(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含み、第1面及び前記第1面に対向する第2面を有する、加飾インクを受容可能な(メタ)アクリル系ポリマー層を含む、請求項1に記載のライセンスプレート用グラフィックフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
  第1の実施形態におけるライセンスプレート用グラフィックフィルムは、印刷層が適用されるポリウレタン表面保護層を含む、ライセンスプレート用グラフィックフィルムであって、ポリウレタン表面保護層は、少なくともポリエステル骨格若しくはポリカーボネート骨格のいずれかを有するポリオールと、多官能、すなわち二官能以上の脂肪族イソシアネートとの反応物、又は水系ポリウレタンを含む。これらの材料を使用することで、良好な耐候性を持つ表面保護層を提供できる。
 
【0019】
  第1の実施形態におけるライセンスプレート用グラフィックフィルムは、水系ポリウレタンを含むポリウレタン表面保護層を備える。水系ポリウレタンを使用する場合は、さらに、常温下でのエンボス/デボス加工に対し、より良好な追従性を示すとともに、焼付け塗装等で形成される印刷層に対し良好な印刷適合性を提供できる。
 
【0020】
  第1の実施形態のライセンスプレート用グラフィックフィルムにおいて、ポリウレタン表面保護層が、水系ポリウレタンを含み、この水系ポリウレタンは、少なくともポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格のいずれかを有し、約80℃以上、約180℃以下のガラス転移温度を有してもよい。水系ポリウレタンを使用する場合は、焼付け塗装等で表面保護層上に形成される印刷層に対し、高い密着性と耐薬品性を付与でき、より良好な印刷適合性を提供できる。
 
【0021】
  第1の実施形態のライセンスプレート用グラフィックフィルムは、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含み、第1面及び第1面に対向する第2面を有する、加飾インクを受容可能な(メタ)アクリル系ポリマー層を含んでもよい。(メタ)アクリル系ポリマー層の第1面または第2面に加飾層を備えることで、グラフィックフィルムに装飾性または意匠性を付与することができる。
 
【0022】
  第1の実施形態のライセンスプレート用グラフィックフィルムは、(メタ)アクリル系ポリマー層が、さらに、窒素原子含有(メタ)アクリル系ポリマーを含んでもよい。
 
【0023】
  第1の実施形態のライセンスプレート用グラフィックフィルムにおいて、ポリウレタン表面保護層と(メタ)アクリル系ポリマー層の第1面との間に接合層を含んでもよい。
 
【0024】
  第1の実施形態のライセンスプレート用グラフィックフィルムにおいて、(メタ)アクリル系ポリマー層の第2面側に接着層を含んでもよい。
 
【0025】
  第1の実施形態のライセンスプレート用グラフィックフィルムにおいて、(メタ)アクリル系ポリマー層及び/又は(メタ)アクリル系接着層が白色顔料を含んでもよい。白色顔料を含むことで、下地の色に対する隠蔽効果を上げることができる。それにより、例えば、加飾層の色彩の明度を上げ、グラフィック画像の質を改善することもできる。
 
【0026】
  第1の実施形態のライセンスプレート用グラフィックフィルムは、再帰性反射層を含んでもよい。再規性反射層を含むことで、ライセンスプレートの視認性をあげることができる。
 
【0027】
  第2の実施形態におけるライセンスプレート用グラフィックフィルムの製造方法は、少なくともポリエステル骨格若しくはポリカーボネート骨格のいずれかを有するポリオールと、多官能の脂肪族イソシアネートとの反応物、又は水系ポリウレタンを含む、印刷層が適用されるポリウレタン表面保護層を提供する工程と、このポリウレタン表面保護層の上又はその上方に、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含み、表面保護層側の第1面及び第1面に対向する第2面を有する、加飾インク受容可能な(メタ)アクリル系ポリマー層を提供する工程と、(メタ)アクリル系ポリマー層の第2面に加飾インクを提供する工程と、(メタ)アクリル系ポリマー層の第2面の上又はその上方に、接着層を提供する工程と、を含む。
 
【0028】
  第2の実施形態におけるライセンスプレート用グラフィックフィルムの製造方法は、(メタ)アクリル系ポリマー層が、さらに、窒素原子含有(メタ)アクリル系ポリマーを含んでもよい。
 
【0029】
  第3の実施形態におけるライセンスプレート用グラフィックフィルムの製造方法は、少なくともポリエステル骨格若しくはポリカーボネート骨格のいずれかを有するポリオールと、多官能の脂肪族イソシアネートとの反応物、又は水系ポリウレタンを含む、印刷層が適用されるポリウレタン表面保護層を提供する工程と、このポリウレタン表面保護層の上又はその上方に接合層を提供する工程と、第1面及び第1面に対向する第2面を有する、加飾インク受容可能な基材を提供する工程と、基材の第1面に加飾インクを提供する工程と、接合層を介して基材の第1面とポリウレタン表面保護層とを貼り合わせる工程と、を含む。
 
【0030】
  第4の実施形態におけるライセンスプレートの製造方法は、ベースプレートを提供する工程と、ベースプレートの上に、上記のライセンスプレート用グラフィックフィルムを提供してグラフィックフィルム積層プレートを形成する工程と、グラフィックフィルム積層プレートをエンボス加工又はデボス加工する工程と、エンボス加工又はデボス加工されたグラフィックフィルム積層プレートの凸部又は凹部に印刷層を形成する工程と、を含んでもよい。
 
【0031】
  以下、本発明の代表的な実施態様を例示する目的で、図面を参照しながらより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。図面の参照番号について、異なる図面において類似する番号が付された要素は、類似又は対応する要素であることを示す。
 
【0032】
  本開示の一実施態様のライセンスプレート用グラフィックフィルムの断面図を
図1に示す。ライセンスプレート用グラフィックフィルム100は、少なくとも登録番号等の文字情報が印刷される印刷層が適用されるポリウレタン表面保護層140を有する。この表面保護層140は、ライセンスプレートの文字部等に使用される焼き付け塗装用のメラミン等を含むインクによる印刷層が適用される層である。グラフィックフィルム100は、ポリウレタン表面保護層140に隣接して、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含み、該表面保護層140側の第1面及び第1面に対向する第2面を有する、加飾インクを受容可能な(メタ)アクリル系ポリマー層130を有する。(メタ)アクリル系ポリマー層130の第2面にグラフィック等の加飾画像を構成する加飾層120及び接着層110を有する。グラフィックフィルム100は、表面保護又は異物の付着防止の目的で、シリコーン樹脂などで剥離処理されたPETフィルム、ポリエチレンフィルム、ラミネート紙などのライナーをポリウレタン表面保護層140及び/又は接着層110に適用してもよい。
 
【0033】
  ポリウレタン表面保護層140の材料としては、耐薬品性、耐ガソリン性、加熱を伴わないプレス加工に追従し得る伸び特性、焼き付け塗装用インクとの印刷適合性等の観点から、少なくともポリエステル骨格若しくはポリカーボネート骨格のいずれかを有するポリオールと、多官能の脂肪族イソシアネートとの反応物、又は水系ポリウレタンが好ましい。これらの材料は、例えば、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、キャストコートなどによってライナーに塗工して表面保護層140として使用することもできるし、又はキャスト法等によってフィルムの形態にして使用することもできる。
 
【0034】
  少なくともポリエステル骨格若しくはポリカーボネート骨格のいずれかを有するポリオールと、多官能の脂肪族イソシアネートとを含む硬化性組成物は、比較的低温、例えば約110℃以下、約100℃以下、又は約80℃以下で硬化させても十分な伸び特性、耐薬品性、耐ガソリン性を有する反応物を提供することができる。
 
【0035】
  少なくともポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格のいずれかを有するポリオールは、アクリルポリオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオールなどのポリエステルポリオール、シクロヘキサンジメタノールカーボネート、1,6−ヘキサンジオールカーボネートなどのポリカーボネートポリオールなどを含むことができるが、それらに限られない。そのようなポリオールとして、例えば、Takelac(登録商標)UA702(アクリルポリオール、三井化学株式会社)、Placcel(登録商標)205H(ポリカプロラクトンジオール、株式会社ダイセル)、DURANOL(登録商標)G3450J(ポリカーボネートジオール、旭化成ケミカルズ株式会社)、Desmophen(登録商標)A565X(ポリエステルポリオール、住化バイエルウレタン株式会社)、Desmophen(登録商標)A870BA(ポリエステルポリオール、住化バイエルウレタン株式会社)などが挙げられる。
 
【0036】
  いくつかの実施態様において、少なくともポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格のいずれかを有するポリオールは、水酸基当量について、硬化性組成物に含まれる全ポリオール組成の約40%以上、約60%以上、又は約80%以上、約100%以下、約95%以下、又は約90%以下とすることができる。
 
【0037】
  望ましい多官能、すなわち2官能以上の脂肪族イソシアネートの例は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI、H12MDIなどとも呼ばれる。)のビュレット体、イソシアヌレート体又はアダクト体などのポリイソシアネートなどを含むが、それらに限られない。耐候性及び耐薬品性の高い硬化物を与えるため、IPDIのイソシアヌレート体及びアダクト体が好ましい。そのような脂肪族イソシアネートとして、例えばDesmodur(登録商標)Z4470BA(IPDIからのイソシアヌレート誘導体のポリイソシアネート、住化バイエルウレタン株式会社)、DURANATE(登録商標)TPA−100(HDIのイソシアヌレート体、旭化成ケミカルズ株式会社)などが挙げられる。
 
【0038】
  いくつかの実施態様において、多官能の脂肪族イソシアネートは、イソシアネート当量について、硬化性組成物に含まれる全イソシアネート組成の約50%以上、約60%以上、又は約70%以上、約100%以下、約90%以下、又は約80%とすることができる。
 
【0039】
  硬化性組成物は、ポリウレタン組成物に一般に広く使用されている、少なくともポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格のいずれかを有するポリオール以外のポリオールをさらに含んでもよく、多官能の脂肪族イソシアネート以外のポリイソシアネートをさらに含んでもよい。
 
【0040】
  ポリイソシアネートとポリオールとの当量比は、一般に、ポリオール1当量に対して、ポリイソシアネートが約0.7当量以上、約0.9当量以上、約2当量以下、又は約1.2当量以下である。
 
【0041】
  硬化性組成物は触媒を含んでもよい。触媒としてポリウレタン樹脂形成に一般に使用されるもの、例えばジ−n−ブチルスズジラウレート、ナフテン酸亜鉛、オクテン酸亜鉛、トリエチレンジアミンなどを用いることができる。触媒の使用量は、一般に、硬化性組成物100質量部に対して約0.005質量部以上、又は約0.01質量部以上、約0.5質量部以下又は約0.2質量部以下である。
 
【0042】
  硬化性組成物は、作業性、塗工性などを改善するために、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテルなどの有機溶剤をさらに含んでもよい。有機溶剤の使用量は、一般に、硬化性組成物100質量部に対して約1質量部以上、又は約5質量部以上、約90質量部以下又は約80質量部以下である。
 
【0043】
  硬化性組成物の反応物を含むポリウレタン表面保護層のガラス転移温度Tgは約50℃以上であってもよい。本開示におけるTgは、Tension  Mode、周波数10.0Hz、昇温速度5.0℃/分で−40〜200℃の温度範囲において粘弾性測定を行ったときの、損失正接tanδ(損失弾性率E”/貯蔵弾性率E’)のピーク温度である。表面保護層のTgが約50℃以上であることにより、該層より下位に位置する任意選択的な再帰性反射層等を保護するのに十分な強度、耐候性及び耐薬品性を提供することができる。
 
【0044】
  硬化性組成物の反応物を含むポリウレタン表面保護層の120℃における損失正接tanδは約0.1以下であり、いくつかの実施態様において、約0.05以下、約0.02以下、又は約0.01以下である。本開示における損失正接tanδは、Shear  Mode、周波数0.01Hzで粘弾性測定を行って得られた値である。
 
【0045】
  一方、水系ポリウレタンとしては、ポリカーボネート系及び/又はポリエステル系のポリオール化合物と、有機ポリイソシアネート化合物との反応物からなり、少なくともポリエステル骨格又はポリカーボネート骨格のいずれかを有し、約80℃以上、約90℃以上、または約100℃以上、約180℃以下、約170℃以下、又は約160℃以下のガラス転移温度を有するものを使用することができる。ガラス転移温度が約80℃以上のものを使用することで、良好な耐薬品性を得ることができる。
 
【0046】
  ポリカーボネート系ポリオール化合物としては、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の飽和脂肪族ジオール或いはこれらの混合物と炭酸ジエチル、ジフェニルカーボネート等の置換カーボネートとのエステル交換法により得られるポリオール、上記飽和脂肪族ジオールとホスゲンとの反応により得られるポリオール等を使用することができる。
 
【0047】
  ポリエステル系ポリオール化合物としては、低分子ポリオール類と、その化学量論量より少ない量の多価カルボン酸又はそのエステル、無水物、ハライド等のエステル形成性誘導体、及び/又は、ラクトン類、若しくはその加水分解開環して得られるヒドロキシカルボン酸との直接エステル化反応及び/又はエステル交換反応により得られるものが挙げられる。
 
【0048】
  低分子ポリオール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等脂環式ジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、テトラメチロールプロパン等の3価以上のポリオール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を含有するポリオール類、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸等のスルホン酸基を含有するポリオール類が挙げられる。
 
【0049】
  多価カルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類、トリメリト酸、トリメシン酸、ヒマシ油脂肪酸の3量体等のトリカルボン酸類、ピロメリット酸等のテトラカルボン酸類などの多価カルボン酸が挙げられる。これらの多価カルボン酸のエステル形成性誘導体としては、これらの酸無水物、該多価カルボン酸のクロライド、ブロマイド等のハライド、該多価カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、アミルエステル等の低級脂肪族エステルが挙げられる。上記ラクトン類としてはγ−カプロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等のラクトン類を使用することができる。
 
【0050】
  水系ポリウレタンとしては、ポリオール化合物成分として50モル%を超えない範囲においてポリカーボネート系及び/又はポリエステル系のポリオール化合物以外の他のポリオールを使用することができる。使用可能な他のポリオール成分としては、上記の低分子ポリオール類、ポリエーテルポリオール類が挙げられる。
 
【0051】
  ポリエーテルポリオール類としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のエチレンオキサイド付加物、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレンオキサイド付加物、上記の低分子ポリオールのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド付加物、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
 
【0052】
  上記有機ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トランス及び/又はシス−1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4及び/又は(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類等;トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネートトリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート及びこれらの混合物が挙げられる。これらは、カルボジイミド変性、ヌレート変性、ビウレット変性等の変性物の形で用いてもよく、各種のブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネートの形で用いてもよい。
 
【0053】
  水系ポリウレタンは、鎖延長剤成分を含むことができ、該成分としては、例えば、上記例示の低分子ジオールのアルコール性水酸基がアミノ基に置換されたものであるエチレンジアミン、プロピレンジアミン等の低分子ジアミン類、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のポリエーテルジアミン類、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルネンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の脂環式ジアミン類、m−キシレンジアミン、α−(m/pアミノフェニル)エチルアミン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、ジアミノジエチルジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等の芳香族ジアミン類などのポリアミン;ジカルボン酸ジヒドラジド;2−(2−アミノエチルアミノ)エタノールなどが挙げられる。
 
【0054】
  水系ポリウレタンは、上記ポリオール化合物成分の一部として、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を含有するポリオール類、1,4−ブタンジオール−2−スルホン酸等のスルホン酸基を含有するポリオール類を使用してアニオン性基を導入し、これに、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類、N,N−ジアルキルアルカノールアミン類、N−アルキル−N,N−ジアルカノールアミン類、トリアルカノールアミン類等の3級アミン、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の塩基性化合物等のアニオン性基中和剤を併用する方法によって水性化させたものを使用することができる。
 
【0055】
  これらカルボキシル基又はスルホン酸基を含有するポリオール化合物の使用量は任意であるが、水系ポリウレタンの水性化、又は焼き付け塗装用のメラミン等を含むインクとの接着性を考慮し、ポリオール化合物中、約1モル%以上、約2モル%以上、又は約5モル%以上、約50モル%以下、約40モル%以下、又は約30モル%以下の範囲で使用される。
 
【0056】
  水系ポリウレタンの製造方法については、特に制限されず、周知一般の方法を適用することができる。具体的な製造方法としては、反応に不活性で水との親和性の大きい溶媒中で反応させてプレポリマーを合成し、次いで、これを水にフィードして分散させるプレポリマー法等を使用することができる。
 
【0057】
  上記の反応に不活性で水との親和性の大きい溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン等を使用することができる。これらの溶媒は、通常、プレポリマーを製造するために用いられる上記原料の合計量に対して、約1質量%以上、約2質量%以上、又は約3質量%以上、約100質量%以下、約90質量%以下、又は約80質量%以下が用いられる。これら溶媒の中で、沸点100℃以下の溶媒はプレポリマー合成後、減圧留去してもよい。
 
【0058】
  上記の製造方法において、各成分の配合比については、任意とすることができる。この配合比は、反応させる段階でのイソシアネート基と各成分のイソシアネート反応性基とのモル比に置き換えることができ、このモル比については、イソシアネート基1に対して、イソシアネート反応性基は約0.3以上、約0.4以上又は約0.5以上、約1.01以下、約1.0以下、又は約0.99以下とすることができる。
 
【0059】
  水系ポリウレタンにおいて、その固形分の量は、任意の量とすることができるが、一般的には、固形分の量は、約1質量%以上、約3質量%以上、又は約5質量%以上、約80質量%以下、約70質量%以下、又は約60質量%以下にすることができる。
 
【0060】
  水系ポリウレタンには、ポリウレタン分子に架橋構造を与えるため、必要に応じて、安全性及びポットライフ等に悪影響を及ぼさない条件の下で、一般に用いられる架橋剤を用いてもよい。該架橋剤としては、水性エポキシ樹脂、エポキシ樹脂エマルション、水性ポリカルボジイミド、水性ポリオキサゾリン、水性イソシアネート等を使用することができる。
 
【0061】
  水系ポリウレタンには、必要に応じて、水系ポリウレタンに使用される周知一般の乳化剤を用いてもよい。乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等を使用することができる。
 
【0062】
  ポリウレタン表面保護層は、その他の任意成分として、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、レベリング剤などの従来使用されている添加剤を含んでもよい。中でも、ライセンスプレートは一般的に屋外で用いられるため、ポリウレタン表面保護層が、紫外線吸収剤、光安定剤及び熱安定剤の少なくとも1つを含むことが望ましい。これらの添加剤の使用量は、表面保護層、及び任意に存在する再帰性反射層の機能を過度に損なわない程度とすることができ、表面保護層の質量に基づいて、各成分については、一般に、約0.1質量%以上、又は約1質量%以上、約5質量%以下、又は約3質量%以下、成分の合計については、一般に、約1質量%以上、又は約3質量%以上、約10質量%以下、又は約5質量%以下とすることができる。
 
【0063】
  紫外線吸収剤及び光安定剤の具体例として、Tinuvin(登録商標)PS、Tinuvin(登録商標)99−2、Tinuvin(登録商標)326、Tinuvin(商標)328、Tinuvin(登録商標)384−2(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、BASF)、Tinuvin(登録商標)400、Tinuvin(登録商標)405、Tinuvin(登録商標)460(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、BASF)、Uvinul(登録商標)3035、Uvinul(登録商標)3039(シアノアクリレート系紫外線吸収剤、BASF)、Tinuvin(登録商標)123、Tinuvin(登録商標)144、Tinuvin(登録商標)152、Tinuvin(登録商標)292(ヒンダードアミン系光安定剤、BASF)、Cyasorb(登録商標)UV3529(ヒンダードアミン系光安定剤、Cytec)、及びSabostab(登録商標)UV64(ヒンダードアミン系光安定剤、SABO)が挙げられる。これらの紫外線吸収剤及び光安定剤は1種で又は2種以上混合して使用することができる。
 
【0064】
  熱安定剤の具体例として、SC−12、SC−308E、SC−320(Ca/Zn系熱安定剤、ADEKA)、AC−290、AC−294、AC−296、AC−299(Ba/Zn系熱安定剤、ADEKA)が挙げられる。これらの熱安定剤は1種で又は2種以上混合して使用することができる。
 
【0065】
  ポリウレタン表面保護層の厚さは様々であってよく、約5μm以上であることが好ましく、より好ましくは約10μm以上である。この厚さとすることで、耐薬品性を得ることができる。また、厚さは約20μm以上、又は約30μm以上であってもよい。一方、厚さは約100μm以下、好ましくは約60μm以下である。この厚さ以下とすることで、プレス加工時に良好な追従性を得ることができる。厚さは約50μm以下であってもよい。
 
【0066】
  グラフィックフィルム100は、ポリウレタン表面保護層140に隣接して、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含み、表面保護層140側の第1面及び第1面に対向する第2面を有する、加飾インクを受容可能な(メタ)アクリル系ポリマー層130を含む。
 
【0067】
  (メタ)アクリル系ポリマー層130は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー及び任意に窒素原子含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。上記カルボキル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーとカルボキシル基を含有する不飽和モノマーとを共重合することにより得られる。上記窒素原子含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーと窒素原子を含有する不飽和モノマーとを共重合することにより得られる。
 
【0068】
  この共重合は、ラジカル重合により行なうことができる。この場合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の公知の重合方法を用いることができる。開始剤としては過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのような有機過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビスー4−シアノバレリアン酸、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス2,4−ジメチルバレロ二トリル(AVN)等のアゾ系重合開始剤が用いられる。この開始剤は、モノマー混合物100質量部あたり、約0.01質量部以上、約5質量部以下で使用することができる。
 
【0069】
  高いTgを有する(メタ)アクリル系ポリマーはグラフィックフィルムの高い引張強さを発揮させ、低いTgを有する(メタ)アクリル系ポリマーはグラフィックフィルムの低温での伸び特性を良好にする。したがって、(メタ)アクリル系ポリマー層において、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーのTgを高く、具体的には0℃以上とした場合には、窒素原子含有(メタ)アクリル系ポリマーのTgはそれより低く、具体的には0℃未満にし、前者のTgを低く、具体的には0℃未満とした場合には、後者のTgを高く、具体的には0℃以上にするのが好ましい。
 
【0070】
  また、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、約10,000以上、約50,000以上、又は約100,000以上である。なお、この重量平均分子量は、GPC法によるスチレン換算分子量を意味する。
 
【0071】
  (メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノエチレン性不飽和モノマーは、上記ポリマーの主成分となるものであって、一般には式CH
2=CR
1COOR
2(式中、R
1は水素又はメチル基であり、R
2は直鎖又は分岐状のアルキル基やフェニル基、アルコキシアルキル基、フェノキシアルキル基である)で表されるものの他、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー、酢酸ビニル等のビニルエステル類も含まれる。このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレートや2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートなどがあり、所望のガラス転移温度や引張強さ、伸び特性を得るために、その目的に応じて1種又は2種以上を使用する。
 
【0072】
  例えば、メチルメタクリレート(MMA)、n−ブチルメタクリレート(BMA)などの0℃以上のTgを有する(メタ)アクリル系モノマーを主成分として共重合させることにより、Tgが0℃以上の(メタ)アクリル系ポリマーを得ることができる。
 
【0073】
  エチルアクリレート(EA)、n−ブチルアクリレート(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)など、単体で重合したホモポリマーが0℃未満のTgを有する成分を主成分として共重合させることにより、Tgが0℃未満の(メタ)アクリル系ポリマーを得ることができる。
 
【0074】
  ここで、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、及び窒素原子含有(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、各ポリマーがn種類のモノマーから共重合されているとして、FOXの式(下式)より求めることができる。
1/Tg=X1/(Tg1+273.15)+X2/(Tg2+273.15)+・・・+Xn/(Tgn+273.15)
  (Tg1:成分1のホモポリマーのガラス転移点
    Tg2:成分2のホモポリマーのガラス転移点
    X1:重合の際に添加した成分1のモノマーの重量分率
    X2:重合の際に添加した成分2のモノマーの重量分率
    X1+X2+・・・+Xn=1)
 
【0075】
  上記モノエチレン性不飽和モノマーと共重合してカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーを構成する、カルボキシル基を含有した不飽和モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
 
【0076】
  カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分として、具体的には約60質量部以上、又は約80質量部以上、約99.5質量部以下、又は約97質量部以下の範囲で、及びカルボキシル基を含有した不飽和モノマーを約0.5質量部以上、又は約3質量部以上、約40質量部以下、又は約20質量部以下の範囲で共重合して得ることができる。
 
【0077】
  上記モノエチレン性不飽和モノマーと共重合して窒素原子含有(メタ)アクリル系ポリマーを構成する、窒素原子を含有する不飽和モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ビニルイミダゾールなどの含窒素複素環を有するビニルモノマーに代表される窒素原子を有するモノマーなどが挙げられる。
 
【0078】
  窒素原子含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分として、具体的には約60質量部以上、又は約70質量部以上、約99.5質量部以下、又は約97質量部以下の範囲で、及び窒素原子を含有する不飽和モノマーを約0.5質量部以上、又は約3質量部以上、約40質量部以下、又は約30質量部以下の範囲で共重合して得ることができる。
 
【0079】
  上記のようにカルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、窒素原子含有(メタ)アクリル系ポリマーとをそれぞれ別々に重合した後、通常の成形方法により、本発明に係る(メタ)アクリル系ポリマー層130を形成することができる。具体的には、例えば、これらのポリマーの溶液を混合し、ライナー上に形成した表面保護層140上に塗布し、乾燥・固化させることにより(メタ)アクリル系ポリマー層130を形成することができる。この塗布装置としては、通常のコータ、例えば、バーコータ、ナイフコータ、ロールコータ、ダイコータ等を用いることができる。固化操作は、揮発性溶媒を含む塗料の場合の乾燥操作や、溶融した樹脂成分を冷却する操作と同様である。
 
【0080】
  (メタ)アクリル系ポリマー層130の形成において、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと、窒素原子含有(メタ)アクリル系ポリマーとの配合比を変化することにより、所望の引張強さ及び伸び特性を有するグラフィックフィルムを得ることができる。具体的には、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと窒素原子含有(メタ)アクリル系ポリマーとの内、Tgが高いポリマーとTgが低いポリマーの配合比は、10:90〜90:10、20:80〜90:10、又は30:70〜90:10である。
 
【0081】
  (メタ)アクリル系ポリマー層130は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーと窒素原子含有(メタ)アクリル系ポリマーとを架橋させることにより網目構造が形成され、耐薬品性が向上する。架橋成分としては、カルボキシル基と反応することのできる官能基を有する架橋剤を用いることができる。具体的には、ビスアミド系架橋剤(例えば、3M製RD1054)、アジリジン系架橋剤(例えば、日本触媒製ケミタイト(登録商標)PZ33、アビシア製NeoCryl(登録商標)CX−100)、カルボジイミド系架橋剤(例えば、日清紡製カルボジライトV−03,V−05,V−07)、エポキシ系架橋剤(例えば、綜研化学製E−AX,E−5XM,E5C)、イソシアネート系架橋剤(例えば、旭化成ケミカルズ製Duranate(登録商標)TPA−100)等を用いる。この架橋剤の添加量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して約0.01質量部以上、約5質量部以下である。
 
【0082】
  カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー又は窒素原子含有(メタ)アクリル系ポリマーのいずれか若しくはその両方にヒドロキシル基を導入してもよい。これにより架橋点を形成することができる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、ヒドロキシル基不飽和モノマーを、具体的には約0.01質量部以上、又は約0.1質量部以上、約10質量部以下、又は約5質量部以下の範囲で共重合して得ることができる。
 
【0083】
  (メタ)アクリル系ポリマー層の厚さは様々であってよく、一般に、約5μm以上、又は約10μm以上、約100μm以下、約60μm以下、又は約50μm以下とすることができる。約5μm以上とすることで、加飾インクの受容性を得ることができ、約100μm以下にすることで、プレス加工時の追従性を得ることができる。
 
【0084】
  (メタ)アクリル系ポリマー層130の第2面には、加飾層120及び接着層110が形成され得る。
 
【0085】
  加飾層120は、グラフィックフィルムに装飾性又は意匠性を付与するために使用することができる。グラフィックフィルムがライセンスプレートに用いられた場合、ライセンスプレートの文字以外の背景部分に絵柄、パターン等が形成される場合がある。加飾層の例として、特殊な色合い、金属色などを呈するカラー層、木目、石目などの模様や、ロゴ、絵柄などを構造体に付与するパターン層などが含まれる。カラー層又はパターン層の材料としては、例えば、無機顔料、有機顔料、光輝材などがバインダー樹脂に分散されたものを使用することができる。ある実施形態では、加飾層は、インクジェットプリンタ、スクリーン印刷、オフセット印刷等で形成することができる。
 
【0086】
  加飾層の厚さは様々であってよく、一般に、溶剤系インクを用いた場合は、約1μm以上、又は約2μm以上、約8μm以下、又は約5μm以下である。UV硬化型インクを用いた場合は、約1μm以上、又は約5μm以上、約50μm以下、又は約30μm以下とすることができる。
 
【0087】
  顔料として従来知られている有機顔料を使用することができる。有機顔料の具体例として、C.I.Pigment  White  6、C.I.Pigment  Black  7、C.I.Pigment  Red  122、同202、同254、同255、C.I.Pigment  Orange  43、C.I.Pigment  Violet  19、同23、C.I.Pigment  Blue  15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、C.I.Pigment  Brown  23、同25、C.I.Pigment  Yellow  74、同109、同110、同128、C.I.Pigment  Green  7、同36などの有機顔料が挙げられる。
 
【0088】
  顔料として従来知られている無機顔料を使用することもできる。無機顔料の具体例として、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、紺青、コバルトブルー、チタンイエロー、ターコイズ、モリブデートオレンジ、酸化チタンなどの無機顔料が挙げられる。
 
【0089】
  インク組成物中での顔料の分散性を向上させるため、上記顔料を樹脂に担持させたスラリーを使用してもよい。そのようなスラリーとして、顔料を塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂に担時させた、Microlith(商標)Yellow  2040K、同Red3630K、同Magenta  4535K、同Blue  7080K、同Green  8750K、同Black  0066K、同White  0022K(BASF)などが挙げられる。
 
【0090】
  顔料は1種で又は2種以上混合して使用することができる。顔料の使用量は、インク組成物100質量部に対して、一般に約1質量部以上、又は約2質量部以上、約30質量部以下、又は約25質量部以下である。
 
【0091】
  前述の顔料と一緒に使用する好適なバインダー樹脂としては、塩化ビニル単位及び酢酸ビニル単位を含む塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の少なくともいずれかを含むが、それらに限定されない。塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は他の重合単位、例えばビニルアルコール単位、マレイン酸単位、ヒドロキシアルキルアクリル酸エステル単位などを含んでもよい。そのようなバインダー樹脂の具体例として、SOLBIN(登録商標)C、SOLBIN(登録商標)CL、SOLBIN(登録商標)CNL(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、日信化学工業株式会社)、SOLBIN(登録商標)A、SOLBIN(登録商標)AL(塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、日信化学工業株式会社)、UCAR(登録商標)Solution  Vinyl  Resin  VYHH(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ダウ・ケミカル日本株式会社)、UCAR(登録商標)Solution  Vinyl  Resin  VAGH(塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合樹脂、ダウ・ケミカル日本株式会社)、UCAR(登録商標)Solution  Vinyl  Resin  VMCH(塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合樹脂、ダウ・ケミカル日本株式会社)、UCAR(登録商標)Solution  Vinyl  Resin  VMCC(塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合樹脂、ダウ−ケミカル日本株式会社)、UCAR(登録商標)Solution  Vinyl  Resin  VMCA(塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合樹脂、ダウ−ケミカル日本株式会社)、UCAR(登録商標)Solution  Vinyl  Resin  VROH(塩化ビニル−酢酸ビニル−ヒドロキシアルキルアクリル酸エステル共重合樹脂、ダウ−ケミカル日本株式会社)、VINNOL(登録商標)E15/45(塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、Wacker  Chemie  AG)などが挙げられる。
 
【0092】
  バインダー樹脂は1種で又は2種以上混合して使用することができる。バインダー樹脂の使用量は、インク組成物100質量部に対して、一般に約5質量部以上、又は約10質量部以上、約50質量部以下、又は約20質量部以下である。
 
【0093】
  インク組成物は、作業性、塗工性などを改善するために、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテルなどの有機溶剤をさらに含んでもよいが、それらに限定されない。有機溶剤の使用量は、一般に、インク組成物100質量部に対して約1質量部以上、又は約5質量部以上、約90質量部以下又は約80質量部以下である。
 
【0094】
  インク組成物は、その他の任意成分として、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、フロー向上剤、レベリング剤などの従来使用されている添加剤を含んでもよい。
 
【0095】
  グラフィックフィルムはライセンスプレートとして主に屋外で用いられるため、インク組成物が、紫外線吸収剤、光安定剤及び熱安定剤の少なくとも1つを含むことが望ましい。これらの添加剤の使用量は、概して使用目的に依存する。典型的には、その使用量は、インク組成物の質量に基づいて、各成分については、一般に、約0.1質量%以上、又は約0.2質量%以上、約5質量%以下、又は約3質量%以下、成分の合計については、一般に、約0.1質量%以上、又は約0.2質量%以上、約5質量%以下、又は約3質量%以下とすることができる。
 
【0096】
  紫外線吸収剤及び光安定剤の具体例として、Tinuvin(登録商標)PS、Tinuvin(登録商標)99−2、Tinuvin(登録商標)326、Tinuvin(登録商標)328、Tinuvin(登録商標)384−2(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、BASF)、Tinuvin(登録商標)400、Tinuvin(登録商標)405、Tinuvin(登録商標)460(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、BASF)、Uvinul(登録商標)3035、Uvinul(登録商標)3039(シアノアクリレート系紫外線吸収剤、BASF)、Tinuvin(登録商標)123、Tinuvin(登録商標)144、Tinuvin(登録商標)152、Tinuvin(登録商標)292(ヒンダードアミン系光安定剤、BASF)、Cyasorb(登録商標)UV3529(ヒンダードアミン系光安定剤、Cytec)、及びSabostab(登録商標)UV64(ヒンダードアミン系光安定剤、SABO)が挙げられる。これらの紫外線吸収剤及び光安定剤は1種で又は2種以上混合して使用することができる。
 
【0097】
  熱安定剤の具体例として、SC−12、SC−308E、SC−320(Ca/Zn系熱安定剤、ADEKA)、AC−290、AC−294、AC−296、AC−299(Ba/Zn系熱安定剤、ADEKA)が挙げられる。これらの熱安定剤は1種で又は2種以上混合して使用することができる。
 
【0098】
  接着層110に使用することができる接着剤として、これらに限定されないが、(メタ)アクリル系感圧接着剤、天然ゴム、合成ゴム、ポリエステル、ポリエーテル、シリコーン又は他のポリマーをベースとし、必要に応じて粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などの添加剤を含む、他の感圧接着剤を使用することができる。本開示において「感圧接着剤」とは、室温で恒久的に粘着性であり、軽い圧力で様々な表面に接着し、相変化(液体から固体へ)を呈さない接着剤を指す。接着剤は架橋剤によって熱架橋又は放射線(例えば電子線ビーム又は紫外線)で架橋されたものでもよい。
 
【0099】
  接着層110に白色顔料を配合することができる。白色顔料として、特に酸化チタンは、グラフィックフィルムが適用されるベースプレート(下地)の色を隠蔽する能力に優れる。酸化チタンとして、ルチル型とアナターゼ型のいずれも使用可能であり、市販品の例として、タイペーク(登録商標)R−820、同R−830、同R−930、同A−100、同A−220(石原産業株式会社)、タイピュア(登録商標)R−105、同R−960(デュポン株式会社)などが挙げられる。
 
【0100】
  接着層110を基材に積層した積層体の基材側を、(メタ)アクリル系ポリマー層130に直接又は以下で説明する接合層を介して適用してもよい。この場合には、接着層及び/又は基材に、上記白色顔料を配合することができる。
 
【0101】
  基材の材料として、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、PET等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、(メタ)アクリル又はポリアミド等を使用することができる。
 
【0102】
  基材の厚さは様々であってよく、一般に、約5μm以上、好ましくは約10μm以上である。この厚さ以上であれば取り扱い性が良好である。また、厚さは約500μm以下、好ましくは約300μm以下とすることができる。この厚さ以下であれば、プレス加工時の追従性を得ることができる。
 
【0103】
  基材として、以下で説明する再帰性反射層を使用することもできる。
 
【0104】
  接着層110に白色顔料を配合せずに透明な接着層とした場合には、接着層110にさらに、以下で説明する再帰性反射層、及び接着層を適用して、再帰反射性を有するグラフィックフィルムとすることもできる。
 
【0105】
  接着層の厚さは様々であってよく、一般に、約5μm以上、又は好ましくは約10μm以上、約150μm以下、又は約50μm以下とすることができる。
 
【0106】
  本開示の別の実施態様のライセンスプレート用グラフィックフィルムの断面図を
図2に示す。
図2のライセンスプレート用グラフィックフィルム200は、ポリウレタン表面保護層240、接合層230、加飾層220、加飾インクを受容可能な基材層215、及び接着層210を有する。ここで、ポリウレタン表面保護層240、加飾層220、及び接着層210については、
図1に示す実施態様において既に説明したとおりである。
 
【0107】
  接合層230は、グラフィックフィルムの各層を接合させるための層であり、必要に応じて各層間に配置してもよい。接合層は、従来知られている接着剤から形成することができ、被接合物の材質に応じて適宜選択される。接着剤として、例えば(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などをベースとするものを使用することができる。また、上記接着層110と同一の材料を使用することもできる。接合層の下位に、加飾層、再帰性反射層等を含む場合には、視認性に影響を与えないように可視光に対して透明であることが好ましい。
 
【0108】
  接合層の厚みは特に限定されるものではないが、一般に、約5μm以上、又は好ましくは約10μm以上、約150μm以下、又は約50μm以下とすることができる。
 
【0109】
  図2の加飾インクを受容可能な基材層215は、第1面に加飾層220を有し、接合層230を介してポリウレタン表面保護層240に貼り合わされている。この実施態様は、例えば、ライナー上に接着層210及び加飾インクを受容可能な基材層215を形成し、次いで、インクジェット等で加飾層220を形成したものを使用する場合に有意な構成である。この場合、加飾インクを受容可能な基材層215は、該基材層を構成する材料の溶液を、ライナー上の接着層210に塗布し、乾燥・固化させることにより形成することができる。この塗布装置としては、通常のコータ、例えば、バーコータ、ナイフコータ、ロールコータ、ダイコータ等を用いることができる。加飾インクを受容可能な基材層215を、溶融押出成形法等によってフィルムの形態にし、それを接着層210に貼り合わせて使用することもできる。加飾インクを受容可能な基材層の材料としては、上述した、基材の材料と同一の材料、(メタ)アクリル系ポリマー層130と同一の材料、及びこれらの混合材料を使用することができる。また、基材層はこれらの材料よりなる単一の層又は積層構成の層であってもよい。フィルム形態の基材層の場合、該基材層を、以下で説明するように再帰反射性にすることもできる。
 
【0110】
  ライセンスプレート用グラフィックフィルムの破断強度は、良好な耐久性の観点から、好ましくは約5N/25mm以上、約10N/25mm以上、又は約20N/25mm以上であり、製造容易性の観点から、好ましくは、約200N/25mm以下、約175N/25mm以下、又は約150N/25mm以下である。本開示において、破断強度はJIS  Z  0237に準拠して測定される値である。
 
【0111】
  ライセンスプレート用グラフィックフィルムの伸びは、エンボス加工又はデボス加工時のクラック発生の防止、及び被着体、例えばベースプレートからの浮き上がり防止の観点から、好ましくは、約30%以上、又は約35%以上であり、良好な機械強度の観点から、好ましくは、約400%以下、又は約350%以下である。本開示において、伸びはASTM試験法D882−80aに準拠して測定される値である。
 
【0112】
  本開示の一実施態様のライセンスプレート用再帰反射性グラフィックフィルムの断面図を
図3及び
図4に示す。ここで、ポリウレタン表面保護層、接合層、加飾層、及び接着層については、
図1及び
図2に示す実施態様において既に説明したとおりである。
図3及び
図4に示す再帰性反射層は、
図1及び
図2に示す実施態様において既に説明した、基材又は基材層の箇所に相当する。
図3及び
図4に示す実施態様は、再帰性反射層310、410に加飾層342、442が適用されていることから分かるように、上述した加飾インクを受容可能な基材層を含む再帰性反射層を採用した実施態様である。
 
【0113】
  図3における再帰反射性グラフィックフィルム300は、概して平坦な主表面316と主表面の反対側に構造化表面314を有する再帰性反射層310を有する。構造化表面314は、複数のキューブコーナー素子312を有している。接着層330は再帰性反射層310に隣接して配置されている。接着層330は、接着剤332、及び1つ以上のバリア層334を含み、さらにシリコーン樹脂などで剥離処理されたPETフィルム、ポリエチレンフィルム、ラミネート紙などのライナー336を有してもよい。バリア層334は、接着剤332が、構造化表面314とバリア層334との間に形成される低屈折率層338内に流れ込むのを防ぐのに十分な構造的一体性を有する。バリア層334は、キューブコーナー素子312の先端部と直接接触してもよく、キューブコーナー素子312の先端部から離間していてもよく、キューブコーナー素子312の先端部にわずかに押し込まれてもよい。
 
【0114】
  バリア層334は、物理的な「バリア」を接着剤332とキューブコーナー素子312との間に提供し、低屈折率層338の形成を可能にする。バリア層334が存在することにより、低屈折率層338及び/又はバリア層334に隣接する構造化表面314の部分に入射する光線350の再帰反射が可能となる。バリア層334を含まない接着層330は、キューブコーナー素子312に接着し、これによって再帰性反射領域を効率的に封止し、光学的に活性な領域又はセルを形成する。接着剤332はまた、再帰性反射層310と接着層330とから構成される再帰性反射構造体320を全体として一緒に保持し、これによって別個の封止フィルム及び封止プロセスの必要性を排除する。
 
【0115】
  図3に示すように、低屈折率層338に隣接するキューブコーナー素子312に入射する光線350は再帰反射する。本開示において、低屈折率層338を含む再帰反射性グラフィックフィルム300の領域は光学的に活性な領域である。対照的に、低屈折率層338を含まない再帰反射性グラフィックフィルム300の領域は、
図3に示すように入射する光線350を実質的に再帰反射しないため、光学的に不活性な領域である。
 
【0116】
  低屈折率層338は、約1.30以下、約1.25以下、約1.2以下、約1.15以下、約1.10以下、又は約1.05以下の屈折率を有する材料を含む。例えば、低屈折率材料としては、空気、及び例えば米国特許出願No.61/324,249(その記載は全てここに援用される。)に記載されたような低屈折率材料が挙げられる。
 
【0117】
  バリア層334の材料として、接着剤332がキューブコーナー素子312と接触すること、又は低屈折率層338内に入り込むことを防ぐ任意の材料を使用することができる。バリア層で使用される代表的な材料として、樹脂、紫外線硬化性ポリマー、フィルム、インク、染料、顔料、無機材料、粒子、及びビーズが挙げられる。バリア層の寸法及び間隔は様々であってもよい。ある実施態様では、バリア層は再帰反射性グラフィックフィルム上にグリッド、ストライプ、ドット、文字などのパターンを形成してもよい。
 
【0118】
  バリア層の厚さは様々であってよく、一般に、約2μm以上又は約3μm以上、約10μm以下、約8μm以下、又は約4μm以下とすることができる。
 
【0119】
  再帰性反射層310は、入射した光を発光源に戻す方向に反射するように構成された、任意の好適なキューブコーナー素子312を含む。キューブコーナー素子312は、再帰反射する機能を発揮するものであれば、任意の好適な構造を有していてよい。例えば、キューブコーナー素子は、完全な立方体(フルキューブ又はジオメトリーキューブと呼ばれる場合もある。)、切頭立方体、キューブコーナー型の三角錐、キューブコーナー型の空洞などであってよい。例えば、キューブコーナー素子は、相互に略直交する3つの側面を有する三面構造を含む。使用する際、再帰反射性グラフィックフィルム300は、通常、想定される観察者及び光源にその表示面を向けて配置される。表示面に入射する光は、再帰反射性グラフィックフィルム300に入射し、実質的に光源に向かう方向で表示面から出射するように、キューブコーナー素子312の3つの側面それぞれによって反射される。いくつかの実施態様では、キューブコーナー素子312は、より広範囲の入射光線角度で再帰反射特性が向上するように互いに対して傾斜している。キューブコーナーに基づく再帰性反射シートの例示的な実施態様は、米国特許第5,138,488号(Szczech)、同第5,387,458号(Pavelka)、同第5,450,235号(Smith)、同第5,605,761号(Burns)、同第5,614,286号(Bacon)、同第5,691,846号(Benson,Jr.)、及び同第7,422,334号(Smith)に開示されている。
 
【0120】
  再帰性反射層310に好適に使用される樹脂として、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、脂肪族ポリウレタン、及びエチレンコポリマー、並びにそれらのアイオノマー、上述した(メタ)アクリル系ポリマー層に使用される材料が挙げられる。再帰性反射層310に含まれるキューブコーナー素子312は、例えば米国特許第5,691,846号(Benson,Jr.)に記述されるように、樹脂フィルム上に直接鋳造することによって形成することができる。再帰性反射層を放射線硬化により形成する場合、好適な樹脂として、例えば多官能アクリレート、エポキシアクリレート、アクリル化ウレタンなどを含む放射線硬化性組成物の硬化物が挙げられる。上記樹脂は、例えば、熱安定性、環境安定性、透明性、工具又は成形型からの優れた剥離性、及び他の層との密着性などのいずれか又は複数について有利であり、透明性、熱安定性などの点でポリカーボネート、及びエポキシアクリレートの硬化物が特に有利である。
 
【0121】
  再帰性反射層の厚さは様々であってよく、一般に、約40μm以上、約50μm以上、又は約55μm以上、約150μm以下、約100μm以下、又は約60μm以下とすることができる。再帰性反射層の厚さとは、再帰性反射層の主表面と構造化表面の最も高い頂部の距離をいう。キューブコーナー素子の高さは様々であってよく、一般に、約50μm以上、約70μm以上、又は約80μm以上、約150μm以下、約120μm以下、又は約100μm以下とすることができる。キューブコーナー素子の高さとは、キューブコーナー素子を構成する側面の再帰反射に有効な領域の、再帰反射性グラフィックフィルムの面に対して垂直な方向における長さをいう。
 
【0122】
  別の態様において、本開示は、再帰性反射層310と、バリア層334及び接着剤332から構成される接着層330とを有する再帰性反射構造体320の製造方法に関する。接着層330は、少なくとも一つのバリア層334と接着剤332を含む。この製造方法は、バリア層334を接着剤332上に配置する工程と、次いで、得られた接着層330を再帰性反射層310に積層する工程とを含む。接着層330は、以下の代表的な方法を含むがこれに限定されない様々な方法で形成することができる。1つの代表的な実施態様では、バリア層を形成する材料は接着剤上に印刷される。印刷方法は、非接触方法、例えばインクジェットプリンタを使用する印刷であってもよく、接触印刷方法、例えばフレキソ印刷であってもよい。他の代表的な実施態様では、バリア層を形成する材料は、例えばインクジェット又はスクリーン印刷方法を使用して平坦な剥離面上に印刷され、次いで平坦な剥離面から接着剤上に転写される。他の代表的な実施態様では、バリア層を形成する材料は、微細構造化表面を有するライナー上にフラッドコーティングされ、その上に接着剤を積層することによって、バリア層は微細構造化表面を有するライナーから接着剤に転写される。
 
【0123】
  再帰反射性グラフィックフィルムは、赤外線吸収剤をさらに含んでもよい。この場合、赤外線吸収剤は、再帰反射性グラフィックフィルムに入射し、反射される光の行路上のいずれかの層に含まれる。例えば、再帰性反射層(例えば、再帰性反射素子、基体層(body  layer)、シールフィルム、接着剤層など)、ポリウレタン表面保護層、(メタ)アクリル系ポリマー層、加飾層、接合層、接着層に赤外線吸収剤が含まれてもよい。また、ポリウレタン表面保護層と再帰性反射層の間に、赤外線吸収剤とバインダー樹脂とを含む赤外線吸収層(不図示)が配置されてもよい。一実施態様では、赤外線吸収剤は再帰性反射層に含まれる。赤外線吸収剤を含む層の波長800〜1000nmの光についての平均透過率は、好ましくは約80%以下、約70%以下、又は約60%以下である。赤外線吸収剤を含む層の波長800〜1000nmの光についての平均透過率が、約0.5%以上、約1%以上、又は約5%以上であってもよい。
 
【0124】
  赤外線吸収剤を含む再帰反射性グラフィックフィルムに赤外線が任意の入射角で入射すると、赤外線は赤外線吸収剤を含む層によって吸収されて、赤外線の再帰反射が抑制される。このような再帰反射性グラフィックフィルムは、ALPR赤外システムによる視認性を有することが要求されるライセンスプレートに特に有用である。
 
【0125】
  赤外線吸収剤として、近赤外線放射(例えば、約760nm〜約1500nmの波長)を吸収する材料が使用でき、例えば、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体、ナフトキノン化合物、ジイモニウム化合物、アゾ化合物などの赤外線吸収色素、及びセシウムタングステン酸化物(CWO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化セシウム、硫化亜鉛などの赤外線吸収顔料が挙げられる。耐候性に特に優れていることから、赤外線吸収剤はセシウムタングステン酸化物を含むことが有利である。セシウムタングステン酸化物は濃い青色を呈するが、濃度を適切に調節することにより、背景色(下地色)に影響を与えずに、必要な赤外線吸収性を維持することができる点でも有利である。
 
【0126】
  セシウムタングステン酸化物としては、好ましくは、一般式CsxWyOz(式中、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)であるものを使用できる。より好ましくは、0.1≦x/y<1、2.45≦z/y≦3.0であり、特に好ましくはx/y=0.33、z/y=3である。
 
【0127】
  セシウムタングステン酸化物の平均粒子径は、分散性、可視光領域における背景色(下地色)の視認性などの観点から、好ましくは約300nm以下、又は約100nm以下、又は約50nm以下である。セシウムタングステン酸化物の平均粒子径は、約10nm以上、又は約20nm以上であってもよい。
 
【0128】
  赤外線吸収剤を再帰反射性グラフィックフィルムに含めると、再帰反射性グラフィックフィルムの白色度が低下することがある。これは、多くの一般に用いられる赤外線吸収剤が可視光領域において若干の吸収を示すからである。したがって、再帰反射性グラフィックフィルムの白色度を高めるために、所望により、酸化チタン、酸化亜鉛、又は蛍光増白剤などの白色度向上材料を再帰反射性グラフィックフィルム内に含めるか、又は再帰反射性グラフィックフィルムの層間に適用してもよい。白色度向上材料を用いることにより、再帰反射性グラフィックフィルムが日光の下で白く見えるようになる。
 
【0129】
  白色度向上材料は、様々なパターン、面積、配置、及び色調で、再帰反射性グラフィックフィルムに含まれ得る。いくつかの実施態様では、白色度向上材料は、再帰反射性グラフィックフィルムの少なくとも一部をコーティングする。いくつかの白色度向上材料は、再帰反射性グラフィックフィルムの再帰反射性能を低減する場合がある。その場合、白色度向上材料の適用面積、白色度向上材料の適用パターンを構成する個々の要素のサイズ及び密度などを制御することによって、所望のレベルの再帰反射特性及び白色度を有する再帰反射性グラフィックフィルムを得ることができる。
 
【0130】
  図4における再帰反射性グラフィックフィルム400は、構造化表面414と構造化表面414に隣接する反射層435を含む再帰性反射層410を有する。
図3の低屈折率層338に代えて、反射層435が使用されている。反射層435は、例えば構造化表面414上のアルミニウムコーティングであってよい。反射層435に隣接して接着剤432を含む接着層430を再帰反射性グラフィックフィルム400に設けてもよく、接着層430は再帰性反射層410の反対側にさらにライナー436を有してもよい。構造化表面414は、複数のキューブコーナー素子412を含む。
 
【0131】
  図4に示すように、キューブコーナー素子412に入射する光線450は、反射層435とキューブコーナー素子412の組み合わせにより再帰反射する。反射層435がキューブコーナー素子412に隣接する再帰反射性グラフィックフィルム400の領域は光学的に活性な領域である。
 
【0132】
  反射層435は、キューブコーナー素子412に対して良好な接着性を有することが望ましい。反射層435として、例えば蒸着により形成された金属膜を用いることができる。蒸着金属として、アルミニウム、銀などを用いることができる。チタンスパッタする等のプライマー処理により、キューブコーナー素子412の表面と蒸着金属膜の接着力を向上させてもよい。金属膜を用いるとキューブコーナー素子412の照射角が増大することが知られている。金属膜の代わりに、反射層435は、例えば米国特許第6,243,201号(Fleming)(その記載は全てここに援用される。)に記載された多層反射コーティングを含んでもよい。反射層435の厚さは、一般に約30ナノメートル以上、約80ナノメートル以下とすることができる。
 
【0133】
  シールフィルムをキューブコーナー素子の背面に貼ることもでき、それらは、例えば、米国特許第4,025,159号(McGrath)及び同第5,117,304号(Huang)に記載されており、いずれの記載も全てここに援用される。シールフィルムは、境界における全内部反射を可能にし、かつ汚れ及び/又は湿分のような汚染物質の進入を阻止する空気境界をキューブの背面に保持する。
 
【0134】
  再帰反射性グラフィックフィルムの再帰反射特性について、観測角0.2度、入射角5度における再帰反射係数(JIS  Z  9117に準拠する)は、少なくとも約1cd/lx/m
2である。ある好適な実施態様では、再帰性反射シートの再帰反射係数は、約45cd/lx/m
2以上、又は約50cd/lx/m
2以上である。例えば、ISO7591:1982に規定される白については、約45cd/lx/m
2以上、黄については約30cd/lx/m
2以上であることが望ましい。JIS  Z  9117の封入レンズ型タイプ1−B−bである場合、白については約35cd/lx/m
2以上、黄については約25cd/lx/m
2以上、赤については約10cd/lx/m
2以上、黄赤については約13cd/lx/m
2以上、緑については約5cd/lx/m
2以上、青については約3cd/lx/m
2以上であることが望ましい。
 
【0135】
  本開示の一実施態様のライセンスプレート用グラフィックフィルムの例示的な製造方法は、少なくともポリエステル骨格若しくはポリカーボネート骨格のいずれかを有するポリオールと、多官能の脂肪族イソシアネートとの反応物、又は水系ポリウレタンを含む、印刷層が適用されるポリウレタン表面保護層を提供する工程と、ポリウレタン表面保護層の上又はその上方に、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含み、表面保護層側の第1面及び第1面に対向する第2面を有する、加飾インクを受容可能な(メタ)アクリル系ポリマー層を提供する工程と、(メタ)アクリル系ポリマー層の第2面に加飾インクを提供する工程と、(メタ)アクリル系ポリマー層の第2面の上又はその上方に、接着層を提供する工程と、を含む。
 
【0136】
  ライセンスプレート用グラフィックフィルムの製造方法について
図1〜2を参照しながら例示的に説明するが、グラフィックフィルムの製造方法はこれに限られない。
 
【0137】
  図1のグラフィックフィルムの製造方法としては、例えば、ライナー上にポリウレタン材料を塗布、乾燥してポリウレタン表面保護層140を形成する。次いで、該ポリウレタン表面保護層140上に、(メタ)アクリル系ポリマー材料を塗布、乾燥して加飾インクを受容可能な(メタ)アクリル系ポリマー層130を形成し、該ポリマー層130上にインクジェット印刷機で加飾層120を印刷し、積層体1を得る。別個のライナー上に接着剤を塗布、乾燥して接着層110を形成し、積層体2を得る。積層体1の加飾層120側と、積層体2の接着層110側とを貼り合わせることによって、
図1の構成のグラフィックフィルムを得ることができる。
 
【0138】
  図2のグラフィックフィルムの製造方法としては、例えば、ライナー上に(メタ)アクリル系ポリマー材料を塗布、乾燥して加飾インクを受容可能な(メタ)アクリル系ポリマーよりなる基材層215を形成し、別のライナー上に接着剤を塗布、乾燥して接着層210を形成し、基材層215及び接着層210を貼り合わせる。基材層215側のライナーを剥離し、該基材層215上にインクジェット印刷機で加飾層220を印刷し、積層体Aを得る。別個のライナー上にポリウレタン材料を塗布、乾燥してポリウレタン表面保護層240を形成し、続いて、該保護層240上に、接合剤を塗布、乾燥して接合層230を形成し、積層体Bを得る。積層体Aの加飾層220側と、積層体Bの接合層230側とを貼り合わせることによって、
図2の構成のグラフィックフィルムを得ることができる。
 
【0139】
  本開示の一実施態様では、上記グラフィックフィルムを含むライセンスプレートが提供される。
 
【0140】
  ライセンスプレートのベースプレートは、一般に金属板又は樹脂板である。金属板として、アルミニウム板、ステンレス板、鉄板などが挙げられる。樹脂板として、ポリカーボネート板、ポリエステル板、塩化ビニル板などが挙げられる。必要に応じて、これらの板材をフレームなどの形状に成形加工してもよい。
 
【0141】
  ライセンスプレートは、一般に、数字、文字、グラフィック、パターン又はそれらの組み合わせを含む。ある実施形態では、ライセンスプレートの外観は、政府及び/又は管轄地域で規定されている。別の実施形態では、表示部は、印刷層によって形成することができる。さらに別の実施形態では、例えばライセンスプレートにおいて、表示部をエンボス部(凸部)又はデボス部(凹部)と印刷層とを組み合わせて形成することもできる。エンボス部及びデボス部の深さは、一般にそれぞれ約1mm以上、約2mm以下であるが、この範囲に限定されない。
 
【0142】
  印刷層は、一般に、上記の顔料、並びにメラミン樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、及びこれらの混合樹脂等のバインダーを含むインク組成物を、ロールコーティングなどによりポリウレタン表面保護層の上などに適用し、所定の温度及び時間で焼き付けることによって形成することができる。インク組成物として、具体的には、NSP−UP  401K−1  Green(日弘ビックス株式会社製)、一液加熱硬化型インキであるMEGスクリーンインキ(帝国インキ製造株式会社製)等を使用することができる。
 
【0143】
  本開示の一実施態様のライセンスプレートの製造方法は、ベースプレートを提供する工程と、ベースプレートの上に、上述したライセンスプレート用グラフィックフィルムを提供してグラフィックフィルム積層プレートを形成する工程と、グラフィックフィルム積層プレートをエンボス加工又はデボス加工する工程と、エンボス加工又はデボス加工されたグラフィックフィルム積層プレートの凸部又は凹部に印刷層を形成する工程と、を含む。
 
【0144】
  ライセンスプレートの製造方法を、
図5A〜5Eを参照しながら例示的に説明するが、ライセンスプレートの製造方法はこれに限られない。
 
【0145】
  図5Aに示すグラフィックフィルムは、ライナー536上に、接着層520、加飾層542、加飾インクを受容可能な(メタ)アクリル系ポリマー層545、及びポリウレタン表面保護層544が積層され、加飾層542は、(メタ)アクリル系ポリマー層545の第2面上に印刷されている。
 
【0146】
  図5Bに示すように、ライナー536を取り除き、接着層520をベースプレートであるアルミニウム板560に接着して積層することにより、グラフィックフィルム積層プレートを形成する。
 
【0147】
  次に、
図5Cに示すように、ブランクプレスダイ570を用いて、グラフィックフィルム積層プレートを所望の大きさにブランクプレスして切り出す。
 
【0148】
  図5Dに示すように、切り出されたグラフィックフィルム積層プレートを、常温下でエンボス/デボス加工することにより、ライセンスプレートの表示部及び辺縁のフレーム部を形成する。
図5Dでは、凸部(エンボス部)は表示部の台座として示す。フレーム部はライセンスプレートの変形を防止するための強度をライセンスプレートに付与することができる。
 
【0149】
  図5Eに示すように、エンボス加工されたグラフィックフィルム積層プレートの凸部(エンボス部)に印刷層546をロールコーティングなどによって形成する。このようにして、グラフィックフィルムを含むライセンスプレート500を作製することができる。
 
【実施例】
【0150】
  以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。
【0151】
  本実施例において、ポリウレタン表面保護層で使用した材料を表1、(メタ)アクリル系ポリマー層及び接着層で使用する(メタ)アクリルポリマー溶液を表2にそれぞれ示す。
【0152】
【表1】
【0153】
  表1に示す各成分を使用して水系ポリウレタン分散液及び溶剤系ポリウレタン溶液を作製した。
【0154】
<水系ポリウレタン分散液(水系PU)>
  1.59質量部のTinuvin(登録商標)292、2.68質量部のTinuvin(登録商標)1130、0.57質量部のLipal(登録商標)860K、0.28質量部の2−アミノ−2−メチルプロパノール、及び10.37質量部の蒸留水を混合した。この混合液14.80質量部及び26.90質量部のCarbodilite(登録商標)V−02を、200.00質量部のEternacoll(登録商標)UW5002に加えて混合し、水系ポリウレタン分散液を調製した。
【0155】
<溶剤系ポリウレタン溶液(溶剤系PU)>
  36.40質量部のPlaccel(登録商標)205H、29.00質量部のTakelac(登録商標)UA702、1.03質量部のTinuvin(登録商標)292、1.03質量部のTinuvin(登録商標)99−2、60.55質量部のDesmodur(登録商標)Z4470BAを混合した。該混合液に0.024質量部のジブチルスズジラウレート及び3.50質量部のアセチルアセトンをさらに混合して溶剤系ポリウレタン溶液を調製した。
【0156】
【表2】
【0157】
  グラフィックフィルム及び該フィルムを含むライセンスプレートの特性を以下の試験方法を用いて評価した。
【0158】
<粘弾性特性−ガラス転移温度Tg及びtanδの測定>
  ポリウレタン溶液を厚さ38μmの剥離処理ポリエステルフィルム(帝人デュポン社製)上に塗布し、温度80℃のオーブン中で10分間乾燥した後、ポリエステルフィルムを除去して、厚さ50μmのポリウレタン表面保護層を作製する。
【0159】
  得られた表面保護層を幅10mm、長さ50mmに切断して短冊状の試料を作成し、Rheometric  Scientific社製粘弾性測定装置RSA−IIIを用い、引張モード、周波数10.0Hzの条件下、昇温速度5.0℃/分で0〜160℃の温度範囲における損失正接(tanδ)(損失弾性率E”/貯蔵弾性率E’)を測定する。得られた損失正接(tanδ)のピーク温度をガラス転移温度(Tg)と定義する。
【0160】
<加飾インク印刷特性>
  グラフィックフィルムの加飾インクを受容可能な(メタ)アクリル系ポリマー層に、インクジェット印刷機JV−33−130を使用して加飾層を印刷する。インクのにじみ、はじき、色の鮮鋭さの外観変化を目視により確認する。外観に変化がないものを「OK」、外観に変化が確認されたものを「NG(Not  Good)」とする。
【0161】
<エンボス性>
  グラフィックフィルムを貼り合わせたライセンスプレートを常温下でエンボス加工する。グラフィックフィルムの破断、剥がれ等の欠陥を目視で確認する。
図6に例示されるように、「摩」の文字をエンボスで形成し、エンボス部付近において欠陥が目立ち実使用不可能なレベルのものを「×」、実使用可能なレベルだがごく一部のみに欠陥が発生しているものを「△」、欠陥のないものを「○」とする。
【0162】
<接着性>
  グラフィックフィルムを貼り合わせたライセンスプレートにおけるグラフィックフィルムの接着性を、JIS  K5600に準じたクロスカットテストにより評価する。1mm間隔で、縦横5本の線で格子状にカッターで切れ目を入れ、ニチバンセロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製)をその上に貼り付けて剥がす。格子状のフィルムの剥がれが全くないものを「○」、実使用可能なレベルだがわずかに剥がれが確認されたものを「△」、剥がれが明らかに確認され実使用不可能なレベルのものを「×」とする。このテストは、エンボス突起部上にロールコートされた印刷層上(Ink)と、ロールコートされていない平坦上(Top)の両方で実施する。
【0163】
<耐薬品性>
  耐薬品性試験は、グラフィックフィルムのポリウレタン表面保護層に対する評価(Top)と、エンボス突起部上のポリウレタン表面保護層にロールコーティングで印刷層を適用した後の印刷層に対する評価(Ink)とを実施する。印刷層自体は十分な耐薬品性を有するため、溶解などを生じることはないが、後者の評価は、印刷層とグラフィックフィルムとの界面に薬品が浸透した場合の剥がれ等の欠陥を確認するためのものである。
【0164】
  (1)グラフィックフィルム表面の耐薬品性試験(Top)
  ラッカーシンナー(RA−50、三協化学株式会社製)を染み込ませた布を、500gの圧力をかけながら、印刷層が形成されていない部分のグラフィックフィルムの表面に対して30往復拭き擦る。塗膜の外観変化の有無を目視で観察し、下記5段階の評価を行う。3点以上のグラフィックフィルムは、実使用上許容される。
  5:  欠陥なし
  4:  かすかに跡が残る
  3:  少し擦り跡が残り、少し表面が粗くなる
  2:  表面が粗くなる
  1:  表面が溶解し、破ける
【0165】
  (2)ロールコーティングされた印刷層の耐薬品性試験(Ink)
  ラッカーシンナー(RA−50、三協化学株式会社製)を染み込ませた布を、500gの圧力をかけながら、グラフィックフィルムに印刷された印刷層表面に対して30往復拭き擦る。塗膜の外観変化の有無を目視で観察し、下記5段階の評価を行う。3点以上のグラフィックフィルムは、実使用上許容される。
  5:  欠陥なし
  4:  かすかに跡が残る
  3:  少し擦り跡が残り、少し表面が粗くなる
  2:  少し印刷層の剥がれが観察される
  1:  印刷層の剥がれが著しく観察される
【0166】
<耐汚染性>
  グラフィックフィルムのポリウレタン表面保護層の上に、黒色の油性マーカー(マジックインキ(登録商標)、寺西工業株式会社)で1本の線を描き、室温で24時間放置する。ラッカーシンナー(RA−50、三協化学株式会社)をしみ込ませた布を用いてインクを拭き取り、インクの残留及び塗膜の外観変化の有無を目視で観察し、下記5段階の評価を行う。3点以上のグラフィックフィルムは、実使用上許容される。
  5:  インク残りなし
  4:  かすかにインクの跡が観察される
  3:  少しインクの跡が残る
  2:  はっきりとインクの残りが観察される
  1:  まったくインクが除去できず、インクがにじみ広がる
【0167】
<耐ガソリン性>
  グラフィックフィルムを貼り付けたライセンスプレートをガソリンに4時間浸漬する。塗膜の外観変化の有無を目視で観察し、下記5段階の評価を行う。3点以上のグラフィックフィルムは、実使用上許容される。
  5:  欠陥なし
  4:  かすかに跡、剥がれが観察される
  3:  エッジから少し剥がれが観察される
  2:  フィルムの膨潤、変形が観察される
  1:  フィルムの膨潤、変形、剥がれが観察される
【0168】
<例1>
  表3に記載される配合割合の(メタ)アクリル系ポリマー層用材料をLumirror(登録商標)T−60(50μm厚のPETキャリアフィルム。東レ株式会社製)にコートし、100℃で5分間乾燥させ、厚み30μmの加飾インクを受容可能な(メタ)アクリル系ポリマーよりなる基材層を備える積層フィルム1を作製した。
【0169】
  表3に記載される配合割合の接着層用材料をPurex(登録商標)A−55(38μm厚の剥離性PETライナーフィルム。帝人デュポンフィルム株式会社製)にコートし、100℃で10分間乾燥させ、厚み20μmの白色の接着層を備える積層フィルム2を作製した。
【0170】
  積層フィルム1の基材層と、積層フィルム2の接着層とが重なるようにラミネートにより積層した後、Lumirror(登録商標)T−60を除去し、基材層の面にインクジェット印刷機(JV−33−130。株式会社ミマキエンジニアリング社製)で加飾層を印刷し、積層フィルム3を作製した。
【0171】
  上述の水系ポリウレタン分散液をLumirror(登録商標)T−60にコートし、100℃で5分間乾燥させ、厚み30μmのポリウレタン表面保護層を作製した。該保護層の上に、表3に記載される配合割合の接合層用材料をコートし、100℃で5分間乾燥させ、厚み20μmの接合層を形成し、ポリウレタン表面保護層及び接合層を備える積層フィルム4を作製した。
【0172】
  積層フィルム3の加飾層を有する基材層と、積層フィルム4の接合層が重なるようにラミネートにより積層して、グラフィックフィルムを作製した。
【0173】
  ポリウレタン表面保護層側のLumirror(登録商標)T−60を除去し、保護フィルムのLD−K−1020(日立化成株式会社製)をラミネートした。接着層側のPurex(登録商標)A−55を除去した後、グラフィックフィルムをアルミ板(A1050P  JIS  H4000に準拠、1.0mm×165.5mm×330.5mm)にラミネートして、グラフィックフィルム積層プレートを作製した。該積層プレートに、常温下、エンボス機でエンボス加工を施し、車両番号の突起部を形成した。保護フィルムを除去した後、色インク(NSP−UP  401K−1  Green。日弘ビックス株式会社製)をロールコート法で車両番号の突起部のみにコートして印刷層を形成した。120℃で20分間、オーブン中で乾燥させ、グラフィックフィルムを含むライセンスプレートを作製した。
【0174】
<例2>
  上述の水系ポリウレタン分散液をLumirror(登録商標)T−60にコートし、100℃で5分間乾燥させ、厚み30μmのポリウレタン表面保護層を作製した。該保護層の上に、表3に記載される配合割合の(メタ)アクリル系ポリマー層用材料をコートし、100℃で5分間乾燥させ、厚み20μmの加飾インクを受容可能な(メタ)アクリル系ポリマー層を形成した。該(メタ)アクリル系ポリマー層の面にインクジェット印刷機(JV−33−130)で加飾層を印刷し、積層フィルムAを作製した。
【0175】
  表3に記載される配合割合の接着層用材料をPurex(登録商標)A−55にコートし、100℃で10分間乾燥させ、厚み20μmの白色の接着層を備える積層フィルムBを作製した。
【0176】
  積層フィルムAの加飾層を有する(メタ)アクリル系ポリマー層と、積層フィルムBの接着層が重なるようにラミネートにより積層して、グラフィックフィルムを作製した。
【0177】
  ポリウレタン表面保護層側のLumirror(登録商標)T−60を除去し、保護フィルムのLD−K−1020をラミネートした。接着層側のPurex(登録商標)A−55を除去した後、グラフィックフィルムをアルミ板(A1050P  JIS  H4000に準拠、1.0mm×165.5mm×330.5mm)にラミネートして、グラフィックフィルム積層プレートを作製した。該積層プレートに、常温下、エンボス機でエンボス加工を施し、車両番号の突起部を形成した。保護フィルムを除去した後、色インク(NSP−UP  401K−1  Green)をロールコート法で車両番号の突起部のみにコートして印刷層を形成した。120℃で20分間、オーブン中で乾燥させ、グラフィックフィルムを含むライセンスプレートを作製した。
【0178】
<例3>
  (メタ)アクリル系ポリマー層用材料を表3に記載される配合割合に変更した以外は、例2と同様にして、グラフィックフィルムを含むライセンスプレートを作製した。
【0179】
<例4>
  (メタ)アクリル系ポリマー層用材料を表3に記載される配合割合に変更した以外は、例2と同様にして、グラフィックフィルムを含むライセンスプレートを作製した。
【0180】
<例5>
  ポリウレタン表面保護層の材料として、上述の溶剤系ポリウレタン溶液を使用し、乾燥条件を120℃20分間と変更した以外は、例2と同様にして、グラフィックフィルムを含むライセンスプレートを作製した。
【0181】
<比較例1>
  ポリウレタン表面保護層を形成せずに、例3で使用した(メタ)アクリル系ポリマー層用材料をLumirror(登録商標)T−60にコートし、100℃で5分間乾燥させ、厚み30μmの(メタ)アクリル系ポリマー層を形成したこと以外は、例2と同様にして、グラフィックフィルムを含むライセンスプレートを作製した。
【0182】
  例1〜5及び比較例1で得られたグラフィックフィルムを含むライセンスプレートの評価結果を表3に示す。
【0183】
【表3】
【0184】
  本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施態様及び実施例が様々に変更可能であることは当業者に明らかである。また、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは当業者には明らかである。