(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記扉の戸尻側の端部において、前記前側化粧鋼板と前記後側化粧鋼板のうち、いずれか一方の端面を、いずれか他方の裏面に固定された前記固定材に突き合わせた状態で、これら端面と固定材とを相互に溶接により接合した、
請求項1に記載の扉。
前記扉の戸先側の端部において、前記前側化粧鋼板と前記後側化粧鋼板のうち、いずれか一方の端面を、いずれか他方の裏面に突き合わせた状態で、これら端面と裏面とを相互に溶接により接合した、
請求項1又は2に記載の扉。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る扉の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念について説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、建物の開口部を開閉するための扉に関するものである。
【0016】
ここで、「建物」とは、その具体的な構造や種類は任意であるが、例えば、戸建て住宅、アパートやマンションの如き集合住宅、オフィスビル、商業施設、及び公共施設等を含む概念である。また、「建物の開口部」とは、建物の躯体の一部分(例えば、壁、天井、又は床等)において窓や出入口を設置するために形成された開口部である。また、「扉」は、建物の開口部の出入り又は視界を抑制又は制限するための構造体を意味し、いわゆる「ドア」及び「戸」を包含する概念である。この扉の取り付け位置や用途は任意であるが、例えば玄関に設置される「玄関扉」、勝手口や通用口に設置される「勝手口扉」、あるいは建物内部に設置されるための「室内扉」、並びに上述した重量扉や軽量扉を含む。また、この扉の開閉構造は任意であり、例えば、片開式の開き戸や両開式の開き戸(いわゆる親子扉)等の「開き戸」や「引き戸」として構成することができる。以下、実施の形態では、扉が防火用の「引き戸」である場合について説明する。
【0017】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0018】
(構成)
最初に、実施の形態に係る引き戸の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る引き戸の正面図、
図2は、
図1の引き戸の背面図、
図3は、
図1の引き戸の分解斜視図、
図4は、後述する上枠を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は戸先側からの側面図、
図5は、
図1のA−A矢視断面図、
図6は、
図1のB−B矢視断面図である。なお、
図1及び
図2においては、後述する戸袋34の前面及び後面に対する壁仕上げ材を省略して示す。また、以下の説明では、
図1及び
図2と
図5及び
図6に示すX−Y−Z方向のうち、X方向を左右方向、見付方向、又は幅方向(−X方向を左方向又は戸先方向、+X方向を右方向又は戸尻方向)、Y方向を内外方向、前後方向、見込方向、又は厚み方向(+Y方向を後側方向、外側方向、又は非点検側、−Y方向を前側方向、内側方向、又は点検側)、Z方向を上下方向又は高さ方向(+Z方向を上方向、−Z方向を下方向)と称する。
【0019】
図1に示すように、建物の躯体1に形成された開口部2には、引き戸10が配置されている。この引き戸10は、概略的に、枠体20と、扉50(扉体)とを備えて構成されており、枠体20の内部において扉50を吊持ち状に支持した状態で左右方向に走行(スライド移動)させることで、扉50によって開口部2を開閉することができる。ただし、引き戸10に関する特記しない構成については、従来と同様であるものとして説明を省略する。
【0020】
(構成−枠体)
まず、枠体20の構成について説明する。この枠体20は、開口部2の周縁に設置されるものであり、
図1から
図5に示すように、戸先縦枠21、戸尻縦枠22、上枠23、巾木24、前側方立25、後側方立26、前側中桟27、後側中桟28、前上側戸袋ボード29、前下側戸袋ボード30、後上側戸袋ボード31、後下側戸袋ボード32、及びガイドローラ33を備える。
【0021】
(構成−枠体−戸先縦枠)
戸先縦枠21は、開口部2の戸先側の周縁に公知の方法で固定される長尺状の枠材であり、鉛直方向に沿って取り付けられている。この戸先縦枠21には、受金具(図示省略)が設けられている。この受金具は、扉50を全閉位置(実施の形態においては
図1に示す位置)に位置させた状態(すなわち、全閉状態)において、扉50に設けられた後述する錠前のデッドボルトを受けるためのデッドボルト受容手段であり、このデッドボルトと対応する位置に配置されている。
【0022】
(構成−枠体−戸尻縦枠)
戸尻縦枠22は、開口部2の戸尻側の周縁に公知の方法で固定される長尺状の枠材であり、鉛直方向に沿って取り付けられている。
【0023】
(構成−枠体−上枠)
上枠23は、開口部2の上方の周縁に公知の方法で固定される枠材であって、戸先縦枠21から戸尻縦枠22に至る長さの長尺状の枠材であり、これら戸先縦枠21と戸尻縦枠22の相互間において水平方向(見付け方向)に沿って取り付けられている。この上枠23は、
図4及び
図5に示すように、上枠ベース23a、上枠上側片23b、上枠前側片23c、及び点検カバー23dを備える。なお、
図4には、点検カバー23dを省略して示す。
【0024】
上枠ベース23aは、上枠23の後部を構成する部材であり、上枠23の左右方向の略全長に対応する長さの部材であり、上枠23の上下方向の略全高に対応する高さの部材であって、鉛直断面形状が縦長中空長方形状の部材である。この上枠ベース23aの前側の側面には、レール23eが固定されている。このレール23eは、扉50の上面に取付けられた後述する戸先戸車53及び戸尻戸車54を左右方向に沿って走行可能とするための誘導路である。このレール23eは、戸先戸車53及び戸尻戸車54の走行範囲に対応する幅で形成された長尺状の枠材であり、戸尻側から戸先側に至るに連れて下方に至るように傾斜状に取付けられている。このような傾斜状のレール23eに対して戸先戸車53及び戸尻戸車54を介して扉50が吊り持ち状に支持されることにより、扉50が自重によって戸先側に向けて常時付勢されることになり、この扉50にユーザが手を振れていない状態においては、扉50が戸先側に自然に移動して開口部2を全閉状態とする。また、上枠ベース23aの前側の側面には、ラック(ラックギア)23fが設けられている。このラック23fは、棒状体の上面に歯を刻んで形成されたもので、この歯に対して、戸先戸車53に取付けられた後述する制動装置55のギアが噛み合うことで、扉50の制動が行われる。このラック23fは、制動装置55の移動範囲に対応する範囲に設けられている(後述する
図7参照)。
【0025】
上枠上側片23bは、上枠23の上部を構成する部材であり、上枠23の左右方向の略全長に対応する長さの部材であって、鉛直断面形状が水平板状の部材である。
【0026】
上枠前側片23cは、上枠23の前部を構成する部材であり、上枠23の戸先側に設けられた部材であり、上枠23の上下方向の略全高より短い高さの部材であって、上枠上側片23bの前端から下方向に至るように配置されている。
【0027】
点検カバー23dは、上枠23の前部を上枠前側片23cと共に構成する部材であり、上枠23の上下方向の略全高のうち、上枠前側片23cの高さを除外した高さの部材であって、全閉位置に位置させた扉50の幅に略対応する幅の部材である。この点検カバー23dは、上枠前側片23cに対して公知の構造で垂下するように着脱自在に固定されている。そして、上枠前側片23cに対して点検カバー23dを取り付けた状態においては、上枠23の内部が前側(点検側)から見えないように覆われ、上枠前側片23cから点検カバー23dを取り外した状態においては、上枠23の内部が前側(点検側)から見えるように開放されて、この上枠23の内部に配置された各部を点検することが可能になる。
【0028】
(構成−枠体−巾木)
図1から
図3において、巾木24は、開口部2の下方の周縁(具体的には、建物の躯体1の一部である床面)に公知の方法で固定される枠材であって、前側方立25及び後側方立26から戸尻縦枠22に至る長さの長尺状の枠材であり、これら前側方立25及び後側方立26と戸尻縦枠22の相互間において水平方向(見付け方向)に沿って取り付けられている。
【0029】
(構成−枠体−前側方立)
前側方立25は、全閉位置に位置させた扉50の戸尻側端部の前方に配置される枠材であって、上枠23から巾木24に至る長さの長尺状の枠材であり、これら上枠23と巾木24の相互間において鉛直方向に沿って配置される枠材である。この前側方立25は、その上側の端部において上枠23に対してネジ等の固定具を介して固定されると共に、その下側の端部において巾木24に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
【0030】
(構成−枠体−後側方立)
後側方立26は、全閉位置に位置させた扉50の戸尻側端部の後方に配置される枠材であって、上枠23から巾木24に至る長さの長尺状の枠材であり、これら上枠23と巾木24の相互間において鉛直方向に沿って配置される枠材である。この後側方立26は、その上側の端部において上枠23に対してネジ等の固定具を介して固定されると共に、その下側の端部において巾木24に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
【0031】
(構成−枠体−前側中桟)
前側中桟27は、前側方立25と戸尻縦枠22の相互間に水平方向(見付け方向)に沿って配置される枠材であって、前側方立25から戸尻縦枠22に至る長さの長尺状の枠材である。この前側中桟27は、その戸先側の端部において前側方立25に対してネジ等の固定具を介して固定されると共に、その戸尻側の端部において戸尻縦枠22に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
【0032】
(構成−枠体−後側中桟)
後側中桟28は、後側方立26と戸尻縦枠22の相互間に水平方向(見付け方向)に沿って配置される枠材であって、後側方立26から戸尻縦枠22に至る長さの長尺状の枠材である。この後側中桟28は、その戸先側の端部において後側方立26に対してネジ等の固定具を介して固定されると共に、その戸尻側の端部において戸尻縦枠22に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
【0033】
(構成−枠体−前上側戸袋ボード)
前上側戸袋ボード29は、戸尻縦枠22、上枠23、前側方立25、及び前側中桟27によって囲繞される空間に配置される板状体である。この前上側戸袋ボード29は、その周縁部において、これら戸尻縦枠22、上枠23、前側方立25、及び前側中桟27に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
【0034】
(構成−枠体−前下側戸袋ボード)
前下側戸袋ボード30は、戸尻縦枠22、前側中桟27、前側方立25、及び巾木24によって囲繞される空間に配置される板状体である。この前下側戸袋ボード30は、その周縁部において、これら戸尻縦枠22、前側中桟27、前側方立25、及び巾木24に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
【0035】
(構成−枠体−後上側戸袋ボード)
後上側戸袋ボード31は、戸尻縦枠22、上枠23、後側方立26、及び後側中桟28によって囲繞される空間に配置される板状体である。この後上側戸袋ボード31は、その周縁部において、これら戸尻縦枠22、上枠23、後側方立26、及び後側中桟28に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
【0036】
(構成−枠体−後下側戸袋ボード)
後下側戸袋ボード32は、戸尻縦枠22、後側中桟28、後側方立26、及び巾木24によって囲繞される空間に配置される板状体である。この後下側戸袋ボード32は、その周縁部において、これら戸尻縦枠22、後側中桟28、後側方立26、及び巾木24に対してネジ等の固定具を介して固定されている。
【0037】
このように固定された枠材の各部のうち、戸尻縦枠22、上枠23、巾木24、前側方立25、後側方立26、前側中桟27、後側中桟28、前上側戸袋ボード29、前下側戸袋ボード30、後上側戸袋ボード31、及び後下側戸袋ボード32によって囲繞される空間部として戸袋34が構成されている。この戸袋34の部分のうち、戸袋34の見込み方向の側部の一方(すなわち、戸袋34の前側側部)は、上枠23、巾木24、前側中桟27、前上側戸袋ボード29、及び前下側戸袋ボード30を備えて構成されている(なお、これら上枠23、巾木24、及び前側中桟27は、上下方向に沿って相互に間隔を隔てて並設されている)。また、戸袋34の見込み方向の側部の他方(すなわち、戸袋34の後側側部)は、上枠23、巾木24、後側中桟28、後上側戸袋ボード31、及び後下側戸袋ボード32を備えて構成されている(なお、これら上枠23、巾木24、及び後側中桟28は、上下方向に沿って相互に間隔を隔てて並設されている)。また、この戸袋34の内部に扉50を出し入れ自在に収容することが可能であり、この戸袋34の内部に扉50を完全に収容した状態(ただし、扉50の後述する取手69の周辺部分については、戸袋34の内部に収容せずに、前側方立25及び後側方立26戸袋34よりも戸先側に残した状態)が、扉50を全開位置に位置させた状態(すなわち、全開状態)となる。なお、この戸袋34の前面及び後面は、実際には壁仕上げ材(例えば、内装用化粧材)によって覆われるが、この壁仕上げ材については公知であるために図示及び説明を省略する。
【0038】
(構成−枠体−ガイドローラ)
図5において、ガイドローラ33は、扉50の下端が前後方向に大きく振れることを防止するための振れ防止手段である。このガイドローラ33は、その左右方向の略中心の位置が前側方立25及び後側方立26の戸先側の端面の近傍位置となるように配置されるもので、巾木24の戸先側の端部に固定された支柱33aと、この支柱33aを中心として回転可能なものであって水平方向に沿って配置されたローラ33bとを備えている。そして、このローラ33bが、扉50の下端に設けられた後述するガイドレール57の内側に配置された状態で、扉50を左右方向に走行させることで、扉50の下端が前後方向に大きく振れようとした場合には、ローラ33bがガイドレール57に当たることで振れがそれ以上大きくなることが防止される。
【0039】
(構成−扉)
次に、扉50の構成について説明する。
図7は、引き戸10の部分正面図、
図8は、扉50を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は戸尻側からの側面図、
図9は、後述する扉本体60を示す図であり、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図、(d)は戸先側からの側面図、(e)は戸尻側からの側面図、(f)は(a)のD−D矢視断面図である。なお、
図7においては、点検カバー23d及び戸袋34の一部を省略又は簡略化して示す。
図5から
図9に示すように、扉50は、建物の開口部2を開閉するための扉であり、扉本体60(扉体本体)、戸先カバー51、戸尻カバー52、戸先戸車53(可燃部材)、戸尻戸車54(可燃部材)、制動装置55、開き防止材56、及びガイドレール57を備えて構成されている。なお、扉50には公知の構造で窓を設けてもよい。
【0040】
(構成−扉−扉本体)
扉本体60は、建物の開口部2を開閉するための開閉体であり、上フレーム61、下フレーム62、複数の縦フレーム63〜66、前側化粧鋼板67、後側化粧鋼板68、錠前(図示省略)、及び取手69を備えて構成されている。
【0041】
(構成−扉−扉本体−上フレーム)
上フレーム61は、扉本体60の内部に配置される内部材であって、扉本体60の左右方向の長さに略対応する長さの長尺状の枠材であり、扉本体60の上端部において水平方向(見付け方向)に沿って配置されている。この上フレーム61は、例えば、鉛直断面形状が下向きコ字状のスチール材として形成されている。
【0042】
(構成−扉−扉本体−下フレーム)
下フレーム62は、扉本体60の内部に配置される内部材であって、扉本体60の左右方向の長さに略対応する長さの長尺状の枠材であり、扉本体60の下端部において水平方向(見付け方向)に沿って配置されている。この下フレーム62は、例えば、鉛直断面形状が上向きコ字状のスチール材として形成されている。
【0043】
(構成−扉−扉本体−縦フレーム)
複数の縦フレーム63〜66は、扉本体60の内部に配置される内部材である。これら複数の縦フレーム63〜66は、相互に間隔を隔てた状態で、各々が鉛直方向に沿って配置されている(なお、複数の縦フレーム63〜66は、相互に当接するように配置されていてもよい)。各縦フレーム63〜66は、例えば、水平断面形状がコ字状又は逆コ字状の部材として形成されている。以下では、複数の縦フレーム63〜66のうち、最も戸先側に配置される縦フレームを、必要に応じて「戸先縦フレーム」63と称し、最も戸尻側に配置される縦フレームを、必要に応じて「戸尻縦フレーム」64と称し、これら戸先縦フレーム63及び戸尻縦フレーム64以外の縦フレームを「中間縦フレーム」65、66と称する。このうち、戸先縦フレーム63は、扉本体60の上下方向の長さに略対応する長さの長尺状の枠材であって、水平断面形状が逆コ字状の部材であり、後側化粧鋼板68の後述する化粧戸先片68dの裏面に対して溶接によって固定されている。戸尻縦フレーム64は、扉本体60の上下方向の長さより短い長さ(戸尻縦フレーム64の下端が、下フレーム62の上面近傍に位置する長さ)の長尺状の枠材であって、水平断面形状がコ字状の部材であり、前側化粧鋼板67の後述する化粧戸尻片67dの裏面に固定された固定材である。中間縦フレーム65、66は、扉本体60の上下方向の長さより短い長さ(中間縦フレーム65、66の上端が、上フレーム61の下面近傍に位置し、中間縦フレーム65、66の下端が、下フレーム62の上面近傍に位置する長さ)の長尺状の枠材であって、水平断面形状がコ字状の部材であり、前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68に対して両面テープ(図示省略)によって固定されている。これら複数の縦フレーム63〜66の具体的な製造方法は任意であるが、例えば、溶融亜鉛メッキ鋼板を曲げ加工することによって製造されている。特に、溶融亜鉛メッキ鋼板には、表面、裏面、及び端面のいずれにおいても、樹脂による表面処理は施されていないため、YAG溶接を行う前に樹脂を削り落とす等の必要がない。ただし、扉本体60の内部に配置される内部材としては、扉本体60の強度や後述する接合構造に問題がない場合には、縦フレーム63〜66の全部又は一部を省略したり、縦フレーム63〜66の全部又は一部に代えて、あるいは縦フレーム63〜66の全部又は一部に加えて、断熱材やコア材を用いたりしてもよい。
【0044】
(構成−扉−扉本体−前側化粧鋼板)
前側化粧鋼板67は、上フレーム61、下フレーム62、及び複数の縦フレーム63〜66を前側から覆う化粧鋼板であり、鉛直方向に沿って配置された化粧主片67a、この化粧主片67aの上端から後方に至るように水平方向に沿って配置された化粧上片67b、化粧主片67aの下端から後方に至るように水平方向に沿って配置された化粧下片67c、及び化粧主片67aの戸尻側の側端から後方に至るように鉛直方向に沿って配置された化粧戸尻片67dを備えて構成されている。これら化粧主片67a、化粧上片67b、化粧下片67c、及び化粧戸尻片67dの両側面のうち、表側に露出する面(上フレーム61、下フレーム62、及び複数の縦フレーム63〜66に対して対向する面とは反対側の面。以下、表面)には、装飾等のために樹脂による表面処理(例えば、塩化ビニル樹脂による塗装や、フィルム状樹脂による張合せ)が施されており、一方、表側に露出しない面(上フレーム61、下フレーム62、及び複数の縦フレーム63〜66に対して対向する面。以下、裏面)には、樹脂による表面処理は施されていない。また、化粧主片67aの端面(最も戸先寄りに位置する鉛直面であり、いわゆる小口)と、化粧上片67b、化粧下片67c、及び化粧戸尻片67dの端面(最も後方向寄りに位置する鉛直面であり、いわゆる小口)には、裏面と同様に、樹脂による表面処理は施されていない。このような前側化粧鋼板67の具体的な製造方法は任意であるが、例えば、正面方形状の鋼板の一方の側面のみに樹脂による表面処理を行い、この鋼板の上下の端部と戸尻側の端部とを曲げ加工することで、前側化粧鋼板67を製造することができる。
【0045】
(構成−扉−扉本体−後側化粧鋼板)
後側化粧鋼板68は、上フレーム61、下フレーム62、及び複数の縦フレーム63〜66を後側から覆う化粧鋼板であり、鉛直方向に沿って配置された化粧主片68a、この化粧主片68aの上端から前方に至るように水平方向に沿って配置された化粧上片68b、化粧主片68aの下端から前方に至るように水平方向に沿って配置された化粧下片68c、化粧主片68aの戸先側の側端から前方に至るように鉛直方向に沿って配置された化粧戸先片68d、及び化粧主片68aの戸尻側の側端から前方に至るように鉛直方向に沿って配置された化粧戸尻片68eを備えて構成されている。これら化粧主片68a、化粧上片68b、化粧下片68c、化粧戸先片68d、及び化粧戸尻片68eの両側面のうち、表側に露出する面(上フレーム61、下フレーム62、複数の縦フレーム63〜66に対して対向する面とは反対側の面。以下、表面)には、装飾等のために樹脂による表面処理(例えば、塩化ビニル樹脂による塗装や、フィルム状樹脂による張合せ)が施されており、一方、表側に露出しない面(上フレーム61、下フレーム62、複数の縦フレーム63〜66に対して対向する面。以下、裏面)には、樹脂による表面処理は施されていない。また、化粧上片68b、化粧下片68c、化粧戸先片68d、及び化粧戸尻片68eの端面(最も前方寄りに位置する鉛直面であり、いわゆる小口)には、裏面と同様に、樹脂による表面処理は施されていない。このような後側化粧鋼板68の具体的な製造方法は任意であるが、例えば、正面方形状の鋼板の一方の側面のみに樹脂による表面処理を行い、この鋼板の上下左右の端部を曲げ加工することで、後側化粧鋼板68を製造することができる。
【0046】
(構成−扉−扉本体−錠前)
錠前は、扉本体60を全閉位置に固定するための固定手段である。この錠前は、扉本体60の内部における戸先縦フレーム63の近傍位置に配置されるもので、デッドボルトとサムターン(いずれも図示省略)を備えており、ユーザがサムターンを操作することにより、デッドボルトを戸先縦フレーム63に形成された切り欠き(図示省略)を介して扉本体60の外部に出し入れすることができ、このデッドボルトを戸先縦枠21の受金具に対して係脱自在に係止させることで、扉本体60を全閉位置に固定することができる。
【0047】
(構成−扉−扉本体−取手)
取手69(
図1、
図2、及び
図7のみに示し、他の図面においては省略する)は、扉本体60をユーザが操作するために把持する把持手段であり、扉本体60の前面及び後面における戸先寄りの位置に固定されている。
【0048】
(構成−扉−戸先カバー)
図6において、戸先カバー51は、扉本体60の戸先側に設けられるカバーである。この戸先カバー51は、鉛直断面を右向きコ字状とする部材であって、扉本体60の高さに略対応する高さの長尺状の部材である。この戸先カバー51の内部における見込方向の長さ(厚み)は、扉本体60の見込方向の長さ(厚み)に略対応しており、扉本体60の戸先側の端部を内部に収容した状態で、ネジ等の固定部(図示省略)によって扉本体60の戸先側に固定されている。なお、扉本体60の戸先側の端部と戸先カバー51との相互間には、戸先カバー51の戸先側の側面を、錠前の戸先側の側面に面一状に位置合わせするためのスペーサ51aが介装されている。
【0049】
(構成−扉−戸尻カバー)
戸尻カバー52は、扉本体60の戸尻側に設けられるカバーである。この戸尻カバー52は、鉛直断面を左向きコ字状とする部材であって、扉本体60の高さに略対応する高さの長尺状の部材である。この戸尻カバー52の内部における見込方向の長さ(厚み)は、扉本体60の見込方向の長さ(厚み)より長くなっており、扉本体60の戸尻側の端部を内部に収容した状態で、ネジ等の固定部(図示省略)によって扉本体60の戸尻側に固定されている。
【0050】
(構成−扉−戸先戸車)
図5において、戸先戸車53は、扉本体60を走行可能(スライド移動可能)とするための走行手段であり、上枠23と扉本体60とによって囲まれた空間内において扉本体60の上面における戸先寄りの位置に固定されている。この戸先戸車53は、ベース片53aと、車輪53bとを備えている。ベース片53aは、鉛直断面が略L状の部材であり、扉本体60の上面に固定されている。より具体的には、
図9(b)に示すように、前側化粧鋼板67の化粧上片67bと後側化粧鋼板68の化粧上片68bには、ベース片53aに対応する位置に切り欠き67f、68fが形成されており、この切り欠き67f、68fを介して、ベース片53aが上フレーム61に固定されている。車輪53bは、樹脂にて形成されており、ベース片53aの前側の側面に回転可能に固定されている。
【0051】
(構成−扉−戸尻戸車)
図5において、戸尻戸車54は、扉本体60を走行可能(スライド移動可能)とするための走行手段であり、上枠23と扉本体60とによって囲まれた空間内において扉本体60の上面における戸尻寄りの位置に固定されている。この戸尻戸車54は、ベース片54aと、車輪54bとを備えている。ベース片54aは、鉛直断面が略L状の部材であり、扉本体60の上面に固定されている。より具体的には、
図9(b)に示すように、前側化粧鋼板67の化粧上片67bと後側化粧鋼板68の化粧上片68bには、ベース片54aに対応する位置に切り欠き67f、68fが形成されており、この切り欠き67f、68fを介して、ベース片54aが上フレーム61に固定されている。車輪54bは、樹脂にて形成されており、ベース片54aの前側の側面に回転可能に固定されている。
【0052】
そして、
図5に示すように、このように構成された戸先戸車53及び戸尻戸車54であって見付け方向(左右方向)に沿って並設された戸先戸車53及び戸尻戸車54をレール23eに載置するように扉本体60をレール23eに吊り下げ支持した状態で、この扉本体60をユーザが左右方向に押し引きすることで、レール23eの上を戸先戸車53及び戸尻戸車54が回転しながら走行し、扉本体60を左右方向に沿ってスライドさせることが可能になる。
【0053】
(構成−扉−制動装置)
図7において、制動装置55は、扉本体60を制動するための制動手段であり、扉本体60の上面における戸先寄りの位置に固定されている。この制動装置55は、ギア(ピニオンギア。図示省略)と、当該ギアの回転に抵抗を加える抵抗手段(図示省略)を備えて構成されている。このギアは上述したラック23fに噛み合っており、扉本体60が自閉する際、ギアの回転に抵抗手段によって抵抗が加えられることで、扉本体60が制動される。なお、本実施の形態においては、ラック23fの取付位置を、点検カバー23dを開放した状態で点検可能となる戸先寄りの位置のみに設けていることから、制動装置55についても、扉本体60の上面における戸先寄りの位置のみに設けているが、このような制約を無視できる場合には、ラック23f及び制動装置55を、扉本体60の上面における戸尻寄りの位置に設けてもよい。
【0054】
(構成−扉−開き防止材)
図5において、開き防止材56は、前側化粧鋼板67の下端と後側化粧鋼板68の下端が相互に離れる方向に開くことを防止するための部材であり、鉛直下向きコ字状の部材であって、これら前側化粧鋼板67の下端と後側化粧鋼板68の下端との相互間において水平方向に沿って配置されている。この開き防止材56が公知の方法によってこれら前側化粧鋼板67の下端と後側化粧鋼板68の下端とに固定されることで、前側化粧鋼板67の下端と後側化粧鋼板68の下端が火災の熱によって加熱された場合であっても、これら前側化粧鋼板67の下端と後側化粧鋼板68の下端が変形等して相互に離れることが防止される。
【0055】
(構成−扉−ガイドレール)
ガイドレール57は、ガイドローラ33をガイドするための誘導路であり、鉛直下向きコ字状の部材であって、前側化粧鋼板67の下端と後側化粧鋼板68の下端との相互間において水平方向に沿って配置されている。このガイドレール57の内側にローラ33bが配置された状態で、扉50を左右方向に走行させることで、扉50の下端が前後方向に大きく振れようとした場合には、ローラ33bがガイドレール57に当たることで振れがそれ以上大きくなることが防止される。
【0056】
(構成−扉−化粧鋼板の接合構造)
次に、扉50における化粧鋼板の接合構造について説明する。この接合構造は、概略的には、前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68のうち、いずれか一方の端面又は裏面と、いずれか他方の裏面又は当該裏面に固定された戸尻縦フレーム64とを、相互に溶接により接合する構造である。
【0057】
(構成−扉−化粧鋼板の接合構造−戸先側の接合構造)
最初に、扉50の戸先側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合構造について説明する。
図10は、
図9(f)の領域Xの拡大図である。この
図10に示すように、前側化粧鋼板67の化粧主片67aは、その表面を前側に向けた状態であり、その裏面を後側に向けた状態であり、かつ、その端面を戸先側に向けた状態で、配置されている。また、この前側化粧鋼板67の化粧主片67aは、その端面が後側化粧鋼板68の化粧戸先片68dよりも若干戸先側に突出している(例えば、数mmだけ戸先側に突出している。以下、このように突出している部分を化粧主片突出部67eと称する)。なお、この化粧主片突出部67eの突出長さは、化粧主片67aと化粧戸先片68dとの後述するYAG溶接が可能である限り、任意である。
【0058】
一方、後側化粧鋼板68の化粧戸先片68dは、その表面を戸先側に向けた状態であり、その裏面を戸尻側に向けた状態であり、かつ、その端面を前側化粧鋼板67の化粧主片67aの化粧主片突出部67eの裏面に向けた状態で、配置されている。ここで、後側化粧鋼板68の化粧戸先片68dの見込方向の長さは、扉本体60の見込方向の長さ(厚み)よりも化粧主片67aの板厚分だけ短い長さとなっているため、この化粧戸先片68dの端面は、その上下方向の略全面において、前側化粧鋼板67の化粧主片67aの化粧主片突出部67eの裏面に対して、略直交するように突き合わせた状態で接触している。
【0059】
このように配置された前側化粧鋼板67の化粧主片67aの化粧主片突出部67eの裏面と、後側化粧鋼板68の化粧戸先片68dの端面とは、その相互間の接合領域(以下、戸先側接合領域S1)において、公知のYAG溶接にて略全長に渡って溶接されることで相互に固定されている。特に、YAG溶接は、比較的小さいスポットにレーザーを集中照射することで熱が拡散し難いため、溶接跡(肉盛り)を比較的小さくすることができ、溶接跡をサンダー等にて切削する必要がないという利点がある。ここで、前側化粧鋼板67の化粧主片67aの裏面と、後側化粧鋼板68の化粧戸先片68dの端面には、樹脂による表面処理が施されていないことから、YAG溶接にて溶接を行うために事前に樹脂を削り落とす必要がないため、樹脂を削り落とす必要がある場合に比べて、前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68を用いた扉50の製造コストを低減することが可能になる。また、前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68を用いた扉50を溶接により製造することが可能になるため、接着により製造した扉に比べて、扉50の防火性能を向上させることが可能になる。なお、このような扉本体60の戸先側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との戸先側接合領域S1は、
図6に示すように、扉本体60の戸先側に設けた戸先カバー51によって外部に露出しないように覆われている。
【0060】
(構成−扉本体−化粧鋼板の接合構造−戸尻側の接合構造)
次に、扉本体60の戸尻側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合構造について説明する。
図11は、
図9(f)の領域Yの拡大図である。この
図11に示すように、前側化粧鋼板67の化粧戸尻片67dは、その表面を戸尻側に向けた状態であり、その裏面を戸先側に向けた状態であり、かつ、その端面を後側に向けた状態で、配置されている。ここで、前側化粧鋼板67の化粧戸尻片67dの見込方向の長さは、扉本体60の見込方向の長さ(厚み)よりも若干短くなっている(例えば、後側化粧鋼板68の化粧主片68aよりも数mmだけ前側寄りに位置している。以下、化粧戸尻片67dの見込方向の長さと扉本体60の見込方向の長さとの差分を、戸尻第1距離L1と称する)。
【0061】
このように形成された前側化粧鋼板67の化粧戸尻片67dには、上述したように戸尻縦フレーム64が固定されている。ここで、
図9及び
図11に示すように、複数の縦フレーム63〜66のうち、戸尻縦フレーム64以外の縦フレーム(すなわち、戸先縦フレーム63及び中間縦フレーム65、66)は、その見込方向の長さが、扉本体60の見込方向の長さと略同等となっているのに対して、戸尻縦フレーム64は、その見込方向の長さが、化粧戸尻片67dの見込方向の長さと同様に、扉本体60の見込方向の長さ(厚み)よりも若干短くなっている(上述した戸尻第1距離L1だけ短くなっている)。このため、
図11に示すように、このように形成された戸尻縦フレーム64は、その前側の側片64aが前側化粧鋼板67の化粧主片67aの裏面に当接するように配置されており、その後側の側片64bが前側化粧鋼板67の化粧戸尻片67dの端面に略対応する位置に配置されている。
【0062】
一方、後側化粧鋼板68の化粧戸尻片68eは、その表面を戸尻側に向けた状態であり、その裏面を戸先側に向けた状態であり、かつ、その端面を戸尻縦フレーム64の側面に向けた状態で、配置されている。ここで、後側化粧鋼板68の化粧主片68aの左右方向の長さは、前側化粧鋼板67の化粧主片67aの左右方向の長さよりも若干短くなっている(例えば、前側化粧鋼板67の化粧主片67aよりも数mmだけ短くなっている。以下、化粧主片68aの左右方向の長さと化粧主片67aの左右方向の長さとの差分を、戸尻第2距離L2と称する)。そして、このように戸尻第2距離L2を設けることにより、後側化粧鋼板68の化粧戸尻片68eの左右方向の位置は、扉本体60の戸尻側の端部の位置よりも若干戸先側寄りの位置になっている(例えば、前側化粧鋼板67の化粧戸尻片67dよりも数mmだけ戸先側寄りの位置になっている)。また、後側化粧鋼板68の化粧戸尻片68eの見込方向の長さは、上述した戸尻第1距離L1にほぼ対応している。このため、後側化粧鋼板68の化粧戸尻片68eの端面は、その上下方向の略全面において、戸尻縦フレーム64の後側の側片64bにおける後側の面に対して、略直交するように突き合わせた状態で接触している。
【0063】
このように配置された戸尻縦フレーム64の側片64bにおける後側の面と、後側化粧鋼板68の化粧戸尻片68eの端面とは、その相互間の接合領域(以下、戸尻側接合領域S2)において、公知のYAG溶接にて略全長に渡って溶接することで相互に固定されている。ここで、戸尻縦フレーム64の全ての側面(側片64bにおける後側の面を含む)と、後側化粧鋼板68の化粧戸尻片68eの端面には、樹脂による表面処理が施されていないことから、YAG溶接にて溶接を行うために事前に樹脂を削り落とす必要がないため、樹脂を削り落とす必要がある場合に比べて、前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68を用いた扉50の製造コストを低減することが可能になる。また、前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68を用いた扉50を溶接により製造することが可能になるため、接着により製造した扉に比べて、扉50の防火性能を向上させることが可能になる。なお、このような扉本体60の戸尻側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との戸尻側接合領域S2は、
図6に示すように、扉本体60の戸尻側に設けた戸尻カバー52によって外部に露出しないように覆われている。
【0064】
(構成−扉本体−化粧鋼板の接合構造−上側の接合構造)
また、扉本体60の上側における前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68と上フレーム61との接合構造について説明する。
図9(d)(e)に示すように、前側化粧鋼板67の化粧上片67bは、その後側の端面が上フレーム61の見込方向における中央位置よりも若干前側に位置するように配置されている。そして、この化粧上片67bの端面が、上フレーム61の上面に対して、公知のアーク溶接によって溶接されることで、前側化粧鋼板67が上フレーム61に固定されている。また、後側化粧鋼板68の化粧上片68bは、その前側の端面が上フレーム61の見込方向における中央位置よりも若干後側に位置するように配置されている。そして、この化粧上片68bの端面が、上フレーム61の上面に対して、公知のアーク溶接によって溶接されることで、後側化粧鋼板68が上フレーム61に固定されている。なお、このような扉本体60の上側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合領域(以下、上側接合領域S3)は、
図5に示すように、上枠23によって外部に露出しないように覆われている。
【0065】
(構成−扉本体−化粧鋼板の接合構造−下側の接合構造)
また、扉本体60の下側における前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68と下フレーム62との接合構造について説明する。
図5に示すように、前側化粧鋼板67の下端と後側化粧鋼板68の下端は、下フレーム62よりも下方に位置している。そして、これら下端よりも上側の位置において、前側化粧鋼板67の裏面及び後側化粧鋼板68の裏面と下フレーム62とが両面テープ(図示省略)によって接合されることで、前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68が下フレーム62に固定されている。
【0066】
(構成−扉本体−製造方法)
次に、扉本体60の製造方法(組立手順)について説明する。まず、前側化粧鋼板67の化粧戸尻片67dにおける所定位置に、戸尻縦フレーム64を溶接により固定する。具体的には、戸尻縦フレーム64には、その長手方向に沿った孔(図示省略)が形成されており、この孔を介して、戸尻縦フレーム64の戸先側から、公知のアーク溶接によって戸尻縦フレーム64を前側化粧鋼板67に栓溶接して固定する。
【0067】
また、後側化粧鋼板68の化粧戸先片68dにおける所定位置に、戸先縦フレーム63を溶接により固定する。具体的には、戸先縦フレーム63には、その長手方向に沿った孔(図示省略)が形成されており、この孔を介して、戸先縦フレーム63の戸尻側から、公知のアーク溶接によって戸先縦フレーム63を後側化粧鋼板68に栓溶接して固定する。
【0068】
次に、台座(図示省略)に、上記のように戸尻縦フレーム64を固定した前側化粧鋼板67を、前側化粧鋼板67の化粧主片67aの表面が台座と当接するように載置する。そして、この前側化粧鋼板67の裏面における所定位置に、上フレーム61、下フレーム62、及び中間縦フレーム65、66を両面テープで固定する。具体的には、上フレーム61、下フレーム62、及び中間縦フレーム65、66の前側の側面(前側化粧鋼板67の裏面に当接する側面)に両面テープを張り付け、これら上フレーム61、下フレーム62、及び中間縦フレーム65、66を前側化粧鋼板67の裏面における所定位置に載置することで固定する。また、この際、これら上フレーム61、下フレーム62、及び中間縦フレーム65、66の後側の側面(後側化粧鋼板68の裏面に当接する側面)にも、両面テープを張り付ける。ただし、この両面テープの後側の側面には、剥離紙を付けたままにしておく。
【0069】
次いで、上記のように戸先縦フレーム63を固定した後側化粧鋼板68を、その裏面が台座側を向くように、台座上の前側化粧鋼板67に載置する。この際、前側化粧鋼板67に対して後側化粧鋼板68の位置合わせを行う。この位置合わせは、戸先側と戸尻側のいずれの側を基準として行ってもよいが、錠前が設けられる戸先側を基準として位置合わせを行うことが好ましい。特に、このように戸先側を基準として位置合わせを行い、戸尻側を後で位置合わせすることにより、前側化粧鋼板67に対する後側化粧鋼板68の位置合わせが容易になる。すなわち、上記戸尻側の接合構造においては、後側化粧鋼板68の化粧戸尻片68eの左右方向の位置が、扉本体60の戸尻側の端部の位置よりも若干戸先側寄りとなっており、化粧戸尻片68eの左右方向の位置と扉本体60の戸尻側の端部の位置との相互間の距離として戸尻第2距離L2だけ余裕が設けてあることから、前側化粧鋼板67に対する後側化粧鋼板68の位置合わせを、この戸尻第2距離L2の範囲内でずらして行うことが可能になり、位置合わせが容易になる。
【0070】
その後、前側化粧鋼板67に固定されている戸尻縦フレーム64の後側の側片64bにおける後側の面と、後側化粧鋼板68の化粧戸尻片68eの端面とを、戸尻側接合領域S2において、YAG溶接にて溶接する。ただし、この溶接は、点溶接によって仮溶接として行うことで、この溶接箇所を支点として、前側化粧鋼板67に対して後側化粧鋼板68を回動させて開くことを可能とする。そして、このように後側化粧鋼板68を回動させて開いた状態で、上フレーム61、下フレーム62、及び中間縦フレーム65、66の後側の側面に張り付けた両面テープの剥離紙を剥し、再び後側化粧鋼板68を回動させて閉じることで、後側化粧鋼板68の裏面に、上フレーム61、下フレーム62、及び中間縦フレーム65、66を両面テープで固定する。その後、前側化粧鋼板67に固定されている戸尻縦フレーム64の後側の側片64bにおける後側の面と、後側化粧鋼板68の化粧戸尻片68eの端面とを、戸尻側接合領域S2において、再びYAG溶接にて溶接する。
【0071】
次いで、前側化粧鋼板67の化粧主片67aの化粧主片突出部67eの裏面と、後側化粧鋼板68の化粧戸先片68dの端面とを、戸先側接合領域S1において、YAG溶接にて溶接する。この溶接は、最初から略全長に渡って本溶接として行うことで、前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との戸先側接合領域S1における接合が完了する。
【0072】
また、前側化粧鋼板67の化粧上片67bの端面と、後側化粧鋼板68の化粧上片68bの端面とを、上フレーム61の上面に対して、上側接合領域S3において溶接する。このことにより、扉本体60の上側における前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68と上フレーム61との接合が完了する。これにて扉本体60の製造が完了する。
【0073】
このような製造方法によれば、全てのYAG溶接を上方より下方に向けて行うことができるので、YAG溶接を容易かつ正確に行うことが可能である。ただし、上記説明した製造方法は、例えば、戸先側の接合と戸尻側の接合とを逆の順序で行う等、適宜変更することができる。
【0074】
(戸袋ボードの取付方法)
次に、戸袋ボードの取付方法について説明する。
図3において、最初に、公知の方法で、戸先縦枠21、戸尻縦枠22、上枠23、巾木24、前側方立25、後側方立26、前側中桟27、及び後側中桟28を取り付ける。
【0075】
次いで、前上側戸袋ボード29、前下側戸袋ボード30、後上側戸袋ボード31、及び後下側戸袋ボード32の取付けを行う。これら各戸袋ボードの取付けの具体的な手順は、以下の通りである。
図12は、
図1のC−C矢視断面図である。なお、
図12においては、各戸袋ボード以外を省略して示す。
【0076】
まず、前下側戸袋ボード30に関しては、前側から、前下側戸袋ボード30の下面を巾木24の上面に当接させるように、前下側戸袋ボード30を巾木24に載置する。そして、この当接箇所を支点として、前下側戸袋ボード30の上端を前側中桟27の下端に当接させるように、前下側戸袋ボード30を回転させつつ動かす。その後、前下側戸袋ボード30と巾木24との当接箇所、及び前下側戸袋ボード30と前側中桟27との当接箇所において、これらを相互にネジ等の固定部により固定する。これにて前下側戸袋ボード30の取付が終了する。また、後下側戸袋ボード32に関しては、前下側戸袋ボード30と同様の手順により、後側から、巾木24及び後側中桟28に対する取り付けを行う。
【0077】
また、前上側戸袋ボード29に関しては、最初に、前側から、前上側戸袋ボード29の上端(引掛手段)を、上枠23(第1枠材)の上枠上側片23bに設けられた上枠係止片23i(上枠23の前側に形成された片(被引掛手段))に係止させる。すなわち、前上側戸袋ボード29の上端は、鉛直断面下向きコ字状に形成されており、上枠23の上枠係止片23iは、鉛直断面上向きコ字状に形成されているので、この前上側戸袋ボード29の上端を上枠係止片23iに係脱自在に係止させることができる。このように係止を行うことで、前上側戸袋ボード29を上枠23に吊り下げることができ、作業者は前上側戸袋ボード29から手を離すことができる。そして、前上側戸袋ボード29の下面を前側中桟27(第2枠材)の上面に当接させるように、前上側戸袋ボード29を上方に持ち上げつつ移動させることで、前上側戸袋ボード29を前側中桟27に載置する。この載置状態においても、前上側戸袋ボード29の上端における鉛直断面下向きコ字状の部分と、上枠係止片23iにおける鉛直断面上向きコ字状の部分とが、見込方向において相互に重合していることから、前上側戸袋ボード29が上枠23から外れて前側に落下することがないため、作業者は前上側戸袋ボード29から手を離すことができる。その後、前上側戸袋ボード29と上枠係止片23iとの当接箇所、及び前上側戸袋ボード29と前側中桟27との当接箇所において、これらを相互にネジ等の固定部(又は溶接)により固定する。これにて前上側戸袋ボード29の取付が終了する。また、後上側戸袋ボード31に関しては、後側から、後上側戸袋ボード31の下面を後側中桟28の上面に当接させるように、後上側戸袋ボード31を後側中桟28に載置する。そして、この当接箇所を支点として、後上側戸袋ボード31の上端を上枠23の下端に当接させるように、後上側戸袋ボード31を回転させつつ動かす。その後、後上側戸袋ボード31と後側中桟28との当接箇所、及び後上側戸袋ボード31と上枠23との当接箇所において、これらを相互にネジ等の固定部(又は溶接)により固定する。
【0078】
このように、前上側戸袋ボード29の取付けを、前上側戸袋ボード29を上枠23の上枠係止片23iに係止させる工程から開始することで、この取付作業を一層容易且つ安全に行うことが可能になる。すなわち、前上側戸袋ボード29を前側中桟27の上面に当接させる工程から開始することも考えられるが、このような工程から開始した場合には、前上側戸袋ボード29が落下する可能性が常にあるために、取付作業中に作業者が前上側戸袋ボード29から手を離すことができず、取付作業が困難であった。また、上側戸袋ボード29の上端部を上枠23に対して固定する工程と、上側戸袋ボード29の下端部を前側中桟27に対して固定する工程とを同時に行う必要がある他の戸袋ボードの取付方法についても、前者の方法と同様に、取付作業中に作業者が前上側戸袋ボード29から手を離すことができず、取付作業が困難であった。これらに対して、上記のように前上側戸袋ボード29を上枠23の上枠係止片23iに係止させる工程から開始した場合には、取付作業中に作業者が前上側戸袋ボード29から手を離すことが可能になり、取付作業を一層容易且つ安全に行うことが可能になる。
【0079】
なお、このような前上側戸袋ボード29、前下側戸袋ボード30、後上側戸袋ボード31、及び後下側戸袋ボード32の取付けは、上記説明した取り付け順序に限定されず、相互に任意の順序に入れ換えて行うこともできる。あるいは、複数の戸袋ボードを同時に取付けてもよい(例えば、一人の作業者が前側から前上側戸袋ボード29の取付けを行うのと同時に、他の作業者が後側から後上側戸袋ボード31の取付けを行う等)。また、取り付け方法は、上記説明した取り付け方法に限定されず、従来と同様の任意の方法で行ってもよい。
【0080】
(防火構造)
最後に、引き戸10の防火構造について説明する。本実施の形態に係る引き戸10は、防火用の引き戸10であるため、火災による熱で溶解燃焼した部品が、引き戸10の外部に露出したり落下したりすることを防止する必要がある。そこで、本実施の形態に係る引き戸10は、以下の防火構造を備えている。
【0081】
(防火構造−戸車受け)
図5及び
図8に示すように、戸先戸車53及び戸尻戸車54は、戸車受け53c、54cを備える。この戸車受け53c、54cは、樹脂で形成された車輪53b、54bが溶解燃焼した場合に、この車輪53b、54bが引き戸10の外部に露出したり落下したりすることを防止するための車輪落下防止手段である。具体的には、戸車受け53c、54cは、鉛直断面形状を上向きコ字状とするスチール材であり、車輪53b、54bと扉本体60との相互間に配置されている。この戸車受け53c、54cの見込方向の位置及び長さは、溶解燃焼した車輪53b、54bを受けることが可能となるように、車輪53b、54bを中心として、前方及び後方に延出されている。また同様に、戸車受け53c、54cの見付方向の位置及び長さは、溶解燃焼した車輪53b、54bを受けることが可能となるように、車輪53b、54bを中心として、左方及び右方に延出されている。なお、本実施の形態においては、
図8に示すように、戸先戸車53と戸尻戸車54とにそれぞれ戸車受け53c、54cを別々に取り付けているが、これら戸先戸車53から戸尻戸車54に連続的に至る長尺状の戸車受け53c、54cを1つ取り付けるようにしてもよい。
【0082】
(防火構造−戸車目隠し板)
図13は、
図8(b)の領域Z1の拡大図である。
図14は、
図8(d)の領域Z2の拡大図である。
図5及び
図8に示すように、戸尻戸車54は、戸車目隠し板54d(延焼抑制手段)を備える。この戸車目隠し板54dは、樹脂で形成された車輪53b、54bが溶解燃焼した場合に、これら車輪53b、54bが引き戸10の外部に露出したり落下したりすること等により、車輪53b、54bを介して当該火災が延焼することを防止するための部材である。すなわち、引き戸10の後側において火災が発生することにより、この火災による熱で枠体20が加熱された場合には、前側方立25が特に大きく変形し、この変形に伴って上枠23の点検カバー23dも大きく変形する可能性がある。より具体的には、点検カバー23dの左右の両端部のうち、前側方立25に近い戸尻側の端部が後側に向けて曲がって開くことで、点検カバー23d及び前側方立25と扉本体60との相互間に隙間が形成される可能性がある。このように隙間が形成された場合において、前側方立25に近い戸尻戸車54の車輪54bが溶解燃焼した場合には、上記溶解燃焼による炎が当該隙間から引き戸10の外部に吹き出たり、溶解した樹脂が当該隙間から引き戸10の外部に溢れ出たり、又は、この車輪54bが当該隙間を介して引き戸10の外部に露出して落下したりする可能性があることから、当該火災が引き戸10の前側に延焼するおそれがあった。そこで、このような問題を解消するために、本実施の形態においては、戸尻戸車54に戸車目隠し板54dを設けている。
【0083】
この戸車目隠し板54dは、車輪54bと点検カバー23d(見込み方向において戸尻戸車54と重合する部材)との相互間において車輪54b及び点検カバー23dと間隔を隔てて鉛直方向に沿って配置された平板状のスチール材であり、戸尻戸車54の戸車受け54cにネジ等の固定具にて固定されている。具体的には、
図13、
図14に示すように、戸車目隠し板54dを後述する開きストッパ70を支持する支持プレート71(扉本体60の上面全体を略覆うように(より具体的には、扉本体60の前端部よりも前側に突出するように)設けられた板状の部材)の前端部から見込み方向(前後方向)の内側に向けて所定距離L6離れた位置に配置することにより、戸尻戸車54が火災の熱で溶解燃焼した場合に、戸車目隠し板54dと支持プレート71との相互間の隙間を介して当該火災の炎が戸車目隠し板54dよりも前側に吹き出た場合に、当該吹き出た炎が支持プレート71における戸車目隠し板54dよりも前側に突出した部分(すなわち、所定距離L6に対応する部分)によって遮蔽されることで、当該炎が下方側に向けて燃え移ることを抑制できる。この場合において、所定距離L6の長さについては、例えば、戸車目隠し板54dと支持プレート71との相互間の隙間を介して上記火災の炎が戸車目隠し板54dよりも前側に吹き出た場合に、当該炎が下方側に向けて燃え移ることを抑制できる長さ以上の長さに設定することが望ましい。このように戸車目隠し板54dを設置することで、戸車目隠し板54dを扉本体60の上面に設けた場合でも、扉50をスライド移動させた場合に戸車目隠し板54dが戸尻戸車54、上枠23、又は上枠23と扉本体60とによって囲まれた空間内において上枠23に対して取り付けられた各種の部品と当接することを防止でき、戸車目隠し板54dによって扉50のスライド移動が妨げられることを回避できると共に、戸尻戸車54又は上枠23との当接によって戸車目隠し板54dが損傷することを回避できる。また、戸車目隠し板54dを支持プレート71よりも前側の位置(又は支持プレート71の前端部と面一となる位置)に配置した場合に比べて、戸尻戸車54が火災の熱で溶解燃焼した場合に、戸車目隠し板54dと支持プレート71との相互間を介して当該火災の炎が戸車目隠し板54dよりも前側に吹き出た場合に、当該吹き出た炎が下方側に向けて燃え移ることを抑制できるので、当該吹き出た炎が上枠23と扉本体60とによって囲まれた空間の外部に吹き出ることも抑制することが可能となる。なお、実施の形態では、
図14に示すように、戸車目隠し板54dを支持プレート71と隙間を隔てて設置しているが、これに限られず、例えば、この隙間から火災の炎が吹き出ることを防止できるように、戸車目隠し板54dの下端と支持プレート71の上面とが当接するように、戸車目隠し板54dを設置してもよい。
【0084】
また、戸車目隠し板54dの大きさ及び設置位置の設定方法については、本実施の形態では、戸尻戸車54が上記火災の熱で燃焼した場合に、当該燃焼により生じた炎が引き戸10の前側に燃え移ることを抑制するために、戸車目隠し板54dによって少なくとも戸尻戸車54における見込み方向のいずれか一方側の側面全体(すなわち、戸尻戸車54の前面全体)及びその近傍領域が覆われるように決定する。ここで、「その近傍領域」とは、戸尻戸車54に近接する領域を意味し、本実施の形態では、戸尻戸車54が上記火災の熱で溶解燃焼した場合に、当該溶解燃焼により生じた炎が届く可能性がある領域として説明するが、これに限られず、例えば当該炎が届く可能性がある領域よりも広い領域であってもよい。また、この戸車目隠し板54dによって覆われる領域については、以下に示す通りに設定している。具体的には、上下方向の領域については、
図5、
図8に示すように、戸尻戸車54の上下方向の長さと略同一の長さとなるように、戸車受け54cの下端部から上方に向けて所定距離L3に至る領域に設定している。なお、この所定距離L3の長さについては、上述した戸尻戸車54の上下方向の長さと略同一の長さに限られず、例えば、戸車目隠し板54dの真上に位置する図示しない他の部品(例えば、公知の防火扉用のレリーズ等)が存在しない場合には、戸車目隠し板54dの上端部が上枠上側片23bの近傍に位置する長さに設定してもよい。あるいは、上記他の部品が存在する場合には、戸尻戸車54の上下方向の長さよりも長く(又は短く)、戸車目隠し板54dの上端部が上枠上側片23bの近傍に位置する長さよりも短い長さ(具体的には、戸車目隠し板54dの上端部が他の部品の下端部の近傍に位置する長さ)に設定してもよい。また、左右方向の領域については、
図5、
図8に示すように、点検カバー23dの変形によって隙間が形成された場合であっても、上記溶解燃焼した戸尻戸車54(特に、車輪54b)及びその近傍領域を隠すことができると共に、上枠23と扉本体60とによって囲まれた空間内を流れる気流によって上記溶解燃焼による炎が戸車目隠し板54dの見付け方向側の側方(つまり、戸車目隠し板54dの左側方又は右側方)に回り込むことにより、当該炎が引き戸10の前側に燃え移ることを抑制できる領域に設定している。より具体的には、戸尻戸車54の見付け方向(左右方向)の長さ及び戸車受け54cの見付け方向(左右方向)の長さのうちいずれか長い方よりも長い長さとなるように、車輪54bの中心から左方に向けて所定距離L4に至る領域と、車輪54bの中心から右方に向けて所定距離L5に至る領域とを含む領域に設定している。この場合において、所定距離L4及び所定距離L5の具体的な長さについては、本実施の形態では、戸車目隠し板54dの製造性又は汎用性の観点(例えば、引き戸10とは勝手違いとなる引き戸10にも適用可能にする等)から、所定距離L4及び所定距離L5の各々は略同一の長さに設定しているが、これに限られず、例えば、所定距離L4又は所定距離L5のいずれか一方が所定距離L4又は所定距離L5のいずれか他方よりも長くなるように設定してもよい。また、所定距離L5の長さについては、本実施の形態では、戸車目隠し板54dの戸尻側の端部が扉本体60の戸尻側の端部と面一となる長さに設定しているが、これに限られず、例えば、戸車目隠し板54dの戸尻側の端部が扉本体60の戸尻側の端部よりも戸袋34の戸尻側に向けて張り出す長さ(ただし、扉本体60の戸尻側の端部に設けられた伸縮性を有する衝突防止部材58(具体的には、戸袋34の戸尻側の端部と衝突して収縮した状態の衝突防止部材58)よりも戸袋34の戸尻側に向けて張り出さない長さ)に設定してもよい。あるいは、戸車目隠し板54dの遮蔽性能が十分に得られる場合には、戸車目隠し板54dの戸尻側の端部が扉本体60の戸尻側の端部よりも見付け方向(左右方向)の内側に位置する長さに設定してもよい。このような構成により、全閉状態において引き戸10の後側で火災が発生した場合において、戸尻戸車54が当該火災の熱で溶解燃焼した場合に、戸車目隠し板54dによって当該溶解燃焼により生じた炎や溶解した樹脂を遮蔽することができると共に、当該溶解燃焼した戸尻戸車54が外部に露出して落下することを防止できる。よって、上記火災が引き戸10の前側に延焼することを抑制することができるので、引き戸10の防火性能を向上させることが可能となる。なお、戸先戸車53に関しては、戸車目隠し板54dは設けられていない。この理由は、前側方立25が大きく変形しても、点検カバー23dの戸先側の端部の変形はそれほど大きくならないことや、点検カバー23dの戸先側の端部には当該端部の変形を抑制するための構造を設けることが可能なためである。しかしながら、戸先戸車53にも、戸車目隠し板54dを設けてもよい。また、戸先戸車53から戸尻戸車54に連続的に至る長尺状の戸車目隠し板54dを1つ取り付けるようにしてもよい。
【0085】
また、この戸車目隠し板54dは、任意の材質で製造することができるが、例えば、不燃性を有し、且つ、上記火災の熱によって戸車目隠し板54dの形状が変わることを抑制することが可能な材質で製造することが好ましく、一例として、鋼材、ステンレス鋼材、ケイ酸カルシウム板等の材質で製造することができる。これにより、戸車目隠し板54dの遮蔽性能を維持することができ、引き戸10の防火性能を一層向上させることが可能となる。また、この戸車目隠し板54dは、任意の方法で製造することができるが、本実施の形態では、戸尻戸車54の設置作業を容易に行うことができるように、戸車受け54cとは別体に形成することにより、戸車目隠し板54dを製造することができる。
【0086】
(防火構造−レール樹脂受け)
また、
図5及び
図7に示すように、上枠23は、レール樹脂受け23gを備える。このレール樹脂受け23gは、樹脂で形成されたラック23fが溶解燃焼した場合に、このラック23fが引き戸10の外部に露出したり落下したりすることを防止するためのラック落下防止である。具体的には、レール樹脂受け23gは、鉛直断面形状を略S字状とするスチール材であり、上枠23の上枠ベース23aの後側の側面における、レール23eの下方に固定されている。このレール樹脂受け23gの見込方向の位置及び長さは、上枠ベース23aの後側の側面からラック23fの前後方向の中央位置付近に至る位置及び長さになっている。また同様に、レール樹脂受け23gの見付方向の位置及び長さは、溶解燃焼したラック23fを受けることが可能となるように、ラック23fに対応する位置及び長さになっている。また、レール樹脂受け23gの見付け方向(左右方向)の両端部の各々に、当該端部を塞ぐための蓋部(図示省略)を設けることで、溶解燃焼した樹脂がレール樹脂受け23gの見付け方向(左右方向)の両端部から漏れ出すことを抑制することができる。
【0087】
(防火構造−加熱発泡材)
また、
図5に示すように、上枠23は、熱加熱発泡材23hを備える。この熱加熱発泡材23hは、火災による熱で上枠23や扉本体60が変形した場合においても、これら上枠23と扉本体60との相互間に隙間が形成されることを防止することにより、この隙間から炎が外部に出ることを防止するための部材である。この熱加熱発泡材23hは、このような隙間が形成され得る任意の箇所に設けることができるが、本実施の形態においては、上枠23の点検カバー23dにおける前側の側面における、扉本体60に対向する位置と、上枠23の上枠ベース23aの後側の側面における、扉本体60に対向する位置に、それぞれ設けられている。そして、火災による熱で熱加熱発泡材23hが加熱されると、この熱加熱発泡材23hが発泡して膨張することで、上枠23と扉本体60との相互間に隙間が形成されることを防止する。
【0088】
(防火構造−開きストッパ)
また、
図3及び
図5に示すように、扉本体60の上面における戸先寄りの位置(戸先戸車53の下方近傍位置)には、開きストッパ70が設けられている。この開きストッパ70は、火災による熱で上枠23や扉本体60が変形した場合においても、これら上枠23と扉本体60との相互間に大きな隙間が形成されることを防止するための部材である。この開きストッパ70は、点検カバー23dに対応する左右方向の位置に配置されている部材であり、鉛直断面を下向きL字状とする部材であって、扉本体60の上面に設けられた支持プレート71によって支持された状態で点検カバー23dの下端に対する前側の位置に延出されており、上枠23や扉本体60が変形して点検カバー23dが前側に変形した場合には、この点検カバー23dに対して係止することで、この点検カバー23dがそれ以上変形することを防止し、上枠23と扉本体60との相互間に大きな隙間が形成されることを防止する。なお、本実施の形態では、扉本体60をスムーズにスライド移動させることができるように、開きストッパ70が扉本体60の上面における戸先寄りの位置のみに設けられているが、これに限られず、例えば、扉本体60をスムーズにスライド移動させることが確保できる場合には、開きストッパ70が扉本体60の上面における戸尻寄りの位置にも設けられてもよい。あるいは、扉本体60の上面における戸先寄りの位置から戸尻寄りの位置に至る長尺状の開きストッパ70が1つ設けられてもよい。
【0089】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68の一方の端面又は裏面を、いずれか他方の裏面又は固定材に溶接により接合するので、前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68の表面に対する溶接を行う必要がなくなる。このため、溶接前に前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68の表面の樹脂を削り落とす必要がなくなり、表面の樹脂を削り落とす必要がある場合に比べて、化粧鋼板を用いた扉50の製造コストを低減することが可能になる。また、化粧鋼板を用いた扉50を溶接により製造することが可能になるため、接着により製造した扉に比べて、扉50の防火性能を向上させることが可能になる。また、前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合を溶接により行うことで、扉本体60の強度を向上させることが可能になる。
【0090】
また、扉50の戸尻側の端部において、固定材を用いた接合を行うことで、前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68の一方の端面を、いずれか他方の裏面に直接的に突き合わせることが困難な場合であっても、前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68とを溶接により接合することが可能になる。
【0091】
また、扉50の戸先側の端部において、固定材を用いることなく接合を行うことができるので、戸先側の端部に錠前を取り付けるためのスペースを容易に確保することが可能になる。
【0092】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0093】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、扉50の製造コストが、従来と同程度であっても、従来と異なる構造により従来と同程度の製造コストとなっている場合には、本願の課題は解決している。
【0094】
(扉について)
上記発明が解決しようとする課題においては、一例として、重量扉の意匠を軽量扉の意匠に合わせる必要がある場合の課題を説明したが、重量扉の意匠を軽量扉の意匠に合わせる必要ない場合や、重量扉以外の任意の扉を製造する場合においても、化粧鋼板である前側表面材と後側表面材とを用いて扉を製造する全ての場合において、本発明は有用である。
【0095】
(化粧鋼板の接合について)
上記実施の形態では、
図10に示した扉本体60の戸先側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合構造と、
図11に示した扉本体60の戸尻側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合構造とを、相互に異なる構造として説明したが、両者を同一の構造としてもよく(例えば、戸先側の接合構造を戸先側と戸尻側の両方に適用したり、戸尻側の接合構造を戸先側と戸尻側の両方に適用したりしてもよく)、あるいは、両者を入れ替えてもよい。また、扉本体60の戸先側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合構造や、扉本体60の戸尻側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合構造を、それぞれ、扉50の見込方向における略中央位置を通る中央線を中心として前後対称になるような構造にしてもよい(例えば、上述したように前側化粧鋼板67の裏面と後側化粧鋼板68の端面とを溶接にて接合する構造に代えて、前側化粧鋼板67の端面と後側化粧鋼板68の裏面とを溶接にて接合する構造にする等)。ただし、扉本体60の戸先側には錠前が取り付けられるため、この取付スペースを確保する観点からは、
図11に示した接合構造よりも、
図10に示した接合構造を戸先側において採用することが好ましい。
【0096】
また、前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68のうち、いずれか一方の端面又は裏面を、いずれか他方の裏面に突き合わせた状態で、これら端面と裏面とを相互に溶接により接合する構造とする場合としては、他の構造を採用することもできる。
図15は、変形例に係る図であり、
図11に対応する箇所の図である。この
図15に示すように、前側化粧鋼板67の化粧戸尻片67dは、その後側の端部として、左右方向に沿って戸先側に約90度折り曲げられた第1端部67gと、この第1端部67gからさらに左右方向に沿って戸尻側に約180度折り曲げられた第2端部67hとを備えている。このように第1端部67gと第2端部67hを形成することにより、前側化粧鋼板67の化粧戸尻片67dの裏面(より具体的には第2端部67hの裏面)が後側に露出することとなっている。そして、この前側化粧鋼板67の化粧戸尻片67dの裏面に対して、後側化粧鋼板68の化粧戸尻片68eの端面が、その上下方向の略全面において、略直交するように突き合わせた状態で接触している。このように配置された前側化粧鋼板67の化粧戸尻片67dの裏面と、後側化粧鋼板68の化粧戸尻片68eの端面とは、その相互間の接合領域(戸尻側接合領域S2)において、公知のYAG溶接にて略全長に渡って溶接することで相互に固定されている。このような接合構造においても、前側化粧鋼板67の化粧戸尻片67dの裏面と、後側化粧鋼板68の化粧戸尻片68eの端面には、樹脂による表面処理が施されていないことから、YAG溶接にて溶接を行うために事前に樹脂を削り落とす必要がないため、樹脂を削り落とす必要がある場合に比べて、前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68を用いた扉50の製造コストを低減することが可能になる。また、前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68を用いた扉50を溶接により製造することが可能になるため、扉本体60の強度を向上させることが可能になる。なお、この
図15に示す構造は、戸先側に適用してもよく、あるいは、この扉本体60の戸尻側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合構造を、扉50の見込方向における略中央位置を通る中央線を中心として前後対称になるような構造にしてもよい。ただし、
図15のように第1端部67gと第2端部67hを形成する製造設備がない場合や、この形成に要する手間を回避したい場合には、
図11に示した構造を採用することがより好ましい。
【0097】
あるいは、前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68のうち、いずれか一方の端面又は裏面と、いずれか他方の裏面又は当該裏面に固定された固定材とを、相互に突き合わせることなく、相互に溶接により接合してもよい。
図16は、他の変形例に係る図であり、
図11に対応する箇所の図である。この
図16に示すように、後側化粧鋼板68に関しては、
図11に示した化粧戸尻片68eが省略されており、化粧主片68aの戸尻側の端部の裏面が、戸尻縦フレーム64の後側の側片64bにおける後側の面に対して、略平行に当接している。この化粧主片68aの左右方向の長さは、前側化粧鋼板67の化粧主片67aの左右方向の長さよりも若干短くなっており、
図11と同様に、化粧主片68aの左右方向の長さと化粧主片67aの左右方向の長さとの差分である戸尻第2距離L2が設けられている。そして、このように戸尻第2距離L2を設けることにより、後側化粧鋼板68の化粧主片68aの戸尻側の端面の位置は、扉本体60の戸尻側の端部の位置よりも若干戸先側寄りの位置になっている。そして、この後側化粧鋼板68の化粧主片68aの戸尻側の端部の裏面と、戸尻縦フレーム64の後側の側片64bにおける後側の面とが、その相互間の戸尻側接合領域S2において、公知のYAG溶接にて略全長に渡って溶接することで相互に固定されている。このような接合構造においても、後側化粧鋼板68の化粧主片68aの戸尻側の端部の裏面と、戸尻縦フレーム64の後側の側片64bにおける後側の面には、樹脂による表面処理が施されていないことから、YAG溶接にて溶接を行うために事前に樹脂を削り落とす必要がないため、樹脂を削り落とす必要がある場合に比べて、前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68を用いた扉50の製造コストを低減することが可能になる。また、前側化粧鋼板67及び後側化粧鋼板68を用いた扉50を溶接により製造することが可能になるため、扉本体60の強度を向上させることが可能になる。なお、この
図16に示す構造は、戸先側に適用してもよく、あるいは、この扉本体60の戸尻側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合構造を、扉50の見込方向における略中央位置を通る中央線を中心として前後対称になるような構造にしてもよい。
【0098】
また、上記実施の形態において説明した、扉本体60の戸先側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合構造や、扉本体60の戸尻側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合構造を、扉本体60の上側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合構造として採用してもよい。さらに、扉本体60の下側においても前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68とを接合する必要がある場合には、この接合に、上記実施の形態において説明した接合構造を採用してもよい。
【0099】
逆に、上記実施の形態において説明した、扉本体60の戸先側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合構造や、扉本体60の戸尻側における前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合構造の一方を、隅肉溶接等にて行ってもよい。ただし、隅肉溶接等では、溶接後の仕上げ(サンダーによる溶接跡の切削等)が必要になったり、部材の全長に渡る溶接が困難になったりすることから、このような問題が生じないYAG溶接を行うことがより好ましい。
【0100】
(溶接について)
上記実施の形態では、前側化粧鋼板67と後側化粧鋼板68との接合や、後側化粧鋼板68と戸尻縦フレーム64との接合を、YAG溶接にて行うものとして説明したが、所要条件に合致する限りにおいて、YAG溶接以外の任意の溶接を適用することもでき、例えば、YAG溶接以外のレーザー溶接(炭酸ガスレーザー溶接、半導体レーザー溶接等)、電子ビーム溶接、抵抗溶接、アルゴン溶接、超音波溶接等を適用してもよい。
【0101】
(戸袋ボードの取付方法)
上記実施の形態では、前上側戸袋ボード29の取り付けに関してのみ、前上側戸袋ボード29の上端を、上枠23の上枠係止片23iに係止させた後、前上側戸袋ボード29を前側中桟27に載置することにより取り付けると説明したが、これに限られない。例えば、前上側戸袋ボード29以外の戸袋ボード(すなわち、前下側戸袋ボード30、後上側戸袋ボード31、又は後下側戸袋ボード32)についても、上述した前上側戸袋ボード29の取付方法と同様の方法で、取り付けてもよい。また、上記実施の形態では、上記前上側戸袋ボード29の取付方法は、戸袋34の見込み方向の側部の一方が、複数の戸袋ボードを備えて構成されている場合に適用されると説明したが、これに限られず、例えば、1つの戸袋ボードのみを備えて構成されている場合にも適用されてもよい。
【0102】
(引掛手段について)
上記実施の形態では、引掛手段を前上側戸袋ボード29の上端に設けていると説明したがこれに限られない。例えば、上枠23又は前上側戸袋ボード29の製造上の都合等によって引掛手段の設置位置が制約される場合には、引掛手段を前上側戸袋ボード29における上端の近傍部分に設けてもよい。
【0103】
(可燃部材について)
上記実施の形態では、可燃部材は、戸先戸車53及び戸尻戸車54であると説明したが、これに限られない。例えば、上枠23と扉本体60とによって囲まれた空間内に設けられる燃えやすい部材であればよく、一例として、扉本体60に取り付けられる制動装置55(具体的には、樹脂部材を含む制動装置55)や、上枠23に取り付けられるラック23f等であってもよい。
【0104】
(戸車目隠し板について)
上記実施の形態では、戸車目隠し板54dを、扉50(具体的には、戸尻戸車54の戸車受け54c)に取り付けていると説明したが、これに限られない。例えば、扉50の構成や形状等により戸車目隠し板54dを当該扉50に取り付けることが難しい場合には、上枠23に取り付けてもよい。
【0105】
また、上記実施の形態では、戸車目隠し板54dを、戸尻戸車54の前側に設けていると説明したが、これに限られない。例えば、これに加えて、戸尻戸車54における見込み方向のいずれか他方側の側面全体(すなわち、戸尻戸車54の後面全体)及びその近傍領域を覆うように、戸尻戸車54の後側にさらに設けてもよい。これにより、戸尻戸車54が上記火災の熱で燃焼した場合に、当該燃焼により生じた炎が引き戸10の後側に燃え移ることを抑制することができる。
【0106】
(第1の付記)
第1の付記1の扉は、建物の開口部を開閉するための扉であって、前記扉の内部に配置される内部材と、前記内部材を前側から覆う前側化粧鋼板と、前記内部材を後側から覆う後側化粧鋼板とを備え、前記前側化粧鋼板と前記後側化粧鋼板のうち、いずれか一方の端面又は裏面と、いずれか他方の裏面又は当該裏面に固定された固定材とを、相互に溶接により接合したものである。
【0107】
第1の付記2の扉は、第1の付記1に記載の扉において、前記扉の戸尻側の端部において、前記前側化粧鋼板と前記後側化粧鋼板のうち、いずれか一方の端面を、いずれか他方の裏面に固定された前記固定材に突き合わせた状態で、これら端面と固定材とを相互に溶接により接合したものである。
【0108】
第1の付記3の扉は、第1の付記1又は2に記載の扉において、前記扉の戸先側の端部において、前記前側化粧鋼板と前記後側化粧鋼板のうち、いずれか一方の端面を、いずれか他方の裏面に突き合わせた状態で、これら端面と裏面とを相互に溶接により接合したものである。
【0109】
(第1の付記の効果)
第1の付記1に記載の扉によれば、前側化粧鋼板と後側化粧鋼板の一方の端面又は裏面を、いずれか他方の裏面又は固定材に溶接により接合するので、前側化粧鋼板と後側化粧鋼板の表面に対する溶接を行う必要がなくなる。このため、溶接前に前側化粧鋼板と後側化粧鋼板の表面の樹脂を削り落とす必要がなくなり、表面の樹脂を削り落とす必要がある場合に比べて、化粧鋼板を用いた扉の製造コストを低減することが可能になる。また、化粧鋼板を用いた扉を溶接により製造することが可能になるため、接着により製造した扉に比べて、扉の防火性能を向上させることが可能になる。また、前側化粧鋼板と後側化粧鋼板との接合を溶接により行うことで、扉本体の強度を向上させることが可能になる。
【0110】
第1の付記2に記載の扉によれば、扉の戸尻側の端部において、固定材を用いた接合を行うことで、前側化粧鋼板と後側化粧鋼板の一方の端面を、いずれか他方の裏面に直接的に突き合わせることが困難な場合であっても、前側化粧鋼板と後側化粧鋼板とを溶接により接合することが可能になる。
【0111】
第1の付記3に記載の扉によれば、扉の戸先側の端部において、固定材を用いることなく接合を行うことができるので、戸先側の端部に錠前を取り付けるためのスペースを容易に確保することが可能になる。
【0112】
(第2の付記)
第2の付記1の扉は、建物の開口部の周縁に設けられた枠体と、前記開口部の開閉をスライド移動することにより行う扉体と、前記扉体によって前記開口部を全開した全開状態において前記扉体を収納する戸袋と、を備えた扉であって、前記扉体によって前記開口部を全閉した全閉状態において火災が発生した場合に、前記枠体を構成する枠材のうち上方側に位置する枠材と前記扉体の扉体本体とによって囲まれた空間内に設けられた可燃部材が前記火災の熱によって燃焼した場合に当該可燃部材を介して当該火災が延焼することを抑制するための延焼抑制手段であって、前記全閉状態において少なくとも前記可燃部材における見込み方向のいずれか一方側の側面全体及びその近傍領域を覆う延焼抑制手段を備えた。
【0113】
第2の付記2の扉は、第2の付記1に記載の扉において、前記可燃部材が見付け方向に沿って複数並設されている場合に、前記延焼抑制手段により、前記全閉状態において前記複数の可燃部材のうち少なくとも前記扉体の戸尻側に位置する可燃部材における見込み方向のいずれか一方側の側面全体及びその近傍領域を覆う。
【0114】
第2の付記3の扉は、第2の付記1又は2に記載の扉において、前記可燃部材は、前記扉体本体の上面に設けられた戸車であって、前記扉体をスライド可能とするための戸車を含み、前記延焼抑制手段を、前記枠材を構成する部材のうち見込み方向において前記戸車と重合する部材と前記戸車との相互間において、前記重合する部材及び前記戸車の各々と間隔を隔てて配置し、且つ、前記扉体本体に対して固定した。
【0115】
第2の付記4の扉は、第2の付記1から3のいずれか一項に記載の扉において、前記延焼抑制手段を、不燃性を有し、且つ、前記火災の熱によって当該延焼抑制手段の形状が変わることを抑制することが可能な材質で形成した。
【0116】
(第2の付記の効果)
第2の付記1に記載の扉によれば、全閉状態において火災が発生した場合に、枠体を構成する枠材のうち上方側に位置する枠材と扉体本体とによって囲まれた空間内に設けられた可燃部材が火災の熱によって燃焼した場合に、全閉状態において少なくとも可燃部材における見込み方向のいずれか一方側の側面全体及びその近傍領域を覆う延焼抑制手段を備えているので、全閉状態において扉体の見込み方向のいずれか一方側で火災が発生した場合において、可燃部材が当該火災の熱で燃焼した場合に、延焼抑制手段によって当該燃焼により生じた炎を遮蔽することができる。よって、上記火災が扉体の見込み方向のいずれか他方側に延焼することを抑制することができるので、扉の防火性能を向上させることが可能となる。
【0117】
第2の付記2に記載の扉によれば、可燃部材が見付け方向に沿って複数並設されている場合に、延焼抑制手段により、全閉状態において複数の可燃部材のうち少なくとも扉体の戸尻側に位置する可燃部材における見込み方向のいずれか一方側の側面全体及びその近傍領域を覆うので、全閉状態において、扉体と枠材との隙間が形成されやすい扉の戸尻側に位置する可燃部材が上記火災の熱で燃焼した場合に、延焼抑制手段によって当該燃焼により生じた炎を遮蔽することができ、上記火災が延焼することを一層抑制することができる。
【0118】
第2の付記3に記載の扉によれば、延焼抑制手段を、枠材を構成する部材のうち見込み方向において戸車と重合する部材と戸車との相互間において、この重合する部材及び戸車の各々と間隔を隔てて配置し、且つ、扉体本体に対して固定したので、延焼抑制手段を扉体本体の上面に設けた場合でも、扉体をスライド移動させた場合に延焼抑制手段が戸車又は枠材と当接することを防止でき、延焼抑制手段によって扉体のスライド移動が妨げられることを回避できると共に、延焼抑制手段が損傷することを回避できる。
【0119】
第2の付記4に記載の扉によれば、延焼抑制手段を、不燃性を有し、且つ、火災の熱によって当該延焼抑制手段の形状が変わることを抑制することが可能な材質で形成したので、延焼抑制手段の遮蔽性能を維持でき、扉の防火性能を一層向上させることが可能となる。
【0120】
(第3の付記)
第3の付記1の扉は、建物の開口部の開閉をスライド移動することにより行う扉体と、前記扉体によって前記開口部を全開した全開状態において前記扉体を収納する戸袋と、を備えた扉であって、前記戸袋の見込み方向の側部は、見付け方向に沿って配置された長尺状の枠材であって、上下方向に沿って並設された一対の枠材と、前記一対の枠材の相互間に設けられた略板状の戸袋ボードと、を備え、前記一対の枠材のうち前記戸袋ボードの上方側に位置する枠材である第1枠材に、被引掛手段を設け、前記戸袋ボードの上方側に、前記被引掛手段に引掛けるための引掛手段を設け、前記被引掛手段に前記引掛手段を引掛けた後、前記一対の枠材のうち前記戸袋ボードの下方側に位置する枠材である第2枠材の上方側の部分に前記戸袋ボードの下方側の部分を載置することにより、前記戸袋ボードを前記第1枠材及び前記第2枠材に対して取り付け可能とした。
【0121】
(第3の付記の効果)
第3の付記1に記載の扉によれば、第1枠材に、被引掛手段を設け、戸袋ボードの上方側に、被引掛手段に引掛けるための引掛手段を設け、被引掛手段に引掛手段を引掛けた後、第2枠材の上方側の部分に戸袋ボードの下方側の部分を載置することにより、戸袋ボードを第1枠材及び第2枠材に対して取り付け可能としたので、戸袋ボードの上端部を第1枠材に対して固定する工程と、戸袋ボードの下端部を第2枠材に対して固定する工程とを同時に行う必要がある扉に比べて、戸袋ボードの取り付け作業を容易且つ安全に行うことが可能となる。また、戸袋の見込み方向の側部が、複数の一対の枠材と、複数の戸袋ボードとを備えている場合に、戸袋ボードの取付順序を気にすることなく各戸袋ボードを取り付けることができる。以上のことから、扉の設置性を向上させることが可能となる。