特許第6810384号(P6810384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6810384ワニス組成物、オフセット印刷インキおよび印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810384
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ワニス組成物、オフセット印刷インキおよび印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20201221BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20201221BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   C09D4/02
   C09D11/101
   C09D133/04
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-232205(P2016-232205)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-87309(P2018-87309A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】四方 亀
(72)【発明者】
【氏名】松田 倫幸
(72)【発明者】
【氏名】白石 広大
(72)【発明者】
【氏名】石嶋 優樹
(72)【発明者】
【氏名】内野 拓耶
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−263622(JP,A)
【文献】 特開2011−026522(JP,A)
【文献】 特開2003−055582(JP,A)
【文献】 特開2016−069415(JP,A)
【文献】 特開平05−070534(JP,A)
【文献】 特開平05−086334(JP,A)
【文献】 特開2005−220244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー(A)、脂環式モノマー(B)ならびに反応性希釈剤(C)を前記ポリマー(A)、前記脂環式モノマー(B)および前記反応性希釈剤(C)の合計重量に対して、該ポリマー(A)の比率が15〜50重量%、該脂環式モノマー(B)の比率が10〜45重量%、該反応性希釈剤(C)の比率が、40〜75重量%で含むワニス組成物であって、
該ポリマー(A)は、
構成単位1
【化1】
(式中、ポリマー鎖中の各構成単位毎にそれぞれ独立に、Rは水素またはメチル基であり、Rはアルキル基またはシクロアルキル基である)
75〜99重量%および
構成単位2
【化2】
(式中、ポリマー鎖中の各構成単位毎にそれぞれ独立に、Rは水素またはメチル基であり、RはCOOH、CONRb1b2、COO(CHNRb1b2およびCOO(CHOHからなる群から選択される基であり、
式中、Rb1およびRb2は、アルキル基であるか、またはRb1およびRb2が一緒になってモルホリン環構造を形成する基である。
1〜25重量%を含み、
該脂環式モノマー(B)は、
【化3】
であって、
mは、1又は2であり、
【化4】
は、
【化5】
からなる群から選択される1つ以上の脂環式構造であり、R
【化6】
(式中、各構成単位毎にそれぞれ独立に、nは0〜1であり、Rは水素またはメチル基である)
であり、
該反応性希釈剤(C)は、
【化7】
pは0、1または2であり、R
【化8】
(式中、それぞれ独立に、Rは水素またはメチル基である)であり、
はメチル基または
【化9】
(式中、それぞれ独立に、Rは水素またはメチル基である)
である、ワニス組成物。
【請求項2】
前記ポリマー(A)は、
構成単位3
【化10】
(式中、Rはポリマー鎖中の各構成単位ごと、およびベンゼン環上の各炭素上ごとにそれぞれ独立に、水素およびアルキル基からなる群から選択される基である。)
を含む、請求項1に記載のワニス組成物。
【請求項3】
前記脂環式構造は、
【化11】
である、請求項1または2に記載のワニス組成物。
【請求項4】
オフセットインキ用に用いられる、請求項1〜のいずれか1項に記載のワニス組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載のワニス組成物および顔料を含む、オフセット印刷インキ。
【請求項6】
請求項の活性エネルギー線硬化型印刷インキの硬化層を有する、印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワニス組成物、オフセット印刷インキおよび印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化する樹脂組成物(以下、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物ともいう。)は、通常、反応性希釈剤、樹脂、光重合開始剤及び添加剤から構成されており、省エネルギー型の工業材料としてコーティング剤や塗料、印刷インキなど様々な分野で利用されている。
【0003】
特に活性エネルギー線硬化型印刷インキにおいては、反応性希釈剤として、硬化性や皮膜硬度などが優れていることから、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートやジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等の多官能アクリレートが汎用されている。
【0004】
一方、密着性、インキ流動性、耐ミスチング性に優れているという理由からバインダー樹脂としては、ジアリルフタレート樹脂やスチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂などが広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−335728号公報
【特許文献2】特開2009−263622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ジアリルフタレート樹脂やスチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂などを使用したインキは必要とする乳化適性が劣るという欠点があった。具体的には乳化後のインキの弾性が低下するために、湿し水中にインキ成分が溶け出して、湿し水が汚染され、オフセット印刷時の汚れを発生させる。
【0007】
このように紫外線硬化型の印刷インキとして、高い乳化適性が得られていないのが現状であった。
【0008】
本開示により解決される主たる課題は、高い乳化適性を有する印刷インキの原料であるワニス組成物、高い乳化適性を有するオフセット印刷インキおよび上記インキを用いた印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討の結果、親水基部分と疎水基部分を有するポリマー(A)、脂環式モノマー(B)および複数の(メタ)アクリロイル基を有する反応性希釈剤(C)を含むワニス組成物を用いることにより、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明のワニス組成物を用いれば、インキ諸性能(密着性、塗膜硬度、乳化性、画像再現性、光沢性、耐ブロッキング性、塗膜の平滑性等)を有しつつ、高い乳化適性を有するオフセット印刷インキを得ることができる。上記インキを用いることによりオフセット印刷時の汚れを低減させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
ポリマー(A)、脂環式モノマー(B)および反応性希釈剤(C)を含むワニス組成物であって、
該ポリマー(A)は、
構成単位1
【化1】
(式中、ポリマー鎖中の各構成単位毎にそれぞれ独立に、Rは水素またはメチル基であり、Rはアルキル基またはシクロアルキル基である)
および
構成単位2
【化2】
(式中、ポリマー鎖中の各構成単位毎にそれぞれ独立に、Rは水素またはメチル基であり、RはCOOH、CONRb1b2、COO(CHNRb1b2および
【化3】
からなる群から選択される基であり、
式中、Rb1およびRb2は、アルキル基であるか、またはRb1およびRb2が一緒になって環構造を形成する基であり、kは1以上の整数であり、Rb3は、水素、メチル基またはヒドロキシル基であり、Rb4は、OH、CHOH、CHCHOH、CHOCHまたはCHOPhであるが、Rb3またはRb4のどちらかがヒドロキシル基である。)
を含み、
該脂環式モノマー(B)は、
【化4】
であって、
mは、1以上の整数であり、
【化5】
は、脂環式構造であり、R
【化6】
(式中、各構成単位毎にそれぞれ独立に、nは0〜1であり、Rは水素またはメチル基である)
であり、
該反応性希釈剤(C)は、
【化7】
pは0、1または2であり、R
【化8】
(式中、それぞれ独立に、qは0〜16の整数であり、Rは水素またはメチル基である)
であり、
はメチル基または
【化9】
(式中、それぞれ独立に、qは0〜16の整数であり、Rは水素またはメチル基である)
である、ワニス組成物。
(項目2)
前記ポリマー(A)は、
構成単位3
【化10】
(式中、Rはポリマー鎖中の各構成単位ごと、およびベンゼン環上の各炭素上ごとにそれぞれ独立に、水素およびアルキル基からなる群から選択される基である。)
を含む、上記項目に記載のワニス組成物。
(項目3)
前記脂環式構造は、3環式以上のものである、上記項目のいずれか1項に記載のワニス組成物。
(項目4)
前記脂環式構造は、架橋環構造を含む、上記項目のいずれか1項に記載のワニス組成物。
(項目5)
前記脂環式構造は、
【化11】

【化12】
からなる群から選択される、上記項目のいずれか1項に記載のワニス組成物。
(項目6)
前記脂環式構造は、
【化13】
である、上記項目のいずれか1項に記載のワニス組成物。
(項目7)
前記ポリマー(A)中に含まれる構成単位中、前記構成単位1の割合は、75〜99重量%である、上記項目のいずれか1項に記載のワニス組成物。
(項目8)
前記ポリマー(A)中に含まれる構成単位中、前記構成単位2の割合は、1〜25重量%である、上記項目のいずれか1項に記載のワニス組成物。
(項目9)
前記ポリマー(A)、前記脂環式モノマー(B)および前記反応性希釈剤(C)の合計重量に対して、該ポリマー(A)の比率が15〜50重量%、該脂環式モノマー(B)の比率が10〜45重量%、該反応性希釈剤(C)の比率が、40〜75重量%である、上記項目のいずれか1項に記載のワニス組成物。
(項目10)
オフセットインキ用に用いられる、上記項目のいずれか1項に記載のワニス組成物。
(項目11)
上記項目のいずれか1項に記載のワニス組成物および顔料を含む、オフセット印刷インキ。
(項目12)
上記項目に記載の活性エネルギー線硬化型印刷インキの硬化層を有する、印刷物。
【0012】
本開示において、上述した1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得る。当業者は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解することにより、上記以外のさらなる実施形態及び利点を認識することができる。
【0013】
(好ましい実施形態の説明)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができる。また、本発明の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができる。
【0014】
なお、本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0015】
また本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含む。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられる。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語及び科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0016】
本開示は、下記ポリマー(A)、下記脂環式モノマー(B)および下記反応性希釈剤(C)を含むワニス組成物を提供する。以下各成分について詳細に説明する。
【0017】
(1.ポリマー(A))
本発明のポリマー(A)は、ポリマー鎖に
構成単位1
【化14】
(式中、ポリマー鎖中の各構成単位毎にそれぞれ独立に、Rは水素またはメチル基であり、Rはアルキル基またはシクロアルキル基である)
および
構成単位2
【化15】
(式中、ポリマー鎖中の各構成単位毎にそれぞれ独立に、Rは水素またはメチル基であり、RはCOOH、CONRb1b2、COO(CHNRb1b2、CO−Rb3および
【化16】
からなる群から選択される基であり、
式中、Rb1およびRb2は、アルキル基であるか、またはRb1およびRb2が一緒になって環構造(例えばピロリジン環およびピペリジン環等の含窒素脂環式構造やモルホリン環)を形成する基であり、kは1以上の整数であり、Rb3は、水素、メチル基またはヒドロキシル基であり、Rb4は、OH、CHOH、CHCHOH、CHOCHまたはCHOPh(Phはフェニル基を意味する)であるが、Rb3またはRb4のどちらかがヒドロキシル基である。)
を含むものである。
【0018】
1つの実施形態において、ポリマー(A)には上記構成単位1および2に加えて構成単位3
【化17】
(式中、Rはポリマー鎖中の各構成単位ごと、およびベンゼン環上の各炭素上ごとにそれぞれ独立に、水素、アルキル基およびアリール基からなる群から選択される基である。)
を含む。
【0019】
構成単位1は、モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステルを用いた場合にポリマー鎖に含まれる構成単位である。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリロイル基以外に重合性の官能基を有しないものであれば、特に限定せずに使用することができ、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸iso−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上(例えば3種、4種、5種)を用いることができる。(メタ)アルキル酸エステルのエステル部分の炭素数(すなわち、構成単位1中のRの炭素数)は乳化性、乾燥性の観点から、1〜8が好ましい。ポリマー(A)中に構成単位1を含むことにより、ポリマー(A)の疎水性を調整することができる。
【0020】
構成単位2は、モノマーとして、(メタ)アクリル酸、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリル酸アルキルアミン、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルを用いた場合にポリマー鎖に含まれる構成単位である。
N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドの例としては、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
N,N−ジアルキル(メタ)アクリル酸アルキルアミンの例としては、N,N−ジメチルエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。窒素上のアルキル基の炭素数(すなわち、構成単位2中のRb1およびRb2の炭素数)は1〜2が好ましい。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルの例として
【化18】
等が挙げられる。
ポリマー(A)中に構成単位2を含むことにより、構成単位2はヒドロキシル基等の親水基を有するためポリマー(A)の親水性を調整することができる。
【0021】
構成単位3は、モノマーとして、スチレン系化合物を用いた場合にポリマー鎖に含まれる構成単位である。スチレン系化合物の例としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン等の他、芳香環に少なくとも1つの炭素数0〜2のアルキル基を有するスチレン等が挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を用いることができる。ポリマー(A)中に構成単位3を含むことにより、ポリマー(A)のワニス粘度を調整することができる。
【0022】
ポリマー(A)中に含まれる構成単位中、構成単位1の割合の上限は、99、95、90、85、80重量%であり、構成単位1の割合の下限は、95、90、85、80、75重量%である。構成単位1の割合の範囲は上記上限および下限の値を組み合わせて設定することができ、通常乳化適性の観点から、好ましくは75〜99重量%である。
【0023】
ポリマー(A)中に含まれる構成単位中、構成単位2の割合の上限は、25、20、15、10、5重量%であり、構成単位2の割合の下限は、20、15、10、5、1重量%である。構成単位2の割合の範囲は上記上限および下限の値を組み合わせて設定することができ、通常乳化適性の観点から、好ましくは1〜25重量%である。
【0024】
ポリマー(A)中に構成単位3が含まれる場合、構成単位3の割合の上限は、20重量%であり、構成単位3の割合の下限は、1重量%である。構成単位3の割合の範囲は上記上限および下限の値を組み合わせて設定することができ、通常乳化適性の観点から、好ましくは5〜20重量%である。
【0025】
ポリマー(A)には、上記構成単位1〜3以外の構成単位を、本発明において所望される乳化適性を損なわない程度に含んでもよい。上記構成単位1〜3以外の構成単位は、具体的に、不飽和二重結合を2つ以上有するエチレン性不飽和単量体に由来する構成単位が挙げられる。上記構成単位1〜3以外の構成単位は、所望の乳化適性を確保する観点からポリマー(A)中に10%を超えない範囲で含まれるのが好ましい。
【0026】
ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)の上限は、100,000、90,000、80,000、70,000、60,000、50,000、40,000、30,000、20,000、11,200、11,000、10,100、10,000、9,600、9,000、8,000、7,000、6,500、6,000、5,000であり、下限は90,000、80,000、70,000、60,000、50,000、40,000、30,000、20,000、11,200、11,000、10,100、10,000、9,600、9,000、8,000、7,000、6,500、6,000、5,000、4,000である。ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、皮膜強度やワニス粘度の観点から、4,000〜100,000が好ましい。
【0027】
ポリマー(A)の数平均分子量(Mn)の上限は、10,000、9,000、8,000、7,000、6,000、5,000、4,000、3,000、2,000であり、下限は、9,000、8,000、7,000、6,000、5,000、4,000、3,000、2,000、1,000である。ポリマー(A)の数平均分子量(Mn)の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、皮膜強度やワニス粘度の観点から、1,000〜10,000が好ましい。
【0028】
ポリマー(A)の分子量分布(Mw/Mn)の上限は、30、25、20、15、10、5、3であり、下限は25、20、15、10、5、3、2である。ポリマー(A)の分子量分布(Mw/Mn)の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、皮膜強度やワニス粘度の観点から、皮膜強度や粘度2〜30が好ましい。
【0029】
ポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)の上限は、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5℃であり、下限は、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5、0℃である。ポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、通常皮膜強度とモノマーへの溶解性の観点から、0℃〜120℃が好ましい。
【0030】
ポリマー(A)の軟化点の上限は、150、140、130、120、110、100、90、85℃であり、下限は、140、130、120、110、100、90、80℃である。ポリマー(A)の軟化点の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、通常モノマーへの溶解性と粘度の観点から、80〜150℃が好ましい。
【0031】
ポリマー(A)の酸価の上限は、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20であり、下限は、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10である。ポリマー(A)の酸価の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができ、通常乳化適性の観点から、10〜200が好ましい。
【0032】
本発明のポリマー(A)の重合方法は、特に限定されず 、公知のラジカル重合法を採用することができる。ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤の存在下、加熱することにより得られる。ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。具体例としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の無機過酸化物、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物等が挙げられる。また、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。なお、ラジカル重合開始剤の使用量は、全モノマー成分100重量部に対し、1〜10重量部程度とすることが好ましい。なお、必要に応じ、連鎖移動剤などを用いてもよい。連鎖移動剤の具体例としては、ラウリルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾチアゾール、ブロムトリクロルメタン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。連鎖移動剤の使用量は、全モノマー成分100重量部に対し、0.01〜5重量部程度とすることが好ましい。
【0033】
(2.脂環式モノマー(B))
本発明の脂環式モノマー(B)は、
【化19】
であって、
mは、1以上の整数であり、
【化20】
は、脂環式構造であり、R
【化21】
(式中、各構成単位毎にそれぞれ独立に、nは0〜1であり、Rは水素またはメチル基である。)
である。ワニス組成物に脂環式モノマー(B)を含むことにより、乳化適性の向上という効果を奏することができる。
【0034】
本明細書において「脂環式構造」とは、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造を意味する。脂環式構造には分枝があってもよい。単環のシクロアルカンにはシクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、4−tert−シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカンなどがある。また、単環のシクロアルケンにはシクロプロペン、シクロブテン、シクロプロペン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどがある。2環式アルカンにはビシクロウンデカンやデカヒドロナフタレン(デカリン)がある。2環式アルケンにはノルボルネンやノルボルナジエンなどがある。
【0035】
好ましい脂環式構造としては、例えば多環式の脂環式構造、架橋環構造を含む脂環式構造等が挙げられる。多環式の脂環式構造としては2環式以上の脂環式構造、好ましくは3環式以上の脂環式構造が挙げられる。3環式以上の脂環式構造の例としては、アダマンタン、トリシクロデカン等が挙げられる。脂環式モノマー(B)が3環式以上の脂環式構造を含むことにより、乳化適性の向上という利点がある。本明細書において「架橋環」とは環の中の隣接していない2個以上の原子を連結した構造を有する環をいう。架橋環構造を含む脂環式構造の例としてはノルボルナン、ノルボルネン、アダマンタン、ビシクロ〔1,1,2〕ヘキサン、ビシクロ〔2,2,2〕オクタン、トリシクロデカン、イソボルナン等が挙げられる。
【0036】
1つの実施形態において、脂環式構造は、
【化22】
【化23】
からなる群から選択される。
【0037】
脂環式モノマー(B)に含まれる(メタ)アクリロイル基の数(すなわち上記nの値)は特に限定されないが、例えばその上限は6、5、4、3、2であり、下限は5、4、3、2、1である。脂環式モノマー(B)に含まれる(メタ)アクリロイル基の数(すなわち上記nの値)の範囲は上記上限または下限の値から選択して適宜設定することができ、通常乾燥性の観点から1〜6が好ましい。
【0038】
脂環式モノマー(B)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。脂環式モノマー(B)の具体的な例は、脂環式単官能アクリレートとしてはシクロヘキサン(メタ)アクリレート、4−tert−シクロヘキサン(メタ)アクリレート、シクロヘキサンメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、ノルボルナン(メタ)アクリレート、ノルボルナンメタノール(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、ノルボルネンメタノール(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート、アダマンタンメタノール(メタ)アクリレート、ビシクロ〔1,1,2〕ヘキサン(メタ)アクリレート、ビシクロ〔1,1,2〕ヘキサンメタノール(メタ)アクリレート、ビシクロ〔2,2,2〕オクタン(メタ)アクリレート、ビシクロ〔2,2,2〕オクタンメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、トリシクロデカンメタノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニルメタノール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタノール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロペンテニルメタノール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサンメタノール(メタ)アクリレート。
【化24】
(式中、Rは、(メタ)アクリロイル基である)
等が挙げられる。
【0039】
脂環式2官能アクリレートとしては、シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、4−tert−シクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルネン(ジメタ)アクリレート、ノルボルネンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビシクロ〔1,1,2〕ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ビシクロ〔1,1,2〕ヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビシクロ〔2,2,2〕オクタンジ(メタ)アクリレート、ビシクロ〔2,2,2〕オクタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルジ(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサンジ(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、水素添ビスフェノールA型(EO変性)ジアクリレート、水素添ビスフェノールF型(EO変性)ジアクリレート等が挙げられる。
【0040】
脂環式単官能アクリレートと脂環式2官能アクリレートを併用する場合、皮膜強度の観点から、脂環式単官能アクリレートと脂環式2官能アクリレートとの合計重量に対して、単官能アクリレートの使用比率が10〜20重量%、2官能アクリレートの使用比率が80〜90重量%である。
【0041】
(3.反応性希釈剤(C))
該反応性希釈剤(C)は、
【化25】
pは、0、1または2であり、R
【化26】
(式中、それぞれ独立に、qは0〜16の整数であり、Rは水素またはメチル基である)
であり、
はメチル基または
【化27】
(式中、それぞれ独立に、qは0〜16の整数であり、Rは水素またはメチル基である)
である。ワニス組成物に反応性希釈剤(C)を含むことにより、乾燥性や皮膜強度の向上という効果を奏することができる。
【0042】
反応性希釈剤(C)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。反応性希釈剤(C)の例は、
上記構造式においてnが0であるとき、2,2−ビス((エチレンオキサイド変性)(メタ)アクリロイル)プロパン、トリメチロールプロパン(エチレンオキサイド変性)トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(エチレンオキサイド変性)テトラ(メタ)アクリレートである。
上記構造式においてnが1であるとき、ジ(2,2−ビス((エチレンオキサイド変性)(メタ)アクリロイル)ブチル)エーテル、(2,2−ビス((エチレンオキサイド変性)(メタ)アクリロイル)ブチル)(2,2,2−トリス((エチレンオキサイド変性)(メタ)アクリロイル)エチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサ(エチレンオキサイド変性)(メタ)アクリレートである。
上記構造式においてnが2であるとき、トリペンタエリスリトールオクタ(エチレンオキサイド変性)(メタ)アクリレートである。
【0043】
(4.ワニス組成物)
ワニス組成物中のポリマー(A)、脂環式モノマー(B)および反応性希釈剤(C)の合計重量に対して、皮膜強度と乳化適性の観点から、ポリマー(A)の比率が15〜50重量%、脂環式モノマー(B)の比率が10〜45重量%、反応性希釈剤(C)の比率が、40〜75重量%である。
【0044】
1つの実施形態において、本発明のワニス組成物は、オフセットインキ用に用いられる。オフセット印刷はローラーからローラーへインキを転写させながら使用するものであるため、高粘度のインキにする必要がある。本発明のワニス組成物を用いて作製したインキの粘度は高くなるため、オフセットインキに適している。なおインキジェット印刷はタンクからインキを吸って、細いノズルから噴射させて行う印刷手法であるため、低粘度インキにする必要があることが知られている。
【0045】
上記ワニス組成物の粘度の上限は、800、750、700、600、500、400、300、200、100、50、10Pa・s/25℃であり、下限は750、700、600、500、400、300、200、100、50、10、5Pa・s/25℃である。ワニス組成物の粘度の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができる。通常ローラーへの転写性や作業性の観点から5〜800Pa・s/25℃であり、より好ましくは10〜200Pa・s/25℃である。
【0046】
ワニス組成物中には、ポリマー(A)、脂環式モノマー(B)および反応性希釈剤(C)以外の成分(以下その他の成分ともいう)を含有してもよい。通常ポリマー(A)、脂環式モノマー(B)および反応性希釈剤(C)の合計重量に対して、その他の成分の含有量の上限は20、15、10、5、1重量%であり、下限は15、10、5、1、0重量%である。またワニス組成物全体の合計重量に対してその他の成分の含有量の上限は、17、15、10、5、1重量%であり、下限は15、10、5、1、0重量%である。その他の成分の含有量の範囲は上記上限および下限の値を適宜選択して設定することができる。通所その他の成分の含有量の範囲はポリマー(A)、脂環式モノマー(B)および反応性希釈剤(C)の合計重量に対して、0〜20重量%が好ましく、ワニス組成物全体の合計重量に対して0〜17重量%が好ましい。
【0047】
(5.オフセット印刷インキ)
1つの局面において、本開示は上記ワニス組成物、必要に応じて光重合開始剤、および顔料を含む、オフセット印刷インキを提供する。
【0048】
光重合開始剤としては、特に限定されず、各種公知のものを使用することができる。その具体例としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、p−ジメチルアセトフェノン、チオキサントン、アルキルチオキサントン、アミン類などがあげられる。また、ダロキュアー1173、イルガキュアー651、イルガキュアー184、イルガキュアー907(いずれもチバ・ジャパン社製)等の市販のものをそのまま使用しても良い。光重合開始剤の使用量としては、通常、乾燥性の観点から1〜15%程度用いることが好ましい。
【0049】
本発明のオフセット印刷用インキに使用する顔料としては、特に限定されず通常使用される無機又は有機の顔料を配合することができる。具体例としては、酸化チタン、亜鉛華、鉛白、リトボン、酸化アンチモン等の白色顔料、アニリンブラック、鉄黒、カーボンブラック等の黒色顔料、黄鉛、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ハンザイエロー(10G、5G、3G、その他)、ジスアゾイエロー、ベンジンイエロー、パーマネントイエロー等の黄色顔料、クロームバーミリオン、パーマネントオレンジ、バルカンファーストオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジ等の橙色顔料、酸化鉄、パーマネントブラウン、パラブラウン等の褐色顔料、ベンガラ、カドミウムレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド、ローダミンレーキ、アリザリンレーキ、チオインジゴレッド、PVカーミン、モノライトファーストレッド、キナクドリン系赤色顔料等の赤色顔料、コバルト紫、マンガン紫、ファーストバイオレット、メチルバイオレットレーキ、インダンスレンブリリアントバイオレット、ジオキサジンバイオレット等の紫色顔料、群青、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、銅フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、インジゴ等の青色顔料、クロムグリーン、酸化クロム、エメラルドグリーン、ナフトールグリーン、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、ポリクロルブロム銅フタロシアニン等の緑色顔料の他、各種の蛍光顔料、金属粉顔料等が挙げられる。これらの顔料は、オフセット印刷用インキ100重量部に対して1〜50重量部程度の範囲で配合することが好ましく、5〜30重量部とすることが更に好ましい。
【0050】
本発明の活性エネルギー線硬化型のオフセット印刷インキは、本発明の印刷インキ用樹脂、重合性モノマーおよび顔料を含有するものであるが、さらに表面調整剤、消泡剤、光増感剤、酸化防止剤、光安定剤、レベリング剤を使用することもできる。これらの任意成分は、オフセット印刷用インキ100重量部に対して、それらの合計量が100重量部程度以下の範囲となる量(具体的には95、90、80、50、40、30、20、10、5重量部程度以下)で配合することが好ましい。さらにハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジンン及びN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等の重合禁止剤を配合することもできる。重合禁止剤を配合する場合には、オフセット印刷用インキに対して0.01〜2重量部程度の範囲で使用することが好ましい。
【0051】
(6.印刷物)
1つの局面において、本開示は、上記活性エネルギー線硬化型印刷インキの硬化層を有する、印刷物を提供する。
【0052】
基材としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、紙(アート紙、キャストコート紙、フォーム用紙、PPC紙、上質コート紙、クラフト紙、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙等)の他、プラスチック基材(ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)が挙げられる。
【0053】
印刷方法(塗工方法)としては、例えば、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工などが挙げられる。また、塗工量は特に限定されないが、通常は、乾燥後の重量が0.1〜30g/m程度、好ましくは1〜20g/m程度である。
【0054】
硬化手段としては、例えば電子線又は紫外線が挙げられる。紫外線の光源としては、例えば高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、UV−LEDなどが挙げられる。光量や光源配置、搬送速度は特に限定されないが、例えば、高圧水銀灯を使用する場合には、通常80〜160W/cm程度の光量を有するランプ1灯に対して、搬送速度が通常5〜50m/分程度である。
【0055】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供するものではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を具体的に説明する。但し、以下に、上述の好ましい実施形態における説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供するものではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0057】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりTHF溶媒下で測定したポリスチレン換算値として求めた。GPC装置としてはHLC−8020(東ソー(株)製)を、カラムとしてはTSKgel superHZM(東ソー(株)製)を用いた。
【0058】
樹脂1(オフセット印刷インキ用樹脂の製造)
攪拌機、分水器付き還流冷却管および温度計と滴下ロートを備えた反応容器にキシレン1000gを仕込んだ。滴下ロートにメチルメタクリレート600g、スチレンモノマー150g、2−エチルヘキシルアクリレート170g、ブチルメタクリレートを30g、アクリル酸を50g仕込み、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを40g添加し、140℃、2.0時間還流・攪拌下滴下重合反応を行い、1時間保温した。その後、温度を160℃に上げ常圧で攪拌を続けながら溶媒を留除し、更に同温度で50mHg以下に減圧し、完全に溶媒を留去して、オフセット印刷インキ用樹脂(樹脂1)1000gを得た。重量平均分子量(Mw)を下記の方法により測定した。重量平均分子量は、Mw10,100であった。結果を表1に示す。
【0059】
樹脂2〜樹脂7
樹脂の構成モノマーの種類と使用量を表1に代えたこと以外は、樹脂1と同様に合成した。その結果を表1に示す。
【0060】
以上、実施例および比較例の樹脂組成と、得られた樹脂の物性を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
表1の原料の略号は以下の通りである。
A-1:メチルメタクリレート
A-2:スチレンモノマー
A-3:イソボニルメタクリレート
A-4:2−エチルヘキシルアクリレート
A-5:ブチルメタクリレート
A-6:アクリル酸
A-7:アクリロイルモルホリン
A-8:ヒドロキシエチルメタクリレート
A-9:N,N-ジメチルエチルメタクリレート
AIBN:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル
【0063】
(インキの調製)
得られた樹脂1(48.8g)に対して水添ロジンアクリレート(荒川化学工業製)36g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート115.2g、4−メトキシフェノール3gを加え、エアーバブリング下、130℃、1時間攪拌溶解し、200gのオフセット印刷用ワニスを得た。得られたワニスに200部に対して、イルガキュア907(BASF製)を10g、MA100(三菱化学製)を40g仕込み、3本ローラーで錬肉してインキを調製した。上記配合に基づいて40℃、400rpmにおけるタック値が9±0.5となるよう適宜調整し、表2の実施例1に示すオフセット印刷用インキを得た。
【0064】
実施例2〜実施例8
樹脂とアクリルモノマーの種類と使用比率を表2に代えたこと以外は、実施例1と同様に調製した。
【0065】
【表2】
【0066】
比較例1〜比較例7
樹脂とアクリルモノマーの種類と使用比率を表3に代えたこと以外は、実施例1と同様に調製した。
【0067】
【表3】
【0068】
表2及び表3の原料の略号は以下の通りである。
DAP:ジアリルフタレート樹脂(大阪ソーダ製)
B-1:水添ロジンアクリレート(荒川化学工業製)
B-2:アダマンチルアクリレート
B-3:ジシクロペンテニルアクリレ−ト
B-4:ジシクロペンタニルアクリレ−ト
B-5:イソボニルアクリレート
B-6:トリシクロペンタンジメタノールジアクリレート
C-1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
C-2:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
イルガキュア907: 2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン
(BASF製)
MA100:カーボンブラック(三菱化学製)
【0069】
(tanδの測定)
得られたインキを30℃、10Hzにおけるワニスの粘弾性(tanδ)をHAAKE RheoStress1(Thermo Scientific社製)で測定した。評価結果を表2と表3に示す。
【0070】
(流動性の測定)
60°に傾けたガラス板の上にインキ1.30mlをのせて、30分放置後のインキの流れを計測した。
【0071】
(乳化インキの調整)
ステンレス製容器に調製したインキ15gを加え、ディズパー羽根の付いた攪拌機で200rpmの回転数で5分攪拌後、水をインキ中に入らなくなるまで加え続けた。その後、インキを銅版にのせ、軟膏ヘラで水切りをして、乳化インキを得た。
【0072】
(乳化率)
得られた乳化インキをカールフィッシャー水分計(京都電子工業株式会社)で測定した。
評価結果を表2と表3に示す。
【0073】
(インキの調子)
得られたインキの外観、粘り気など を目視や触感で、以下の評価基準に基づき評価した。評価結果を表2と表3に示す。
○:良好
△:やや良好
×:不良 (ダレ、分散不良、ゲル化 など)
【0074】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきである。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきである。