述の金属のフッ化物、塩化物、フッ化塩化物、オキシフッ化物、オキシ塩化物、オキシフッ化塩化物、硝酸化物などとして担体に担持される。このような金属の化合物を単独で担持させてもよいし、2種以上を併せて担持させてもよい。具体的な担持物としては、硝酸クロム、三塩化クロム、重クロム酸カリウム、三塩化チタン、硝酸マンガン、塩化マンガン、塩化第二鉄、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸コバルト、塩化コバルト、五塩化アンチモン、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化銅(II)、塩化亜鉛(II)、硝酸ランタン、四塩化スズなどを用いることができる。
【0025】
金属触媒は、フッ素化処理を施した後に本反応に用いることが好ましい。フッ素化処理の方法は特に限定されないが、一般的には、フッ化水素、フッ素化炭化水素、フッ素化塩素化炭化水素などのフッ素化剤と金属触媒とを接触させることにより行う。フッ素化処理温度は特に限定されないが、例えば200℃以上で行う。フッ素化処理温度の上限は特にないが、実用的には600℃以下で行うのが好ましい。
【0026】
本反応は、充填材の存在下または非存在下で行ってもよい。このような充填材としては、活性炭などの炭素や、耐熱プラスチック、セラミックス、ステンレス鋼などの金属が挙げられる。中でも、活性炭が特に好ましい。本反応は、炭素、耐熱プラスチックおよびセラミックスから選ばれる少なくとも一種の存在下で行うことができる。
【0027】
本反応工程において、加熱温度(反応温度)は、目的物が生成できれば特に限定されない。本反応は、気相中、100〜500℃で行うことができ、反応温度は150〜430℃が好ましく、150〜380℃が特に好ましい。あるいは本反応は、液相中、0〜100℃で行うことができ、この場合反応温度は20〜90℃がより好ましい。
【0028】
本反応において、反応圧力は特に限定されず、本反応を減圧下、常圧下(大気圧下)、加圧下のいずれで行ってもよい。本反応は0.01〜10MPaG(ゲージ圧をいう。以下同じ。)で行うことができ、圧力は0.01〜1MPaGが好ましく、大気圧がより好ましい。10MPaGを超えると反応器の耐圧設計にかかる費用が増大するため、経済的に好ましくない。
【0029】
気相流通方式の反応の場合、反応ゾーンの容積A(mL)を原料供給速度B(mL/秒)で除した値(秒)で、生産性を議論することが多く、これを接触時間と呼ぶ。反応ゾーンに触媒を備える場合には、触媒の見掛け容積(mL)を上記Aとみなす。なお、Bの値は「一秒あたりに反応器に導入される原料気体の容積」を示すが、この場合、原料気体を理想気体とみなして、原料気体のモル数、圧力および温度からBの値を算出する。反応器中では、原料や目的物以外の他の化合物の副生や、モル数の変化も起こり得るが、「接触時間」の計算に際しては考慮しないものとする。
【0030】
接触時間の決定に関しては、本反応に用いる原料、反応温度、触媒の種類などに依存する。そのため、原料、反応装置の設定温度、触媒の種類ごとに原料の供給速度を適宜調整し、接触時間を最適化することが望ましい。
【0031】
本反応において、接触時間は0.1〜300秒とすることができ、好ましくは5〜150秒、より好ましくは10〜100秒である。この接触時間は反応圧力に応じて適宜変更されてもよい。
【0032】
本反応を液相中で行う場合、塩基の存在下で行うことが好ましい。このような塩基としては、アルキルアミン類、ピリジン類、アニリン類、グアニジン類、ピリジン類、ルチジン類、モルホリン類、ピペリジン類、ピロリジン類、ピリミジン類、ピリダジン類などの有機塩基や、アンモニア、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物などの無機塩基が挙げられる。塩基は1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。塩基の使用量は特に限定されないが、一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物1モルに対し、1〜10モル使用することができ、好ましくは1〜4モルであり、さらに好ましくは1〜3モルである。
【0033】
本反応を液相中で行う場合、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒は1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて1種または2種以上の相間移動触媒を用いてもよい。
【0034】
本発明に係る反応において、反応器は特に限定されないが、反応形式に応じて、気相反応器または液相反応器を用いることが好ましい。気相反応器は、耐熱性、耐酸性を有する材質で形成されたものが好ましく、例えば、ステンレス鋼、ハステロイ(TM)、モネル(TM)、白金、ニッケル、炭素、フッ素樹脂、またはこれらをライニングした材質で形成されたものが挙げられるが、これらに限定されない。液相反応器は、耐熱性、耐酸性を有する材質で形成されたものが好ましく、例えば、ステンレス鋼、ハステロイ(TM)、モネル(TM)、白金、ニッケル、炭素、フッ素樹脂、ガラス、またはこれらをライニングした材質で形成されたものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本反応は、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(以下、1234zeともいう)、1,1,3,3−テトラフルオロプロペン(以下、1234zcともいう)および1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(以下、245faともいう)から選ばれる少なくとも1種のフルオロカーボン化合物の存在下で行ってもよい。
【0036】
本反応において、フッ化水素を反応器に供給してもよいし、供給しなくてもよいが、供給しないことが好ましい。本反応では、フッ化水素を反応器に実質的に供給することなく、一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を加熱してもよい。
【0037】
フルオロカーボン化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、245fa、1234zeが好ましい。なお、1234zeは、シス体(以下、1234ze(Z)ともいう)、トランス体(以下、1234ze(E)ともいう)のどちらでもよいし、これらの混合物であってもよい。これらの化合物は、公知の方法により製造することができる公知の化合物である。
【0038】
フルオロカーボン化合物の使用量は特に限定されない。一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物に対して、5〜500モル%が好ましく、10〜300モル%が特に好ましい。
【0039】
本反応工程においては、金属触媒の活性の維持、向上などの観点から、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスや、塩素、酸素、空気などの酸化性ガスを反応器に供給してもよい。このようなガスは単独で反応器に供給してもよいし、一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物やフルオロカーボン化合物とともに反応器に供してもよい。また、このようなガスは単独であってもよく混合ガスであってもよい。反応器への供給量は特に限定されないが、一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物に対して0.0001〜200モル%が好ましく、0.001〜100モル%がより好ましく、0.1〜10モル%が特に好ましい。
【0040】
本実施形態の方法の手順の一例を示す。反応器に一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物を導入し、上述した条件で加熱する。必要に応じてフルオロカーボン化合物も反応器に導入する。これらの原料は、別々の流路、あるいは同一の流路で反応器に導入される。触媒や充填物は、あらかじめ反応器に備えておくことが好ましい。気相で反応を行う場合、これらの原料は、反応器に導入される際にはガス状であることが好ましく、必要に応じて、これらの原料を気化器でガス状にし、反応きに導入する。その後反応器において、上述した条件下で反応を行う。
【0041】
本反応により得られた反応生成物から目的物を精製する方法は特に限定されない。必要に応じて、反応生成物中に含まれ得る塩素成分や酸成分などの除去処理を行ってもよい。また、脱水処理などを施して水分を除去してもよく、塩素成分や酸成分の除去処理と組み合わせて脱水処理を行ってもよい。例えば、反応生成物を冷却したコンデンサーに流通させて凝縮させ、水または/およびアルカリ性溶液で洗浄して塩素成分、酸成分などを除去し、ゼオライト、活性炭などの乾燥剤で乾燥後、蒸留操作によって、高純度の目的物を得ることができる。
【0042】
反応生成物中に未反応原料が存在する場合や、目的物以外の副生物が存在する場合、これらの化合物を蒸留などの精製操作により、反応生成物中から分離してそれぞれ回収することができる。分離された一般式(1)で表される炭素数3のハロゲン化炭化水素化合物やフルオロカーボン化合物は、本反応の原料として再利用することができ、また、その他の種々の用途に供することもできる。目的物以外の副生物についても、これらの化合物と同様に、必要に応じて本反応に供給してもよいし、種々の用途に利用してもよい。
【0043】
本実施形態により、1,3−ジクロロ−3,3−ジフルオロプロペン(1232zd)はシス体(以下、1232zd(Z)ともいう)、トランス体(以下、1232zd(E)ともいう)またはその混合物として得られることがあるが、蒸留などの精製操作によりこれらのシス/トランス異性体をそれぞれ分離することができる。1232zdはシス/トランス異性体の混合物を、あるいは、分離した両異性体をそれぞれ、種々の用途に供してもよい。
【0044】
本実施形態において、本反応により1,3,3−トリクロロ−3−フルオロプロペン(以下、1231zdともいう)が生成することがある。この1231zdはシス体(以下、1231zd(Z)ともいう)、トランス体(以下、1231zd(E)ともいう)またはその混合物として得られることがあるが、蒸留などの精製操作によりこれらのシス/トランス異性体をそれぞれ分離することができる。1231zdのシス/トランス異性体の混合物を、あるいは、分離した両異性体をそれぞれ種々の用途に供してもよい。1231zdは地球温暖化係数(GWP)が低いハイドロフルオロオレフィン(HFO)の一種であり、代替フルオロカーボンとして期待される。
【0045】
本実施形態において、本反応により1,1,3,3−テトラクロロプロペン(1230za)が生成することがある。この1230zaは、種々の用途に供してもよい。必要に応じて精製操作を施して高純度の1230zaを得ることができる。1230zaは各種ハイドロフルオロオレフィン(HFO)化合物などの製造原料として有用である。
【0046】
本実施形態において、本反により1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(以下、1233zdともいう)がシス体(以下、1233zd(Z)ともいう)、トランス体(以下、1233zd(E)ともいう)またはその混合物として生成することがある。必要に応じて精製操作を施して高純度の1233zd、1233zd(Z)、1233zd(E)を得ることができる。1233zdは、洗浄剤、冷媒などとして有用である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例によって本発明に係る実施形態を詳細に説明するが、本発明の実施形態は実施例に限定されるものではない。
【0048】
本明細書において、FID%とは、検出器がFIDのガスクロマトグラフィー分析で得られるクロマトグラフの面積%を指す。
【0049】
[調製例1] フッ素化した活性アルミナの調製
活性アルミナ(住友化学製KHS−46:粒径4〜6mm、比表面積155m
2/g)300gを測り取り、水で表面に付着した粉を洗浄した。洗浄後のアルミナに10重量%フッ酸1150gをゆっくり加え、攪拌後、約4時間静置した。水洗後、濾過を行い、常温で終夜乾燥し、次に電気炉において200℃で2時間乾燥を行った。この乾燥後の活性アルミナ150mLを、内径1インチ長さ40cmのステンレス鋼製(SUS316)反応管に入れ、窒素を150cc/秒の流速で流しながら電気炉で200℃まで昇温し、更に窒素とともにフッ化水素を0.1g/分の流速で流した。このフッ化水素処理を行うにつれて温度が上昇するが、内温が400℃を超えないように、窒素とフッ化水素の流速を調整した。発熱が収まった時点で、窒素の流速を30cc/秒に落とし、電気炉の設定温度を30分間ごとに50℃ずつ昇温し、最終的に400℃まで上げ、その状態を2時間保持した。このようにして、フッ素化処理した活性アルミナ(以下、触媒1ともいう)を調製した。
【0050】
[調製例2] フッ素化したクロム担持アルミナ触媒の調製
三角フラスコに20質量%塩化クロム水溶液を加え、そこに調製例1で調製したフッ素化処理した活性アルミナ100mLを浸漬させ、3時間保持した。このアルミナを濾過し、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下、70℃で乾燥させた。このクロム担持アルミナ100mLを、電気炉を備えた
内径1インチ長さ40cmの円筒形ステンレス鋼製(SUS316)反応管に充填し、窒素ガスを流しながら200℃まで昇温し、水の流出が見られなくなった時点で、窒素ガスを150cc/秒、フッ化水素(HF)を0.1g/秒の流速で同時に供給し、内温が400℃を超えないように窒素とフッ化水素の流速を調整した。充填したクロム担持アルミナのフッ素化によるホットスポットが反応管出口端に達したところで窒素の流速を30cc/秒に落とし、電気炉の設定温度を30分間ごとに50℃ずつ昇温し、最終的に400℃まで上げ、その状態を2時間保持した。このようにして、フッ素化処理したクロム担持アルミナ(以下、触媒2ともいう)を調製した。
【0051】
[調製例3] フッ素化したクロム担持活性炭の調製
三角フラスコに20質量%塩化クロム水溶液を加え、活性炭100mLを浸漬させ、3時間保持した。この活性炭を濾過し、ロータリーエバポレーターを用いて、減圧下、70℃で乾燥させた。このクロム担持活性炭100mLを、電気炉を備えた
内径1インチ長さ40cmの円筒形ステンレス鋼製(SUS316)反応管に充填し、窒素ガスを流しながら200℃まで昇温し、水の流出が見られなくなった時点で、窒素ガスを150cc/秒、フッ化水素を0.1g/秒の流速で同時に供給し、内温が400℃を超えないように、窒素とフッ化水素の流速を調整した。充填したクロム担持活性炭のフッ素化によるホットスポットが反応管出口端に達したところで窒素の流速を30cc/秒に落とし、電気炉の設定温度を30分間ごとに50℃ずつ昇温し、最終的に400℃まで上げ、その状態を2時間保持した。このようにして、フッ素化処理したクロム担持活性炭(以下、触媒3ともいう)を調製した。
【0052】
[実施例1−1]
活性炭50mLを、電気炉を備えた
内径1インチ長さ40cmの円筒形ステンレス鋼製(SUS316)反応管に充填し、約30cc/分の流速で窒素ガスを流しながら反応管内を200℃に昇温した。その後、窒素の供給を止め、気化させた1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(241fa;純度98.2FID%。以下同じ。)を反応管に導入した(接触時間120秒)。流速が安定したところで、反応管出口に氷水で冷却した500mLの水トラップを設置し、約100分間有機物の回収及び副生した酸分を吸収させた。この水トラップを通り抜けたガスは、水トラップの次に設置したドライアイストラップで回収し、水トラップでの回収物とドライアイストラップでの回収物とを混合した。この回収物から酸を除去して得られた有機物の組成をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果を表1に記す。
【0053】
[実施例1−2]
接触時間を31秒、反応管内温度を250℃にしたこと以外は、実施例1−1と同様の操作を実施した。
【0054】
[実施例1−3]
1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(241fa)の代わりに1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa;純度96.7FID%。以下同じ。)を導入(接触時間86秒)し、反応管内温度を250℃にしたこと以外は、実施例1−1と同様の操作を実施した。
【0055】
[実施例1−4]
1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(241fa)の代わりに241faと1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)を導入(241fa/242faのモル比=1/9;接触時間54秒)し、反応管内温度を220℃にしたこと以外は、実施例1−1と同様の操作を実施した。
【0056】
[実施例1−5]
1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(241fa)の代わりに1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)を導入(接触時間65秒)し、反応管内温度を340℃にしたこと以外は、実施例1−1と同様の操作を実施した。
【0057】
[実施例1−6]
調製例1で調製した触媒50mLを、電気炉を備えた
内径1インチ長さ40cmの円筒形ステンレス鋼製(SUS316)反応管に充填し、約30cc/分の流速で窒素ガスを流しながら、反応管内を200℃に昇温した。その後、窒素の供給を止め、気化させた1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(241fa)と1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa;純度99.9FID%。以下同じ。)を反応管に導入した(241fa/245faのモル比=1/1;接触時間60秒)。流速が安定したところで、反応管出口に氷水で冷却した500mLの水トラップを設置し、約100分間有機物の回収及び副生した酸分を吸収させた。この水トラップを通り抜けたガス成分は、水トラップの次に設置したドライアイストラップで回収し、水トラップでの回収物とドライアイストラップでの回収物とを混合した。この回収物から酸を除去して得られた有機物の組成をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果を表1に記す。
【0058】
[実施例1−7]
1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(241fa)と1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)の代わりに1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)と245faを導入(242fa/245faのモル比=1/0.5;接触時間60秒)したこと以外は、実施例1−6と同様の操作を実施した。
【0059】
[実施例1−8]
調製例1で調製した触媒の代わりに調製例2で調製した触媒50mLを充填したこと以外は、実施例1−7と同様の操作を実施した。
【0060】
[実施例1−9]
調製例1で調製した触媒の代わりに調製例2で調製した触媒50mLを充填し、反応管内温度を350℃にしたこと以外は、実施例1−7と同様の操作を実施した。
【0061】
[実施例1−10]
調製例1で調製した触媒の代わりに調製例3で調製した触媒50mLを充填し、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)の代わりに1,1,1,3−テトラフルオロプロペン(1234ze;純度99.9FID%)を導入(242fa/1234zeのモル比=1/1;接触時間60秒)したこと以外は、実施例1−7と同様の操作を実施した。
【0062】
[実施例1−11]
1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(245fa)を導入せず、反応管内温度を300℃にしたこと以外は、実施例1−6と同様の操作を実施した。
【0063】
[実施例1−12]
1,1,3,3−テトラクロロ−1−フルオロプロパン(241fa)の代わりに1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)を導入したこと以外は、実施例1−11と同様の操作を実施した。
【0064】
表1に実施例1−1〜1−12の結果をまとめた。表1中、「―」は検出されなかったことを示す。
【表1】
【0065】
表1に示すように、本発明の実施形態の一つを適用することで、241faや242faなどの一般式(1)で表されるハロゲン化炭化水素化合物から目的とする1232zdが得られることが確認された。
【0066】
[実施例2−1]
攪拌機、温度計、滴下ロートを備えたガラス製三口フラスコに25質量%水酸化カリウム水溶液(242faに対して2当量)を仕込み、85℃に加熱しながら攪拌した。この水溶液に1,3,3−トリクロロ−1,1−ジフルオロプロパン(242fa)を滴下し、生成したガスを反応容器出口に設置した氷冷トラップに回収した。ガスが生成しなくなったところで反応を終了した。得られた有機物の組成をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1232zdは53.3FID%であり、242faは30.1FID%であった。