特許第6810525号(P6810525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホーユー株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810525
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】酸性染毛料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20201221BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   A61K8/46
   A61Q5/10
   A61K8/34
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-37225(P2016-37225)
(22)【出願日】2016年2月29日
(65)【公開番号】特開2017-154984(P2017-154984A)
(43)【公開日】2017年9月7日
【審査請求日】2019年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】薦田 剛
(72)【発明者】
【氏名】笠木 美弥
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−245348(JP,A)
【文献】 特開2004−043431(JP,A)
【文献】 特表2009−523783(JP,A)
【文献】 特開2000−344639(JP,A)
【文献】 特開平09−309817(JP,A)
【文献】 特開2001−302459(JP,A)
【文献】 特開2001−302460(JP,A)
【文献】 特開2009−203211(JP,A)
【文献】 特開2015−140326(JP,A)
【文献】 特開2009−191040(JP,A)
【文献】 特開2008−127307(JP,A)
【文献】 特開2008−120743(JP,A)
【文献】 特開平09−249539(JP,A)
【文献】 特開2009−203210(JP,A)
【文献】 特開平10−182374(JP,A)
【文献】 特開2012−171869(JP,A)
【文献】 特開2000−186018(JP,A)
【文献】 特開平11−335250(JP,A)
【文献】 特開平07−187969(JP,A)
【文献】 特開2001−302471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数が4〜10の範囲内にある1,2−アルカンジオール、(B)芳香族アルコール、及び(C)酸性染料を含有し、pHが2〜5である酸性染毛料組成物。
【請求項2】
前記酸性染毛料組成物中における(A)成分の含有量が0.05〜30質量%である請求項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項3】
前記酸性染毛料組成物中における(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比が0.01〜3である請求項1又は2に記載の酸性染毛料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性染料を含有する酸性染毛料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、毛髪化粧料組成物として酸性染料を含有する酸性染毛料組成物が知られている。一方、アルカリ剤の働きで酸化染料を毛髪のキューティクル内部に浸透させ、酸化剤でメラニン色素の分解と染料の発色を行わせる酸化染毛剤が知られている。酸性染毛料組成物は、コルテックスのごく浅い部分に染料をイオン結合させて発色させる。そのため、酸性染毛料組成物は、毛髪へのダメージを酸化染毛剤に比べて抑制することができるというメリットがある。その一方、酸化染毛剤に比べて染毛力が弱いため、配合量等を調整し、染毛力を向上させた場合、頭皮等に地肌汚れが生ずるという問題があった。
【0003】
そこで、従来より、特許文献1,2に開示される染毛料組成物が知られている。特許文献1は、酸性染料、芳香族アルコール類、n−ブタノール等を含有する酸性染毛料について開示する。かかる構成により、染毛力を維持しながら、皮膚等への染着性を抑制している。特許文献2は、ラウリルピリジニウム塩、酸性染料等を含有する染毛料組成物について開示する。かかる構成により、染毛力を維持しながら、地肌汚れ防止効果を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−344639号公報
【特許文献2】特開2009−203211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、施術者の染毛料組成物に対する満足度を向上させるため、一層の染色性及び地肌汚れ防止効果の両立が求められていた。
そこで、本発明の目的は、地肌汚れを抑制しながら、高い染毛効果を得ることができる酸性染毛料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特に1,2−アルカンジオールが染色性に影響を与えることなく、地肌汚れを防止できることを見出したことに基づくものである。尚、成分の含有量を示す質量%の数値は、水等の可溶化剤も含めた剤型中における数値である。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様では、(A)1,2−アルカンジオール、(B)芳香族アルコール及び炭酸エステルから選ばれる少なくとも一種の有機溶剤、並びに(C)酸性染料を含有し、pHが2〜5である酸性染毛料組成物が提供される。
【0008】
前記(A)成分の炭素数が4〜10の範囲内にあってもよい。前記酸性染毛料組成物中における(A)成分の含有量が0.05〜30質量%であってもよい。前記酸性染毛料組成物中における(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比が0.01〜3であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地肌汚れを抑制しながら、高い染毛効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の酸性染毛料組成物を具体化した一実施形態について説明する。本実施形態の酸性染毛料組成物は、(A)1,2−アルカンジオール、(B)芳香族アルコール及び炭酸エステルから選ばれる少なくとも一種の有機溶剤、並びに(C)酸性染料を含有しており、例えば炭素数1〜3の範囲内にある1価アルコール、pH調整剤及びキレート化剤を更に含有してもよい。
【0011】
(A)1,2−アルカンジオールは、特に地肌汚れ防止の観点から配合される。(A)1,2−アルカンジオールを構成するアルカンの炭素数としては、特に限定されないが、地肌汚れ防止効果の向上の観点から4〜10が好ましく、4〜8がより好ましい。(A)1,2−アルカンジオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−へキサンジオール、1,2−へプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−デカンジオール等が挙げられる。これらは一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中で地肌汚れ防止効果により優れる観点から1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−へキサンジオール、1,2−オクタンジオール、及び1,2−デカンジオールが好ましい。
【0012】
酸性染毛料組成物中における(A)1,2−アルカンジオールの含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。(A)1,2−アルカンジオールの含有量が0.05質量%以上の場合には、地肌汚れ防止効果をより向上させることができる。一方、(A)1,2−アルカンジオールの含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。(A)1,2−アルカンジオールの含有量が30質量%以下の場合には、染毛力をより向上させることができる。
【0013】
(B)芳香族アルコール及び炭酸エステルから選ばれる少なくとも一種の有機溶剤は、特に染毛力を向上させるために配合される。芳香族アルコールの具体例としては、例えばベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、フェニルプロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、フェニルジグリコール、α−メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、p−アニシルアルコール等が挙げられる。炭酸エステルとしては、溶剤として用いる観点から炭素数3以下のアルキル基又はアルキレン基を有する炭酸エステルが好ましく適用される。より具体的には、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン(エチレンカーボネート)、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート)、エチルメチルカーボネート等が挙げられる。これらの有機溶剤は、一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中で染毛力により優れる観点からベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール、及び炭酸プロピレンが好ましい。
【0014】
酸性染毛料組成物中における(B)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。(B)成分の含有量が0.1質量%以上の場合には、染毛力をより向上させることができる。一方、(B)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。(B)成分の含有量が30質量%以下の場合には、酸性染毛料組成物の地肌汚れ防止効果をより向上させることができる。
【0015】
酸性染毛料組成物中における上記(A)成分及び(B)成分の含有比率に関し、(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上である。質量比が0.01以上の場合、地肌汚れ防止効果をより向上させることができる。一方、かかる質量比の上限は、適宜設定されるが、好ましくは3以下、より好ましくは1以下である。質量比が3以下の場合、染毛力をより向上させることができる。
【0016】
(C)酸性染料は、毛髪を染色するために配合される。酸性染料は、反応性がなく、それ自体で発色可能なものを示す。酸性染料の具体例は、例えば赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色201号、赤色227号、赤色230号の(1)、赤色230号の(2)、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、黄色402号、黄色403号の(1)、黄色406号、黄色407号、橙色205号、橙色207号、橙色402号、緑色3号、緑色204号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、褐色201号、黒色401号、アシッドブルー1、アシッドブルー3、アシッドブルー62、アシッドブラック52、アシッドブラウン13、アシッドグリーン50、アシッドオレンジ6、アシッドレッド14、アシッドレッド35、アシッドレッド73、アシッドレッド184、ブリリアントブラック1等が挙げられる。これらは一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
酸性染毛料組成物中における(C)酸性染料の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上である。(C)酸性染料の含有量が0.001質量%以上の場合には、染毛力をより向上させることができる。一方、(C)酸性染料の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。(C)酸性染料の含有量が5質量%以下の場合には、酸性染毛料組成物中における(C)酸性染料の溶解性をより向上させることができる。また、地肌汚れ防止効果をより向上させることができる。
【0018】
炭素数1〜3の範囲内にある1価アルコールは、染毛力及び地肌汚れ防止効果をより向上させる観点から配合してもよい。炭素数1〜3の一価アルコールの具体例としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールが挙げられる。これらは一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
酸性染毛料組成物中における上記1価アルコールの含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。上記1価アルコールの含有量が1質量%以上の場合には、染毛力及び地肌汚れ防止効果をより向上させることができる。一方、上記1価アルコールの含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。上記1価アルコールの含有量が50質量%以下の場合には、酸性染毛料組成物の染毛力をより向上させることができる。
【0020】
酸性染毛料組成物中における上記(A)成分及び上記1価アルコールの含有比率に関し、上記1価アルコールの含有量に対する(A)成分の含有量の質量比の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.004以上である。かかる質量比が0.001以上の場合、地肌汚れ防止効果をより向上させることができる。一方、かかる質量比の上限は、適宜設定されるが、好ましくは1以下、より好ましくは0.8以下である。かかる質量比が1以下の場合、染毛力をより向上させることができる。
【0021】
酸性染毛料組成物中における上記(B)成分及び上記1価アルコールの含有比率に関し、上記1価アルコールの含有量に対する(B)成分の含有量の質量比の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.12以上である。かかる質量比が0.1以上の場合、染毛力をより向上させることができる。一方、かかる質量比の上限は、適宜設定されるが、好ましくは1以下、より好ましくは0.8以下である。かかる質量比が1以下の場合、地肌汚れ防止効果をより向上させることができる。
【0022】
pH調整剤は、酸性染毛料組成物のpHを調整するために配合してもよい。pH調整剤は、適宜公知のものから選択される。pH調整剤の具体例としては、例えば無機酸、有機酸とその塩、アンモニア、アルカノールアミン、ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、塩化物、リン酸塩、塩基性アミノ酸等が挙げられる。有機酸の具体例としては、例えばクエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、レブリン酸、酢酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸等が挙げられる。これらの中で乳酸、レブリン酸、及びグリコール酸が好ましく適用される。有機酸塩の具体例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらは一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本実施形態における酸性染毛料組成物のpHの下限は、2以上、好ましくは2.5以上である。酸性染毛料組成物のpHが2以上の場合には、地肌汚れ防止効果をより向上させることができる。一方、pHの上限は、5以下、好ましくは4.5以下である。酸性染毛料組成物のpHが5以下の場合には、染毛力をより向上させることができる。
【0024】
キレート化剤は、染毛力をより向上させる観点から配合してもよい。キレート化剤の具体例としては、例えばエデト酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸及びその塩類、並びにヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)及びその塩類等が挙げられる。これらは一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
酸性染毛料組成物中におけるキレート化剤の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。キレート化剤の含有量が0.01質量%以上の場合には、染毛力をより向上させることができる。一方、キレート化の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。キレート化剤の含有量が5質量%以下の場合には、地肌汚れ防止効果をより向上させることができる。
【0026】
酸性染毛料組成物は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば上記以外の可溶化剤、上記以外の毛髪浸透剤、水溶性ポリマー、油性成分、界面活性剤、糖、防腐剤、安定剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等をさらに含有してもよい。
【0027】
上記以外の可溶化剤は、例えば、酸性染毛料組成物の性状を調整するために配合される。使用される可溶化剤の例としては、例えば水及び有機溶媒(溶剤)が挙げられる。また、酸性染料の染毛力をより向上させる観点から、有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤の具体例としては、例えば多価アルコールとしてのグリコール類及びグリセリン類、並びにジエチレングリコール低級アルキルエーテルが挙げられる。グリコール類の具体例としては、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリン類の具体例としては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。ジエチレングリコール低級アルキルエーテルの具体例としては、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)等が挙げられる。これらの可溶化剤のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、酸性染毛料組成物中のその他の成分を溶解する能力に優れることから水が好ましく使用される。溶媒として水が用いられる場合、酸性染毛料組成物中における水の含有量(使用時の含有量)は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
【0028】
上記以外の浸透促進剤は、酸性染料の染毛力を向上させるために配合してもよい。浸透促進剤としては、例えば炭素数4〜8の一価アルコール、エチレングリコールアルキルエーテル、環状アルコール等が挙げられる。炭素数4〜8の一価アルコールの具体例としては、例えばn−ブタノール、イソブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール等が挙げられる。エチレングリコールアルキルエーテルの具体例としては、例えばエチレングリコールモノn−ブチルエーテル等が挙げられる。環状アルコールの具体例としては、例えばシクロヘキサノール等が挙げられる。これらは一種類のみであってもよいし、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
水溶性高分子化合物は、酸性染毛料組成物に適度な粘度を与える。そのため、酸性染毛料組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において水溶性高分子化合物を含有してもよい。水溶性高分子化合物としては、例えば天然高分子、半合成高分子、合成高分子、及び無機物系高分子が挙げられる。天然の水溶性高分子化合物の具体例としては、例えばグアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、デキストリン等が挙げられる。
【0030】
半合成の水溶性高分子化合物の具体例としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、デンプンリン酸エステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩等が挙げられる。
【0031】
合成の水溶性高分子化合物の具体例としては、例えばポリビニルカプロラクタム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン−酢酸ビニル(VP/VA)コポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニル重合体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール等が挙げられる。また、合成高分子の具体例としては、例えばイタコン酸とポリオキシエチレン(以下、「POE」という)アルキルエーテルとの半エステル、又はメタクリル酸とPOEアルキルエーテルとのエステルと、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる少なくとも一つの単量体と、からなる共重合体が挙げられる。これらの水溶性高分子化合物のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で塗布性が良好な粘度を付与する効果に優れる観点からノニオン性ポリマーが好ましく適用される。
【0032】
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、酸性染毛料組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において油性成分を含有してもよい。油性成分としては、例えば油脂、ロウ、高級アルコール、炭化水素、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン等が挙げられる。
【0033】
油脂の具体例としては、例えばアルガニアスピノサ核油、ラノリン、オリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、月見草油等が挙げられる。ロウの具体例としては、例えばミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリンロウ等が挙げられる。高級アルコールの具体例としては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2−ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0034】
炭化水素の具体例としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。高級脂肪酸の具体例としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0035】
エステルの具体例としては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10〜30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、2−エチルヘキサン酸セチル等が挙げられる。
【0036】
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。これらの油性成分のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0037】
界面活性剤は、乳化剤又は各成分を可溶化させるための成分として酸性染毛料組成物を使用時に乳化又は可溶化させ、粘度を調整したり粘度安定性を向上させたりする。そのため、酸性染毛料組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0038】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルホン脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、それらの誘導体等が挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンの具体例としては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等が挙げられる。より具体的には、アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えばPOEラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩の具体例として、例えばラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等が挙げられる。アルキル硫酸塩の誘導体の具体例として、POEラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。スルホコハク酸エステルの具体例として、例えばスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等が挙げられる。
【0039】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、例えば塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0040】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)等が挙げられる。
【0041】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばエーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等が挙げられる。エーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばPOEセチルエーテル(セテス)、POEステアリルエーテル(ステアレス)、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル(オレス)、POEラウリルエーテル(ラウレス)、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0042】
エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等が挙げられる。
【0043】
アルキルグルコシドの具体例として、例えばアルキル(炭素数8〜16)グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等が挙げられる。これらの界面活性剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
【0044】
糖の具体例としては、例えばグルコース、ガラクトース等の単糖、マルトース、スクロース、フルクトース、トレハロース等の二糖、糖アルコール等が挙げられる。防腐剤の具体例としては、例えばパラベン、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。安定剤の具体例としては、例えばフェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等が挙げられる。酸化防止剤の具体例としては、例えばアスコルビン酸、亜硫酸塩等が挙げられる。
【0045】
酸性染毛料組成物の剤型は特に限定されず、具体例として、例えば液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。液状としては、例えば水溶液、分散液、乳化液等が挙げられる。また、保存安定性の向上の観点から、酸性染毛料組成物を固体状成分と液状成分とに分けて保存し、使用直前にそれらを混合するように構成してもよい。酸性染毛料組成物の粘度は、特に限定されないが、毛髪への付着性、塗布性、取扱い性等の観点から好ましくは25℃で1〜100mPa・sの範囲に調整される。なお、酸性染毛料組成物の粘度は、コーン・プレート型粘度計を用い、25℃の条件下、標準ローター(1°34′、R=24mm)をフルスケールトルク67.37μN・mのスプリングを介して回転させ、回転数50rpm、1分間の条件で測定することができる。コーン・プレート型粘度計の具体例としては、例えば東機産業社製TVE-25L形粘度計コーン・プレートタイプ等が挙げられる。
【0046】
本実施形態に係る酸性染毛料組成物は以下の利点を有する。
(1)本実施形態は、(C)酸性染料を含有する酸性染毛料組成物において、特に(A)1,2−アルカンジオールを適用した。したがって、染毛力を低下させることなく、地肌汚れ防止効果を向上させることができる。また、特に(B)芳香族アルコール及び炭酸エステルから選ばれる少なくとも一種の有機溶剤を適用した。したがって、地肌汚れ防止効果を低下させることなく、染毛力を向上させることができる。
【0047】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、酸性染毛料組成物を構成する各成分を全て配合する1剤式として構成した。しかしながら、各成分を分離して複数剤式に構成し、使用直前にそれらを混合するように構成してもよい。
【0048】
・上記実施形態の酸性染毛料組成物は、(C)酸性染料を含有する半永久染毛料組成物として構成された。半永久染毛料組成物の製品形態は、特に限定されず、例えばヘアマニキュア、カラートリートメント、カラーリンス、酸性カラー等であってもよい。なお、ヘアマニキュア又は酸性カラーは、一度の染毛作業により、所望する色調に染め上げる染毛料である。一方、カラートリートメント及びカラーリンスは、日常的なヘアケア等により毛髪に適用されることで、染毛処理が繰り返される結果、所望する色調へ徐々に染め上げる徐染性の染毛料である。
【実施例】
【0049】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。尚、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。なお、以下、実施例17は、参考例17に読み替えるものとする。
表1〜3に示される各成分を混合して各実施例及び比較例の酸性染毛料組成物を調製した。次に、白髪混じりの長さ15cmのビューラックス社製人毛毛束(以下、単に毛束という。)に刷毛で各酸性染毛料組成物を塗布し、30℃で10分放置した後、通常のシャンプー(ホーユー社製:ビゲントリートメントシャンプー)にて2回処理した。次いで乾燥させることにより染毛処理毛束とした。かかる染毛処理毛束について、染毛処理後の染毛力について評価を行った。それらの評価結果を表1〜3に示す。なお、表中における各成分の配合を示す数値の単位は質量%である。また、表中「成分」欄における(A)〜(C)の表記は、それぞれ本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。表中「成分」欄における「a」の表記は、本願請求項記載の成分(A)の対比化合物を示す。
【0050】
(染毛力)
パネラー10名が染毛処理後の各例の人毛毛束を標準光源下で目視にて観察することにより、各例の酸性染毛料組成物の染毛力が良いか否かを判断した。染毛力が良いと認められると応えたパネラーの人数が8名以上であった場合には「優れる:5」、6〜7人であった場合には「良好:4」、4〜5人であった場合には「可:3」、2〜3人であった場合には「やや不良:2」、1人以下であった場合には「不良:1」とする5段階の評価を下した。この評価結果を表1〜3における染毛力の評価欄に示す。
【0051】
(地肌汚れ抑制効果)
各例の酸性染毛料組成物0.05gを腕内側部に直径1cmの円形状に塗布し、5分間放置した後、水洗した。このときの腕内側部をパネラー10名が目視で観察することにより、各例の酸性染毛料組成物について地肌が汚れ難いか否かを判断した。地肌が汚れ難いと認められると応えたパネラーの人数が8人以上であった場合には「優れる:5」、6〜7人であった場合には「良好:4」、4〜5人であった場合には「可:3」、2〜3人であった場合には「やや不良:2」、1人以下であった場合には「不良:1」とする5段階の評価を下した。この評価結果を表1〜3の地肌汚れ抑制効果の評価欄に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
表1,2に示されるように、各実施例は、染毛力及び地肌汚れ抑制効果の評価が可以上の結果であることが確認された。表3に示されるように、1,2−アルカンジオールを含有しない比較例1〜5は、各実施例に対して、地肌汚れ抑制効果の評価が劣ることが確認された。(B)成分を含有しない比較例6は、各実施例に対して、染毛力の評価が劣ることが確認された。酸性染毛料組成物のpHが中性である比較例7は、各実施例に対して、染毛力の評価が劣ることが確認された。
【0055】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。(イ)さらに炭素数1〜3の範囲内にある1価アルコール又はキレート化剤を含有する前記酸性染毛料組成物。(ロ)(A)成分が1,2−ペンタンジオールである前記酸性染毛料組成物。