特許第6810445号(P6810445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810445
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ハサミ
(51)【国際特許分類】
   B26B 13/00 20060101AFI20201221BHJP
   B26B 13/28 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B26B13/00 A
   B26B13/28 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-171291(P2016-171291)
(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公開番号】特開2018-33804(P2018-33804A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236964
【氏名又は名称】富士インパルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 雅弘
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭36−018091(JP,Y1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0020067(US,A1)
【文献】 米国特許第05875554(US,A)
【文献】 特開2005−319228(JP,A)
【文献】 特開平09−084968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 13/00
B26B 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの端部に刃が形成された、第一刃体、第二刃体、第三刃体、及び第四刃体と、
前記第一刃体と前記第二刃体とを相対的に回転可能に連結する第一連結部と、
前記第三刃体と前記第四刃体とを相対的に回転可能に連結する第二連結部と、
前記第二刃体及び前記第三刃体に対し、刃が形成されている側とは反対側の端部で連結された第一把持部と、
前記第一刃体及び前記第四刃体に対し、刃が形成されている側とは反対側の端部で連結された第二把持部と、
前記第二刃体の延在方向に関して前記第一連結部及び前記第二連結部と前記第一把持部との間の位置に配置されており、前記第二刃体及び前記第三刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第一スペーサ部と、
前記第一刃体の延在方向に関して前記第一連結部及び前記第二連結部と前記第二把持部との間の位置に配置されており、前記第一刃体及び前記第四刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第二スペーサ部と、
前記第二刃体の延在方向に関して前記第一連結部及び前記第二連結部を基準として前記第一把持部とは反対側に配置されており、前記第二刃体及び前記第三刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第三スペーサ部とを備え、
前記第二刃体及び前記第三刃体は、前記第一刃体及び前記第四刃体が対向する方向に関して前記第一刃体及び前記第四刃体に挟まれる側である内側に配置されており、
前記第二刃体に刃が形成されている領域と、前記第三刃体に刃が形成されている領域とが相互に対向しており、
前記第一刃体に刃が形成されている領域と、前記第四刃体に刃が形成されている領域は、共に、前記第一刃体及び前記第四刃体が対向する方向に関して前記第二刃体及び前記第三刃体とは反対側である外側に位置していることを特徴とするハサミ。
【請求項2】
それぞれの端部に刃が形成された、第一刃体、第二刃体、第三刃体、及び第四刃体と、
前記第一刃体と前記第二刃体とを相対的に回転可能に連結する第一連結部と、
前記第三刃体と前記第四刃体とを相対的に回転可能に連結する第二連結部と、
前記第二刃体及び前記第三刃体に対し、刃が形成されている側とは反対側の端部で連結された第一把持部と、
前記第一刃体及び前記第四刃体に対し、刃が形成されている側とは反対側の端部で連結された第二把持部と、
前記第二刃体の延在方向に関して前記第一連結部及び前記第二連結部と前記第一把持部との間の位置に配置されており、前記第二刃体及び前記第三刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第一スペーサ部と、
前記第一刃体の延在方向に関して前記第一連結部及び前記第二連結部と前記第二把持部との間の位置に配置されており、前記第一刃体及び前記第四刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第二スペーサ部と、
前記第一刃体の延在方向に関して前記第一連結部及び前記第二連結部を基準として前記第二把持部とは反対側に配置されており、前記第一刃体及び前記第四刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第三スペーサ部とを備え、
前記第二刃体及び前記第三刃体は、前記第一刃体及び前記第四刃体が対向する方向に関して前記第一刃体及び前記第四刃体に挟まれる側である内側に配置されており、
前記第二刃体に刃が形成されている領域と、前記第三刃体に刃が形成されている領域とが相互に対向しており、
前記第一刃体に刃が形成されている領域と、前記第四刃体に刃が形成されている領域は、共に、前記第一刃体及び前記第四刃体が対向する方向に関して前記第二刃体及び前記第三刃体とは反対側である外側に位置していることを特徴とするハサミ。
【請求項3】
前記第三スペーサ部は、前記第一連結部及び前記第二連結部の位置から、前記第二刃体及び前記第三刃体の先端に向かう方向に離間して、複数の箇所に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のハサミ。
【請求項4】
前記第三スペーサ部は、前記第一連結部及び前記第二連結部の位置から、前記第一刃体及び前記第四刃体の先端に向かう方向に離間して、複数の箇所に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のハサミ。
【請求項5】
前記第二スペーサ部は、前記第一連結部及び前記第二連結部の位置における前記第一刃体と前記第四刃体との間の間隔よりも、当該第二スペーサ部が配置されている位置における前記第一刃体と前記第四刃体との間の間隔が拡がるように長さが設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のハサミ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハサミに関し、特に定められた幅で切断するために用いられるハサミに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートシール技術は、種々の商品を包装する際に広く利用されている。これは、プラスチックなどで構成されたフィルムを加熱して熱融着することで密閉化する技術である。
【0003】
ところで、シーリングを行った後であっても、十分な強度が保たれていなければ完全な密閉状態が実現されたことにはならず、好ましくない。そこで、ヒートシール後の包装袋の強度の試験が、下記非特許文献1のJIS規格に規定されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】JIS Z 0238
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記非特許文献1の規格によれば、対象となる試験片の幅が15.0±0.1mmと規定されており、少なくとも15.0mmをセンターとして僅かな誤差を有する幅の試験片を用いるのが好ましいとされている。
【0006】
この規格に基づく強度試験を行うにあたり、一般的にはフィルムに定規を当てて、カッターナイフで切り出す方法が行われている。この方法で試験片を作成した場合、試験片の幅には不可避的にばらつきが発生する。これまでは、この程度のばらつきは許容範囲内であると考えられていた。その理由は以下の2点にある。
【0007】
通常、正しく熱融着された包材は、当該規格で参考値として挙げられている各ケースで必要とされるヒートシール強さに対し、十分に高い値(例えば2倍を超える)を示す。シール強さの値は試験片の幅にほぼ比例すると考えられる。従って、実務的には、僅かな幅のバラツキは許容できる。
【0008】
しかし、上記の事情は、要求強度と試験結果の差が十分に大きい場合に限って考慮されるべきものである。つまり、試験結果が要求される強度に近い場合には、実際の強度が要求される強度を下回ってしまうおそれがある。すなわち、シール強度を正しく評価する観点からは、なるべく要求される幅の試験片を作成し、その試験片を用いて強度測定をするのが好ましい。
【0009】
また、定規とカッターを用いてフィルムを切断するのは、作業的には煩わしい。他方、一般のハサミを使ってフィルムを切断しようとした場合、切断時にフィルムが容易に変形するため、正しい幅で切断することが困難である。つまり、フィルムにハサミを入れたときの、ハサミの先端部に位置するフィルムの幅と、ハサミの根元部分に位置するフィルムの幅が異なってしまうことがある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑み、高い精度で所定の幅を切断することのできるハサミを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るハサミは、
それぞれの端部に刃が形成された、第一刃体、第二刃体、第三刃体、及び第四刃体と、
前記第一刃体と前記第二刃体とを相対的に回転可能に連結する第一連結部と、
前記第三刃体と前記第四刃体とを相対的に回転可能に連結する第二連結部と、
前記第二刃体及び前記第三刃体に対し、刃が形成されている側とは反対側の端部で連結された第一把持部と、
前記第一刃体及び前記第四刃体に対し、刃が形成されている側とは反対側の端部で連結された第二把持部と、
前記第一連結部及び前記第二連結部と前記第一把持部との間の位置に配置されており、前記第二刃体及び前記第三刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第一スペーサ部と、
前記第一連結部及び前記第二連結部と前記第二把持部との間の位置に配置されており、前記第一刃体及び前記第四刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第二スペーサ部と、
前記第一連結部及び前記第二連結部を基準として前記第一把持部とは反対側に配置されており、前記第二刃体及び前記第三刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第三スペーサ部とを備え、
前記第二刃体及び前記第三刃体は、前記第一刃体及び前記第四刃体の内側に配置されており、
前記第二刃体に刃が形成されている領域と、前記第三刃体に刃が形成されている領域とが相互に対向しており、
前記第一刃体に刃が形成されている領域と、前記第四刃体に刃が形成されている領域は、共に外側に位置していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るハサミは、
それぞれの端部に刃が形成された、第一刃体、第二刃体、第三刃体、及び第四刃体と、
前記第一刃体と前記第二刃体とを相対的に回転可能に連結する第一連結部と、
前記第三刃体と前記第四刃体とを相対的に回転可能に連結する第二連結部と、
前記第二刃体及び前記第三刃体に対し、刃が形成されている側とは反対側の端部で連結された第一把持部と、
前記第一刃体及び前記第四刃体に対し、刃が形成されている側とは反対側の端部で連結された第二把持部と、
前記第一連結部及び前記第二連結部と前記第一把持部との間の位置に配置されており、前記第二刃体及び前記第三刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第一スペーサ部と、
前記第一連結部及び前記第二連結部と前記第二把持部との間の位置に配置されており、前記第一刃体及び前記第四刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第二スペーサ部と、
前記第一連結部及び前記第二連結部を基準として前記第二把持部とは反対側に配置されており、前記第一刃体及び前記第四刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第三スペーサ部とを備え、
前記第二刃体及び前記第三刃体は、前記第一刃体及び前記第四刃体の内側に配置されており、
前記第二刃体に刃が形成されている領域と、前記第三刃体に刃が形成されている領域とが相互に対向しており、
前記第一刃体に刃が形成されている領域と、前記第四刃体に刃が形成されている領域は、共に外側に位置していることを特徴とする。
【0013】
前記第三スペーサ部が前記第二刃体及び前記第三刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成されている場合、当該第三スペーサ部は、前記第一連結部及び前記第二連結部の位置から、前記第二刃体及び前記第三刃体の先端に向かう方向に離間して、複数の箇所に設けられているものとしても構わない。同様に、前記第三スペーサ部が前記第一刃体及び前記第四刃体に対して相互に対向する方向に連結するように形成されている場合、当該第三スペーサ部は、前記第一連結部及び前記第二連結部の位置から、前記第一刃体及び前記第四刃体の先端に向かう方向に離間して、複数の箇所に設けられているものとしても構わない。
【0014】
前記第二スペーサ部は、前記第一連結部及び前記第二連結部の位置における前記第一刃体と前記第四刃体との間の間隔よりも、当該第二スペーサ部が配置されている位置における前記第一刃体と前記第四刃体との間の間隔が拡がるように長さが設定されている
【発明の効果】
【0015】
本発明のハサミによれば、高い精度で所定の幅を切断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係るハサミの模式的な斜視図である。
図2】一実施形態に係るハサミの模式的な平面図である。
図3】一実施形態に係るハサミの模式的な正面図である。
図4】ハサミで試験片を切断する様子を示す模式的な図面である。
図5】別実施形態に係るハサミの模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るハサミの実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の図面において、図面上の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致しない。
【0018】
図1は、本発明に係るハサミの一実施形態の模式的な斜視図である。図2は、本発明に係るハサミの模式的な平面図である。図3は、本発明に係るハサミの模式的な正面図である。なお、各図面において、図示の都合上、隠れて表示されない要素には、カッコ書きで符号を付している。
【0019】
図1図3に示すハサミ1は、第一刃体10、第二刃体20、第三刃体30、及び第四刃体40を有する。第一刃体10の端部には刃11が設けられている。第二刃体20の端部には刃21が設けられている。第三刃体30の端部には刃31が設けられている。第四刃体40の端部には刃41が設けられている。
【0020】
ハサミ1は、第一刃体10と第二刃体20とを相対的に回転可能に連結する第一連結部3、及び、第三刃体30と第四刃体40とを相対的に回転可能に連結する第二連結部5を備える。第二刃体20は、第一刃体10よりも内側に配置されており、第三刃体30は、第四刃体40よりも内側に配置されている。
【0021】
図2は、ハサミ1を第一連結部3側から見たときの平面図に対応する。すなわち、図2には、第一刃体10及び第二刃体20が図示されており、第二連結部5、第三刃体30、及び第四刃体40は紙面の裏側に現れるため、図示されていない。
【0022】
第一刃体10の刃11は、第一刃体10の面であって、第二刃体20とは反対側の面、すなわち外側の面に設けられている。第二刃体20の刃21は、第二刃体20の面であって、第一刃体10とは反対側の面、すなわち、第三刃体30に対向する側の面に設けられている。第三刃体30の刃31は、第三刃体30の面であって、第四刃体40とは反対側の面、すなわち、第二刃体20に対向する側の面に設けられている。第四刃体40の刃41は、第四刃体40の面であって、第三刃体30とは反対側の面、すなわち外側の面に設けられている。
【0023】
ハサミ1は、第二刃体20及び第三刃体30に対し、刃(21,31)が形成されている側とは反対側の端部で連結された第一把持部51、及び、第一刃体10及び第四刃体40に対し、刃(11,41)が形成されている側とは反対側の端部で連結された第二把持部52とを有する。
【0024】
ハサミ1は、連結部(3,5)と第一把持部51との間の位置に配置され、第二刃体20及び第三刃体30に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第一スペーサ部61を有する。
【0025】
ハサミ1は、連結部(3,5)と第二把持部52との間の位置に配置されており、第一刃体10及び第四刃体40に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第二スペーサ部62を有する。
【0026】
ハサミ1は、連結部(3,5)を基準として第一把持部51とは反対側に配置されており、第二刃体20及び第三刃体30に対して相互に対向する方向に連結するように形成された第三スペーサ部63を有する。本実施形態のハサミ1は、連結部(3,5)の位置から刃先に向かう方向に離間した2箇所に第三スペーサ部63を有している。この第三スペーサ部63は、シムなどで寸法を微細に調整することが可能に構成されているものとしても構わない。
【0027】
図3は、第二把持部52を正面にしてハサミ1を見た時の正面図に対応する。このため、図3には第三スペーサ部63が正面側に現れている。図3において、第二把持部52の裏側には第一把持部51が存在し、この第一把持部51に指を掛けて動かすと、第三スペーサ部63によって連結された第二刃体20及び第三刃体30が一体として図3の紙面手前に向けて回転移動する。
【0028】
次に、ハサミ1を用いて切断するときの状態について説明する。図4は、ハサミ1を用いてヒートシール後のフィルム8を切断するときの様子を模式的に示している。ハサミ1は、ヒートシール後のフィルムのシーリング強度を測定するための試験片を作成するための用途に用いられる。「発明が解決しようとする課題」の項で上述したように、この強度試験を行うに際しては、試験片の幅が規定されており、この条件を満たすように試験片を切断することが好ましい。
【0029】
なお、図4において、フィルム8においてシーリングされている領域を符号9で図示している(クロスハッチング領域)。また、図4では、フィルム8の裏側に隠れてしまう刃体(10,40)を破線にて図示している。
【0030】
第一把持部51と第二把持部52とに指を掛けてハサミ1を動かすと、第一刃体10と第二刃体20が第一連結部3を基準として開閉し、同時に、第三刃体30と第四刃体40が第二連結部5を基準として開閉する。内側に配置されている第二刃体20と第三刃体30とは第三スペーサ部63において離間距離が固定されている。外側に配置されている第一刃体10と第四刃体40とは、第一スペーサ部61において連結されると共に、上記連結部(3,5)によって、それぞれ第二刃体20及び第三刃体30とも連結されている。
【0031】
この結果、内側に位置する第二刃体20及び第三刃体30は、第三スペーサ部63によって定められる間隔を有したまま、それぞれ第一刃体10及び第四刃体40に対して開閉動作を行う。また、外側に配置されている第一刃体10は、内側に配置された第二刃体20と第一連結部3において連結されており、外側に配置されている第四刃体40は、内側に配置された第三刃体30と第二連結部5において連結されている。更に、第一刃体10と第四刃体40は、第二スペーサ部62によっても連結されている。
【0032】
つまり、この構成によれば、外側に配置されている第一刃体10と第四刃体40とによって、内側に配置されている第二刃体20と第三刃体30とを押さえつけながら、各刃体が開閉される構成となる。第一刃体10及び第二刃体20からなる第一の部分ハサミによって切断される箇所と、第三刃体30及び第四刃体40からなる第二の部分ハサミによって切断される箇所の間には、第三スペーサ部63によって決定される所定の間隔が設けられる。
【0033】
そして、上述したように、内側に配置される第二刃体20と第三刃体30にはそれぞれ内側の箇所に刃(21,31)が設けられており、外側に配置される第一刃体10と第四刃体40には外側の箇所に刃(11,41)が設けられている。このことは、いわば右利き用のハサミ部分と、左利き用のハサミ部分を対向して配置させている状況に近い。このような構成とすることで、外側に配置される刃体(10,40)と内側に配置される刃体(20,30)との密着性を確保できる。
【0034】
仮に、右利き用のハサミ同士を対向して配置させた場合、把持部に指を掛けて動かすと、一方のハサミについては、外側の刃体から内側の刃体に向かう力が作用するものの、他方のハサミについては逆に内側の刃体から外側の刃体に向かう力が作用する。この場合、後者のハサミは、外側の刃体と内側の刃体の密着を低下させる向きに力が働いてしまう。この結果、一定の幅で切断することが難しくなってしまう。左利き用のハサミ同士を対向して配置させた場合についても同様である。
【0035】
上記の構成によれば、第一把持部51及び第二把持部52に指を掛けて動かすと、外側に配置された2つの刃体(10,40)は、いずれも内側に配置された刃体(20,30)に向かう力が作用するため、それぞれの刃体の密着性が維持される。この結果、第三スペーサ部63によって定められた幅で、シーリング後のフィルム8を切断することが可能となり、規定の幅dを有する試験片を作成できる(図4参照)。図4において、ハサミ1によってフィルム8を切断したときの切断線を符号71によって示している。
【0036】
また、この方法でフィルムを切断する場合には、単にハサミ1を1回可動させるのみでよいため、従来のようにカット幅のラインマーカを入れたり、ガイドを当てながら切断するといった工程が不要となり、作業が容易化される。
【0037】
更に、上記構成のハサミ1によれば、右利きの人でも左利きの人でも、定められた幅で安定的に切断することができるという効果も奏する。
【0038】
なお、上記の構成において、第二スペーサ部62は、連結部(3,5)の位置における第一刃体10と第四刃体40との間の間隔よりも、当該第二スペーサ部62が配置されている位置における第一刃体10と第四刃体40との間の間隔が拡がるように長さが設定されているものとしても構わない。このような構成とすることで、外側に配置されている第一刃体10と第四刃体40が、刃の先端に向かって反るような状態が形成されるため、内側に配置されている第二刃体20と第三刃体30に対する密着力が更に高められる。
【0039】
[別実施形態]
以下、別の実施形態について説明する。
【0040】
〈1〉 上述した実施形態では、第三スペーサ部63が、内側に配置されている第二刃体20と第三刃体30との間を連結するように設けられていた。これに対し、外側に配置されている第一刃体10と第四刃体40との間を連結するように設けられるものとしても構わない。図5はこのような構成のハサミ1aを模式的に示す正面図である。
【0041】
図5は、図3とは異なり、第一把持部51を正面にしてハサミ1aを見た時の正面図に対応する。このため、図5には第三スペーサ部63が正面側に現れている。図5において、第一把持部51の裏側には第二把持部52が存在し、この第二把持部52に指を掛けて動かすと、第三スペーサ部63によって連結された第一刃体10及び第四刃体40が一体として図5の紙面手前に向けて回転移動する。
【0042】
この構成の下で、把持部(51,52)に指を掛けてハサミ1aを動かした場合、外側に位置する第一刃体10及び第四刃体40は、第三スペーサ部63によって定められる間隔を有したまま、それぞれ第二刃体20及び第三刃体30に対して開閉動作を行う。また、内側に配置されている第二刃体20は、外側に配置された第一刃体10と第一連結部3において連結されており、内側に配置されている第三刃体30は、外側に配置された第四刃体40と第二連結部5において連結されている。更に、第二刃体20と第三刃体30は、第一スペーサ部61によっても連結されている。
【0043】
よって、上記の実施形態と同様に、第一刃体10及び第二刃体20からなる第一の部分ハサミによって切断される箇所と、第三刃体30及び第四刃体40からなる第二の部分ハサミによって切断される箇所の間には、第三スペーサ部63によって決定される所定の間隔が設けられることになる。この結果、第三スペーサ部63によって定められた幅で、シーリング後のフィルム8を切断することが可能となり、規定の幅を有する試験片を簡易な方法で作成できる。
【0044】
ただし、上述した実施形態の構成のように、内側の刃体(20,30)に第三スペーサ部63を設けることで、切断後のフィルム8がハサミ1の刃体(10,20,30,40)の間に残っていた場合であっても、第三スペーサ部63が設けられていない外側の刃体(10,40)の間から指を入れやすいため、より安全に残存フィルムを取り出すことができるという点において、好ましい。
【0045】
〈2〉 上述した実施形態では、第三スペーサ部63が連結部(3,5)から刃体の先端の間の位置の2箇所に設けられていたが、3箇所以上設けられていても構わないし、1箇所であっても構わない。第三スペーサ部63が2箇所以上に設けられた場合、第一刃体10と第二刃体20とで構成される部分ハサミと、第三刃体30と第四刃体40とで構成される部分ハサミとの離間距離を、安定して保持する機能が更に高められる。
【0046】
同様に、第一スペーサ部61及び第二スペーサ部62においても、3箇所以上に設けられていても構わないし、1箇所であっても構わない。
【0047】
〈3〉 上述した実施形態のハサミ(1,1a)によれば、高い精度を有した状態で所定の幅でフィルム8を切断して試験片を作成することができる。しかし、本発明は、上述したJIS Z 0238の規格に規定された幅で切断できるハサミに限定する趣旨ではない。ハサミ(1,1a)のように、刃体(10,20,30,40)、連結部(3,5)、把持部(51,52)、及びスペーサ部(61,62,63)を有する構成であれば、全て本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0048】
1,1a : ハサミ
3 : 第一連結部
5 : 第二連結部
8 : フィルム
9 : シーリング領域
10 : 第一刃体
11 : 第一刃体の刃
20 : 第二刃体
21 : 第二刃体の刃
30 : 第三刃体
31 : 第三刃体の刃
40 : 第四刃体
41 : 第四刃体の刃
51 : 第一把持部
52 : 第二把持部
61 : 第一スペーサ部
62 : 第二スペーサ部
63 : 第三スペーサ部
71 : 切断線
図1
図2
図3
図4
図5