特許第6810612号(P6810612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810612
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】メチル化分析のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20201221BHJP
   C12Q 1/6886 20180101ALI20201221BHJP
   C12Q 1/6827 20180101ALI20201221BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
   C12Q1/686 ZZNA
   C12Q1/6886 Z
   C12Q1/6827 Z
   !C12N15/11 Z
【請求項の数】21
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2016-571116(P2016-571116)
(86)(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公表番号】特表2017-517262(P2017-517262A)
(43)【公表日】2017年6月29日
(86)【国際出願番号】AU2015050297
(87)【国際公開番号】WO2015184498
(87)【国際公開日】20151210
【審査請求日】2018年5月29日
(31)【優先権主張番号】2014902155
(32)【優先日】2014年6月5日
(33)【優先権主張国】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508346033
【氏名又は名称】クリニカル ジェノミクス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】ペダーセン, スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー, ローハン
【審査官】 坂井田 京
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/166558(WO,A1)
【文献】 Cindy A. Eads et al.,Nucleic Acids Research,2000年,Vol.28, No.8, e32
【文献】 Susan M Mitchell et al.,BMC Cancer,2014年,Vol.14, No.54,p.1-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12N 15/11
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部分的シトシンメチル化を示す対象の核酸標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、前記方法が、
(i)核酸試料を、メチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の核酸試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように、1つ又は複数のCpG配列に重なるように、および、メチル化されたDNAから修飾された非メチル化DNAを特異的に区別するように設計されたフォワード及びリバースプライマーを含むプライマーセット、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンに一括してハイブリダイズすることができ、前記プローブに検出手段が組み込まれており、メチル化されたシトシンと非メチル化シトシンの両方にわたって無差別に結合するように設計された、部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブを含むプローブセット
に接触させることにより、DNA中の部分的シトシンメチル化を受けた領域を1回の反応で測定するステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含
対象の前記核酸標的がIKZF1であり、前記プライマーセットには、
(i)配列番号3及び配列番号4、
(ii)配列番号49〜62及び配列番号63〜76、又は
(iii)配列番号77及び配列番号78
として示される1つ又は複数の配列を有するプライマーが含まれ、
前記プローブセットには、
(i)配列番号5〜12、
(ii)配列番号19、
(iii)配列番号20、又は
(iv)配列番号23〜30
として示される1つ又は複数の配列を有するプローブが含まれる方法。
【請求項2】
部分的シトシンメチル化を示す対象の核酸標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、前記方法が、
(i)核酸試料を、メチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の核酸試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように、1つ又は複数のCpG配列に重なるように、および、メチル化されたDNAから修飾された非メチル化DNAを特異的に区別するように設計されたフォワード及びリバースプライマーを含むプライマーセット、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンに一括してハイブリダイズすることができ、前記プローブに検出手段が組み込まれており、メチル化されたシトシンと非メチル化シトシンの両方にわたって無差別に結合するように設計された、部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブを含むプローブセット
に接触させることにより、DNA中の部分的シトシンメチル化を受けた領域を1回の反応で測定するステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含み、
対象の前記核酸標的がIKZF1であり、前記方法が配列番号1として示される配列の相補体である亜硫酸水素塩変換DNA鎖を増幅させることにより核酸標的のシトシンメチル化を検出することを目的とし、前記プライマーセットには、配列番号47及び配列番号48として示される配列を有するプライマーが含まれ、前記プローブセットには、
(i)配列番号21、
(ii)配列番号22、
(iii)配列番号31〜38、及び/又は
(iv)配列番号39〜46
として示される1つ又は複数の配列を有するプローブが含まれる方法。
【請求項3】
前記DNAがゲノムDNAである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
対象の前記核酸標的がプロモーター領域である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
IKZF1遺伝子のChr7:50304323〜50304349、Chr7:50303300〜50304923又はChr7:50399869〜50400702領域のうちの1つ又は複数のメチル化を検出することを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤がメチル化されていないシトシン残基をウラシルへと修飾する、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤が亜硫酸水素塩である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記亜硫酸水素塩が亜硫酸水素ナトリウム又は亜硫酸水素アンモニウムである、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記プライマーがメチル化特異的プライマーである、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記プローブが加水分解プローブである、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プローブが、一括して、前記領域の完全及び部分的メチル化パターンすべてにハイブリダイズする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
部分的シトシンメチル化を示す対象の核酸標的の領域のシトシンメチル化を検出するための診断キットであって、
(i)部分的シトシンメチル化を受けた前記核酸領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態のDNA形態であって、メチル化されていないシトシン残基が修飾されているDNA形態を増幅させるように、1つ又は複数のCpG配列に重なるように、および、メチル化されたDNAから修飾された非メチル化DNAを特異的に区別するように設計されたフォワード及びリバースプライマーを含むプライマーセット、並びに
(ii)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンに一括してハイブリダイズすることができ、メチル化されたシトシンと非メチル化シトシンの両方にわたって無差別に結合するように設計された、部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブを含むプローブセット
を含み、
対象の前記核酸標的がIKZF1であり、前記プライマーセットには、
(i)配列番号3及び配列番号4、
(ii)配列番号49〜62及び配列番号63〜76、又は
(iii)配列番号77及び配列番号78
として示される1つ又は複数の配列を有するプライマーが含まれ、
前記プローブセットには、
(i)配列番号5〜12、
(ii)配列番号19、
(iii)配列番号20、又は
(iv)配列番号23〜30
として示される1つ又は複数の配列を有するプローブが含まれる診断キット。
【請求項13】
部分的シトシンメチル化を示す対象の核酸標的の領域のシトシンメチル化を検出するための診断キットであって、
(i)部分的シトシンメチル化を受けた前記核酸領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態のDNA形態であって、メチル化されていないシトシン残基が修飾されているDNA形態を増幅させるように、1つ又は複数のCpG配列に重なるように、および、メチル化されたDNAから修飾された非メチル化DNAを特異的に区別するように設計されたフォワード及びリバースプライマーを含むプライマーセット、並びに
(ii)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンに一括してハイブリダイズすることができ、メチル化されたシトシンと非メチル化シトシンの両方にわたって無差別に結合するように設計された、部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブを含むプローブセット
を含み、
対象の前記核酸標的がIKZF1であり、前記診断キットが配列番号1として示される配列の相補体である亜硫酸水素塩変換DNA鎖を増幅させることにより核酸標的のシトシンメチル化を検出することを目的とし、前記プライマーセットには、配列番号47及び配列番号48として示される配列を有するプライマーが含まれ、前記プローブセットには、
(i)配列番号21、
(ii)配列番号22、
(iii)配列番号31〜38、及び/又は
(iv)配列番号39〜46
として示される1つ又は複数の配列を有するプローブが含まれる診断キット。
【請求項14】
前記プライマーがメチル化特異的プライマーである、請求項12又は13に記載のキット。
【請求項15】
前記プローブが加水分解プローブである、請求項12〜14のいずれか一項に記載のキット。
【請求項16】
前記プローブが前記領域の完全及び部分的メチル化パターンのすべてに一括してハイブリダイズする、請求項1215のいずれか一項に記載のキット。
【請求項17】
前記キットがメチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤をさらに含む、請求項1216のいずれか一項に記載のキット。
【請求項18】
前記薬剤が亜硫酸水素塩である、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記亜硫酸水素塩が亜硫酸水素ナトリウム又は亜硫酸水素アンモニウムである、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
前記キットがDNA増幅及び/又は検出を成し遂げる試薬をさらに含む、請求項1219のいずれか一項に記載のキット。
【請求項21】
前記プライマー及びプローブがIKZF1遺伝子のChr7:50304323〜50304349、Chr7:50303300〜50304923又はChr7:50399869〜50400702領域のうちの1つ又は複数のメチル化を検出することを目的とする、請求項12〜20のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には核酸メチル化、特にDNA及びRNAメチル化を評価するための方法に関する。より詳細には、本発明は、部分的にメチル化されたDNA又はRNAのシトシンメチル化を改良された感度で定性的に又は定量的に評価する方法に関する。本発明の方法は、DNA又はRNAメチル化変化により特徴付けられる状態の診断又は発生上の表現型のモニタリングを含むがこれらに限定されない応用範囲において有用である。
【背景技術】
【0002】
任意の先行刊行物(又はその刊行物由来の情報)への、又は公知である任意の事柄への本明細書中での言及は、その先行刊行物(又はその刊行物由来の情報)又は公知の事柄が、本明細書が関係する努力分野の共通一般知識の一部を形成することを了承し若しくは認め又は何らかの形で示唆するものではないし、そう解釈するべきではない。
【0003】
本明細書において筆者により言及される刊行物の文献詳細は本記述の最後にアルファベット順にまとめられている。
【0004】
DNAメチル化は、哺乳動物において最も熱心に研究されているエピジェネティック修飾の1つであり、シトシン(C)又はアデニンヌクレオチドへのメチル(CH)基の付加のことである。このメチル基は、シトシン塩基の5番目の炭素原子又はアデニン塩基の6番目の窒素原子に付加させることができる。
【0005】
DNAメチル化は動物細胞において遺伝子調節に役割を果たしている。活性な遺伝子転写と低メチル化の間には相関があるだけではなく、トランスフェクション実験によればメチル部分の存在はin vivoでの遺伝子発現を阻害することも明らかにされている。さらに、遺伝子活性化は、強力な脱メチル化剤である5−アザシチジンを用いて細胞を処理することにより誘導することが可能である。メチル化は、クロマチンタンパク質と特定の転写因子の両方とDNAの相互作用に影響を及ぼすことにより遺伝子発現に影響するように思われる。メチル化パターンは体細胞では非常に安定しているが、初期胚はDNAメチル化の大きな変化によって特徴付けられる。
【0006】
したがって、DNAメチル化は健康な増殖と発生にとって極めて重要であり、ゲノム刷り込み、発癌及び反復エレメントの抑制などの種々の過程に関連している。DNAメチル化は、宿主に入り込んでいて宿主を損傷する可能性のあるDNAの他の潜在的に危険な配列と共に、レトロウイルス遺伝子の発現を抑制することもできる。さらに、DNAメチル化はがんの発生に重要な役割を果たしており、遺伝子転写の鍵となる制御因子である。研究によれば、高濃度の5−メチルシトシンを含有するプロモーター領域のある遺伝子は転写的にサイレントであることが明らかにされている。
【0007】
全CpGの60%〜90%が哺乳動物ではメチル化されている。メチル化されたシトシン残基は時間をかけて自発的に脱アミノ化してT残基を形成し、したがって、メチル化されたCpGジヌクレオチドは着実に脱アミノ化してTpGジヌクレオチドになり、これはヒトゲノムにおけるCpGジヌクレオチドが少ないことにより証明される(CpGジヌクレオチドは予想される頻度の21%しか存在しない)。CpGはCpGアイランドと呼ばれるクラスターにグループ化されていることが多く、このCpGアイランドは典型的には多くの遺伝子の5’調節領域に存在している。
【0008】
DNAメチル化レベルをモニターすることの診断的有用性の証拠が増えるに従って、DNAメチル化を確実に正確に評価するための手段はますます重要になってきている。現在、メチル化特異的PCRは亜硫酸水素塩変換DNA中でメチル化されたDNAを検出するための一般的に使用されている方法である。この方法では、PCRオリゴヌクレオチドプライマーは、シトシンリン酸ジエステルグアニジン[CpG]部位においてメチル化されたシトシン残基を調べる。MethyLight PCRは、メチル化されたCpG部位の調査のためにメチル化特異的プライマーに加えて、5’−3’加水分解プローブも使用して、それによって定量化を可能にするリアルタイムPCRバリエーションである。
【0009】
つい最近、RNAはメチル化されたシトシン残基、並びにメチル化されたアデニン残基を含有することも明らかにされた(Liu and Jia、2014;J Genet Genomics.41(1):21〜33)。RNA中のメチル化されたシトシンの生物学的役割は明らかではないが、メチル化されたシトシンはmRNA中では豊富な修飾であり、それがRNAエピジェネティックマーカーである可能性があることを示唆している。本発明に至った研究において、所与の遺伝子のメチル化パターンの変化を求めるスクリーニングに基づくいくつかの診断的適用という文脈では診断結果の正確さは、対象のCpGリッチ標的領域にわたって部分的メチル化が存在する場合には著しく低下することが確定されている。これは一般的に使用されているメチル化特異的PCRが、すべての標的CpG部位がメチル化されることを必要とするオリゴヌクレオチドに基づいている事実のせいである。例えば、MethyLightなどのプローブベースの方法では、所与のメチル化されたDNA又はRNA標的が首尾よく検出されるためにはプローブがハイブリダイズするためにすべての調査されたCpG部位がメチル化されている必要がある。1つ又は複数のCpG部位がメチル化されていない場合、プローブは結合することができず、それによって得られる結果を歪め診断感度を著しく減少させる。例えば、本発明の一態様では、IKZF1遺伝子のプロモーター領域のメチル化は結腸直腸がん組織では高頻度で起きており、血液中に存在する無細胞DNA中でメチル化されたIKZF1 DNAが検出されると結腸直腸がんの存在が示されることが確定されている。しかし、さらなる研究では、ある種の結腸直腸がん患者は、すべての標的CpG部位がメチル化されているわけではない循環している腫瘍由来IKZF1 DNAを含有していることが実証されている。したがって、IKZF1 DNA内のメチル化されているCpG部位にまたがるように設計されている加水分解プローブなどのオリゴヌクレオチドでは、部分的にメチル化されているIKZF1 DNAの検出は可能ではない。したがって、部分的にメチル化されているIKZF1 DNAを有する結腸直腸がん患者は、結果的に陰性であると報告されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、DNA又はRNAメチル化の正確で感度の良い検出を可能にする改良された方法を開発し、それによって、新生物疾患の診断又はモニタリングなどのDNA又はRNAメチル化分析のための適用感度を改良する必要性が存在する。さらなる研究では、偽陰性結果の問題は、対象の所与のDNA又はRNA領域内での少なくとも2つの異なるメチル化パターンを一括して検出するように設計されている1つ又は複数のプローブ及び/又はプライマーの使用によって減らす又は排除することが可能であることが確定された。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書及びこれに続く特許請求の範囲において、文脈が他を要求しなければ、「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」などのその変形は、決められた整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を包含するが、他の任意の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を排除しないことを意味する。
【0012】
本明細書で使用されるように、用語「に由来する」とは、特定の整数又は整数の群が明示されている種に由来しているが、必ずしも明示された供給源から直接入手したわけではないことを示していると解釈する。さらに、本明細書で使用されるように、単数形の「1つ(a)」、「1つ(and)」、及び「それ(the)」は文脈が他の方法で明確に指示していなければ、複数の参照対象を含む。
【0013】
他の方法で定義されていなければ、本明細書で使用される専門及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0014】
主題の明細書は、プログラムPatentInバージョン3.5を使用して準備されたヌクレオチド配列情報を含有しており、本明細書の文献目録の後に提示されている。それぞれのヌクレオチド配列は、数字指標<210>とそれに続く配列識別子(例えば、<210>1、<210>2、等)により配列表において特定される。配列ごとの長さ、配列の種類(DNA、等)及び供給源生物は、それぞれ数字指標分野<211>、<212>及び<213>で提供される情報により示される。明細書において言及されるヌクレオチド配列は、指標配列番号とそれに続く配列識別子(例えば、配列番号1、配列番号2、等)により特定される。明細書において言及される配列識別子は、配列表中の数字指標分野<400>とそれに続く配列識別子(例えば、<400>1、<400>2、等)で提供される情報と関連している。すなわち、明細書において詳述されている配列番号1は配列表中の<400>1として示される配列に関連している。
【0015】
本発明の一態様は、対象の核酸標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その核酸標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)核酸試料を、メチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の核酸試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズすることができ、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法を対象とする。
【0016】
別の態様では、本発明は、対象のDNA又はRNA標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、そのDNA又はRNA標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)DNA又はRNA試料をメチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズすることができ、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法を対象とする。
【0017】
さらに別の態様では、遺伝子標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その遺伝子標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)核酸試料を、メチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の核酸試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された遺伝子領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズすることができ、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、前記遺伝子標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法が提供される。
【0018】
さらに別の態様では、遺伝子BCAT1、IKZF1、IRF4、GRASP、CAHM、SOX21、SLC6A15、NPY、ST8SIA1、ZSCAN18、COL4A2、DLX5、FGF5、FOXF1、FOXI2又はSDC2のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その遺伝子は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)DNA試料をメチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA試料を
(a)修飾された遺伝子の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的メチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズすることができ、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、前記遺伝子に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法が提供される。
【0019】
さらに別の態様では、対象の核酸標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その核酸標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)核酸試料を亜硫酸水素塩薬剤に接触させてメチル化されていないシトシン残基をウラシルに変換するステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の核酸試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的メチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズすることができ、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記DNA標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法が提供される。
【0020】
さらに別の態様では、対象の核酸標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その核酸標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)核酸試料を、メチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたメチル化特異的フォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的メチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズし、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法が提供される。
【0021】
さらなる態様では、対象の核酸標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その核酸標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)核酸試料を亜硫酸水素塩薬剤に接触させてメチル化されていないシトシン残基をウラシルに変換するステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたメチル化特異的フォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数の加水分解プローブであって、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズする加水分解プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)の試料を増幅させ、対象の前記DNA標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法が提供される。
【0022】
別のさらなる態様では、本発明は、対象の核酸標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その核酸標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)核酸試料を、メチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の完全及び部分的メチル化パターンすべてにハイブリダイズし、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法を対象とする。
【0023】
さらに別の態様では、遺伝子標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その遺伝子標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)DNA試料を亜硫酸水素ナトリムに接触させてメチル化されていないシトシン残基をウラシルに変換するステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA試料を
(a)修飾された遺伝子の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたメチル化特異的フォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数の加水分解プローブであって、一括して、前記領域の少なくとも2つの領域の異なるメチル化パターンにハイブリダイズする加水分解プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記DNA標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法が提供される。
【0024】
さらに別の態様では、本発明は、患者における状態を診断する又はモニターするための方法であって、上記状態はDNA又はRNA標的のシトシンメチル化の調節により特徴付けられ、そのDNA又はRNA標的は部分的メチル化を受けた領域により特徴付けられ、
(i)前記患者由来の核酸試料を、メチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の試料を
(a)修飾された遺伝子の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズし、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1のAは、Chr7:50304271〜50304365に属する部分的にメチル化された形態の標的IKZF1領域の例を提供する図である。トップライン:基準となる、完全にメチル化されたIZKF1標的配列(亜硫酸水素塩変換及びPCR増幅後)、メチル化されたシトシンは赤色で強調されている。フォワードプライマー(配列番号3)、リバースプライマー(配列番号4)及び3つの完全にメチル化されたCpG部位を必要とするプローブの位置が示されている。同定された部分的にメチル化された標的配列は緑色のTで下に示されている。図1のBは、IKZF1メチル化特異的PCR(メチル化特異的プライマー)を使用して、3つの臨床血漿試料から抽出した亜硫酸水素塩変換DNAにおいて同定されたIKZF1試料配列トレースの表示する図である。3つのトレースは完全にメチル化されたIKZF1(左パネル)、まったくメチル化されていないIKZF1(中央パネル)及び部分的にメチル化されたIKZF1(右パネル)の存在を例証している。ピークは検出される塩基についてカラーコード化されている(赤=T、黒=G、緑=A,青=C)。プローブ下のメチル化されたCG塩基の位置はそれらのピーク上の「CG」で示されており、亜硫酸水素塩変換及びPCR増幅後TGに変換するメチル化されていないCGは「TG」と示されている。
図2-1】亜硫酸水素塩変換及びそれに続くPCR増幅を詳述しているフローチャートである。
図2-2】亜硫酸水素塩変換及びそれに続くPCR増幅を詳述しているフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、一括して、対象のDNA領域の少なくとも2つの、しかし好ましくはすべての潜在的メチル化パターンにハイブリダイズするように設計されている1つ又は複数の検出プローブ又はプライマーを用いる増幅反応が設計されている場合には、部分的シトシンメチル化を示すDNA又はRNA試料の定量的PCRメチル化分析の感度を著しく改善することが可能であると確定されたことに一部基づいている。この方法の開発が必要になったのは、驚くべきことに、プローブ又はプライマーは他の点では高レベルの配列類似性を示すという事実にもかかわらず、対象のメチル化されたDNA領域に向けられた加水分解プローブ及びプライマーは増幅され亜硫酸水素塩変換され完全にメチル化された形態のDNAのみにハイブリダイズし、増幅され亜硫酸水素塩変換され部分的にメチル化された形態のDNAにはハイブリダイズしないという事実のせいで、部分的メチル化が存在すれば定量的PCRベースのメチル化検出アッセイの感度が著しく低下すると確定されたためであった。実際、いくつかの診断アッセイは、部分的にメチル化された形態のDNAを検出するのは診断アッセイの特異性を不明瞭にすると考えられていたという見解を考慮して、完全にメチル化された形態のDNAのみを検出するように今日まで設計された。しかし、結腸直腸がんマーカーのIKZF1などのいくつかの診断メチル化遺伝子マーカーは実際、部分的にメチル化された形態を示すことが現在では確定されている。そのような形態は従来の定量的PCR技術では検出されず、そのような形態の割合が多くて、先行技術を使用して得られる結果は感度が低下する可能性がある。
【0027】
本発明の方法の開発により、以前は達成可能であった有意に高い感度を示すメチル化特異的増幅アッセイのルーチンな適用が今や可能になった。さらに具体的には、対象の領域の潜在的な部分的メチル化パターンの範囲に向けられるプローブ若しくはプライマーの異種プールを使用すれば、又は2つ若しくはそれよりも多い異なるメチル化パターンにハイブリダイズすることができるという点でそのハイブリダイゼーション機能性が無差別であるプローブ若しくはプライマーを使用すれば、試料中に存在する増幅され完全に及び部分的にメチル化されたDNA又はRNAの両方を効率的に検出し、それによって試験の感度を改善することが可能であることが確定された。がん診断という文脈では、偽陰性結果は、部分的メチル化を検出することができない先行技術の方法の使用から生じるがこれは、患者に極めて深刻な結果をもたらすことがある。したがって、本発明の方法は、DNAメチル化を評価する場合、高レベルの感度を保証する簡単であるが頑強な手段を提供する。
【0028】
したがって、本発明の一態様は、対象の核酸標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その核酸標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)核酸試料を、メチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の核酸試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズすることができ、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法を対象とする。
【0029】
「対象の核酸標的」への言及は、そのメチル化状態を分析しようとしているDNA又はRNAの任意の領域又は形態への言及と理解するべきである。これは、例えば、遺伝子、遺伝子の一部、遺伝子間領域又はプロモーターであってよい。この目的に向けて、「遺伝子」への言及は、それが完全長タンパク質であれタンパク質断片であれ、タンパク質産物をコードするDNA又はRNA分子への言及として理解するべきである。しかし、同定されてはいるが、必ずしもタンパク質産物を産生するとは知られていない遺伝子がいくつか存在することは理解するべきである。したがって、本明細書での「遺伝子」への言及は、両方の種類の遺伝子への言及を含むと理解されるべきである。ゲノムDNA又はそこから転写されるRNAに関しては、遺伝子は一般的に、イントロン領域とエキソン領域の両方を含むと予想される。対象の主題の核酸領域は、任意の特定の遺伝子と関連があるとは知られていないゲノムDNAの一部であってもよい(一般に「ジャンク」と呼ばれるDNA領域などの)。対象の核酸標的は、ゲノムDNAの2領域又はゲノムDNAの1領域とウイルス又は導入された配列などの外来DNAの領域の間での組合せにより生成されるゲノムDNA(又はRNA転写産物)の任意の領域であってもよい。分析の対象であるDNAは必ずしもゲノムDNAでなくてもよいが、cDNAなどの組換え的に発現されるDNAはメチル化されないことは一般に理解されている。それにもかかわらず、本発明はメチル化することができるいかなる供給源又は形態のDNA又はRNAの分析にも及ぶと理解するべきである。例えば、RNAに関しては、一次RNA、mRNA、tRNA、rRNA、tmRNA、snRNA、snoRNA、miRNA、非コードRNA又はウイルスRNAを分析することがある。
【0030】
したがって、本発明はより詳細には、対象のDNA又はRNA標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、そのDNA又はRNA標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)DNA又はRNA試料をメチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズすることができ、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法を対象とする。
【0031】
本発明をいかなる一つの理論又は作用様式にも限定せずに、RNAメチル化はtRNA、rRNA、mRNA、tmRNA、snRNA、snoRNA、miRNA、非コードRNA及びウイルスRNAを含む多くの異なるRNA種において起こる。種々のRNAメチルトランスフェラーゼによるRNAメチル化では異なる触媒戦略が用いられる。翻訳後修飾として、RNAメチル化はエピジェネティック機構において重要な役割を果たしている。N6−メチルアデノシン(mA)は真核生物に存在するRNA分子中で最も一般的で大量にあるメチル化修飾であるが、5−メチルシトシン(5−mC)も種々のRNA分子中に一般的に存在する。最近のデータによれば、mA及び5−mC RNAメチル化は、RNA安定性及びmRNA翻訳などの種々の生物学的過程の調節に影響を及ぼし、異常なRNAメチル化はヒト疾患の原因の一因となることが示唆されている。RNA中のメチル化されたシトシンの生物学的役割は完全には理解されていないが、メチル化されたシトシンはmRNA中では大量にある修飾である。
【0032】
それでも本発明を決して限定することなく、DNAメチル化は細菌、植物、及び動物で普遍的である。DNAメチル化は、細胞分裂の繰り返しを通して安定しているDNAの一種の化学修飾であるが生物の根底にあるDNA配列の変化を伴わない。クロマチン及びDNA修飾はエピジェネティクスにおける2つの重要な特長であり、細胞分化の過程で役割を果たしており、細胞が同じゲノム材料を含有しているにもかかわらず異なる特徴を安定的に維持することを可能にしている。真核生物では、DNAメチル化はシトシンピリミジン環の番号5炭素でのみ起こる。哺乳動物では、DNAメチル化は大半がCpGジヌクレオチドのシトシンの番号5炭素で起こる。CpGジヌクレオチドはヒトゲノムのおおよそ1%を占める。
【0033】
全CpGの70〜80%はメチル化されている。CpGは、典型的には多くの遺伝子の調節領域の5’−末端に存在している「CpGアイランド」と呼ばれるクラスターでグループ化されていることがある。がんなどの多くの疾患過程では、遺伝子プロモーター及び/又はCpGアイランドは異常な過剰メチル化を獲得し、これは遺伝性転写サイレンシングと関連している。DNAメチル化は2つの方法で遺伝子の転写に影響することがある。第1に、DNAのメチル化それ自体が転写タンパク質の遺伝子への結合を物理的に妨害し、こうして転写を遮断することがある。第2に、メチル化されたDNAにはメチル−CpG−結合ドメインタンパク質(MBD)として知られるタンパク質が結合できる。次に、MBDタンパク質は、ヒストンデアセチラーゼ及びヒストンを修飾することが可能な他のクロマチンリモデリングタンパク質などの追加のタンパク質を遺伝子座に動員し、それによってサイレントクロマチンと名付けられた緻密で不活性なクロマチンを形成する。DNAメチル化とクロマチン構造の間のこの関連は非常に重要である。特に、メチル−CpG−結合タンパク質2(MeCP2)の消失はレット症候群と関連付けられており、メチル−CpG−結合ドメインタンパク質2(MBD2)はがんにおいて過剰メチル化遺伝子の転写サイレンシングを媒介する。
【0034】
ヒトでは、DNAメチル化の過程は3つの酵素、DNAメチルトランスフェラーゼ1、3a及び3b(DNMT1、DNMT3a、DNMT3b)により実行される。DNMT3a及びDNMT3bは発生初期におけるDNAメチル化パターンを樹立する新規のメチルトランスフェラーゼだと考えられている。DNMT1は、DNA複製中にDNAメチル化パターンを娘鎖にコピーする原因である提唱されているメンテナンスメチルトランスフェラーゼである。DNMT3Lは、その他のDNMT3と相同であるが触媒活性がないタンパク質である。代わりに、DNMT3Lは、新規のメチルトランスフェラーゼを、DNAに結合するその能力を増加させその活性を刺激することにより支援する。最後に、DNMT2は「謎の」DNAメチルトランスフェラーゼ相同体として同定されており、すべてのDNAメチルトランスフェラーゼに共通の10の配列モチーフすべてを含有しているが、DNMT2はDNAをメチル化することはなく、代わりに小型RNAをメチル化することが明らかにされている。
【0035】
したがって、用語「メチル化」は、DNAメチルトランスフェラーゼ酵素の作用により核酸、例えば、ゲノムDNA又はRNAの領域中のシトシン又はアデノシン塩基に付加されるメチル基の存在を意味すると理解されるべきである。
【0036】
一実施形態では、対象の前記核酸標的はDNA若しくはRNA遺伝子又はプロモーター領域などの遺伝子領域である。したがって、「遺伝子標的」への言及は、それに関してメチル化を調べることになっている遺伝子又は遺伝子の領域への言及として理解されるべきである。
【0037】
「遺伝子の領域」への言及は、遺伝子の一部に対応しているが全遺伝子には対応していないDNA又はRNAの任意の一続きへの言及として理解されるべきである。例えば、本発明の方法により分析されるDNAは、その単離中などに、断片化されていてもよく、又は本発明の方法による分析に先立って予備ステップとして切断されていてもよい。例えば、GlaIはIKZF1がメチル化されていれば、特定の部位で切断される。次に、生じたGlaI断片は適切なプライマーとメチル化を評価するのに使用する本発明の縮重プローブを使用して増幅することが可能である。
【0038】
この実施形態に従って、遺伝子標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その遺伝子標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)核酸試料を、メチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)DNAの形態であるステップ(i)のDNA形態の核酸試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された遺伝子領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズすることができ、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、前記遺伝子標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法が提供される。
【0039】
別の実施形態では、前記遺伝子又は遺伝子領域は哺乳動物遺伝子又は遺伝子領域である。
【0040】
さらなる実施形態では、前記遺伝子は大腸新生物マーカー、より詳細には、BCAT1、IKZF1、CAHM、GRASP、IRF4、SOX21、SLC6A15、NPY、ST8SIA1、ZSCAN18、COL4A2、DLX5、FGF5、FOXF1、FOXI2又はSDC2である。
【0041】
これらの遺伝子は本明細書では遺伝子名とヒト染色体座標のセットの両方に言及することにより特定される。遺伝子名と染色体座標の両方は、当業者には周知であり、理解されていると考えられる。一般に、遺伝子は、それを介してその配列と染色体位置の両方を入手することが常に可能であるその名称に言及することにより、又はそれを介して遺伝子名とその配列の両方を入手することも常に可能であるその染色体座標に言及することにより常に特定することが可能である。
【0042】
「遺伝子」への言及は、あらゆる形態のこれらの分子への及びその断片又はバリアントへの言及として理解されるべきである。当業者であれば認識すると考えられるように、一部の遺伝子は、個々の又は一塩基多型の間で対立遺伝子変異を示すことが知られている。そのような変異にはSNP、様々なサイズの挿入及び欠失並びにジヌクレオチド及びトリヌクレオチド繰り返しなどの単純な配列繰り返しが含まれる。変異には、少なくとも90%、95%、98%、99%配列同一性を共有する、すなわち、本明細書に記載される遺伝子と比べて、1つ又は複数の欠失、付加、置換、逆方向配列、等を有する同じ領域由来の核酸配列が含まれる。したがって、本発明は、実際の核酸配列間の小さな遺伝子変異が個体間に存在することがあるという事実にもかかわらず本診断適用に関して同じ結果を達成する変異にまで及ぶと理解するべきである。したがって、本発明は、他のいかなる突然変異、多形性の又は対立遺伝子変異からでも生じるあらゆる形態のDNA又はRNAにまで及ぶと理解されるべきである。
【0043】
上で詳述される遺伝子に対応するGRCh38/hg38染色体座標は以下の通りである。
(1)BCAT1:chr12:24810024-24949459
(2)IKZF1:chr7:50304083-50405100
(3)IRF4:chr6:391739-411443
(4)GRASP:chr12:52006945-52015889
(5)CAHM:chr6:163413065-163413950
(6)SOX21:chr13:94709625-94712135
(7)SLC6A15:chr12:84859488-84912829
(8)NPY:chr7:24284188-24291865
(9)ST8SIA1:chr12:22193391-22334714
(10)ZSCAN18:chr19:58083842-58098363
(11)COL4A2:chr13:110307284-110513026
(12)DLX5:chr7:97020390-97024831
(13)FGF5:chr4:80266588-80291017
(14)FOXF1:chr16:86510527-86514464
(15)FOXI2:chr10:127737274-127741186
(16)SDC2:chr8:96493654-96611809
【0044】
これらの遺伝子への言及は、これらの遺伝子のそれぞれの転写開始部位の5kb上流を含むと理解されるべきである。本発明をいかなる一つの理論又は作用様式にも限定せずに、IKZF1は一般にchr7:50304782〜50405100(アセンブリーGRCh38/hg38)にまたがると理解されている。これは転写開始部位からポリアデニル化部位まで続いている。しかし、IKZF1遺伝子はさらに5’転写開始部位を有しており、その座標はこの開始部位を含めて、Chr7:50304083〜50405100である。上流CpGアイランドも含まれている場合には、座標は50303300〜50405100である。
【0045】
今後より詳細に考察されるように、本発明の方法は1つの遺伝子のメチル化を求めてスクリーニングするのに適用することが可能である、そうでなければ本発明の方法は、最初の生体試料から別々のアリコートのDNA又はRNAの増幅を介して、又は多重化増幅法を使用して増幅される単一アリコートという文脈で1つよりも多い遺伝子のメチル化を求めて所与の生体試料をスクリーニングするように構成することが可能である。
【0046】
上文で詳述されたように、本発明の方法は、対象の部分的にメチル化されたDNA又はRNA標的を検出するための方法の開発に基づいている。「部分的メチル化」への言及は、そのDNA標的の完全にメチル化された形態で通常メチル化されている1つ又は複数のシトシンが部分的にメチル化された形態でメチル化されていないCpG含有DNA標的への言及である。例えば、及び本発明の一実施形態では、Chr7:50304323〜50304349で完全にメチル化された形態の遺伝子IKZF1は
CCTGTAC mCGGAGCAG mCGATCmCGGGAGG
であり、Cはメチル化されたシトシンを表し、Cはメチル化されていないシトシンを表す。
【0047】
IKZF1 DNA配列のこの領域の範囲の潜在的な部分的にメチル化された形態は、
CCTGTACCGGAGCAG mCGATCmCGGGAGG (配列番号80)
CCTGTAC mCGGAGCAGCGATCmCGGGAGG (配列番号81)
CCTGTAC mCGGAGCAGmCGATCCGGGAGG (配列番号82)
CCTGTACCGGAGCAGCGATCmCGGGAGG (配列番号83)
CCTGTACCGGAGCAG mCGATCCGGGAGG (配列番号84)
CCTGTAC mCGGAGCAGCGATCCGGGAGG (配列番号85)
CCTGTACCGGAGCAGCGATCCGGGAGG (配列番号86)
である。
【0048】
任意の所与の生体試料は、これら部分的にメチル化された形態のIKZF1のすべて又は一部のみを含むことができることは理解されるべきである。さらに、IKZF1実施形態という文脈では、上に同定されている配列は、IKZF1遺伝子のChr7:50304323〜50304349領域のこれら潜在的な部分的にメチル化された形態を表す。しかし、IKZF1遺伝子の他の領域が、IKZF1遺伝子に属する他のCpGアイランド(chr7:50303300〜50304923及びchr7:50399869〜50400702)などの部分的メチル化を示すことがあることも理解されるべきである。「部分的メチル化」に対応する意味は、任意の遺伝子、転写産物若しくは他のDNAなどの対象の任意の標的又はmRNAなどのRNA標的に当てはまることは理解されるべきである。本発明の方法を実施することに関して、分析に選ばれるDNA又はRNAの領域は部分的メチル化を示すDNA又はRNA標的の別個の領域をおそらく反映することは、当業者であれば認識すると考えられる。DNA又はRNA標的の部分的メチル化を受けたすべての領域が必ず分析する必要があるというわけではない。
【0049】
本発明の方法により調べられる核酸標的は、部分的メチル化を受けた領域により特徴付けることが「できる」核酸標的である。「できる(may)」への言及は、試験の対象である核酸試料が実際に部分的にメチル化された配列を含むこともあれば含まないこともあることを意味すると理解されるべきである。本発明をいかなる一つの理論又は作用様式にも限定せずに、所与の遺伝子が部分的にメチル化された変異を示すことがあるという事実は、分析されるすべての生体試料で1つ又は複数の部分的にメチル化された形態の存在を観察することになるという意味ではない。むしろ、部分的メチル化の存在及び程度は、分析されている試料の性質、問題の疾患状態の性質、病期の重症度等の要因に依拠することがある。しかし、問題の遺伝子の部分的にメチル化した形態が試験している核酸試料中に存在するのかどうかを当業者が必ずしも前もって決定しておく必要はない。むしろ、本発明の方法を任意の試料に適用するだけでよい。なぜならば、プローブが向けられる配列は公知であり、したがって、理論的に可能である部分的メチル化のすべての並べ替えにハイブリダイズするプローブのプールを作製することが可能だからである。試験されているDNA試料が実際に完全にメチル化されているのか部分的にメチル化されているのかの点では(及び存在する可能性がある部分的にメチル化された形態の範囲に関わらず)、十分なプライマー及びプローブ量が使用されている限り、ハイブリダイズしていない過剰なプライマー又はプローブの存在は、ハイブリダイズしており測定されるプライマー及びプローブから得られる結果に影響を与えることはない。
【0050】
本発明の別の実施形態では、DNA標的はBCAT1、IKZF1、IRF4、GRASP、CAHM、SOX21、SLC6A15、NPY、ST8SIA1、ZSCAN18、COL4A2、DLX5、FGF5、FOXF1、FOXI2又はSDC2である。
【0051】
この実施形態に従えば、遺伝子BCAT1、IKZF1、IRF4、GRASP、CAHM、SOX21、SLC6A15、NPY、ST8SIA1、ZSCAN18、COL4A2、DLX5、FGF5、FOXF1、FOXI2又はSDC2のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その遺伝子は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)DNA試料をメチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA試料を
(a)修飾された遺伝子の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的メチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズすることができ、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、前記遺伝子に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法が提供される。
【0052】
別の実施形態では、前記遺伝子はIKZF1である。
【0053】
本発明の方法に従って試験される核酸は生体試料から単離することができる。「生体試料」への言及は、細胞物質、生体液(例えば、血液、尿、唾液)、糞便、組織生検標本、摘出標本又は身体内に導入されその後取り除かれる液体(例えば、浣腸洗浄から回収される溶液などの)を含むがこれらに限定されない、動物、植物又は細菌などの任意の供給源由来の生体物質の任意の試料への言及として理解されるべきである。本発明の方法に従って試験される生体試料は、直接試験することもあるし、又は試験に先立ってある形態の処置を必要とすることもある。例えば、生検又は摘出試料は試験に先立ってホモジナイズする必要があることがある。代わりに、細胞試料は試験に先立って透過処理を必要とすることがある。さらに、生体試料が液体形態ではない限り、(試験においてそのような形態が必要とされる場合)試料を動員するために緩衝液などの試薬の添加が必要になることがある。
【0054】
対象の核酸領域が生体試料中に存在している限り、生体試料は直接試験することもあるし、そうでなければ、生体試料中に存在する核酸のすべて又は一部を試験に先立って単離することもある。さらに別の例では、試料は分析に先立って部分的に精製する、或いは濃縮することができる。例えば、生体試料が極めて多様な細胞集団を含む限り、特定の対象のサブ集団について濃縮することが好ましいことがある。標的生体試料又はそれに由来する分子を試験に先立って処理する、例えば、生ウイルスの不活性化は本発明の範囲内である。生体試料は新たに収穫してもよいし、試験に先立って保存されていてもよく(例えば、凍結により)、或いは試験に先立って処理されてもよい(培養を受けることによるなどの)ことも理解されるべきである。
【0055】
本明細書に開示される方法に従った試験にどのような種類の試料が最も適しているかの選択は、状況の性質に依拠することになる。大腸新生物の発症又は発症の素因についてスクリーニングしている限り、例えば、前記試料は、糞便(大便)試料、浣腸洗浄、摘出試料、組織生検又は血液試料(例えば、全血、血清又は血漿)であることが好ましい。
【0056】
前記生体試料は血液試料、生検試料又は大便試料であるのがより好ましい。
【0057】
本発明の方法は、増幅ベースの方法を介して、DNA又はRNAなどの核酸標的のシトシンメチル化特徴を正確に定性的に又は定量的に分析する手段を提供する。本発明の方法を適用することにより、任意の所与の生体試料中の部分的メチル化の潜在的存在のせいで、特に、増幅プライマー又は検出プローブは完全にメチル化された核酸配列にしかハイブリダイズすることはできず、対応する部分的にメチル化された配列にはハイブリダイズできないという事実により引き起こされる偽陰性結果を生み出すせいで、結果が歪められることはない。この方法を適用することに関して、増幅とプロービングの組合せによりDNA配列のメチル化を調べるように設計されている既存の増幅方法のいずれも、本発明の方法に従って構成することが可能なことは当業者であれば認識するはずである。例えば、メチル化特異的プライマー又は非メチル化特異的プライマーのどちらかを使用する増幅方法(PCRなどの)を設計することが可能である。例証された実施形態に従えば、メチル化特異的プライマーを使用する(例えば、メチル化特異的PCR)。しかし、非メチル化特異的プライマーも使用することができるだろうが、この場合、メチル化調査はプローブの使用から得られる結果のみに頼ることになる。同様に、使用されるプローブに関しては、例証される実施形態はリアルタイムPCR定量化を達成することができる加水分解プローブを使用する。しかし、そのようなプローブが使用される場合でも、得られる読み出し情報を定性的に分析するのに十分な場合がある。代わりに、定性的読み出し情報を提供するだけで、定量的分析は可能にしないプローブを使用することを選択してもよい。
【0058】
第1ステップでは、分析の対象である核酸試料はメチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させる。本明細書で使用される用語「修飾する」とは、薬剤によるメチル化されていないシトシンの別のヌクレオチドへの変換を意味しており、前記変換は最初の核酸試料中でメチル化されていないシトシンとメチル化されたシトシンを区別する。いかなる適切な薬剤でも使用することができる。一実施形態では、薬剤は、亜硫酸水素ナトリウムなどのメチル化されていないシトシンをウラシルに変換する薬剤である。しかし、メチル化されていないシトシンは選択的に修飾し、メチル化されたシトシンは修飾しない他の等価な修飾剤を本発明の方法において使用することが可能である。例えば、亜硫酸水素アンモニウムなどの他のいかなる適切な形態の亜硫酸水素塩でも使用することが可能である。亜硫酸水素ナトリウムはシトシンの5,6二重結合と容易に反応するがメチル化されたシトシンとは反応せず、スルホン化シトシン中間体を生成して、これがアルカリ性又は高温条件下で脱アミノ化を受けてウラシルを生成する。Taqポリメラーゼはウラシルをチミンとして5−メチルシトシン(m5C)をシトシンとして認識するので、亜硫酸水素ナトリウム処理とPCR増幅の順次組合せにより、メチル化されていないシトシン残基からチミンへ(C→U→T)及びメチル化されたシトシン残基(「mC」)からシトシンへ(mC→mC→C)最終変換する。このように、ゲノムDNAの亜硫酸水素ナトリウム処理は、メチル化されていないシトシンのウラシルへの変換によりメチル化依存性配列違いを作り出す。ステップ(i)の核酸へのプライマーのハイブリダイズに関して、プライマーは修飾された(例えば、亜硫酸水素塩変換)DNA、又はそれから増幅されるDNAにハイブリダイズするように設計されていることは理解されるべきである。
【0059】
この実施形態に従えば、対象の核酸標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その核酸標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)核酸試料を亜硫酸水素塩薬剤に接触させてメチル化されていないシトシン残基をウラシルに変換するステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の核酸試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的メチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズすることができ、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法が提供される。
【0060】
別の実施形態では、前記亜硫酸水素塩薬剤は亜硫酸水素ナトリウム又は亜硫酸水素アンモニウムなどの亜硫酸水素塩である。
【0061】
さらに別の実施形態では、前記核酸標的は遺伝子であり、BCAT1、IKZF1、IRF4、GRASP若しくはCAHM、SOX21、SLC6A15、NPY、ST8SIA1、ZSCAN18、COL4A2、DLX5、FGF5、FOXF1、FOXI2又はSDC2であるのがより好ましい。
【0062】
さらに別の実施形態では、前記核酸標的はゲノムIKZF1 DNAである。メチル化されていないシトシン残基の変換が成し遂げられた後は、試料は増幅の準備ができている。分析の対象である核酸試料が、ゲノムDNA試料などのDNA試料である場合、増幅反応は直接的に亜硫酸水素塩変換試料上で実施することが可能である。しかし、対象の核酸試料がmRNA試料などのRNA試料である場合、RNAはステップ(ii)の増幅に先立ってDNAに変換することが必要である。これは、RT−PCRなどの当業者には周知と考えられるいかなる都合の良い方法によっても実行することが可能である。本発明をいかなる一つの理論又は作用様式にも限定せずに、これは「1ステップ」反応(例えば、逆転写酵素とDNAポリメラーゼ活性の両方を有するTthポリメラーゼを使用して)、又は逆転写酵素及び熱安定性DNAポリメラーゼなどの2つの個別の酵素を使用する「2ステップ反応」で実行することが可能である。「1ステップ」反応という文脈では、それでもこの方法を2段階で実施できることは当業者であれば理解すると考えられる。一般に、逆転写ステップは室温で、その後通常のPCRステップを実施することが可能である。この実施形態に従って、典型的には、問題のRNA試料を適切な相補的プライマー(複数可)に接触させる1つの方法であって、ランダムプライマー、逆転写酵素活性を有する酵素、デオキシヌクレオチド三リン酸並びに相補的DNA(cDNA)を生成するのに適した緩衝液及びインキュベーション条件を含むことができる方法を設計してもよい。したがって、「ステップ(i)のDNA形態の核酸試料」を接触させることへの言及は、ステップ(ii)において増幅を受ける核酸試料はDNA形態であるという事実への言及として理解されるべきである。この目的に向けて、ステップ(i)の核酸が最初はDNA試料であり、ステップ(ii)において直ちに使用することができる場合でも、それにもかかわらず、増幅ステップ(ii)を適用することに先立って、試料を増幅し、それによってその量を増加させるのが望ましいことがあることは理解されるべきである。試料がRNAである場合、ステップ(ii)増幅に先立って、試料はRT−PCRなどのステップにかけられそのRNAをDNA形態に変換することになる。
【0063】
ステップ(ii)の増幅はいくつかの適切な技法のいずれか一つを使用して達成することが可能である。例えば、2つ又はそれよりも多い個別の遺伝子又はメチル化領域を標的とすることを目的とする1つよりも多い対のフォワード/リバースプライマーを使用する場合、これらのプライマーすべてを単一の試料に導入し、多重化増幅技法を使用して試料を増幅させることができる。代わりに、ステップ(i)の試料を、それぞれのアリコートを別個の対のプライマーを使用して増幅させる1つよりも多いアリコートに分割することを選択できる。当業者であれば、1つのメチル化領域のみを増幅させることを目的とするが、複数のプライマーがネステッドPCR反応の適用を反映している場合には複数セットのプライマーを使用するようにこの方法を構成することを選択できることも理解されるべきである。
【0064】
「プライマー」への言及は、ヌクレオチドの配列、又はその機能的誘導体若しくは類似体を含む任意の分子であって、その機能には対象のメチル化領域に隣接する相補的DNA配列へのアニーリングとアニーリング領域の下流のDNA配列の増幅の両方が含まれる任意の分子への言及として理解されるべきである。プライマーは非核酸成分を含んでいてもよいことは理解されるべきである。例えば、プライマーは蛍光若しくは酵素タグなどの非核酸タグ又は分子の使用若しくは検出を促進する何か他の非核酸成分も含むことができる。別の例では、プライマーは核酸側鎖を示すペプチド骨格を含むタンパク質核酸であってもよい。前記プライマーは一本鎖DNAオリゴヌクレオチドであることが好ましい。
【0065】
本発明において使用するのに適したプライマーの設計及び合成は当業者には周知であると考えられる。一実施形態では、主題のプライマーは4〜60ヌクレオチド長であり、別の実施形態では、10〜50ヌクレオチド長であり、さらに別の実施形態では、15〜45ヌクレオチド長であり、さらに別の実施形態では、20〜40ヌクレオチド長である。
【0066】
本発明の方法において使用されるプライマーの数に関して、これは当業者が決定することが可能である。プライマーの総数に関して、検討が必要な変数は、増幅されている核酸領域のサイズ及び数並びにプライマーがハイブリダイズする配列間の距離である。約1kbよりも大きなPCR断片を増幅するためには、プライマーは、ネステッドPCR法において機能しおおよそ500塩基の間隔でハイブリダイズするように設計することが可能である。
【0067】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマーは、核酸の相補鎖との配列特異的ハイブリダイゼーションが可能である線形一本鎖オリゴマーのデオキシリボ核酸又はリボ核酸分子である。プライマーはDNAであることが好ましい。本発明のプライマーは、増幅過程中に重合化の特異的で効率的な開始(プライマー伸長)を提供するのに十分な長さである。正確な長さは温度(増幅中)、緩衝液、及びヌクレオチド組成を含む複数の要因に依拠することになる。プライマーは一本鎖であるが、先ず鎖が分離されるのであれば二本鎖プライマーを使用することができることが好ましい。プライマーは、当技術分野では一般に知られている従来のホスホトリエステラーゼ及びリン酸ジエステル法又は自動実施形態などの任意の適切な方法を使用して調製することができる。
【0068】
本明細書で使用されるように、特異的プライマーは対象のゲノム核酸のそれぞれの鎖に実質的に相補的であるように設計されることが好ましい。典型的には、一プライマーは遺伝子座のマイナス(−)鎖(水平に置かれた二本鎖DNA分子の「下の」鎖)に相補的であり、もう一方のプライマーはプラス(+)鎖(「上の」鎖)に相補的である。本発明の方法は、対象の遺伝子標的のセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかの関連する領域を増幅するように設計することが可能であることを理解するべきである。これに関する例証は本明細書においてIKZF1という文脈で提供される。
【0069】
上文で詳述されたように、本発明の方法において利用されるプライマーは、対象の核酸標的を増幅する任意の適切なプライマーであってもよい。例えば、プライマーはメチル化特異的プライマーでも非メチル化特異的プライマーでもよい。「メチル化特異的」プライマーとは、亜硫酸水素塩変換メチル化対非メチル化DNAなどのメチル化されたDNAと非メチル化DNAを区別することが可能なプライマーを意味する。そのようなメチル化特異的プライマーは、例えば、非変換5−メチルシトシンのみとハイブリダイズする(すなわち、プライマーが亜硫酸水素塩変換メチル化DNAとハイブリダイズする)、又は逆に、メチル化されていないシトシンから変換されるチミンにハイブリダイズする(すなわち、プライマーが亜硫酸水素塩変換された非メチル化DNAとハイブリダイズする)ことにより、メチル化されたDNAと非メチル化DNAを区別するように設計することが可能である。それによって、メチル化は増幅を達成する特異的なプライマーの能力により決定される。当業者であれば認識すると考えられるように、メチル化特異的区別を達成するためには、プライマーはDNAメチル化の潜在的部位(CpGジヌクレオチド)に重なり、メチル化されたDNAから修飾された非メチル化DNAを特異的に区別するように設計されることが好ましい。例えば、プライマーは、1〜数CpG配列、好ましくは、1〜5CpG配列、又は1〜4CpG配列に重なるように設計することができる。本明細書で例証されるIKZF1増幅という文脈では、フォワード及びリバースプライマーはそれぞれが、IKZF1配列のうち4CpGジヌクレオチドを含む領域にハイブリダイズするように設計されている。一好ましい実施形態では、プライマーはメチル化特異的である。
【0070】
したがって、「部分的シトシンメチル化を受けた領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計」されている前記プライマーへの言及は、プライマーが、メチル化された形態の対象領域のすべて又はごく一部のいずれかの増幅を可能にし、これらの増幅がその後プローブにより調べられることを意味すると理解されるべきである。プライマーが非メチル化特異的である場合、プライマーは任意の程度のメチル化が存在しているかどうかとは無関係に、すべての形態の対象領域を増幅させることになる。例えば、プライマーが、部分的シトシンメチル化を受けた領域の一部を形成するCpGの上流及び下流に位置する非メチル化DNA領域にハイブリダイズするように、プライマーを設計することができる。この状況では、プライマーは試料中に存在するすべての核酸分子のこの領域を増幅させることになる。なぜならば、プライマーは、メチル化されていないがシトシンのメチル化された領域に近位に位置するDNA部位にハイブリダイズするように設計されているからである。この場合、本方法のメチル化特異性はプローブによってのみ提供されることになり、プローブのプールが、完全に非メチル化形態の標的領域に向けられているプローブを確実に含まないようにすることが重要だと考えられる。別の実施形態では、プライマーのうちの1つ又は複数はメチル化特異的であり、完全にメチル化されている及び部分的メチル化を受けた領域の上流及び/又は下流にあるシトシン残基のうちの1つ又は複数にハイブリダイズするように設計されていてもよい。メチル化特異的プライマーを設計することにより、メチル化特異的増幅を達成することが可能である。さらに別の例では、プライマーのうちの1つ又は両方は部分的にメチル化された残基自体に向けることができる。この状況では、良好な感度を達成するために、無差別にハイブリダイズするプライマー、又はできる限り多くの異なる部分的にメチル化された形態のDNA標的にハイブリダイズし、その増殖を可能にするプライマーのプールを設計し、それによって特異性を改善することが望ましい。これは、例えば、多重化アッセイの適用という文脈において達成することができる。適切な無差別なプライマー又はプライマーのプールのいずれかの設計に関して、プローブ配列設計との関連でその後提供される説明はこれらのプライマーの設計にも適用可能であり、両方の分子は標的DNA領域にハイブリダイズするように設計されているオリゴヌクレオチドである。
【0071】
非メチル化特異的プライマーを使用する場合、利用するプローブのパネルには非メチル化DNAを検出するプローブが含まれないことが好ましいことは認識されると考えられる。本発明に従って設定され、対象の核酸領域について2つ又はそれよりも多いメチル化パターンを検出するが非メチル化DNAは検出しないプローブを設計することは十分に当業者の技能の範囲内である。使用されるプライマーがメチル化特異的である場合、設定されるプローブが対象の核酸標的の非メチル化形態に向けられているプローブを含むかどうかという問題はそれほど重大ではない。
【0072】
この実施形態に従えば、対象の核酸標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その核酸標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)核酸試料を、メチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたメチル化特異的フォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的メチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズし、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法が提供される。
【0073】
別の実施形態では、対象の前記標的はDNA遺伝子標的であり、BCAT1、IKZF1、IRF4、GRASP、CAHM、SOX21、SLC6A15、NPY、ST8SIA1、ZSCAN18、COL4A2、DLX5、FGF5、FOXF1、FOXI2又はSDC2であるほうがより好ましく、IKZF1であることが好ましい。
【0074】
さらに別の実施形態では、メチル化されていないシトシン残基を修飾する前記薬剤は亜硫酸水素ナトリウムである。
【0075】
本発明の方法により増幅されるDNA領域のサイズは、当業者が決定することが可能であり、プローブが結合しなければならない領域のサイズ及びプライマーが向けられるCpGジヌクレオチドクラスターのDNA標的配列に沿った分布などの要因に依拠することになる。この目的びために、本発明の増幅法は、プローブがプライマー間のDNA配列領域(すなわち、プライマー間配列)に向けられており、したがって、増幅の結果として生成される増幅産物に選択的にハイブリダイズするように設計されている。
【0076】
対象の標的に「向けられている」フォワード及びリバースプライマーへの言及は、プライマーが問題の標的のすべて又は一部のいずれかにハイブリダイズして増幅させることを意味すると理解されるべきであることを理解するべきである。例えば、対象の標的が遺伝子標的である場合、プライマーは、プロモーター領域のすべて又は一部などの遺伝子の比較的小さなセクションサブ領域にハイブリダイズして増幅させるように設計することができる。当業者であれば認識すると考えられるように、一般に、大きな増幅産物よりは比較的小さなサイズの増幅産物を作製して分析するのが望ましい。
【0077】
上文で詳述したように、本発明の方法は部分的メチル化が存在するメチル化されたDNA標的を求めて定量的に(又は定性的に)スクリーニングする確実で正確な手段を提供する。これが可能になるのは、対象の所与の領域について潜在的な部分的メチル化パターンすべてを検出するように設計されているプローブ又はプローブのプールの設計及び適用のおかげである。この種のプローブの不均一なプールを使用すれば、スクリーニングされているDNA試料中に存在する部分的にメチル化された形態のDNAの全範囲に確かに効果的にハイブリダイズし、その検出が可能になることがさらに確定されている。
【0078】
したがって、「プローブ」への言及は、ヌクレオチドの配列、又はその機能的誘導体若しくは類似体を含む任意の分子であって、その機能には前記ヌクレオチド配列の少なくとも1つの領域と標的核酸分子、特に潜在的な部分的メチル化を受けた領域とのハイブリダイゼーションが含まれる任意の分子への言及として理解されるべきである。核酸プローブは非核酸成分を含むことができる。具体的には、核酸プローブは、蛍光タグなどの検出手段又は分子の検出若しくは固定化などの分子の機能を促進する何か他の成分も含む。「検出手段」への言及は、プローブの検出を可能にする任意の手段の組込みへの言及として理解されるべきである。検出手段は定性的又は定量的検出を促進することができるが、定量的検出が特に有用である。検出手段はフルオロフォア又は放射性同位元素などの検出可能部分又は作用剤の形態をとることができる。代わりに、検出手段は、磁気ビーズ又はビオチン−ストレプトアビジン系を介してなどの、分析のための反応混合物からのプローブの物理的単離を可能にすることができる。
【0079】
本発明をいかなる点でも限定せずに、個々のプローブ成分は、すべて同じ検出剤(例えば、フルオロフォア)で標識することが可能である、又はそれぞれのプローブ成分は異なる薬剤(例えば、異なる発光波長フルオロフォア)で標識することが可能である。開示されている例は、すべてのプローブ成分が同じフルオロフォアで標識されるように縮重プローブ混合物を使用し、したがって、結合する(8つの)縮重プローブのうちのいずれか1つ又は複数はリアルタイムPCRにおいて陽性シグナルを発することになる。標的領域にわたる部分的メチル化の正確なレベルは調べてはいない。代わりのアプローチは、異なるフルオロフォアを(8つの)プローブのそれぞれに結合させ、検出された波長(複数可)に基づいてメチル化されている(又はされていない)塩基を区別することである。このアプローチは、例えば、部分的メチル化が初期がんの特長であり、完全メチル化が後期がんの特長であるならば、がん進行度分類のための情報価値があることになる。現在のリアルタイムPCR装置は6つの異なるフルオロフォアまで検出することが可能であるが、1つの試料中の複数の特長を調べるには他の技法が利用可能である(例えば、ビーズベースの蛍光ソーティング)。そのような場合、それぞれのプローブは独立して識別できるビーズに結合させることができるであろう。
【0080】
例えば、本発明は、この実施形態を実施するために例えばTaqMan(Hollandら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88、7276〜7280、1991;Leeら、Nucleic Acid Res.21、3761〜3766、1993)などのリアルタイム定量的形態のPCRの使用を包含する。例えば、Eadsら、Nucl.Acids Res.28:E32、2000のMethyLight法は、改変されたTaqMan加水分解−プローブアッセイを使用してCpGジヌクレオチドのメチル化を検出する。基本的に、この方法は、核酸試料を亜硫酸水素塩で処理し、増幅反応、例えば、PCRを使用して、新生物細胞においてメチル化されているが対照試料においてはメチル化されていない1つ又は複数のCpGジヌクレオチドを含む核酸を増幅させることを含む。増幅反応は3つのオリゴヌクレオチド、対象の領域に隣接しているフォワード及びリバースプライマー並びに2つのプライマー間の1つ又は複数のメチル化されたCpGジヌクレオチドの部位にハイブリダイズするプローブの存在下で実施される。プローブは5’蛍光レポーターと3’クエンチャーで二重に標識されている(又は、逆もまた同じである)。プローブが無傷のとき、クエンチャー色素はその近接のせいでレポーターの蛍光を吸収する。PCR産物へのアニーリングに続いて、プローブは、例えば、Taq DNAポリメラーゼの5’から3’エキソヌクレアーゼ活性により切断される。この切断によりレポーターがクエンチャーから放出され、それによって、蛍光シグナルが増加し、これを使用して最初のテンプレートメチル化レベルを評価することが可能である。突然変異していない核酸(すなわち、メチル化された核酸)に選択的にハイブリダイズするプローブ又はプライマーを使用することにより、メチル化レベルを、例えば、標準曲線を使用して決定する。
【0081】
代わりに、切断を必要とする標識されたプローブを使用するのではなく、例えば、分子ビーコンなどのプローブが使用される(例えば、Mhlanga and Malmberg、Methods 25:463〜471、2001参照)。分子ビーコンは、ステム−ループ構造を有する一本鎖核酸分子である。ループ構造は新生物試料においてはメチル化されているが対照試料ではメチル化されていない1つ又は複数のCpGジヌクレオチドを囲む領域に相補的である。ステム構造は、プローブ(ループ)のどちら側にもある互いに相補的な2つの「アーム」をアニールすることにより形成される。蛍光部分は1つのアームに結合しており、分子ビーコンが標的配列に結合していないときはいかなる検出可能な蛍光をも抑制するクエンチング部分はもう一方のアームに結合している。ループ領域がその標的核酸に結合すると、アームは分離されて蛍光が検出可能になる。しかし、わずか1つの塩基ミスマッチでもあれば試料中で検出される蛍光のレベルを著しく変えてしまう。したがって、特定の塩基の存在又は非存在は検出される蛍光のレベルによって決定される。そのようなアッセイは核酸中での1つ又は複数の突然変異していない部位(すなわち、メチル化されたヌクレオチド)の検出を促進する。
【0082】
蛍光的に標識されたロックド核酸(LNA)分子又は蛍光的に標識されたタンパク質核酸(PNA)分子はヌクレオチド違いの検出に有用である(例えば、Simeonov and Nikiforov、Nucleic Acids Research、30(17):1〜5、2002に記載されている)。LNA及びPNA分子は、核酸、特に、DNAに高親和性で結合する。LNA又はPNAプローブにコンジュゲートされたフルオロフォア(特に、ローダミン又はヘキサクロロフルオレセイン)は、プローブが標的核酸にハイブリダイズすると著しく大きなレベルで蛍光を発する。しかし、蛍光の増加のレベルは、わずか1つのヌクレオチドミスマッチがあるときには同じレベルにまで増強されない。したがって、試料中で検出される蛍光の程度が、CpGジヌクレオチド中でのメチル化されたシトシンの存在下でなどの、LNA又はPNAプローブと標的核酸の間のミスマッチの存在を示す。蛍光的に標識されたLNA又はPNA技術を使用して、例えば、当技術分野で公知の及び/又は本明細書に記載される増幅法を使用して予め増幅されている核酸中での少なくとも一塩基変化を検出することが好ましい。
【0083】
当業者には明らかになるように、LNA又はPNA検出技術は、Orumら、Clin.Chem.45:1898〜1905、1999に記載されている通りに、LNA又はPNAプローブを固体支持体に固定化することによる1つ又は複数のマーカーのハイスループットな検出に適している。
【0084】
メチル化依存性配列違いは蛍光ベースの定量的PCR(リアルタイム定量的PCR、Heidら、Genome Res.6:986〜994、1996;Gibsonら、Genome Res.6:995〜1001、1996)に基づく方法(例えば、「TaqMan(登録商標)」及び「Lightcycler(登録商標)」技術)により検出されることが好ましい。TaqMan(登録商標)及びLightcycler(登録商標)技術では、配列識別は2つのステップ:(1)増幅ステップ、又は(2)蛍光検出ステップのうちのいずれか又は両方で行うことが可能である。FRETハイブリダイゼーションの場合には、Lightcycler(登録商標)上のプローブフォーマット、FRETオリゴヌクレオチドのうちのいずれか又は両方を使用すれば配列違いを識別することが可能である。本明細書のすべての発明の実施形態において用いられる増幅過程は、蛍光ベースのリアルタイム定量的PCR(Heidら、Genome Res.6:986〜994、1996)の増幅過程であり、二重標識された蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(TaqMan(登録商標)PCR、ABI Prism 7700 Sequence Detection System、Perkin Elmer Applied Biosystems、Foster City、Californiaを使用して)を用いるのが最も好ましい。
【0085】
一実施形態では、検出手段は蛍光レポーター分子であり、加水分解プローブであればより好ましい。「加水分解プローブ」への言及は、二重標識化TaqMan(登録商標)オリゴヌクレオチドへの言及として理解されるべきである。本発明をいかなる一つの理論又は作用様式にも限定せずに、オリゴヌクレオチドの5’末端は蛍光レポーター分子で標識され、3’末端はクエンチャー分子で標識される。プローブの配列は増幅された標的分子中の対象の領域に特異的である。加水分解プローブは、配列の長さが5’フルオロフォアと3’クエンチャーを蛍光を抑制するくらいすぐ近位に置くように設計されている。
【0086】
加水分解プローブは、PCR増幅プライマーの結合部位間で対象の領域に結合するように設計されている。PCRサイクルの伸長期中、Taq DNAポリメラーゼはPCRプライマーの下流で相補鎖を合成する。伸長が結合している加水分解プローブに到達すると、Taq DNAポリメラーゼの5’−3’エキソヌクレアーゼ活性が加水分解プローブを分解する。プローブの切断により蛍光レポーター分子とプローブの残り(及びしたがってクエンチャー)が分離され、レポーター分子を発光させる。Taq DNAポリメラーゼは新生鎖の残りを合成し続け、したがって、プローブのハイブリダイゼーションはPCR反応を阻害しない。引き続くPCRサイクルと共に、放出される蛍光レポーター、したがって、蛍光の量は累積的に増加する。適切なレポーター分子及びクエンチャー分子の例は、5’蛍光レポーター色素6FAM(「FAM」;2,7ジメトキシ−4,5−ジクロロ−5−カルボキシ−フルオレセイン)、及びTET(6−カルボキシ−4,7,2’,7’−テトラクロロフルオレセイン);並びに3’クエンチャー色素TAMRA(6−カルボキシテトラメチルローダミン)である(Livakら、PCR Methods Appl.4:357〜362、1995;Gibsonら、Genome Res.6:995〜1001、1996;Heidら、Genome Res.6:986〜994、1996)。
【0087】
したがって、対象の核酸標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その核酸標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)核酸試料を亜硫酸水素塩薬剤に接触させてメチル化されていないシトシン残基をウラシルに変換するステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の核酸試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたメチル化特異的フォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数の加水分解プローブであって、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズする加水分解プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法が提供される。
【0088】
一実施形態では、前記核酸はDNAである。
【0089】
別の実施形態では、前記亜硫酸水素塩薬剤は、亜硫酸水素ナトリウム又は亜硫酸水素アンモニウムなどの亜硫酸水素塩である。
【0090】
さらに別の実施形態では、前記DNAはIKZF1遺伝子である。
【0091】
本発明のプローブは、少なくとも2つの異なるメチル化パターンを示すDNA配列に1回の反応内でハイブリダイズできるように設計されている。例えば、プローブは完全にメチル化された配列に及び1つ又は複数の部分的にメチル化された配列にハイブリダイズすることができる。別の例では、プローブは、少なくとも2つの異なる部分的にメチル化された形態のDNA配列を検出することができる。本発明の方法が完全にメチル化された形態と部分的にメチル化された形態の両方を示すDNA標的のメチル化を検出する正確で再現性のある手段を提供することを目的とする限り、この検出方法は、部分的にメチル化された形態を示す、又は示すと考えられているDNA配列の1つの分離した領域にプローブを集中させるように設計されていることは理解されるべきである。しかし、当業者であれば、DNA標的はDNA配列のうちプローブが標的とする領域以外の領域で部分的メチル化パターンも示すことがあることは理解すると考えられる。したがって、本方法は、DNA標的の他のいかなる領域でもなく、プローブが向けられているDNA領域で部分的メチル化を検出し評価することに限定されていることは理解されるべきである。したがって、特定の遺伝子標的をスクリーニングしている限り、本発明の方法は、プローブが向けられている部位で部分的メチル化を示す遺伝子の部分的にメチル化された形態すべてを検出するように設計されている。しかし、対象遺伝子がその配列に沿って他の部位で部分的メチル化も示すことができる限り、これらの部分的にメチル化された形態は、プローブがこれらのメチル化部位に向けられていなければ検出されないことになる。しかし、潜在的に部分的メチル化を受けた1つよりも多い領域が対象である限りでは、これらの領域が増幅プライマー対間に位置している限り、本方法は複数のそのような領域に向けられているプローブの使用を含むように構成させることが可能であることも当業者であれば認識するであろう。
【0092】
「前記領域の」少なくとも2つの「異なるメチル化パターン」にハイブリダイズする対象プローブ(複数可)への本明細書での言及は、本発明の方法において使用されるプローブはすべて同じDNA配列領域にハイブリダイズするように設計されていることを意味すると理解されるべきである。しかし、このDNA配列領域は、メチル化されているが、完全なメチル化又は一定範囲の部分的にメチル化された形態のいずれかを示すことがあり、これは「異なるメチル化パターン」又は「差次的メチル化」と呼ばれる。この領域に存在するメチル化されたCpGジヌクレオチドの数が増加するに従って、潜在的に異なる部分的にメチル化されたパターンの数は増加する。例えば、及び前述のように、Chr7:50304323〜50304349での完全にメチル化された形態のIKZF1に加えて、6つの部分的にメチル化された形態及び完全に非メチル化形態を含め、増幅プライマー間に7つの異なるメチル化パターンが存在する。本発明の方法は、対象のDNA標的の差次的にメチル化された形態すべての検出を可能にするように設計されていたが、状況の環境に応じて、特定のDNA標的のすべてではなく一部の部分的メチル化形態のみを求めてスクリーニングを試みてもよい。例えば、2つの優勢な部分的にメチル化された形態が存在することが知られていれば、この2つのみを求めてのスクリーニングは診断精度を十分に改善することができる。この評価を行いプローブセットを適切に設計することは十分に当業者の技能の範囲内である。
【0093】
したがって、別の実施形態では、本発明は、対象の核酸標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その核酸標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)核酸試料を、メチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の試料を
(a)部分的シトシンメチル化を受け修飾された領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の完全及び部分的メチル化パターンすべてにハイブリダイズし、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法を対象とする。
【0094】
一実施形態では、前記DNA標的は遺伝子標的であり、BCAT1、IKZF1、IRF4、GRASP、CAHM、SOX21、SLC6A15、NPY、ST8SIA1、ZSCAN18、COL4A2、DLX5、FGF5、FOXF1、FOXI2又はSDC2であることが好ましく、IKZF1であることが好ましい。
【0095】
別の実施形態では、前記薬剤は亜硫酸水素ナトリウム又は亜硫酸水素アンモニウムなどの亜硫酸水素塩である。
【0096】
さらに別の実施形態では、前記プライマーはメチル化特異的プライマーである。
【0097】
さらに別の実施形態では、前記プローブは加水分解プローブである。
【0098】
したがって、遺伝子標的のシトシンメチル化を検出するための方法であって、その遺伝子標的は部分的シトシンメチル化を受けた領域により特徴付けることができ、
(i)DNA試料を亜硫酸水素ナトリムに接触させてメチル化されていないシトシン残基をウラシルに変換するステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA試料を
(a)修飾された遺伝子の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたメチル化特異的フォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数の加水分解プローブであって、一括して、前記領域の少なくとも2つの領域の異なるメチル化パターンにハイブリダイズする、加水分解プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記DNA標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法が提供される。
【0099】
さらに別の実施形態では、前記遺伝子はIKZF1であり、前記プライマーは配列:
配列番号3(フォワードプライマー):Chr7: 50304271 GACGACGTAT TTTTTTCGTG TTTC 50304294
配列番号4(リバースプライマー):Chr7: 50304365 GCGCACCTCT CGACCG 50304350
又は実質的に類似した配列を含み、前記プローブは配列:
配列番号5:Chr7:50304323 TTTGTATCGG AGTAGCGATT CGGGAGG50304349
配列番号6:Chr7:50304323 TTTGTATCGG AGTAGCGATT TGGGAGG50304349
配列番号7:Chr7:50304323 TTTGTATCGG AGTAGTGATT CGGGAGG50304349
配列番号8:Chr7:50304323 TTTGTATTGG AGTAGCGATT CGGGAGG50304349
配列番号9:Chr7:50304323 TTTGTATCGG AGTAGTGATT TGGGAGG50304349
配列番号10: Chr7:50304323 TTTGTATTGGAGTAGCGATT TGGGAGG 50304349
配列番号11: Chr7:50304323 TTTGTATTGGAGTAGTGATT CGGGAGG 50304349
配列番号12: Chr7:50304323 TTTGTATTGGAGTAGTGATT TGGGAGG 50304349
又は実質的に類似した配列を含む。
【0100】
さらに別の実施形態では、前記プライマーは配列番号3及び配列番号4の配列又は実質的に類似した配列を含み、前記プローブは配列番号19の配列又は実質的に類似した配列を含む。
【0101】
さらに別の実施形態では、前記プライマーは配列番号3及び配列番号4の配列又は実質的に類似した配列を含み、前記プローブは配列番号20の配列又は実質的に類似した配列を含む。
【0102】
さらに別の実施形態では、前記メチル化特異的増幅アッセイは配列番号1の相補体である亜硫酸水素塩変換DNA鎖に向けられており、前記プローブは配列番号21若しくは配列番号22の配列又は実質的に類似した配列を含む。
【0103】
さらに別の実施形態では、前記プライマーは配列番号3及び配列番号4の配列又は実質的に類似した配列を含み、プローブセットは配列番号23〜30又は実質的に類似した配列のうちの1つ又は複数を含む。
【0104】
さらなる実施形態では、前記メチル化特異的増幅アッセイは配列番号1の相補体である亜硫酸水素塩変換DNA鎖に向けられており、前記プライマーセットには配列番号47及び配列番号48の配列を含むプライマーが含まれ、前記プローブセットは配列番号31〜38及び/又は配列番号39〜46の配列を含む。
【0105】
さらに別の実施形態では、前記プローブは、一括して、前記領域の完全及び部分的メチル化パターンすべてにハイブリダイズする。さらに別のさらなる実施形態では、前記プライマーセットには配列番号49〜62及び配列番号63〜76配列又は実質的に類似した配列のうちの1つ又は複数を含むプライマーが含まれる。
【0106】
さらに別の実施形態では、前記プライマーセットには配列番号77及び配列番号78配列又は実質的に類似した配列のうちの1つ又は複数を含むプライマーが含まれる。
【0107】
対象のプライマーは上に開示される配列に一致していてもよく、又は実質的に類似していてもよいことは理解されるべきである。代わりに、これらの配列又は実質的に類似した配列はもっと大きなプライマー分子内のサブ領域を表していてもよい。「実質的に類似した配列」への言及は、配列にある小さな違いを示すことがあるにもかかわらず、それが実質的に類似している配列と同じDNA標的を増幅するように機能する配列への言及として理解されるべきである。
【0108】
本発明をいかなる一つの理論又は作用様式にも限定せずに、IKZF1の以下のDNA領域:
配列番号1(IKZF1診断用領域−野生型DNA):
Chr7: 50304271 GACGACGCACCCTCTCCGTG TCCCGCTCTG CGCCCTTCTG CGCGCCCCGC
TCCCTGTACC GGAGCAGCGA TCCGGGAGGC GGCCGAGAGGTGCGC 50304365
という文脈では、以下のシトシンは結腸由来新生物DNA(Chr7、GRCh38/Hg38座標):50304273、50304276、50304287、50304294、50304301、50304311、50304313、50304318、50304330、50304338、50304343、50304350、50304354、50304363、50304365において高頻度でメチル化されていることが確定されている。本発明のこの実施形態は、シトシン残基50304330、50304338及び50304343上での部分的メチル化を求めてスクリーニングすることを目的とする。血漿から単離され回収された亜硫酸水素塩変換DNAにおけるIKZF1遺伝子座のこれら3つのCpG部位にわたるメチル化の任意の組合せを検出することを使用すれば、結腸直腸がんに対する診断感度を高めることが可能である。この実施形態に従って、DNAを亜硫酸水素ナトリウムで処理するとシトシンはウラシルに変換されるが、5’メチルシトシン残基は影響を受けないままである。その疾患特異的メチル化がシトシン残基50304273、50304276、50304287、50304294、50304350、50304354、50304363及び50304365すべてに必要とされる配列番号2に特異的にプライムするPCRオリゴヌクレオチドプライマーが設計される(配列番号3及び4)。3つのシトシン残基50304330、50304338及び50304343のいずれか(又はいずれでもない)のメチル化は縮重加水分解プローブ混合物(配列番号5〜12)(例えば、TaqMan縮重プローブ混合物)を使用して検出される。
【0109】
本発明のプローブは、検出しようとしている部分的に及び完全にメチル化された配列の範囲に「選択的に」結合する。「選択的に」は、使用するために選択されるコホートのプローブが、個々に又は個々のプローブのハイブリダイゼーションの無差別性のおかげで、DNA標的のうち検出しようとしている部分的にメチル化された形態の範囲に結合することができることを意味する。本発明をいかなる一つの理論又は作用様式にも限定せずに、プローブにより調べられることになるDNA領域の配列は、メチル化されたCpGジヌクレオチドの位置のように、当業者には公知であろう。この配列情報に基づいて、及びIKZF1との関連で前に例証されているように、考えられる完全及び部分的メチル化パターンの全領域を予測することが可能である。次に、それぞれが個々に独特なメチル化パターンに結合する又は無差別性を示して1つよりも多いメチル化パターンに結合することが可能なプローブを設計することができる。確定されてきたように、完全にメチル化された配列と部分的にメチル化された配列の間の違いがわずか1つのシトシン残基のメチル化の欠如である場合でも、完全にメチル化された配列に向けられたプローブは部分的にメチル化された配列には結合しない。しかし、不均一なプールのメチル化特異的プローブ又はメチル化されたシトシンと非メチル化シトシンの両方にわたって無差別に結合するように設計されているプローブのいずれかが増幅アッセイにおいて使用されるならば、対象の標的のメチル化に関連して正確な結果が得られることも確定されている。
【0110】
1つの特異的な完全に又は部分的にメチル化された配列パターンにハイブリダイズするように設計されているプローブは、当業者に周知である方法によって作製することが可能である。1つよりも多いメチル化パターンに結合することが可能である点で、無差別性を示すプローブとの関連では、この設計は当業者には公知であるいくつかの方法によって達成することも可能である。例えば、プローブ(5’−加水分解プローブなどの)中の1つ又は複数の塩基位置は独特ではないが2つの塩基、すなわち、シトシン又はチミジンの混合物である。1つのCpG部位のみがメチル化(又は非メチル化)について調べられるのであれば、そのような縮重オリゴヌクレオチドは2つの異なるオリゴヌクレオチド配列、例えば、−atCGat−及び−atTGat−の混合物であると考えられる。2つのCpG部位が調べられるのであれば、縮重オリゴヌクレオチドカクテルは4つの異なる配列の混合物になると考えられる。本明細書で提供されるIKZF1例は、3つのCpG部位の部分的メチル化が、8つの異なるオリゴヌクレオチド配列(配列番号5〜12)からなる縮重5’−加水分解オリゴヌクレオチドプローブ混合物を使用することにより調査される例である。混合物はChr7座標50304330、50304338及び50304343に属する3つのCpG部位内のメチル化の考えられる組合せすべてを検出することが可能である。この例はIKZF1メチル化アッセイの診断感度を改善する。
【0111】
前で詳述したように、プローブは、TaqMan、Scorpion、Beacon、等などの検出プローブのいかなる変化でも可能である。プローブ混合物は、
(i)1つの合成における8倍重複(合成中にCとTを混ぜることにより);
(ii)3つの異なる2倍重複プローブ及び混合された;
(iii)1つの2倍及び1つの4倍重複プローブ及び混合された;又は
(iv)8つの異なる独特のプローブ及び混合された
として合成することができる(IKZF1例という文脈において)。
【0112】
プローブは、それぞれの調査されたC/T塩基に脱塩基スペーサー(例えば、5−ニトロ−インドール又は3−ニトロ−ピロール)を有する、又はそれぞれの調査されたC/T塩基にイノシンを有する単一配列でも可能である。1つ又は複数の脱塩基スペーサー(複数可)を含有する単一配列「無差別」プローブのアニーリング温度は1つだけであると考えられるが、脱塩基スペーサー(複数可)含有プローブの融解温度は、すべての調査されたCpG部位上のメチル化を検出するプローブよりも有意に低いと考えられる。したがって、脱塩基スペーサー(複数可)を有する無差別プローブは、メチル化されたCpG部位のみを標的とするプローブよりも有意に長い必要があると考えられる。イノシンはいかなる塩基とも塩基対合を可能にするが、優先度はC>A>G>Tの順である。この配列はプローブにとっての反対鎖にあるので、この場合プローブはA(=T、メチル化されていない)又はG(=C、メチル化された)にアニールすると考えられる。これらの選択肢は両方とも無差別なプローブほど特異的ではない。これらの選択肢は3位での4塩基のうちの1つへの対合を可能にするので、実際には64倍縮重(対8倍)であり、したがって、プライマーのメチル化特異性により大きく依存する。脱塩基スペーサー又はイノシン含有プローブは、8つのオリゴヌクレオチド成分の混合物ではなく、単一オリゴヌクレオチド成分であるという利点がある。
【0113】
プローブはそれぞれの潜在的な部分的にメチル化されたC位置にピリミジン(C又はT)類似体も有することがある。例えば、類似体、6H,8H−3,4−ジヒドロピリミド[4,5−c][1,2]オキサジン−7−オンはGともAとも(反対鎖中の2つの選択肢である)塩基対合する単一「塩基」である。ある研究によれば、前記類似物はA(=T=メチル化されていない)に対し60%優先度、G(=C=メチル化されている)に対して40%の優先度を有する(Hillら、Proc Natl Acad Sci USA.、95:4258〜4263、1998)。ここでの利点は、このプローブが8つの考えられるメチル化組合せすべてにおおよそ等しい親和性で結合する単一オリゴヌクレオチドであることである。個々のプローブ配列のいくつかは、シトシン塩基の代わりにアニーリング温度を下げるチミジンを含有することになるので、プローブ配列(複数可)のいくつかは低くなったアニーリング温度を埋め合わせるために長さを伸長する必要がある場合があることは認識されると考えられる。代わりのアプローチは、アニーリング温度を増加させる化学修飾(主溝結合塩基などの)を含むことになると考えられる。プローブの縮重位置(複数可)でのそれぞれの塩基の割合は必ずしも50/50である必要はないことも理解されるべきである。例えば、特定のC残基が本当のがん症例の80%においてメチル化されているが、本当のがん症例の20%においてはメチル化されていないことが確認されるならば、この位置に80%C及び20%Tを有するプローブを作製してメチル化発生率に適合させることができるであろう。
【0114】
当業者であれば認識すると考えられるように、及び前文で詳述したように、プローブ配列(複数可)は反対鎖にも同様にハイブリダイズするように設計することが可能である。反対鎖上でのこれらのプローブ配列設計は、部分的メチル化を調べるために、縮重位置にG又はA(又は上記のようにイノシン又は脱塩基スペーサー)を有すると考えられる。上記のピリミジン類似体はこの時点で、TにもCにも結合することになるプリン類似体、N6−メトキシ−2,6−ジアミノプリンに変化すると考えられる。
【0115】
本発明のプローブ及び/又はプライマーは、セルフプライムしないしプライマー二量体も形成しない(例えば、検出アッセイにおいて使用される別のプローブ又はプライマーと)ことを確定するためにも評価される。さらに、プローブ又はプライマー(又はその配列)は、それが標的核酸から変性する温度(すなわち、プローブ若しくはプライマーの溶融温度、すなわちTm)を決定するために評価されることが多い。Tmを推定するための方法は当技術分野では公知であり、例えば、Santa Lucia、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:1460〜1465、1995又はBreslauerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、83:3746〜3750、1986に記載されている。
【0116】
本発明のプローブ又はプライマーを生成する/合成するための方法は当技術分野では公知である。例えば、オリゴヌクレオチド合成はGait(Ed)(In:Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach、IRL Press、Oxford、1984)に記載されている。例えば、プローブ又はプライマーは生物学的合成により(例えば、核酸の制限エンドヌクレアーゼでの消化により)、又は化学的合成により入手することができる。短い配列(約100ヌクレオチドまで)では、化学的合成が好ましい。
【0117】
さらに長い配列では、例えば、Messing、Methods Enzymol、101、20〜78、1983により記載されている一本鎖DNAのためのM13の使用などの、分子生物学で用いられる標準複製法が有用である。オリゴヌクレオチド合成のための他の方法には、例えば、リン酸トリエステルとリン酸ジエステル法(Narang、らMeth.Enzymol 68:90、1979)及び支持体上での合成(Beaucage、らTetrahedron Letters 22:1859〜1862、1981)並びにホスホロアミド酸技法、Caruthers、M.H.、ら、「Methods in Enzymology」Vol.154、pp.287〜314(1988)、及び「Synthesis and Applications of DNA and RNA」S.A.Narang、編、Academic Press、New York、1987、及びそこに引用されている参考文献に記載されている他の方法が含まれる。ロックド核酸(LNA)を含むプローブは、例えば、Nielsenら、J.Chem.Soc.Perkin Trans.、1:3423、1997;Singh and Wengel、Chem.Commun.1247、1998に記載される通りに合成される。一方、ペプチド核酸(PNA)を含むプローブは、例えば、Egholmら、Am.Chem.Soc.、114:1895、1992;Egholmら、Nature、365:566、1993;及びOrumら、Nucl.Acids Res.、21:5332、1993に記載される通りに合成される。
【0118】
本発明のDNA又はRNA試料は、対象のメチル化を受けた領域に隣接するプライマーを使用して増幅される。前文で詳述したように、この「領域」は遺伝子の長さの小部分又はかなりの部分を包含するように選択することができる。後者の場合では、生じる増幅産物はかなり長いと考えられる。しかし、特定の実施形態では、領域は、1つ又は複数のCpGジヌクレオチドがクラスター化されている遺伝子のはるかに短いストレッチに対応することがある。この場合では、生じる増幅産物は著しく短いと考えられる。
【0119】
プライマーとプローブの標的DNAとの相互作用を促進することは任意の適切な方法によって実施することができる。それらの方法は当業者には公知であろう。この目的に向けて、プライマーとプローブは任意の適切な時点で反応チューブ内に入れることが可能であることは理解されるべきである。一般には最初の増幅サイクルの開始に先立って含めるが、1つ又は複数の追加のプライマーの取込みは最初の増幅サイクルに続いて実施してもよい。プライマーの取込みの様式は当業者が増幅反応をどのように実施しようとしているのかに依拠することになるが、一般には、使用の簡便さ及び汚染の回避のために単一のチューブ中で全反応を実施することができることが通常は望ましい。にもかかわらず、本発明のスッテプを達成する他のいかなる方法でも使用することが可能である。したがって、試料をプライマー又はアンチセンスオリゴヌクレオチドに「接触させること」への言及は、相互作用(例えば、ハイブリダイゼーション)が起こることができるようにプライマーと試料の混合を促進することへの言及として理解されるべきである。この目的を達成する手段は当業者には周知であると考えられる。
【0120】
前文で詳述したように、複数のメチル化されたDNA領域を増幅させることになる場合、当業者であれば多重化増幅反応を設計することができる。代わりに、それぞれが1つの独特なプライマー対を使用するいくつかの個々の増幅反応を実施することができる。これらの方法は、2つ若しくはそれよりも多い別々のメチル化領域を増幅している場合、又は1つよりも多い遺伝子のメチル化を分析することになる場合には適切になる。この場合、2つの遺伝子(BCAT1及びIKZF1などの)を分析しようとしているのであれば、例えば、亜硫酸水素ナトリウム変換後に、試料を2つのアリコートに分けてもよく、次にそれぞれのアリコートはその遺伝子の関連するメチル化配列領域に向けられたフォワード及びリバースプライマーの1つ又は複数のセットを使用して増幅される。代わりに、多重化反応は単一試料上で実施することが可能であり、1つの遺伝子の選択されたメチル化配列領域に向けられたプライマー対と加水分解プローブセットの使用、並びに別の遺伝子の選択されたメチル化配列領域に向けられたプライマーの別のセットと加水分解プローブセットの使用に関して反応は多重化されている。当業者にはよく知られていると考えられるように、多重化反応は、2つ又はそれよりも多いメチル化配列領域及び/又は2つ又はそれよりも多い遺伝子という文脈で、2つ、3つ又はそれよりも多いセットのプライマーと加水分解プローブを用いて実施するように設計することが可能である。多重化又はネステッド増幅反応を適切に設計することは十分に当業者の技能の範囲内であると考えられると理解されるべきである。
【0121】
本発明の増幅ステップは対象のDNA標的に沿ったハイブリダイズしたプライマーの伸長をもたらす。前文で詳述したように、ハイブリダイズした二重標識加水分解プローブの検出を成し遂げるのはプライマー伸長分子の生成である。これを成し遂げることが可能な手段は、増幅産物の生成により発生する検出手段出力は定性的に又は定量的に分析可能であり、後者が特に好ましい手段であるという事実と同様に、当業者には周知であると考えられる。この目的に向けて、プローブがハイブリダイズされているDNA配列に沿ってプライマーが伸長し、プローブに取って代わり、切断し又はさもなければプローブへの修飾を成し遂げ、このおかげでその検出手段が機能的(例えば、活性化される又は曝露される)になり、それによって定性的又は定量的手段により検出可能になってはじめてプローブの検出が成し遂げられることは理解されるべきである。
【0122】
この方法の好ましい適用は、疾患発症(新生物発生又はその素因などの)を診断する目的でメチル化レベルを評価することであるが、前記メチル化レベルの逆の変化の検出は、例えば、アデノーマ又は腺癌発症などの新生物状態を調節することを目的とする治療又は予防処置の有効性をモニターするためのある種の状況下では望ましい場合がある。例えば、メチル化レベルが上昇すると個体がアデノーマ又は腺癌発症により特徴付けられる状態を発症していることを示す場合、治療処置計画の開始に続いてメチル化レベルの減少についてのスクリーニングを利用すれば新生物細胞の排除に成功していることを示すことができる。別の例では、この方法を使用すれば、腫瘍の全周辺が切除されたかどうかを確定するために腫瘍摘出の周辺の組織を試験することが可能である。
【0123】
したがって、本方法は、疾患リスクの診断、予後、分類、予測、疾患再発の検出、いくつかの種類の新生物の処置の選択及び新生物のモニタリングにおいて使用することが可能である。原発性、転移性、及び再発性がんなどのいかなる進行段階のがんでも検出することが可能である。さらに、この方法はDNA及びRNAメチル化の分析が必要とされる他のいかなる文脈においても適用される。
【0124】
新生物発生を非限定的例として使用して、本発明は、哺乳動物(例えば、ヒト)が新生物を有するのかどうか、哺乳動物から採取した生体試料が新生物細胞又は新生物細胞由来のDNAを含有するかどうかを確定し、哺乳動物が新生物を発生しているリスク又は可能性を見積もり、抗がん処置の効力をモニターし、又はがんを抱えた哺乳動物において適切な抗がん処置を選択するための方法を提供する。そのような方法は、多くの新生物細胞が正常な細胞とは異なるメチル化状態を有すると確定されていることに基づいている。したがって、細胞が差次的にメチル化された配列を含有するかどうかを確定することにより、細胞が腫瘍性であることを確定することが可能である。
【0125】
本発明の方法を使用すれば、新生物を抱えていると分かっている若しくは疑われている個体、又はルーチンな臨床試験として、すなわち、新生物を抱えていると必ずしも疑われているわけではない個体において評価することが可能である。さらなる診断アッセイを実施すれば、個体において新生物の状態を確認することが可能である。
【0126】
さらに、本発明を使用すれば、処置過程の効力を評価することができる。例えば、抗がん処置の効力はがんを抱える哺乳動物において時間をかけてDNAメチル化をモニターすることにより評価することが可能である。例えば、処置前に、又はもっと早期に哺乳動物から採取された試料中のレベルと比べて、処置に続いて哺乳動物から採取された生体試料において関連する診断配列のいずれでもメチル化が減少している又は存在しなければ、効果的な処置であることを示している。
【0127】
したがって、本発明の方法は、1回限りの検査として又は疾患発症のリスクを抱えていると考えられている個体の継続的モニターとして又は治療若しくは予防処置計画の有効性のモニターとして有用である。これらの状況では、生体試料のいずれか1つ又は複数のクラスにおいてメチル化レベルの調節をマッピングすることは、個体の状態又は現在使用されている治療若しくは予防計画の有効性についての価値ある指標となる。したがって、本発明の方法は、その正常なレベルと比べて、又は前記個体の生体試料から確定される1つ若しくは複数の早期のメチル化レベルと比べて、個体におけるメチル化レベルの増加又は減少についてのモニタリングにまで及ぶと理解されるべきである。
【0128】
関係する態様では、完全と部分的メチル化の両方を正確に検出するための方法を開発することに加えて、本発明者らは、診断プロトコールという文脈において、及び一般に受け入れられた定説に反して、患者又は他の試料においてあらゆる形態のメチル化についてスクリーニングするほうが、完全なメチル化のみについてスクリーニングするよりは実際に感度の良い結果を出すことが可能であることを思いがけず確定した。部分的メチル化についてスクリーニングすれば診断結果が事実上曖昧になるという以前の懸念は、本発明の方法を使用した場合にはいかなる問題も生じないことが明らかにされた。実際、診断結果の感度は改善される。
【0129】
したがって、別の態様では、本発明は、対象の核酸標的のシトシンメチル化の調節により特徴付けられる患者における状態を診断する又はモニターするための方法であって、上記標的は部分的メチル化を受けた領域により特徴付けられ、
(i)前記患者由来の核酸試料を、メチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤に接触させるステップと、
(ii)ステップ(i)のDNA形態の核酸試料を
(a)修飾された遺伝子の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、並びに
(b)部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられている1つ又は複数のプローブであって、前記1つ又は複数のプローブは、一括して、前記領域の少なくとも2つの異なるメチル化パターンにハイブリダイズし、前記プローブに検出手段が組み込まれている、プローブ
に接触させるステップと、
(iii)ステップ(ii)のDNA試料を増幅させ、対象の前記標的に沿った前記プライマーの伸長が前記ハイブリダイズしたプローブの検出を成し遂げるステップと、
(iv)ステップ(iii)の検出出力を定性的に又は定量的に分析するステップと
を含む方法を対象とする。
【0130】
一実施形態では、前記標的はDNA又はRNAであり、プロモーター領域であることが好ましい。
【0131】
別の実施形態では、前記状態は新生物状態である。
【0132】
別の実施形態では、前記DNA又はRNA標的はBCAT1、IKZF1、CAHM、GRASP、IRF4、SOX21、SLC6A15、NPY、ST8SIA1、ZSCAN18、COL4A2、DLX5、FGF5、FOXF1、FOXI2又はSDC2などの遺伝子である。
【0133】
さらに別の実施形態では、前記薬剤は亜硫酸水素ナトリウム又は亜硫酸水素アンモニウムなどの亜硫酸水素塩である。
【0134】
さらに別の実施形態では、前記プローブは加水分解プローブである。
【0135】
さらなる態様では、対象の核酸標的の領域のシトシンメチル化を検出するための診断キットであって、
(i)部分的シトシンメチル化を受けた前記核酸領域の、1つ又は複数の完全に又は部分的にメチル化された形態のDNA形態であって、メチル化されていないシトシン残基が修飾されているDNA形態を増幅させるように設計されたフォワード及びリバースプライマー、
(ii)少なくとも2つの異なるメチル化パターンに一括してハイブリダイズすることができる、部分的シトシンメチル化を受けた前記領域に向けられた1つ又は複数のプローブ
を含むキットが提供される。
【0136】
一実施形態では、前記プライマーはメチル化特異的プライマーである。
【0137】
別の実施形態では、前記プローブは加水分解プローブである。
【0138】
さらに別の実施形態では、前記薬剤はメチル化されていないシトシン残基を修飾する薬剤である。
【0139】
さらに別の実施形態では、前記薬剤は亜硫酸水素ナトリウム又は亜硫酸水素アンモニウムなどの亜硫酸水素塩である。
【0140】
さらなる実施形態では、前記キットはDNA増幅及び/又は検出を成し遂げる試薬をさらに含む。
【0141】
対象の前記遺伝子がIKZF1である限り、前記プライマー及びプローブは、IKZF1遺伝子のChr7:503043230〜50304349、Chr7:50303300〜50304923又はChr7:50399869〜50400702領域のうちの1つ又は複数のメチル化を検出することを目的とする。
【0142】
さらなる実施形態では、プライマーセットには、
(i)配列番号3及び配列番号4配列若しくは実質的に類似した配列、
(ii)配列番号49〜62及び配列番号63〜76配列若しくは実質的に類似した配列、又は
(iii)配列番号77及び配列番号78配列若しくは実質的に類似した配列
のうちの1つ又は複数を含むプライマーが含まれる。
【0143】
別のさらなる実施形態では、プローブセットには、
(i)配列番号5〜12配列若しくは実質的に類似した配列、
(ii)配列番号19配列若しくは実質的に類似した配列、
(iii)配列番号20配列若しくは実質的に類似した配列、又は
(iv)配列番号23〜30配列若しくは実質的に類似した配列
のうちの1つ又は複数を含むプローブが含まれる。
【0144】
前記キットが、配列番号1領域の相補体である亜硫酸水素塩変換DNA鎖を増幅させることを目的とするさらに別の実施形態では、前記プライマーセットには配列番号47及び配列番号48配列又は実質的に類似した配列のうちの1つ又は両方を含むプライマーが含まれる。
【0145】
前記キットが、配列番号1領域の相補体である亜硫酸水素塩変換DNA鎖を増幅させることを目的とするさらに別の実施形態では、前記プローブセットには、
(i)配列番号21配列若しくは実質的に類似した配列、
(ii)配列番号22配列若しくは実質的に類似した配列、
(iii)配列番号31〜38配列若しくは実質的に類似した配列、及び/又は配列番号39〜46配列若しくは実質的に類似した配列
のうちの1つ又は複数を含むプローブが含まれる。
【0146】
本発明は以下の非限定的実施例を参照することによりさらに説明される。
【0147】
実施例1−結腸直腸がん患者の循環中での部分的にメチル化されたIKZF1 DNAの同定
血漿は、134人のがん患者を含む2,109人の結腸内視鏡検査被検者から採取した。無細胞DNAはQS CNA 4mL血漿キット(Qiagen)を使用して製造業者が推奨する通りにQIASymphony上で抽出した。こうして得られたDNAは亜硫酸水素塩変換され、EpiTect Fast及びEpiTect Plusキットを使用して製造業者(Qiagen)が推奨する通りにQIACubes上で精製した。回収した亜硫酸水素塩変換DNAを多重化リアルタイムPCRアッセイにおいて、BCAT1亜硫酸水素塩変換及びメチル化特異的オリゴ(chr12:24949058〜24949159上に存在する102nt増幅産物を標的とする配列番号13、14及び15)及び第7染色体上の対照DNA遺伝子、ACTBを標的とした亜硫酸水素塩変換特異的オリゴヌクレオチド配列番号16、17、18に加えて、オリゴヌクレオチド配列番号3、配列番号4及び配列番号5を含むマスターミックスQuantiTect NoROXを使用して製造業者が推奨する通りに3連で入力として分析した。
【0148】
メチル化されたBCAT1及びIKZF1の検出は、以下のLC480IIサイクリング条件:1×[95℃、15分]、50×[95℃、15秒;62℃、40秒(捕捉、FAM、HEX、TexRed)]、1×[40℃、10秒、及び保持]を使用して、30μLの全PCR反応において実施した。
配列番号1(IKZF1診断領域−野生型DNA)
Chr7: 50304271 GACGACGCACCCTCTCCGTG TCCCGCTCTG CGCCCTTCTG CGCGCCCCGCTCCCTGTACC GGAGCAGCGA TCCGGGAGGC GGCCGAGAGGTGCGC 50304365
配列番号2(PCR増幅後、亜硫酸水素塩変換され完全にメチル化されたバージョンの配列番号1)
Chr7: 50304271 GACGACGTATTTTTTTCGTG TTTCGTTTTG CGTTTTTTTG CGCGTTTCGC
TTTTTGTATC GGAGTAGCGA TTCGGGAGGC GGTCGAGAGGTGCGC(G) 50304365

配列番号3 Chr7: 50304271 GACGACGTATTTTTTTCGTG TTTC 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号4 Chr7: 50304365 GCGCACCTCTCGACCG 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号5 Chr7: 50304323 TTTGTATCGGAGTAGCGATT CGGGAGG 50304349 (IKZF1プローブA)
配列番号6 Chr7: 50304323 TTTGTATCGGAGTAGCGATT TGGGAGG 50304349 (IKZF1プローブB)
配列番号7 Chr7: 50304323 TTTGTATCGGAGTAGTGATT CGGGAGG 50304349 (IKZF1プローブC)
配列番号8 Chr7: 50304323 TTTGTATTGGAGTAGCGATT CGGGAGG 50304349 (IKZF1プローブD)
配列番号9 Chr7: 50304323 TTTGTATCGGAGTAGTGATT TGGGAGG 50304349 (IKZF1プローブE)
配列番号10 Chr7: 50304323 TTTGTATTGGAGTAGCGATT TGGGAGG 50304349 (IKZF1プローブF)
配列番号11 Chr7: 50304323 TTTGTATTGGAGTAGTGATT CGGGAGG 50304349 (IKZF1プローブG)
配列番号12 Chr7: 50304323 TTTGTATTGGAGTAGTGATT TGGGAGG 50304349 (IKZF1プローブH)
配列番号13: Chr12:24949058 GTTTTTTTGTTGATGTAATT CGTTAGGTC 24949086 (BCAT1 FWD)
配列番号14: Chr12:24949159 CAATACCCGAAACGACGACG 24949140 (BCAT1 REV)
配列番号15: Chr12:24949094 TTCGTCGCGAGAGGGTCGGTT 24949114 (BCAT1プローブ)
配列番号16: Chr7:5532633 GGAGTTTTTGTTTTTTGGTT AGTTG 5532609 (ACTB FWD)
配列番号17: Chr7:5532545 CAAAATAAAATACAAAACAA ACCTAATCC 5532573 (ACTB REV)
配列番号18: Chr7:5532607 ATGGAGGTTTAGTGGTAATA TAGGTTTTGT TTGG 5532574 (ACTBプローブ)
134個のがんのうち、74個及び62個はそれぞれBCAT1及びIKZF1メチル化について陽性であった。BCAT1メチル化陽性であるがIKZF1メチル化陰性であったPCR反応由来のPCR産物は希釈し、配列番号3及び配列番号4プライマーのみを含むSYBR−グリーンIKZF1アッセイを使用して再増幅した。生じたPCR産物は、約100bpのPCR産物が生成されたかどうかを明らかにするためにアガロースゲル上に流し、これが生成されていればメチル化されたIKZF1 DNAが存在することが確認されると考えられ、しかし、その存在は、「完全にメチル化された」IKZF1プローブ(配列番号5)の下で3つのCpG部位を含めて、完全にメチル化されたIKZF1標的を必要とする多重化PCRアッセイのせいで最初は検出されなかったと考えられる。実施例1において生じたアガロース分離されたPCR産物は精製され塩基配列決定され、メチル化されていないCpG残基50304330、50304338及び50304343の2つの場合を含めていくつかのPCR産物において部分的メチル化の証拠が明らかになり、これは「完全メチル化」を必要とするIKZF1プローブ(配列番号5)が他の点では結腸内視鏡検査で確認されたがんにおいて偽陰性IKZF1結果を生じた理由を説明すると考えられる。部分的メチル化はIKZF1増幅産物において他のCpG部位でも観察された、図1
【0149】
結論
IKZF1加水分解プローブ領域における部分的メチル化の明確な証拠は、塩基配列決定された増幅産物の3つについて得られた。これらのうちの2つは結腸内視鏡検査で確認されたがんであり、完全にメチル化されたIKZF1 DNAを検出するように設計されたプローブを用いた最初のIKZF1リアルタイムPCRアッセイでは陰性であった。
【0150】
実施例2−結腸直腸がん患者における部分的メチル化IKZF1の検出
標的IKZF1増幅産物配列(配列番号2)に包埋された部分的にメチル化されたCpG部位の検出に続いて、ゲノム座標Chr7:50304330、Chr7:50304338及びChr7:50304343に対応する3つの残基位置のそれぞれにシトシン又はチミジン塩基のどちらかを有する8つの異なるオリゴヌクレオチド配列(配列番号5〜12)からなる「縮重」IKZF1 5’−加水分解プローブ混合物を作製した。オリゴヌクレオチド混合物は、2つの塩基の等しい混合物をそれぞれの位置に組み込むことによりオリゴヌクレオチドプローブ作製において得られた。
【0151】
DNAは、実施例1に記載される2,109患者のサブコホート(n=308)由来の追加の4mL血漿から抽出した。回収した亜硫酸水素塩DNAを多重化リアルタイムPCRアッセイにおいて、オリゴヌクレオチド配列番号3〜18を含むマスターミックスQuantiTect NoROXを使用して製造業者が推奨する通りに3連で入力として分析した。メチル化されたBCAT1及び完全にメチル化された/部分的にメチル化されたIKZF1の検出は、以下のLC480IIサイクリング条件:1×[95℃、15分]、50×[95℃、15秒;62℃、40秒(捕捉、FAM、HEX、TexRed)]、1×[40℃、10秒、及び保持]を使用して、30μLの全PCR反応において実施した。PCR結果は、完全にメチル化されたBCAT1及びIKZF1増幅産物のみを標的とする多重化PCRを使用する以前のデータセットと比べた。
【0152】
【表1】
【0153】
結論
臨床患者試料で8倍縮重プローブを試験すると、結腸内視鏡検査で確認されたがん試料においてBCAT1に類似した陽性率が得られ、部分的メチル化に起因する患者偽陰性呼出しの問題が克服されていることを示している、表1。
【0154】
実施例3−代わりの5’−加水分解プローブ
修飾された塩基/塩基類似体を有する「縮重」プローブ
上記実施例2において使用された8つのプローブは、8つの不定にメチル化されたIKZF1プローブ標的領域すべてを検出するように設計された単一「無差別」オリゴヌクレオチドで置き換えることができた。配列番号19はプライマーとしての配列番号3及び配列番号4と一緒に使用し、配列番号5〜12に取って代わると考えられる。配列番号19は配列番号2の不定にメチル化されたバージョンの相補鎖にアニールすると考えられる。配列番号20も配列番号5〜12に代わって使用することができ、配列番号2として示される鎖の不定にメチル化されたバージョンに結合すると考えられる。当業者であれば、メチル化特異的PCRアッセイは、配列番号1として示される鎖の相補体である亜硫酸水素塩変換DNA鎖から設計することができることも理解すると考えられる。そのようなアッセイは異なる「無差別な」オリゴヌクレオチドプローブを必要とすると考えられ、これら2つの選択肢は配列番号21及び配列番号22として示される。
配列番号19: Chr7: 50304323 TTTGTATZGGAGTAGZGATT ZGGGAGG 50304349
配列番号20: Chr7: 50304348 CTCCCXAATC XCTACTCCXATACAAAAAG 50304320
配列番号21: Chr7: 50304349 TTTTTZGGATZGTTGTTTZG GTATAGGG 50304322
配列番号22: Chr7: 50304322 CCCTATACCXAAACAACXAT CCXAAAAA 50304349
Zはイノシン、脱塩基スペーサー、又は6H,8H−3,4−ジヒドロピリミド[4,5−c][1,2]オキサジン−7−オン(又は、その機能的類似体)のいずれかであり、Xはイノシン、脱塩基スペーサー、又はN6−メトキシ−2,6−ジアミノプリン(又は、その機能的類似体)のいずれかである。
【0155】
配列番号2のセンス鎖の検出のための代わりの「縮重」5’−加水分解プローブ
実施例1(配列番号5)又は実施例2(配列番号5〜12)において使用されるIKZF1プローブは、配列番号2の相補鎖にアニールするように設計される。当業者であれば、配列番号2に結合すると考えられる類似プローブを設計できることも理解するであろう。これらのプローブは配列番号3及び配列番号4を用いたメチル化特異的PCRアッセイにおいて使用されると考えられ、配列番号23〜30として下に収載されている。
配列番号23: Chr7: 50304348 CTCCCGAATCGCTACTCCGA TACAAAAAG 50304320
配列番号24: Chr7: 50304348 CTCCCAAATCGCTACTCCGA TACAAAAAG 50304320
配列番号25: Chr7: 50304348 CTCCCGAATCACTACTCCGA TACAAAAAG 50304320
配列番号26: Chr7: 50304348 CTCCCGAATCGCTACTCCAA TACAAAAAG 50304320
配列番号27: Chr7: 50304348 CTCCCAAATCACTACTCCGA TACAAAAAG 50304320
配列番号28: Chr7: 50304348 CTCCCAAATCGCTACTCCAA TACAAAAAG 50304320
配列番号29: Chr7: 50304348 CTCCCGAATCACTACTCCAA TACAAAAAG 50304320
配列番号30: Chr7: 50304348 CTCCCAAATCACTACTCCAA TACAAAAAG 50304320
【0156】
配列番号1の相補鎖の亜硫酸水素塩変換バージョンの検出のための「縮重」5’−加水分解プローブ
実施例1及び実施例2において使用されるメチル化特異的PCRアッセイは、配列番号1に対応する亜硫酸水素塩変換DNA鎖に対して設計される。当業者であれば、メチル化特異的PCRアッセイは配列番号1として示される鎖の相補体である亜硫酸水素塩変換DNA鎖から設計することができることも理解すると考えられる。これは配列番号2の相補体ではないであろう。配列番号1として示される鎖の相補体である亜硫酸水素塩変換DNA鎖から設計されるそのようなアッセイは、8つの考えうる不定にメチル化された形態のIKZF1すべてを検出するためには異なるプローブが必要だと考えられる。これらのプローブは増幅されているDNAのどちらの鎖が検出されているのかに応じて、上の配列番号20及び21に示される単一の「無差別な」オリゴヌクレオチドプローブであっても可能であり、又は下の配列番号31〜38、及び配列番号39〜46に示される8つのプローブの2セットでも可能である。そのようなアッセイは追加のメチル化特異的PCRプライマーも必要になると考えられ、それは配列番号47及び48として示されている。
配列番号31: Chr7: 50304349 TTTTTCGGATCGTTGTTTCG GTATAGGG 50304322
配列番号32: Chr7: 50304349 TTTTTCGGATCGTTGTTTTG GTATAGGG 50304322
配列番号33: Chr7: 50304349 TTTTTCGGATTGTTGTTTCG GTATAGGG 50304322
配列番号34: Chr7: 50304349 TTTTTTGGATCGTTGTTTCG GTATAGGG 50304322
配列番号35: Chr7: 50304349 TTTTTCGGATTGTTGTTTTG GTATAGGG 50304322
配列番号36: Chr7: 50304349 TTTTTTGGATCGTTGTTTTG GTATAGGG 50304322
配列番号37: Chr7: 50304349 TTTTTTGGATTGTTGTTTCG GTATAGGG 50304322
配列番号38: Chr7: 50304349 TTTTTTGGATTGTTGTTTTG GTATAGGG 50304322

配列番号39: Chr7: 50304322 CCCTATACCGAAACAACGAT CCGAAAAA 50304349
配列番号40: Chr7: 50304322 CCCTATACCAAAACAACGAT CCGAAAAA 50304349
配列番号41: Chr7: 50304322 CCCTATACCGAAACAACAAT CCGAAAAA 50304349
配列番号42: Chr7: 50304322 CCCTATACCGAAACAACGAT CCAAAAAA 50304349
配列番号43: Chr7: 50304322 CCCTATACCAAAACAACAAT CCGAAAAA 50304349
配列番号44: Chr7: 50304322 CCCTATACCAAAACAACGAT CCAAAAAA 50304349
配列番号45: Chr7: 50304322 CCCTATACCGAAACAACAAT CCAAAAAA 50304349
配列番号46: Chr7: 50304322 CCCTATACCAAAACAACAAT CCAAAAAA 50304349
配列番号47: Chr7: 50304366 CGCGTATTTTTCGGTC 50304351
配列番号48: Chr7: 50304273 CGACGCACCCTCTCCG 50304288
【0157】
部分的にメチル化されたIKZF1を増幅させるように設計された「縮重」プライマーの例
配列番号49 Chr7: 50304271 GATGACGTAT TTTTTTCGTG TTTC 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号50 Chr7: 50304271 GACGATGTAT TTTTTTCGTG TTTC 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号51 Chr7: 50304271 GACGACGTAT TTTTTTTGTG TTTC 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号52 Chr7: 50304271 GACGACGTATTTTTTTCGTG TTTT 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号53 Chr7: 50304271 GATGATGTAT TTTTTTCGTG TTTC 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号54 Chr7: 50304271 GACGATGTAT TTTTTTTGTG TTTC 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号55 Chr7: 50304271 GACGACGTAT TTTTTTTGTG TTTT 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号56 Chr7: 50304271 GATGACGTAT TTTTTTTGTG TTTC 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号57 Chr7: 50304271 GACGATGTAT TTTTTTCGTG TTTT 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号58 Chr7: 50304271 GATGACGTAT TTTTTTCGTG TTTT 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号59 Chr7: 50304271 GATGATGTATTTTTTTTGTG TTTC 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号60 Chr7: 50304271 GATGATGTAT TTTTTTCGTG TTTT 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号61 Chr7: 50304271 GATGACGTAT TTTTTTTGTG TTTT 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号62 Chr7: 50304271 GACGATGTAT TTTTTTTGTG TTTT 50304294 (IKZF1 FWD)

配列番号63 Chr7: 50304365 ACGCACCTCT CGACCG 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号64 Chr7: 50304365 GCACACCTCT CGACCG 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号65 Chr7: 50304365 GCGCACCTCT CAACCG 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号66 Chr7: 50304365 GCGCACCTCT CGACCA 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号67 Chr7: 50304365 ACACACCTCT CGACCG 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号68 Chr7: 50304365 GCACACCTCT CAACCG 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号69 Chr7: 50304365 GCGCACCTCT CAACCA 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号70 Chr7: 50304365 ACGCACCTCT CAACCG 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号71 Chr7: 50304365 ACGCACCTCT CGACCA 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号72 Chr7: 50304365 GCACACCTCT CGACCA 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号73 Chr7: 50304365 ACACACCTCT CAACCG 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号74 Chr7: 50304365 ACACACCTCT CGACCA 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号75 Chr7: 50304365 ACGCACCTCT CAACCA 50304350 (IKZF1 REV)
配列番号76 Chr7: 50304365 GCACACCTCT CAACCA 50304350 (IKZF1 REV)
完全にメチル化されていないプライマー:
配列番号77 Chr7: 50304271 GATGATGTAT TTTTTTTGTG TTTT 50304294 (IKZF1 FWD)
配列番号78 Chr7: 50304365 ACACACCTCT CAACCA 50304350 (IKZF1 REV)
【0158】
当業者であれば、本明細書に記載される本発明は具体的に記載されたもの以外の変更及び改変を受けやすいことは認識されるであろう。本発明にはそのような変更及び改変のすべてが含まれていると理解されるべきである。本発明は、本明細書において言及される又は示されるステップ、特長、組成物及び化合物のすべてを個別に又は集合的に、並びに前記ステップ又は特長の任意の2つ若しくはそれよりも多くのありとあらゆる組合せも含む。
【0159】
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図1
図2-1】
図2-2】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]