特許第6810517号(P6810517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6810517抵抗制動機能を有する発電システムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810517
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】抵抗制動機能を有する発電システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20201221BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   H02J3/38 180
   H02J3/38 110
   H02P9/04 F
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-236194(P2015-236194)
(22)【出願日】2015年12月3日
(65)【公開番号】特開2016-123261(P2016-123261A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2018年11月22日
(31)【優先権主張番号】14/566,749
(32)【優先日】2014年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319005659
【氏名又は名称】エーアイ アルパイン ユーエス ビドゥコ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】アラ・パノシャン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ボルド
(72)【発明者】
【氏名】ハーバート・シャムベルガー
【審査官】 早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0267560(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0025995(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0217824(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0175876(US,A1)
【文献】 国際公開第2007/072007(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−5/00
H02P9/00−9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電システムであって、
電力を生成し、前記電力を送電網に供給するための、エンジンに動作可能に結合された発電機と、
前記発電機と前記送電網との間に動作可能に結合された抵抗制動システムと、を含み、
前記抵抗制動システムは、
抵抗器と並列に接続された機械的スイッチと、
送電網事象に応答して、前記エンジンからの動力を制御し、前記機械的スイッチと前記並列に接続された抵抗器との間で電流を切り換えるように前記機械的スイッチを動作させるためのコントローラと、を含み、
前記コントローラは、前記送電網事象が検出された場合に、前記エンジンからの動力を制御するために、前記エンジンの点火装置を部分的または完全にオフするための第1の制御信号を送信するように構成され、
前記コントローラは更に、前記送電網事象が検出された場合に、前記機械的スイッチを開放するための第2の制御信号を送信するように構成され、
前記機械的スイッチは、第1の所定時間の前に開放され、
前記コントローラは更に、前記第1の所定時間の後に、前記エンジンの前記点火装置を部分的または完全にオンするための第3の制御信号を送信するように構成される、システム。
【請求項2】
前記抵抗器は、前記機械的スイッチが開放された場合に、前記発電機からの一定量の電力およびエネルギーを吸収するために十分なサイズである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記エンジンからの前記制御された動力に基づいて、前記発電機の速度を調整するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記送電網事象の発生から第2の所定時間の前に前記送電網事象が除去された場合には、前記機械的スイッチを閉じるための第4の制御信号を送信するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記送電網事象が前記第2の所定時間の後に継続している場合には、前記エンジンの点火装置をオフするための第5の制御信号を送信するように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、入力信号に基づいて前記送電網事象を検出するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記入力信号は、電圧信号、電流信号、発電機電力信号、速度信号、ロータ角度信号、エンジン動力信号、エンジントルク信号、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記エンジンは、ガスタービン、ガスエンジン、または風力タービンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
発電機と送電網との間に接続された抵抗制動システムに結合された前記発電機から前記送電網へ電力を供給する方法であって、前記抵抗制動システムは、抵抗器と並列に接続された機械的スイッチを含み、前記方法は、
正常な動作状態において前記機械的スイッチを通して前記送電網に前記電力を供給するステップと、
送電網事象が検出された場合に、(a)前記発電機への動力を制御し、かつ、(b)前記機械的スイッチと前記抵抗器との間で前記発電機からの電流を切り換えるように前記機械的スイッチを動作するステップと、を含み、
前記発電機への動力を制御するステップは、前記発電機に結合されたエンジンの点火装置を部分的または完全にオフするステップを含み、
前記機械的スイッチを動作するステップは、前記機械的スイッチを第1の所定時間の前に開放するステップを含み、
前記第1の所定時間の後に、前記エンジンの点火装置を部分的または完全にオンするステップをさらに含む、方法。
【請求項10】
前記送電網事象が第2の所定時間の前に除去された場合には、前記機械的スイッチを閉じるステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記送電網事象が前記第2の所定時間の後に継続している場合には、前記エンジンの点火装置をオフするステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記送電網事象は、入力信号に基づいて検出される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記入力信号は、電圧信号、電流信号、発電機電力信号、速度信号、ロータ角度信号、エンジン動力信号、エンジントルク信号、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には電気エネルギー変換に関し、より具体的には、送電網に接続された低い慣性モーメントを有する小規模発電設備の抵抗制動機能のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般的には電気エネルギー変換に関し、より具体的には、送電網に接続された低い慣性モーメントを有する小規模発電設備の抵抗制動機能のためのシステムおよび方法に関する。
【0003】
分散エネルギーリソース(DER)システムは、典型的には3kW〜10000kWの範囲の小型発電機であって、様々なソースから電力を生成して、発電機に接続された送電網に発電された電力を転送する。送電網は、電力送電網あるいはアイランド送電網であってもよい。さらに、送電網は、複数の発電機から発電された電力を収集して、異なる場所あるいは1つまたは複数の顧客の負荷に電力を送電する。通常、DERシステムは、従来の電力システムに対する代替物またはその強化である。小型発電機は、小型ガスタービンによって駆動することができ、あるいは、たとえば燃料電池および/または風力発電機を含むことができる。DERシステムは、おそらく同じ建物内のように電気を使用する場所のごく近くで発電するので、送電する際に失われるエネルギー量を低減する。またDERシステムは、構築しなければならない送電線のサイズおよび数を低減する。しかし、分散型発電の使用が増加したので、多くの送電網規則は、障害電圧ライドスルーなどの拡張機能を提供することを小規模発電設備に義務づけている。
【0004】
電力システムの障害が発生すると、障害が取り除かれるまで、システムの電圧は短い時間(典型的には500ミリ秒未満)に重大な量だけ低下するおそれがある。相導体のグランドへの接続(接地故障)、または相導体の短絡などの故障は、落雷および暴風の際に、または事故によって送電線がグランドに接続されることに起因して発生する可能性がある。過去において、不注意による障害および大電力外乱状況の下で、電圧降下が発生するときはいつでも、オフラインにすることが小規模発電設備にとっては許容され望ましいものであった。小規模発電設備の普及レベルが低い場合には、このような動作は電力供給に実際の有害な影響を与えない。しかし、電力システムにおける小規模発電設備の普及が増加するにつれて、これらの小規模発電設備がオンライン状態に留まり、このような低電圧状態を乗り切って、送電網と同期した状態を保ち、障害が取り除かれた後に送電網に電力を供給し続けることができることが望ましい。これは大規模発電設備に適用される要件と同様である。
【0005】
したがって、上述の問題に対処する方法およびシステムを決定することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8692523号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の実施形態によれば、発電システムが提供される。発電システムは、電力を生成し、電力を送電網に供給するための、エンジンに動作可能に結合された発電機を含む。さらに、発電装置は、発電機と送電網との間に動作可能に結合された抵抗制動システムを含む。抵抗制動システムは、抵抗器と並列に接続された機械的スイッチと、送電網事象に応答して、エンジンからの動力を制御し、機械的スイッチと並列に接続された抵抗器との間で電流を切り換えるように機械的スイッチを動作させるためのコントローラと、を含む。
【0008】
本開示のさらなる態様によれば、発電機と送電網との間に接続された抵抗制動システムに結合された発電機から送電網へ電力を供給する方法が提供される。抵抗制動システムは、抵抗器と並列に接続された機械的スイッチを含む。本方法は、正常な動作状態において機械的スイッチを通して送電網に電力を供給するステップを含む。さらに、本方法は、送電網事象が検出された場合に、(a)発電機への動力を制御し、かつ、(b)機械的スイッチと抵抗器との間で発電機からの電流を切り換えるように機械的スイッチを動作するステップを含む。
【0009】
本発明のこれらの、並びに他の特徴、態様および利点は、添付の図面を参照しつつ以下の詳細な説明を読めば、よりよく理解されよう。添付の図面では、図面の全体にわたって、類似する符号は類似する部分を表す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】障害の前、その間、およびその後の送電網規則に規定された電圧プロファイルのプロットである。
図2】送電網に接続され、本開示の態様による抵抗制動システムを用いる発電システムのダイアグラム表現である。
図3】本開示の態様による抵抗制動動作の様々な段階のダイアグラム表現である。
図4】本開示の態様による、発電機から送電網へ電力を供給するための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に詳細に述べるように、本発明の実施形態は、送電網に接続される低い慣性モーメントを有する小規模発電設備の抵抗制動機能のためのシステムおよび方法を提供するように機能する。
【0012】
図1は、発電機の送電網への接続点(POC)における送電網規則による電圧プロファイルの一例のプロット10を示す。送電網当局のいくつかは、POCにおける電圧が図示する電圧プロファイルより高い場合には、発電機を送電網から切り離してはいけないことを期待している。しかし、これは1つの典型的なケースであって、電圧プロファイル要件は国によって異なり、あるいはグリッド当局によっても異なる。プロット10は、ミリ秒で時間を表す横軸12、および公称電圧の百分率で電圧を表す縦軸14を示す。障害は0ミリ秒に発生する。障害が発生する前には、システムは安定状態にあるから、POCにおける障害前の電圧16、すなわち0ミリ秒以前の電圧は単位当たり100%または1である。グリッドの障害によって、0ミリ秒における電圧18は障害の開始において5%まで降下する。POCにおける電圧降下は障害からPOCまでの距離、障害インピーダンス、障害のタイプ、および送電網特性などに依存することに留意すべきである。一実施形態では、電圧が5%より低くなる可能性があり、あるいは別の実施形態では、電圧が5%より高くなる可能性がある。
【0013】
電圧が公称電圧の5%に低下すると、低電圧状態の間には、発電機が全出力を送電網に送出することができなくなるおそれがある。同時にエンジンが一定の機械的動力を発電機に供給し続ける場合には、これは結果としてエンジン−発電機の回転質量の加速を生じさせてロータ速度が増加する。ロータ速度の増加は同期発電機のロータ角度の過剰な増加をもたらし、それは結果として脱調を生じさせるおそれがある。このような状況では、発電機を取り外すことになり、送電網規則の要件を満たさない。ロータ速度を同期速度以下に減少させ、それとともに同期が失われる前にロータ角度の増加を停止させて、発電システムを安定動作点に戻すことによって、これを回避することができる。ロータ速度を減少させるには、時間通りに回転質量を減速させる必要がある。送電網規則電圧プロファイルの例では、故障事象の持続時間は、150msとして示されている。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態による抵抗制動システム46を利用した送電網44に接続された発電システム40を示す。発電システム40は、原動機60および送電網44に接続された発電機42を含む。一実施形態では、発電機42は、たとえば、10MW未満のような小型の電力定格を有することができる。さらに、発電機42は、原動機60に機械的に結合され、一実施形態では、原動機60はエンジンを含む。「原動機」および「エンジン」という用語は、以下の説明では交換可能に用いることができることに留意されたい。一実施形態では、エンジン60は、ガスタービン、ガスエンジン、または風力タービンを含むことができる。いくつかの実施形態では、発電機42は電力電子コンバータ(図示せず)を通して送電網44に結合することができ、他の実施形態では、発電機42は電力電子コンバータを用いずに送電網44に結合することができる。送電網44は、異なる場所に電力を送電する電力送電網あるいは1つまたは複数の顧客の負荷をサポートするアイランド送電網であってもよいことに留意されたい。
【0015】
図2の実施形態では、発電機42は、抵抗制動システム46、変圧器48、および送電線50を介して送電網44に接続される。図2に示す構成は、1つの例示的な構成であり、他の構成が用いられてもよいことに留意されたい。たとえば、抵抗制動システム46は、変圧器48と送電網44との間に接続されてもよい。さらに、図2は、説明を容易にするために、送電網44の単線図を示している点に留意すべきである。
【0016】
図2に示すように、抵抗制動システム46は、発電機42と直列に接続され、抵抗器52、機械的スイッチ54、およびコントローラ56を含む。抵抗器52および機械的スイッチ54は、互いに並列に接続される。抵抗器52は、送電網事象の間に発電機42からの電力を吸収するために用いることができる。一実施例では、送電網事象は、送電網44における低電圧状態を含むことができる。送電網事象の間または送電網事象の直後には、発電機42に入力される動力は、送電網44に出力される電力よりも大きくなるため、抵抗器52は、発電機42からの電力を吸収して、発電機42の加速を防止するために用いられる。コントローラ56は、入力信号58を受信して、機械的スイッチ54およびエンジン60に1つまたは複数の制御信号を提供する。一実施例では、コントローラ56は、エンジン60の点火装置(図示せず)に制御信号を送信して、エンジン60の速度を制御する。エンジン60の速度は、発電機42に提供される機械的動力を調整するために制御することができる。
【0017】
一実施形態では、入力信号58は、電圧信号、電流信号、発電機電力信号、速度信号、ロータ角度信号、エンジン動力信号、エンジントルク信号、またはこれらの任意の組み合わせを含む。電圧信号の一例では、電圧信号は、接続点(POC)62または送電網44における故障電圧を示すことができる。別の実施例として、電流信号は、発電機42の電流を示すことができる。さらに別の実施例では、発電機電力信号は、発電機42によって生成される電力を示すことができる。ロータ角度信号は、たとえば、発電機42のステータ電圧と送電網44の電圧との間の電気角であってもよい。速度信号は、発電機42とエンジン60との間に結合された回転可能なシャフトの速度を示すことができる。最後に、エンジン動力信号およびエンジントルク信号は、エンジン60の機械的動力およびトルクをそれぞれ示すことができる。コントローラ56は、システムに送電網事象が発生したか否かを決定するために入力信号58を用い、送電網事象においてエンジン60および機械的スイッチ54の動作を制御するための制御信号を提供する。
【0018】
動作時に、正常状態では、機械的スイッチ54が閉じられ、導通状態すなわちオン状態になる。導通時には、機械的スイッチ54は、抵抗器52と比較して無視できるオン抵抗を有しているので、発電機42からの電流は機械的スイッチ54を流れる。
【0019】
送電網事象が送電網44で発生した場合には、発電機42のPOC62における電圧が大幅に低下する。送電網事象は、発電システム40における低電圧状態を含んでもよい。一実施例では、POC62における低電圧状態がしきい値時間の間継続する場合には、発電機ロータと送電網44との間の大きな角度のために、発電機42に極めて高い電流が流れるおそれがある。したがって、発電機42は、これらの高電流からそれ自体を保護するために送電網44から遮断しなければならない。発電機ロータと送電網44との間の角度が大きくなることにより、発電機42と送電網44との間の脱調が生じるおそれがあり、それによっても発電機42を送電網44から切り離すことが必要になる。しかし、送電網規則の障害ライドスルー要件を満たすためには、発電機42は送電網44に接続された状態に留まり、送電網事象が取り除かれてPOC62における電圧が送電網事象前のレベルに回復した後には送電網44に電力を供給し続けることが可能でなければならない。言い換えれば、送電網事象状態の間に、POC62の電圧が送電網規則により与えられた電圧プロファイルを上回る限り、発電機速度およびロータ角度は許容限度内に留まらなければならない。
【0020】
本発明の一実施形態では、送電網44の送電網事象に起因して電圧がPOC62で低下すると、コントローラ56は、送電網事象を検出して、発電機に供給される動力を制御し、したがって発電機の速度を制御するために、発電機42に接続されたエンジン60をトリガする。一実施例では、コントローラ56は、エンジン60の点火装置を部分的または完全にオフするために、エンジン60の点火装置に第1の制御信号を送信することができる。これによって、POC62の低電圧状態の間に発電機42が送電網44に供給できる電力が制限されるので、発電機42の加速を減少または停止させることができる。
【0021】
さらに、コントローラ56は、機械的スイッチ54を開放する、すなわちオフにするために、機械的スイッチ54に第2の制御信号を送信することができる。一実施形態では、コントローラ56は、第1および第2の制御信号を同時に送信することができる。第1および第2の制御信号が同時に送信された場合であっても、スイッチ開放に必要な制動時間により、機械的スイッチを開放するにはいくらかの固有の遅延が生じる。一実施例では、制動時間は約50ms〜約100msの範囲であり得る。
【0022】
一実施形態では、機械的スイッチ54は、送電網事象の検出よりも第1の所定時間前に開放する、すなわちオフにすることができる。機械スイッチが開放するのに約100msかかる実施例では、送電網事象の発生から20msで送電網事象が検出されれば、機械的スイッチを同時にトリガして、送電網事象の発生から120msで機械的スイッチ54を完全に開放すなわちオフすることができる。この期間に、電流が機械的スイッチ54を介して送電網44に流れ続けることができ、発電機42は送電網44との同期を失う可能性がある。この問題を克服するために、送電網事象が検出されると、コントローラ56は、エンジン60の点火装置をより迅速に部分的または完全にオフするように第1の制御信号を送信することができる。エンジン60の点火装置が部分的または完全にオフにされると、発電機42に供給される機械的動力が低減または制御される。これにより、この期間における発電機速度およびロータ角度を許容限界内に調整する。また、発電機42と送電網44との間の同期を維持することができる。
【0023】
機械的スイッチ54が開動作すると、発電機42からの電流は抵抗器52に導かれ、電力を抵抗器52で熱として放散させることができる。送電網事象の際に抵抗器52で消費される有効電力は、抵抗器52の両端の電圧に依存し、一般にVr2/Rで与えられ、ここで、Vrは抵抗器52の両端の2乗平均平方根(RMS)電圧であり、Rは抵抗器52の抵抗値である。したがって、Vrが0.3puであり、Rが0.1puである場合には、抵抗器52によって消費される電力は0.9puであり、発電機42によって供給される総電力とほぼ同等である。換言すれば、この場合、抵抗器52は、エンジン60によって発電機42に供給される動力の90%を消費することができ、したがって低電圧状態の間の発電機の加速を大幅に低減することができる。したがって、発電機42は、その回転速度またはロータ角度を許容可能な範囲に維持することができ、送電網事象の間またはその後に送電網44から切り離す必要がない。
【0024】
さらなる例示的な実施形態では、第1の所定時間(120ms)の後、コントローラ56は、エンジン60を部分的または完全にオンするために、エンジン60の点火装置に第3の制御信号を送信することができる。これは、より長い時間(たとえば、1つまたは複数のエンジンサイクル)、エンジン点火装置を完全にオフにすることができない場合に、特に有用である。特に、エンジン60が決められた時間内にオンに切り替わらない場合には、非燃焼ガスがエンジン60の排気側に蓄積する可能性がある。これは、排気装置自体の燃焼を招く場合があり、またエンジン60を損傷するおそれがある。したがって、この問題を克服するために、第1の所定時間の後にエンジン60を部分的または完全にオンにする。
【0025】
たとえば、送電網事象から250msなどの第2の所定時間内に送電網事象が除去され、発電機42が送電網44に電力を供給できる許容レベルにPOCの電圧が戻ったと、コントローラ56が判断した場合には、機械的スイッチ54をオンするようにトリガする。特に、コントローラ56は、機械的スイッチ54を閉じる、すなわちオンにするために、機械的スイッチ54に第4の信号を送信することができる。機械的スイッチを開く際に固有の物理的遅延があると同様に、機械的スイッチ54は、閉じるためにいくらかの時間を必要とする。一実施例では、機械的スイッチは、送電網事象状態から450msで閉じることができる。機械的スイッチ54が完全にオンされると、発電機42からの電流は、機械的スイッチ54を流れることができるので、正常動作または送電網事象前の状態が復活する。
【0026】
しかし、送電網事象が第2の所定時間(250ms)内に除去されず、発電機42が停止状態になった場合には、発電機ロータと送電網44との間の大きな角度に起因する極めて高い電流が生じることを回避するために、発電機42を送電網44から切り離す必要がある。本実施形態では、コントローラ56は、発電機42を切り離すための第5の制御信号を送信することができる。一実施例では、第2の所定時間は、送電網事象の発生から約220ms〜280msの範囲とすることができる。別の実施例では、第2の所定時間は、送電網規則の要件に基づいてオペレータによって決定することができ、一般的には障害電圧ライドスルーに必要とされる最大の時間である。言い換えると、送電網事象が第2の所定時間内に除去されない場合には、エンジン60はオフに切り換えられて、最終的には、発電機42から送電網44に電力が供給されなくなる。
【0027】
図3(a)〜図3(e)は、本開示の一実施例による抵抗制動動作の様々な段階を示しており、図4は関連するフローチャートである。すべての時間は、例示のみを目的とする。図3(a)は、正常状態または送電網事象のない状態(t<0)を示しており、図4のステップ402で表すように、機械的スイッチ54が導通し、抵抗器52は導通していない。本明細書で機械的スイッチ54が「導通する」として、抵抗器52が「導通しない」として説明される場合には、電流の流れは、主に機械的スイッチ54を通るが、いくらかの少量の電流が抵抗器52を流れる可能性を排除するものではないことを意味する。この段階では、発電機電流70は、機械的スイッチ54を流れ、抵抗器52には流れない。t=0(図3(b))で、送電網事象が送電網に発生し、t=20ms(図3(c))で、図4のステップ404で表すように、送電網事象が抵抗制動システム46によって検出される。一実施形態では、送電網事象は、電圧信号、電流信号、速度信号、電力信号、トルク信号、ロータ角度信号、またはこれらの任意の組み合わせに基づいて検出することができる。図3(b)および図3(c)から分かるように、これらの段階では、制御動作が開始されていないので、発電機電流70は依然として機械的スイッチ54を流れる。ここに示すタイミング(すなわち、t=0、20、120、250msなど)は単に例示するためのものにすぎず、他の実施形態では、タイミングはシステムおよび制御パラメータに基づいてもよい点に留意すべきである。
【0028】
さらにまた、t=20msで送電網事象が抵抗制動システムによって検出されると、図4のステップ406で表すように、点火装置を部分的または完全にオフするために、第1の制御信号が発電機エンジンに送信される。同時にまたはその直後に、図4のステップ408で表すように、機械的スイッチ54を開放するために、第2の制御信号が機械的スイッチ54に送信される。しかし、機械的スイッチ54を完全に開放するためには、一定の時間がかかる場合がある。この期間では、発電機電流70は、機械的スイッチ54を流れ続けることができる。
【0029】
さらに、第1の所定時間に、またはその前、たとえばt≦120msでは、機械的スイッチが開放すなわちオフとなり、その結果、図3(d)に示すように、発電機電流70は抵抗器52だけを流れ、機械的スイッチ54には流れない。この段階では、抵抗器52は、発電機42からの電力を吸収するために用いられる。さらに、第1の所定時間が経過すると、図4のステップ410で表すように、エンジン60の点火装置をオンにするために第3の制御信号が送信される。一実施例では、エンジン点火装置がオンに切り換えられて、送電網事象前の電力レベルに戻る。これは、一般的に、エンジン点火装置をより長い時間(たとえば、1つまたは複数のエンジンサイクル)オフさせることができない実施形態で行われる。
【0030】
その後、図4のステップ412で表すように、コントローラ56は、送電網事象が第2の所定時間内に除去されたかどうかを確認する。送電網事象が第2の所定時間内たとえばt≦250msで(図3(e))除去された場合には、図4のステップ414で表すように、機械的スイッチ54が閉じるすなわちオンするようにトリガされる。一実施形態では、送電網事象が除去されると共に、発電機42が送電網44に電力を供給できる許容レベルに電圧が戻っていることを確認するために、POCの電圧を検証することができる。
【0031】
機械的スイッチ54をトリガした後、機械的スイッチ54が完全に閉じるのに一定時間、たとえば、t=450msかかる場合がある。この期間に、発電機電流70は、図3(e)に示すように、抵抗器52を流れ続けることができる。さらに、機械的スイッチ54がたとえばt=450msで完全に閉じると、抵抗制動システム46は、送電網事象前の正常状態の間の初期状態に戻る。この段階では、図3(f)に示すように、発電機電流は機械的スイッチ54を流れることができる。
【0032】
さらに、送電網事象は、第2の所定時間の後、たとえばt>250msで除去されず(図3(g))、POCの電圧が送電網規則で与えられる電圧プロファイルより低い場合には、図4のステップ416で表すように、エンジン点火装置が完全にオフするようにトリガされ、機械的スイッチ54およびエンジン点火装置の両方がオフ状態になる。このようにして、発電機42は送電網44から素早く切り離され、最終的に発電機42によって送電網44に供給される電力はなくなる。
【0033】
本明細書に開示する実施形態の利点の1つは、より高速でより長い抵抗制動を実現することである。特に、システムが(エンジン制御のない)並列抵抗器を有する機械的スイッチのみを含む場合には、制動電力の量および持続時間は、抵抗器の電気特性および熱特性により規定され、反応速度は機械的スイッチの開く速度で規定される。したがって、このような抵抗制動の反応時間は、機械的スイッチの速度で制限され、それはたとえば50ms以上であり得る。さらに、さらにエンジン制御のない並列抵抗器を有する機械的スイッチは、発電機の速度を調整することができない。一方、システムが(並列抵抗器を有する機械的スイッチがなく)エンジン制御だけを含む場合には、システムは、送電網事象に対してほぼ瞬時に反応することができ、エンジン点火装置を部分的または完全にオフすることによって発電機の速度を制御することができるが、エンジンを長時間オフさせることができないので、この速度制御は短時間である。このように、例示的なシステムおよび方法を用いることによって、並列抵抗器を有する機械的スイッチをエンジン制御と組み合わせて、発電機速度調整機能を有する高速に作動する抵抗制動システムを実現する。
【0034】
本発明の特定の特徴だけを本明細書に図示し記載しているが、多くの改変および変形が当業者に想到されるであろう。したがって、添付した特許請求の範囲は、本発明の真の要旨に含まれるこのようなすべての改変および変形を包含することを意図していると理解すべきである。
【符号の説明】
【0035】
10 プロット
12 横軸
14 縦軸
16 障害前の電圧
18 電圧
40 発電システム
42 発電機
44 送電網
46 抵抗制動システム
48 変圧器
50 送電線
52 抵抗器
54 機械的スイッチ
56 コントローラ
58 入力信号
60 原動機、エンジン
62 接続点(POC)
70 発電機電流
402 ステップ
404 ステップ
406 ステップ
408 ステップ
410 ステップ
412 ステップ
414 ステップ
416 ステップ
図1
図2
図3
図4