(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予め定められた大きさの空間を評価単位空間とし、この評価単位空間の周囲の境界面毎に、前記評価単位空間内の評価位置に対する形態係数を形態係数記憶部に記憶させる形態係数記憶ステップと、
放射環境の評価対象空間の物理的な境界面の表面温度または前記評価対象空間内の空気温度を温度情報として取得する温度情報取得ステップと、
前記評価対象空間内に配置した前記評価単位空間である配置空間の周囲の境界面のうち、前記評価対象空間の物理的な境界面に接する境界面については、その物理的な境界面の表面温度を境界面温度情報として、前記評価対象空間の物理的な境界面に接しない境界面については、その配置空間内の空気温度を境界面温度情報として、前記温度情報取得ステップにより取得された温度情報を前記配置空間毎に管理し取得温度情報管理部に記憶させる取得温度情報管理ステップと、
前記取得温度情報管理部に記憶されている前記配置空間毎の境界面温度情報と前記形態係数記憶部に記憶されている前記評価単位空間の境界面毎の形態係数とに基づいて、前記配置空間毎にその配置空間内の評価位置の平均放射温度を算出する平均放射温度演算ステップと
を備えることを特徴とする放射環境評価方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
〔方法1の問題点〕
グローブ温度とは無発熱球の放射と対流による平衡温度である。方法1では、表面につや消しの黒色塗料を塗った中空銅球を用い、この中空銅球内の温度を棒状温度計や熱電対/サーミスタ等で計測し、これをグローブ温度とする。このグローブ温度を計測する温度計はグローブ温度計と呼ばれている。
【0008】
図16に、一般的なグローブ温度計の概略図を示す。同図において、201は表面につや消しの黒色塗料が塗られたグローブ球(中空銅球)、202はグローブ球201の中心付近の温度をグローブ温度Tgとして計測する棒状温度計、203は棒状温度計202を支える支持栓である。
【0009】
このようなグローブ温度計によって計測されるグローブ温度Tgと別途計測するグローブ球周囲の空気温度Ta、および、風速vの測定値から、下記(1)式により平均放射温度Trを算出することができる(例えば、非特許文献3)。
【0010】
Tr=Tg+2.37√v(Tg−Ta) ・・・・(1)
ここで、Tr:平均放射温度[℃],Ta:空気温度[℃],Tg:グローブ温度[℃],v:風速[m/s]。
【0011】
この平均放射温度Trの算出式において、比較的安定した気流の室内であれば、風速vはおおよその代表値を利用でき、また、空気温度Taは室内に設置されている空調制御用などの温度センサの計測値を利用することが可能である。この方法により、人体の感覚とよく対応する平均放射温度の計測が可能となる。
【0012】
しかしながら、このためには、居住域を代表する高さ/位置での計測、つまりは、居住者のワークスペース内にグローブ温度計の設置場所を確保して計測する必要があり、居住者の執務等作業の妨げとなるばかりでなく、個々の居住者の事情によるグローブ温度計の移動や、これによる破損/紛失など管理上の問題も発生しがちとなる。
【0013】
また、建物の居住域では、居住者の座席移動、機器/什器等の導入や排除によるレイアウト変更なども頻繁に発生するため、竣工時に設置位置を固定することも困難である。
【0014】
以上により、居住域にグローブ温度計の配置が必要な方法1は、実証試験や研究の目的で一時的に採用されることはあっても、建物内で利用される日常の制御/環境管理といった目的で継続利用することは現実的ではない。つまり、実用面のデメリットにより、実質的にランニングコストが大きくならざるを得ない。
【0015】
〔方法2の問題点〕
人体周囲の各面を代表する表面温度を利用する方法2では、居住域への主要な放射源となる表面(窓・壁・天井等)の表面温度を利用する。
【0016】
表面温度計測は、接触温度計による対象表面の温度計測のほか、放射温度計/サーモグラフィなど赤外線計測機器等により非接触で対象表面の温度計測を行なう方法がある。いずれの場合でも、通常、主要放射源の表面温度を計測するセンサや機器の設置位置は、窓・壁・床・天井・柱等の居住者のワークスペース外で良く、上述の設置/管理上の問題は改善できる。
【0017】
しかしながら、この方法2においては、計測表面N(N:表面のIDを示す整数)の各々の表面温度TNから平均放射温度Trを計算する際に、表面Nと評価位置Pとの位置関係などにより決定される形態係数F
P-Nの算出が必要となる。
【0018】
形態係数の算出方法は一般的な文献に記載されているほか、算出ツールとして「ASHRAE Comfort Tool (ASHRAE:American Society of Heating, Refrigerating, and Air-Conditioning Engineers)」(例えば、非特許文献4参照)が公開されている。
【0019】
形態係数はそれぞれの表面温度が平均放射温度Trに寄与する比率であり、影響を及ぼすすべての面の形態係数を合計すると1となる。例えば、部屋形状が一般的な直方体の場合には(
図17参照)、N=1〜6の6面(天井、床、壁4面)を代表する各々の表面温度TNに対して下記(2)式のように平均放射温度Trを求める。
【0020】
【数1】
【0021】
この(2)式で用いる形態係数F
P-Nは、評価対象とする居住空間の形状(奥行D、幅W、高さH)と、評価位置における評価形状(例えば、平面形状や人体形状等)の幾何学的な位置関係に依存する。すなわち、
図18に示すように、例えば評価位置P
1の人体に対するA面の形態係数F
P1-Aと評価位置P
3の人体に対するA面の形態係数F
P3-Aとは異なる(F
P1-A≠F
P3-A)。なお、通常、居住域の放射環境評価では、形態係数を決定する際に、評価形状として立位、座位等の姿勢を考慮した人体形状を選択して用いる。すなわち、評価形状は環境評価/制御等のソリューションプロバイダや設備管理者等が予め適宜選択し決定しており、評価対象とする居住空間の形状と評価位置の関係で形態係数が決定するものとして扱える。
【0022】
このため、複数の評価位置に対して放射環境評価を行なう場合、建物図面などから評価位置P毎に各表面の形態係数F
P-Nを算出する必要があり、実建物に適用する際にはエンジニアリングコスト(以下、エンジコストと言う。)が大きくなるという課題があった。
【0023】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、平均放射温度評価の実質的なランニングコストを低減するとともに、エンジコストも低減することが可能な放射環境評価システムおよび放射環境評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
このような目的を達成するために本発明は、予め定められた大きさの空間を評価単位空間(U)とし、この評価単位空間の周囲の境界面毎に、評価単位空間内の評価位置(P)に対する形態係数を記憶する形態係数記憶部(1)と、放射環境の評価対象空間(M)の物理的な境界面の表面温度(Ts)または評価対象空間内の空気温度(Ta)を温度情報として取得する温度情報取得部(6)と、評価対象空間内に配置した評価単位空間である配置空間(MU)の周囲の境界面のうち、評価対象空間の物理的な境界面に接する境界面については、その物理的な境界面の表面温度を境界面温度情報として、評価対象空間の物理的な境界面に接しない境界面については、その配置空間内の空気温度を境界面温度情報として、温度情報取得部により取得された温度情報を配置空間毎に管理し記憶する取得温度情報管理部(4)と、取得温度情報管理部に記憶されている配置空間毎の境界面温度情報(Te)と形態係数記憶部に記憶されている評価単位空間の境界面毎の形態係数とに基づいて、配置空間毎にその配置空間内の評価位置の平均放射温度(Tr)を算出する平均放射温度演算部(5)とを備えることを特徴とする。
【0025】
この発明において、形態係数記憶部には、評価単位空間の周囲の境界面毎に、評価単位空間内の評価位置に対する形態係数が記憶されている。温度情報取得部は、評価対象空間の物理的な境界面の表面温度または評価対象空間内の空気温度(評価対象空間の物理的な境界面の表面温度および評価対象空間内の空気温度の何れか一方または両方)を温度情報として取得する。取得温度情報管理部は、評価対象空間内に配置した評価単位空間(配置空間)の周囲の境界面のうち、評価対象空間の物理的な境界面に接する境界面については、その物理的な境界面の表面温度を境界面温度情報として、評価対象空間の物理的な境界面に接しない境界面については、その配置空間内の空気温度を境界面温度情報として、温度情報取得部により取得された温度情報を配置空間毎に管理し記憶する。平均放射温度演算部は、取得温度情報管理部に記憶されている配置空間毎の境界面温度情報と形態係数記憶部に記憶されている評価単位空間の境界面毎の形態係数とに基づいて、配置空間毎にその配置空間内の評価位置の平均放射温度を算出する。
【0026】
本発明において、評価対象空間の物理的な境界面の一部と、配置空間の物理的な境界面が接する場合には、配置空間の物理的な境界面の表面温度は、配置空間毎の物理的な境界面毎に計測されていなくてもよく、評価対象空間内で計測されている物理的な境界面の表面温度を、これと接する配置空間の計測されていない物理的な境界面の表面温度として代用するようにしてもよい。また、配置空間内の空気温度についても、配置空間毎に計測されていなくてもよく、評価対象空間内の空気温度計測位置と配置空間との位置関係や温熱的な外乱等を考慮した上で、評価対象空間内で計測されている空気温度を配置空間内では計測されていない空気温度として代用するようにしてもよい。
【0027】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の構成要素を、括弧を付した参照符号によって示している。
【発明の効果】
【0028】
以上に説明したように、本発明によれば、形態係数記憶部に記憶されている評価単位空間内の評価位置に対する形態係数を再利用しながら、評価対象空間内に配置した評価単位空間(配置空間)毎にその配置空間内の評価位置の平均放射温度を算出することができるようになり、平均放射温度評価の実質的なランニングコストを低減するとともに、エンジコストも低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
〔発明の原理〕
先ず、実施の形態の説明に入る前に、本発明の原理について説明する。本発明では、上述した方法2、すなわち人体周囲の各面を代表する表面温度を利用する方法を採用する。この方法2では、エンジコストを大きくする主要因が形態係数F
P-Nの算出であるから、この算出工程を簡素化することでエンジコストの低減効果が得られやすい。
【0031】
本願の発明者は、放射環境の評価を行なう評価単位空間を予め設定し、これを再利用することで形態係数の算出を簡素化できる点に着目した。評価単位空間が設定されれば、評価単位空間内の評価位置とすべての周囲面との形態係数を予め算出しておくことが可能となる。そして、建物内で評価したい場所にこの評価単位空間を配置して利用すれば、評価する場所に応じた新たな形態係数の算出は不要となることに想到した。
【0032】
図1に、放射環境の評価対象空間(建物内で評価したい空間領域)への評価単位空間の配置をイメージした図を示す。同図において、Mは放射環境の評価対象空間、Uは評価単位空間である。
【0033】
評価単位空間Uと評価単位空間U内の評価位置Pが設定されると、評価位置Pと周囲の6面(N1面〜N6面)との形態係数F
P-N(F
P-N1,F
P-N2,F
P-N3,F
P-N4,F
P-N5,F
P-N6)を予め算出しておくことができる。
【0034】
この評価単位空間Uを評価対象空間Mに配置して、予め算出されている形態係数F
P-N(F
P-N1,F
P-N2,F
P-N3,F
P-N4,F
P-N5,F
P-N6)を利用すれば、評価対象空間Mと評価位置Pとの位置関係に応じた評価位置P毎の新たな形態係数の算出は不要となる。
【0035】
例えば、評価対象空間M内に配置した評価単位空間Uである配置空間MU(MU1)では、評価単位空間Uにおける評価位置PとN1面との形態係数F
P-N1を評価位置P
1とA1面との形態係数F
P1-A1として利用することができる(F
P1-A1=F
P-N1)。
【0036】
また、評価対象空間M内に配置した評価単位空間Uである配置空間MU(MU2)では、評価単位空間Uにおける評価位置PとN1面との形態係数F
P-N1を評価位置P
2とA2面との形態係数F
P2-A2として利用することができる(F
P2-A2=F
P-N1)。
【0037】
また、評価対象空間M内に配置した評価単位空間Uである配置空間MU(MU3)では、評価単位空間Uにおける評価位置PとN1面との形態係数F
P-N1を評価位置P
3とA3面との形態係数F
P3-A3として利用することができる(F
P3-A3=F
P-N1)。
【0038】
なお、本明細書では、評価対象空間M内に配置され、その配置位置が確定した評価単位空間Uを配置空間MUとしている。
【0039】
また、建物の設計では照明や空調等の管理単位が、同じ建物内でばらばらのサイズで設計されることは少ない。例えば、空調管理単位である空調ゾーンの場合、通常は、
図2A,
図2Bに例示するように、建物外周部に配置されるペリメータゾーンZ1と、その内側のインテリアゾーンZ2の2種類に分けられる。この場合、ペリメータゾーンZ1同士/インテリアゾーンZ2同士のそれぞれは同様の寸法であるのが一般的である。
【0040】
高層の建物の場合には、用途の異なるフロアを除き(例えば、オフィスビルの商業施設階など)、フロア間でもこのゾーン寸法が同様となることが多い。このように、照明や空調等の室内環境の管理単位を基本とした評価単位空間を設定すれば、設備管理者が通常扱っている管理単位と放射環境の評価単位空間とが合致するので、建物空間の管理上の煩雑さを回避でき、実質的なランニングコストのさらなる低減につながることも期待できる。
【0041】
さらに、形態係数は放射源から離れれば距離に応じて大きく減衰するのであるから、原理的かつ実用的には、居住域への放射源となる窓面/外壁面からの熱影響はほぼ無視できるようになる。これに加え、オフィス等、人が居住する一般的な建物では、什器やパーティションなどが居住域に配置され、放射源から離れた什器やパーティション、カーペットなどの表面温度は、温度差があれば熱の移動が生じて温度差が解消されていくのであるから、通常、周辺居住域の空気温度に近い値となる。
【0042】
以上により、発明者は、評価対象空間内に配置した評価単位空間(配置空間)の周囲面が物理的な窓や壁ではない場合、この面の表面温度をその配置空間の代表的な空気温度に近似することで、平均放射温度評価に十分に実用可能であることを見出した。そして、これを採用することで、形態係数F
P-Nの算出工程を簡素化できるのであるから、実質的なランニングコストを低減できるとともに、エンジコストも低減できる。
【0043】
〔実施の形態〕
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態の概要〕
最初に、本実施の形態の概要について説明する。本実施の形態では、放射環境の評価対象空間の空間情報(フロア寸法、建物外周情報など)に基づき、空間の寸法とこの空間内に内在する評価点を定めた評価単位空間を決定し、この決定した評価単位空間を評価対象空間内に配置し、この配置した評価単位空間(配置空間)毎に評価点における平均放射温度を求める。
【0044】
本実施の形態では、評価対象空間(本実施の形態では建物内フロア)を、同寸法の空間(直方体)で分割し、この直方体内に評価点を決定し、この評価点を内在する直方体を評価単位空間とする。評価単位空間である単位直方体の寸法と内在する評価点の位置が固定されているので、評価単位空間の評価点に対する周囲6面の形態係数もそれぞれ固定できる。
【0045】
このように決定された評価単位空間を評価対象空間内に配置する(配置空間)。各配置空間における評価点に対する周囲6面の形態係数は、評価単位空間の評価点に対する周囲6面の形態係数と一致する。よって、評価単位空間に対して固定された6面の形態係数と各配置空間の6面の表面温度とを利用して平均放射温度を導出することで、各配置空間の放射環境評価を行なうことができる。評価単位空間に対応する形態係数のセットを配置空間に対して繰り返し利用できるので、形態係数算出のエンジコストを削減できる。
【0046】
ここで、配置空間の任意の周囲表面(境界面)が実際の物理的な表面(壁や窓等)でない場合、当該表面の表面温度はこの配置空間を代表する空気温度と同一として計算する。
【0047】
〔実施の形態の詳細〕
本実施の形態における評価対象空間と評価単位空間のイメージを
図3に示す。評価単位空間Uやその評価位置Pは、建物内空間で評価対象とする評価対象空間Mの寸法や、壁/窓等の評価対象空間Mの周囲の境界面状態、評価したい位置や数等を考慮して、環境評価/制御等のソリューションプロバイダや設備管理者が予め決定する。
【0048】
評価単位空間Uは複数の種類(例えば、寸法の異なる数種類など)を決定してもよいが、簡単のため本実施の形態では1種類とする。また、評価単位空間U内の評価位置Pも複数でも構わないが、同様の理由で本実施の形態では評価単位空間Uに1点とする。
【0049】
本実施の形態の評価対象空間Mは、天井と床に挟まれ、東面、西面および南面は壁や窓などの物理的な境界面とし、北面は同フロアの別な空間に通じる物理的な境界ではない境界面とする(
図4参照)。
【0050】
また、本実施の形態では、
図3に示されているように、評価位置Pを1点とした評価単位空間Uを評価対象空間M内に6個配置し、この評価対象空間M内に配置した評価単位空間Uである配置空間MU毎にその環境を評価する例で説明する。
【0051】
また、本実施の形態では、評価対象空間Mにおける窓や壁/天井/床などの物理的な境界面について、接触温度計や赤外線センサなどで、各々の境界面を代表する表面温度を計測しているものとする。
【0052】
さらに、本実施の形態では、配置空間MU毎に、配置空間MUを代表する空気温度も計測されているものとする。ここで、配置空間MUを空調ゾーン(空調機のゾーンやVAVゾーンなどの空調制御の単位となるゾーン)に一致させる場合、あるいは、整数倍とさせる場合、代表する空気温度は空調制御用の温度センサの検出値を利用できるので、さらに好適である。
【0053】
本実施の形態では、簡単のために建物の1フロア内の空間を評価対象空間Mとしているが、評価対象空間Mが多層階建物の複数のフロアや複数の建物にまたがる場合にも適用可能であることは言うまでもなく、この時、同様形状の評価単位空間Uを複数のフロアや建物で再利用できれば、さらなるエンジコストの低減につながる。そして、前述のように、同様の寸法で設計されることの多い照明や空調等の室内環境の管理単位を基本とした評価単位空間Uを設定すれば、さらなるエンジコストの低減が期待できる。
【0054】
図5に、本発明に係る放射環境評価システムの一実施の形態の要部の構成を示す。この放射環境評価システム100は、プロセッサや記憶装置からなるハードウェアと、これらのハードウェアと協働して各種機能を実現させるプログラムとによって実現され、評価単位情報記憶部1と、表面温度取得部2と、空気温度取得部3と、取得温度情報管理部4と、平均放射温度演算部5とを備えている。
【0055】
この放射環境評価システム100では、表面温度取得部2と空気温度取得部3とで温度情報取得部6が構成され、温度情報取得部6と取得温度情報管理部4とによって温度取得システム7が構成されている。また、この放射環境評価システム100に対しては、平均放射温度演算部5での演算結果を提示する情報提示部8が設けられている。この情報提示部8は放射環境評価システム100に含まれていてもよい。
【0056】
なお、本実施の形態では、一定の時間周期(10分毎)で表面温度取得部2および空気温度取得部3より取得温度情報管理部4に取得した温度情報が送信され、これを受信した取得温度情報管理部4が演算温度情報を生成する例で説明する。表面温度取得部2および空気温度取得部3からデータを受信するタイミングや、平均放射温度演算部5が利用する演算温度情報を生成するタイミングはこの限りではない。
【0057】
例えば、ユーザ(環境評価者や設備管理者など)が評価したい日時や場所を指定し、これに対応する平均放射温度を算出してユーザに提示する場合、平均放射温度演算部5が平均放射温度を算出する時点で、算出に必要な演算温度情報が得られていればよい。これらは適宜設計される事項であり、形態係数F
P-Nの算出工程を簡素化するという本発明の効果に影響を与えるものではない。
【0058】
<放射環境評価システム100の構成要素の説明>
〔評価単位情報記憶部1〕
評価単位情報記憶部1には、評価単位空間Uの評価位置Pに対する周囲の各境界面表面の形態係数の情報が評価単位情報(形態係数情報)として記憶されている。評価単位空間Uの寸法とその評価位置Pから、環境評価/制御等のソリューションプロバイダや設備管理者が予め決定し、設定する。
【0059】
〔表面温度取得部2〕
表面温度取得部2は、評価対象空間Mの物理的境界面の表面温度Tsを取得し、取得日時と取得対象情報とともに取得温度情報管理部4に送信する。物理的境界面の表面温度Tsは、接触温度計や赤外線センサ等のセンサ/デバイス等による物理的計測、あるいは、評価対象空間Mの伝熱/流体等のシミュレーションにより取得される。
【0060】
表面温度取得に必要なセンサ/デバイス設置環境やシミュレーション環境は、室内環境評価/制御等のソリューションプロバイダや設備管理者によって、概ね標準的な作業を経て特別な困難さを伴わずに構築可能である。なお、取得日時は、例えば、計測により取得する場合は計測日時、シミュレーションによる場合は当該表面温度となる推定日時である。また、表面温度取得部2から送信する取得対象情報は、取得した表面温度Tsが評価対象空間Mのどの物理的境界面の表面温度かを取得温度情報管理部4が特定するための情報であり、これを可能とする情報であれば、例えば、計測により取得する場合は計測センサが置かれている位置(取得位置、あるいは、計測位置)や計測センサのIDなどでも構わない。
【0061】
〔空気温度取得部3〕
空気温度取得部3は、評価対象空間M内の空気温度Taを取得し、取得日時と取得対象情報とともに取得温度情報管理部4に送信する。空気温度Taは、室内温度を計測するセンサ/デバイス等による物理的計測、あるいは、評価対象空間Mの伝熱/流体等のシミュレーションにより取得される。
【0062】
空気温度取得に必要なセンサ/デバイス設置環境やシミュレーション環境は、室内環境評価/制御等のソリューションプロバイダや設備管理者によって、概ね標準的な作業を経て特別な困難さを伴わずに構築可能である。なお、取得日時は、計測により取得する場合は計測日時、シミュレーションによる場合は当該空気温度となる推定日時とする。また、空気温度取得部3から送信する取得対象情報は、取得した空気温度Taが評価対象空間Mのどの配置空間MUと対応する空気温度かを取得温度情報管理部4が特定するための情報であり、これを可能とする情報であれば、例えば、計測により取得する場合は計測センサが置かれている位置(取得位置、あるいは、計測位置)や計測センサのIDなどでも構わない。
【0063】
〔取得温度情報管理部4〕
取得温度情報管理部4は、表面温度取得部2および空気温度取得部3から送信される情報から、表面温度Tsおよび空気温度Taを、評価対象空間Mに配置された配置空間MUおよびその境界面と対応づけ、かつ、取得日時に関連づけて、統合した演算温度情報を生成する。また、この生成した演算温度情報を管理し記憶する。
【0064】
〔平均放射温度演算部5〕
平均放射温度演算部5は、評価対象空間Mに配置された配置空間MU毎に各々の評価位置Pの平均放射温度Trを演算する。演算には、評価単位情報記憶部1に記憶されている評価単位空間Uの形態係数情報、取得温度情報管理部4から送られてくる演算温度情報を利用する。
【0065】
〔情報提示部8〕
平均放射温度演算部5が演算した各配置空間MUの平均放射温度Trを、配置空間MUや評価位置Pの場所と関連づけて、ユーザ(環境評価者や設備管理者など)に提示する。この場合、各配置空間MUの平均放射温度Trをリストやグラフとして提示してもよいし、評価対象空間Mのレイアウト図面上に示した配置空間MUや評価位置Pに表示して、場所との対応をより把握しやすくしても勿論構わない。また、任意の配置空間MUの平均放射温度Trを取得日時による時系列の表やグラフとして示してもよい。
【0066】
さらに、平均放射温度演算部5によって演算された平均放射温度Trを使用してPMV,SET*(standard new effective temperature)等の快適評価指標を演算し、配置空間MUや評価位置Pの場所と関連づけて、ユーザに提示したり、配置空間MU毎に時系列で提示するようにしてもよい。この場合、放射環境評価システム100に、快適評価指標を演算する快適評価指標演算部を適宜追加するものとする。
【0067】
<放射環境評価システム100の上記構成要素で保持する主要な情報、および主要な動作の説明>
〔評価単位情報記憶部1の形態係数情報〕
評価単位情報記憶部1には、形態係数情報として、評価単位空間Uとその境界面を特定する境界面特定情報(IDや名称等)と、評価位置Pに対する各々の境界面の形態係数とが、関連づけて予め記憶されている。
【0068】
本実施の形態の評価対象空間Mの寸法は(
図3参照)、30m(D)×16m(W)×2.7m(H)とし、評価単位空間Uの寸法は、10m(d)×8m(w)×2.7m(h)とし、この評価単位空間U内における評価位置Pの座標(X’,Y’,Z’)は(5m,4m,0.6m)とする。なお、本実施の形態の評価形状は床面に接地している座位の人体形状とするため、Z’座標は座っている人の温熱環境で一般的に利用される高さ0.6mとしている。
【0069】
また、本実施の形態では、Bi(iは1〜αの整数、α:評価単位空間Uの境界面の数(本実施の形態では、α=6))を境界面特定情報とし、
図6に示す評価単位空間Uの平面図のように、南に位置する境界面B1を基準面とし、時計回りに西,北,東に位置する境界面をB2〜B4とし、天井面をB5、床面をB6とする。
【0070】
評価位置Pに対する境界面Biの形態係数F
P-Biは、評価単位空間Uの寸法と評価位置Pの座標から、例えば、「ASHRAE standard 55-2010」に準拠する「ASHRAE Thermal Comfort tool」(例えば、非特許文献4参照)などによって求めることができる。本実施の形態の場合は、以下のような数値が環境評価/制御等のソリューションプロバイダや設備管理者により、予め記憶されている。
{F
P-B1,F
P-B2,F
P-B3,F
P-B4,F
P-B5,F
P-B6}={0.055,0.085,0.055,0.085,0.282,0.430} ・・・・(3)
【0071】
ここで、評価単位空間Uや評価位置Pが複数ある場合には、
図7に示すように評価単位空間UのID(評価単位空間ID)と評価位置PのID(評価位置ID)毎に算出した各境界面Biの形態係数F
P-Biを予め記憶し、これを形態係数情報として利用する。
【0072】
例えば、
図2A、
図2Bのような空調制御の管理単位であるペリメータゾーンZ1、インテリアゾーンZ2をそれぞれ、評価単位空間IDのU1およびU2に設定し、これら評価単位空間U1およびU2に対してそれぞれ1つ以上の評価位置を決定し、それぞれの評価単位空間U1およびU2に対応する評価位置毎に算出した形態係数を予め記憶し、形態係数情報として利用する。
【0073】
〔表面温度取得部2、空気温度取得部3の動作〕
表面温度取得部2は、評価対象空間Mにおける窓や壁/天井/床などの物理的な境界面について各々の境界面を代表する表面温度を取得し、その境界面を特定できる取得対象情報を付加して取得日時と共に温度情報(表面温度情報)として取得温度情報管理部4に送信する。
【0074】
本実施の形態の表面温度取得部2では、評価対象空間Mの窓や壁/天井/床などの物理的な境界面について、接触温度計や赤外線センサなどで各々の境界面を代表する表面温度を計測しているものとする。
【0075】
この場合、例えば、
図8の南に位置する窓面W1については、表面温度Ts(M,W1)が計測され、
図8の西,東に位置する壁面W2,W4については、表面温度Ts(M,W2),Ts(M,W4)が計測され、
図8の天井面W5,床面W6については、表面温度Ts(M,W5),Ts(M,W6)がそれぞれ接触温度計や赤外線センサなどで計測され(
図8の北側は物理的な境界面ではないため、表面温度は計測されない)、その取得日時(計測日時)と取得対象情報とともに各々の計測結果が温度情報(表面温度情報)として取得温度情報管理部4に送信される。ここで、取得対象情報とは、計測対象とした評価対象空間Mにおける壁面Wk(この例では、k=1,2,4,5,6)を特定できる情報とする。
【0076】
なお、この例では、評価対象空間Mの窓や壁/天井/床などの物理的な境界面の表面温度を各々1箇所で計測するものとしているが、評価対象空間M内に配置されたすべての配置空間MUj(jは1〜βの整数、β:配置空間MUの数(本実施の形態では、β=6))について、その配置空間MUjの境界面のうち物理的な境界面の温度を計測してその温度情報を取得温度情報管理部4へ送るようにしてもよい。
【0077】
空気温度取得部3は、配置空間MUのそれぞれについて、その配置空間MUを代表する空気温度を計測しているものとする。この場合、空気温度取得部3は、例えば、
図8に示すように、配置空間MU1〜MU6の空気温度Ta(MU1)〜Ta(MU6)を計測し、その計測した配置空間MUを特定できる取得対象情報を付加して取得日時と共に温度情報(空気温度情報)として取得温度情報管理部4に送信する。
【0078】
〔取得温度情報管理部4の動作〕
取得温度情報管理部4には、評価対象空間M内に配置された配置空間MUjのそれぞれについて、配置空間MUjの各境界面Biが物理的な境界面か否かを示す境界面状態S(MUj,Bi)が記憶されている(
図9参照)。
図9に示した例では、「1」が物理的な境界面であることを示し、「0」が物理的な境界面でないことを示している。
【0079】
本実施の形態では、環境評価/制御等のソリューションプロバイダや設備管理者が、評価対象空間Mや配置空間MUの寸法、位置などの情報を利用して境界面状態の情報を予め決定することとするが、表面温度取得部2が評価対象空間M内に配置されたすべての配置空間MUjについて、その配置空間MUjの境界面のうち物理的な境界面の温度を計測してその温度情報を取得温度情報管理部4へ送信するものとしているような場合は、表面温度取得部2が表面温度を送信する対象としている境界面を「1」(物理的な境界面)、それ以外を「0」(物理的な境界面ではない)として、境界面状態の情報を自動生成することも可能である。
【0080】
取得温度情報管理部4では、表面温度取得部2および空気温度取得部3から受信する温度情報(取得対象情報、取得日時、温度データ)を統合して、平均放射温度演算部5が平均放射温度演算に利用するすべての配置空間MUおよび境界面の演算温度Te(MUj,Bi)(演算温度情報)を生成する。
【0081】
取得温度情報管理部4において、任意の配置空間MUjと任意の境界面Biに対する演算温度Te(MUj,Bi)は、その境界面が物理的な境界面であれば(S(MUj,Bi)=1)、表面温度取得部2から送信されてきた表面温度Ts(M,Wk)から求められる表面温度Ts(MUj,Bi)として以下のように決定され、その境界面が物理的な境界面でなければ(S(MUj,Bi)=0)、空気温度取得部3から送信されてきた空気温度Ta(MUj)として以下のように決定される。
【0083】
この取得温度情報管理部4での演算温度情報の生成の動作フローの例を
図10に示す。取得温度情報管理部4は、温度情報取得部6から温度情報を受信するとスタート時の初期化処理としてi=1,j=1とし(ステップS101)、境界面状態S(MUj,Bi)が「1」であるか否かをチェックする(ステップS102)。ここで、境界面状態S(MUj,Bi)が「1」であれば(ステップS102のYES)、演算温度Te(MUj,Bi)=Ts(MUj,Bi)とし(ステップS103)、境界面状態S(MUj,Bi)が「0」であれば(ステップS102のNO)、演算温度Te(MUj,Bi)=Ta(MUj)をとする(ステップS104)。そして、i=i+1とし(ステップS105)、ステップS106を経て、ステップS102〜S106の処理を繰り返す。
【0084】
この処理中、i>αとなれば(ステップS106のYES)、すなわち1つの配置空間MUjについて全ての境界面Biの処理を完了すれば、j=j+1として(ステップS107)、ステップS108を経て、ステップS102〜S108の処理を繰り返す。この処理中、j>βとなれば(ステップS108のYES)、すなわち全ての配置空間MUjの処理が完了すれば、一連の処理を終了する。このようにして求められた演算温度Te(MUj,Bi)を
図11に示す。
図11において、物理的な境界面の演算温度については斜線で示し、物理的な境界面ではない面の演算温度と区別している。
【0085】
なお、この例において、ステップS103では、表面温度取得部2からの表面温度Ts(M,W1)を配置空間MU1,MU4の南面の表面温度Ts(MU1,B1),Ts(MU4,B1)とし、表面温度取得部2からの表面温度Ts(M,W2)を配置空間MU4,MU5,MU6の西面の表面温度Ts(MU4,B2),Ts(MU5,B2),Ts(MU6,B2)とし、表面温度取得部2からの表面温度Ts(M,W4)を配置空間MU1,MU2,MU3の東面の表面温度Ts(MU1,B4),Ts(MU2,B4),Ts(MU3,B4)とする。また、表面温度取得部2からの表面温度Ts(M,W5)を配置空間MU1〜MU6の天井面の表面温度Ts(MU1,B5)〜Ts(MU6,B5)とし、表面温度取得部2からの表面温度Ts(M,W6)を配置空間MU1〜MU6の床面の表面温度Ts(MU1,B6)〜Ts(MU6,B6)とする。
【0086】
この例では、評価対象空間Mの窓や壁/天井/床などの物理的な境界面の1箇所の表面温度を計測するものとしているが、評価対象空間M内に配置されたすべての配置空間MUjについて、その配置空間MUjの境界面のうち窓や壁/天井/床などの物理的な境界面の温度を接触温度計や赤外線センサなどで計測してその温度情報を取得温度情報管理部4へ送るようにしてもよい。また、同じ配置空間MUの同じ物理的境界面で複数の表面温度を計測しているような場合には、境界面ごとの平均値や代表値を採用するなどで表面温度との対応を決定すればよい。
【0087】
このようにして、本実施の形態では、一定の時間周期(10分毎)に、表面温度取得部2および空気温度取得部3より温度情報(表面温度情報、空気温度情報)が取得温度情報管理部4に送信され、この表面温度取得部2および空気温度取得部3からの温度情報を統合することによって演算温度情報が生成される。
図12に、10分毎に生成される演算温度情報のイメージを示す。なお、
図12においては、物理的な境界面の温度を斜線で示し、物理的な境界面ではない面の温度と区別している。
【0088】
〔平均放射温度演算部5の動作〕
平均放射温度演算部5での平均放射温度演算の動作フローの例を
図13に示す。平均放射温度演算部5は、スタート時の初期化処理として、i=1、j=1、Tr(MUj)=0とする(ステップS201)。ここで、Tr(MUj)は評価対象空間Mに配置された配置空間MUjの平均放射温度を示す。
【0089】
そして、平均放射温度演算部5は、評価単位情報記憶部1に記憶されている形態係数情報(本実施の形態では、(3)式)より、評価対象空間Uの評価位置Pに対する境界面Biの形態係数F
P-Biを取得し(ステップS202)、取得温度情報管理部4からの演算温度情報より配置空間MUjに対する境界面Biの演算温度Te(MUj,Bi)を取得する(ステップS203)。ここで、ステップS202、S203はどちらを先行して実施しても構わない。
【0090】
次に、平均放射温度演算部5は、下記(5)式の演算を実行することにより、配置空間MUjの評価位置Pに対する境界面Biからの放射影響をTr(MUj)に加算する(ステップS204)。
Tr(MUj)=Tr(MUj)+F
P-Bi×Te(MUj,Bi) ・・・・(5)
【0091】
そして、平均放射温度演算部5は、i=i+1とし(ステップS205)、ステップS206においてi>α(α:評価対象空間Uの境界面の数であり、配置空間MUjの境界面の数と同じ)となるまで、ステップS202〜S206の処理を繰り返す。これにより、1つの配置空間MUjのすべての境界面Biからの放射影響が積算され、配置空間MUjの(2)式で説明した平均放射温度Tr(MUj)が求められる。
【0092】
この処理の繰り返し中、i>αとなると(ステップS206のYES)、平均放射温度演算部5は、i=1、j=j+1、Tr(MUj)=0とし(ステップS207)、j>β(β:評価対象空間Mにおける配置空間MUの数)となるまで、ステップS202〜S208を繰り返す。
【0093】
この処理の繰り返し中、j>βとなると(ステップS208のYES)、一連の処理を終了する。これにより、jの値を1ずつ加算しながら、評価対象空間M内の配置空間MUjのすべてについて、平均放射温度Tr(MUj)が求められる。
【0094】
なお、上述した実施の形態では、評価対象空間を配置空間で埋め尽くすようにしたが、評価対象空間は配置空間で埋め尽くす必要はなく、配置空間同士が接することなく評価したい位置に任意の数を配置してもよいし、配置空間の一部が他の配置空間と重複していても構わない。ただし、配置空間が評価対象空間の外に出ることはなく、また、配置空間のすべての境界面について、平均放射温度演算の際に使用する取得する表面温度あるいは空気温度との対応が決定可能であり予め設定されていることが必要となる。
【0095】
また、上述した実施の形態では、配置空間毎にその配置空間内の空気温度が計測されているものとしたが、配置空間毎にその配置空間内の空気温度が計測されていないような場合には、実施の形態で示した配置空間の物理的な境界面の温度と同様にして、計測されている評価対象空間内の空気温度を計測されていない配置空間内の空気温度として代用するようにするとよい。
【0096】
また、上述した実施の形態では、配置空間における評価位置と各境界面の位置関係が同じものとしたが、配置空間における評価位置と各境界面の相対的な位置関係が同じ配置空間となる場合もある。このような配置空間については、評価位置と各境界面の相対的な位置関係が一致する範囲において、相対的に対応する形態係数を適用できる。すなわち、配置空間のうち、その配置空間内の評価位置と各境界面の相対的な位置関係が一致する配置空間については、相対的に対応する形態係数を適用して、その配置空間内の評価位置の平均放射温度を算出することができる。
【0097】
例えば、
図14に示すような評価点Q1の形態係数のセットを下記(6)式とすれば、左右反転された位置関係の評価点Q1’の形態係数は下記(7)式で示すことができる。
【0098】
〔評価点Q1の形態係数〕
{F
Q1-B1,F
Q1-B2,F
Q1-B3,F
Q1-B4,F
Q1-B5,F
Q1-B6} ・・・・(6)
【0099】
〔評価点Q1’の形態係数〕
{F
Q1'-B1,F
Q1'-B2,F
Q1'-B3,F
Q1'-B4,F
Q1'-B5,F
Q1'-B6}={F
Q1-B3,F
Q1-B2,F
Q1-B1,F
Q1-B4,F
Q1-B5,F
Q1-B6} ・・・・(7)
【0100】
この(6)式と(7)式を比較して分かるように、左右反転された位置関係の評価点Q1,Q1’については相対的に対応する形態係数を適用でき、形態係数の再利用が可能となる。
【0101】
さらに例えば、
図15に示すような評価単位空間RとR’がこのような左右反転の関係にあれば、評価単位空間Rの形態係数情報をそれらの対応関係に応じて再利用することで評価単位空間R’の形態係数情報の算出は不要となる。
【0102】
このように、左右反転や回転などの操作で、評価点と各境界面の相対的な位置関係が一致する範囲において、相対的に対応する形態係数を適用できる。すなわち、各々の配置空間は、共通の評価単位空間の形態係数情報を適用できる関係にある。本発明は、上記のように相対的な位置関係が一致するケースを、除外するものではない。
【0103】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。