特許第6810712号(P6810712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6810712交換可能なエネルギー変換器を伴う浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810712
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】交換可能なエネルギー変換器を伴う浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/25 20160101AFI20201221BHJP
【FI】
   F03D13/25
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-568375(P2017-568375)
(86)(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公表番号】特表2018-520297(P2018-520297A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】SE2016050635
(87)【国際公開番号】WO2017003355
(87)【国際公開日】20170105
【審査請求日】2019年5月17日
(31)【優先権主張番号】1550937-5
(32)【優先日】2015年7月2日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】517455579
【氏名又は名称】シートビルル アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル エーンバリ
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−028298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 13/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沖合施設のための浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置において、
− 長手方向風力タービン本体軸に沿って延在する細長い風力タービン本体であって、前記風力エネルギー・ハーベスティング装置が作動中であるときに主として水面下にあるべき下部本体部分と前記風力エネルギー・ハーベスティング装置が作動中であるときに主として水面上にあるべき上部本体部分とを含む、風力タービン本体と;
− 風力エネルギーを前記長手方向風力タービン本体軸を中心とした前記風力タービン本体の回転に変換するために前記上部本体部分に取付けられた少なくとも1つの翼と;
− 前記風力タービン本体の前記回転を電気エネルギーに変換するために前記風力タービン本体に取付けられたエネルギー変換器と;
を含む風力エネルギー・ハーベスティング装置であって、
前記エネルギー変換器は、前記風力タービン本体の回転に応答して回転するために前記風力タービン本体に結合された第1のエネルギー変換器部品と、前記風力タービン本体との関係において比較的静止状態に保たれるべき第2のエネルギー変換器部品とを含み、前記第2のエネルギー変換器部品との関係における前記第1のエネルギー変換器部品の結果としての回転は、前記エネルギー変換器によって電気エネルギーに変換され、
前記風力タービン本体の前記上部本体部分、前記第1のエネルギー変換器部品、および前記風力タービン本体の前記下部本体部分が、前記長手方向風力タービン本体軸を中心として同じ方向に共に回転するように、前記エネルギー変換器は、前記第1のエネルギー変換器部品と前記風力タービン本体の前記下部本体部分との間の第1の解除可能な機械的結合、および、前記第1のエネルギー変換器部品と前記風力タービン本体の前記上部本体部分との間の第2の解除可能な機械的結合を用いて、前記風力タービン本体に取付けられている、浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置。
【請求項2】
前記風力エネルギー・ハーベスティング装置が作動中であるときに前記エネルギー変換器が前記水面上に配置されているような形で構成されている、請求項1に記載の浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置。
【請求項3】
前記上部本体部分が第1の本体フランジを含み;
前記下部本体部分が第2の本体フランジを含み;
前記第1のエネルギー変換器部品が第1のエネルギー変換器フランジおよび第2のエネルギー変換器フランジを含み;
前記第1の本体フランジが前記第1のエネルギー変換器フランジに対し解除可能な形で連結され、前記第2の本体フランジが前記第2のエネルギー変換器フランジに対し解除可能な形で連結されている、
請求項1または2に記載の浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置。
【請求項4】
前記第1の本体フランジが、第1の解除可能な締結用配置体を用いて前記第1のエネルギー変換器フランジに対して解除可能な形で連結され、
前記第2の本体フランジが、第2の解除可能な締結用配置体を用いて前記第2のエネルギー変換器フランジに対して解除可能な形で連結されている、
請求項3に記載の浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置。
【請求項5】
前記第1および第2の解除可能な締結用配置体の各々が、複数のボルトおよび対応するナットを含む、請求項4に記載の浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置。
【請求項6】
前記第1の本体フランジおよび前記第2の本体フランジのうちの少なくとも1つが、
− 前記風力タービン本体に対する前記エネルギー変換器の解除可能な取付けのための第1の穴のセットと、
− 前記第1の本体フランジと前記第2の本体フランジの間における前記風力タービン本体に対する風力タービン本体保持用配置体の一時的な解除可能な取付けのための第2の穴のセットと、
を含む、請求項3ないし5のいずれか1項に記載の浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置。
【請求項7】
前記エネルギー変換器がさらに、
− 前記第1のエネルギー変換器部品および前記第2のエネルギー変換器部品に機械的に結合された制動用配置体と;
− 前記第2のエネルギー変換器との関係において前記第1のエネルギー変換器部品の回転速度を低減させるように前記制動用配置体を制御するための処理回路と、
を含む、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の前記浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置の前記エネルギー変換器を交換する方法において、
− 前記上部本体部分および前記下部本体部分に保持用配置体を取付けるステップであって、前記保持用配置体が、前記上部本体部分および前記下部本体部分の相対的配置を維持するように配置され構成されている、前記保持用配置体を取付けるステップと;
− 前記第1の解除可能な機械的結合および前記第2の解除可能な機械的結合を解除するステップと;
− 前記エネルギー変換器と前記上部本体部分および前記下部本体部分の各々との間の軸力を低減させるステップと;
− 前記エネルギー変換器を取外すステップと;
− 前記上部本体部分と前記下部本体部分の間に交換用エネルギー変換器を配置するステップと;
− 前記第1の解除可能な機械的結合および前記第2の解除可能な機械的結合を用いて前記上部本体部分および前記下部本体部分に対して前記交換用エネルギー変換器を取付けるステップと;
− 前記エネルギー変換器と前記上部本体部分および前記下部本体部分の各々との間の軸力を増大させるステップと;
− 前記保持用配置体を切り離し、取外すステップと;を含む、方法。
【請求項9】
前記エネルギー変換器は、少なくとも当初は、前記風力タービン本体の長手方向軸に対して実質的に直交する方向に前記エネルギー変換器を移動させることによって取外される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置が、前記風力タービン本体の回転を実質的に防止するための制動用配置体を含み、前記方法が、
− 前記上部本体部分および前記下部本体部分に対して前記保持用配置体を取付ける前に前記風力タービン本体の回転を防止するように前記制動用配置体を制御するステップ
をさらに含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
− 前記保持用配置体および前記交換用エネルギー変換器を運搬する浮動の船舶を提供するステップと;
− 前記保持用配置体が前記上部本体部分と前記下部本体部分との間に配置された状態となるような形で、前記風力タービン本体との関係において前記船舶を操縦するステップと;
をさらに含む、請求項8ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記軸力を低減させるステップが、
− 前記保持用配置体を加熱して拡張させるステップ;
を含む、請求項8ないし11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記軸力を低減させるステップが、
− 前記保持用配置体を冷却して収縮させるステップ;
を含む、請求項8ないし12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沖合施設用の浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置、および浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置のためのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力エネルギーは長い間、清潔かつ安全な形態のエネルギーであるものとして知られている。近年、発電のための風力タービンの使用が増加している。生成される電気の大部分は、陸上風力タービンに由来するものである。
【0003】
しかしながら、新たな風力タービン向けの好適地を陸上に見出すことは、時として困難であり、海上の風が陸上の風に比べ強くより一貫したものであることも知られている。他方で、沖合の風力タービンは、著しく厳しい条件に耐えることができなければならず、これまでのところ、設置およびメンテナンスのためのアクセスはより困難でコストのかかるものであることが判明している。
【0004】
したがって、沖合で使用するのに好適な風力タービンを開発することに多くの努力が払われてきた。
【0005】
特に沖合の場所における信頼性およびコスト効率の高いタービン基礎の設置は、大きな課題であることが分かっているため、1つのアプローチは、沖合で使用するための浮動式風力タービンを開発することにあった。
【0006】
特に興味深い開発は、浮動式垂直軸風力タービン(VAWT)であり、この場合、VAWTの浮動式タービン本体は、水を一種の軸受として有効に使用して水中で回転する。
【0007】
以上で言及した風力タービン基礎の高コストで複雑な建設の必要性を事実上無くしかつ比較的コスト効率の高いこのアプローチは、特許文献1(国際公開第2011/008153号)および特許文献2(蘭国特許発明第1035026号明細書)中に記載されている。
【0008】
ただし、全ての沖合用風力タービンに関して、メンテナンスは、特に非常に大型の風力タービンについて、難易度の高いものであることがなおも予想される。
【0009】
したがって、改良の余地が存在するように思われる。特に、特許文献1および特許文献2中に記載のタイプの浮動式垂直軸風力タービンの容易なメンテナンスを提供することが望ましいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2011/008153号
【特許文献2】蘭国特許発明第1035026号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
先行技術が有する上述のおよび他の欠点を考慮すると、本発明の目的は、改良された浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置を提供すること、および詳細にはこのような風力エネルギー・ハーベスティング装置の容易なメンテナンスを提供することにある。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様によると、沖合施設のための浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置において、長手方向風力タービン本体軸に沿って延在する細長い風力タービン本体であって、風力エネルギー・ハーベスティング装置が作動中であるときに主として水面下にあるべき下部本体部分と風力エネルギー・ハーベスティング装置が作動中であるときに主として水面上にあるべき上部本体部分とを含む風力タービン本体と;風力エネルギーを長手方向風力タービン本体軸を中心とした風力タービン本体の回転に変換するために上部本体部分に取付けられた少なくとも1つの翼と;風力タービン本体の回転を電気エネルギーに変換するために風力タービン本体に取付けられたエネルギー変換器と;を含む風力エネルギー・ハーベスティング装置であって、エネルギー変換器は、風力タービン本体の回転に応答して回転するためにタービン本体に結合された第1のエネルギー変換器部品と、風力タービン本体との関係において比較的静止状態に保たれるべき第2のエネルギー変換器部品とを含み、第2のエネルギー変換器部品との関係における第1のエネルギー変換器部品の結果としての回転は、エネルギー変換器によって電気エネルギーに変換され、エネルギー変換器は、第1のエネルギー変換器部品と風力タービン本体の下部本体部分との間の第1の解除可能な機械的結合および第1のエネルギー変換器部品と風力タービン本体の上部本体部分との間の第2の解除可能な機械的結合を用いて、風力タービン本体に取付けられている、浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置が提供される。
【0013】
上部本体部分および下部本体部分の各々がそれ自体、異なる機能を果たし得る複数の部分から形成されていてよいということを理解すべきである。例えば、下部本体部分は、風力エネルギー・ハーベスティング装置を全体として直立して浮動させ、こうして長手方向風力タービン本体軸が概して垂直である状態に保つために浮力提供部分とバラスト部分(錘)を含むことができる。当然のことながら、風および/または波の作用は、典型的に、長手方向風力タービン本体軸の向きを変動させ、垂直方向から偏向させ得る。
【0014】
上述の浮力提供部分およびバラスト部分に関して、これらの部分は有利には、浮力中心と質量中心を分離するために、可能なかぎり離隔されてよい。この配置が、風力エネルギー・ハーベスティング装置の安定した作動を提供する。
【0015】
下部本体部分は主として水面下にあるべきであるとは、下部本体部分の長さの半分超が水面下にあることを意味すると理解すべきである。
【0016】
上部本体部分および下部本体部分は、有利には第1のエネルギー変換器部品を介して連結固定することができ、こうして、上部本体部分の1回転が下部本体部分の1回転を結果としてもたらすようになっている。
【0017】
エネルギー変換器は有利には、発電機/電動機であってよく、第1のエネルギー変換器部品および第2のエネルギー変換器のうちの一方は、少なくとも1つの磁石を含むことができ、第1および第2のエネルギー変換器部品のもう一方は少なくとも1つのコイルを含むことができ、こうして、第2のエネルギー変換器部品との関係における第1のエネルギー変換器部品の回転の結果として、少なくとも1つのコイルの導体が、少なくとも1つの磁石によって生成される磁場の中を運動するようになっている。
【0018】
有利には、第1のエネルギー変換器部品は少なくとも1つの磁石を含み、第2のエネルギー変換器部品は少なくとも1つのコイルを含み、こうしてエネルギー変換器からおよびエネルギー変換器への電流の伝導を容易にすることができる。代替的には、1つ以上の発電機/電動機が、第1のエネルギー変換器部品および第2のエネルギー変換器部品の一方の中に含まれていてよく、(発電機モードにある場合)第1および第2のエネルギー変換器部品の間の相対的回転によって駆動されてよい。例えば、1つ以上の発電機/電動機は、第2のエネルギー変換器部品に取付けられ、(発電機モードにある場合)第1のエネルギー変換器部品上のピニオンにより駆動されてよい。
【0019】
錨泊用配置体または制動用配置体に第2のエネルギー変換器部品を機械的に結合できるようにするため、第2のエネルギー変換器部品にアームを連結し、こうして第1のエネルギー変換器部品と第2のエネルギー変換器部品の間の所望の相対的回転を達成することができる。
【0020】
上述の電流は、上述のアームに沿って延在し得る導体中をエネルギー変換器からまたはエネルギー変換器へ伝導され得る。
【0021】
さらに、エネルギー変換器は、風力エネルギー・ハーベスティング装置の作動を制御するための制御ユニットを含んでいてよい。例えば、制御ユニットは、エネルギー変換器を、発電機としての機能と電動機としての機能の間で交番させるべく制御するように構成されていてよい。さらに、制御ユニットは、下部本体部分および/または上部本体部分内に配置され得る1つ以上のアクチュエータ(単複)を制御するように構成され得る。
【0022】
下部本体部分および/または上部本体部分内に配置された1つ以上のアクチュエータの作動をエネルギー変換器内に含まれた制御ユニットが制御できるようにするために、風力エネルギー・ハーベスティング装置はさらに、エネルギー変換器と下部本体部分および上部本体部分のうちの少なくとも1つとの間に、電気信号用の解除可能な電気的結合を含むことができる。考えられるアクチュエータの例は、下部本体部分内に具備されたポンプおよび少なくとも1つの翼を制御するための上部本体部分内の翼ピッチ制御アクチュエータであり得る。
【0023】
第1および第2の機械的結合が解除可能であるとは、第1および第2の機械的結合を係合解除し再係合することができるということを意味するものと理解すべきである。例えば、第1および第2の機械的結合の各々は、少なくとも1つの取外し可能かつ再利用可能な締結具を用いて達成可能である。
【0024】
本発明は、交換および/またはメンテナンスを必要とする確率の高い機能性を、現場において装置の残りの部分から比較的容易に切り離して取り外すことのできるモジュール式ユニット内にまとめることによって、浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置のメンテナンスをより容易で安全なものにすることができるという認識に基づくものである。当該発明者は、さらに、下部本体部分および上部本体部分を提供し、エネルギー変換器を介して、詳細には下部および上部風力タービン本体部分と共に回転する第1のエネルギー変換器部品を介して、上部本体部分と下部本体部分を解除可能な形で機械的結合することによって、これを達成できるということも認識した。
【0025】
本発明の実施形態はこうして、特に風力エネルギー・ハーベスティング装置が非常に大型である場合に、VAWTタイプの浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置のより単純でより安全なメンテナンスを提供する。このことが今度は、この浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置の寿命全体にわたり生成される単位電気エネルギーあたりのコストを削減する。
【0026】
本発明の実施形態に係る浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置は、有利には、風力エネルギー・ハーベスティング装置が作動中である場合に、エネルギー変換器が水面上に配置されているような形で構成されてよい。
【0027】
このことは、例えば、下部本体部分および上部本体部分の好適な寸法決定を通して達成され得る。例えば、下部本体部分内に含まれ得る上述の浮力提供部分およびバラスト部分は、エネルギー変換器が全体として水面上にあるような形に寸法決定されてよい。当然のことながら、エネルギー変換器は、特に大波および強風の場合に、間欠的に少なくとも部分的に水面下にあり得る。
【0028】
エネルギー変換器のこの配置により、エネルギー変換器へのアクセスが容易になり、海水に対するその曝露は削減される。
【0029】
さまざまな実施形態によると、上部本体部分は、第1の本体フランジを含むことができ;下部本体部分は第2の本体フランジを含むことができ;第1のエネルギー変換器部品は第1のエネルギー変換器フランジおよび第2のエネルギー変換器フランジを含むことができ;第1の本体フランジは、第1のエネルギー変換器フランジに対し解除可能な形で機械的に連結され得、第2の本体フランジは、第2のエネルギー変換器フランジに対し解除可能な形で機械的に連結され得る。
【0030】
フランジは、ボルトおよびナットなどの好適な締結具を用いて互いに解除可能な形で連結されてよい。代替的には、連結されたフランジの1つの中の孔はネジ孔であってよい。
【0031】
連結されたフランジ間の界面は、下部本体部分と上部本体部分の間から外へのエネルギー変換器の滑動を容易にするように平面であり得る。代替的には、フランジ対の少なくとも1つは、フランジ対によって形成される機械的結合を横断したトルクの移送を改善するために、対応する溝またはトラックを有していてよい。
【0032】
例えば、下部本体部分とエネルギー変換器の間のフランジ対は、平面である界面を有していてよく、上部本体部分とエネルギー変換器の間のフランジ対は、上部本体部分から第1のエネルギー変換器部品へのトルクの信頼性の高い移送を提供するため、溝および溝の中に嵌合する対応する隆起(ridges)を有することができる。
【0033】
概して、第1の機械的結合および第2の機械的結合は、結合が解除される場合に風力タービン本体の長手方向軸に直交する方向にエネルギー変換器を取外すことができるような形で構成されてよい。
【0034】
さまざまな実施形態によると、第1の本体フランジおよび第2の本体フランジの少なくとも一方は、風力タービン本体に対するエネルギー変換器の解除可能な取付けのための第1の穴のセット;および第1の本体フランジと第2の本体フランジの間の風力タービン本体に対する風力タービン本体保持用配置体の解除可能な一時的な取付けのための第2の穴のセットを含むことができる。
【0035】
第1の穴のセットは、エネルギー変換器が下部本体部分と上部本体部分の間に取付けられている一方で下部および上部風力タービン本体部分に対する風力タービン保持用配置体の取付けを容易にするため、第2の穴のセットに比べて風力タービン本体の長手方向軸により近接して配置され得る。
【0036】
実施形態によると、さらに、エネルギー変換器は追加で、第1のエネルギー変換器部品および第2のエネルギー変換器部品に機械的に結合された制動用配置体;および第2のエネルギー変換器部品との関係において第1のエネルギー変換器部品の回転速度を低減させるように制動用配置体を制御するための処理回路を含むことができる。処理回路は、例えば、風力エネルギー・ハーベスティング装置の他の機能を制御するための制御ユニット内に含められてよい。
【0037】
本発明のさまざまな実施形態に記載の、浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置のエネルギー変換器を交換する方法において、上部本体部分および下部本体部分に保持用配置体を取付けるステップであって、保持用配置体が、上部本体部分および下部本体部分の相対的配置を維持するように配置され構成されている、保持用配置体を取付けるステップと;第1の解除可能な機械的結合および第2の解除可能な機械的結合を解除するステップと;エネルギー変換器と上部本体部分および下部本体部分の各々との間の軸力を低減させるステップと;エネルギー変換器を取外すステップと;上部本体部分と下部本体部分の間に交換用エネルギー変換器を配置するステップと;第1の解除可能な機械的結合および第2の解除可能な機械的結合を用いて上部本体部分および下部本体部分に対して交換用エネルギー変換器を取付けるステップと;エネルギー変換器と上部本体部分および下部本体部分の各々との間の軸力を増大させるステップと;保持用配置体を切り離し、取外すステップと;を含む、方法が提供されている。
【0038】
エネルギー変換器を取外す前に、取外しを可能にするのに充分なだけ軸力を低減させる。有利には、上部本体部分の質量の結果としてエネルギー変換器上に作用する圧縮力を、エネルギー変換器が取外される前にゼロまたはゼロ近くまで低減させてよい。
【0039】
本発明のさまざまな実施形態に係る方法のステップは、必ずしも何らかの特定の順序で実施される必要はない。例えば、交換用エネルギー変換器を上部本体部分および下部本体部分に取付ける前に、エネルギー変換器と上部本体部分および下部本体部分の各々との間の軸力を増大させてもよい。
【0040】
同様に、交換用エネルギー変換器は、異なるエネルギー変換器であるかまたは部品交換などのメンテナンス後の予め取外された同一のエネルギー変換器であり得るという点も指摘しておくべきである。
【0041】
エネルギー変換器は有利には、少なくとも当初は、風力タービン本体の長手方向軸に実質的に直交する方向にエネルギー変換器を移動させることによって取外し可能である。
【0042】
さらに、浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置は、風力タービン本体の回転を実質的に防止するための制動用配置体を含むことができ、この方法は、上部本体部分および下部本体部分に対して保持用配置体を取付ける前に風力タービン本体の回転を防止するように制動用配置体を制御するステップをさらに含ことができる。
【0043】
風力タービン本体は、制動用配置体が活動化されていても、ゆっくりと回転できるということを理解すべきである。
【0044】
様々な実施形態によると、本発明の方法は、さらに、保持用配置体および交換用エネルギー変換器を運搬する浮動の船舶を提供するステップと;保持用配置体が上部本体部分と下部本体部分との間に配置された状態になるような形で、風力タービン本体との関係において船舶を操縦するステップと、をさらに含むことができる。換言すると、浮動の船舶は、エネルギー変換器を交換する前に風力タービン本体と好適な形でドッキングすることができる。
【0045】
上部および下部本体部分とエネルギー変換器との間の軸力は、有利には、保持用配置体を加熱することおよび/またはエネルギー変換器を冷却することによって一時的に低減され得る。代替的には、または組合せた形で、保持用配置体は、例えば上部本体部分を上昇させるために液圧を利用し得る昇降用配置体を含んでいてよい。
【0046】
要約すると、さまざまな実施形態によると、本発明は、下部本体部分および上部本体部分を有する風力タービン本体;風力エネルギーを風力タービン本体の回転に変換するために上部本体部分に取付けられた少なくとも1つの翼と;風力タービン本体の回転を電気エネルギーに変換するために風力タービン本体に取付けられたエネルギー変換器と;を含む浮動式VAWTに関する。エネルギー変換器は、第1のエネルギー変換器部品と、この第1のエネルギー変換器部品との関係において比較的静止状態に保たれるべき第2のエネルギー変換器部品とを含む。エネルギー変換器は、第1のエネルギー変換器部品と風力タービン本体の下部本体部分との間の第1の解除可能な機械的結合および第1のエネルギー変換器部品と風力タービン本体の上部本体部分との間の第2の解除可能な機械的結合を用いて風力タービン本体に取付けられている。
【0047】
本発明のこれらのおよび他の態様について、ここで、本発明の例示的実施形態を示す添付図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の一例示的実施形態に係る風力エネルギー・ハーベスティング装置の概略的斜視図である。
図2図1の風力エネルギー・ハーベスティング装置内に含まれるエネルギー変換器および、エネルギー変換器と下部および上部風力タービン本体部分との間の連結の拡大図である。
図3】本発明に係る方法の例示的実施形態を概略的に示す流れ図である。
図4a図3の流れ図の方法を実施する場合に使用できる浮動の船舶の一実施例を概略的に示す。
図4b図3の流れ図の方法を実施する場合に使用できる浮動の船舶の一実施例を概略的に示す。
図5】エネルギー変換器を取外す前の風力タービン本体に対する保持用配置体の取付けを概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、浮動式垂直軸風力タービン(VAWT)1の形をした浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置を概略的に示す。図1では、VAWT1は、海2の上を浮動し風3に曝露されている状態で示されている。
【0050】
図1によると、VAWT1は、長手方向風力タービン本体軸5に沿って延在する細長い風力タービン本体を含む。図1に概略的に示されているように、風力タービン本体は、主として水面8の下に配置された下部本体部分7と、主として水面8の上に配置された上部本体部分10とを含む。VAWT1はさらに、上部本体部分10に取付けられた翼11a〜c、および下部本体部分7と上部本体部分10の間で風力タービン本体に取付けられたエネルギー変換器12を含む。
【0051】
以下でさらに詳述するように、エネルギー変換器12は第1のエネルギー変換器部品14と第2のエネルギー変換器部品15とを含む。第1のエネルギー変換器部品14は、下部本体部分7および上部本体部分10と共にタービン本体軸を中心にして回転するように下部本体部分7および上部本体部分10に対し解除可能な形で機械的に結合されている。第2のエネルギー変換器部品15は、第1のエネルギー変換器部品14との関係において比較的静止した状態に第2のエネルギー変換器部品15を保つために、アーム18を介して錨泊用配置体17に結合される。
【0052】
図1に概略的に示されているように、下部本体部分7は、VAWT1を全体的に垂直に保ち、エネルギー変換器12を水面8の上方に保つように寸法決定された浮力提供部分20およびバラスト部分21を含む。
【0053】
浮力提供部分20は、VAWT1を不沈にする発泡体が充填された空間、およびVAWT1の浮力の制御を可能にするためのタンク(図示せず)を含むことができる。タンクには、水中の塩分濃度変動および下部本体部分7上の有機物成長などの因子を補償するために、VAWT1のレベルを制御するように、制御可能な形で水を充填することができる。
【0054】
図1に概略的に標示されているように風3が吹いた場合、風と翼11a〜cの間の相互作用の結果としての力は、風力タービン本体を長手方向軸5を中心として回転させる。こうして、今度は、第2のエネルギー変換器部品15との関係における第1のエネルギー変換器部品14の回転が結果としてもたらされる。この相対的回転が電気エネルギーに変換される。
【0055】
図1中のVAWTのほとんどの部分は、堅牢であり得、鋼およびコンクリートなどの比較的安価で頑丈な材料で製造可能であり、空気または水以外の何かと接触した場合でも動かない。したがって、VAWT1のほとんどの部分は、VAWT1の寿命中作動状態にある確率が高い。しかしながら、エネルギー変換器12は、少なくともVAWT1の寿命中のいずれかの時点でメンテナンスまたは交換を必要とする可能性がある。
【0056】
エネルギー変換器12のメンテナンスまたは交換を容易にするため、第1のエネルギー変換器部品14は、以上で説明したように、下部本体部分7と上部本体部分10の間に解除可能な形で機械的に連結されている。
【0057】
ここで、エネルギー変換器12の構成および、エネルギー変換器12と下部本体部分7および上部本体部分10との間の機械的結合の一実施例について、図2を参照しながら説明する。
【0058】
図2を見れば分かるように、上部本体部分10は第1の本体フランジ25を含み、下部本体部分7は第2の本体フランジ26を含み、第1のエネルギー変換器部品14は第1のエネルギー変換器フランジ27および第2のエネルギー変換器フランジ28を含む。
【0059】
第1の本体フランジ25は、ここではボルト30a〜bおよびナット31a〜bの形をした(図2では全てのボルトおよびナットが見えるわけではない)解除可能な締結具を用いて、第1のエネルギー変換器フランジ27に対して解除可能な形で連結される。同様に、第2の本体フランジ26は、ボルト32a〜cおよびナット33a〜cを用いて(図2では全てのボルトが見えるわけではない)、第2のエネルギー変換器フランジ28に対し解除可能な形で連結されている。
【0060】
図2に概略的に標示されているように、エネルギー変換器12は、第2のエネルギー変換器部品15から遠隔の場所までエネルギー変換器により生成された電流を導くための電気配線35を含む。
【0061】
その上、エネルギー変換器12は、第1のエネルギー変換器部品14に取付けられたディスク37および第2のエネルギー変換器部品15に取付けられたブレーキキャリパ38a〜bを含む制動用配置体を含む。ブレーキキャリパ38a〜bは、エネルギー変換器12内に含まれる制御回路(図2には図示せず)によって制御されている。
【0062】
以上で本発明に係る浮動式風力エネルギー・ハーベスティング装置の例示的実施形態について説明してきたが、本発明の一実施形態に係るメンテナンス方法について、ここで、図3の流れ図および図4a〜bおよび図5中の各図を参考にして、また該当する場合にはひき続き図1および図2を参照しながら説明する。
【0063】
第1のステップ100では、特殊なメンテナンス船をVAWT1とドッキングさせる。図4a〜bを参照すると、例示的メンテナンス船40は、VAWT1との安全なドッキングおよびエネルギー変換器12の交換を可能にするための開口部41、保持用配置体42およびクレーン43を有する。船舶40はデッキ上に交換用エネルギー変換器45a〜bを運搬している。
【0064】
VAWT1と船舶40とのドッキングを可能にするため、ブレーキキャリパ38a〜bを起動させることによりVAWT1を制動するようにエネルギー変換器12内に含まれている制御ユニットに対し信号を無線で送信することによって、VAWT1の回転を最初に停止させる。その後、VAWT1の第1の本体フランジ25および第2の本体フランジ26と保持用配置体42を整列させるように、船舶40の垂直レベルを船舶40内のタンク(図4a〜bには図示せず)を用いて制御する。
【0065】
保持用配置体42は、VAWT1の下部本体部分7および上部本体部分10に対する一時的取付けを可能にするように構成されており、図4a〜bには見られないものの、さらに保持用配置体を拡張させるため保持用配置体42の内部に高温流体を循環させるための流路を含む。図4a〜bに概略的に標示されているように、船舶40は、保持用配置体42の内部を循環する流体を加熱するための加熱用配置体47を含む。
【0066】
図3の流れ図に戻ると、保持用配置体42は、ステップ101において、下部風力タービン本体部分7および上部風力タービン本体部分10に取付けられる。図5に概略的に標示されているように、保持用配置体42はボルト48a〜iを用いて第1の本体フランジ25に、そしてボルト49a〜iを用いて第2の本体フランジ26に連結される。上述の流路50は、図5に概略的に標示されている。
【0067】
まずは保持用配置体42を下部本体部分7と上部本体部分10の間で幾分かのあそびを伴って配置し、次に保持用配置体を加熱してそれを第1の本体フランジ25および第2の本体フランジ26と接触させることが好都合であり得る。その後、上部ボルトセット48a〜iおよび下部ボルトセット49a〜iを締め付けることができる。
【0068】
次のステップ102では、上部本体部分10および下部本体部分7に取付けている、ボルト30a〜c、32a〜cおよびナット31a〜c、33a〜cを取外すことによって、エネルギー変換器12を解除する。
【0069】
その後、ステップ103では、保持用配置体42内の流路50を通ってより多くの高温流体を循環させるように加熱用配置体47を作動させることによって、下部本体部分7および上部本体部分10を分離する。保持用配置体が拡張した後、クレーン43を用いて、ステップ104でエネルギー変換器12を取外し、船舶40のデッキ上に置く。
【0070】
その後、ステップ105で、クレーン43を用いて、下部本体部分7と上部本体部分10の間に交換用エネルギー変換器45aを配置する。
【0071】
ステップ106では、下部本体部分7および上部本体部分10に対し交換用発電機45aを取付け、その後ステップ107において、上部ボルトセット48a〜iおよび下部ボルトセット49a〜iを取外し、保持用配置体を冷却させる(または保持用配置体を能動的に冷却する)ことおよび船舶40をVAWT1から離れるように移動させることによって、保持用配置体を係合解除する。
【0072】
当業者であれば、本発明が決して上述の好ましい実施形態に限定されないことを認識するものである。反対に、添付のクレームの範囲内で、多くの修正および変形形態が考えられる。
【0073】
クレーム中、「〜を含む(comprising)」なる用語は、他の要素またはステップを排除せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数を排除しない。単一のプロセッサまたは他のユニットが、クレーム中に列挙されている複数の品目の機能を果たすことができる。特定の手段が、互いに異なる従属クレーム中で列挙されているという事実だけで、これらの手段の組合せを有利に使用できないことが暗示されるわけではない。クレーム中の参照符号はいずれも、範囲を限定するものとみなされるべきものではない。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5