特許第6810539号(P6810539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パイロットコーポレーションの特許一覧

特許6810539油性インキ組成物及びそれを内蔵したマーキングペン、並びに筆記セット
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810539
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】油性インキ組成物及びそれを内蔵したマーキングペン、並びに筆記セット
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20201221BHJP
   B43K 5/18 20060101ALI20201221BHJP
   B43K 5/02 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   C09D11/16
   B43K5/18
   B43K5/02
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-113803(P2016-113803)
(22)【出願日】2016年6月7日
(65)【公開番号】特開2017-218503(P2017-218503A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】高木 学
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−129086(JP,A)
【文献】 特開2006−022213(JP,A)
【文献】 特開2005−097368(JP,A)
【文献】 特開2005−075893(JP,A)
【文献】 特開2010−144064(JP,A)
【文献】 特開2001−288395(JP,A)
【文献】 特開2008−255137(JP,A)
【文献】 特開平11−124529(JP,A)
【文献】 特開平11−080645(JP,A)
【文献】 特開2003−292864(JP,A)
【文献】 特表2015−513408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/16
B43K 5/02
B43K 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光染料と、有機溶剤と、樹脂と、一塩基酸エステル及び二塩基酸エステルを剥離剤として含有してなり、前記二塩基酸エステルが、R1−O−R2−で示すアルコキシ基をエステル基に有する構造であり、前記二塩基酸エステルが一塩基酸エステルに対して3:1〜1:2の範囲からなる割合で配合され、光照射タイプの透過性筆記面に筆記される油性インキ組成物。
〔式中のR1は、炭素数3〜8のアルキル基であり、R2はいずれも炭素数2〜8であるアルキル鎖、アルコキシ鎖、アルキル鎖及びアルコキシ鎖から選ばれるいずれかが1〜4の範囲で連続する有機鎖である。〕
【請求項2】
前記請求項1に記載の油性インキ組成物を内蔵してなるマーキングペン。
【請求項3】
前記請求項2に記載のマーキングペンと、透明(透過性)の非浸透性筆記面を有する被筆記体とからなる筆記セット。
【請求項4】
前記被筆記体が、筆跡を発光して浮かび上がる光源を備える請求項3に記載の筆記セット。
【請求項5】
前記樹脂がポリビニルブチラール樹脂である請求項1に記載の油性インキ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油性インキ組成物に関する。詳細には、非浸透面に形成した筆跡を確実に消去できる油性インキ組成物とそれを内蔵したマーキングペン、並びに筆記セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホーローや金属或いはプラスチック等の素材からなる筆記板(所謂、ホワイトボードやブラックボード)に筆記される筆記板用油性インキにおいては、筆記と消去が繰り返し行えるように、筆記板に形成した筆跡に定着性を付与するための樹脂が添加されるとともに、該筆跡をボードイレーザー(フェルトや布帛からなる消去部)等で擦過することにより消去可能とするための剥離剤が添加されている。
前記剥離剤としては種々の材料が研究されているが、インキ中での溶解安定性が高い点から脂肪族塩基酸エステルが広く用いられており、更にその改良発明として、経時後の消去性を向上するべく、消去性付与剤を配合する技術が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−75893号公報
【特許文献2】特開2005−97368号公報
【0004】
また、筆記板に形成した筆跡に対して光を照射することで、筆跡を発光させて浮かび上がるように視覚させるため、LED等の光源を備えた筆記板が普及しており、この種の筆記板には、蛍光色のインキが用いられている。
前記蛍光色インキには、着色剤として蛍光染料又は蛍光顔料が用いられるが、蛍光染料を用いた場合、剥離剤として前述の脂肪族塩基酸エステルを用いたとしても、イレーザーによる擦過で十分に除去することが困難であり、擦過によって筆跡が板面に散らばって分散された状態で残ったり、板面を染色してしまう。特に経時後の筆跡においてはより顕著にみられる。そのため、残った筆跡や染色箇所が光照射時に発光して残像を生じるものであった。
更に、前記文献の消去性付与剤を配合しても、蛍光染料を用いた系では前述の消去性の向上は見られなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、光照射タイプの筆記板にも適用可能な蛍光染料を用いた場合であっても、擦過消去時に筆跡が散らばることなく剥離でき、軽い力で消去できるという、高い消去性能を発現できる実用性に優れた油性インキ組成物とそれを内蔵したマーキングペン、並びに筆記セットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、蛍光染料と、有機溶剤と、樹脂と、一塩基酸エステル及び二塩基酸エステルを剥離剤として含有してなり、前記二塩基酸エステルが、R1−O−R2−で示すアルコキシ基をエステル基に有する構造であり、前記二塩基酸エステルが一塩基酸エステルに対して3:1〜1:2の範囲からなる割合で配合され、光照射タイプの透過性筆記面に筆記される油性インキ組成物を要件とする。
〔式中のR1は、炭素数3〜8のアルキル基であり、R2はいずれも炭素数2〜8であるアルキル鎖、アルコキシ鎖、アルキル鎖及びアルコキシ鎖から選ばれるいずれかが1〜4の範囲で連続する有機鎖である。〕
更に、前記油性インキ組成物を内蔵してなるマーキングペンを要件とし、前記マーキングペンと、透明(透過性)の非浸透性筆記面を有する被筆記体とからなる筆記セットを要件とする。
更には、前記被筆記体が、筆跡を発光して浮かび上がる光源を備えることを要件とする。
更に、前記樹脂がポリビニルブチラール樹脂であることを要件とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、着色剤として蛍光染料を用いた場合であっても、擦過消去時に筆跡が散らばることなく剥離でき、軽い力で筆跡全体を消去できるという、高い消去性能を発現する実用性に優れた油性インキ組成物となる。そのため、光照射タイプの筆記板やシート材に対しても適用可能であり、繰り返しの使用においても残像を生じることなく、筆跡に高い発光性を付与することで筆記部分を際立たせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、蛍光染料とともに、剥離剤として一塩基酸エステルと、特定の二塩基酸エステルをインキ中に添加することにより、擦過消去時に筆跡が散らばることなく確実に剥離できるという、初期、経時後によらず優れた消去性が得られるものである。
前記剥離剤となる一塩基酸エステルとして、具体的には、CIO(イソオクタン酸セチル)、ICM−R(ミリスチン酸イソセチル)、ICIS(イソステアリン酸イソセチル)、ISP(パルミチン酸イソステアリル)、STO(ステアリン酸イソオクチル)等が挙げられる。特に脂肪族系のものは効果が高く、より有用である。
前記一塩基酸エステルは、筆記時に樹脂が筆記面に対して被膜を形成することで筆跡として定着する際、前記被膜と筆記面の間に存在することで消去性能を付与する。
【0009】
前記二塩基酸エステルとしては、エステル基の少なくとも一方に、R−O−R−で示すアルコキシ基を有する構造の化合物が適用できる。
前記構造を有する二塩基酸エステルは、特定構造のアルコキシ基により、蛍光染料と樹脂に対して作用する剥離剤成分となる。そのため、前記一塩基酸エステルと併用することで、筆記時には優れた定着性を発現するとともに、消去時には、蛍光染料が残ることなく剥離除去されるという筆記、消去性能を永続的に発現できる構成となる。
【0010】
前記アルコキシ基を構成するRは、炭素数3〜8のアルキル基であり、Rは炭素数2〜8のアルキル鎖とアルコキシ鎖から選ばれるいずれかが、1個から4個連続する有機鎖であり、炭素数2〜8のアルキル鎖、炭素数2〜8のアルコキシル鎖がそれぞれ単独または複数で連続するものの他、前記アルキル鎖とアルコキシル鎖が交互又はランダムに連続するものである。
前記構造を有するものは、樹脂との相溶性が高いため、筆跡に適度な可塑化作用を発現することができる。そのため、蛍光染料が分散(相溶)された樹脂被膜(視認される筆跡)を硬化することなく、更に、蛍光染料の分散相溶状態を維持したまま、長期に亘って擦過剥離に適した状態で筆跡を維持できる。従って残像を生じることなく、経時後においても筆跡が容易且つ確実に消去できるものとなる。
特にRがブチル基(即ち、アルコキシ基末端がブトキシ基となる)であり、Rがエチル鎖やエトキシ鎖やエトキシエチル鎖のものは、樹脂や蛍光染料の種類を限定することなく、長期に亘って前記状態を発現できるため、より好適である。
【0011】
前記R−O−R−で示すアルコキシ基を形成するために二塩基酸とエステル化反応させるアルコールとして、より好適なものとしては、例えば、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0012】
前記アルコールと反応させて二塩基酸エステルとする二塩基酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0013】
前記二塩基酸とアルコールから形成される二塩基酸エステルの中でも、アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)、セバシン酸ビス(2−ブトキシエチル)、アジピン酸ビス〔2−(2−ブトキシエトキシ)エチル〕は、蛍光染料、溶剤、一塩基酸エステルの種類に左右されず、高い効果が発現できるため、特に有用である。
【0014】
前記二塩基酸エステルは、一塩基酸エステルに対して3:1〜1:2の範囲内からなる割合(即ち、一塩基酸エステルの0.5倍量〜3倍量)で配合されることが好ましい。
前記割合においては、前述の一塩基酸エステルと二塩基酸エステルの剥離作用が高い状態で発現され、蛍光染料、溶剤、樹脂等の配合組成や、使用環境に左右されることなく、特に高い消去性が得られる。
【0015】
その他汎用の剥離剤である、カルボン酸エステル類、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を併用することもでき、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル又はこれらの塩、ポリアルキレングリコールエステル等の化合物が例示できる。
【0016】
前記剥離剤は、インキ組成物全量中3〜30重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲で添加することができる。
前記数値範囲とすることにより、蛍光染料を用いたインキ組成物により形成した筆跡が、優れた消去性で擦過消去できる。
【0017】
蛍光染料としては、汎用の油溶性蛍光染料を用いることができ、例えば、ベーシックイエロー1、ベーシックイエロー40、ベーシックレッド1、ベーシックバイオレット10、ベーシックバイオレット11:1、アシドイエロー7、アシドレッド92、アシドブルー9、ディスパーズイエロー121、ディスパーズブルー7、ダイレクトイエロー85、フルオロセントブライティングホワイテックスWS52、ソルベントイエロー44、ソルベントブルー5、ソルベントグリーン7等が挙げられる。
前記蛍光染料は一種又は二種以上を併用してもよく、インキ組成物中0.01〜30重量%の範囲で用いられる。
【0018】
更に、従来から油性インキに適用される汎用の顔料や染料を併用することもできる。
前記顔料として、具体的には、カーボンブラック、群青、二酸化チタン顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、スレン顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、スレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料等の有機顔料、アルミニウム粉やアルミニウム粉表面を着色樹脂で処理した金属顔料、透明又は着色透明フィルムにアルミニウム等の金属蒸着膜を形成した金属光沢顔料、フィルム等の基材に形成したアルミニウム等の金属蒸着膜を剥離して得られる厚みが0.01〜0.1μmの金属顔料、金、銀、白金、銅から選ばれる平均粒子径が5〜30nmのコロイド粒子、蛍光顔料、蓄光性顔料、熱変色性顔料、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆したパール顔料等が挙げられる。
また、前記染料としては、例えば、カラーインデックスにおいてソルベント染料として分類される有機溶剤可溶性染料等が挙げられる。
【0019】
前記樹脂は、筆記面への筆跡定着性やインキに粘性を付与するために用いられる。
前記樹脂としては、例えば、エチルセルロースやアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合樹脂等のビニル系樹脂等が挙げられる。
尚、前記樹脂は加工顔料の形態で添加されるものであってもよい。
【0020】
前記樹脂のうち、本発明の剥離剤や蛍光染料との相性がよいことから、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)がより好適に用いられる。特に、ブチラール化度55〜85mol%のものが好ましく、具体的には、エスレックBL−1、BL−1H、BL−2、BL−2H、BL−S、BX−L、BM−1、BM−2、BM−5、BM−S、BH−3、BX−1、BX−5(以上、積水化学工業社製)、モビタールB16H、B20H、B30T、B30H、B30HH、B45M、B45H(以上、クラレ社製)等が挙げられる。これらは一種又は二種以上を混合して使用することができる。
前記ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、インキ組成物全量中、1〜10重量%、好ましくは、2〜8重量%、更に好ましくは、3〜6重量%の範囲で添加することができる。
とすることが望ましい。
【0021】
前記有機溶剤は、従来から油性インキに用いられるものであれば使用できるが、揮発性(低沸点)の有機溶剤が好適である。低沸点有機溶剤は、筆記板に筆記した際の筆跡の乾燥性に優れるため、筆記直後の筆跡を手触した際、未乾燥のインキが手に付着したり、筆記面上の筆跡を形成していない空白部分を汚染する等の不具合を生じることなく、良好な筆跡を形成できる。
前記有機溶剤としては低級脂肪族アルコール系溶剤又はグリコールエーテル系溶剤が挙げられ、主溶剤(全溶剤中の50重量%以上を占める)として用いることが好ましい。
前記低級脂肪族アルコール系溶剤としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、グリコールエーテル系溶剤としてはエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルが挙げられ、より好ましくは、低級脂肪族アルコール系溶剤が炭素数2〜4の脂肪族アルコール、グリコールエーテル系溶剤が炭素数3〜5のグリコールエーテルが用いられる。
前記有機溶剤の中でも特に、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールが好適である。
【0022】
また、前記有機溶剤の他の例としては、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の炭化水素系有機溶剤、メチルイソブチルケトン、メチルn−プロピルケトン、メチルn−ブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン等のケトン系有機溶剤、ギ酸n−ブチル、ギ酸イソブチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系有機溶剤、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルグリコール等のグリコール系溶剤、ベンジルアルコール、γ−ブチロラクトン等を例示でき、前述の低沸点有機溶剤と併用することもできる。
【0023】
更に、本発明のインキ組成物には、必要に応じて上記成分以外に、筆跡白化防止剤、耐乾燥性付与剤、防錆剤、粘度調整剤、顔料分散剤、界面活性剤等の各種添加剤を使用できる。
前記添加剤はいわゆる慣用的添加剤と呼ばれるもので、公知の化合物から適宜必要に応じて使用することができる。
【0024】
前記インキ組成物は、ペン先を筆記先端部に装着したマーキングペンに充填して実用に供される。
マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ等のマーキングペン用ペン先を筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量のインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容して、弁機構により筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペンが挙げられる。
尚、前記マーキングペンは、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式のマーキングペンの他、ノック式、回転式、スライド式等の出没機構を有し、軸筒内にペン先を収容可能な出没式のマーキングペンであってもよい。
【0025】
前記マーキングペンによる筆跡は、非浸透面からなる汎用の筆記板(ホワイトボードやブラックボード等)やフィルム、シート等の筆記面に筆記することで形成され、該筆跡はボードイレーザー(フェルトや布帛)で擦過消去される。
特に、筆跡が蛍光性を有するため、前記筆記面(被筆記体)が黒色等の暗色のものや、透明(透過性)のものが好適である。これらに筆記された筆跡に対して光を照射することで、筆跡が発光して浮かび上がるように視覚される。そのため、LED等の光源を備えた被筆記体(暗色や透明の非浸透性筆記面を有する)とのセットとして提供することもできる。
本発明のインキにおいては、消去時、擦過によって筆跡が被筆記面上に散らばった状態で残ることなく、確実に除去されるため、光照射時に残渣が発光して残像を生じることなく、形成した筆跡のみが鮮明に発光して浮かび上がるという、再筆記性に優れたものとなる。
【実施例】
【0026】
以下の表に実施例及び比較例の油性インキ組成物の組成を示す。尚、表中の数値は重量部を示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表中の注番号に沿って原料の内容を以下に示す。
(1)日本蛍光化学(株)製、商品名:NKS−1005(ベーシックイエロー40と樹脂の混合物)
(2)日本蛍光化学(株)製、商品名:NKS−1007(ベーシックバイオレット11:1と樹脂の混合物)
(3)積水化学工業(株)製、商品名:エスレックBL−1
(4)イソオクタン酸セチル
(5)ステアリン酸イソオクチル
(6)セバシン酸ビス(2−ブトキシエチル)
(7)アジピン酸ビス(2−ブトキシエチル)
(8)アジピン酸ビス〔2−(2−ブトキシエトキシ)エチル〕
(9)セバシン酸ビス(2−エチルヘキシル)
(10)アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)
(11)アジピン酸ビスイソデシル
(12)コハク酸ジエチル
(13)ペンタグリセリルモノステアレート
【0029】
インキの調製
前記実施例及び比較例の配合量で各原料を混合し、ディスパーにて20℃で3時間撹拌して溶解することにより油性インキ組成物を得た。
【0030】
マーキングペンの作製
前記実施例及び比較例のインキ組成物は、市販のマーキングペン(パイロットコーポレーション製;WMBM−12L)に各5g充填することで油性マーキングペンを得た。
前記各マーキングペンを用いて以下の試験を行なった。
【0031】
消去性試験
各マーキングペンを用いて、各種筆記板(スチール製ブラックボードと透明アクリル板)に5個連続して螺旋状の丸を書き、筆記直後の筆跡及び20℃、14日放置後の筆跡に対して、100gの分銅を載せたティッシュペーパーで筆跡上を3回移動させた際の筆記面の状態を目視により観察した。尚、前記観察場所は、蛍光灯下及び暗所でのLED照射状態により行った。
試験結果を以下の表に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
尚、表中の記号の評価は以下の通りである。
消去性試験
○:筆跡が消去され、残像も生じない。
△:筆跡は消去されるが、残像を生じる。
×:筆跡が完全に消去できず残り、残像も生じる。