特許第6810546号(P6810546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810546
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】熱収縮性多層フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/28 20060101AFI20201221BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20201221BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20201221BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20201221BHJP
   B32B 7/028 20190101ALI20201221BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B32B27/28 101
   B32B27/30 C
   B32B27/32 C
   B32B7/023
   B32B7/028
   B65D65/40 D
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-142648(P2016-142648)
(22)【出願日】2016年7月20日
(65)【公開番号】特開2018-12253(P2018-12253A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】北田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 忠良
(72)【発明者】
【氏名】南部 翔太
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−026542(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/121874(WO,A1)
【文献】 特表2003−523290(JP,A)
【文献】 特開平01−168229(JP,A)
【文献】 特開平08−239493(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/085240(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00−43/00
B65D65/00−65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填物に接する内表面層、バリア層、及び最外層を含む熱収縮性多層フィルムであって、
上記内表面層と上記バリア層との間に中間層を含み、
上記中間層の厚みは、上記内表面層の厚みの1.4倍以下であり、
上記内表面層を構成する樹脂無架橋のエチレン−酢酸ビニル共重合体のみであり
上記バリア層は塩化ビニリデン系樹脂を含み、
上記最外層を構成する樹脂は超低密度ポリエチレンのみであり、
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル単量体単位の含有量が7重量%以上14重量%以下であり、
80℃の熱水に浸漬して収縮させた後の上記熱収縮性多層フィルムのHazeが、35%以下であることを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
上記バリア層の厚みは、1μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項3】
80℃の熱水中に10秒浸漬した際の面積収縮率が、60%以上90%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱収縮性多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品包装に用いられる熱収縮性多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱収縮性多層袋及びパウチ等の包装材料は、食品包装に用いられている。それらの包装材料に利用される熱収縮性多層フィルムが、樹脂積層体を管状ダイからフィルム状に押し出し、インフレーション法により二軸延伸することで得られた管状の熱収縮性多層フィルムである場合には、当該管状の熱収縮性多層フィルムを折りたたみ、(1)当該管状の熱収縮性多層フィルムに対し、フィルム状に押し出した押出方向に垂直な方向にヒートシール又はインパルスシール等によって一次シールして袋の底シール部を形成し、底シール部の位置と、当該押出方向において異なる位置で、当該押出方向に垂直な方向に当該フィルムをカットして、袋の開口部を形成することで、典型的な底シールバッグ等の包装材料にしたり、(2)当該管状の熱収縮性多層フィルムに対し、当該押出方向に垂直な方向にヒートシール又はインパルスシール等によって一次シールして袋のサイドシール部(バッグ側面)を形成し、当該押出方向に平行な方向に当該フィルムをカットして、袋の開口部を形成することで、サイドシールバッグ等の包装材料にしたりする。また、熱収縮性多層フィルムがTダイから押出しされ、テンター法により延伸されたフラットフィルムである場合には、フラットフィルムのシール面を内側にして折りたたむか、二枚のフラットフィルムのシール面同士を向き合わせて重ね、パウチの形状に添って一次シール及びカットすることで典型的なパウチ等の包装材料にする。
【0003】
また、熱収縮性の包装材料は、包装材料中に、内容物を充填し、真空包装を行い、真空包装された製品を熱水シャワーに通すか、熱水中に浸漬することにより、包装材料を熱収縮させ、食品包装体を得るのに用いられている。
【0004】
熱収縮性多層フィルムとしては、例えば、特許文献1に、熱収縮性多層フィルムに充填物に接する内表面層、それに隣接する中間層、及び外表面層の少なくとも3層からなり、内表面層が無機系滑剤及び有機系滑剤を有し、中間層が有機系滑剤を有し、内表面層が、シングルサイト触媒系ポリエチレン及びLLDPE等から選択される包装用積層体が記載されている。
【0005】
特許文献2には、内容物を充填するときの外表面層が耐熱性熱可塑性樹脂、中間層がポリアミド系樹脂、内表面層がエチレン系共重合体からなり、且つ、80℃熱水処理後の内表面層同士の接着力が0.1〜3.5N/15mmであることを特徴とする熱収縮性多層フィルムが記載されている。
【0006】
特許文献3には、スキンパック蓋材用共押出多層フィルムとして、最内層にエチレン−酢酸ビニル共重合体等を備えるフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO00/47406号(2000年8月17日公開)
【特許文献2】国際公開WO2014/178379号(2014年11月6日公開)
【特許文献3】特開2015−174678号(2015年10月5日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、熱水に浸漬したとき等の高温下で、一次シールした部分である一次シール部が剥がれることのない熱収縮性多層フィルムの開発が望まれている。つまり、高温下における一次シール部のシール強度が高い熱収縮性多層フィルムが求められている。
【0009】
また、高温下で高い面積収縮率を有している熱収縮性多層フィルムが求められている。
【0010】
しかしながら、特許文献1〜3には、熱収縮性多層フィルムに、高温下で一次シール部が剥がれないように、高いシール強度を持たせることについて記載されていない。
【0011】
また、本願発明者が検討を行った結果、特許文献2に記載されている熱収縮性多層フィルムは、高温下での面積収縮率が十分ではないことがわかった。また、特許文献3には、高温下で高い面積収縮率を有していることについて記載されていない。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みられたものであり、その目的は、高温下における一次シール部のシール強度及び面積収縮率が高い熱収縮性多層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明者が鋭意検討した結果、エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル単量体単位の含有量が特定の割合であり、且つ、バリア層が特定の物質を含むことによって、高温の熱水に浸漬したとき等の高温環境下でも一次シール部が剥がれないだけのシール強度を有し、且つ、高温下で高い面積収縮率を有することを見出し、本発明に達した。
【0014】
本発明に係る熱収縮性多層フィルムは、充填物に接する内表面層、及びバリア層を含む熱収縮性多層フィルムであって、上記内表面層はエチレン−酢酸ビニル共重合体を含み、上記バリア層は塩化ビニリデン系樹脂を含み、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル単量体単位の含有量が7重量%以上14重量%以下であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る熱収縮性多層フィルムにおいて、上記バリア層の厚みは、1μm以上20μm以下であることが好ましい。
【0016】
また、本発明に係る熱収縮性多層フィルムにおいて、上記内表面層と上記バリア層との間に中間層を含み、上記中間層の厚みは、上記内表面層の厚みの1.4倍以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る熱収縮性多層フィルムにおいて、80℃の熱水中に10秒浸漬した際の面積収縮率が、60%以上90%以下であることが好ましい。
【0018】
また、本発明に係る熱収縮性多層フィルムにおいて、80℃の熱水に浸漬して収縮させた後の上記熱収縮性多層フィルムのHazeが、35%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る熱収縮性多層フィルムは、高温下における一次シール部のシール強度及び面積収縮率が高いという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る熱収縮性多層フィルムで生肉を包装した包装体を熱収縮したものを模式的に示す図である。
図2】バリア層としてエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いたフィルムで加工肉を包装した包装体を熱収縮したものを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0022】
<熱収縮性多層フィルム>
本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムは、充填物に接する内表面層及びバリア層を含む熱収縮性多層フィルムであって、内表面層はエチレン−酢酸ビニル共重合体を含み、バリア層は塩化ビニリデン系樹脂を含み、エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル単量体単位の含有量が7重量%以上14重量%以下である。これにより、高温下における一次シール部のシール強度及び面積収縮率が高くなっている。なお、ここでいう一次シールとは、熱融着させていない状態の熱収縮性多層フィルムの一端をシールすることを意味し、一次シール部とは、一次シールした部分のことを意味する。
【0023】
ここで、シールする方法としては、例えば、ヒートシール又はインパルスシール等によって熱収縮性多層フィルム同士が重なった部分を熱融着する方法がある。
【0024】
また、上述の熱収縮性多層フィルムに一次シールすることによって得られる包装材料としては、例えば、底シールバッグ及びサイドシールバッグ等がある。
【0025】
底シールバッグは、樹脂積層体を管状ダイからフィルム状に押し出し、インフレーション法により二軸延伸することで得られた管状の熱収縮性多層フィルムを折りたたみ、当該管状の熱収縮性多層フィルムに対し、フィルム状に押し出した押出方向に垂直な方向にヒートシール又はインパルスシール等によって一次シールして袋の底シール部を形成し、底シール部の位置と、当該押出方向において異なる位置で、当該押出方向に垂直な方向に当該フィルムをカットして、袋の開口部を形成することで得られる。
【0026】
サイドシールバッグは、上述の管状の熱収縮性多層フィルムに対し、当該押出方向に垂直な方向にヒートシール又はインパルスシール等によって一次シールして袋のサイドシール部(バッグ側面)を形成し、当該押出方向に平行な方向に当該フィルムをカットして、袋の開口部を形成することで得られる。
【0027】
以下に、本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムの好適な使用態様について、図1及び図2を用いて具体的に説明する。
【0028】
図1は、フィルムの余剰部分(以下、「耳部」と記載する)3をほとんど残さずに生肉(充填物)2を包装した包装体1を熱収縮したものを模式的に示す図である。
【0029】
図2は、フィルムの余剰部分(耳部)13が大きく存在するように焼き豚等の加工肉12を包装した包装体11を熱収縮したものを模式的に示す図である。
【0030】
図1に示すように、生肉2を包装している熱収縮後の包装体1の耳部3は、生肉2の端部以外にはほとんどない。このような、包装体1に用いられる熱収縮性フィルムは、生肉2の輪郭に沿うように、熱収縮する形態として用いられる。つまり、図1の包装体1に用いられる熱収縮性フィルムには、高温下で高い面積収縮率を有していることが求められている。
【0031】
一方、図2に示すような加工肉12を包装している熱収縮後の包装体11では、耳部13は、図1の包装体1の耳部3に比べて大きい。また充填物の表面に対するフィルムの密接度は、図1に示す包装体1のような生肉の包装体1の度合ほどには必要としない。すなわち、図2に示すような包装形態に用いられるフィルムは、図1に示す包装体1に用いられる熱収縮性フィルムほどには、高温下での高い面積収縮率は求められていない。そのため、図2に示す包装体11に用いられるフィルムとしては、例えば、特許文献2及び3に記載されているような、バリア層にエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を含むフィルムが用いられている。
【0032】
ここで、本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムは、バリア層に塩化ビニリデン系樹脂を含んでおり、バリア層にEVOHを含むフィルムに比べて高温下で高い面積収縮率を有している。そのため、本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムは、図1に示すような包装体1を形成するフィルムに好適に用いられる。
【0033】
ここで、本実施形態において、一次シール部が剥がれないだけのシール強度があるとは、具体的には、80℃の熱水中で自然収縮させた一次シール部の最大点強度及び最大点エネルギーが好ましい範囲にあることを指す。ここで、最大点強度とは、80℃の熱水中で自然収縮させた一次シール部をシール部が破断するまで引張荷重を加えたときの最大荷重(N/15mm)のことを意味する。また、最大点エネルギーとは、最大点強度までに一次シール部に加えられたエネルギー(J)のことを意味する。
【0034】
最大点強度としては、2.0N/15mm以上5.0N/15mm以下であることが好ましく、2.0N/15mm以上4.5N/15mm以下であることがより好ましく、2.1N/15mm以上4.0N/15mm以下であることがさらに好ましい。
【0035】
また、最大点エネルギーとしては、0.013J以上0.20J以下であることが好ましく、0.015J以上0.18J以下であることがより好ましく、0.017J以上0.16J以下であることがさらに好ましい。
【0036】
なお、高温における一次シール部のシール強度は、例えば、熱収縮性多層フィルムを一次シールした包装材料に内容物を充填した後、真空シールした充填試験用サンプルを80℃に加熱した熱水槽に3秒間浸漬し、2℃の冷水槽に10秒間浸漬した後、一次シール部の破れの有無を確認することでも確かめることができる。この場合、例えば、サンプルを3つ用意し、3回試験を行ったとき、1つも一次シール部で袋が破れなかったら、一次シール部のシール強度が十分に高いとみなすことができる。
【0037】
また、本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムの面積収縮率としては、80℃の熱水中に10秒間浸漬した際に、55%以上90%以下であることが好ましく、60%以上90%以下であることがより好ましく、61%以上88%以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいう面積収縮率は[1−(収縮後の熱収縮性多層フィルムの縦方向(MD)の長さ×収縮後の横方向(TD)の長さ)/(収縮前のMDの長さ×収縮前のTDの長さ)]×100のことを指す。
【0038】
80℃の熱水中に10秒間浸漬した際の面積収縮率が55%以上であることにより、熱収縮性多層フィルムの内表面層と、当該熱収縮性多層フィルムに充填した充填物とを密着させることで、食肉包装体におけるドリップの流出量を低減することができる。また、面積収縮率が90%以下であることにより、熱収縮性多層フィルムが過度に収縮せず、充填物を締め付ける圧迫作用によりドリップの流出を促進しない。そのため、できるだけ充填物を圧迫せずに熱収縮性多層フィルムと充填物とを密着させることができ、ドリップの流出量を低減することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムは、80℃の熱水に浸漬し、収縮させた後の外観も優れる。外観が優れるとは、例えば、80℃熱水に収縮させた後のHaze(フィルムの曇り度)が低いことを意味する。Hazeの値が小さいほど透明性に優れ、値が大きいほど、透明性が悪いことを意味する。
【0040】
収縮後の熱収縮性多層フィルムのHazeは、35%以下であることが好ましく、33%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
【0041】
ここで、収縮後の熱収縮性多層フィルムのHazeの測定方法としては、80℃の熱水に熱収縮性多層フィルムを10秒間浸漬した後取り出し、直ちに常温の水で冷却し、得られた収縮したフィルムをJIS K 7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に記載された方法に準拠して、ヘーズメーター(日本電色工業社製 Haze Meter NDH2000)を使用することで測定することができる。
【0042】
なお、本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムに内容物を充填した包装体の外観は、充填物が熱収縮性多層フィルムに密着しているか否か等を見ることによって測定することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムは、収縮前におけるHazeも小さく、外観に優れる。
【0044】
収縮前の熱収縮性多層フィルムのHazeは、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、8%以下であることがさらに好ましい。
【0045】
ここで、収縮前の熱収縮性多層フィルムのHazeの測定方法としては、常温で収縮前の熱収縮性多層フィルムを、上述と同様に、JIS K 7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に記載された方法に準拠して、ヘーズメーター(日本電色工業社製 Haze Meter NDH2000)を使用することで測定することができる。
【0046】
また、収縮前の熱収縮性多層フィルムは、耐寒シール強度にも優れる。耐寒シール強度がどのくらい優れるかについては、例えば、5℃下でのシール部に対する落球試験を行うことで確かめることができる。当該落球試験は、生肉を充填する5℃前後での場所において、底シールバッグのユーザーが、5kgの生肉を勢いよく底シールバッグに落として充填した際に、生肉の重みで底シールバッグの一次シール部が破れてしまうかどうかを確認するための試験である。
【0047】
以下に、5℃下でのシール部に対する落球試験の手順(1)〜(6)について具体的に説明する。
【0048】
(1)まず、収縮前の熱収縮性多層フィルムから作成した10個の試験用底シールバッグを、5℃の冷蔵室内で24時間保管する。
【0049】
(2)次に、5℃の冷蔵室内で底シールバッグの開口部を上に向け、一次シール部の中央部分が、冷蔵室の床から高さ30cmの位置となるように、底シールバッグを宙吊りにして固定する。
【0050】
(3)次に、冷蔵室の床から100cm(一次シール部の中央部分から70cm)の高さから、重さ5.5kgのボーリングの球を一次シール部に自然落下させる。
【0051】
(4)一次シールが破れた場合は、「シール破れ有り」とする。一次シール部が破れなかった場合は、続けてボーリングの球を一次シール部に落下させる。5回繰り返しても一次シール部が破れなかった場合は、「シール破れ無し」とする。
【0052】
(5)「シール破れ有り」、又は、「シール破れ無し」と判定した場合は、底シールバッグにボーリングの球を落下させるのをやめ、別の底シールバッグに取り替え、手順(2)〜(4)を行う。このようにして、10個の試験用底シールバッグそれぞれに対し、手順(2)〜(4)を行う。
【0053】
(6)シール破れ個数が10個中3個以下である場合、収縮前の熱収縮性多層フィルムは、耐寒シール強度に優れると判断できる。シール破れ個数が2個以下であれば、耐寒シール強度により優れ、シール破れ個数が1個以下であれば、耐寒シール強度にさらに優れる。
【0054】
本実施形態に係る収縮前の熱収縮性多層フィルム、例えば、外側から内側へ順に、VLDPE/EVA/EMA/PVDC/EMA/EVA/14重量%EVAをそれぞれ各層に含む層構成の収縮前の熱収縮性多層フィルムによれば、10個中1個もシール破れが起こらない。
【0055】
一方、本実施形態に係るフィルム以外の収縮前のフィルム、例えば、外側から内側へ順に、直鎖状超低密度ポリエチレン(SSC−VLDPE)/EVA−1(予め有機系滑材が添加されているEVA)/エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)/塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)/EEA/EVA−2(滑材が添加されていないEVA)/IO(アイオノマー樹脂)をそれぞれ各層に含む層構成の収縮前のフィルムである場合、10個中7個のシール破れが起こる。
【0056】
以上のことから、本実施形態に係る収縮前の熱収縮性多層フィルムは、他の収縮前のフィルムに比べて明らかに耐寒シール強度に優れる。
【0057】
本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムは、充填物に接する内表面層及びバリア層を含めばよいが、内表面層、バリア層、及び、内表面層とバリア層との間にある中間層の少なくとも3層を含むことが好ましい。また、必要に応じて、バリア層の外側に接する外層、熱収縮性多層フィルムのうちの最も外側にある最外層、及び、各層同士を接着する接着層等を有していてもよい。内表面層、バリア層及び中間層の少なくとも3層を含むことにより、包装材料として適するという効果がある。
【0058】
また、熱収縮性多層フィルムの厚さとしては、フィルムの種類によっても異なるが、通常は5μm以上300μm以下であり、20μm以上150μm以下であることが好ましい。また、フィルムが3層以上の多層で形成される場合には各層は、0.1μm以上200μm以下が好ましく、0.5μm以上100μm以下がより好ましい。以下、本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムを構成する、それぞれの層について詳細に説明する。
【0059】
〔内表面層〕
本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムに含まれる内表面層は、充填物に接する層である。
【0060】
内表面層は、エチレンに由来する構造単位と、酢酸ビニルに由来する構造単位(以下、酢酸ビニル単量体単位という)とを有する共重合体である、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を含む。EVAにおける酢酸ビニル単量体単位の含有量は、7重量%以上14重量%以下であり、8重量%以上14重量%が好ましく、10重量%以上14重量%以下がより好ましい。酢酸ビニル単量体単位の含有量が7重量%以上であることにより、面積収縮率が十分に高くなり、熱収縮性多層フィルム製造時に押出しすることができる。酢酸ビニル単量体単位の含有量が14重量%以下であることにより、熱水中の一次シール部のシール強度が十分に高くなり、高温でも一次シール部が剥がれてしまう虞がない。
【0061】
〔中間層〕
中間層は、充填物に接する内表面層に隣接しており、内表面層とバリア層との間にある層である。中間層は、一層構造であっても多層構造であってもよい。
【0062】
中間層を構成する樹脂としては、一般的な樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(SSC−LLDPE)、SSC−VLDPE、エチレン−αオレフィン共重合体(前述のSSC−LLDPE及びSSC−VLDPEに該当するものを除く)、EVA、EAA、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、IО、及び、エチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。また、中間層は、高温で高い面積収縮率を確保することができる柔軟な樹脂であって、熱収縮性多層フィルムにあまり影響がないという観点から、EVA、IO、EMAA及びEMA等が好ましく、EVA及びEMA等がより好ましい。これらの中間層を構成する樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上をブレンドして用いることができる。
【0063】
中間層の厚みは、内表面層の厚みの1.4倍以下であることが好ましく、1.2倍以下であることがより好ましく、1.0倍以下であることがさらに好ましい。内表面層と、中間層とバリア層とを含む熱収縮性多層フィルムの延伸性は、中間層と、内表面層とのバランスが重要な因子である。中間層は一般的に柔軟な樹脂が多いため、割合が増えると延伸が進みインフレーションバブルを不安定にする。そこで、中間層の厚みが内表面層の厚みの1.4倍以下であることにより、適度に延伸することができ、製造が容易になる。つまり、延伸時のインフレーションバブルが安定するという効果がある。
【0064】
〔バリア層〕
バリア層は熱収縮性多層フィルムにおいて、ガスバリア性の機能を有するものである。
【0065】
本実施形態において、バリア層一層構造であっても多層構造であってもよく、少なくとも1つのバリア層が塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)であればよい。PVDCとは、一般に65重量%以上95重量%以下の塩化ビニリデンと、これと共重合可能な不飽和単量体の少なくとも一種5重量%以上35重量%以下との共重合体である。共重合可能な不飽和単量体としては、例えば、塩化ビニル及び(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。PVDCには、必要に応じて、EVA等のポリオレフィン系樹脂、可塑剤及び安定剤等を添加してもよい。
【0066】
バリア層としては、PVDC以外では、例えば、EVOH及びポリアミド系樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、特に高温で高い面積収縮率を付与することができるという観点からPVDCが好ましい。
【0067】
バリア層の厚さとしては、例えば、1μm以上20μm以下であることが好ましく、3μm以上15μm以下であることがより好ましく、4μm以上10μm以下であることがさらに好ましい。上述の好ましい範囲にあることにより、剛性の高いPVDCを含むバリア層が十分な厚さとなるため、80℃の熱水中で自然収縮させた一次シール部の最大点強度及び最大点エネルギーが十分に高くなる。すなわち、熱収縮性多層フィルムの一次シール部が剥がれないだけの十分なシール強度を得ることができる。
【0068】
〔その他の層〕
本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムは、内表面層、中間層及びバリア層以外にも、その他の層をさらに有していてもよい。その他の層としては、バリア層の外側に隣接する外層、外層の外側に隣接する最外層、及び、各層同士を接着する接着層が挙げられる。なお、接着層は、層と層との間に適宜設けることができる。
【0069】
その他の層を構成する樹脂としては、一般的な樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン、SSC−LLDPE及びポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン6−66、ナイロンMXD及びナイロン6I6T(但し、Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、及び、イソフタル酸とエチレンテレフタレートとの共重合体である共重合ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;エチレン−アクリル酸メチル共重合体;PVDC;EVOH;EVA;並びにアイオノマー等が挙げられる。
【0070】
また、適宜設けることが可能な接着層は、PVDC等を含むバリア層とその他の樹脂層との間、ポリオレフィン系樹脂層同士の間等に用いることも可能であり、中間層とバリア層との間にさらに設けてもよい。接着層を形成する樹脂としては、例えば、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0071】
なお、熱収縮性多層フィルムを構成する層には、樹脂以外の成分が含まれていてもよい。樹脂以外の成分としては、各種の添加剤が挙げられ、例えば滑剤、防曇剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、染料及び顔料等が挙げられる。
【0072】
本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムの層構成は、内表面層がEVAを含み、バリア層がPVDCを含み、EVAにおける酢酸ビニル単量体単位の含有量が7重量%以上14重量%以下であれば、特に限定されない。外表面を構成する層から、食肉等の充填物と接触する層(内表面層)へ順に記載すると、例えば、VLDPE/EVA/エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)/PVDC/EVAをそれぞれ各層に含む層構成の熱収縮性多層フィルム、VLDPE/EVA/EMA/PVDC/EMA/EVA/EVAをそれぞれ各層に含む層構成の熱収縮性多層フィルム、EVA/PVDC/EVAをそれぞれ各層に含む層構成の熱収縮性多層フィルム、及び、ナイロン/EVA/PVDC/EVAをそれぞれ各層に含む層構成の熱収縮性多層フィルム等が挙げられる。
【0073】
〔充填物〕
充填物は、本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムに包装されるものである。本実施形態において、充填物としては、例えば、畜産肉等の食肉が挙げられ、より具体的には、牛、豚、羊及び鳥(例えば鶏、七面鳥及び鴨)等の肉が挙げられる。
【0074】
それぞれの食肉の形状は問わないが、例えば牛肉、豚肉又は羊肉の場合、カット(枝肉から切断した5kg以上15kg以下の肉塊)、ブロック(枝肉から切断した5kg未満の肉塊)、スライス及びミンチ等が挙げられ、鳥肉の場合、ホール(頭部、羽根及び内臓を除去したもの)、ブロック、スライス並びにミンチ等が挙げられる。
【0075】
<熱収縮性多層フィルムの製造方法>
本実施形態に係る熱収縮性多層フィルムは、各層を形成するための樹脂を複数の押出機でそれぞれ溶融押出しした後、溶融された樹脂を環状ダイ等に導入して共押出しし、公知の方法で延伸して製造する。
【0076】
溶融押出しするときの温度は、各層に含まれる樹脂が溶融する温度以上であり、熱分解する温度未満であれば特に限定されず、任意の温度を取ることができるが、例えば、内表面層を形成するためのEVAの場合、100℃以上200℃以下であることが好ましく、110℃以上185℃以下であることがより好ましい。中間層を形成するための樹脂の場合、100℃以上195℃以下であることが好ましく、110℃以上185℃以下であることがより好ましい。バリア層を形成するための樹脂の場合、130℃以上175℃以下であることが好ましく、140℃以上165℃以下であることがより好ましい。
【0077】
環状ダイで共押出しする温度としては、155℃以上190℃以下であることが好ましく、165℃以上180℃以下であることがより好ましい。
【0078】
共押出しして得られた環状体は、水浴中で冷却される。冷却温度としては、各層を構成する樹脂の融点以下であり、バリア層を構成するためのPVDCの冷却温度としては、結晶化を抑えることができる温度であればよく、例えば、3℃以上20℃以下であることが好ましく、5℃以上15℃以下であることがより好ましい。
【0079】
また、水浴中で冷却した後の環状体を、延伸前又は後で、公知の方法により、放射線を照射してもよい。このような形態により、各層に含まれる樹脂同士を架橋させることによって、延伸性、耐熱性及び機械的強度等を未照射のものに比べて向上させることができる。
【0080】
放射線としては、α線、β線、電子線、γ線及びX線等公知の放射線を使用することができるが、照射前後での架橋効果の観点から、電子線及びγ線が好ましく、なかでも電子線が、熱収縮性多層フィルムを製造する上での作業性及び生産能力の高さ等の点でより好ましい。放射線の放射条件は、目的とする用途に応じて、適宜設定すればよく、一例を挙げるならば、電子線の場合は、加速電圧が150以上500キロエレクトロンボルト(以下、「keV」と記載する)以下の範囲、照射線量が10以上200キログレイ(以下、「kGy」と記載する)以下の範囲が好ましく、γ線の場合は、線量率が0.05以上3kGy/時間の範囲が好ましい。
【0081】
また、冷却後の環状体又は電子線照射後の環状体を加熱した後、冷却しながら延伸する。
【0082】
加熱は、例えば、温水中を通過させる等によって行い、延伸する。再加熱の温度としては、延伸性の観点から、85℃以上89℃以下であることが好ましく、85℃以上87℃以下であることがより好ましい。
【0083】
加熱により延伸した管状体は、所定のサイズに止めて、インフレーションバブルを安定させるため、冷却する。冷却温度としては、6℃以上14℃以下であることが好ましく、8℃以上12℃以下であることがより好ましい。
【0084】
延伸工程において、延伸する方法としては、管状体の内部に流体を入れながら当該管状体を垂直方向に引き出すインフレーション法を用いる。一軸延伸又は二軸延伸によって製造することが好ましい。
【0085】
一軸又は二軸延伸を適当に行うことにより、熱収縮性多層フィルムの面積収縮率を上述の好ましい範囲とすることができる。また、一般的には二軸延伸すると、分子が配向するので、透明性、バリア性及び強度の観点から二軸延伸することがより好ましい。
【0086】
延伸倍率としては、特に限定されないが、縦方向(MD)の延伸倍率としては、2.5倍以上4.0倍以下であることが好ましく、2.7倍以上3.8倍以下であることがより好ましい。また、横方向(TD)の延伸倍率としては、2.6倍以上3.8倍以下であることが好ましく、2.8倍以上3.6倍以下であることがより好ましい。
【0087】
なお、一般に延伸された熱収縮性多層フィルムは、延伸する際にかけた温度を超える熱量がかかると収縮する。熱収縮性多層フィルムの収縮率は、熱収縮性多層フィルムを構成する材料だけではなく、延伸倍率等の製造条件によっても適宜調整することができる。
【0088】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。また、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが参考として援用される。
【実施例】
【0089】
本発明の実施例及び比較例に用いられる熱収縮性多層フィルムにおける各層の樹脂材料を以下に示す。
【0090】
(樹脂材料)
(1)EVA
実施例及び比較例における、内表面層を形成するのに使用したEVAのサンプルについて、以下の表1に示す。
【0091】
なお、表1における酢酸ビニル含有量とは、EVAにおける酢酸ビニル単量体単位の含有量のことを指す。
【0092】
【表1】
【0093】
(2)VLDPE
最外層に、プライムポリマー(株)製のモアテックV0398CNのVLDPEを使用した。
(3)PVDC
バリア層に、クレハ(株)製のPVDC樹脂クレハロンFB−12のPVDCを使用した。
(4)EMA
接着層に、三井・デュポンポリケミカル(株)製のエルバロイ1218AC(密度:0.94g/cm、融点:94℃)とエルバロイ1209AC(密度:0.927g/cm、融点:101℃)とを重量比33:67で混合した樹脂のEMAを使用した。
(5)その他のEVA
外層及び中間層に、TPI Polene(株)製のPolene N8038F及びPolene N8036の、その他のEVA(以下、単に「EVA」と記載する)を使用した。
【0094】
<実施例1>
実施例1では、内表面層に、表1における14重量%EVAを使用した。
【0095】
積層体の構成としては、外側から内側へ順に、括弧内に示す厚み(単位:μm)のVLDPE(2.0)/EVA(24)/EMA(1.5)/PVDC(7)/EMA(1.5)/EVA(9.5)/14重量%EVA(9.5)をそれぞれ各層に含む層構成とした。当該層構成の熱収縮性多層フィルムとなるように、各樹脂を複数の押し出し機でそれぞれ溶融押出しした。溶融押出しされた樹脂を環状ダイに導入し、上述の層構成となるように溶融接合し、共押出し加工を行った。ダイ出口から流出した温度180℃の溶融環状体を水浴中で10℃に冷却し、扁平幅約137mmの扁平環状体とした。次に、得られた扁平環状体を加速電圧275KeVの電子線照射装置の中で扁平環状体の外側から電子線を照射して100kGyの照射線量を与え、最外層のVLDPEとその内側のEVAとを架橋させた。この扁平環状体を約86℃の温水中を通過させながら加熱した後、管状体とした。この管状体を10℃のエアリングを用いて冷却しながらインフレーション法により縦方向(MD)に3.5倍、横方向(TD)に3.1倍の延伸倍率で同時に二軸延伸して、扁平巾約424mmの環状二軸延伸フィルム(熱収縮性多層フィルム)を得た。
【0096】
得られた熱収縮性多層フィルムを製袋機にて、折幅424mm、長さ800mmにカットした底シールバッグを作製した。
【0097】
<実施例2>
内表面層に、表1における14重量%EVAの代わりに、13重量%EVAに変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性多層フィルムを得た。
【0098】
ここで、13重量%EVAとは、EVAにおける酢酸ビニル単量体単位の含有量が13重量%となるように、ウルトラセン630(東ソー(株)製)と表1に記載した10重量%EVA(ウルトラセン540(東ソー(株)製))とを重量比60:40で混合したものである。
【0099】
<実施例3>
内表面層に、表1における14重量%EVAの代わりに、12重量%EVAに変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性多層フィルムを得た。
【0100】
ここで、12重量%EVAとは、EVAにおける酢酸ビニル単量体単位の含有量が12重量%となるように、表1における14重量%EVAと、10重量%EVAとを重量比50:50で混合したものである。
【0101】
<実施例4>
内表面層に、表1における14重量%EVAの代わりに、10重量%EVAに変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性多層フィルムを得た。
【0102】
<実施例5>
内表面層に、表1における14重量%EVAの代わりに、8重量%EVAに変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性多層フィルムを得た。
【0103】
<比較例1>
内表面層に、表1における14重量%EVAの代わりに、15重量%EVAに変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性多層フィルムを得た。
【0104】
<比較例2>
内表面層に、表1における14重量%EVAの代わりに、16重量%EVAに変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性多層フィルムを得た。
【0105】
<比較例3>
内表面層に、表1における14重量%EVAの代わりに、5重量%EVAに変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性多層フィルムを得た。
【0106】
<比較例4>
内表面層に、表1における14重量%EVAの代わりに、19重量%EVAに変更した以外は、実施例1と同様に熱収縮性多層フィルムを得た。
【0107】
<熱収縮性多層フィルムの諸特性の評価>
以下、実施例1〜5及び比較例1〜4で作製した熱収縮性多層フィルムの諸特性の評価方法及び評価結果を示す。
【0108】
〔80℃熱水中の一次シール部のシール強度の評価〕
製袋した熱収縮性多層フィルムの一次シール部を巾15mm、長さ100mmに切り測定用チャックに固定し、80℃の熱水中で10秒間自由収縮させた後、直ちに熱水中で引張り、80℃熱水中の一次シール部のシール強度を測定した。測定機械及び測定条件は、以下の通りである。
(測定機械)オリエンテック(株)製 テンシロンRTG−1210
(測定条件)チャック間距離:20mm 引張り速度:300mm/min
測定した一次シール部のシール強度を、表2に示すように最大点強度及び最大点エネルギーとして求めた。
【0109】
最大点強度について、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:最大点強度が2.0(N)以上
×:最大点強度が2.0(N)未満
また、最大点エネルギーについて、以下の基準で評価した。
○:最大点エネルギーが0.015(J)以上
×:最大点エネルギーが0.015(J)未満
なお、最大点強度及び最大点エネルギーの値は、表2の括弧内の数値として記載している。
【0110】
〔収縮後の熱収縮性多層フィルムのHazeの評価〕
熱収縮性多層フィルムを80℃に調整した熱水に10秒間浸漬した後取り出し、直ちに常温の水で冷却した。
【0111】
収縮後のフィルムを、JIS K 7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に記載された方法に準拠して、ヘーズメーター(日本電色工業社製 Haze Meter NDH2000)を使用し、フィルムの曇り度(Haze 単位:%)を測定した。
【0112】
収縮後の熱収縮性多層フィルムのHazeについて、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:Hazeが35%以下
×:Hazeが35%よりも大きい
なお、収縮後の熱収縮性多層フィルムのHazeの値は、表2の括弧内の数値として記載している。
【0113】
〔面積収縮率の評価〕
熱収縮性多層フィルムの面積収縮率を以下の方法で測定した。
【0114】
100mm(縦方向:MD)×100mm(横方向:TD)に切り出した熱収縮性多層フィルムを、80℃の熱水中に10秒浸漬した後、取り出し、常温の水中で冷却した。
【0115】
浸漬し、冷却した後の熱収縮性多層フィルムについて、MDの長さ及びTDの長さを定規で測定し、浸漬前のMDの長さ及びTDの長さから、MDの収縮率及びTDの収縮率をそれぞれ求め、これを元に面積収縮率を算出した。
【0116】
面積収縮率は[1−(収縮後のMDの長さ×収縮後のTDの長さ)/(収縮前のMDの長さ×収縮前のTDの長さ)]×100で求めた。
【0117】
なお、面積収縮率について、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:面積収縮率が60%以上、90%以下
×:面積収縮率が60%未満又は90%よりも大きい
なお、面積収縮率の値は、表2の括弧内の数値として記載している。
【0118】
〔充填試験による一次シール部のシール強度の評価〕
約5kgの牛もも肉を、各包装袋状の熱収縮性多層フィルムに充填し、包装体とした後、真空シールし、充填試験用サンプルを準備した。準備した充填試験用サンプルを80℃に加熱した熱水槽に3秒浸漬した。その後、2℃の冷水槽に10秒浸漬した後、シール部分の破れの有無を確認した。各実施例及び各比較例で、それぞれサンプルを3つずつ用意し、それぞれ3回試験を行った。
【0119】
充填試験による一次シール部のシール強度について、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:1つも一次シール部で袋が破れなかった
×:1つ以上一次シール部で袋が破れた
〔包装体の外観の評価〕
充填試験で得られた熱収縮後の包装体の外観について、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:牛もも肉に熱収縮性多層フィルムが密着し、熱収縮性多層フィルムにたるみがない
△:牛もも肉のくぼんでいる部分で熱収縮性多層フィルムが皺上にたるんでいる
−:包装袋がシール部分で破れ、評価できなかった
〔熱収縮性多層フィルムの製造性の評価〕
熱収縮性多層フィルムの製造性について、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:安定して押出、延伸、巻取りができる
△:延伸するために管状体を加熱した際に、管状体の内表面層同士が融着し、上手く延伸できない
×:インフレーションバブルが不安定で、上手く延伸できない
【0120】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、食肉等の真空包装材用のフィルムとして利用することができる。
【符号の説明】
【0122】
1、11 包装体
2 生肉(充填物)
3、13 耳部
12 加工肉
図1
図2