特許第6810526号(P6810526)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810526
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 1/142 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   H01C1/142
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-45043(P2016-45043)
(22)【出願日】2016年3月8日
(65)【公開番号】特開2017-162947(P2017-162947A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】宮川 正樹
(72)【発明者】
【氏名】宮下 恭平
(72)【発明者】
【氏名】坂井 啓志
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 秀和
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隆志
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−022201(JP,A)
【文献】 特開平03−029288(JP,A)
【文献】 特開2005−150567(JP,A)
【文献】 特開2008−305985(JP,A)
【文献】 特開2000−216001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に抵抗体と一対の電極を形成してなる抵抗基板と、
少なくとも前記抵抗基板の上面と側面を覆う絶縁性の外装材と、
一方端部が前記一対の電極それぞれに接続されるとともに前記外装材を貫通して外部に延出する一対の外部接続導体とを備え、
前記一対の電極は前記絶縁基板の端部を避けて形成されており、
前記絶縁基板の端部よりも内側に配置され、前記一対の電極上において該一対の電極と前記一対の外部接続導体の前記一方端部とを接合する接合部を設け、
前記抵抗基板の前記上面全体を覆い、かつ前記接合部のみを露出させる絶縁性の保護膜を形成し、
記接合部は、該接合部から前記保護膜を介して前記絶縁基板の底面端部に至る沿面距離が所定距離以上となる位置にあることを特徴とする抵抗器。
【請求項2】
前記所定距離は前記接合部と前記絶縁基板の底面に接する外部導体との電気的絶縁を確保できる最小距離であることを特徴とする請求項1に記載の抵抗器。
【請求項3】
前記接合部は前記一対の電極それぞれの一部を前記絶縁基板の内側に向けて突出させた凸部であることを特徴とする請求項1または2に記載の抵抗器。
【請求項4】
前記抵抗体は、前記一対の電極の形状に応じた形状を有しながら該一対の電極間を跨ぐように形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の抵抗器。
【請求項5】
前記抵抗体は前記一対の電極それぞれの外周を取り囲むように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の抵抗器。
【請求項6】
前記抵抗体は角部を持たない渦巻状であることを特徴とする請求項5に記載の抵抗器。
【請求項7】
前記一対の外部接続導体は導線に絶縁性の被覆を施した、可撓性を有するハーネス電線であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放熱型のパワー抵抗器(大電力用抵抗器)に関し、特に車載用の常時放電抵抗器として使用される抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における環境・エネルギー問題に対応できる車両として注目されているハイブリッド電気自動車(HEV)は、2種類の異なる動力源を搭載し、その動力源の一つである電動機の駆動源として高電圧の蓄電装置(バッテリ)を使用している。通常、ハイブリッド電気自動車のパワー制御ユニット(PCU)には平滑用、電圧安定化用のコンデンサが搭載され、さらに、その電荷を常時、緩やかに消費するための放電抵抗器も搭載されている。
【0003】
高電圧・大電流の環境下で使用されるパワー抵抗器(モールド型抵抗器ともいう。)として、例えば特許文献1には、プリント基板に実装可能に設計されたフイルム型抵抗器が開示されている。特許文献1の抵抗器は、平坦な基板(セラミック素子)13の上側表面にトレース及びパッドの組合体17(電極に相当する。)が施され、その組合体17に、金属端子(リード)22の先端区画23が接合された構成を有する。また、組合体17の上に抵抗フイルム18が形成され、さらにその上に保護被覆19が形成されている。これら金属端子22の先端区画23、基板13の底面14を除く上側表面等は、細長い方形状の合成樹脂本体10内に埋め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−226106号公報(特許第2904654号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のモールド型抵抗器は、上記特許文献1の抵抗器のように基板13の端部に配置された長方形の電極(トレース及びパッドの組合体17)に金属端子22の先端区画23がハンダによって固定された構成となっている。そのため、抵抗器の搭載先である金属筐体(例えばアルミダイキャスト等)と、抵抗器の導体部(電極および金属端子)との間における沿面距離を確保できず、その結果、絶縁性を保持できないという問題がある。
【0006】
特に車載用の抵抗器の場合、例えば「JIS C 60664 (IEC 60664)低圧系統内機器の絶縁協調」等の公的な規格によれば、抵抗器の導体部と搭載先の金属筐体とが所定の沿面距離を保つことが求められる。しかしながら、上記従来の電極構造のままで絶縁性を確保しようとすると、抵抗器において十分な抵抗体面積が確保できず、逆に絶縁基板の面積を広くすると部品の小型化等の要請に応えることができないという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、抵抗器に形成された電極等の導体部と、その抵抗器の搭載先の金属筐体との間において所定の沿面距離を確保した大電力用の抵抗器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として以下の構成を備える。すなわち、本発明の抵抗器は、絶縁基板上に抵抗体と一対の電極を形成してなる抵抗基板と、少なくとも前記抵抗基板の上面と側面を覆う絶縁性の外装材と、一方端部が前記一対の電極それぞれに接続されるとともに前記外装材を貫通して外部に延出する一対の外部接続導体とを備え、前記一対の電極は前記絶縁基板の端部を避けて形成されており、前記絶縁基板の端部よりも内側に配置され、前記一対の電極上において該一対の電極と前記一対の外部接続導体の前記一方端部とを接合する接合部を設け、前記抵抗基板の前記上面全体を覆い、かつ前記接合部のみを露出させる絶縁性の保護膜を形成し、記接合部は、該接合部から前記保護膜を介して前記絶縁基板の底面端部に至る沿面距離が所定距離以上となる位置にあることを特徴とする。
【0009】
例えば、前記所定距離は前記接合部と前記絶縁基板の底面に接する外部導体(例えば、アルミダイキャスト等の金属筐体)との電気的絶縁を確保できる最小距離であることを特徴とする。また、例えば、前記接合部は前記一対の電極それぞれの一部を前記絶縁基板の内側に向けて突出させた凸部であることを特徴とする。
【0010】
例えば、前記抵抗体は、前記一対の電極の形状に応じた形状を有しながら該一対の電極間を跨ぐように形成されていることを特徴とする。また、例えば、前記抵抗体は前記一対の電極それぞれの外周を取り囲むように形成されていることを特徴とする。さらに例えば、前記抵抗体は角部を持たない渦巻状であることを特徴とする。また、例えば、前記一対の外部接続導体は導線に絶縁性の被覆を施した、可撓性を有するハーネス電線であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低背型および小型の要件を満たしつつ、抵抗器の導体部と抵抗器の搭載先である金属筐体との間の沿面距離を確保して、車載環境で使用される常時放電抵抗器に適した抵抗器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施の形態例に係るパワー抵抗器の外観斜視図であり、(a)は抵抗器を表側から見たときの外観斜視図、(b)は裏側から見たときの外観斜視図である。
図2】本実施の形態例に係る抵抗器の内部構造を示す透視図である。
図3図2の矢視A−A´線に沿って抵抗器本体部を切断した断面図である。
図4】本実施の形態例に係る抵抗器の抵抗基板を覆う保護膜の立体的な形状を示す図である。
図5】本実施の形態例に係る抵抗器において沿面距離を確保するための電極形状および抵抗体形状の例を示す図である。
図6】本実施の形態例に係る抵抗器の製造工程を時系列で示すフローチャートである。
図7】本実施の形態例の変形例に係る抵抗体形状を示す図である。
図8】本実施の形態例の変形例に係る抵抗体形状であって抵抗値調整(トリミング)可能な抵抗体パターンの例を示す図である。
図9】本実施の形態例に係る抵抗器において沿面距離を確保する他の例を示す図である。
図10】本実施の形態例に係る抵抗器において沿面距離を確保するさらに他の例を示す図である。
図11】本実施の形態例に係る抵抗器においてハーネス電線の接続信頼性を確保する構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態例について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態例に係るパワー抵抗器(以下、抵抗器ともいう。)の外観斜視図であり、図1(a)は抵抗器を表側から見たときの外観斜視図、図1(b)は裏側から見たときの外観斜視図である。また、図2は、本実施の形態例に係る抵抗器の内部構造を示す透視図である。
【0014】
本実施の形態例に係る抵抗器1は、例えば定格電力が100W程度の大電力用抵抗器であり、抵抗基板21の下面側を除く全体をエポキシ樹脂等の絶縁性樹脂(モールド樹脂、あるいは外装樹脂ともいう。)で覆ってなる抵抗器本体部3と、抵抗器本体部3から外部に引き出された一対のハーネス電線7a,7bとを備えた構成を有する。抵抗基板21は、図2に示すようにアルミナ等からなる直方体形状の絶縁基板15の表面に形成された一対の電極17a,17bと、これらの電極間に形成された抵抗体13を備えており、これらの電極17a,17b、抵抗体13等は、図2では図示を省略した絶縁性の保護膜で覆われている。
【0015】
電極17a,17bは、例えば銀系または銀パラジウム系の金属材料からなり、銀パラジウム系の材料の場合にはパラジウムリッチとすることが望ましい。また、抵抗体13は、例えば酸化ルテニウム系の材料からなる厚膜抵抗体であり、スクリーン印刷等により形成される。なお、抵抗体13のパターン形状については後述する。
【0016】
絶縁基板15の裏面は、図1(b)に示すように抵抗器本体部3の外部に露出している。また、抵抗器本体部3の抵抗基板21が位置する側とは逆側の端部近傍には、抵抗器本体部3の表面と裏面間を貫通する取付穴5が形成されている。取付穴5は、抵抗器1をヒートシンク、あるいはアルミダイキャスト等からなる金属筐体に取り付ける際のネジ止め用の貫通孔である。例えば、図2に示すように、抵抗器1を他の機器の筐体25にネジ28で取り付けることで、抵抗基板21の抵抗体13で発生した熱を搭載先の筐体25に伝導させて放熱する。抵抗器本体部3の外形は、例えば汎用パッケージ(TO−247)と同等の大きさである。
【0017】
ハーネス電線7a,7bは、金属導体である芯線を絶縁樹脂で被覆することで絶縁性が確保され、抵抗器本体部3に収容された部分(外装樹脂で覆われた部分)と、抵抗器本体部3から外部に露出する部分とからなる。そのため、抵抗器を実装した後にハーネス電線が他の金属部分に接触しても短絡等を起こすことはない。また、図2に示すように、抵抗器本体部3に収容されたハーネス電線の先端部8a,8bは被覆が除去され、はんだ等により電極17a,17bに接続されている。さらに、ハーネス電線7a,7bのうち抵抗器本体部3の外部に露出された部分の先端には、ハーネス電線7a,7bをネジ等により他の電気機器、部品等に接続するための丸型端子(リングターミナル)9a,9bが、かしめ等によって圧着されている。
【0018】
次に、本実施の形態例に係る抵抗器において、抵抗器の導体部(電極)と抵抗器を搭載した金属筐体との絶縁性を確保するための構成について説明する。図3は、図2の矢視A−A´線に沿って抵抗器本体部3を切断した断面図である。また、図4は、抵抗器の抵抗基板21を覆う保護膜の立体的な形状を示す図である。なお、図4では保護膜を実線で示し、その保護膜を覆うモールド樹脂(抵抗器本体部)の図示を省略している。また、図4における保護膜の膜厚は、説明上の理由から、実際の厚さよりも厚めに図示している。
【0019】
本実施の形態例に係る抵抗器を車載用途とする場合、その絶縁性に関して、公的な規格である例えば日本工業規格(JIS)の「JIS C 60664 低圧系統内機器の絶縁協調」、および対応する国際規格「IEC 60664」等に準拠することが考えられる。そこで、本実施の形態例に係る抵抗器では、2つの導体部間にある絶縁物の表面に沿った最小距離である沿面距離、すなわち抵抗器の導体部と搭載先の金属筐体との間に所定の沿面距離を確保するため、電極17a,17bの一部を絶縁基板15の内側に向けて突出させて凸部27a,27bを形成し、これらの凸部27a,27bをハーネス電線の先端部8a,8bとの接合部とする。
【0020】
さらに、図3および図4に示すように本実施の形態例に係る抵抗器では、電極17a,17bの凸部27a,27bのハーネス電線との接合部以外の領域にガラスを印刷して保護膜31を形成する。すなわち保護膜31は、絶縁基板15の上部全体を覆うガラス被膜であるも、凸部27a,27bの接合部には被膜を形成しないので、図4に示すように、その接合部に位置する部分には、例えば直方体状の孔41a,41bが形成される。
【0021】
本実施の形態例に係る抵抗器における、抵抗器の導体部と搭載先の金属筐体との間の沿面距離は、上記JIS規格における「沿面距離は溝の輪郭に沿う」とした場合、図3および図4において太い点線35,37で示すように、保護膜31の孔41a,41b内に位置する導体部、例えばハーネス電線の先端部8a,8bから、保護膜31の上部表面および側部表面に沿って、絶縁基板15の下面部に至る最小距離と規定できる。
【0022】
そこで、上記の経路のうち保護膜31が介在する部分については、その保護膜31の厚み分、沿面距離を確保できるため、絶縁基板15の厚さ(例えば0.8mm)を含めて、電極への印加電圧450V(実効値)に対する沿面距離として絶縁基板15の下面、すなわち抵抗器の搭載面から1.0mm以上離れた位置に電極を形成する。望ましくは、電極への印加電圧1000V(実効値)に対する沿面距離として、絶縁基板15の下面から3.2mm以上離れた位置に電極を形成する。
【0023】
図5は、上記の沿面距離を確保するための電極形状および抵抗体形状の例を示している。図5(a),(b),(c)に示す例はいずれも、電極形状を絶縁基板の内側に向かう凸部(ハーネス電線の先端部をはんだ、溶接等で接合する部分)を有する形状とし、凸部以外を保護膜で覆う構成となっている。
【0024】
図5(a)に示す例では、絶縁基板15に形成した電極17a,17bは、その中央部分に絶縁基板15の内側に向いて突出する凸部27a,27bを有する形状を有し、電極17a,17b間に矩形の抵抗体13が形成されている。図5(b)の例では、絶縁基板45に形成した電極47a,47bが、絶縁基板45の内側に向いて突出する凸部57a,57bを有し、電極47a,47bの長手方向の端部間それぞれに長方形の抵抗体33,43が形成されている。また、図5(c)は、絶縁基板55に形成した電極67a,67bが、その一方端部に絶縁基板55の内側に向いて突出する凸部77a,77bを有し、一部が突起したほぼ矩形の抵抗体53を、電極67a,67bの他方端部間を斜めに跨ぐように形成した例を示している。
【0025】
このように、絶縁基板の端部を避けた内側に位置する電極の凸部にハーネス電線を接合する構造とすることで、電極の面積を広く確保でき、ハーネス電線との接合部におけるはんだ付けのためのスペースも十分確保できる。そして、図5(a),(b),(c)において矢印で示す、抵抗器の導体部である接合部と絶縁基板の板端との沿面距離を確保できる。
【0026】
次に、本実施の形態例に係る抵抗器の製造プロセスについて説明する。図6は、本実施の形態例に係る抵抗器の製造工程を時系列で示すフローチャートである。最初のステップS11において抵抗器の絶縁基板を準備する。ここでは、電気絶縁性および熱伝導性に優れた、例えばアルミナ基板等からなる多数個取り用の大判の絶縁基板を準備する。続くステップS13では、上記のステップで準備した絶縁基板の表面と裏面それぞれに、基板分割用の溝として一次分割用の溝と二次分割用の溝を形成する。
【0027】
ステップS15において抵抗体ペーストをスクリーン印刷し、焼成することで、適宜、図5(a),(b),(c)に示すパターンの抵抗体を形成する。続くステップS17で、上記のステップS15で形成した抵抗体に対して、図5(a),(b),(c)に示す形状の一対の電極をスクリーン印刷し、焼成する。電極材料として、上述した銀(Ag)系、銀−パラジウム(Ag−Pd)系の電極ペーストを使用する。
【0028】
ステップS19において保護膜を形成する。ここでは、図3および図4に示すように、抵抗体等が形成された絶縁基板の上面全体を覆うようにガラスを印刷して保護膜を形成する。その際、電極の凸部のハーネス電線との接合部となる部分にはガラスを印刷せず、保護膜の上記接合部が位置する部位に、例えば直方体状の孔を形成する。また、保護膜の膜厚は、接合部(抵抗器の導体部)と搭載先の金属筐体との間において上述した沿面距離を確保できる厚さに調整することができる。
【0029】
ステップS21において、あらかじめ基板の一方向に設けた溝を分割ラインとする1次分割を行って、基板を短冊状に分割する。続くステップS23では、上記のように短冊状に分割した基板を、あらかじめ上記一方向と直交する方向に設けた溝にしたがって2次分割し、抵抗器を個片に分割する。
【0030】
ステップS25では、一方端にリングターミナルを取り付け、他方端の被覆を所定長だけ除去したハーネス電線を用意し、そのハーネス電線の他方端(ハーネス電線の先端部8a,8b)を、保護膜に形成された直方体状の孔(図4において符号41a,41bで示す。)の中に導く。そして、ハーネス電線の先端部8a,8bと、電極上の接合部とをはんだ付けまたは溶接により接合する。なお、ハーネス電線は、金属電線を絶縁性の樹脂で被覆した構造を有し、折り曲げが容易であることから、接合部への接合時および接合後において、図4に示すように保護膜31の孔41a,41bの形状に容易に追従させることができる。
【0031】
最後のステップS27においてモールド成形を行い、エポキシ樹脂等の絶縁性樹脂により抵抗基板の上面側と側面側すべてを覆い、下面側のみを露出するとともに、上述したネジ止め用の貫通孔を形成する。
【0032】
なお、上記の例では抵抗体を形成してから電極を形成したが、電極を先に形成してから抵抗体を形成してもよい。また、抵抗体を形成した後の工程で、例えば、電極間において抵抗値を測定し、その値をもとにレーザビームやサンドブラスト等により抵抗体のパターンに切れ込みを入れることによって、抵抗体の抵抗値調整(トリミング)を行ってもよい。
【0033】
以上説明したように本実施の形態例に係る抵抗器は、絶縁基板の端部よりも内側に配置した電極上にハーネス電線との接合部を設けるとともに、絶縁基板上の接合部以外の領域にガラスによる保護膜を形成することで、十分な抵抗体面積の確保のみならず、抵抗器の導体部と抵抗器の搭載先である金属筐体との間の沿面距離を確保できる。また、厚さの薄い絶縁基板を使用して熱抵抗を下げることで、放熱性能に優れた、低背型で搭載面積の小さい抵抗器とすることができる。
【0034】
その結果、抵抗器において発生した熱を搭載先へ効果的に逃がす放熱設計と安全性を向上させた絶縁設計が可能となり、公的な規格で規定された絶縁協調を達成できるので、特に放熱設計が難しい車載環境で使用される常時放電抵抗器に適した抵抗器を提供できる。
【0035】
また、絶縁基板上に形成したガラスの保護膜において、ハーネス電線との接合部のみを露出させ他の領域を保護膜で覆うことで、接合部へのハーネス電線のはんだ付けの際に、はんだが抵抗体に付着する等の絶縁上の問題の発生を防止できる。さらに、抵抗器と外部機器等とを電気的に接続するために、樹脂で被覆されたハーネス電線を採用したので、従来の抵抗器の金属リード端子のような端子同士の絶縁確保が不要となり、スペースを確保できない機器内においてハーネス電線を相互に近づける配線構造が可能になる等、抵抗器の搭載の自由度が向上する。
【0036】
<変形例>
本発明は上記の実施の形態例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本実施の形態例に係る抵抗器において沿面距離を確保するための電極形状および抵抗体形状は、図5に示す例に限定されない。
【0037】
図7は、本実施の形態例の変形例に係る抵抗体形状を示しており、電極87a,87bの外周を取り囲むように絶縁基板65の全体にわたって抵抗体63を形成した例である。抵抗体63は、ミアンダ配線の一筆書きパターン(蛇行パターン)であり、渦巻き状にすることで電流の集中により熱が集中する角部をなくし、抵抗体63からの発熱を絶縁基板65全体に分散させる(ホットスポットを分散する)ことができる。さらには、想定しない過電流が抵抗体63に流れた場合、抵抗体の一部が断線して電流を直ちに遮断することができる。また、抵抗体63を電極87a,87bよりも外側に位置させることで、これらの電極を絶縁基板の内側に形成しても十分な抵抗体面積を確保できる。
【0038】
図8は、ミアンダ配線において抵抗値調整(トリミング)可能な抵抗体パターンの例を示しており、電極97a,97bは絶縁基板75の端部よりも内側に位置している。図8(a)はトリミング前の抵抗体パターンであり、図8(b)に示すように抵抗体83の一部に切れ込み81を入れることでトリミングする。このようなトリミングによって抵抗値の精度を確保するとともに、ミアンダパターンの一部をトリミングによって形成できる。なお、ミアンダパターンの一部を梯子形抵抗パターンとし、梯子段をレーザー等により切断して抵抗値を調整してもよい。
【0039】
なお、図7および図8に示す変形例では、図5(a),(b),(c)に示す電極形状に比べて電極の面積を小さくできるので、上記の効果と併せて抵抗器のコストアップを抑えることができる。
【0040】
一方、抵抗器の導体部と搭載先の金属筐体との間に所定の沿面距離を確保する方法についても、上述した構成(保護膜の膜厚に依存する構成)に限定されない。例えば、図9に示すように絶縁基板15の端部側の保護膜91の上面部を、その断面形状が山なりに盛り上がるようにして沿面距離38を確保してもよい。また、図10に示すように絶縁基板15の端部側の保護膜93の上面部を、その断面形状が複数の凸部を有する形状にして沿面距離39を確保してもよい。これらにより、保護膜の上面および側面を介して絶縁基板の下面に至る経路の距離をより長くでき、所望の沿面距離を確保できる。
【0041】
さらには、ハーネス電線と電極との接合方法も上記の例に限定されない。例えば、図11に示すようにハーネス電線7a,7bの先端部分において、その先端部8a,8bとの境界部分の被覆をかしめるとともに、先端部8a,8bを部分的に覆う金属製の圧着端子99a,99bを取り付ける。そして、先端部8a,8bのうち、これらの圧着端子で部分的に覆われた箇所98a,98bをはんだあるいは溶接により電極と接合する。こうすることで、ハーネス電線に外部から引張力がかかっても、ハーネス電線と電極間において、その応力に抗する強固な接続信頼性を確保できる。
【符号の説明】
【0042】
1 抵抗器
3 抵抗器本体部
5 取付穴
7a,7b ハーネス電線
8a,8b ハーネス電線の被覆が除去された先端部
9a,9b 丸型端子(リングターミナル)
13,33,43,53,63,83 抵抗体
15,45,55,65,75 絶縁基板
17a,17b,47a,47b,67a,67,b87a,87b,97a,97b 電極
21 抵抗基板
25 他の機器の筐体
27a,27b,57a,57b,77a,77b 凸部
28 ネジ
31,91,93 保護膜
35,37,38,39 沿面距離
41a,41b 孔
81 切れ込み
99a,99b 圧着端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11