特許第6810421号(P6810421)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6810421同期電動機の回転位置推定装置及び同期電動機の回転位置推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810421
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】同期電動機の回転位置推定装置及び同期電動機の回転位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/026 20160101AFI20201221BHJP
   H02P 6/16 20160101ALI20201221BHJP
【FI】
   H02P25/026
   H02P6/16
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-54310(P2017-54310)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-157717(P2018-157717A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴野 勇介
(72)【発明者】
【氏名】前川 佐理
(72)【発明者】
【氏名】久保田 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】呉 夢悦
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−191728(JP,A)
【文献】 特開平11−098884(JP,A)
【文献】 特開2002−359991(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0140395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 25/026
H02P 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相同期電動機に接続され、複数のスイッチング素子により構成されるインバータについて、3相のうち何れか1相を非通電状態にして開放相とする開放相生成部と、
何れの相を前記開放相とするか決定する開放相決定部と、
前記開放相の電圧を検出する開放相電圧検出部と、
前記電圧を記憶する開放相電圧記憶部と、
この開放相電圧記憶部により記憶された開放相電圧から、当該電圧のゼロ点を推定する電圧ゼロ点推定部と、
前記ゼロ点に基づいて、前記電動機の回転位置を推定する位置推定部とを備え
前記開放相決定部は、前記回転位置に基づいて前記開放相を決定し、
180度通電方式により正弦波駆動を行う同期電動機の回転位置推定装置。
【請求項2】
前記電圧ゼロ点推定部は、前記開放相電圧より求めた近似関数を用いて前記電圧のゼロ点を推定する請求項1記載の同期電動機の回転位置推定装置。
【請求項3】
前記近似関数として、1次近似関数を用いる請求項2記載の同期電動機の回転位置推定装置。
【請求項4】
3相同期電動機に接続され、複数のスイッチング素子により構成されるインバータについて、3相のうち何れか1相を開放相とするかを決定すると、決定した相を非通電状態にし、
前記開放相の電圧を検出して記憶し、
記憶した開放相電圧から、当該電圧のゼロ点を推定し、
前記ゼロ点に基づいて、前記電動機の回転位置を推定し、
前記推定した回転位置に基づいて前記開放相を決定し、180度通電方式により正弦波駆動を行う同期電動機の回転位置推定方法。
【請求項5】
前記開放相電圧より求めた近似関数を用いて前記電圧のゼロ点を推定する請求項記載の同期電動機の回転位置推定方法。
【請求項6】
前記近似関数として、1次近似関数を用いる請求項記載の同期電動機の回転位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、同期電動機の回転位置を推定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動機を適切に制御するために回転位置の検出が行われている。回転位置の検出とは、電動機の電気角座標上の位置である電気角位相を検出することである。回転位置の検出には、ロータリーエンコーダやレゾルバ,ホール素子等の位置センサを用いる方法がある。しかし、製品のコストや構造上の制約等から位置センサを設けることができない場合もある。
【0003】
そこで、位置センサを用いることなく、電流や電圧の情報から回転位置を推定する方法が実施されている。かかる方法の種類として、例えば、誘起電圧利用型とインダクタンス利用型とがある。誘起電圧利用型は、電動機の速度に比例する誘起電圧を電動機への入力電圧と電流とにより演算し、この誘起電圧に基づいて推定する手法である。これは、電動機の回転により発生する誘起電圧が、回転位置である電動機の電気角に応じて変化することを利用した推定方法である。
【0004】
誘起電圧利用型の場合、電動機の回転数が高い領域では十分な精度が得られる。しかし、回転数が低い領域では誘起電圧の振幅が小さくなるか発生しなくなるため、誘起電圧利用型では電動機の停止時や低速時に正確な推定ができない。
【0005】
一方、インダクタンス利用型は、電動機のインダクタンスを電流や電圧情報から算出して回転位置を推定する手法であり、電動機のインダクタンスが電気角に応じて2倍の周期で変化することを利用したものである。この推定方法としては、例えば、駆動周波数に関係しないセンシングのための交流信号を電動機に印加し、電圧電流の関係から回転位置を推定する方法がいくつか提案されている。
【0006】
このようにインダクタンスを求めるために印加する交流信号の周波数は、一般にPWM制御におけるキャリア周波数よりも低く設定され、例えば数100Hz〜数kHz程度である。しかしこの場合、人間の可聴域に電動機の電流リップル周波数が入るため、騒音が増加してしまう。また、電流は少なくともキャリア周期以内に検出する必要があるため、キャリア周波数が高くなると検出が困難になる。
【0007】
上記以外の回転位置推定方法として、特許文献1では、開放相電圧を利用した回転位置推定方法が提案されている。この方法は、3相インバータのうち何れか1相を非通電状態とした際に、回転位置に応じて生じる他の2相のインダクタンス差により発生する電圧差に基づいて回転位置を推定する手法である。この開放相電圧利用型によれば、インダクタンス利用型の推定方法と同様に低速でも回転位置推定が可能であり、しかも電圧を検出するためキャリア周波数を高く設定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−189176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では120度通電方式を前提としているため、基本的に非通電状態の相が発生しない180度通電方式等には適用することができない。
そこで、より広範な通電方式にも対応できる同期電動機の回転位置推定装置及び同期電動機の回転位置推定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の同期電動機の回転位置推定装置によれば、3相同期電動機に接続され、複数のスイッチング素子により構成されるインバータについて、3相のうち何れか1相を非通電状態にして開放相とする開放相生成部と、
何れの相を前記開放相とするか決定する開放相決定部と、
前記開放相の電圧を検出する開放相電圧検出部と、
前記電圧を記憶する開放相電圧記憶部と、
この開放相電圧記憶部により記憶された開放相電圧から、当該電圧のゼロ点を推定する電圧ゼロ点推定部と、
前記ゼロ点に基づいて、前記電動機の回転位置を推定する位置推定部とを備える。
前記開放相決定部は、前記回転位置に基づいて前記開放相を決定し、
180度通電方式により正弦波駆動を行う。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態であり、回転位置推定装置を含む電動機駆動制御装置の構成を示す機能ブロック図
図2】開放相電圧検出部の構成の一部を示す図(その1)
図3】開放相電圧検出部の構成の一部を示す図(その2)
図4】回転位置の推定処理を示すフローチャート
図5】開放相電圧の近似関数を示す図
図6】開放相電圧のゼロ点を推定し、回転位置を推定する処理を説明する図
図7】回転位置の推定結果を示す図
図8】180度通電方式による3相PWM信号を示す図
図9】180度通電方式において、開放相区間を設けた場合の3相PWM信号を示す図
図10】開放相電圧を説明する図
図11】開放相電圧と回転位置との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、回転位置推定装置を含む電動機制御装置の構成を示す機能ブロック図である。直流電源1は、直流電源を生成してインバータ部2に供給する。直流電源1には、交流電源を整流して生成するものも含む。インバータ部2の各相出力端子は、それぞれ同期電動機3の対応する各相巻線の一端に接続されている。インバータ部2及び電動機3は、何れも3相構成である。直流電圧検出部4は、直流電源1の電圧Vdcを検出し、検出結果をPWM生成部5に出力する。
【0013】
インバータ部2の各相出力端子は、相電流検出部6の各相入力端子に接続されている。相電流検出部6により検出された各相電流は、3相/dq変換部7に入力されてd軸電流Id,q軸電流Iqに変換される。変換されたd軸電流Id,q軸電流Iqは、電流制御部8に入力される。電流制御部8には、電流指令部9により生成されたd軸電流指令Id_ref,q軸電流指令Iq_refが入力されている。電流制御部8は、各電流指令Id_ref,Iq_refと各電流Id,Iqとの差に応じてd軸電圧Vd,q軸電圧Vqを生成する。
【0014】
d軸電圧Vd,q軸電圧Vqは、dq/3相変換部10に入力されて3相電圧Vu’,Vv’,Vw’に変換される。3相電圧Vu’,Vv’,Vw’は、開放相決定部11に入力されて開放相区間を含む3相電圧Vu,Vv,Vwとなり、それらはPWM生成部5に入力される。すなわち、開放相決定部11は開放相生成部としての機能も含んでいる。PWM生成部5は、3相電圧Vu,Vv,Vwに基づいて、インバータ部2を構成する各相アームのスイッチング素子を駆動するためのPWM信号Vu±,Vv±,Vw±を生成し、インバータ部2に入力する。
【0015】
また、インバータ部2の各相出力端子は、開放相電圧検出部12の各相入力端子に接続されている。開放相電圧検出部12は各相の開放相電圧を検出し、検出結果を回転位置推定部13に入力する。回転位置推定部13は、入力される開放相電圧に基づいて電動機3の回転位置θestを推定し、3相/dq変換部7,dq/3相変換部10,開放相決定部11及び開放相電圧検出部12に入力する。回転位置推定部13は、開放相電圧記憶部及び電圧ゼロ点推定部としての機能も備えている。
【0016】
図2及び図3に示すように、開放相電圧検出部12は、一端がインバータ部2の各相出力端子に接続される,各相に対応した電圧検出抵抗の直列回路21U及び22U,21V及び22V,21W及び22Wを備えている。これらの直列回路の他端は共通に接続されている。開放相電圧検出部12は、電圧バッファ23及び24並びに差動増幅回路25からなる検出回路を各相毎に備え、開放相区間における各相抵抗21及び22の共通接続点Aと各相直列回路の共通接続点Bとの差電圧を、開放相電圧として検出する。
【0017】
ここで、本実施形態における回転位置推定方法の原理について図10及び図11を参照して説明する。開放相電圧は、3相電動機のある1相を非通電状態とし、残りの2相に電圧を印加している時に、前記非通電状態とした開放相に発生する電圧である。
【0018】
回転子が停止しており誘起電圧が0Vのとき、図10に示すようにU相を開放相とし、V−W相間にパルス電圧を印加した場合を考える。この時、V相とW相には同じ電流が流れるため、V,W相のインダクタンスが変わらない場合はV,W相の電圧は等しく,点Oの電圧つまりU相の電圧は変化しない。しかし実際は、回転子の回転位置に応じて磁束量が変化するため、V,W相のインダクタンスは変化する。
【0019】
V,W相のうち、回転位置に近い相ほど磁束量が大きいためインダクタンスが小さくなり、V,W相のインダクタンスに差が生じる。すると、V相とW相とには、それぞれ相電流iv,iwが同じ電流iとして流れるため、インダクタンスの変化が開放相であるU相に電圧として現れる。この電圧は、図11に示すように位置依存性があるため、開放相の電圧を検出することで回転子の位置が検出できる。
【0020】
上述したように開放相電圧を検出するためには、電動機の何れか1相を非通電状態の開放相にする必要がある。例えば図8に示すように、電動機を180度通電方式により2相変調で正弦波駆動する際のPWM信号波形には開放相が生じないため、開放相電圧が検出できない。
【0021】
そこで本実施形態では、図9に示すように正弦波駆動中において、ある相の開放相電圧がゼロ点となる付近で開放相を発生させる。その期間に開放相電圧を検出し、検出した電圧よりゼロ点となるタイミングを決定する。そして、決定したタイミングから回転位置を推定し、推定した回転位置から電動機の速度も計算し、電動機の制御に使用する。
【0022】
ここで、開放相の発生期間が長い程、開放相電圧を検出できる期間は長くなるが、駆動状態が矩形波駆動に近付くため、騒音やトルクリップルが発生し易くなる。つまり、正弦波駆動状態を極力維持するためには、開放相の発生期間を極力短くする必要がある。以下、開放相の発生期間を開放相区間と称する。また、ある相を非通電状態にすることを「開放」と称する場合がある。一方で、開放相区間を短くし過ぎるとその区間中にゼロ点が現れないか、又はゼロ点を精度良く検出できない可能性があり、回転位置の推定精度が悪化する懸念がある。
【0023】
そこで、本実施形態では、開放相区間を短くするために、開放相電圧の近似関数から当該電圧のゼロ点を求める。これにより、開放相区間を短くしても、回転位置を精度良く推定することが可能となる。
【0024】
ここで、図5に示すように、電動機のある相を、開放相電圧のゼロ点が発生すると推定した前後の期間に亘って開放し、横軸を開放相電圧,縦軸をn回目の検出として、最小二乗法を用いて1次の近似関数を求めると式(1)となる。aは近似関数の傾き,bは切片である。
n=a×(開放相電圧)+b …(1)
図5には、一例として傾きa=−4.43,切片b=4.56を示している。尚、図5中に示す開放相電圧の各プロットはイメージ的に図示しているが、上記傾き及び切片の一例は、実測に基づいて決定したものである。
【0025】
以下、回転位置を推定する処理の一連の流れについて図6を参照して説明する。最初に求める開放相のゼロ点の回転位置をθ1とする。開放相電圧のゼロ点のタイミングn01を求めるには、開放相電圧に0を代入すれば良く、b=n01である。
【0026】
次に、電動機が回転し、他の相の開放相電圧のゼロ点の前後で同様に開放相を発生させてタイミングn02を求める。この時の開放相ゼロ点の回転位置をθ2とする。開放相電圧のサンプリング周期を△tとすると、1回目の開放相電圧ゼロ点のタイミングn01と2回目の開放相電圧ゼロ点のタイミングn02間の時間T12は、式(2)となる。
T12=(n02−n01)×△t …(2)
T12間の電動機回転数ω21は、式(3)で求めることができる
ω21=(θ2−θ1)/360/(T12) …(3)
つまり、2回目の開放相電圧の検出が終了したタイミングN02で、式(2)及び(3)により開放相電圧に基づいた回転数が計算できる。
【0027】
さらに、タイミングN02の回転位置θ02’は、式(4)を用いて求める。
θ02’=θ2+ω21×(N02−n02) …(4)
なお、2回目の開放相区間を終了させる従来の回転位置θ02は、上述した1回目の開放相電圧のゼロ点と同様の方法で検出した、0回目の開放相電圧のゼロ点から式(5)で求める。
θ02=θ1+ω10×(N02−n01) …(5)
そして、N02のタイミングで回転位置をθ02からθ02’に更新し、以降はθ2とω21とに基づいて回転位置を計算する。
【0028】
3回目の開放相区間は同様に、ω12とθ2とに基づいて回転位置を計算し、次の開放相区間の開始タイミングを決定する。次の開放相区間を終了する回転位置θ03は式(6)で求める。
θ03=θ2+ω21×(N03−n02) …(6)
そして、タイミングN03で式(7)によりω32を、式(8)によりθ03’を求める。
ω32=(θ3−θ2)/360/(T32) …(7)
θ03’=θ3+ω32×(N03−n03) …(8)
【0029】
以降、上記のように処理を繰返すことで、開放相電圧に基づいて推定した回転位置、速度を順次更新して電動機を制御する。つまり、前回までの情報から、次の開放相と開放相区間とを決定し、開放相が終了したタイミングで近似関数から開放相のゼロ点を求め、それによって速度を計算する。速度と開放相ゼロ点の回転位置から、開放相が終了したタイミングの回転位置を再計算し、以降は再計算した回転位置と速度に基づいて推定した回転位置を更新し、電動機を制御すると共に次の開放相区間を決定する。
【0030】
図4は、上記の原理に基づいた回転位置の推定処理を示すフローチャートである。先ず、何れの相を開放とするかを決定し、また開放相区間の開始回転位置θAn,終了回転位置θBnを決定する(S1)。現在推定中の回転位置θestが開始回転位置θAnに達していなければ(NO)、回転位置θestの更新を式(9)により行う(S13)。尚、ωnn−1はnステップ時の回転数であり、Δtは制御周期である。
θest=θest+ωnn−1×Δt …(9)
そして、更新した回転位置θestに基づいてモータ制御を行い(S14)、ステップS2に戻る。
【0031】
回転位置θestが開始回転位置θAnに達すると(S2;YES)、回転位置θestが終了回転位置θBnに達していなければ(S3;NO)、選択した相を開放相として(S4)開放相電圧を検出する(S5)。検出した電圧は、回転位置推定部13に内蔵される記憶部に記憶される。それから、ステップS13に移行する。回転位置θestが終了回転位置θBnに達すると(S3;YES)開放相区間を終了して(S6)、当該区間内に得られた開放相電圧より近似関数を演算する(S7)。
【0032】
次に、近似関数より開放相電圧がゼロ点に達する時間t0nを推定し(S8)、その時間t0nに基づいて、ゼロ点に対応する回転位置θ0nを特定する(S9)。それから、前回求めたゼロ点対応の時間t0n−1及び回転位置θ0n−1を用いて回転数ωnn−1を求め(S10)、回転位置θestを式(10)で推定する(S11)。
θest=θ0n+ωnn−1×t0n …(10)
その後、ステップ数nをインクリメントしてから(S12)ステップS1に移行する。
【0033】
図7は、本実施形態の方法による回転位置の推定結果を示す。図4及び図6に示す処理により60度分解能で検出した開放相電圧のゼロ点に基づいて、回転位置が精度良く推定できている。この推定方法によれば、開放相電圧のゼロ点を正確に検出できなくても、近似関数により求めることができるので開放相区間を短くできる。その結果、180度通電方式に適用しても正弦波駆動状態を極力維持できるので、騒音やトルクリップルが低減される。
【0034】
以上のように本実施形態によれば、開放相決定部11は、3相のうち何れの相を開放相とするか決定し、決定した相を非通電状態にする。回転位置推定部13は、開放相電圧検出部12により検出された開放相電圧を記憶して、その開放相電圧から当該電圧のゼロ点を近似関数を用いて推定すると、そのゼロ点に基づいて電動機3の回転位置θestを推定する。
【0035】
これにより、従来の正弦波駆動センサレス方式を行う制御装置とほぼ同様の構成により、電動機3を停止状態から極低速の領域で駆動できる。したがって、特殊な位置検出電圧を印加することなく、電動機3のスムーズな加速を得ることが可能となる。また、電動機3の電圧を検出すれば良く、キャリア周波数に応じた電流の変化を検出するよりも検出が容易であり、キャリア周波数を高く設定できる。これは特に、インダクタンスが非常に小さい小型電動機の回転位置を推定する際に有効である。
【0036】
そして、回転位置推定部13は、記憶した開放相電圧より計算した1次近似関数を用いて、開放相電圧がゼロ点に達するタイミングを決定するので、簡単な近似関数を用いて前記タイミングを決定できる。た、開放相決定部11は、回転位置θestに基づいて、何れの相を開放相とするかを容易に決定できる。
【0037】
(その他の実施形態)
近似関数は、1次近似するものに限らず、例えば2次近似により曲線を求めても良い。
発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
図面中、2はインバータ部、3は同期電動機、5はPWM生成部、6は相電流検出部、11は開放相決定部、12は開放相電圧検出部、13は回転位置推定部である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11