特許第6810789号(P6810789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6810789機械学習装置、学習済みモデル、データ構造、歯周病検査方法、歯周病検査システム及び歯周病検査キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810789
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】機械学習装置、学習済みモデル、データ構造、歯周病検査方法、歯周病検査システム及び歯周病検査キット
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20201221BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20201221BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20201221BHJP
   C12Q 1/689 20180101ALI20201221BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20201221BHJP
   C12R 1/35 20060101ALN20201221BHJP
   C12R 1/01 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
   C12M1/00 AZNA
   C12Q1/04
   C12Q1/06
   C12Q1/689 Z
   C12Q1/6869 Z
   C12R1:35
   C12R1:01
【請求項の数】7
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-503084(P2019-503084)
(86)(22)【出願日】2018年2月28日
(86)【国際出願番号】JP2018007622
(87)【国際公開番号】WO2018159712
(87)【国際公開日】20180907
【審査請求日】2019年8月23日
(31)【優先権主張番号】特願2017-38122(P2017-38122)
(32)【優先日】2017年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-38123(P2017-38123)
(32)【優先日】2017年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】谷口 誠
【審査官】 松浦 安紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−192950(JP,A)
【文献】 Journal of Dental Research, 2016, 95(6), p.711-718
【文献】 Genome Medicine,2015, 7, p.1-19,& Additional file 1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12Q 1/04
C12Q 1/06
C12Q 1/6869
C12Q 1/689
C12R 1/01
C12R 1/35
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体からAnaeroglobus、Fretibacterium及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌を検出する検出工程と、前記検出工程の後に、前記検出工程で得られた結果をもとに前記検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価する評価工程とを含む、歯周病検査方法。
【請求項2】
前記評価工程は、前記検体に含まれる菌の配列数の総和と、前記群に含まれる少なくとも2種類の菌の配列数の総和とを計算する解析工程を含み、前記解析工程で得られる解析結果に基づいて評価を行うものである、請求項に記載の歯周病検査方法。
【請求項3】
前記評価工程は、前記検体に含まれる菌の配列数の総和を100%としたときの前記群に含まれる少なくとも2種類の菌の配列数の総和が0.02%以上である場合は前記検体の提供者が歯周病に罹患している可能性が高いと評価するものである、請求項又は請求項に記載の歯周病検査方法。
【請求項4】
前記検出がメタゲノム解析により行われる、請求項〜請求項のいずれか1項に記載の歯周病検査方法。
【請求項5】
前記検体が唾液である、請求項〜請求項のいずれか1項に記載の歯周病検査方法。
【請求項6】
検体からAnaeroglobus、Fretibacterium及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌を検出する検出部と、前記検出部で得られた結果をもとに前記検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価する評価部とを備える、歯周病検査システム。
【請求項7】
検体からAnaeroglobus、Fretibacterium及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌を検出する検出デバイスを備える、請求項6に記載の歯周病検査システムとしての、歯周病検査キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習装置、学習済みモデル、データ構造、歯周病検査方法、歯周病診断方法、歯周病検査システム及び歯周病検査キットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病の検査方法として、口腔内における特定の細菌の状態によって歯周病に罹患しているか否かを判断する手法が種々検討されている。例えば、非特許文献1にはFretibacteriumと歯周病の関係について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of Endodontics, Volume 41, Issue 12, December 2015 pp. 1975-1984
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
口腔内における特定の細菌の状態と歯周病との関係に関する報告は非特許文献1をはじめとして複数存在するが、口腔内のどのような情報に基づいて歯周病に罹患しているか否かを判断するのが適しているかについては未だ検討の余地がある。
また、口腔内の情報に基づいて歯周病に罹患しているか否かを判断するための手法を数多く見出すことは、歯周病の検査技術の向上、検査を受ける者にとっての選択肢の充実化等の観点から有益であると考えられる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、歯周病の検査に用いる新規な機械学習装置、学習済みモデル及びデータ構造の提供を目的とする。本発明はまた、新規な歯周病検査方法、歯周病診断方法、歯周病検査システム及び歯周病検査キットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するための具体的手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を判断するための関数を学習する機械学習装置であって、
検体から検出された口腔内情報と;前記検体の提供者の歯周病の罹患確率又は歯周病の状態からなる群から選ばれる少なくとも一つの判断値と;から構成される複数の学習データに基づいて、前記判断値を決定する前記関数を学習する学習部を含み、
前記学習部は、前記学習データに基づいて、前記関数を用いて歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を決定した結果に対する報酬を計算する報酬計算部と、
該報酬計算部により計算された報酬が高くなるように、前記関数を更新する関数更新部と、
予め定められた収束条件を満たすまで、前記報酬計算部による計算及び前記関数更新部による更新を繰り返させる収束判定部と、
を含む機械学習装置。
<2>前記口腔内情報が口腔内の細菌叢組成を含む、<1>に記載の機械学習装置。
<3>入力された前記口腔内情報から、前記学習部による学習された前記関数を用いて、前記判断値を決定する判断部を更に含む<1>又は<2>に記載の機械学習装置。
<4>検体から検出された口腔内情報に関するデータに基づいて、前記検体の提供者の歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を表現した値を出力するよう、コンピュータを機能させるための学習済みモデルであって、
第1のニューラルネットワークと、前記第1のニューラルネットワークからの出力が入力されるように結合された第2のニューラルネットワークとから構成され、
前記第1のニューラルネットワークが、少なくとも1つの中間層のニューロン数が入力層のニューロン数よりも小さく且つ入力層と出力層のニューロン数が互いに同一であり各入力層への入力値と各入力層に対応する各出力層からの出力値とが等しくなるように重み付け係数が学習されたものであり、
前記第1のニューラルネットワークの入力層から中間層までが、特徴抽出用ニューラルネットワークとして用いられ、
前記第2のニューラルネットワークの重み付け係数が、前記第1のニューラルネットワークの重み付け係数を変更することなく、学習されたものであり、
前記第1のニューラルネットワークの入力層に、前記検体から検出された前記口腔内情報に関するデータから得られる特定の情報の出現頻度が入力されたとき、前記第1及び第2のニューラルネットワークにおける前記学習済みの重み付け係数に基づく演算を行い、前記第2のニューラルネットワークの出力層から歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を表現した値を出力するよう、コンピュータを機能させるための学習済みモデル。
<5>前記口腔内情報が口腔内の細菌叢組成を含む、<4>に記載の学習済みモデル。
<6>検体から検出された口腔内情報と、前記検体の提供者を特定する情報と、を含むデータ構造であり、
前記口腔内情報に基づいて、前記検体の提供者の歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を表現した値を出力するように予め学習された学習済みモデルを用いて歯周病の罹患又は状態に関する確率を算出する処理に用いられるデータ構造。
<7>前記口腔内情報が口腔内の細菌叢組成を含む、<6>に記載のデータ構造。
<8>検体からAnaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌を検出する検出工程を含む、歯周病検査方法。
<9>前記群に含まれる少なくとも2種類の菌がAnaeroglobus、Fretibacterium及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌である、<8>に記載の歯周病検査方法。
<10>前記検出工程の後に、前記検出工程で得られた結果をもとに前記検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価する評価工程をさらに含む、<8>又は<9>に記載の歯周病検査方法。
<11>前記評価工程は、前記検出工程で得られた配列数の総和と、前記群に含まれる少なくとも2種類の菌の配列数の総和とを計算する解析工程を含み、前記解析工程で得られる解析結果に基づいて評価を行うものである、<10>に記載の歯周病検査方法。
<12>前記評価工程は、前記検出工程で得られた配列数の総和を100%としたときの前記群に含まれる少なくとも2種類の菌の配列数の総和が0.02%以上である場合は前記検体の提供者が歯周病に罹患している可能性が高いと評価するものである、<10>又は<11>に記載の歯周病検査方法。
<13>前記検出がメタゲノム解析により行われる、<8>〜<12>のいずれか1項に記載の歯周病検査方法。
<14>前記検体が唾液である、<8>〜<13>のいずれか1項に記載の歯周病検査方法。
<15>検体からAnaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌を検出する検出部を備える、歯周病検査システム。
<16>検体からAnaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌を検出する検出デバイスを備える、歯周病検査キット。
<17>検体からGN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌を検出する検出工程を含む、歯周病検査方法。
<18>前記群に含まれる少なくとも1種類の菌がLautropiaを含む、<17>に記載の歯周病検査方法。
<19>前記群に含まれる少なくとも1種類の菌がLautropiaと、GN02、Ottowia及びSneathiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌との組み合わせである、<17>又は<18>に記載の歯周病検査方法。
<20>前記検出工程の後に、前記検出工程で得られた結果をもとに前記検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価する評価工程をさらに含む、<17>〜<19>のいずれか1項に記載の歯周病検査方法。
<21>前記評価工程は、前記検出工程で得られた配列数の総和と、前記群に含まれる少なくとも2種類の菌の配列数の総和とを計算する解析工程を含み、前記解析工程で得られる解析結果に基づいて評価を行うものである、<20>に記載の歯周病検査方法。
<22>前記評価工程は、前記検出工程で得られた配列数の総和を100%としたときの前記群に含まれる少なくとも1種類の菌の配列数の総和が0.01%以下である場合は前記検体の提供者が歯周病に罹患している可能性が高いと評価するものである、<20>又は<21>に記載の歯周病検査方法。
<23>前記検出がメタゲノム解析により行われる、<17>〜<22>のいずれか1項に記載の歯周病検査方法。
<24>前記検体が唾液である、<17>〜<23>のいずれか1項に記載の歯周病検査方法。
<25>検体からGN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌を検出する検出部を備える、歯周病検査システム。
<26>検体からGN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌を検出する検出デバイスを備える、歯周病検査キット。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、歯周病の検査に用いる新規な機械学習装置、学習済みモデル及びデータ構造が提供される。また本発明によれば、新規な歯周病検査方法、歯周病診断方法、歯周病検査システム及び歯周病検査キットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】機械学習装置100の構成の一例を示す概略図である。
図2】機械学習装置100の機械学習処理ルーチンの一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
【0010】
<機械学習装置>
本実施形態の機械学習装置は、歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を判断するための関数を学習する機械学習装置であって、
検体から検出された口腔内情報と;前記検体の提供者の歯周病の罹患確率又は歯周病の状態からなる群から選ばれる少なくとも一つの判断値と;から構成される複数の学習データに基づいて、前記判断値を決定する前記関数を学習する学習部を含み、
前記学習部は、前記学習データに基づいて、前記関数を用いて歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を決定した結果に対する報酬を計算する報酬計算部と、
該報酬計算部により計算された報酬が高くなるように、前記関数を更新する関数更新部と、
予め定められた収束条件を満たすまで、前記報酬計算部による計算及び前記関数更新部による更新を繰り返させる収束判定部と、を含む機械学習装置である。
【0011】
上記機械学習装置は、検体の提供者が歯周病に罹患しているか否かの判断、歯周病が治癒しているか否かの判断、歯周病が治癒するか否かの判断、歯周病が進行するか否かの判断などに用いることができる。
【0012】
ある実施態様では、検体として唾液を使用するが、これらに制限されるものではない。例えば、歯肉溝滲出液、歯垢、バイオフィルム、舌苔などが挙げられる。特に検体として唾液を使用することで、検体の採取のために歯肉等を傷付けることなく簡便な手法で提供者の口腔内情報を得ることができる。
【0013】
検体から検出する口腔内情報としては、口腔内の細菌叢組成(細菌の塩基配列を含む)が挙げられるが、これらに制限されるものではない。ある実施態様では、後述する歯周病検査方法(1)又は(2)に記載した菌に関する情報であってもよい。具体的には、細菌の系統樹と枝分かれの長さ(Unifrac distance);次世代シークエンスで得られるリード数(配列と読み取り量);細菌間情報伝達(クオラムセンシング、オートインデューサー)の種類と量;細菌間の相互栄養共生関係の種類と量;細菌の発育条件(酸素要求、栄養要求等);免疫機能に影響する抗原の種類と量;生体構造を破壊するプロテアーゼの種類と量;遺伝子発現或いは遺伝子制御に係るポリヌクレオチドの種類と量;エンドトキシンや細菌の細胞壁外膜を構成するリポ多糖の種類と量;細菌の機能を表す特徴量などが利用できる。これらの情報のそれぞれを所定の重みをつけて組み合わせてもよく、主成分分析をして特徴を抽出した後の特徴量やその組み合わせでもよい。
【0014】
歯周病の罹患確率又は歯周病の状態からなる群から選ばれる少なくとも一つの判断値としては、口腔内の細菌叢組成における特定の菌の有無又はその割合に基づく判断値が挙げられるが、これらに制限されるものではない。ある実施態様では、後述する歯周病検査方法(1)又は(2)に記載した菌の有無又はその割合に基づく判断値であってもよい。
【0015】
上記学習データは、必要に応じ、他の情報を含んでもよい。このような情報としては、例えば、検体の提供者の年齢、性別、喫煙習慣、食習慣、口腔ケアの実施状況、歯の治療歴、持病又は既往症、虫歯の有無、歯並び、唾液の量、口腔内の衛生状態、習癖(歯ぎしり、口呼吸など)、ストレス状態などが挙げられる。
【0016】
本実施形態の機械学習装置は、入力された口腔内情報から、学習部による学習された前記関数を用いて、上記判断値を決定する判断部を更に含むものであってもよい。
【0017】
図1は機械学習装置100の構成の一例を示す概略図である。図1に示す構成の機械学習装置100は、CPUと、RAMと、後述する機械学習処理ルーチンを実行するためのプログラムや各種データを記憶したROMと、を含むコンピュータで構成することが出来る。この機械学習装置100は、機能的には図1に示すように入力部10と、演算部20と、出力部90とを備えている。
【0018】
入力部10は、検体から検出された口腔内情報と;前記検体の提供者の歯周病の罹患確率又は歯周病の状態からなる群から選ばれる少なくとも一つの判断値と;から構成される複数の学習データを受け付ける。また、入力部10は、判断対象となる、検体から検出された口腔内情報を受け付ける。
【0019】
演算部20は、学習データ記憶部30と、学習部40と、学習済みモデル記憶部50と判断部60とを備える。
【0020】
学習データ記憶部30には、入力部10により受け付けた複数の学習データが記憶される。
学習部40は、複数の学習データに基づいて、判断値を決定する関数を学習する。ここで、関数は、後述する学習済みモデルである。
具体的には、学習部40は、報酬計算部42、関数更新部44、及び収束判定部46を備えている。
報酬計算部42は、複数の学習データの各々について、当該学習データに基づいて、関数を用いて歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を決定した結果に対する報酬を計算する。
関数更新部44は、報酬計算部42により複数の学習データの各々について計算された報酬に基づいて、報酬が高くなるように、関数を更新する。
収束判定部46は、予め定められた収束条件を満たすまで、報酬計算部42による計算及び関数更新部44による更新を繰り返させる。
学習済みモデル記憶部50は、学習部40により学習された関数を記憶している。
判断部60は、判断対象として入力された、検体から検出された口腔内情報から、学習部40による学習された関数を用いて、検体の提供者の歯周病の罹患確率又は歯周病の状態からなる群から選ばれる少なくとも一つの判断値を決定する。
【0021】
本実施形態の機械学習装置の各構成要素は特に制限されるものではなく、公知の機械学習装置の各構成要素であってよい。
【0022】
<学習済みモデル>
本実施形態の学習済みモデルは、検体から検出された口腔内情報に関するデータに基づいて、前記検体の提供者の歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を表現した値を出力するよう、コンピュータを機能させるための学習済みモデルであって、
第1のニューラルネットワークと、前記第1のニューラルネットワークからの出力が入力されるように結合された第2のニューラルネットワークとから構成され、
前記第1のニューラルネットワークが、少なくとも1つの中間層のニューロン数が入力層のニューロン数よりも小さく且つ入力層と出力層のニューロン数が互いに同一であり各入力層への入力値と各入力層に対応する各出力層からの出力値とが等しくなるように重み付け係数が学習されたものであり、
前記第1のニューラルネットワークの入力層から中間層までが、特徴抽出用ニューラルネットワークとして用いられ、
前記第2のニューラルネットワークの重み付け係数が、前記第1のニューラルネットワークの重み付け係数を変更することなく、学習されたものであり、
前記第1のニューラルネットワークの入力層に、検体から検出された口腔内情報に関するデータから得られる特定の情報の出現頻度が入力されたとき、前記第1及び第2のニューラルネットワークにおける前記学習済みの重み付け係数に基づく演算を行い、前記第2のニューラルネットワークの出力層から前記検体の提供者の歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を表現した値を出力するよう、コンピュータを機能させるための学習済みモデルである。
【0023】
上記学習済みモデルは、検体の提供者が歯周病に罹患しているか否かの判断、歯周病が治癒しているか否かの判断、歯周病が治癒するか否かの判断、歯周病が進行するか否かの判断などに用いることができる。
【0024】
ある実施態様では、検体として唾液を使用するが、これらに制限されるものではない。例えば、歯肉溝滲出液、歯垢、バイオフィルム、舌苔などが挙げられる。特に検体として唾液を使用することで、検体の採取のために歯肉等を傷付けることなく簡便な手法で提供者の口腔内情報を得ることができる。
【0025】
検体から検出する口腔内情報としては、口腔内の細菌叢組成(細菌の塩基配列を含む)が挙げられるが、これらに制限されるものではない。ある実施態様では、後述する歯周病検査方法(1)又は(2)に記載した菌に関する情報であってもよい。具体的には、細菌の系統樹と枝分かれの長さ(Unifrac distance);次世代シークエンスで得られるリード数(配列と読み取り量);細菌間情報伝達(クオラムセンシング、オートインデューサー)の種類と量;細菌間の相互栄養共生関係の種類と量;細菌の発育条件(酸素要求、栄養要求等);免疫機能に影響する抗原の種類と量;生体構造を破壊するプロテアーゼの種類と量;遺伝子発現或いは遺伝子制御に係るポリヌクレオチドの種類と量;エンドトキシンや細菌の細胞壁外膜を構成するリポ多糖の種類と量;細菌の機能を表す特徴量などが利用できる。これらの情報のそれぞれを所定の重みをつけて組み合わせてもよく、主成分分析をして特徴を抽出した後の特徴量やその組み合わせでもよい。
【0026】
歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を表現した値としては、口腔内の細菌叢組成における特定の菌の有無又はその割合に基づく判断値が挙げられるが、これらに制限されるものではない。ある実施態様では、後述する歯周病検査方法(1)又は(2)に記載した菌の有無又はその割合に基づく判断値であってもよい。
【0027】
上記学習済みモデルは、必要に応じ、口腔内情報と他の情報に基づいて、歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を表現した値を出力するよう、コンピュータを機能させるものであってもよい。このような情報としては、例えば、検体の提供者の年齢、性別、喫煙習慣、食習慣、口腔ケアの実施状況、歯の治療歴、持病又は既往症、虫歯の有無、歯並び、唾液の量、口腔内の衛生状態、習癖(歯ぎしり、口呼吸など)、ストレス状態などが挙げられる。
【0028】
本実施形態の学習済みモデルの各構成要素は特に制限されず、公知の学習済みモデルの構成要素と同様のものであってよい。
【0029】
<データ構造>
本実施形態のデータ構造は、検体から検出された口腔内情報と、前記検体の提供者を特定する情報と、を含むデータ構造であり、
前記検体から検出された口腔内情報に基づいて、前記検体の提供者の歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を表現した値を出力するように予め学習された学習済みモデルを用いて歯周病の罹患又は状態に関する確率を算出する処理に用いられるデータ構造である。
【0030】
上記データ構造は、検体の提供者が歯周病に罹患しているか否かの判断、歯周病が治癒しているか否かの判断、歯周病が治癒するか否かの判断、歯周病が進行するか否かの判断などに用いることができる。
【0031】
ある実施態様では、検体として唾液を使用するが、これらに制限されるものではない。例えば、歯肉溝滲出液、歯垢、バイオフィルム、舌苔などが挙げられる。特に検体として唾液を使用することで、検体の採取のために歯肉等を傷付けることなく簡便な手法で提供者の口腔内情報を得ることができる。
【0032】
検体から検出する口腔内情報としては、口腔内の細菌叢組成(細菌の塩基配列を含む)が挙げられるが、これらに制限されるものではない。ある実施態様では、後述する歯周病検査方法(1)又は(2)に記載した菌に関する情報であってもよい。具体的には、細菌の系統樹と枝分かれの長さ(Unifrac distance);次世代シークエンスで得られるリード数(配列と読み取り量);細菌間情報伝達(クオラムセンシング、オートインデューサー)の種類と量;細菌間の相互栄養共生関係の種類と量;細菌の発育条件(酸素要求、栄養要求等);免疫機能に影響する抗原の種類と量;生体構造を破壊するプロテアーゼの種類と量;遺伝子発現或いは遺伝子制御に係るポリヌクレオチドの種類と量;エンドトキシンや細菌の細胞壁外膜を構成するリポ多糖の種類と量;細菌の機能を表す特徴量などが利用できる。これらの情報のそれぞれを所定の重みをつけて組み合わせてもよく、主成分分析をして特徴を抽出した後の特徴量やその組み合わせでもよい。
【0033】
歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を表現した値としては、口腔内の細菌叢組成における特定の菌の有無又はその割合に基づく判断値が挙げられるが、これらに制限されるものではない。ある実施態様では、後述する歯周病検査方法(1)又は(2)に記載した菌の有無又はその割合に基づく判断値であってもよい。
【0034】
上記データ構造は、必要に応じ、口腔内情報と他の情報に基づいて、歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を表現した値を出力するよう予め学習された学習済みモデルを用いて歯周病の罹患又は状態に関する確率を算出する処理に用いられるものであってもよい。このような情報としては、例えば、検体の提供者の年齢、性別、喫煙習慣、食習慣、口腔ケアの実施状況、歯の治療歴、持病又は既往症、虫歯の有無、歯並び、唾液の量、口腔内の衛生状態、習癖(歯ぎしり、口呼吸など)、ストレス状態などが挙げられる。
【0035】
本実施形態の学習済みモデルの各構成要素は特に制限されず、公知の学習済みモデルの構成要素と同様のものであってよい。
【0036】
<機械学習装置100の動作>
入力部10において複数の学習データを受け付けると、機械学習装置100は、複数の学習データを、学習データ記憶部30に格納する。そして機械学習装置100は、図2に示す機械学習処理ルーチンを実行する。
【0037】
まず、ステップS100で、複数の学習データの各々について、当該学習データに基づいて、現時点の関数を用いて歯周病の罹患確率又は歯周病の状態を決定した結果に対する報酬を計算する。
ステップS102では、上記ステップS100により複数の学習データの各々について計算された報酬に基づいて、報酬が高くなるように、関数を更新する。
ステップS104は、予め定められた収束条件を満たしたか否かを判定し、収束条件を満たさない場合には、上記ステップS100へ戻る。一方、収束条件を満たした場合には、ステップS106へ移行する。
ステップS106では、最終的に更新された関数を、学習済みモデル記憶部50に格納して、学習処理ルーチンを終了する。
そして、入力部10において、判断対象として入力された、検体から検出された口腔内情報を受け付けると、機械学習装置100の判断部60は、判断対象として入力された、検体から検出された口腔内情報から、学習部40による学習された関数を用いて、検体の提供者の歯周病の罹患確率又は歯周病の状態からなる群から選ばれる少なくとも一つの判断値を決定し、出力部90により出力する。
【0038】
<歯周病検査方法(1)>
本実施形態の歯周病検査方法は、検体からAnaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌(以下、検出対象とも称する)を検出する検出工程を含む。
【0039】
本実施形態の歯周病検査方法は、特定の菌種から選択される少なくとも2種類を検出する工程を含むことにより、1種の菌の検出結果のみを判断基準とする場合に比べて歯周病検査の精度をより高めたものである。口腔内における特定の細菌の中から複数種を検出することによって歯周病に罹患しているか否かを判断するという技術思想は、これまでの先行技術文献に記載も示唆もない。
【0040】
上記検査方法は、検体の提供者が歯周病に罹患しているか否かの判断、歯周病が治癒しているか否かの判断、歯周病が治癒するか否かの判断、歯周病が進行するか否かの判断などに用いることができる。
【0041】
(検出工程)
検出工程は、検体に含まれる検出対象を検出可能であればどのような方法で行ってもよい。例えば、メタゲノム解析(メタ16S解析等)、イムノクロマト法、遺伝子増幅法(リアルタイムPCR、LAMP法等)が挙げられる。ある実施態様では、検出工程はメタゲノム解析により行われる。メタゲノム解析は、複数種の菌種の有無及び存在率を一度の工程で検出することができ、1工程あたり1菌種の検出が基本である遺伝子増幅法に比べて検査効率の点で有利である。また、定性評価のイムノクロマト法に比べて菌の検出精度に優れている。
【0042】
検出される情報として具体的には、細菌の系統樹と枝分かれの長さ(Unifrac distance);次世代シークエンスで得られるリード数(配列と読み取り量);細菌間情報伝達(クオラムセンシング、オートインデューサー)の種類と量;細菌間の相互栄養共生関係の種類と量;細菌の発育条件(酸素要求、栄養要求等);免疫機能に影響する抗原の種類と量;生体構造を破壊するプロテアーゼの種類と量;遺伝子発現或いは遺伝子制御に係るポリヌクレオチドの種類と量;エンドトキシンや細菌の細胞壁外膜を構成するリポ多糖の種類と量;細菌の機能を表す特徴量などが利用できる。これらの情報のそれぞれを所定の重みをつけて組み合わせてもよく、主成分分析をして特徴を抽出した後の特徴量やその組み合わせでもよい。
【0043】
ある実施態様では、検体として唾液を使用するが、これらに制限されるものではない。例えば、歯肉溝滲出液、歯垢、バイオフィルム、舌苔などが挙げられる。特に検体として唾液を使用することで、検体の採取のために歯肉等を傷付けることなく簡便な手法で提供者の口腔内情報を得ることができる。
【0044】
検査精度の向上の観点からは、検出対象はAnaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌であり、少なくとも3種類の菌であることが好ましく、少なくとも4種類の菌であることがより好ましい。
【0045】
ある実施態様では、検出対象はAnaeroglobus、Fretibacterium及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌を含む。
【0046】
(評価工程)
本実施形態の歯周病検査方法は、検出工程の後に、検出工程で得られた結果をもとに検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価する評価工程を含んでもよい。評価工程は、検出工程で得られた結果をもとに検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価することができればどのような方法で行ってもよい。例えば、計算機を用いても、呈色反応等を利用してもよい。
【0047】
評価工程は、検体に含まれる菌の数の総和と、検出対象の菌の数の総和とを計算する解析工程を含み、解析工程で得られる解析結果に基づいて評価を行うものであってもよい。
【0048】
ある実施態様では、評価工程では、検出工程で得られた配列数の総和に対する検出対象の菌の配列数の総和の割合が所定の値以上である場合は検体の提供者が歯周病に罹患している可能性が高いと評価する。
【0049】
検査精度の観点からは、評価工程は、検出工程で得られた配列数の総和を100%としたときの検出対象の菌の配列数の総和が0.02%以上である場合は検体の提供者が歯周病に罹患している可能性が高いと評価するものであることが好ましい。
【0050】
本実施形態の歯周病検査方法において「検出対象の菌の配列数の総和」とは、検体に含まれる菌のうち、Anaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasmaからなる群に含まれる菌であって、検出対象として採用した2種類以上の菌の配列数の総和を意味する。
従って、上記群に含まれる菌であっても検出対象として採用しなかった菌の配列数は「検出対象の菌の配列数の総和」に含まれない。
【0051】
評価工程では、必要に応じ、検出工程で得られた結果に加えて他の情報を参照して検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価してもよい。
このような情報としては、例えば、検体の提供者の年齢、性別、喫煙習慣、食習慣、口腔ケアの実施状況、歯の治療歴、持病又は既往症、虫歯の有無、歯並び、唾液の量、口腔内の衛生状態、習癖(歯ぎしり、口呼吸など)、ストレス状態などが挙げられる。
【0052】
<歯周病検査システム(1)>
本実施形態の歯周病検査システムは、検体からAnaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌(検出対象)を検出する検出部を備える。
【0053】
上記検査システムは、検体の提供者が歯周病に罹患しているか否かの判断、歯周病が治癒しているか否かの判断、歯周病が治癒するか否かの判断、歯周病が進行するか否かの判断などに用いることができる。
【0054】
(検出部)
検出部は、検体に含まれる検出対象を検出可能であれば特に制限されない。例えば、メタゲノム解析(メタ16S解析等)、イムノクロマト法、遺伝子増幅法(リアルタイムPCR、LAMP法等)などを実施する装置が挙げられる。ある実施態様では、検出工程はメタゲノム解析により行われる。複数種の菌種の有無及び存在率を一度の工程で検出することができ、1工程あたり1菌種の検出が基本である遺伝子増幅法に比べて検査効率の点で有利である。また、定性評価のイムノクロマト法に比べて菌の検出精度に優れている。
【0055】
検出される情報として具体的には、細菌の系統樹と枝分かれの長さ(Unifrac distance);次世代シークエンスで得られるリード数(配列と読み取り量);細菌間情報伝達(クオラムセンシング、オートインデューサー)の種類と量;細菌間の相互栄養共生関係の種類と量;細菌の発育条件(酸素要求、栄養要求等);免疫機能に影響する抗原の種類と量;生体構造を破壊するプロテアーゼの種類と量;遺伝子発現或いは遺伝子制御に係るポリヌクレオチドの種類と量;エンドトキシンや細菌の細胞壁外膜を構成するリポ多糖の種類と量;細菌の機能を表す特徴量などが利用できる。これらの情報のそれぞれを所定の重みをつけて組み合わせてもよく、主成分分析をして特徴を抽出した後の特徴量やその組み合わせでもよい。
【0056】
検出部の具体的な構成は特に制限されず、採用する検出方法に応じて選択できる。例えば、検出部はコンピュータ等の計算機を用いて検出を実施するものであっても、試験片のように手技を介して検出を実施するものであってもよい。
【0057】
ある実施態様では、検体として唾液を使用するが、これらに制限されるものではない。例えば、歯肉溝滲出液、歯垢、バイオフィルム、舌苔などが挙げられる。特に検体として唾液を使用することで、検体の採取のために歯肉等を傷付けることなく簡便な手法で提供者の口腔内情報を得ることができる。
【0058】
検査精度の向上の観点からは、検出対象はAnaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌であり、少なくとも3種類の菌であることが好ましく、少なくとも4種類の菌であることがより好ましい。
【0059】
ある実施態様では、検出対象はAnaeroglobus、Fretibacterium及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌を含む。
【0060】
(評価部)
本実施形態の歯周病検査システムは、検出部で得られた結果をもとに検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価する評価部を備えてもよい。評価部は、検出部で得られた結果をもとに検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価できるものであれば特に制限されない。例えば、計算機を用いるものであっても、呈色反応等を利用するものであってもよい。
【0061】
評価部は、検出工程で得られた配列数の総和と、検出対象の菌の配列数の総和とを計算する解析部を備え、解析部で得られる解析結果に基づいて評価を行うものであってもよい。
【0062】
ある実施態様では、評価部は、検出部で得られた配列数の総和に対する検出対象の菌の配列数の総和の割合が所定の値以上である場合は検体の提供者が歯周病に罹患している可能性が高いと評価する。
【0063】
検査精度の観点からは、評価部は、検出工程で得られた配列数の総和を100%としたときの検出対象の菌の配列数の総和が0.02%以上である場合は検体の提供者が歯周病に罹患している可能性が高いと評価するものであることが好ましい。
【0064】
本実施形態の歯周病検査システムにおいて「検出対象の菌の配列数の総和」とは、検体に含まれる菌のうち、Anaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasmaからなる群に含まれる菌であって、検出対象として採用した2種類以上の菌配列数の総和を意味する。
従って、上記群に含まれる菌であっても検出対象として採用しなかった菌の数は「検出対象の菌の配列数の総和」に含まれない。
【0065】
本実施形態の歯周病検査システムは、上述した検出部と必要に応じて含まれる評価部及び解析部に加えて他の機能を果たす部位を備えてもよい。また、本実施形態の歯周病検査システムは、上述した各部が一体化した装置の状態であっても、各部をそれぞれ備える装置の組み合わせであってもよい。また、本実施形態の歯周病検査システムには、より簡易な形態(例えば、後述する歯周病検査キット)なども含まれる。
【0066】
<歯周病検査キット(1)>
本実施形態の歯周病検査キットは、検体からAnaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌(検出対象)を検出する検出デバイスを備える。
【0067】
検出デバイスは、検体に含まれる検出対象を検出可能であれば特に制限されない。例えば、上述した歯周病検査システムが備える検出部として記載したものであってもよい。また、必要に応じて評価、解析その他の機能を果たすデバイスを備えてもよい。
歯周病検査キットがこれらのデバイスを備える場合、これらのデバイスは検出デバイスと一体化した状態(検出デバイスがこれらのデバイスの機能を兼ねる場合も含む)であっても、別個のデバイスの組合せであってもよい。
【0068】
<歯周病診断方法(1)>
本実施形態の歯周病診断方法は、検体からAnaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌(以下、検出対象とも称する)が検出されるか否かの情報に基づいて、前記検体の提供者が歯周病に罹患しているか否かを診断する工程を含む。
【0069】
ある実施態様では、検体として唾液を使用するが、これらに制限されるものではない。例えば、歯肉溝滲出液、歯垢、バイオフィルム、舌苔などが挙げられる。特に検体として唾液を使用することで、検体の採取のために歯肉等を傷付けることなく簡便な手法で提供者の口腔内情報を得ることができる。
【0070】
上記方法において検体の提供者が歯周病に罹患しているか否かを診断する場合には、検体の提供者が確実に歯周病に罹患しているか否かを診断する場合に加え、検体の提供者が歯周病に罹患している場合の歯周病の進行度合いを診断する場合、検体の提供者が歯周病に罹患している(又は将来的に罹患する)可能性を診断する場合なども包含される。さらには歯周病が治癒しているか否か、歯周病が治癒するか否か、歯周病が進行するか否かを診断する場合なども包含される。
【0071】
上記方法において、検体から検出対象が検出されるか否かの情報を得る方法は特に制限されないが、例えば、上述した歯周病検査方法又は歯周病検査システムに記載した手法により得られる情報であってもよい。上述した各実施態様における詳細は、本方法にも適用することができる。
【0072】
<歯周病検査方法(2)>
本実施形態の歯周病検査方法は、検体からGN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌(以下、検出対象とも称する)を検出する検出工程を含む。
【0073】
本実施形態の歯周病検査方法は、歯周病に罹患していない提供者から採取した検体と歯周病に罹患している提供者から採取した検体とを比較した場合、歯周病に罹患していない提供者の検体に含まれるGN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌が、歯周病に罹患している提供者の検体よりも多い傾向にあるという知見を見出し、これに基づいてなされたものである。
【0074】
上記検査方法は、検体の提供者が歯周病に罹患しているか否かの判断、歯周病が治癒しているか否かの判断、歯周病が治癒するか否かの判断、歯周病が進行するか否かの判断などに用いることができる。
【0075】
(検出工程)
検出工程は、検体に含まれる検出対象を検出可能であればどのような方法で行ってもよい。例えば、メタゲノム解析(メタ16S解析等)、イムノクロマト法、遺伝子増幅法(リアルタイムPCR、LAMP法等)が挙げられる。ある実施態様では、検出工程はメタゲノム解析により行われる。メタゲノム解析は、複数種の菌種の有無及び存在率を一度の工程で検出することができ、1工程あたり1菌種の検出が基本である遺伝子増幅法に比べて検査効率の点で有利である。また、定性評価のイムノクロマト法に比べて菌の検出精度に優れている。
【0076】
検出される情報として具体的には、細菌の系統樹と枝分かれの長さ(Unifrac distance);次世代シークエンスで得られるリード数(配列と読み取り量);細菌間情報伝達(クオラムセンシング、オートインデューサー)の種類と量;細菌間の相互栄養共生関係の種類と量;細菌の発育条件(酸素要求、栄養要求等);免疫機能に影響する抗原の種類と量;生体構造を破壊するプロテアーゼの種類と量;遺伝子発現或いは遺伝子制御に係るポリヌクレオチドの種類と量;エンドトキシンや細菌の細胞壁外膜を構成するリポ多糖の種類と量;細菌の機能を表す特徴量などが利用できる。これらの情報のそれぞれを所定の重みをつけて組み合わせてもよく、主成分分析をして特徴を抽出した後の特徴量やその組み合わせでもよい。
【0077】
ある実施態様では、検体として唾液を使用するが、これらに制限されるものではない。例えば、歯肉溝滲出液、歯垢、バイオフィルム、舌苔などが挙げられる。特に検体として唾液を使用することで、検体の採取のために歯肉等を傷付けることなく簡便な手法で提供者の口腔内情報を得ることができる。
【0078】
検査精度の向上の観点からは、検出対象はGN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌であり、少なくとも2種類の菌であることが好ましく、少なくとも3種類の菌であることがより好ましい。
【0079】
検出対象はLautropiaを少なくとも含むことが好ましく、Lautropiaと、N02、Ottowia及びSneathiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌との組み合わせであることがより好ましい。
【0080】
(評価工程)
本実施形態の歯周病検査方法は、検出工程の後に、検出工程で得られた結果をもとに検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価する評価工程を含んでもよい。評価工程は、検出工程で得られた結果をもとに検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価することができればどのような方法で行ってもよい。例えば、計算機を用いても、呈色反応等を利用してもよい。
【0081】
評価工程は、検出工程で得られた配列(Read)数の総和と、検出対象の菌の配列数の総和とを計算する解析工程を含み、解析工程で得られる解析結果に基づいて評価を行うものであってもよい。
【0082】
ある実施態様では、評価工程では、検出工程で得られた配列数の総和に対する検出対象の菌の配列数の総和の割合が所定の値以下である場合は検体の提供者が歯周病に罹患している可能性が高いと評価する。
【0083】
検査精度の観点からは、評価工程は、検出工程で得られた配列数の総和を100%としたときの検出対象の菌の配列数の総和が0.01%以下である場合は検体の提供者が歯周病に罹患している可能性が高いと評価するものであることが好ましい。
【0084】
本実施形態の歯周病検査方法において「検出対象の菌の配列数の総和」とは、検体に含まれる菌のうち、GN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaからなる群に含まれる菌であって、検出対象として採用した1種類以上の菌の配列数の総和を意味する。
従って、上記群に含まれる菌であっても検出対象として採用しなかった菌の配列数は「検出対象の菌の配列数の総和」に含まれない。
【0085】
評価工程では、必要に応じ、検出工程で得られた結果に加えて他の情報を参照して検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価してもよい。
このような情報としては、例えば、検体の提供者の年齢、性別、喫煙習慣、食習慣、口腔ケアの実施状況、歯の治療歴、持病又は既往症、虫歯の有無、歯並び、唾液の量、口腔内の衛生状態、習癖(歯ぎしり、口呼吸など)、ストレス状態などが挙げられる。
【0086】
<歯周病検査システム(2)>
本実施形態の歯周病検査システムは、検体からGN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌(検出対象)を検出する検出部を備える。
【0087】
上記検査システムは、検体の提供者が歯周病に罹患しているか否かの判断、歯周病が治癒しているか否かの判断、歯周病が治癒するか否かの判断、歯周病が進行するか否かの判断などに用いることができる。
【0088】
(検出部)
検出部は、検体に含まれる検出対象を検出可能であれば特に制限されない。例えば、メタゲノム解析(メタ16S解析等)、イムノクロマト法、遺伝子増幅法(リアルタイムPCR、LAMP法等)などを実施する装置が挙げられる。ある実施態様では、検出工程はメタゲノム解析により行われる。複数種の菌種の有無及び存在率を一度の工程で検出することができ、1工程あたり1菌種の検出が基本である遺伝子増幅法に比べて検査効率の点で有利である。また、定性評価のイムノクロマト法に比べて菌の検出精度に優れている。
【0089】
検出される情報として具体的には、細菌の系統樹と枝分かれの長さ(Unifrac distance);次世代シークエンスで得られるリード数(配列と読み取り量);細菌間情報伝達(クオラムセンシング、オートインデューサー)の種類と量;細菌間の相互栄養共生関係の種類と量;細菌の発育条件(酸素要求、栄養要求等);免疫機能に影響する抗原の種類と量;生体構造を破壊するプロテアーゼの種類と量;遺伝子発現或いは遺伝子制御に係るポリヌクレオチドの種類と量;エンドトキシンや細菌の細胞壁外膜を構成するリポ多糖の種類と量;細菌の機能を表す特徴量などが利用できる。これらの情報のそれぞれを所定の重みをつけて組み合わせてもよく、主成分分析をして特徴を抽出した後の特徴量やその組み合わせでもよい。
【0090】
検出部の具体的な構成は特に制限されず、採用する検出方法に応じて選択できる。例えば、検出部はコンピュータ等の計算機を用いて検出を実施するものであっても、試験片のように手技を介して検出を実施するものであってもよい。
【0091】
ある実施態様では、検体として唾液を使用するが、これらに制限されるものではない。例えば、歯肉溝滲出液、歯垢、バイオフィルム、舌苔などが挙げられる。特に検体として唾液を使用することで、検体の採取のために歯肉等を傷付けることなく簡便な手法で提供者の口腔内情報を得ることができる。
【0092】
検査精度の向上の観点からは、検出対象はGN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌であり、少なくとも2種類の菌であることが好ましく、少なくとも3種類の菌であることがより好ましい。また、検出対象はLautropiaを少なくとも含むことが好ましい。
【0093】
検出対象はLautropiaを少なくとも含むことが好ましく、Lautropiaと、GN02、Ottowia及びSneathiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌との組み合わせであることがより好ましい。
【0094】
(評価部)
本実施形態の歯周病検査システムは、検出部で得られた結果をもとに検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価する評価部を備えてもよい。評価部は、検出部で得られた結果をもとに検体の提供者が歯周病に罹患している可能性を評価できるものであれば特に制限されない。例えば、計算機を用いるものであっても、呈色反応等を利用するものであってもよい。
【0095】
評価部は、検出工程で得られた配列数の総和と、検出対象の菌の配列数の総和とを計算する解析部を備え、解析部で得られる解析結果に基づいて評価を行うものであってもよい。
【0096】
ある実施態様では、評価部は、検出部で得られた配列数の総和に対する検出対象の菌の配列数の総和の割合が所定の値以下である場合は検体の提供者が歯周病に罹患している可能性が高いと評価する。
【0097】
検査精度の観点からは、評価部は、検出工程で得られた配列数の総和を100%としたときの検出対象の菌の配列数の総和が0.01%以下である場合は検体の提供者が歯周病に罹患している可能性が高いと評価するものであることが好ましい。
【0098】
本実施形態の歯周病検査システムにおいて「検出対象の菌の配列数の総和」とは、検体に含まれる菌のうち、GN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaからなる群に含まれる菌であって、検出対象として採用した1種類以上の菌の配列数の総和を意味する。
従って、上記群に含まれる菌であっても検出対象として採用しなかった菌の数は「検出対象の菌の配列数の総和」に含まれない。
【0099】
本実施形態の歯周病検査システムは、上述した検出部と必要に応じて含まれる評価部及び解析部に加えて他の機能を果たす部位を備えてもよい。また、本実施形態の歯周病検査システムは、上述した各部が一体化した装置の状態であっても、各部をそれぞれ備える装置の組み合わせであってもよい。また、本実施形態の歯周病検査システムには、より簡易な形態(例えば、後述する検査キット)なども含まれる。
【0100】
<歯周病検査キット(2)>
本実施形態の歯周病検査キットは、検体からGN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌(検出対象)を検出する検出デバイスを備える。
【0101】
検出デバイスは、検体に含まれる検出対象を検出可能であれば特に制限されない。例えば、上述した歯周病検査システムが備える検出部として記載したものであってもよい。また、必要に応じて評価、解析その他の機能を果たすデバイスを備えてもよい。
歯周病検査キットがこれらのデバイスを備える場合、これらのデバイスは検出デバイスと一体化した状態(検出デバイスがこれらのデバイスの機能を兼ねる場合も含む)であっても、別個のデバイスの組合せであってもよい。
【0102】
<歯周病診断方法(2)>
本実施形態の歯周病診断方法は、検体からGN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌(検出対象)が検出されるか否かの情報に基づいて、前記検体の提供者が歯周病に罹患しているか否かを診断する工程を含む。
【0103】
ある実施態様では、検体として唾液を使用するが、これらに制限されるものではない。例えば、歯肉溝滲出液、歯垢、バイオフィルム、舌苔などが挙げられる。特に検体として唾液を使用することで、検体の採取のために歯肉等を傷付けることなく簡便な手法で提供者の口腔内情報を得ることができる。
【0104】
上記方法において検体の提供者が歯周病に罹患しているか否かを診断する場合には、検体の提供者が確実に歯周病に罹患しているか否かを診断する場合に加え、検体の提供者が歯周病に罹患している場合の歯周病の進行度合いを診断する場合、検体の提供者が歯周病に罹患している(又は将来的に罹患する)可能性を診断する場合なども包含される。さらには歯周病が治癒しているか否か、歯周病が治癒するか否か、歯周病が進行するか否かを診断する場合なども包含される。
【0105】
上記方法において、検体から検出対象が検出されるか否かの情報を得る方法は特に制限されないが、例えば、上述した歯周病検査方法又は歯周病検査システムに記載した手法により得られる情報であってもよい。上述した各実施態様における詳細は、本方法にも適用することができる。
【実施例】
【0106】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0107】
<実施例1>
歯周病に罹患している被験者A1〜A10(歯周ポケットが5mm以上の部位を有する)と、歯周病に罹患していない被験者B1〜B8(全顎的に健全な歯周組織を有し、軽微な歯肉炎の有無は問わない)から採取した唾液を用いて、下記の手順で検出対象の菌を検出した。
【0108】
(検出方法)
唾液から細菌ゲノムDNAを抽出し、16SrDNAの領域としてV3−V4領域(F:5’−CCTACGGGNGGCWGCAG−3’、R:5’−GACTACHVGGGTATCTAATCC−3’)またはV4領域(F:5’−GTGCCAGCMGCCGCGGTAA−3’、R:5’−GGACTACHVGGGTWTCTAAT−3’)を、領域特異的な配列を含むプライマー(V3−V4用またはV4用)を用いてPCR(サーモフィッシャー社、SimpliAmp)にて増幅する。増幅したPCR断片にアダプター配列及びインデックス配列を付与し、ライブラリーを構築する。次いで、ライブラリーを次世代シークエンサーMiSeq(イルミナ社)に投入し、塩基配列(Read)を取得する。
【0109】
次いで、取得した配列をコンピュータを用いて細菌ゲノムデータベース(公共データベース 16SMicrobial、NCBIなど)とBLASTによる照合を行い、配列(Read)数より細菌叢組成を明らかにする(メタ16S解析)。次いで、表1に示す16種の菌の単独又は複数の組み合わせの配列数の、検出の結果得られた配列数の総和に対する割合(%)を算出する。
【0110】
上記方法のベースとなるプロトコールは、下記URLから参照できる。
https://support.illumina.com/content/dam/illumina-support/documents/documentation/chemistry_documentation/16s/16s-metagenomic-library-prep-guide-15044223-b.pdf
【0111】
上記検出により16種の菌について得られた配列数の割合(%)を表1に示す。表1において「A+F」はAnaeroglobus及びFretibacteriumの配列数の総和を表し、「A+F+M」はAnaeroglobus、Fretibacterium及びMycoplasmaの配列数の総和を表し、「All」は表中に記載した16種の菌の配列数の総和を表す。
【0112】
【表1】
【0113】
(検出結果の検討)
歯周病に罹患している被験者群は、検出対象として2種類の菌(Anaeroglobus及びFretibacterium)を採用した場合の配列数の総和が、検出された配列数の総和の0.02%を超えていた。一方、歯周病に罹患していない被験者群は、検出対象として2種類の菌(Anaeroglobus及びFretibacterium)を採用した場合の配列数の総和が、検出された配列数の総和の0.02%を下回っていた。
【0114】
歯周病に罹患している被験者群は、検出対象として3種類の菌(Anaeroglobus、Fretibacterium及びMycoplasma)を採用した場合の配列数の総和が、検出された配列数の総和の0.02%を超えていた。一方、歯周病に罹患していない被験者群は、検出対象として3種類の菌(Anaeroglobus、Fretibacterium及びMycoplasma)を採用した場合の配列数の総和が、検出された配列数の総和の0.02%を下回っていた。
【0115】
歯周病に罹患している被験者群は、検出対象として16種類の菌(Anaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasma)を採用した場合の配列数の総和が、検出された配列数の総和の0.02%を超えていた。一方、歯周病に罹患していない被験者群は、検出対象として16種類の菌(Anaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasma)を採用した場合の配列数の総和が、検出された配列数の総和の0.02%を下回っていた。
【0116】
歯周病に罹患していない被験者群のうち、被験者B8の唾液からはFretibacteriumが検出され、その割合は歯周病に罹患している被験者A5と同程度であった。この結果は、唾液中のFretibacterium単独の検出結果からは歯周病に罹患しているか否かは必ずしも判断できず、複数種の菌の検出結果を利用する方が検査精度に優れていることを示唆していると考えられる。
【0117】
以上の結果から、検体からAnaeroglobus、Cryptobacterium、Desulfobulbus、Desulfomicrobium、Desulfovibrio、Erysipelotrichaceae、Fretibacterium、Johnsonella、Mitsuokella、Mollicutes、Parascardovia、Pseudoramibacter、Pyramidobacter、Scardovia、Shuttleworthia及びMycoplasmaからなる群から選ばれる少なくとも2種類の菌を検出する工程を含む歯周病検査方法は、検体の提供者が歯周病に罹患している可能性の評価に有用であることがわかった。
【0118】
<実施例2>
歯周病に罹患していない被験者C1〜C9(歯肉に炎症がない)と、歯周病に罹患している被験者D1〜D8(歯周ポケットが6mm以上の部位を有する)とから採取した唾液を用いて、実施例1と同様にして検出対象の菌を検出し、表1に示す4種の菌の単独又は複数の組み合わせの配列数の、検出の結果得られた配列数の総和に対する割合(%)を算出した。
【0119】
上記検出により4種の菌について得られた配列数の割合(%)を表1に示す。表1において「O+S」はOttowia及びSneathiaの配列数の総和を表し、「L+S」はLautropia及びSneathiaの配列数の総和を表し、「All」は表中に記載した4種の菌の配列数の総和を表す。
【0120】
【表2】
【0121】
(検出結果の検討)
歯周病に罹患していない被験者群は、検出対象としてGN02、Ottowia、Sneathia又はLautropiaを単独で採用した場合、少なくとも1種類の菌の配列数の総和が検出された配列数の総和の0.01%を超えていた。中でもLautropiaの配列数はすべての被験者において検出された配列数の総和の0.01%を超えていた。一方、歯周病に罹患している被験者群は、検出対象としてGN02、Ottowia、Sneathia又はLautropiaを単独で採用した場合の配列数がいずれも検出された配列数の総和の0.01%以下であった。
【0122】
歯周病に罹患していない被験者群は、検出対象としてOttowiaとSneathiaの2種類、又はLautropiaとSneathiaの2種類を採用した場合の配列数の総和が、いずれも検出された配列数の総和の0.01%を超えていた。一方、歯周病に罹患している被験者群は、検出対象としてOttowiaとSneathiaの2種類、又はLautropiaとSneathiaの2種類を採用した場合の総和が、いずれも検出された配列の総和の0.01%以下であった。
【0123】
歯周病に罹患していない被験者群は、検出対象としてGN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaの4種類を採用した場合の配列数の総和が、検出された配列数の総和の0.01%を超えていた。一方、歯周病に罹患している被験者群は、検出対象としてGN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaの4種類を採用した場合の配列数の総和が、検出された配列数の総和の0.01%以下であった。
【0124】
以上の結果から、検体からGN02、Ottowia、Sneathia及びLautropiaからなる群から選ばれる少なくとも1種類の菌を検出する工程を含む歯周病検査方法は、検体の提供者が歯周病に罹患している可能性の評価に有用であることがわかった。
【0125】
日本国特許出願第2017−038122号及び第2017−038123号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。
図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]