(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810689
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】クリップ部材上に電子ディスプレイを有するペン型薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20201221BHJP
A61M 5/24 20060101ALN20201221BHJP
A61M 5/32 20060101ALN20201221BHJP
A61M 5/315 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
A61M5/31 520
!A61M5/24 500
!A61M5/32 500
!A61M5/315 550N
!A61M5/315 550X
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-522177(P2017-522177)
(86)(22)【出願日】2015年10月22日
(65)【公表番号】特表2017-531530(P2017-531530A)
(43)【公表日】2017年10月26日
(86)【国際出願番号】EP2015074478
(87)【国際公開番号】WO2016062807
(87)【国際公開日】20160428
【審査請求日】2018年10月15日
(31)【優先権主張番号】14190135.5
(32)【優先日】2014年10月23日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンダム, イェスパー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】プラムベッシー, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】クリトモース, ラース ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マスン, ジョン オスタゴー
【審査官】
川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】
特表平10−504729(JP,A)
【文献】
実開昭59−015591(JP,U)
【文献】
実開昭59−143790(JP,U)
【文献】
特表2013−530004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/24
A61M 5/315
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯型薬剤送達装置(300、400)であって、
装置主要部分(301)と、
前記薬剤送達装置の一部分に取り付けられたクリップベース部分(461)と、自由端を有するクリップ主要部分(462)とを備えるクリップ(360、460)と、
軸方向に変位可能なピストンと遠位流出孔部分とを備える薬剤が充填されたカートリッジ(180)または薬剤が充填されたカートリッジを受容する手段(110)と、
薬剤吐出手段であって、
ユーザが吐出されるべき薬剤用量のサイズを設定することを可能にする用量設定手段(340、440)と、
カートリッジの前記ピストンを遠位方向に移動し、それによって薬剤を前記カートリッジから吐出するように適合されたピストンロッドと
を備える薬剤吐出手段と、
薬剤用量の設定または吐出に関連するイベントを検出するように適合されたセンサ手段(432、472)を備える電子回路(470)と、
用量に関連する値を表示するように適合されたディスプレイ(374、474)と
を備え、
前記ディスプレイの少なくとも一部分は前記クリップ主要部分(462)に配置され、
前記センサ手段(432、472)は、設定および/または吐出された用量のサイズを検出するように適合され、
前記クリップ主要部分および前記ディスプレイが可撓性を有する、携帯型薬剤送達装置(300、400)。
【請求項2】
前記電子回路の少なくとも一部分は、前記クリップベース部分に配置され、前記電子回路は、下記のコンポーネント、すなわちエネルギー源(475)およびプロセッサのうちの1つまたは複数を備える、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記クリップ(360)は、前記装置主要部分(301)に取り付けられる、請求項1または2に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
取り付けられたカートリッジの前記遠位流出孔部分を囲むように前記装置主要部分に取り外しできるように取り付け可能なキャップを更に備え、前記クリップは、前記キャップに取り付けられている、請求項1または2に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記電子回路は前記キャップに配置され、
前記センサ手段はキャップのイベントを検出するように適合され、
前記電子回路は、キャップのイベントが検出されたときにタイムスタンプを生成するように適合され、
前記ディスプレイは、キャップのイベントに関連する時間パラメータを表示するように適合される、請求項4に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
センサ手段は、前記装置主要部分に配置され、設定および/または吐出された用量のサイズを検出するように適合され、前記薬剤送達装置は、電力および/またはデータが前記キャップと前記装置主要部分との間で交換されることを可能にする手段を備える、請求項4に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記ディスプレイは湾曲している、請求項1から6のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記ディスプレイは、数値を表示するように適合されたLCD、OLEDディスプレイ、プリントディスプレイまたはE−inkディスプレイである、請求項1から7のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記電子回路は、設定および/または前記薬剤吐出手段によってカートリッジから吐出された薬剤の用量のログを生成するように適合されたログ記録手段を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記装置主要部分は、主長手軸を画定し、前記クリップ主要部分は、長手方向の構成を有し、前記主長手軸に全体的に対応するように配置されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ディスプレイを備える携帯型薬剤装置に関連する。特には、本発明は、薬剤送達に関連するデータを捕捉および表示するように適合された装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示において、インスリンの送達による糖尿病の治療において使用される装置ついて主に参照がなされるが、これは本発明の例示的な使用に過ぎない。
【0003】
薬剤注射器具は、薬剤および生物学的製剤を自己投与しなくてはならない患者の生活を大いに向上してきた。薬剤注射器具は、注射手段を有するアンプルよりもわずかに大きい単純な使い捨ての装置などの多くの形態をとってよく、または、充填済みのカートリッジとともに使用されるように適合された耐久性の高い装置であってよい。薬剤注射器具は、その形態およびタイプにかかわらず、注射薬および生物学的製剤を患者が自己投与することを支援する際の大きな助けとなることが分かっている。また、薬剤注射器具は、自己注射を行うことができない患者に介護者が注射剤を投与する際にも大いに支援している。
【0004】
正しい時に正しいサイズの必要とされるインスリンの注射を行うことは、糖尿病の管理のため不可欠であり、すなわち、指定されたインスリンの投薬計画を順守することが重要である。処方された投薬量パターンの効果を医療関係者が判断できるよう、糖尿病患者は、各注射のサイズおよび時刻のログをとることが推奨される。しかしながら、そのようなログは、通常は手書きのノートにつけられるため、ログ記録された情報は、データ処理のためのコンピュータへのアップロードが、容易にはなされ得ない。更には、患者によって書き留められたイベントだけがログ記録されるため、ノートによるシステムは、ログ記録された情報が患者の疾病の治療において何らかの価値を有するためには、患者が各注射をログ記録することを忘れずにいることが必要である。ログにおける記録漏れまたは誤記録は、注射履歴の実態の誤認をもたらし、従って医療関係者が誤認に基づいて将来の薬物に関する決定を行うことになる。それ故、薬物送達システムからの排出情報のログ記録を自動化することが、望ましくなり得る。
【0005】
従って、収納された内容物を読み出すディスプレイを含み、用量監視/取得機能を備えるいくつかの注射装置が提案されている。例えば、米国特許出願公開第2009/0318865号は、ペン本体に配置されたディスプレイを有する薬剤送達ペンを開示しており、これは比較的大きなディスプレイの利用を可能としている。EP0777123は、ディスプレイがクリップベース部分に配置されたペン形状薬剤送達デバイスを開示している。代替的な構成においては、WO2010/052275および米国特許第7,008,399号は、装置の近位方向を向いた端部に配置された全体として円形のディスプレイを有し、対応する電子機器の少なくとも一部分が、軸方向に移動可能な解除ボタンに配置されている、薬剤送達ペンを開示している。しかしながら、この設計においては、ディスプレイの形態およびサイズはペン解除ボタンの所与のサイズおよび形態によって決定される。
【0006】
上記を考慮して、本発明の目的は、安全におよび確実に薬剤送達データが、利便性の高いやり方でユーザに伝えられることを可能にする電子ディスプレイを備える携帯型薬剤送達装置を提供することである。ディスプレイおよび関係する電子機器は、薬剤送達装置の高い設計自由度を可能にし、製造におけるコスト効率の良いものでなくてはならない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の開示において、上記の目的のうちの1つまたは複数に取り組み、または下記の開示ならびに例示的な実施形態の説明から明らかな目的に取り組む実施形態および態様が説明される。
【0008】
従って、本発明の第1の態様において、クリップを有する装置主要部分を備える携帯型薬剤送達装置が提供され、クリップは、薬剤送達装置の一部分に取り付けられるベース部分と、自由端を有するクリップ主要部分とを備える。装置は、軸方向に変位可能なピストンと遠位流出孔部分とを備える薬剤が充填されたカートリッジまたは薬剤が充填されたカートリッジを受容する手段を備える。装置には、薬剤吐出手段であって、ユーザが吐出されるべき薬剤用量のサイズを設定することを可能にする用量設定手段と、カートリッジのピストンを遠位方向に移動し、それによって薬剤をカートリッジから吐出するように適合されたピストンロッドとを備える薬剤吐出手段ならびに、薬剤用量の設定および/または吐出に関連するイベントを検出するように適合されたセンサ手段を備える電子回路とが更に設けられる。装置は、用量に関連する値を表示するように適合されたディスプレイを更に備え、ディスプレイの少なくとも一部分はクリップ主要部分に配置される。「取り付けられる」という用語は、ベース部分が薬剤送達装置の一部分、例えばハウジングコンポーネントと一体的に形成された実施形態もカバーする。
【0009】
ディスプレイをクリップ主要部、すなわち把持部分に組み入れることによって、ディスプレイを薬剤送達装置自体に一体化する必要なく、より大きなディスプレイが提供され得、このことは、薬剤送達装置のよりコンパクトな、例えばよりスリムなおよび/またはより短い設計を可能にする。
【0010】
少なくとも部分的にクリップ把持部に配置されたディスプレイに加えて、電子または電気コンポーネントがクリップベース部分に配置されてよく、電子または電気回路は、例えばエネルギー源および/またはプロセッサを備える。より小さなコンポーネント、例えばアンテナ、もまたクリップ把持部に配置されてよい。
【0011】
クリップは、装置主要部分、または装置主要部分に取り外しできるように取り付け可能なキャップに取り付けられてよく、キャップは、取り付けられたカートリッジの流出孔部分を囲むように適合されている。
【0012】
クリップが装置主要部分に取り付けられている事例では、センサ手段は、設定および/または吐出された用量のサイズを検出するように適合されてよい。
【0013】
クリップがキャップに取り付けられている事例では、電子回路はキャップに配置されてよく、センサ手段はキャップのイベント、例えばキャップの装着またはキャップの分離を検出するように適合され、電子回路は、キャップのイベントが検出されたときにタイムスタンプを生成するように適合され、ディスプレイは、キャップのイベントに関連する時間パラメータを表示するように適合される。代替的に、センサ手段は、装置主要部分に配置されてよく、設定および/または吐出された用量のサイズを検出するように適合されてよく、薬剤送達装置は、電力および/またはデータがキャップに取り付けられたクリップと装置主要部分との間で、例えば無線で、交換されることを可能にする手段を備える。
【0014】
クリップ把持部は可撓性を有してよく、ディスプレイも同様に可撓性を有してよく、例えば、割れにくいガラス製コンポーネントからなる。後者は、ディスプレイが湾曲することを可能にする。ディスプレイは、数値を表示するように適合されたLCD、OLEDディスプレイ、プリントディスプレイまたはE−inkディスプレイであってよい。ディスプレイは、カバー部材に積層されてよい。例示的な実施形態において、可撓性クリップ主要部分は、自由端がクリップベース部分が取り付けられた面から少なくとも1mm離れるように弾性的に移動可能であるように構成される。
【0015】
代替的な構成において、クリップ把持部分は、「硬質」であってよく、クリップ保持アクションは、例えば可撓性部材またはばねで付勢された部材などの、遠位に取り付けられた「ピンチ」部材によって提供されてよい。このような設計によって、従来の「硬質な」ガラス製ディスプレイが使用可能となる。更なる代替例として、硬質のクリップ把持部分は、ヒンジによってクリップベースに装着されてよく、ヒンジはピンチ力を提供する。
【0016】
本文脈における「クリップ」という用語は当業者にはよく知られた技術用語であると考えられるが、上述のクリップ主要部分は、その自由端とベース部分への装着箇所との間に規定される長さを有する細長の構成を有するものとして規定されてよく、クリップ主要部分は、その長さよりもその幅の方が小さい。クリップ主要部分は、ベース部分が取り付けられた、または一体的に形成された薬剤送達装置の部分に対して距離を取って配置され、これによりギャップを形成して、例えば衣服の一片がこのギャップに入り込むことを可能にする。
【0017】
例示的な実施形態において、電子回路は、薬剤吐出手段によってカートリッジから吐出された薬剤の用量のログを生成するように適合されたログ記録手段を備える。
【0018】
本明細書において用いられるとき、「薬剤」という用語は、液体、溶液、ゲルまたは微細懸濁液など、制御された方式でカニューレまたは中空針等の送達手段を通過可能な、1つまたは複数の薬剤製剤を含有する任意の流動性の医薬剤調合物を包含することを意味する。薬剤は、単一の薬剤化合物または単一のリザーバからの予め混合されたあるいは同時に調合された複数の薬剤化合物の薬剤製剤であってよい。代表的な薬剤は、ペプチド(例えば、インスリン、インスリン含有薬剤、GLP−1含有薬剤、ならびにそれらの派生物)、タンパク質、およびホルモン等の薬品、生物学的に誘導されたまたは活性の製剤、ホルモンおよび遺伝子に基づく製剤、栄養配合物、ならびに固体(調剤されたもの)または液体の双方の形態の他の物質を含む。例示的な実施形態の説明において、インスリンおよびGLP−1含有薬剤の使用が参照され、これはそれらの類似物、ならびに1つまたは複数の他の薬剤と組み合わせたものを含む。
【0019】
以下において、図面を参照して本発明の実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】端部に取り付けられたディスプレイを有するペン形状薬剤送達デバイスを図示した図である。
【
図2A】
図1の装置のディスプレイを端面図で図示した図である。
【
図2B】
図1の装置ためのディスプレイのための代替的な構成を図示した図である。
【
図3】クリップに取り付けられたディスプレイを有するペン形状薬剤送達デバイスを図示した図である。
【
図4】クリップに取り付けられたディスプレイを組み入れた薬剤送達装置の近位部分を図示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図において、類似の構造体は、主に類似の参照数字によって識別される。
【0022】
以下において、「上側」および「下側」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」等の用語または似通った相対表現法が使用されるとき、これらは、添付の図のみを指し、必ずしも実際の使用状況を指すものではない。図示される図は概略的な表現であり、このため、種々の構造体の構成ならびにそれらの相対的な寸法は、例示としての目的のみを果たすことが意図される。所与のコンポーネントについて、部材または要素という用語が使用されるとき、これは概して、説明される実施形態において、そのコンポーネントが単体のコンポーネントであることを示すが、代替的に、同一の部材または要素がいくつかのサブコンポーネントを備えてもよく、同様に、説明されるコンポーネントのうちの2つ以上が、単体のコンポーネントとして提供され、例えば、単一の射出成形部として製造されてもよい。「アセンブリ」という用語は、説明されるコンポーネントが、所与の組み立て手順中に、単体のまたは機能アセンブリを提供するように必ず組み立てられ得ることを含意せず、単に、機能的により密接に関連するものとして、まとめてグループ化されたコンポーネントを説明するのに使用される。
【0023】
図1を参照すると、WO2010/052275に開示されるようなペン形状薬剤送達デバイスが説明される。本文脈において、この装置は、用量検出手段と、検出された用量サイズに関連する情報を表示するための近位端に取り付けられた全体として円形のディスプレイとが設けられた装置の例を提供する、「一般的(generic)」従来技術の薬剤送達装置を表している。
図1の装置に似通った薬剤送達装置は、Novo NordiskによってNo−voPen Echo(登録商標)として市販されている。
【0024】
より具体的には、ペン装置100は、キャップ部(不図示)と、主要部とを備え、主要部は、薬剤吐出機構が配置または一体化されたハウジング121を有する近位本体またはドライブアセンブリ部分120と、針が貫通可能な遠位の隔膜を有する薬剤が充填された透明カートリッジ180が、例えばねじ接続またはバヨネット結合によって、近位部分に取り外しできるように装着されたカートリッジホルダ110によって所定の位置に配置され、留められ得る、遠位カートリッジホルダ部分とを有し、カートリッジホルダは、カートリッジの一部分が検査されることを可能にする開口を有する。カートリッジは、例えば、インスリン、GLP−1または成長ホルモン調合物を収容してよい。装置は、カートリッジホルダに、ユーザによって、近位受容開口を通じて新しいカートリッジが搭載されるように設計され、カートリッジには、吐出機構のピストンロッド形成部によって駆動されるピストンが設けられる。最も近位の回転可能な用量部材125は、ディスプレイウィンドウ126に提示される所望の薬剤用量を手動で設定する役割を果たし、この用量はボタン127が作動されると吐出可能である。所与の薬剤送達装置において具現化された吐出機構のタイプに応じて、吐出機構は、用量の設定中に引っ張られ、解除ボタンが作動されると解除されてピストンロッドを駆動するばねを備えてよい。これは、例えば、Ypsomedによって販売されるServoPen(登録商標)によって知られている。代替的に、吐出機構は完全に手動であってもよく、そのような事例では、用量部材および作動ボタンが、用量の設定中に、設定用量サイズに対応して近位に移動し、次いで、設定用量を吐出するようにユーザによって遠位に移動される。これは、図示された実施形態に対応している。カートリッジには、例えばねじまたはバヨネット結合を用いて針アセンブリ185が取り付けられることを可能にする針ハブ取り付け部の形態の遠位結合手段が設けられる。
【0025】
図に見られるように、
図1は、カートリッジホルダが装置主要部分から取り外されるように適合された「背面装填式の」薬剤送達装置を図示するが、薬剤送達装置は、代替的に、カートリッジが、装置の主要部に取り外し不可能に装着されたカートリッジホルダ内の遠位開口を通じて挿入される、前面装填式のタイプでもよい。
【0026】
図1のペン装置は、吐出された薬剤用量を登録し、用量が吐出されてからの時間の指標とともに近位方向を向いたディスプレイに提示することを可能にする電子回路を備える。それに応じて、装置は、
図2Aに図示されるように、液晶ディスプレイ(LCD)の形態のディスプレイを備える。図はLCDコンポーネント200自体を図示しており、図に見られるように、有効なディスプレイ領域210は、コンポーネント自身よりも幾分か小さい。装置に取り付けられたとき、周囲の余白部分220はリムによって覆われる。図示された特定の実施形態は、投薬量サイズと、最後に行われた注射からの経過時間とを提示するように設計されている。投薬量サイズは、ディスプレイの中央に7セグメントの数211によってインスリンIU単位で数値的に提示され、最後の注射からの時間は、周囲に配置されたセグメント212を使用して、注射から経過した時間単位で示され、表示されたセグメントの数によって、例えば各セグメントが1時間が経過したことを示すなどして、最後の注射からの経過時間が素早く参照される。特定の実施形態において、複数の事前に記憶された吐出された投薬量サイズがタイミング情報とともにデータセットとして記憶され、投薬量セレクタ125を順次に操作することによって、例えば投薬量セレクタを軸方向に前後に移動させることによって、または代替的には投薬量セレクタを回転させることによって、ディスプレイ200に提示されてもよい。
【0027】
図2Bは、近位に取り付けられ、2行の数値を有する円形のディスプレイ201の代替的な構成を図示する。ディスプレイは、種々のフォーマットでデータを提示するように構成され得る。例えば、
図2Bのディスプレイは、時間がHH:MM:SSのストップウオッチデザインを使用して提示される2行ディスプレイであり、これによって、装置から吐出された最後の用量からの時間が、稼働中の秒カウンタによって提示され得、ユーザは提示された情報をカウントされる時間の値として容易に識別可能になる。24時間以降には、ディスプレイはHH:MM:SSのフォーマットでの時間表示を続けてもよく、または日時フォーマットでの表示に切り替えてもよい。
【0028】
典型的なペン形状薬剤送達デバイスは、典型的には15〜18mmの範囲の全体的な外側直径を有することから、提示される数字およびシンボルのサイズはむしろ小さくなり、従って、多くの高齢者など視覚に障害のあるユーザが読み取ることが困難になることがある。
【0029】
この問題に取り組むために、
図3は、キャップ302ではなくペン主要本体301に取り付けられたポケットクリップ360を有するペン形状薬剤送達デバイス300を図示する。クリップ360は、ハウジングに装着されたベース部分361と、自由遠位端363を有するとともに遠位に延在して、クリップが、例えばシャツのポケットの縁を把持することを可能にする可撓性部分362とを備える。クリップは、図示された実施形態においてはクリップの湾曲に対応するように長手方向に湾曲された電子ディスプレイ374を備える。図示された装置は、用量の設定中に用量設定部材340が回転されると引っ張られるばねを有した吐出機構を備え、設定用量は、解除ボタン350が作動されると解除されてピストンロッドを駆動する。図示された実施形態において、ディスプレイは、
図2Bに図示された円形のディスプレイと同一の情報、すなわち、用量サイズとHH:MM:SSのストップウオッチデザインを使用した最後の用量からの時間とを表示するように設計される。明らかであるように、数字のサイズはより大きくされ得る。更には、更なる目的のために既存の構造体を利用することにより、薬剤送達装置内のコンポーネントは、より魅力的でユーザフレンドリな設計を達成するために再配置され得る。より具体的には、ディスプレイ、更には、設計に応じて電子コンポーネントを主要本体から離れるように移動することによって、よりスリムなおよび/またはより短い全体設計が達成され得る。図示される実施形態において、ディスプレイの横方向配向が、クリップのディスプレイが、用量の設定中に実際の用量サイズを提示するために使用されることも可能にし、従って、ディスプレイは
図1の実施形態の機械的な用量設定ディスプレイ126の代わりとなる。
【0030】
図4において、クリップに取り付けられたディスプレイを組み入れた薬剤送達装置の近位部分が、概略的な表現で図示されている。この図は、用量感知手段およびクリップに取り付けられたディスプレイが、どのようにしてばね駆動タイプの薬剤送達装置に組み入れられ得るかを図示している。
【0031】
より具体的には、薬剤送達装置400は、全体としてチューブ状のハウジング410と、駆動チューブ420と、リング状のばねおよびセンサ取り付け部材430と、回転可能な用量設定部材440と、近位解除ボタン450と、クリップ460と、用量感知電子回路470とを備える。装置は、ピストンロッドと、ピストンロッドを回転させて遠位に移動させる(不図示)ためのドライバとを更に備える。スケールドラム(不図示)が、機械的な用量表示を提供してもよい。取り付け部材430は、薄板接続部421を介して駆動チューブ420に回転不可能に結合され、駆動チューブが、ハウジングに対して軸方向に固定されるように配置された取り付け部材に対して軸方向に移動されることを可能にする。螺旋状に巻かれたばね431は、ハウジングと取り付け部材とに個々に装着され、用量の設定中に駆動チューブと共に取り付け部材が回転されるにつれてばねが引っ張られることを可能にする。リング状の第1の回転センサ部432は、取り付け部材に取り付けられ、取り付け部材とともに回転する。対応する不動の第2のリング状の回転センサ部472は、ハウジングに取り付けられ、2つのセンサ部は合わさって回転センサアセンブリを形成し、回転センサアセンブリは電子回路と協同して、用量サイズデータを計算するために使用され得るデータを提供する回転エンコーダを提供する。回転する第1の回転センサ部は、2つの回転センサ部が互いに対して回転すると不動の第2の回転センサ部上の対応する符号化構造体と係合する「受動的(passive)」な金属部材でよい。回転エンコーダのより詳細な説明は、参照によって本明細書に組み入れられるPCT/EP2014/053221において見出すことができる。
【0032】
用量設定部材440は、ハウジングに対して軸方向に固定されるように配置され、薄板接続部441を介して駆動部材に結合され、用量の設定中に用量設定部材が駆動チューブを回転させることを可能にする。解除可能な二方向ラチェット機構(不図示)は、ハウジングと駆動チューブとの間に配置され、駆動部材が、所与の回転位置に、ばねがそれに応じて引っ張られた状態で、回転および保持され得るようにし、この二方向性によって、用量が双方向的に設定および調節され得るようになる。駆動結合器(不図示)は、駆動チューブと駆動部材との間に配置され、駆動結合器は用量の設定中に係合解除される。解除ボタン450は、駆動チューブに結合され、解除ボタンはばね451によって近位に付勢されている。
【0033】
クリップ460は、ハウジングに装着されたベース部分461と、自由遠位端463を有するとともに遠位に延在して、クリップが、例えばシャツのポケットの縁を把持することを可能にする可撓性部分462とを備える。クリップは、可撓性PCB471と、可撓性ディスプレイ474と、「バッテリ」475とを備える電子回路470を収容する。図示されるように、バッテリはクリップベース部分に取り付けられ、PCBおよびディスプレイは、部分的にクリップの可撓性自由部分に取り付けられる。PCBは、コネクタ473を介して不動の第2の回転センサ部472に接続される。プロセッサ、送受信機、アンテナおよびメモリを提供する追加的な電子コンポーネントが、個別の設計およびコンポーネントの空間要求に応じて、クリップベース部分、自由クリップ部分またはハウジング内部に配置されてよく、設計の自由度を高くすることができる。更に、軸方向用量スイッチ(不図示)が設けられて、PCBに接続され、このスイッチは、装置が用量設定状態にあるかまたは投薬(out−dosing)状態にあるかを検知する。
【0034】
装置の通常動作中に、以下のことが起こる。ユーザは、用量設定部材を所望の設定用量に対応する所望の回転位置まで回転させて駆動ばねをそれに応じて引っ張ることによって、吐出されるべき用量を設定する。用量の設定中は、用量スイッチは用量設定状態にあり、回転運動が設定用量として検出され、この設定用量はディスプレイに提示されてよい。ユーザが設定用量を吐出することを欲すると、解除ボタン、従って駆動チューブが遠位に移動され、それによって以下のことが起こる。(i)駆動チューブが薄板接続部441に対応する用量設定部材から係合解除する。(ii)駆動チューブが駆動結合器を介して駆動部材と係合する。(iii)駆動チューブが用量設定ラチェット機構から解除され、それによってばねが解除されて駆動チューブおよび駆動部材を回転させてピストンロッドを遠位に駆動し、それによって装填されたカートリッジから薬剤用量を吐出する。駆動チューブが遠位に移動されると、用量スイッチは用量設定モードから投薬モードにシフトし、回転エンコーダによって検知された回転運動が、吐出される薬剤の量を登録および計算するためにそれに応じて使用される。設定用量が吐出されると(または事前設定された時間の間、吐出アクションが休止されると)、吐出された用量サイズがディスプレイに提示され、ストップウオッチのカウンタが稼働を開始する。数秒後に、ディスプレイはタイムアウトするが、例えば解除ボタンを押下することによって再び点灯されてよい。
【0035】
例示的な実施形態の上記の説明において、種々のコンポーネントについて説明された機能性を提供する種々の構造体および手段が、本発明の概念が当業者である読み手に明らかになる程度まで説明された。種々のコンポーネントの詳細な構造および仕様は、本明細書に述べられた趣旨に沿って当業者によって行われる通常の設計手順の対象であると考えられる。