特許第6810418号(P6810418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810418
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 19/03 20060101AFI20201221BHJP
   F16L 23/02 20060101ALI20201221BHJP
   F16L 25/02 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   F16L19/03
   F16L23/02 D
   F16L25/02
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-216883(P2016-216883)
(22)【出願日】2016年11月7日
(65)【公開番号】特開2018-76876(P2018-76876A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151977
【氏名又は名称】株式会社藤井合金製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000161998
【氏名又は名称】京葉瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】米元 茂光
(72)【発明者】
【氏名】芝辻 武昭
(72)【発明者】
【氏名】林 俊郎
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−158259(JP,A)
【文献】 特開2015−179058(JP,A)
【文献】 特開平08−014980(JP,A)
【文献】 特許第5775567(JP,B2)
【文献】 特開平05−296372(JP,A)
【文献】 特開平08−287940(JP,A)
【文献】 特開平10−274370(JP,A)
【文献】 実公昭58−024742(JP,Y2)
【文献】 中国特許出願公開第101709812(CN,A)
【文献】 西独国特許出願公開第3142808(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 19/00
F16L 23/00
F16L 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1配管部材に継手本体の一端が気密状態に接続され、
前記継手本体の他端近傍には、外方に張り出す環状鍔部とそれより前記他端側に延設された延設筒部が設けられると共に、前記環状鍔部の前記延設筒部側に面する一方面を、第2配管部材の接続端面に、環状パッキンを介して当接させ、
前記継手本体の外面のうち、前記環状鍔部の外側面から前記一方面の反対側に位置する他方面を経て、前記第1配管部材に至る範囲に、環状の絶縁部材を密に外嵌させ、
前記環状鍔部の前記他方面に前記絶縁部材を介して係止する係止片部と、前記第2配管部材に設けられた雄ネジ部に螺合可能な雌ネジ部を有する袋ナットが設けられ、
前記継手本体の外面のうち、少なくとも、前記環状鍔部の外側面から前記一方面に至る範囲及びそれに続く前記延設筒部の外側面からその端面に至る範囲に、セラミック溶射による絶縁被膜を形成し
前記絶縁部材は、前記環状鍔部の外側面に前記絶縁被膜を介して被覆される大径筒部と、前記環状鍔部の前記他方面に被覆される水平面部と、前記水平面部から延設されて前記継手本体の胴部外側面から前記第1配管部材の下端部に至る範囲を連続して被覆する小径筒部と、前記第1配管部材の下端部に続く外側面を被覆する上部筒部とからなり、
前記袋ナットの締付完了時にて、前記第1配管部材の外周面から前記袋ナットの上流側端部の外周面に至る範囲を密に被覆する絶縁弾性材料製の筒状の防水カバーを設け、
前記防水カバーの筒状部内周面を前記絶縁部材の前記上部筒部外周部に対して水密状態となるように取り付けたことを特徴とする継手構造。
【請求項2】
請求項1に記載の継手構造において、前記袋ナットの係止片部と前記絶縁部材との間に、リング体を介在させたことを特徴とする継手構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の継手構造において、継手本体の外面全域に、セラミック溶射による絶縁被膜を形成したことを特徴とする継手構造。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載の継手構造において、前記継手本体と絶縁部材とは、絶縁性の接着剤やシ−ル剤を介して水密状態に接する構成としたことを特徴とする継手構造。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の継手構造において、前記第1配管部材は、メータ用ガス栓の下流側接続筒部とし、
前記第2配管部材は、ガスメータのガス入口筒部とし、
前記袋ナットの締付完了時にて、前記メータ用ガス栓の下流側接続筒部の外側面から前記袋ナットの係止片部の外側面に至る範囲を密に被覆するように、絶縁弾性材料からなる防水カバーを設けたことを特徴とする継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手構造、特に、配管相互を電気的に絶縁した状態で接続させる継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、配管同士を絶縁状態に接続させる継手構造として、図4に示すように、一方の第1配管部材(41)に接続される第1継手(4a)と、他方の第2配管部材(42)に接続される第2継手(4b)とを、ガスケット(43)及び絶縁部材(44)を介して、袋ナット(40)で接続するものが知られている(特許文献1)。ガスケット(43)及び絶縁部材(44)は、共に、セラミック、テフロン(登録商標)、ゴム等の絶縁材料からなり、絶縁部材(44)によって、第1継手(4a)と袋ナット(40)が、また、ガスケット(43)によって、第1、第2継手(4a)(4b)間が、電気的に絶縁された状態で接続されている。これにより、第1、第2配管部材(41)(42)は絶縁された状態となり、第1、第2配管部材(41)(42)が異種金属からなる場合でも、これら第1、第2配管部材(41)(42)間に、両者の電位差によって生じる迷走電流が流れることはなく、迷走電流による金属腐食の発生を防止することができる。
【0003】
しかしながら、上記従来技術のものでは、ガスケット(43)の内周側面や外周側面に、導電性の異物や継手のバリ等が付着する等して、ガスケット(43)の絶縁性能が劣化してしまうと、第1、第2継手(4a)(4b)間を通電させてしまうといった不都合がある。
【0004】
そこで、第1、第2配管部材として、ガスメータ用のガス栓本体の下流側接続筒部とガスメータのガス入口筒部を、絶縁パッキンを介して電気的に絶縁させた状態にて、1つの継手本体と袋ナットで接続させたものにおいて、絶縁パッキンの絶縁性能が損なわれても、配管部材間の絶縁を確保できるようにするために、前記継手本体の外面全域に、絶縁性能を有するエポキシ樹脂をコーティングする構成が開示されている(特許文献2)。
このものでは、万一、2つの配管部材間に設けた絶縁パッキンの絶縁性能が劣化しても、継手本体自体の外面全域が絶縁性機能を有する構成としたから、配管部材相互間の絶縁性を保持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−326968号公報
【特許文献2】特開2015−158259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記構成のものでは、継手本体の外面にエポキシ樹脂を塗装しただけであるから、例えば、継手本体の外面に、ガス栓本体の下流側接続筒部や、ガスメータのガス入口筒部が擦れたりぶつかったりすると、エポキシ樹脂被膜が剥がれてしまい、絶縁性能が失われるといった不都合がある。言い換えれば、1つの継手本体の外面にエポキシ樹脂被膜をコーティングしただけでは、当該継手本体を介して接続させる2つの配管部材相互間の絶縁性を確保することは難しい。
【0007】
本発明は、金属製の第1、第2配管部材を継手本体によって、電気的に絶縁した状態に接続させる継手構造であって、両者間に介在させる絶縁パッキンの絶縁性能が劣化したり、第1、第2配管部材間に導電性の異物が介在したり、さらには、第1、第2配管部材を継手本体によって接続する時、継手本体の外面が第1又は第2配管部材に当たったり、擦れたりしても、第1、第2配管部材間の絶縁性を十分に保持することができる継手構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための技術的手段は、『第1配管部材に継手本体の一端が気密状態に接続され、
前記継手本体の他端近傍には、外方に張り出す環状鍔部とそれより前記他端側に延設された延設筒部が設けられると共に、前記環状鍔部の前記延設筒部側に面する一方面を、第2配管部材の接続端面に、環状パッキンを介して当接させ、
前記継手本体の外面のうち、前記環状鍔部の外側面から前記一方面の反対側に位置する他方面を経て、前記第1配管部材に至る範囲に、環状の絶縁部材を密に外嵌させ、
前記環状鍔部の前記他方面に前記絶縁部材を介して係止する係止片部と、前記第2配管部材に設けられた雄ネジ部に螺合可能な雌ネジ部を有する袋ナットが設けられ、
前記継手本体の外面のうち、少なくとも、前記環状鍔部の外側面から前記一方面に至る範囲及びそれに続く前記延設筒部の外側面からその端面に至る範囲に、セラミック溶射による絶縁被膜を形成し
前記絶縁部材は、前記環状鍔部の外側面に前記絶縁被膜を介して被覆される大径筒部と、前記環状鍔部の前記他方面に被覆される水平面部と、前記水平面部から延設されて前記継手本体の胴部外側面から前記第1配管部材の下端部に至る範囲を連続して被覆する小径筒部と、前記第1配管部材の下端部に続く外側面を被覆する上部筒部とからなり、
前記袋ナットの締付完了時にて、前記第1配管部材の外周面から前記袋ナットの上流側端部の外周面に至る範囲を密に被覆する絶縁弾性材料製の筒状の防水カバーを設け、
前記防水カバーの筒状部内周面を前記絶縁部材の前記上部筒部外周部に対して水密状態となるように取り付けたこと』である。
【0009】
第1配管部材には継手本体の一端が接続され、継手本体の他端と第2配管部材とは、環状パッキン及び絶縁部材を介して、袋ナットによって接続される。すなわち、第1配管部材と継手本体との接続体と、第2配管部材と袋ナットとの接続体とは、絶縁部材及び環状パッキンを介して絶縁状態に接続される。
なお、継手本体のうち、環状パッキンを装着させている環状鍔部の前記一方面から外側面に至る範囲と、前記一方面に続く延設筒部の外側面からその端面に至る範囲には、セラミック溶射による絶縁被膜が設けられているから、前記環状パッキンや絶縁部材が設けられていない範囲に導電性の異物が付着する等し、それが第2配管部材に接することがあっても、また、環状パッキンに絶縁性能が期待できない場合でも、継手本体の外面のうち少なくとも上記範囲にセラミック溶射による絶縁被膜を設ける構成としたことにより、第1、第2配管部材は確実に絶縁された状態に保持される。これにより、第1、第2配管部材に迷走電流が流れる不都合は防止でき、迷走電流による腐食を防止することができる。
また、セラミック溶射による絶縁被膜は、溶融セラミック粒子が積層されているため、継手本体の絶縁被膜形成域に、他の部品等が当たったり、擦れたりしても、継手本体の絶縁性能が劣化することはない。
なお、前記袋ナットの締付完了時にて、前記第1配管部材の外周面から前記袋ナットの上流側端部の外周面に至る範囲を密に被覆する絶縁弾性材料製の筒状の防水カバーを設け、前記防水カバーの筒状部内周面を前記絶縁部材の上部筒部外周部に対して水密状態となるように取り付けたから、袋ナットのネジ部または袋ナットと防水カバーの当接部から防水カバーの内面側に雨水が浸入することがあっても、絶縁部材と防水カバーによって水密状態となっているため、第1配管部材への雨水の浸入が防止でき、第2配管部材と第1配管部材が袋ナットを介して導通することがない。
【0010】
上記継手構造において、好ましくは、『前記袋ナットの係止片部と前記絶縁部材との間に、リング体を介在させた』ことである。
袋ナットを締め付けて行くと、袋ナットが降下することにより、係止片部が環状鍔部の前記他方面を絶縁部材を介して押圧するが、係止片部と絶縁部材との間にリング体を介在させておくことによって、係止片部の押圧による絶縁部材の損傷を防止することができる。
【0011】
上記継手構造において、好ましくは、『継手本体の外面全域に、セラミック溶射による絶縁被膜を形成したこと』である。
これにより、第1、第2配管部材間の絶縁性能を一層確保することができる。
【0013】
上記継手構造において、好ましくは、『前記継手本体と絶縁部材とは、絶縁性の接着剤やシ−ル剤を介して水密状態に接する構成とした』ものでは、継手本体の外面は一層確実に防水状態に保持されるから、袋ナット内に雨水が浸入しても長期的に第1配管部材と第2配管部材が袋ナットを介して導通することがない。
【0014】
上記継手構造において、好ましくは、『前記第1配管部材は、メータ用ガス栓の下流側接続筒部とし、
前記第2配管部材は、ガスメータのガス入口筒部とし、
前記袋ナットの締付完了時にて、前記メータ用ガス栓の下流側接続筒部の外側面から前記袋ナットの係止片部の上面に至る範囲を密に被覆するように、絶縁弾性材料からなる防水カバーを設けた』ことである。
メータ用ガス栓の下流側接続筒部と、ガスメータのガス入口筒部とが、継手本体及び袋ナットによって絶縁状態に接続され、袋ナットの雌ネジ部をガスメータのガス入口筒部の雄ネジ部へ最終締付状態に至るまで締付けた締付完了時にて、メータ用ガス栓の下流側接続筒部の外側面の所定位置から袋ナットの係止片部の外側面に至る範囲に防水カバーが被覆された態様となる。防水カバーによって、絶縁部材と袋ナット内は、防水・防塵された状態にシールされるから、絶縁部材及び袋ナット内は雨水、塵埃、塗料、光等の外的衝撃や刺激から保護されることとなり、絶縁部材や環状パッキン等の絶縁性能の劣化を防止することができる。これにより、ガス栓本体とガスメータとの間に迷走電流が流れることはなく、前記迷走電流によるガス栓本体やこれに続くガス引き込み用配管における腐食を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記構成であるから次の特有の効果を有する。
本願発明によれば、第1、第2配管部材間に設ける環状パッキンの絶縁性が弱かったり、第1、第2配管部材間に導電性の異物が付着したりすることがあっても、継手本体の外面のうち、少なくとも、環状パッキンを介して第2配管部材と対向する箇所には、セラミック溶射による絶縁被膜が形成されているから、継手本体と第2配管部材との絶縁性は確実に維持されることとなり、これにより、第1、第2配管部材間の絶縁性も維持される。
セラミック溶射による絶縁被膜は、コーティングによる被膜と比べて、外力により破れたり剥がれたりすることがないので、取付作業中等に、前記継手本体の外面に摺擦力が加えられても、継手本体の外面における絶縁性能は失われることはない。よって、第1、第2配管部材相互間の絶縁性能を確保することができる。
さらに、防水カバーを設けたものや、防水カバーを絶縁部材に対して水密状態に取り付けたもの、継手本体と絶縁部材の接する部分に絶縁性の接着剤やシ−ル剤で水密にしたものでは、雨水による第1配管部材と第2配管部材の導通を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態の継手構造を使用したガスメータの取付状態を示す側面図である。
図2】本発明の実施の形態の継手構造の使用状態を示す断面図である。
図3】本発明の実施の形態の継手構造の使用状態を示す要部拡大断面図である。
図4】従来の継手構造の使用状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
この実施の形態に採用されるガスメータ(M)は、図1に示すように、屋外にて直立するガス引き込み用配管(3)とガス送り込み用配管(図示せず)との間に、吊設されているもので、家庭等でのガスの使用量を計測するための計測器等が内蔵されているメータ本体(30)の頂面に、ガス入口筒部(33)とガス出口筒部(図示せず)とが、正面視にて並列して突出しており、ガス入口筒部(33)が、メータ用ガス栓のガス栓本体(10)に、袋ナット(31)によって接続される構成となっている。
ガス栓本体(10)の上流端は、L型継手(25)を介して直立するガス引き込み用配管(3)に接続される。
なお、図示しないが、ガス出口筒部にはガス圧検圧用接続具としての配管継手が同じく袋ナットによって接続されており、ガス圧検圧用接続具の下流端は、継手を介して又は直接ガス送り込み用配管に接続されているものとする。
【0018】
メータ用ガス栓は、図1及び図2に示すように、正面側に位置する操作つまみ(19)と、操作つまみ(19)と共に回動してガス流路(180)を開閉するせん(18)が収容されているガス栓本体(10)とからなり、ガス栓本体(10)の下流側接続筒部(10a)には、継手本体(1)の一端(図面では上端部)が、Oリング(17)を介して気密状態に一体的に螺合接続されている。
【0019】
継手本体(1)の他端(図面では下端部)近傍には、環状鍔部(11)が外側に張り出していると共に、環状鍔部(11)の下面(11a)の基端部から下方へ延設筒部(12)が延設されている。
特に、この実施の形態では、図3に示すように、継手本体(1)の外表面のうち、環状鍔部(11)の外側面(11b)から下面(11a)、さらには、延設筒部(12)の外側面(12a)を経て、延設筒部(12)の下端面(12b)に至る範囲に、セラミック溶射を施すことにより、絶縁被膜(2)を形成する。
これには、例えば、電気絶縁特性を有し、強度の高いアルミナを、セラミック溶射により、鉄製の継手本体(1)の凸凹した外表面に吹き付けることにより、継手本体(1)の上記した範囲に、確実に絶縁被膜(2)を形成することができる。
【0020】
さらに、継手本体(1)の環状鍔部(11)の外側面(11b)から上面(11c)及び胴部外側面(11d)を経て、ガス栓本体(10)の下流側接続筒部(10a)の外周面に至る範囲に、環状の絶縁部材(21)を被覆させている。
絶縁部材(21)は、ガラス繊維入りポリアセタール樹脂等の絶縁樹脂から筒状に構成されており、環状鍔部(11)の外側面(11b)に絶縁被膜(2)を介して被覆される大径筒部(21a)と、環状鍔部(11)の上面(11c)に被覆される水平面部(21b)と、水平面部(21b)から上方に延設されて胴部外側面(11d)からガス栓本体(10)の下流側接続筒部(10a)の下端部に至る範囲を連続して被覆する小径筒部(21c)と、ガス栓本体(10)の下流側接続筒部(10a)の下端部に続く外周面を被覆する上部筒部(21d)とからなり、全体に、継手本体(1)の外面に接着剤やシール剤で水密状態に接している。
【0021】
そして、環状鍔部(11)の上面(11c)に被覆される水平面部(21b)の上に、リング体(22)を介して、袋ナット(31)の係止片部(32)を係止させる。
なお、ガス栓本体(10)の下流側接続筒部(10a)から袋ナット(31)の係止片部(32)の上面に至る範囲には、絶縁性を持たせたエチレンプロピレンゴム(EPDM)の絶縁弾性材料からなる環状の防水カバー(23)を水密状態に被覆させている。
これにより、ガス引き込み用配管部材(3)の上端に、操作つまみ(19)を有するガス栓本体(10)と、外表面の所定範囲にセラミック溶射による絶縁被膜(2)が形成された継手本体(1)と、下流側接続筒部(10a)から継手本体(1)に至る範囲に被覆させた絶縁部材(21)と、環状鍔部(11)の上面(11c)に、絶縁部材(21)の水平面部(21b)及びリング体(22)を介して、係止片部(32)が係止された袋ナット(31)と、袋ナット(31)の係止片部(32)の上面からガス栓本体(10)の下流側接続筒部(10a)に至る範囲に被覆される防水カバー(23)とからなるメータ用ガス栓ユニット(100)が、L型継手(25)を介して接続される態様となる。
【0022】
メータ用ガス栓ユニット(100)に、ガスメータ(M)のガス入口筒部(33)を接続させるには、まず、袋ナット(31)を、ガス栓本体(10)側に引っ張り上げて上方へ移動させ、継手本体(1)の環状鍔部(11)の下面(11a)に、ガス入口筒部(33)の頂面を、環状パッキン(20)を介して当接させる。
防水カバー(23)は、上記したように、絶縁弾性材料により成型されているから、袋ナット(31)の上方への移動に伴って、弾性変形可能となっている。
その後、袋ナット(31)を下方へ移動させ、締付方向に回転させれば、袋ナット(31)の雌ネジ部(31a)が、ガス入口筒部(33)の雄ネジ部(34)に螺合しながら、袋ナット(31)は降下していく。
【0023】
袋ナット(31)を最終締付位置に達するまで締め付けると、環状パッキン(20)が、ガス入口筒部(33)の頂面と環状鍔部(11)の下面(11a)との間で押圧されると共に、 環状鍔部(11)の上面(11c)に被覆させている絶縁部材(21)の水平面部(21b)が、リング体(22)を介して、袋ナット(31)の係止片部(32)によって押圧される。
この状態において、図3に示すように、ガス栓本体(10)の下流側接続筒部(10a)と継手本体(1)との接続体(110)と、ガスメータ(M)のガス入口筒部(33)と袋ナット(31)の接続体(300)とは、絶縁部材(21)と絶縁被膜(2)と環状パッキン(20)によって電気的に絶縁された関係となっている。これにより、迷走電流がガスメータ(M)からガス引き込み用配管(3)へ流れることはない。
【0024】
なお、図示しないが、ガスメータ(M)のガス出口部も同様な要領で袋ナットによって、ガス圧検圧用接続具としての配管継手が絶縁状態に接続されるようにすることもできる。
【0025】
環状パッキン(20)としては、絶縁性を持たせたニトリルゴム(NBR)製の絶縁パッキンが好ましいが、間違って絶縁性の弱いパッキンが使用されても、また、延設筒部(12)の下端面(12b)のように、環状パッキン(20)が装着されていない範囲に、導電性の異物や継手のバリ等が付着することがあっても、環状パッキン(20)の装着域からその上方に続く環状鍔部(11)の外側面(11b)や延設筒部(12)の下端面(12b)には、セラミック溶射による絶縁被膜(2)が設けられているから、継手本体(1)とガス入口筒部(33)との間には絶縁性を確保することができる。
【0026】
なお、袋ナット(31)の締め付けに伴って、絶縁部材(21)の水平面部(21b)が袋ナット(31)の係止片部(32)によって押圧されるが、両者間には、リング体(22)を介在させているから、水平面部(21b)の損傷を防止することができる。
【0027】
さらに、防水カバー(23)は、上記したように、絶縁性を持たせたエチレンプロピレンゴム(EPDM)の絶縁弾性材料により成型されており、上端に内方に突出するように設けられた環状凸部(24)を、ガス栓本体(10)の下流側接続筒部(10a)の外側面に設けられた環状係合溝(14)に嵌め込むことにより、抜け止め状態に装着することができる。
【0028】
防水カバーの筒状部(23a)とガス栓本体(10)の下流側接続筒部(10a)及び絶縁部材(21)の上部筒部(21d)は絶縁弾性材料の締付け力を大きく設定できるのでより水密性を増す事が出来る。
なお、防水カバー(23)によって、ガス栓本体(10)の下流側接続筒部(10a)と絶縁部材(21)との境界部分、袋ナット(31)の係止片部(32)の絶縁部材(21)の水平面部(21b)への係止部が覆われる構成となっているから、袋ナット(31)内への雨水や散水等による水滴の浸入は確実に防止でき、絶縁部材(21)が水滴によって絶縁性能が低下したり腐食したりする不都合を防止することができる。
【0029】
なお、図2に示すように、継手本体(1)の下端部に感熱ヒューズ(5)を取り付ける場合、感熱ヒューズ(5)を構成している円筒ケース(50)の開放端部(51)を、継手本体(1)の延設筒部(12)に外嵌させる際に、延設筒部(12)の外側面(12a)が開放端部(51)によって摺擦されても、延設筒部(12)の外側面(12a)に設けられているセラミック溶射による絶縁被膜(2)は、不用意に剥がれることはないから、絶縁性能は維持される。
【0030】
さらに、セラミック溶射による絶縁被膜(2)を、継手本体(1)の外表面全域に設ける構成としておけば、絶縁性能が一層向上したものとなり、絶縁部材(2)の絶縁性能が劣化するようなことがあっても、ガス栓本体(10)と、メータ本体(30)との絶縁性能を保持することができる。
【符号の説明】
【0031】
(1) ・・・・・・継手本体
(10)・・・・・・ガス栓本体
(10a)・・・・・下流側接続筒部(第1配管部材)
(11)・・・・・・環状鍔部
(11a) ・・・・・下面(一方面)
(11b) ・・・・・外側面
(11c) ・・・・・上面(他方面)
(12)・・・・・・延設筒部
(12a) ・・・・・外側面
(2) ・・・・・・絶縁被膜
(21) ・・・・・・絶縁部材
(20)・・・・・・環状パッキン
(31)・・・・・・袋ナット
(31a) ・・・・・雌ネジ部
(32)・・・・・・係止片部
(33) ・・・・・ガス入口筒部(第2配管部材)
(34)・・・・・・雄ネジ部
図1
図2
図3
図4