特許第6810422号(P6810422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810422
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】空洞検査方法及び空洞検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01F 17/00 20060101AFI20201221BHJP
   G01F 22/02 20060101ALI20201221BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   G01F17/00 C
   G01F22/02
   E04G21/12 104Z
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-65562(P2017-65562)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-169239(P2018-169239A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年12月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 施工による公開/施工日:平成29年3月16日〜3月31日、施工場所:阪神高速東大阪線 東S327径間〜東S335径間(大阪府東大阪市西堤1丁目13−4)
(73)【特許権者】
【識別番号】515326321
【氏名又は名称】株式会社CORE技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】395013212
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラ建設
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】西 弘
(72)【発明者】
【氏名】城代 和行
(72)【発明者】
【氏名】小椋 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】小西 雄治
(72)【発明者】
【氏名】橋本 達朗
(72)【発明者】
【氏名】中村 定明
(72)【発明者】
【氏名】廣井 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】西口 裕之
【審査官】 谷垣 圭二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−150734(JP,A)
【文献】 特開昭59−218919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 17/00
E04G 21/12
G01F 22/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞のある剛部材を前記空洞に向かって穿孔し、
穿孔した孔を介して前記空洞に流体を流動し、
前記流体の流量、及び流体圧力を測定し、
測定した前記流体圧力の変化及び前記流量に基づいて、前記空洞の容積である空洞容量を検出し、
前記流体の流動時間、並びに、前記流動停止後の前記圧力が変動する圧力変動率を測定し、
前記空洞容量を、
前記流動時間及び前記圧力変動率並びに測定圧力の標準気圧に対する比率に基づいて補正する
空洞検査方法。
【請求項2】
前記流体を気体とするとともに、
前記気体を前記空洞から流出させる
請求項1に記載の空洞検査方法。
【請求項3】
前記空洞容量を、標準気圧に対する測定圧力の比率に基づいて補正する
請求項1または2に記載の空洞検査方法。
【請求項4】
前記流体を流動させる流動装置内部の容積に基づいて、前記空洞容量を補正する
請求項1乃至のうちいずれかに記載の空洞検査方法。
【請求項5】
内部に空洞のある剛部材において前記空洞に向かって穿孔した孔を介して前記空洞に流体を流動させる流動装置と、
前記流体の流量を測定する流量測定装置と、
前記流体の流体圧力を測定する圧力測定装置と、
前記流量測定装置によって測定した流量及び前記圧力測定装置によって測定した前記流体圧力の変化に基づいて、前記空洞の容積である空洞容量を検出する容量検出部とが備えられ
前記流体の流動時間、並びに、前記流動停止後の前記圧力が変動する圧力変動率を測定し、
前記容量検出部は、
前記空洞容量を、前記流動時間及び前記圧力変動率並びに測定圧力の標準気圧に対する比率に基づいて補正する構成である
空洞検査システム。
【請求項6】
前記流体を気体とするとともに、
前記流動装置が前記空洞から前記気体を流出させる真空ポンプで構成された
請求項に記載の空洞検査システム。
【請求項7】
前記容量検出部は、
前記空洞容量を、標準気圧に対する測定圧力の比率に基づいて補正する構成である
請求項またはに記載の空洞検査システム。
【請求項8】
前記容量検出部は、
前記流体を流動させる流動装置内部の容積に基づいて、前記空洞容量を補正する構成である
請求項乃至のうちいずれかに記載の空洞検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、プレストレストコンクリート構造物などの内部に空洞が生じるおそれがある剛部材における空洞の容積を検出する空洞検査方法及び空洞検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、既設構造物の維持管理について、例えば、プレストレストコンクリート構造物(以下において、PC構造物という)におけるシース内部のグラウト充填状態を確認することが重要視されている。しかしながら、シース内部のグラウト充填度は、外部から目視で確認することはできず、さまざまな検査方法が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の検査方法もそのような検査方法のひとつとして提案されている。特許文献1に記載の検査方法は、内部にシースが配置されたコンクリート部材の表面をインパクトハンマーで打撃して弾性波を入射し、表面に配置したAEセンサにて伝搬する弾性波を受信して、シース内のグラウトの充填状態を検査するものである。
しかしながら、特許文献1に記載の検査方法では、シースにおけるグラウトの充填状態はわかるものの、未充填であることが検出された場合であっても、その容量を計ることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−54140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、内部に空洞のある剛部材の空洞容量を検出できる空洞検査方法及び空洞検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、内部に空洞のある剛部材を前記空洞に向かって穿孔し、穿孔した孔を介して前記空洞に流体を流動し、前記流体の流量、及び流体圧力を測定し、測定した前記流体圧力の変化及び前記流量に基づいて、前記空洞の容積である空洞容量を検出し、前記流体の流動時間、並びに、前記流動停止後の前記圧力が変動する圧力変動率を測定し、前記空洞容量を、前記流動時間及び前記圧力変動率並びに測定圧力の標準気圧に対する比率に基づいて補正する空洞検査方法であることを特徴とする。
【0007】
またこの発明は、内部に空洞のある剛部材において前記空洞に向かって穿孔した孔を介して前記空洞に流体を流動させる流動装置と、前記流体の流量を測定する流量測定装置と、前記流体の流体圧力を測定する圧力測定装置と、前記流量測定装置によって測定した流量及び前記圧力測定装置によって測定した前記流体圧力の変化に基づいて、前記空洞の容積である空洞容量を検出する容量検出部とが備えられ、前記流体の流動時間、並びに、前記流動停止後の前記圧力が変動する圧力変動率を測定し、前記容量検出部は、前記空洞容量を、前記流動時間及び前記圧力変動率並びに測定圧力の標準気圧に対する比率に基づいて補正する構成である空洞検査システムであることを特徴とする。
【0008】
この発明により、剛部材内部の空洞の空洞容量を検出することができる。
詳述すると、内部に空洞のある剛部材を前記空洞に向かって穿孔した孔を介して前記空洞に流体を流動し、前記流体の流量、及び流体圧力を測定し、測定した前記流体圧力の変化及び前記流量に基づいて、前記空洞の容積である空洞容量を検出するため、例えば、流体圧力に基づいて空洞容量を検出する場合に比べて空洞容量を正確に検出することができる。したがって、目視できない内部の空洞を充填するために要するグラウト量を算出でき、充填量によってグラウトの充填度を推測することができる。
【0009】
さらに、プレストレストコンクリートにおけるシース内部の空洞である場合、空洞容量が検出できれば、既知であるシースの断面積に基づいて空洞距離を算出することができる。したがって、例えば、空洞距離に基づいて次の穿孔位置を決定することができる。
【0010】
また、前記流体の流動時間、並びに、前記流動停止後の前記圧力が変動する圧力変動率を測定し、前記空洞容量を、前記流動時間及び前記圧力変動率並びに測定圧力の標準気圧に対する比率に基づいて補正するため、空洞内の流体の流動した後の漏れの影響を低減させて空洞容量を検出することができる。
【0011】
詳述すると、空洞にクラックなどが生じている場合、圧力を変化させて空洞内の流体を流動させた後に、クラックを通じた流体の漏れによって、圧力が変化したり、流量が変化したりするが、前記流体の流動時間、並びに、前記流動停止後の前記圧力が変動する圧力変動率を測定し、前記空洞容量を、前記流動時間及び前記圧力変動率並びに測定圧力の標準気圧に対する比率に基づいて補正することで流体を流動した後の空洞内の漏れの影響を低減させて空洞容量を検出することができる。
【0012】
また、検出システムの能力による影響を低減させて空洞容量を検出することができる。
詳述すると、検出システムの能力が高い場合や空洞容量が小さい場合、空洞容量の検出が短時間で行うことができる。これに対し、検出システムの能力が低い場合や空洞容量が大きい場合、空洞容量の検出に時間がかかる。これに対し、前記流体の流動時間、並びに、前記流動停止後の前記圧力が変動する圧力変動率を測定し、前記空洞容量を、前記流動時間及び前記圧力変動率並びに測定圧力の標準気圧に対する比率に基づいて補正することにより、システムの能力による影響を排除した空洞容量の検出を行うことができる。
【0013】
なお、前記流体の流動は、流体を流出させてもよいし、流体を流入させてもよい。
また、前記流体は、気体、液体あるいはゲル状体など、前記空洞に流出(流入)させることができる流体であればいずれの状体であってもよい。
【0014】
さらに、上述容量を検出とは、測定結果を検出結果としてもよいし、検出結果に基づいて算出した結果を検出結果としてもよい。
上記剛部材は、例えば、グラウトの未充填部があるシースを内部に有するプレストレストコンクリートや、外ケーブル構造におけるグラウトの未充填部があるシース自体、さらには、意図しない空隙を内部に有するコンクリート部材などとすることができる。
【0015】
この発明の態様として、前記流体を気体とするとともに、前記気体を前記空洞から流出させてもよく、前記流動装置が前記空洞から前記気体を流出させる真空ポンプで構成されてもよい。
この発明により、より簡易な構造で空洞容量を検出することができる。
【0016】
例えば、液体を空洞に流入させて空洞容積を検出する場合、流入させる液体を準備する必要があるが、真空ポンプで空洞にある気体を流出させるため、簡素な構造で空洞容量を検出することができる。したがって、コンパクトな空洞検査システムを構成できるため、作業環境の良くない検査現場であっても、安全かつ容易に空洞容量を検出することができる。
【0017】
また、例えば、流体を流入させて空洞容量を検出する場合において、流体の流入圧力によって、空洞に発生しているクラック等が拡大するおそれがあるが、気体を流出させて空洞容量を検出するため、空洞が拡大するおそれがなく、安全に空洞容量を検出することができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記空洞容量を、標準気圧に対する測定圧力の比率に基づいて補正してもよい。
この発明により、測定圧力や温度などによる気圧の変化などの影響を低減させて空洞容量を検出することができる。
【0019】
詳述すると、例えば、気温が低い場合、流動させる流体は凝縮しており、気温が高い場合流体は膨張している。そのため、前記流体の流量、及び流体圧力の一方に基づいて空洞容量を検出する場合、測定圧力や気温によって、同じ空洞容量であっても測定された前記流体の流量や流体圧力は変化するおそれがある。これに対し、標準気圧に対する測定圧力の比率に基づいて測定結果に基づく空洞容量を補正することによって、検出された空洞容量の圧力の変化に伴う変動を補正することができる。
【0020】
また、この発明の態様として、前記流体を流動させる流動装置内部の容積に基づいて、前記空洞容量を補正してもよい。
この発明により、流動装置の容量を除した空洞容量を検出することができる。
【0021】
詳述すると、測定状態において流動装置は空洞と導通するため、空洞容量に対して流動装置の容積が大きくなると、検出した空洞容量に流動装置の容量が付加されることとなる。殊に、空洞容量が小さい場合、その影響は大きくなるが、前記流体を流動させる流動装置内部の容積に基づいて、前記空洞容量を補正することで、流動装置の容量を除した空洞容量を検出することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明により、内部に空洞のある剛部材の空洞容量を検出できる空洞検査方法及び空洞検査システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】空洞検査システムの概略図。
図2】空洞検査方法の概念を説明する説明図。
図3】空洞検査方法のフロー図。
図4】空洞検査した結果のグラフ。
図5】空洞検査についての実証実験の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
例えば、内部のシース110が配置されたPC部材100におけるシース110内部に空洞Sがある場合等において、空洞Sの容量を検出する空洞検査システム1及び空洞検査システム1を用いた空洞容量検査方法について以下で説明する。
【0025】
まず、PC部材100について説明する。
PC部材100は、いわゆるプレストレストコンクリート部材であり、内部にシース110が配置され、シース110を挿通し、撚線などで構成された緊張部材120によって、コンクリート部材130にプレストレスを作用させている。
【0026】
なお、緊張部材120が挿通したシース110の内部には、無収縮モルタルなどで構成されたグラウト材111が充填されているが、グラウト材111が充填されていない空洞Sが存在する場合がある。
【0027】
このように、空洞Sがシース110内に存在すると、シース110内で緊張部材120が露出しており、緊張部材120が腐食して、所望のプレストレスを作用させることができなくなるおそれがある。そのため、空洞Sに対してグラウト材111を充填する必要があるが、空洞Sは、PC部材100内部のシース110の中にあるため、外部から目視することはできず、空洞Sにグラウト材111を充填することが困難である。そこで空洞検査システム1を用い、空洞Sの容量を検出することが重要となる。
【0028】
このように、シース110内部に空洞Sがある場合に、空洞Sの容量を検出する空洞検査システム1は、制御装置10と、検出ユニット20とで構成している。
制御装置10は、いわゆるパーソナルコンピュータの制御部であり、CPUとROMとRAMで構成されており、制御装置10には、測定結果に基づいて空洞Sの容量を検出する容量検出部11と、測定結果を補正する補正制御部12という機能的構成を備えている。
【0029】
検出ユニット20は、真空ポンプ21、流量センサ22、圧力センサ23、記録装置24、及び空気フィルタ25で構成され、真空ポンプ21からつながるエアーホース26に、流量センサ22、圧力センサ23及び空気フィルタ25が配置され、エアーホース26の先端に吸入口27が装着されている。
【0030】
真空ポンプ21は、後述する流量センサ22の検出範囲を満足する性能レベルのポンプであり、気体を吸引する構成であり、逆流防止機構付吸気口バルブ(図示省略)に、エアーホース26が接続されている。
【0031】
流量センサ22は、超小型センサヘッドを有し、質量流量を測定する流量センサであるが、体積流量タイプの流量センサを用いてもよい。また、流量センサ22は記録装置24に接続され、アンプユニット(図示省略)を介して、流速(min−1)を電圧に変換して記録するように構成されている。
【0032】
圧力センサ23は、所定の圧力範囲の気体の圧力を測定可能であり、記録装置24に接続され、アンプユニット(図示省略)を介して、空気圧(MPa)を電圧に変換して記録するように構成されている。
【0033】
記録装置24は、流量センサ22及び圧力センサ23の測定結果を記録するとともに、測定結果を波形表示する波形表示部241を備えている。また、記録装置24は、制御装置10に接続され、制御装置10に測定結果を送信可能に構成している。
空気フィルタ25は、通過する気体から不純物を取り除くフィルタである。
【0034】
このように構成された空洞検査システム1を用いた空洞Sの容量検出処理では、真空ポンプ21を用いてシース110内の気体を排出した際における気体排出中のシース110内部の圧力と排出した気体量よりシース110内の空洞Sの容積(以下において空洞容量という)を算出するものであり、図2に示すように、シース110内の空洞Sの容積の大小により排出した気体量と内部圧力の変化が異なる点を利用した測定原理によるものである。
【0035】
具体的に、空洞検査システム1を用いた空洞Sの空洞容量の検出は、図3に示すように、まず、PC部材100においてシース110に向かって検査孔101を穿孔し(ステップs1)、検査孔101を通じて、シース110内部の充填状況を確認する(ステップs2)。
【0036】
なお、検査孔101は、あらかじめ、弾性波やX線等を用いた別の方法で空洞Sの位置を検出してから穿孔してもよいし、所定の間隔を設けて複数箇所穿孔して検査孔101を設けてもよい。
また、検査孔101を通じたシース110内部の充填状況の確認は、検査孔101を通じて目視で行ってもよいし、ファイバースコープ等の撮影手段で撮影して確認してもよい。
【0037】
検査孔101を通じて、シース110内部を確認し、シース110内部にグラウト材111が充填され、空洞Sが形成されていない場合(ステップs3:Yes)、空洞Sの容量検出処理は終了する。
【0038】
逆に、検査孔101を通じて、シース110内部を確認した結果、シース110内部にグラウト材111が充填されていない空洞Sが存在する場合は、検出ユニット20をセッティングするとともに、検出ユニット20の吸入口27を検査孔101に装着する(ステップs4)。
【0039】
吸入口27を検査孔101に確実に取り付けた後、記録装置24を記録可能状態にセッティングし、そのうえで真空ポンプ21を稼働させ(ステップs5)、流量センサ22及び圧力センサ23の測定結果を記録装置24に記録する(ステップs6)。
これを所定時間経過するまで継続し(ステップs7:No)、所定時間経過後(ステップs7:Yes)、真空ポンプ21を停止する(ステップs8)。
【0040】
なお、ステップs7における所定時間とは、真空ポンプ21の稼働によって、波形表示部241を確認するなどして、圧力センサ23の測定結果から、測定圧力が所定圧力まで低下している、あるいは真空ポンプ21の作動圧力が所定圧力まで上昇するまでの時間である。
【0041】
真空ポンプ21の停止後(ステップs8)、記録装置24による記録を所定時間経過するまで継続し(ステップs9:No)、所定時間経過後(ステップs9:Yes)、記録装置24の記録を停止する(ステップs10)。
【0042】
なお、ステップs9における所定時間とは、真空ポンプ21の稼働停止後に、波形表示部241を確認するなどして、圧力センサ23の測定結果から、空気漏れによる測定圧力が所定圧力まで上昇するまでの時間である。
【0043】
ここまでの空洞容量検出は、検出ユニット20によって実行し、検出ユニット20による検出処理の終了後、記録装置24に記録した測定結果を制御装置10に取り込み、制御装置10によって、空洞Sの空洞容量を算出する(ステップs11)。
【0044】
具体的には、ステップs11では、記録装置24に記録された測定結果に基づいて空洞Sの空洞容量を算出するに当たり、測定結果を補正する補正制御部12によって以下の補正処理のうちいずれか、あるいはすべての処理を実行する。
【0045】
補正制御部12による補正処理のうち第1の補正処理は、真空ポンプ21の稼働によって空洞Sの内部圧力が完全に真空状態にならないことに対する補正である。詳しくは、空洞S内部が真空状態となるまで真空ポンプ21を稼働させるものの、空気漏れや真空ポンプ21の性能によって、所定圧力までしか減圧できないことが多く、ボイル・シャルルの法則に基づき、「数式1」によって真空状態まで減圧しきれなかった空気量を圧力比で補正する。なお、大気圧は標準気圧0.0101325MPaを用いる。
【数1】
【0046】
また、この第1補正処理により、圧力比により補正した結果の一例を「表1」に示す。
【表1】
【0047】
第2の補正処理では、図4に示すように、真空ポンプ21の停止後(ステップs8)に、検出ユニット20のいずれかや空洞Sからの空気漏れによって流量センサ22に測定結果が上昇することがあり、検出ユニット20や空洞Sからの空気漏れに対する補正を行うものである。
【0048】
具体的には、記録装置24に記録された流量センサ22による測定結果から、真空ポンプ21の停止後(ステップs8)の時間当たりの上昇量を算出して補正値として用い、「数式2」によって補正する。なお、「数式2」では第1の補正処理を実行し補正された値に対して空気漏れの補正を行っている。
【数2】
【0049】
この第2の補正処理によって補正した結果の一例を「表2」に示す。
【表2】
なお、第1の補正処理を実行せず、補正されていない、記録装置24に記録された検出結果に対して第2の補正処理を実行してもよい。
【0050】
第3の補正処理では、検出ユニット20を構成する、真空ポンプ21、流量センサ22、圧力センサ23、記録装置24、空気フィルタ25及びエアーホース26の容積(以下において、検出ユニット20の容積)が測定結果に含まれるため、補正制御部12によって検出ユニット20の容積を控除する補正を行う。なお、第3の補正処理を実行するに当たり予め、検出ユニット20の容積を求め、求めた検出ユニット20の容積値を用いて「数式3」によって補正する。
【0051】
なお、「数式3」では第1の補正処理及び第2の補正処理を実行し補正された値に対して検出ユニット20の容積を控除している。
【数3】
【0052】
この第3の補正処理によって補正した結果の一例を「表3」に示す。
【表3】
【0053】
なお、例えば、第1の補正処理及び第2の補正処理を実行せず、補正されていない記録装置24に記録された検出結果に対して補正制御部12によって第3の補正処理を実行してもよいし、第1の補正処理及び第2の補正処理のうち一方のみを実行して補正された値に対して第3の補正処理を実行してもよい。
【0054】
このように、ステップs11において、空洞Sの空洞容量を算出する際に、第1乃至第3の補正処理の少なくともいずれかを実行することによって、さまざまな要素による影響を排除した空洞Sの空洞容量を求めることができるが、第1乃至第3の補正処理を実行することなく、容量検出部11によって、記録装置24に記録された測定結果に基づいて空洞Sの空洞容量を求めてもよい。
【0055】
上述のような空洞検査システム1を用いた空洞Sの空洞容量を検出する検出方法について実施した実証実験について、以下で説明する。
実証実験では、空洞検査システム1を用いた空洞Sの空洞容量を検出する検出方法の精度確認を目的として、実構造物において完全充填されていないグラウト状況、つまりシース110内部に空洞Sが存在している状態を模擬した供試体による実験を実施した。
【0056】
具体的には、透明塩ビ管をシース110に見立て、透明塩ビ管の内部にグラウト材111を充填するとともに、空洞Sを形成する。このとき、空洞Sの容量を複数設定する。さらに、実際のシース110と同じように、配置角度を25°と12°とした。また、漏気状態の有無を設定した。これらの設定によって図5に示す複数の供試体を準備する。
【0057】
そして、各供試体における空洞Sの容量はあらかじめ測定しておき、空洞検査システム1を用いた空洞Sの空洞容量の検出方法によって検出された結果と比較した。その比較結果を表4に示す。なお、空洞検査システム1を用いた空洞Sの空洞容量の検出方法によって検出された結果は、上記第1の補正処理乃至第3の補正処理のすべての補正処理を行った結果である。
【表4】
上記表4から分かるように、一割程度の誤差が生じるパターンも存在するが概ね少ない誤差で空洞Sの容量を検出できることが確認できた。
【0058】
このように、内部のシース110に空洞SのあるPC部材100において空洞Sに向かって穿孔した検査孔101を介して空洞Sに空気を流出させる真空ポンプ21と、空気の流量を測定する流量センサ22と、空気の流出圧力を測定する圧力センサ23と、流量センサ22によって測定した流量及び圧力センサ23の空気圧力の変化に基づいて、空洞Sの容積である空洞容量を検出する制御装置10とが備えられた空洞検査システム1を用い、穿孔した検査孔101を介して空洞Sから空気を流出させ、空気の流量、及び空気圧力を測定し、測定した流量及び空気圧力の変化に基づいて、空洞Sの容積である空洞容量を検出する空洞検査方法は、PC部材100内部に配置されたシース110内部に存在する空洞Sの空洞容量を検出することができる。
【0059】
詳述すると、内部のシース110に空洞SのあるPC部材100を空洞Sに向かって穿孔した検査孔101を介して空洞Sから空気を流出させ、空気の流量、及び空気圧力を測定し、測定した流量及び空気圧力の変化に基づいて、空洞容量を検出するため、空気の流量、及び空気圧力の一方に基づいて空洞容量を検出する場合に比べて空洞容量を正確に検出することができる。したがって、目視できないシース110内部の空洞Sを充填するためのグラウト材111の必要量を算出でき、充填作業時において、グラウト材111の充填量によって空洞Sに対するグラウト材111の充填度を推測することができる。
【0060】
検出ユニット20では、真空ポンプ21を用いて空気を空洞Sから流出させて空洞Sの空洞容量を求めるため、より簡易な構造で検出ユニット20を構成し、空洞容量を検出することができる。
例えば、液体を空洞Sに流入させて空洞容量を検出する場合、流入させる液体を準備する必要があるが、真空ポンプ21で空洞Sにある空気を流出させるため、簡素な構造で空洞容量を検出することができる。したがって、コンパクトな検出ユニット20を構成できるため、作業環境の良くない検査現場であっても、安全かつ容易に空洞Sの容量を検出することができる。
【0061】
また、例えば、空気を流入させて空洞容量を検出する場合において、空気の流入圧力によって、空洞Sに発生しているクラック等が拡大するおそれがあるが、空気を流出させて空洞容量を検出するため、空洞Sが拡大するおそれがなく、安全に空洞容量を検出することができる。
【0062】
また、空洞容量として、標準気圧に対する測定圧力の比率に基づいて補正する第1の補正処理を実行することにより、温度などによる気圧の変化の影響を低減させて空洞容量を検出することができる。
【0063】
詳述すると、例えば、気温が低い場合、流出させる空気は凝縮しており、気温が高い場合空気は膨張している。そのため、空気の流量、及び空気圧力に基づいて空洞容量を検出する場合、測定圧力や気温によって、同じ空洞容量であっても測定された空気の流量や空気圧力は変化するおそれがある。これに対し、第1の補正処理では、標準気圧に対する測定圧力の比率に基づいて測定結果に基づく空洞容量を補正することによって、検出された空洞容量の圧力の変化に伴う変動を補正することができる。
【0064】
また、空気の流出時間、並びに、真空ポンプ21停止後の圧力が変動する圧力変動率を測定し、空洞容量を、流出時間及び圧力変動率並びに測定圧力の標準気圧に対する比率に基づいて補正する第2の補正処理を実行することにより、空気を流出した後の空洞S内の漏れの影響を低減させて空洞容量を検出することができる。
【0065】
詳述すると、空洞Sにクラックなどが生じている場合、圧力を変化させて空洞S内の空気を流出させた後に、クラックを通じた空気の漏れによって、圧力が変化したり、流量が変化したりするが、空気の流出時間、並びに、流出停止後の圧力が変動する圧力変動率を測定し、空洞容量を、流出時間及び圧力変動率並びに測定圧力の標準気圧に対する比率に基づいて補正することで空洞S内の空気を流出した後の漏れの影響を低減させて空洞容量を検出することができる。
【0066】
また、検出ユニット20の能力による影響を低減させて空洞容量を検出することができる。
詳述すると、検出ユニット20の能力が高い場合や空洞容量が小さい場合、空洞容量の検出が短時間で行うことができる。これに対し、検出ユニット20の能力が低いや空洞容量が大きい場合、空洞容量の検出に時間がかかる。これに対し、空気の流出時間、並びに、流出停止後の圧力が変動する圧力変動率を測定し、空洞容量を、流出時間及び圧力変動率並びに測定圧力の標準気圧に対する比率に基づいて補正することにより、検出ユニット20の能力による影響を排除した空洞容量の検出を行うことができる。
【0067】
また、空気を流出させる検出ユニット20内部の容積に基づいて、空洞容量を補正する第3の補正処理を実行することにより、検出ユニット20の容量を除した空洞容量を検出することができる。
詳述すると、測定状態において検出ユニット20は空洞Sと導通するため、空洞容量に対して検出ユニット20の容積が大きくなると、検出した空洞容量に検出ユニット20の容量が付加されることとなる。殊に、空洞容量が小さい場合、その影響は大きくなるが、空気を流出させる検出ユニット20内部の容積に基づいて空洞容量を補正する第3の補正処理を実行することで、検出ユニット20の容量を除した空洞容量を検出することができる。
【0068】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明の空洞は空洞Sに対応し、以下同様に、
剛部材はPC部材100に対応し、
孔は検査孔101に対応し、
流体及び気体は空気に対応し、
流動装置及び真空ポンプは真空ポンプ21に対応し、
流量測定装置は流量センサ22に対応し、
圧力測定装置は圧力センサ23に対応し、
容量検出部は制御装置10に対応し、
空洞検査システムは空洞検査システム1に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0069】
例えば、上述の説明では、真空ポンプ21を用いて空洞S内部の空気を流出させて空洞Sの空洞容量を検出したが、空洞S内部にある液体を流出させて空洞Sの空洞容量を求めてもよいし、空気以外の気体を空洞Sに流入出させて空洞Sの空洞面積を求めてもよい。
【0070】
また、上述の説明では、PC部材100の内部に配置されたシース110内部に存在する空洞Sの空洞容量を検出したが、空洞Sに通じる検査孔101が穿孔できれば、PC部材100でなくてもよく、例えば、外ケーブル構造におけるグラウトの未充填部があるシース110に対して空洞検査システム1を用いて内部の空洞Sの空洞容量を検出してもよく、意図しない空洞Sを内部に有するコンクリート部材などに対して、空洞検査システム1を用いて空洞Sの空洞容量を検出してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…空洞検査システム
10…制御装置
21…真空ポンプ
22…流量センサ
23…圧力センサ
100…PC部材
101…検査孔
S…空洞
図1
図2
図3
図4
図5