特許第6810812号(P6810812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6810812内視鏡装置、内視鏡装置の作動方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810812
(24)【登録日】2020年12月15日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】内視鏡装置、内視鏡装置の作動方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20201221BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20201221BHJP
   A61B 1/06 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   A61B1/00 513
   A61B1/045 610
   A61B1/045 617
   A61B1/06 611
   A61B1/06 612
   A61B1/045 632
【請求項の数】13
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2019-541537(P2019-541537)
(86)(22)【出願日】2017年9月13日
(86)【国際出願番号】JP2017033033
(87)【国際公開番号】WO2019053804
(87)【国際公開日】20190321
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 順平
【審査官】 北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−061569(JP,A)
【文献】 特開2011−200410(JP,A)
【文献】 特許第5974204(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
A61B 5/00 − 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘモグロビンの吸光特性のうちの吸光係数が急峻に変化する赤色域の所定の波長範囲内に強度を有する光である第1の狭帯域光と、前記所定の波長範囲よりも長波長側に強度を有する光である第2の狭帯域光と、を照明光として順次または同時に発生することができるように構成された発光部と、
前記照明光が照射されたヘモグロビンを含む領域を有する被写体からの戻り光を撮像して撮像信号を出力するように構成された撮像部と、
前記第1の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第1の画像と、前記第2の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第2の画像と、のうちの少なくとも1つの画像に対して所定の画像処理を施して出力するように構成された画像処理部と、
前記所定の画像処理の処理結果として得られた前記第1の画像及び前記第2の画像を用いて観察画像を生成して表示装置へ出力するように構成された観察画像生成部と、
前記発光部における前記第1の狭帯域光の発生源に相当する所定の光源の現在の動作状態を示す所定のパラメータを検出して得られた検出結果に基づき、前記被写体に対する前記第1の狭帯域光の照射に応じて前記撮像部から出力される撮像信号の信号強度に係る情報である信号強度情報を取得し、さらに、前記信号強度情報に基づき、前記観察画像の生成に用いられる前記第1の画像及び前記第2の画像の明るさの比率を一定の比率に維持するための制御を行うように構成された制御部と、
を有することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
ヘモグロビンの吸光特性のうちの吸光係数が急峻に変化する赤色域の所定の波長範囲内に強度を有する光である第1の狭帯域光と、前記所定の波長範囲よりも長波長側に強度を有する光である第2の狭帯域光と、前記所定の波長範囲外の青色域又は緑色域のいずれかに強度を有する第3の狭帯域光と、照明光として順次または同時に発生することができるように構成された発光部と、
前記照明光が照射されたヘモグロビンを含む領域を有する被写体からの戻り光を撮像して撮像信号を出力するように構成された撮像部と、
前記第1の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第1の画像と、前記第2の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第2の画像と、前記第3の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第3の画像と、のうちの少なくとも1つの画像に対して定の画像処理を施して出力するように構成された画像処理部と、
記所定の画像処理の処理結果として得られた前記第1の画像、前記第2の画像及び前記第3の画像を用い観察画像を生成して示装置へ出力するように構成された観察画像生成部と、
前記発光部における前記第1の狭帯域光の発生源に相当する所定の光源の現在の動作状態を示す所定のパラメータを検出して得られた検出結果に基づき、前記被写体に対する前記第1の狭帯域光の照射に応じて前記撮像部から出力される撮像信号の信号強度に係る情報である信号強度情報を取得し、さらに、前記信号強度情報に基づき、前記観察画像の生成に用いられる前記第1の画像、前記第2の画像及び前記第3の画像の明るさの比率を一定の比率に維持するための制御を行うように構成された制御部と、
を有することを特徴とす内視鏡装置。
【請求項3】
前記所定のパラメータには、前記所定の光源に対して供給されている現在の電流値、前記所定の光源の現在の温度、または、前記所定の光源から発せられている前記第1の狭帯域光の現在の中心波長のいずれかが含まれている
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記所定の光源の個体識別番号に応じた前記信号強度情報を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記所定の波長範囲内に強度を有しかつ所定の中心波長を有する前記第1の狭帯域光が前記被写体に対して照射された際に前記撮像部から出力される撮像信号の信号強度に相当する基準信号強度に対する、前記所定の波長範囲内に強度を有しかつ前記所定の中心波長とは異なる中心波長を有する前記第1の狭帯域光が前記被写体に対して照射された際に前記撮像部から出力される撮像信号の信号強度の比率として算出される信号出力率を前記信号強度情報として取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、
前記制御部の制御に応じて得られる前記信号出力率に基づき、前記第1の画像の明るさを調整するための処理、または、前記第2の画像の明るさを調整するための処理のいずれかの処理を色調整処理として行うように構成された色調整処理部と、
前記制御部の制御に応じて得られる前記信号出力率と、前記色調整処理の処理結果として得られた前記第1の画像及び前記第2の画像を用いて算出した2つの色差と、に基づき、前記第1の画像または前記第2の画像におけるヘモグロビンを含まない領域の彩度を抑制するための色補正処理を行うように構成された色補正処理部と、を有し、
前記観察画像生成部は、前記色調整処理及び前記色補正処理が施された前記第1の画像及び前記第2の画像を用いて前記観察画像を生成する
ことを特徴とする請求項に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、
前記制御部の制御に応じて得られる前記信号出力率と、前記第1の画像及び前記第2の画像を用いて算出した2つの色差と、に基づき、前記第1の画像または前記第2の画像のいずれかに相当する処理対象画像の明るさを調整しつつ、前記処理対象画像におけるヘモグロビンを含まない領域の彩度を抑制するための色調整処理を行うように構成された色調整処理部を有し、
前記観察画像生成部は、前記色調整処理が施された前記第1の画像及び前記第2の画像を用いて前記観察画像を生成する
ことを特徴とする請求項に記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記色調整処理部が前記色調整処理を行う代わりに、前記制御部が前記信号出力率に基づいて前記発光部から発せられる前記第1の狭帯域光の光量を調整するための制御を行う
ことを特徴とする請求項に記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記所定の光源の発光時間、または、前記所定の光源に供給される電流値のいずれかを変化させることにより、前記発光部から発せられる前記第1の狭帯域光の光量を調整する
ことを特徴とする請求項に記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記色調整処理部が前記色調整処理を行う代わりに、前記制御部が前記信号出力率に基づいて前記撮像部において前記第1の狭帯域光の戻り光を撮像する際の露光時間を調整するための制御を行う
ことを特徴とする請求項に記載の内視鏡装置。
【請求項11】
前記色調整処理部が前記色調整処理を行う代わりに、前記制御部が前記信号出力率に基づいて前記撮像部において前記第1の狭帯域光の戻り光を撮像して得られる撮像信号のゲインを調整するための制御を行う
ことを特徴とする請求項に記載の内視鏡装置。
【請求項12】
発光部が、ヘモグロビンの吸光特性のうちの吸光係数が急峻に変化する赤色域の所定の波長範囲内に強度を有する光である第1の狭帯域光と、前記所定の波長範囲よりも長波長側に強度を有する光である第2の狭帯域光と、を照明光として順次または同時に発生し、
撮像部が、前記照明光が照射されたヘモグロビンを含む領域を有する被写体からの戻り光を撮像して撮像信号を出力し、
画像処理部が、前記第1の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第1の画像と、前記第2の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第2の画像と、のうちの少なくとも1つの画像に対して所定の画像処理を施して出力し、
観察画像生成部が、前記所定の画像処理の処理結果として得られた前記第1の画像及び前記第2の画像を用いて観察画像を生成して表示装置へ出力し、
制御部が、前記発光部における前記第1の狭帯域光の発生源に相当する所定の光源の現在の動作状態を示す所定のパラメータの検出結果に基づき、前記被写体に対する前記第1の狭帯域光の照射に応じて前記撮像部から出力される撮像信号の信号強度に係る情報である信号強度情報を取得し、
前記制御部が、前記信号強度情報に基づき、前記観察画像の生成に用いられる前記第1の画像及び前記第2の画像の明るさの比率を一定の比率に維持するための制御を行う
ことを特徴とする内視鏡装置の作動方法。
【請求項13】
ヘモグロビンの吸光特性のうちの吸光係数が急峻に変化する赤色域の所定の波長範囲内に強度を有する光である第1の狭帯域光と、前記所定の波長範囲よりも長波長側に強度を有する光である第2の狭帯域光と、を照明光として順次または同時に発生することができるように構成された発光部と、前記照明光が照射されたヘモグロビンを含む領域を有する被写体からの戻り光を撮像して撮像信号を出力するように構成された撮像部と、プロセッサと、を有する内視鏡装置において用いられるプログラムであって、前記プロセッサに、
前記第1の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第1の画像と、前記第2の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第2の画像と、のうちの少なくとも1つの画像に対して所定の画像処理を施す工程と、
前記所定の画像処理の処理結果として得られた前記第1の画像及び前記第2の画像を用いて観察画像を生成して表示装置へ出力する工程と、
前記発光部における前記第1の狭帯域光の発生源に相当する所定の光源の現在の動作状態を示す所定のパラメータの検出結果に基づき、前記被写体に対する前記第1の狭帯域光の照射に応じて前記撮像部から出力される撮像信号の信号強度に係る情報である信号強度情報を取得する工程と、
前記信号強度情報に基づき、前記観察画像の生成に用いられる前記第1の画像及び前記第2の画像の明るさの比率を一定の比率に維持するための制御を行う工程と、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置、内視鏡装置の作動方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野の内視鏡観察においては、ヘモグロビンの吸光特性に応じて中心波長(波長帯域)を設定した狭帯域光を生体組織に対して照射することにより、当該生体組織の所望の深さに存在する血管を可視化するような観察手法が従来提案されている。
【0003】
具体的には、例えば、日本国特許第5974204号公報には、相対的にヘモグロビンに吸収され易い光である600nm付近の狭帯域光と、相対的にヘモグロビンに吸収され難い光である630nm付近の狭帯域光と、を生体粘膜に対して照射することにより、当該生体粘膜の深部に存在する血管と、当該生体粘膜の表層から深部に至る背景部分の輪郭と、を併せて可視化するような構成が開示されている。また、日本国特許第5974204号公報には、600nm付近の狭帯域光を発生するLEDと、630nm付近の狭帯域光を発生するLEDと、を有する光源装置に係る構成が開示されている。
【0004】
ここで、前述の観察手法においては、狭帯域光を発生する光源として、LED及びLD(レーザーダイオード)等のような半導体光源が一般的に用いられる。但し、前述の観察手法において半導体光源を用いた場合には、当該半導体光源から発せられる狭帯域光の中心波長(波長帯域)が本来の中心波長(波長帯域)からシフトすることに起因し、本来の色調とは異なる色調を有する画像が表示されてしまうような状況が発生し得る。
【0005】
しかし、日本国特許第5974204号公報には、前述のような状況の発生を回避するための方法について特に開示等されていない。そのため、日本国特許第5974204号公報に開示された構成によれば、例えば、生体組織の所望の深さに存在する血管を観察しつつ処置及び診断等の所望の作業を行うユーザに対して過度な負担を強いてしまう場合がある、という課題が生じている。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、生体組織の所望の深さに存在する血管を観察しつつ所望の作業を行うユーザの負担を軽減することが可能な内視鏡装置、内視鏡装置の作動方法及びプログラムを提供することを目的としている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の内視鏡装置は、ヘモグロビンの吸光特性のうちの吸光係数が急峻に変化する赤色域の所定の波長範囲内に強度を有する光である第1の狭帯域光と、前記所定の波長範囲よりも長波長側に強度を有する光である第2の狭帯域光と、を照明光として順次または同時に発生することができるように構成された発光部と、前記照明光が照射されたヘモグロビンを含む領域を有する被写体からの戻り光を撮像して撮像信号を出力するように構成された撮像部と、前記第1の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第1の画像と、前記第2の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第2の画像と、のうちの少なくとも1つの画像に対して所定の画像処理を施して出力するように構成された画像処理部と、前記所定の画像処理の処理結果として得られた前記第1の画像及び前記第2の画像を用いて観察画像を生成して表示装置へ出力するように構成された観察画像生成部と、前記発光部における前記第1の狭帯域光の発生源に相当する所定の光源の現在の動作状態を示す所定のパラメータを検出して得られた検出結果に基づき、前記被写体に対する前記第1の狭帯域光の照射に応じて前記撮像部から出力される撮像信号の信号強度に係る情報である信号強度情報を取得し、さらに、前記信号強度情報に基づき、前記観察画像の生成に用いられる前記第1の画像及び前記第2の画像の明るさの比率を一定の比率に維持するための制御を行うように構成された制御部と、を有する。
本発明の他の態様による内視鏡装置は、ヘモグロビンの吸光特性のうちの吸光係数が急峻に変化する赤色域の所定の波長範囲内に強度を有する光である第1の狭帯域光と、前記所定の波長範囲よりも長波長側に強度を有する光である第2の狭帯域光と、前記所定の波長範囲外の青色域又は緑色域のいずれかに強度を有する第3の狭帯域光と、を照明光として順次または同時に発生することができるように構成された発光部と、前記照明光が照射されたヘモグロビンを含む領域を有する被写体からの戻り光を撮像して撮像信号を出力するように構成された撮像部と、前記第1の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第1の画像と、前記第2の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第2の画像と、前記第3の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第3の画像と、のうちの少なくとも1つの画像に対して所定の画像処理を施して出力するように構成された画像処理部と、前記所定の画像処理の処理結果として得られた前記第1の画像、前記第2の画像及び前記第3の画像を用いて観察画像を生成して表示装置へ出力するように構成された観察画像生成部と、前記発光部における前記第1の狭帯域光の発生源に相当する所定の光源の現在の動作状態を示す所定のパラメータを検出して得られた検出結果に基づき、前記被写体に対する前記第1の狭帯域光の照射に応じて前記撮像部から出力される撮像信号の信号強度に係る情報である信号強度情報を取得し、さらに、前記信号強度情報に基づき、前記観察画像の生成に用いられる前記第1の画像、前記第2の画像及び前記第3の画像の明るさの比率を一定の比率に維持するための制御を行うように構成された制御部と、を有する。
【0008】
本発明の一態様の内視鏡装置の作動方法は、発光部が、ヘモグロビンの吸光特性のうちの吸光係数が急峻に変化する赤色域の所定の波長範囲内に強度を有する光である第1の狭帯域光と、前記所定の波長範囲よりも長波長側に強度を有する光である第2の狭帯域光と、を照明光として順次または同時に発生し、撮像部が、前記照明光が照射されたヘモグロビンを含む領域を有する被写体からの戻り光を撮像して撮像信号を出力し、画像処理部が、前記第1の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第1の画像と、前記第2の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第2の画像と、のうちの少なくとも1つの画像に対して所定の画像処理を施して出力し、観察画像生成部が、前記所定の画像処理の処理結果として得られた前記第1の画像及び前記第2の画像を用いて観察画像を生成して表示装置へ出力し、制御部が、前記発光部における前記第1の狭帯域光の発生源に相当する所定の光源の現在の動作状態を示す所定のパラメータの検出結果に基づき、前記被写体に対する前記第1の狭帯域光の照射に応じて前記撮像部から出力される撮像信号の信号強度に係る情報である信号強度情報を取得し、前記制御部が、前記信号強度情報に基づき、前記観察画像の生成に用いられる前記第1の画像及び前記第2の画像の明るさの比率を一定の比率に維持するための制御を行う。
【0009】
本発明の一態様のプログラムは、ヘモグロビンの吸光特性のうちの吸光係数が急峻に変化する赤色域の所定の波長範囲内に強度を有する光である第1の狭帯域光と、前記所定の波長範囲よりも長波長側に強度を有する光である第2の狭帯域光と、を照明光として順次または同時に発生することができるように構成された発光部と、前記照明光が照射されたヘモグロビンを含む領域を有する被写体からの戻り光を撮像して撮像信号を出力するように構成された撮像部と、プロセッサと、を有する内視鏡装置において用いられるプログラムであって、前記プロセッサに、前記第1の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第1の画像と、前記第2の狭帯域光が照射された前記被写体からの戻り光を撮像して得られた第2の画像と、のうちの少なくとも1つの画像に対して所定の画像処理を施す工程と、前記所定の画像処理の処理結果として得られた前記第1の画像及び前記第2の画像を用いて観察画像を生成して表示装置へ出力する工程と、前記発光部における前記第1の狭帯域光の発生源に相当する所定の光源の現在の動作状態を示す所定のパラメータの検出結果に基づき、前記被写体に対する前記第1の狭帯域光の照射に応じて前記撮像部から出力される撮像信号の信号強度に係る情報である信号強度情報を取得する工程と、前記信号強度情報に基づき、前記観察画像の生成に用いられる前記第1の画像及び前記第2の画像の明るさの比率を一定の比率に維持するための制御を行う工程と、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る内視鏡装置の要部の構成を示す図。
図2】実施形態に係る光源装置に設けられた各LEDから発せられる光の波長帯域の一例を示す図。
図3】酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの吸光特性を示す図。
図4】実施形態に係るプロセッサの処理において用いられるテーブルデータの一例を示す図。
図5】実施形態に係るプロセッサの処理において用いられる基準色差を直交座標系の座標値として示した図。
図6】実施形態に係るプロセッサの処理において用いられるテーブルデータの一例を示す図。
図7】実施形態に係るプロセッサの処理において用いられる基準色差を直交座標系の座標値として示した図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明を行う。
【0012】
内視鏡装置1は、図1に示すように、被検体内に挿入可能であるとともに、当該被検体内に存在する生体組織等の被写体を撮像して撮像信号を出力するように構成された内視鏡2と、内視鏡2の内部に挿通配置されたライトガイド7を介して当該被写体の観察に用いられる照明光を供給するように構成された光源装置3と、内視鏡2から出力される撮像信号に応じた観察画像等を生成して出力するように構成されたプロセッサ4と、プロセッサ4から出力される観察画像を画面上に表示するように構成された表示装置5と、を有している。図1は、実施形態に係る内視鏡装置の要部の構成を示す図である。
【0013】
内視鏡2は、被検体内に挿入可能な細長形状に形成された挿入部2aと、挿入部2aの基端側に設けられた操作部2bと、を有している。また、内視鏡2は、例えば、撮像部21(後述)から出力される撮像信号等の種々の信号の伝送に用いられる信号線が内蔵されたユニバーサルケーブル(不図示)を介し、プロセッサ4に着脱可能に接続されるように構成されている。また、内視鏡2は、ライトガイド7の少なくとも一部が内蔵されたライトガイドケーブル(不図示)を介し、光源装置3に着脱可能に接続されるように構成されている。
【0014】
挿入部2aの先端部2cには、被検体内の生体組織等の被写体を撮像するための撮像部21と、ライトガイド7の出射端部と、ライトガイド7により伝送された照明光を被写体へ照射する照明光学系22と、が設けられている。
【0015】
撮像部21は、照明光学系22からの照明光が照射された被写体からの戻り光を撮像して撮像信号を出力するように構成されている。具体的には、撮像部21は、照明光学系22からの照明光が照射された被写体から発せられる戻り光を結像するように構成された対物光学系21aと、当該戻り光を受光して撮像するための複数の画素を対物光学系21aの結像位置に合わせてマトリクス状に配設して構成された撮像素子21bと、を有している。
【0016】
撮像素子21bは、例えば、CCDまたはCMOS等のイメージセンサを具備して構成されている。また、撮像素子21bは、プロセッサ4から出力される制御信号に応じた動作を行うように構成されている。また、撮像素子21bは、対物光学系21aにより結像された戻り光を撮像することにより撮像信号を生成し、当該生成した撮像信号をプロセッサ4へ出力するように構成されている。
【0017】
操作部2bは、ユーザが把持して操作することが可能な形状を具備して構成されている。また、操作部2bには、ユーザの入力操作に応じた指示をプロセッサ4に対して行うことが可能な1つ以上のスイッチを具備して構成されたスコープスイッチ23が設けられている。具体的には、スコープスイッチ23は、例えば、ユーザの操作に応じ、内視鏡装置1の観察モードを白色光観察モードまたは特殊光観察モードのいずれかに設定する(切り替える)ための指示を行うことが可能な観察モード切替スイッチ(不図示)を具備して構成されている。
【0018】
光源装置3は、発光部31と、合波器32と、集光レンズ33と、光源制御部34と、を有して構成されている。
【0019】
発光部31は、紫色LED31aと、青色LED31bと、緑色LED31cと、琥珀色LED31dと、赤色LED31eと、を有して構成されている。すなわち、発光部31は、複数の半導体光源を有して構成されている。
【0020】
紫色LED31aは、紫色の狭帯域光(以降、V光と称する)を発生するように構成されている。具体的には、紫色LED31aは、例えば、図2に示すような、中心波長が410nm付近に設定され、かつ、帯域幅が20nm程度に設定された光をV光として発生するように構成されている。すなわち、紫色LED31aから発せられるV光は、図3に例示するヘモグロビン(酸化ヘモグロビン及び/または還元ヘモグロビン)の吸光特性のうち、青色域において吸光係数が急峻に変化する所定の波長範囲内に強度を有している。また、紫色LED31aは、光源制御部34の制御に応じて発光または消光するように構成されている。また、紫色LED31aは、光源制御部34の制御に応じた発光光量を具備するV光を発生するように構成されている。図2は、実施形態に係る光源装置に設けられた各LEDから発せられる光の波長帯域の一例を示す図である。図3は、酸化ヘモグロビン及び還元ヘモグロビンの吸光特性を示す図である。
【0021】
青色LED31bは、青色の狭帯域光(以降、B光と称する)を発生するように構成されている。具体的には、青色LED31bは、例えば、図2に示すような、中心波長が460nm付近に設定され、かつ、帯域幅が20nm程度に設定された光をB光として発生するように構成されている。すなわち、青色LED31bから発せられるB光は、V光よりも長波長側の青色域に強度を有している。また、青色LED31bから発せられるB光は、図3に例示するヘモグロビンの吸光特性のうち、吸光係数が急峻に変化する所定の波長範囲外に強度を有している。また、青色LED31bは、光源制御部34の制御に応じて発光または消光するように構成されている。また、青色LED31bは、光源制御部34の制御に応じた発光光量を具備するB光を発生するように構成されている。
【0022】
緑色LED31cは、緑色の狭帯域光(以降、G光と称する)を発生するように構成されている。具体的には、緑色LED31cは、例えば、図2に示すような、中心波長が540nm付近に設定され、かつ、帯域幅が20nm程度に設定された光をG光として発生するように構成されている。すなわち、緑色LED31cから発せられるG光は、V光(及びB光)よりも長波長側の緑色域に強度を有している。また、緑色LED31cから発せられるG光は、図3に例示するヘモグロビンの吸光特性のうち、吸光係数が急峻に変化する所定の波長範囲外に強度を有している。また、緑色LED31cは、光源制御部34の制御に応じて発光または消光するように構成されている。また、緑色LED31cは、光源制御部34の制御に応じた発光光量を具備するG光を発生するように構成されている。
【0023】
琥珀色LED31dは、琥珀色の狭帯域光(以降、A光と称する)を発生するように構成されている。具体的には、琥珀色LED31dは、例えば、図2に示すような、中心波長が600nm付近に設定され、かつ、帯域幅が20nm程度に設定された光をA光として発生するように構成されている。すなわち、琥珀色LED31dから発せられるA光は、図3に例示するヘモグロビンの吸光特性のうち、赤色域において吸光係数が急峻に変化する所定の波長範囲内に強度を有している。また、琥珀色LED31dは、光源制御部34の制御に応じて発光または消光するように構成されている。また、琥珀色LED31dは、光源制御部34の制御に応じた発光光量を具備するA光を発生するように構成されている。
【0024】
赤色LED31eは、赤色の狭帯域光(以降、R光と称する)を発生するように構成されている。具体的には、赤色LED31eは、例えば、図2に示すような、中心波長が630nm付近に設定され、かつ、帯域幅が20nm程度に設定された光をR光として発生するように構成されている。すなわち、赤色LED31eから発せられるR光は、A光よりも長波長側の赤色域に強度を有している。また、赤色LED31eから発せられるR光は、図3に例示するヘモグロビンの吸光特性のうち、吸光係数が急峻に変化する所定の波長範囲外に強度を有している。また、赤色LED31eは、光源制御部34の制御に応じて発光または消光するように構成されている。また、赤色LED31eは、光源制御部34の制御に応じた発光光量を具備するR光を発生するように構成されている。
【0025】
合波器32は、発光部31から発せられた各光を合波して集光レンズ33に入射させることができるように構成されている。
【0026】
集光レンズ33は、合波器32を経て入射した光を集光してライトガイド7へ出射するように構成されている。
【0027】
光源制御部34は、例えば、ドライブ回路及び制御回路等を具備して構成されている。また、光源制御部34は、発光部31の各LEDの動作に要する電流を供給することができるように構成されている。また、光源制御部34は、プロセッサ4から出力される制御信号に応じ、発光部31の各LEDを動作させるように構成されている。
【0028】
以上に述べたような構成によれば、発光部31は、光源制御部34の制御に応じ、ヘモグロビンの吸光特性のうちの吸光係数が急峻に変化する所定の波長範囲内に強度を有する光である第1の狭帯域光と、当該所定の波長範囲外に強度を有する光である第2の狭帯域光と、当該所定の波長範囲外に強度を有しかつ当該第2の狭帯域光とは異なる光である第3の狭帯域光と、を照明光として順次または同時に発生することができるように構成されている。
【0029】
プロセッサ4は、信号処理部41と、画像処理部42と、観察画像生成部43と、制御部44と、を有して構成されている。
【0030】
信号処理部41は、例えば、信号処理回路等を具備して構成されている。また、信号処理部41は、内視鏡2から出力される撮像信号に対してA/D変換等の所定の信号処理を施すことにより画像データを生成し、当該生成した画像データを画像処理部42及び制御部44へそれぞれ出力するように構成されている。
【0031】
画像処理部42は、例えば、画像処理回路等を具備して構成されている。また、画像処理部42は、信号処理部41から出力される画像データに対して所定の画像処理を施して観察画像生成部43へ出力するように構成されている。また、画像処理部42は、例えば、色調整処理部42aと、色補正処理部42bと、を有して構成されている。
【0032】
色調整処理部42aは、制御部44から出力される制御信号に応じ、信号処理部41を経て出力される画像データに対して色調整処理を施すとともに、当該色調整処理を施した画像データを色補正処理部42bへ出力するように構成されている。なお、色調整処理部42aにおいて行われる色調整処理の具体例については、後程説明する。
【0033】
色補正処理部42bは、制御部44から出力される制御信号に応じ、色調整処理部42aを経て出力される画像データに対して色補正処理を施すとともに、当該色補正処理を施した画像データを観察画像生成部43へ出力するように構成されている。なお、色補正処理部42bにおいて行われる色補正処理の具体例については、後程説明する。
【0034】
観察画像生成部43は、例えば、画像生成回路等を具備して構成されている。また、観察画像生成部43は、制御部44から出力される制御信号に応じ、画像処理部42を経て出力される各色成分の画像データを表示装置5のR(赤色)チャンネル、G(緑色)チャンネル及びB(青色)チャンネルに割り当てることにより観察画像を生成し、当該生成した観察画像を表示装置5へ出力するように構成されている。すなわち、観察画像生成部43は、画像処理部42による所定の画像処理の処理結果として得られた各色成分の画像データを用いて観察画像を生成して表示装置へ出力するように構成されている。
【0035】
制御部44は、例えば、制御回路等を具備して構成されている。また、制御部44は、スコープスイッチ23の観察モード切替スイッチにおいてなされた指示に基づき、内視鏡装置1の観察モードに応じた動作を行わせるための制御信号を生成して出力するように構成されている。また、制御部44は、撮像素子21bの動作を制御するための制御信号を生成して出力するように構成されている。また、制御部44は、光源制御部34を介して発光部31の各LEDの動作を制御するための制御信号を生成して出力するように構成されている。
【0036】
制御部44は、1つ以上のテーブルデータ(後述)が格納されたメモリ44aを有して構成されている。また、制御部44は、信号処理部41から出力される画像データに基づき、スコープスイッチ23において設定された観察モードにおける現在の明るさを検出するための明るさ検出処理を行うように構成されている。また、制御部44は、前述の明るさ検出処理の処理結果として得られた現在の明るさを所定の明るさ目標値に近づけるような調光動作を行わせるための制御信号を生成して光源制御部34へ出力するように構成されている。また、制御部44は、前述の調光動作に伴って光源制御部34から発光部31の各LEDへ供給されている電流の大きさの現在値(以降、現在の電流値とも称する)をそれぞれ検出することができるように構成されている。また、制御部44は、内視鏡装置1の観察モードが特殊光観察モードに設定された際に、メモリ44aから読み込んだテーブルデータを参照することにより、前述の調光動作に伴って光源制御部34から発光部31の所定のLEDへ供給されている現在の電流値の検出結果に対応する信号出力率(後述)を取得するとともに、当該取得した信号出力率を含む制御信号を色調整処理部42a及び色補正処理部42bへそれぞれ出力するように構成されている。
【0037】
なお、本実施形態においては、例えば、前述の調光動作の動作間隔を規定するための時定数を有して構成されたラグリードフィルタ等を光源制御部34に設けることにより、当該調光動作に伴うハンチングの発生を避けることが望ましい。
【0038】
また、本実施形態においては、例えば、プロセッサ4の各部が、個々の電子回路として構成されていてもよく、または、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路における回路ブロックとして構成されていてもよい。また、本実施形態においては、例えば、プロセッサ4が1つ以上のCPUを具備して構成されていてもよい。また、本実施形態においては、例えば、制御部44が、メモリ44aに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、プロセッサ4の各部の機能に応じた動作及び処理等をコンピュータに行わせるようにしてもよい。
【0039】
表示装置5は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)等を具備し、プロセッサ4から出力される観察画像等を表示することができるように構成されている。
【0040】
続いて、本実施形態の作用について、以下に説明する。
【0041】
術者等のユーザは、例えば、内視鏡装置1の各部を接続して電源を投入した後、スコープスイッチ23の観察モード切替スイッチを操作することにより、内視鏡装置1の観察モードを白色光観察モードに設定するための指示を行う。
【0042】
ここで、内視鏡装置1の観察モードが白色光観察モードに設定された場合における各部の動作の具体例について、以下に説明する。
【0043】
制御部44は、内視鏡装置1の観察モードを白色光観察モードに設定するための指示が行われたことを検知した際に、B光、G光及びR光を光源装置3から順次出射させるための制御信号を生成して光源制御部34へ出力する。また、制御部44は、内視鏡装置1の観察モードを白色光観察モードに設定するための指示が行われたことを検知した際に、白色光観察モードに応じた動作を行わせるための制御信号を生成して色調整処理部42a、色補正処理部42b及び観察画像生成部43へ出力する。
【0044】
光源制御部34は、制御部44から出力される制御信号に応じ、白色光観察モードにおいて、例えば、紫色LED31a及び琥珀色LED31dを消光させつつ、青色LED31bと、緑色LED31cと、赤色LED31eと、をこの順番で繰り返し発光させるための制御を発光部31に対して行う。そして、このような光源制御部34の動作に応じ、B光、G光及びR光が照明光として被写体に順次照射されるとともに、当該照明光の戻り光を撮像することにより生成された撮像信号が撮像素子21bから信号処理部41へ順次出力される。
【0045】
信号処理部41は、撮像素子21bから順次出力される撮像信号に対して所定の信号処理を施すことにより、B光が照射された被写体からの戻り光を撮像して得られた青色成分の画像データである画像データPBと、G光が照射された当該被写体からの戻り光を撮像して得られた緑色成分の画像データである画像データPGと、R光が照射された当該被写体からの戻り光を撮像して得られた赤色成分の画像データである画像データPRと、を生成して画像処理部42及び制御部44へそれぞれ出力する。
【0046】
制御部44は、信号処理部41から出力される各色成分の画像データに基づき、白色光観察モードにおける現在の明るさWCBを検出するための明るさ検出処理を行う。
【0047】
具体的には、制御部44は、前述の明るさ検出処理として、例えば、信号処理部41から出力される画像データPB、PG及びPRに含まれる各画素の画素値の平均値を算出するとともに、当該算出した平均値を白色光観察モードにおける現在の明るさWCBとして検出するための処理を行う。なお、制御部44は、前述の明るさ検出処理として、例えば、信号処理部41から出力される画像データPB、PG及びPRに含まれる各画素の画素値の加重平均値、または、信号処理部41から出力される所定の色成分の画像データに含まれる各画素の画素値の平均値のいずれかを白色光観察モードにおける現在の明るさWCBとして検出するような処理を行うものであってもよい。また、制御部44は、前述の明るさ検出処理を行う際に、信号処理部41から出力される画像データの全域を処理対象としてもよく、または、信号処理部41から出力される画像データに含まれる一部の領域のみを処理対象としてもよい。
【0048】
制御部44は、前述の明るさ検出処理の処理結果として得られた現在の明るさWCBを、白色光観察モードにおける明るさ目標値WTBに近づけるような調光動作を行わせるための制御信号を生成して光源制御部34へ出力する。
【0049】
具体的には、制御部44は、例えば、明るさ目標値WTBに対する現在の明るさWCBの比率(WCB/WTB)を1に近づけるような調光動作を行わせるための制御信号を生成して光源制御部34へ出力する。
【0050】
そして、以上に述べたような制御部44の動作によれば、白色光観察に適した光量を有するB光、G光及びR光が照明光として光源装置3から内視鏡2へ供給される。
【0051】
色調整処理部42aは、制御部44から出力される制御信号に応じ、白色光観察モードにおいて、例えば、信号処理部41を経て出力される各色成分の画像データに対してホワイトバランス調整処理を施すとともに、当該ホワイトバランス調整処理を施した各色成分の画像データを色補正処理部42bへ出力する。
【0052】
色補正処理部42bは、制御部44から出力される制御信号に応じ、白色光観察モードにおいて、例えば、色調整処理部42aを経て出力される各色成分の画像データに対してガンマ補正処理を施すとともに、当該ガンマ補正処理を施した各色成分の画像データを観察画像生成部43へ出力する。
【0053】
観察画像生成部43は、制御部44から出力される制御信号に応じ、白色光観察モードにおいて、例えば、色補正処理部42bを経て出力される画像データPBを表示装置5のBチャンネルに割り当て、色補正処理部42bを経て出力される画像データPGを表示装置5のGチャンネルに割り当て、かつ、色補正処理部42bを経て出力される画像データPRを表示装置5のRチャンネルに割り当てることにより白色光観察画像を生成し、当該生成した白色光観察画像を表示装置5へ出力する。
【0054】
以上に述べたような各部の動作によれば、内視鏡装置1の観察モードが白色光観察モードに設定されている際に、例えば、生体組織等の被写体を肉眼で見た場合の色調と略同様の色調を具備する白色光観察画像が表示装置5に表示される。
【0055】
ユーザは、内視鏡装置1の観察モードを白色光観察モードに設定した状態において、表示装置5に表示される白色光観察画像を確認しつつ、挿入部2aを被験者の体腔内に挿入するとともに、当該体腔内に存在する所望の被写体(生体組織)が対物光学系21aの観察視野内に入るような位置に先端部2cを配置する。その後、ユーザは、スコープスイッチ23の観察モード切替スイッチを操作することにより、内視鏡装置1の観察モードを特殊光観察モードに設定するための指示を行う。
【0056】
ここで、内視鏡装置1の観察モードが特殊光観察モードに設定された場合における各部の動作の具体例について、以下に説明する。なお、以下においては、琥珀色LED31dから発せられるA光の波長帯域が本来の波長帯域から短波長側へシフトする場合を例に挙げて説明する。
【0057】
制御部44は、内視鏡装置1の観察モードを特殊光観察モードに設定するための指示が行われたことを検知した際に、G光、A光及びR光を光源装置3から順次出射させるための制御信号を生成して光源制御部34へ出力する。
【0058】
光源制御部34は、制御部44から出力される制御信号に応じ、特殊光観察モードにおいて、例えば、紫色LED31a及び青色LED31bを消光させつつ、緑色LED31cと、琥珀色LED31dと、赤色LED31eと、をこの順番で繰り返し発光させるための制御を発光部31に対して行う。そして、このような光源制御部34の動作に応じ、G光、A光及びR光が照明光として被写体に順次照射されるとともに、当該照明光の戻り光を撮像することにより生成された撮像信号が撮像素子21bから信号処理部41へ順次出力される。すなわち、本実施形態の撮像部21は、特殊光観察モードにおいて、G光、A光及びR光により照明されたヘモグロビンを含む領域を有する被写体からの戻り光を撮像して撮像信号を出力する。
【0059】
信号処理部41は、撮像素子21bから順次出力される撮像信号に対して所定の信号処理を施すことにより、画像データPGと、A光が照射された被写体からの戻り光を撮像して得られた琥珀色成分の画像データである画像データPAと、画像データPRと、を生成して画像処理部42及び制御部44へそれぞれ出力する。
【0060】
制御部44は、信号処理部41から出力される各色成分の画像データに基づき、特殊光観察モードにおける現在の明るさSCBを検出するための明るさ検出処理を行う。
【0061】
具体的には、制御部44は、前述の明るさ検出処理として、例えば、信号処理部41から出力される画像データPG、PA及びPRに含まれる各画素の画素値の平均値を算出するとともに、当該算出した平均値を特殊光観察モードにおける現在の明るさSCBとして検出するための処理を行う。なお、制御部44は、前述の明るさ検出処理として、例えば、信号処理部41から出力される画像データPG、PA及びPRに含まれる各画素の画素値の加重平均値、または、信号処理部41から出力される画像データPAに含まれる各画素の画素値の平均値のいずれかを特殊光観察モードにおける現在の明るさSCBとして検出するような処理を行うものであってもよい。また、制御部44は、前述の明るさ検出処理を行う際に、信号処理部41から出力される画像データの全域を処理対象としてもよく、または、信号処理部41から出力される画像データのうちの一部の領域のみを処理対象としてもよい。
【0062】
制御部44は、前述の明るさ検出処理の処理結果として得られた現在の明るさSCBを、特殊光観察モードにおける明るさ目標値STBに近づけるような調光動作を行わせるための制御信号を生成して光源制御部34へ出力する。具体的には、制御部44は、例えば、明るさ目標値STBに対する現在の明るさSCBの比率(SCB/STB)を1に近づけるような調光動作を行わせるための制御信号を生成して光源制御部34へ出力する。すなわち、このような調光動作によれば、例えば、先端部2cを被検体内の被写体に近づけて観察する近景観察時において、光源制御部34から琥珀色LED31dへ供給される電流の電流値が相対的に小さくなるとともに、先端部2cを当該被検体内の被写体から遠ざけて観察する遠景観察時において、光源制御部34から琥珀色LED31dへ供給される電流の電流値が相対的に大きくなる。
【0063】
制御部44は、内視鏡装置1の観察モードを特殊光観察モードに設定するための指示が行われたことを検知した際に、メモリ44aからテーブルデータTDを読み込むための動作を行う。また、制御部44は、内視鏡装置1の観察モードを特殊光観察モードに設定するための指示が行われたことを検知した際に、光源制御部34から発光部31の琥珀色LED31dへ供給されている現在の電流値CIを検出する。
【0064】
テーブルデータTDは、例えば、図4に示すように、琥珀色LED31dに対して供給される電流の電流値CVと、撮像素子21bから出力される撮像信号の信号出力率SRと、の間の対応関係を示すデータとして作成されている。図4は、実施形態に係るプロセッサの処理において用いられるテーブルデータの一例を示す図である。
【0065】
電流値CVは、光源制御部34による琥珀色LED31dに対する調光動作の動作態様に適合するような値として設定されている。具体的には、例えば、光源制御部34による琥珀色LED31dに対する調光動作が1アンペアから10アンペアまでの範囲において1アンペア刻みで行われる場合には、当該範囲に含まれる10個の電流値が、図4のテーブルデータTDに含まれる電流値CVA、CVB、CVC、…、CVMとして設定されている。また、図4のテーブルデータTDにおいては、電流値CVAが琥珀色LED31dに対して供給される電流の下限値に相当し、かつ、電流値CVMが琥珀色LED31dに対して供給される電流の上限値に相当する。
【0066】
信号出力率SRは、例えば、琥珀色LED31dから所定の光量LMTを具備するA光を発生させ、当該A光の中心波長を600nmから短波長側へ漸次変化させつつ、ヘモグロビンを含む領域(またはヘモグロビンと同様の吸光特性の領域)を有する基準被写体に対して当該A光を照射し、当該A光の照射に応じて撮像素子21bから順次出力される撮像信号の信号強度SVIを取得し、当該取得した信号強度SVIの基準信号強度SVT(後述)に対する比率を算出することにより得られる値として設定されている。すなわち、信号強度SVIは、ヘモグロビンの吸光特性のうちの吸光係数が急峻に変化する所定の波長範囲内に強度を有しかつ600nmとは異なる中心波長を有するA光が、ヘモグロビンを含む領域を有する被写体に対して照射された際に撮像部21から出力される撮像信号の信号強度として取得される。
【0067】
ここで、本実施形態においては、光源制御部34の調光動作に応じて琥珀色LED31dに供給される電流の電流値と、当該調光動作に応じて琥珀色LED31dから発せられるA光の中心波長と、の間の関係が既知である前提でテーブルデータTDが作成されている。また、基準信号強度SVTは、所定の光量LMTを具備しかつ中心波長が600nmに設定されたA光を前述の基準被写体に対して照射した際に撮像素子21bから出力される撮像信号の信号強度として得られる値である。
【0068】
従って、図4のテーブルデータTDにおいては、光源制御部34の調光動作の上限値に相当しかつ琥珀色LED31dから発せられるA光の中心波長が600nmとなるような電流値CVMに対応する信号出力率SRが1.0に設定されている。また、図4のテーブルデータTDにおいては、光源制御部34の調光動作の範囲内に属しかつ琥珀色LED31dから発せられるA光の中心波長が600nm未満になるような電流値CVA、CVB、CVC、…と、0より大きくかつ1.0未満の値として取得された信号出力率SRA、SRB、SRC、…と、の間の対応関係が示されている。
【0069】
なお、本実施形態によれば、前述のようなデータの代わりに、例えば、琥珀色LED31dの温度TVと、撮像素子21bから出力される撮像信号の信号出力率SRと、の間の対応関係を示すデータがテーブルデータTDとしてメモリ44aに格納されていてもよい。また、このような場合において、制御部44が、琥珀色LED31dの現在の温度CTを検出し、当該検出した現在の温度CTに相当する温度TVをテーブルデータTDに基づいて特定し、当該特定した温度TVに関連付けられた信号出力率SRを取得し、当該取得した信号出力率SRを含む制御信号を色調整処理部42a及び色補正処理部42bへそれぞれ出力するようにしてもよい。また、本実施形態によれば、例えば、琥珀色LED31dから発せられているA光の現在の中心波長WPを検出可能な分光検出器が光源装置3に設けられているとともに、当該分光検出器の検出結果に応じた信号出力率SRが制御部44により取得されるようにしてもよい。また、本実施形態によれば、例えば、琥珀色LED31dの個体識別番号毎に作成された複数のテーブルデータTDがメモリ44aに格納されていてもよい。
【0070】
制御部44は、メモリ44aから読み込んだテーブルデータTDを参照することにより、光源制御部34から発光部31の琥珀色LED31dへ供給されている現在の電流値CIに相当する電流値CVを特定し、当該特定した電流値CVに関連付けられた信号出力率SRを取得するとともに、当該取得した信号出力率SRを含む制御信号を色調整処理部42a及び色補正処理部42bへそれぞれ出力する。
【0071】
すなわち、本実施形態の制御部44は、発光部31におけるA光の発生源である琥珀色LED31dの現在の動作状態を示すパラメータに相当する現在の電流値CIを検出して得られた検出結果に基づいてテーブルデータTDを参照することにより、ヘモグロビンを含む領域を有する被写体に対するA光の照射に応じて撮像部21から出力される撮像信号の信号強度に係る情報である信号強度情報を取得する。また、本実施形態の制御部44は、基準信号強度SVTに対する信号強度SVIの比率として算出される信号出力率SRを信号強度情報として取得する。また、本実施形態の制御部44は、信号強度情報に基づいて観察画像生成部43による観察画像の生成に用いられる各画像データの明るさの比率を一定の比率に維持するための制御に相当する動作として、信号出力率SRを含む制御信号を色調整処理部42a及び色補正処理部42bへそれぞれ出力する動作を行う。なお、本実施形態の制御部44は、琥珀色LED31dの現在の動作状態を示すパラメータとして、琥珀色LED31dの現在の温度CTを検出して検出結果を得るようにしてもよい。また、本実施形態の制御部44は、琥珀色LED31dの現在の動作状態を示すパラメータとして、琥珀色LED31dの現在の中心波長WPを検出して検出結果を得るようにしてもよい。また、本実施形態の制御部44は、琥珀色LED31dの個体識別番号に応じた信号強度情報(信号出力率SR)を取得するようにしてもよい。
【0072】
色調整処理部42aは、制御部44から出力される制御信号に応じ、特殊光観察モードにおいて、信号処理部41から出力される画像データPG及びPRに対して色調整処理を施す。具体的には、色調整処理部42aは、制御部44から出力される制御信号に含まれる信号出力率SRを画像データPGの各画素の画素値に対して乗じる処理、及び、当該信号出力率SRを画像データPRの各画素の画素値に対して乗じる処理を色調整処理として行う。すなわち、このような色調整処理によれば、画像データPGの各画素の画素値に対して信号出力率SRを乗じて得られた画像データSPGと、画像データPAと、画像データPRに対して信号出力率SRを乗じて得られた画像データSPRと、が色調整処理部42aから色補正処理部42bへ出力される。
【0073】
なお、本実施形態によれば、色調整処理部42aにおいて、例えば、画像データPAの各画素の画素値に対して信号出力率SRの逆数を乗じる処理が行われるようにしてもよい。そして、このような処理が色調整処理部42aにおいて行われた場合には、画像データPGと、画像データPAの各画素の画素値に対して信号出力率SRの逆数を乗じて得られた画像データIPAと、画像データPRと、が色補正処理部42bへ出力される。
【0074】
また、本実施形態によれば、色調整処理部42aが、画像データSPG及びSPRを得るための処理、または、画像データIPAを得るための処理のいずれかの処理を色調整処理として行うようにすればよい。すなわち、本実施形態の色調整処理部42aは、制御部44の制御に応じて得られる信号出力率SRに基づき、画像データPAの明るさを調整するための処理、または、画像データPG及びPRの明るさを調整するための処理のいずれかの処理を色調整処理として行う。
【0075】
色補正処理部42bは、色調整処理部42aから出力される画像データSPG、PA及びSPRに基づき、色差Cr及びCbを画素毎に算出するための処理を行う。また、色補正処理部42bは、制御部44から出力される制御信号に含まれる信号出力率SRを取得するための処理を行う。
【0076】
なお、本実施形態の色補正処理部42bにより算出される色差Cr及びCbの値は、公知の変換式のB(青色)成分に画像データSPGの画素値を適用し、当該変換式のG(緑色)成分に画像データPAの画素値を適用し、かつ、当該変換式のR(赤色)成分に画像データSPRの画素値を適用することにより得ることができる。
【0077】
色補正処理部42bは、色調整処理部42aから出力される各色成分の画像データの中から、色差Cr及びCbの両方の値が負の値となる画素群に相当する注目領域APを抽出する。また、色補正処理部42bは、下記数式(1)を用いた処理を行うことにより、前述のように算出した色差Cr及びCbに応じた色補正係数Tpを、画像データSPG及びSPRの注目領域APに含まれる画素毎に設定する。なお、下記数式(1)において、Fa及びFbは所定の定数を表し、Cra及びCbaは生体の基準色に応じて設定される基準色差の値を表し、Crt及びCbtは注目領域APに含まれる注目画素において算出された色差の値を表すものとする。また、下記数式(1)において、|Crt−Cra|は色差Crtから基準色差Craを減じて得られる値の絶対値を表し、|Cbt−Cba|は色差Cbtから基準色差Cbaを減じて得られる値の絶対値を表すものとする。
【0078】

Tp=(1+Fa×|Crt−Cra|)×(1+Fb×|Cbt−Cba|) …(1)

すなわち、色補正係数Tpは、画像データSPG及びSPRの注目領域APに含まれる注目画素の色が生体の基準色に対して離れるに従って単調増加するような値として設定される。
【0079】
なお、本実施形態によれば、基準色差Cra及びCbaが、例えば、色差Crを横軸としかつ色差Cbを縦軸とする直交座標系であるCrCb座標系における第4象限の座標値としてプロットされる値として設定されればよい(図5参照)。すなわち、本実施形態によれば、基準色差Craの値が0より大きくなるように設定され、かつ、基準色差Cbaの値が0より小さくなるように設定されればよい。図5は、実施形態に係るプロセッサの処理において用いられる基準色差を直交座標系の座標値として示した図である。
【0080】
また、本実施形態によれば、例えば、電流値CVと、基準色差Cra及びCbaの値と、の間の対応関係を示すデータがテーブルデータTDに含まれている場合において、琥珀色LED31dへ供給されている現在の電流値CIの検出結果に応じて基準色差Cra及びCbaの値を変化させるような制御が制御部44により行われるようにしてもよい。
【0081】
色補正処理部42bは、信号出力率SRと、色補正係数Tpと、を下記数式(2)に適用して演算を行うことにより、画像データSPGの注目領域APに含まれる各画素の画素値と、画像データSPRの当該注目領域APに含まれる各画素の画素値と、をそれぞれ補正する。なお、下記数式(2)において、Paは画像データSPG及びSPRの注目領域APに含まれる注目画素の補正前の画素値を表し、Pbは当該注目画素の補正後の画素値を表すものとする。
【0082】

Pb=Pa×[1−Tp+(Tp/SR)] …(2)

すなわち、上記数式(2)によれば、制御部44の制御に応じて得られる信号出力率SRと、色調整処理部42aによる色調整処理の処理結果として得られた画像データSPG、PA及びSPRを用いて算出した色差Cr及びCbと、に基づき、画像データSPG及びSPRにおけるヘモグロビンを含まない領域の彩度を抑制するための色補正処理が色補正処理部42bにおいて行われる。そして、上記数式(2)を用いた処理が色補正処理部42bにおいて行われた場合には、画像データSPGの注目領域APに含まれる各画素に対して色補正処理を施して得られた画像データSCPGと、画像データPAと、画像データSPRの注目領域APに含まれる各画素に対して色補正処理を施して得られた画像データSCPRと、が色補正処理部42bから観察画像生成部43へ出力される。
【0083】
また、本実施形態の色補正処理部42bは、例えば、下記数式(3)を用いて画像データPAの注目領域APに含まれる各画素の画素値を補正する処理を行うものであってもよい。なお、下記数式(3)において、Pcは画像データPAの注目領域APに含まれる注目画素の補正前の画素値を表し、Pdは当該注目画素の補正後の画素値を表すものとする。
【0084】

Pd=Pc×(1−Tp+SR×Tp) …(3)

すなわち、上記数式(3)によれば、制御部44の制御に応じて得られる信号出力率SRと、色調整処理部42aによる色調整処理の処理結果として得られた画像データSPG、PA及びSPRを用いて算出した色差Cr及びCbと、に基づき、画像データPAにおけるヘモグロビンを含まない領域の彩度を抑制するための色補正処理が色補正処理部42bにおいて行われる。そして、上記数式(3)を用いた処理が色補正処理部42bにおいて行われた場合には、画像データSPGと、画像データPAの注目領域APに含まれる各画素に対して色補正処理を施して得られた画像データCPAと、画像データSPRと、が観察画像生成部43へ出力される。
【0085】
また、本実施形態によれば、色補正処理部42bが、上記数式(2)を用いた処理、または、上記数式(3)を用いた処理のいずれかの処理を色補正処理として行うようにすればよい。
【0086】
観察画像生成部43は、制御部44から出力される制御信号に応じ、特殊光観察モードにおいて、例えば、色補正処理部42bを経て出力される画像データSCPGを表示装置5のBチャンネルに割り当て、色補正処理部42bを経て出力される画像データPAを表示装置5のGチャンネルに割り当て、かつ、色補正処理部42bを経て出力される画像データSCPRを表示装置5のRチャンネルに割り当てることにより特殊光観察画像を生成し、当該生成した特殊光観察画像を表示装置5へ出力する。
【0087】
ところで、琥珀色LED31dから発せられるA光の本来の中心波長である600nm付近の波長帯域においては、照明光の波長が短波長側へシフトするに伴ってヘモグロビンの吸光係数が急峻に増加する。また、琥珀色LED31dから発せられるA光の中心波長は、例えば、光源制御部34から琥珀色LED31dへ供給される電流値の低下に伴って600nm未満の波長へシフトする。
【0088】
そのため、例えば、明るさ目標値STBに対する現在の明るさSCBの比率を1に近づけるような調光動作を単に行った場合には、近接観察時において、琥珀色LED31dに供給される電流値の低下に伴ってA光の波長帯域が本来の波長帯域から短波長側へシフトし、血管及び血液等のヘモグロビンを含む領域におけるA光の吸収量の増加に伴って撮像素子21bより撮像されるA光の戻り光の光量が減少する。すなわち、特殊光観察モードにおいて前述の調光動作を単に行った場合には、表示装置5に表示される観察画像におけるヘモグロビンを含む領域の色調が、近接観察時と遠景観察時とにおいて大きく異なってしまうような現象が発生し得る。
【0089】
これに対し、本実施形態によれば、テーブルデータTDを参照することにより琥珀色LED31dへ供給されている現在の電流値CIの検出結果に応じた信号出力率SRを取得し、当該取得した信号出力率SRに応じて画像データPG及びPRの明るさをそれぞれ減少させるための処理、または、当該取得した信号出力率SRに応じて画像データPAの明るさを増大させるための処理のいずれかの処理を行うようにしている。さらに、本実施形態によれば、前述の注目領域APに含まれる各画素に対して上記数式(2)を用いた処理または上記数式(3)を用いた処理のいずれかの処理を施すようにしている。
【0090】
そのため、本実施形態によれば、特殊光観察モードにおいて、被写体との観察距離に応じた調光動作を行った場合であっても、表示装置5に表示される観察画像における血管及び血液等のヘモグロビンを含む領域の色調を一定の色調に維持することができる。また、本実施形態によれば、特殊光観察モードにおいて、被写体との観察距離に応じた調光動作を行った場合であっても、表示装置5に表示される観察画像における結合組織及び処置具等のヘモグロビンを含まない領域の色調を一定の色調に維持することができる。従って、本実施形態によれば、例えば、生体内の所望の部位における生体組織の深部に存在する深部血管を観察しつつ、当該所望の部位に対して処置を行うユーザの負担を軽減することができる。
【0091】
なお、本実施形態によれば、例えば、原色フィルタまたは補色フィルタを撮像面に設けた撮像素子21bにより被写体を撮像して各色成分の画像データを得るようにしてもよい。そして、このような場合においては、例えば、内視鏡装置1の観察モードが特殊光観察モードに設定された際に、琥珀色LED31dを発光させる制御と、緑色LED31c及び赤色LED31eを同時に発光させる制御と、がこの順番で繰り返し行われるようにすればよい。
【0092】
また、本実施形態によれば、例えば、G光の波長帯域のみを透過させるフィルタと、A光の波長帯域のみを透過させるフィルタと、R光の波長帯域のみを透過させるフィルタと、を有するカラーフィルタを撮像面に設けた撮像素子21bにより被写体を撮像して各色成分の画像データを得るようにしてもよい。そして、このような場合においては、例えば、内視鏡装置1の観察モードが特殊光観察モードに設定された際に、紫色LED31a及び青色LED31bを消光させつつ、緑色LED31c、琥珀色LED31d及び赤色LED31eを同時に発光させる制御が行われるようにすればよい。
【0093】
また、本実施形態によれば、例えば、特殊光観察モードにおいて、G光の代わりにB光が被写体に照射されるようにしてもよい。そして、このような場合においては、例えば、内視鏡装置1の観察モードが特殊光観察モードに設定された際に、画像データPGの代わりに画像データPBが取得されるとともに、当該画像データPBに対して色調整処理部42aによる色調整処理及び色補正処理部42bによる色補正処理が順次施される。
【0094】
また、本実施形態によれば、例えば、中心波長が800nm付近に設定された近赤外の狭帯域光であるIR光を発生する光源が光源装置3に設けられているとともに、当該IR光の戻り光を当該IR光以外の他の光の戻り光から分離して撮像するための構成が撮像部21に設けられていてもよい。そして、このような場合においては、例えば、内視鏡装置1の観察モードが特殊光観察モードに設定された際に、R光の代わりにIR光が被写体に照射され、当該IR光が照射された当該被写体からの戻り光を撮像して得られた近赤外成分の画像データである画像データPIRが取得され、当該画像データPIRに対して色調整処理部42aによる色調整処理及び色補正処理部42bによる色補正処理が順次施される。なお、前述のIR光は、A光(及びR光)よりも長波長側に強度を有し、かつ、ヘモグロビンの吸光特性のうち、吸光係数が急峻に変化する所定の波長範囲外に強度を有していればよい。
【0095】
また、本実施形態によれば、例えば、特殊光観察モードにおいて、色調整処理部42aが信号出力率SRに基づいて色調整処理を行う代わりに、制御部44が信号出力率SRに基づいて撮像素子21bにおいてA光の戻り光を撮像する際の露光時間を調整するための制御を行うようにしてもよい。具体的には、例えば、制御部44は、特殊光観察モードにおいて、G光の戻り光を撮像する際の露光時間及びR光の戻り光を撮像する際の露光時間をETPに設定するとともに、A光の戻り光を撮像する際の露光時間ETQを露光時間ETPの(1/SR)倍に設定するための制御を撮像素子21bに対して行うようにしてもよい。なお、このような場合においては、琥珀色LED31dの発光時間を露光時間ETQ以上にするための制御が併せて行われるようにすればよい。
【0096】
また、本実施形態によれば、例えば、特殊光観察モードにおいて、色調整処理部42aが信号出力率SRに基づいて色調整処理を行う代わりに、制御部44が信号出力率SRに基づいて撮像素子21bにおいてA光の戻り光を撮像して得られる撮像信号のゲインを調整するための制御を行うようにしてもよい。具体的には、例えば、制御部44は、特殊光観察モードにおいて、G光の戻り光を撮像して得られた撮像信号のゲイン及びR光の戻り光を撮像して得られた撮像信号のゲインをGPに設定するとともに、A光の戻り光を撮像して得られた撮像信号のゲインGQをゲインGPの(1/SR)倍に設定するための制御を撮像素子21bに対して行うようにしてもよい。
【0097】
また、本実施形態によれば、例えば、特殊光観察モードにおいて、色調整処理部42aが信号出力率SRに基づいて色調整処理を行う代わりに、制御部44が信号出力率SRに基づいて発光部31から発せられるA光の光量を調整するための制御を行うようにしてもよい。具体的には、例えば、制御部44は、特殊光観察モードにおいて、発光部31から発せられるG光の光量及びR光の光量をLMPに設定するとともに、発光部31から発せられるA光の光量LMQを光量LMPの(1/SR)倍に設定するための制御を光源制御部34に対して行うようにしてもよい。なお、このような場合においては、琥珀色LED31dの発光時間、または、光源制御部34から琥珀色LED31dに供給される電流値のいずれかを変化させるようにすればよい。但し、A光の光量をG光及びR光の光量の(1/SR)倍に設定するために、光源制御部34から琥珀色LED31dに供給される電流値を変化させる場合には、例えば、下記数式(4)として示すように、当該電流値と信号出力率SRとが連動して変化する点を考慮する必要がある。なお、下記数式(4)は、琥珀色LED31dへ供給される電流値を現在の電流値Ic(前述の電流値CIに相当)から新たな電流値Inへ変化させる場合の例を表しているものとする。また、下記数式(4)において、SRIcはテーブルデータTDにおける電流値Icに対応する信号出力率を表し、SRInはテーブルデータTDにおける電流値Inに対応する信号出力率を表すものとする。
【0098】

1/SRIc=(In×SRIn)/(Ic×SRIc) …(4)

そして、上記数式(4)を変形することにより、下記数式(5)を得ることができる。
【0099】

0=In×SRIn−Ic …(5)

ここで、例えば、テーブルデータTDにおける信号出力率SRが電流値CVの一次関数で近似されると仮定した場合、上記数式(5)を電流値Inの二次方程式として表すことができる。そして、特殊光観察モードにおいて、前述の二次方程式の解として得られた電流値In(>0)の電流を琥珀色LED31dへ供給させるための制御が行われることにより、A光の光量をG光及びR光の光量の(1/SR)倍にしつつ、明るさ目標値STBに対する現在の明るさSCBの比率を1に近づけることができる。
【0100】
また、本実施形態によれば、特殊光観察モードにおいて、前述の色調整処理の代わりに、例えば、以下の変形例のような色調整処理が色調整処理部42aにおいて行われるようにしてもよい。なお、以降においては、簡単のため、既述の処理等を適用可能な部分に関する具体的な説明を適宜省略するものとする。
【0101】
色調整処理部42aは、信号処理部41から出力される画像データPG、PA及びPRに基づき、色差Cr及びCbをそれぞれ算出するための処理を行う。また、色調整処理部42aは、制御部44から出力される制御信号に含まれる信号出力率SRを取得するための処理を行う。
【0102】
なお、本変形例の色調整処理部42aにより算出される色差Cr及びCbの値は、公知の変換式のB成分に画像データPGの画素値を適用し、当該変換式のG成分に画像データPAの画素値を適用し、かつ、当該変換式のR成分に画像データPRの画素値を適用することにより得ることができる。
【0103】
色調整処理部42aは、前述のように算出した色差Cr及びCbに応じた色調整係数Tqを画像データPG及びPRに含まれる画素毎に設定するための処理を行う。
【0104】
なお、色調整係数Tqは、画像データPG及びPRに含まれる注目画素において算出された色差Crの値を上記数式(1)のCrtに適用し、当該注目画素において算出された色差Cbの値を上記数式(1)のCbtに適用して得られる色補正係数Tpの逆数に相当する。そのため、色調整係数Tqは、画像データPG及びPRに含まれる注目画素の色が生体の基準色に近づくに従って単調増加するような値として設定される。
【0105】
色調整処理部42aは、信号出力率SRと、色調整係数Tqと、を下記数式(6)に適用して演算を行うことにより、画像データPGに含まれる各画素の画素値と、画像データPRに含まれる各画素の画素値と、をそれぞれ調整する。なお、下記数式(6)において、Pcは画像データPG及びPRに含まれる注目画素の調整前の画素値を表し、Pdは当該注目画素の調整後の画素値を表すものとする。
【0106】

Pd=Pc×(1−Tq+SR×Tq) …(6)

すなわち、上記数式(6)によれば、制御部44の制御に応じて得られる信号出力率SRと、信号処理部41から出力される各色成分の画像データを用いて算出した色差Cr及びCbと、に基づき、画像データPG及びPRの明るさを調整しつつ、画像データPG及びPRにおけるヘモグロビンを含まない領域の彩度を抑制するための色調整処理が色調整処理部42aにおいて行われる。そして、上記数式(6)を用いた処理が色調整処理部42aにおいて行われた場合には、画像データPGに含まれる各画素に対して色調整処理を施した画像データDPGと、画像データPRに含まれる各画素に対して色調整処理を施した画像データDPRと、を得ることができる。
【0107】
なお、上記数式(6)を用いた色調整処理が行われる場合には、色補正処理部42bによる色補正処理が不要となる。そのため、上記数式(6)を用いた色調整処理が行われる場合には、画像データDPGと、画像データPAと、画像データDPRと、が色補正処理部42bから観察画像生成部43へ出力される。また、上記数式(6)を用いた色調整処理が行われる場合には、観察画像生成部43が、画像処理部42を経て出力される画像データDPGを表示装置5のBチャンネルに割り当て、画像処理部42を経て出力される画像データPAを表示装置5のGチャンネルに割り当て、かつ、画像処理部42を経て出力される画像データDPRを表示装置5のRチャンネルに割り当てることにより特殊光観察画像を生成し、当該生成した特殊光観察画像を表示装置5へ出力する。
【0108】
また、本変形例の色調整処理部42aは、例えば、下記数式(7)を用いて画像データPAに含まれる各画素の画素値を調整する処理を行うものであってもよい。なお、下記数式(7)において、Peは画像データPAに含まれる注目画素の調整前の画素値を表し、Pfは当該注目画素の調整後の画素値を表すものとする。
【0109】

Pf=Pe×[1−Tq+(Tq/SR)] …(7)

すなわち、上記数式(7)によれば、制御部44の制御に応じて得られる信号出力率SRと、信号処理部41から出力される各色成分の画像データを用いて算出した色差Cr及びCbと、に基づき、画像データPAの明るさを調整しつつ、画像データPAにおけるヘモグロビンを含まない領域の彩度を抑制するための色調整処理が色調整処理部42aにおいて行われる。そして、上記数式(7)を用いた処理が色調整処理部42aにおいて行われた場合には、画像データPAに含まれる各画素に対して色調整処理を施した画像データDPAを得ることができる。
【0110】
なお、上記数式(7)を用いた色調整処理が行われる場合には、色補正処理部42bによる色補正処理が不要となる。そのため、上記数式(7)を用いた色調整処理が行われる場合には、画像データPGと、画像データDPAと、画像データPRと、が色補正処理部42bから観察画像生成部43へ出力される。また、上記数式(7)を用いた色調整処理が行われる場合には、観察画像生成部43が、画像処理部42を経て出力される画像データPGを表示装置5のBチャンネルに割り当て、画像処理部42を経て出力される画像データDPAを表示装置5のGチャンネルに割り当て、かつ、画像処理部42を経て出力される画像データPRを表示装置5のRチャンネルに割り当てることにより特殊光観察画像を生成し、当該生成した特殊光観察画像を表示装置5へ出力する。
【0111】
また、本変形例によれば、色調整処理部42aが、上記数式(6)を用いた処理、または、上記数式(7)を用いた処理のいずれかの処理を色調整処理として行うようにすればよい。
【0112】
一方、本実施形態によれば、内視鏡装置1の観察モードが特殊光観察モードに設定された場合における各部の動作を適宜変形することにより、生体組織の表層に存在する毛細血管の観察時に表示される観察画像の色調を維持するための処理等が行われるようにしてもよい。このような変形例に係る動作及び処理等の具体例について、以下に説明する。なお、以下においては、紫色LED31aから発せられるV光の波長帯域が本来の波長帯域から短波長側へシフトする場合を例に挙げて説明する。
【0113】
制御部44は、内視鏡装置1の観察モードを特殊光観察モードに設定するための指示が行われたことを検知した際に、V光及びG光を光源装置3から順次出射させるための制御信号を生成して光源制御部34へ出力する。
【0114】
光源制御部34は、制御部44から出力される制御信号に応じ、特殊光観察モードにおいて、例えば、青色LED31b、琥珀色LED31d及び赤色LED31eを消光させつつ、紫色LED31aと、緑色LED31cと、を交互に繰り返し発光させるための制御を発光部31に対して行う。そして、このような光源制御部34の動作に応じ、V光及びG光が照明光として被写体に順次照射されるとともに、当該照明光の戻り光を撮像することにより生成された撮像信号が撮像素子21bから信号処理部41へ順次出力される。すなわち、本変形例の撮像部21は、特殊光観察モードにおいて、V光及びG光により照明されたヘモグロビンを含む領域を有する被写体からの戻り光を撮像して撮像信号を出力する。
【0115】
信号処理部41は、撮像素子21bから順次出力される撮像信号に対して所定の信号処理を施すことにより、V光が照射された被写体からの戻り光を撮像して得られた紫色成分の画像データである画像データPVと、画像データPGと、を生成して画像処理部42及び制御部44へそれぞれ出力する。
【0116】
制御部44は、信号処理部41から出力される各色成分の画像データに基づき、特殊光観察モードにおける現在の明るさSCLを検出するための明るさ検出処理を行う。
【0117】
具体的には、制御部44は、前述の明るさ検出処理として、例えば、信号処理部41から出力される画像データPV及びPGに含まれる各画素の画素値の平均値を算出するとともに、当該算出した平均値を特殊光観察モードにおける現在の明るさSCLとして検出するための処理を行う。なお、制御部44は、前述の明るさ検出処理として、例えば、信号処理部41から出力される画像データPV及びPGに含まれる各画素の画素値の加重平均値、または、信号処理部41から出力される画像データPVに含まれる各画素の画素値の平均値のいずれかを特殊光観察モードにおける現在の明るさSCLとして検出するような処理を行うものであってもよい。また、制御部44は、前述の明るさ検出処理を行う際に、信号処理部41から出力される画像データの全域を処理対象としてもよく、または、信号処理部41から出力される画像データのうちの一部の領域のみを処理対象としてもよい。
【0118】
制御部44は、前述の明るさ検出処理の処理結果として得られた現在の明るさSCLを、特殊光観察モードにおける明るさ目標値STLに近づけるような調光動作を行わせるための制御信号を生成して光源制御部34へ出力する。具体的には、制御部44は、例えば、明るさ目標値STLに対する現在の明るさSCLの比率(SCL/STL)を1に近づけるような調光動作を行わせるための制御信号を生成して光源制御部34へ出力する。すなわち、このような調光動作によれば、例えば、先端部2cを被検体内の被写体に近づけて観察する近景観察時において、光源制御部34から紫色LED31aへ供給される電流の電流値が相対的に小さくなるとともに、先端部2cを当該被検体内の被写体から遠ざけて観察する遠景観察時において、光源制御部34から紫色LED31aへ供給される電流の電流値が相対的に大きくなる。
【0119】
制御部44は、内視鏡装置1の観察モードを特殊光観察モードに設定するための指示が行われたことを検知した際に、メモリ44aからテーブルデータTEを読み込むための動作を行う。また、制御部44は、内視鏡装置1の観察モードを特殊光観察モードに設定するための指示が行われたことを検知した際に、光源制御部34から発光部31の紫色LED31aへ供給されている現在の電流値CJを検出する。
【0120】
テーブルデータTEは、例えば、図6に示すように、紫色LED31aに対して供給される電流の電流値CWと、撮像素子21bから出力される撮像信号の信号出力率SSと、の間の対応関係を示すデータとして作成されている。図6は、実施形態に係るプロセッサの処理において用いられるテーブルデータの一例を示す図である。
【0121】
電流値CWは、光源制御部34による紫色LED31aに対する調光動作の動作態様に適合するような値として設定されている。具体的には、例えば、光源制御部34による紫色LED31aに対する調光動作が1アンペアから10アンペアまでの範囲において1アンペア刻みで行われる場合には、当該範囲に含まれる10個の電流値が、図6のテーブルデータTEに含まれる電流値CWA、CWB、CWC、…、CWMとして設定されている。また、図6のテーブルデータTEにおいては、電流値CWAが紫色LED31aに対して供給される電流の下限値に相当し、かつ、電流値CWMが紫色LED31aに対して供給される電流の上限値に相当する。
【0122】
信号出力率SSは、例えば、紫色LED31aから所定の光量LMUを具備するV光を発生させ、当該V光の中心波長を410nmから短波長側へ(410nmとは異なる波長に)漸次変化させつつ、ヘモグロビンを含む領域(またはヘモグロビンと同様の吸光特性の領域)を有する基準被写体に対して当該V光を照射し、当該V光の照射に応じて撮像素子21bから順次出力される撮像信号の信号強度SVJを取得し、当該取得した信号強度SVJの基準信号強度SVU(後述)に対する比率を算出することにより得られる値として設定されている。すなわち、信号強度SVJは、ヘモグロビンの吸光特性のうちの吸光係数が急峻に変化する所定の波長範囲内に強度を有しかつ410nmとは異なる中心波長を有するV光が、ヘモグロビンを含む領域を有する被写体に対して照射された際に撮像部21から出力される撮像信号の信号強度として取得される。
【0123】
ここで、本実施形態においては、光源制御部34の調光動作に応じて紫色LED31aに供給される電流の電流値と、当該調光動作に応じて紫色LED31aから発せられるV光の中心波長と、の間の関係が既知である前提でテーブルデータTEが作成されている。また、基準信号強度SVUは、所定の光量LMUを具備しかつ中心波長が410nmに設定されたV光を前述の基準被写体に対して照射した際に撮像素子21bから出力される撮像信号の信号強度として得られる値である。
【0124】
従って、図6のテーブルデータTEにおいては、光源制御部34の調光動作の上限値に相当しかつ紫色LED31aから発せられるV光の中心波長が410nmとなるような電流値CWMに対応する信号出力率SSが1.0に設定されている。また、図6のテーブルデータTEにおいては、光源制御部34の調光動作の範囲内に属しかつ紫色LED31aから発せられるV光の中心波長が410nm未満になるような電流値CWA、CWB、CWC、…と、1.0より大きな値として取得された信号出力率SSA、SSB、SSC、…と、の間の対応関係が示されている。
【0125】
なお、本変形例によれば、前述のようなデータの代わりに、例えば、紫色LED31aの温度TWと、撮像素子21bから出力される撮像信号の信号出力率SSと、の間の対応関係を示すデータがテーブルデータTEとしてメモリ44aに格納されていてもよい。また、このような場合において、制御部44が、紫色LED31aの現在の温度CUを検出し、当該検出した現在の温度CUに相当する温度TWをテーブルデータTEに基づいて特定し、当該特定した温度TWに関連付けられた信号出力率SSを取得し、当該取得した信号出力率SSを含む制御信号を色調整処理部42a及び色補正処理部42bへそれぞれ出力するようにしてもよい。また、本変形例によれば、例えば、紫色LED31aから発せられているV光の現在の中心波長WQを検出可能な分光検出器が光源装置3に設けられているとともに、当該分光検出器の検出結果に応じた信号出力率SSが制御部44により取得されるようにしてもよい。また、本変形例によれば、例えば、紫色LED31aの個体識別番号毎に作成された複数のテーブルデータTEがメモリ44aに格納されていてもよい。
【0126】
制御部44は、メモリ44aから読み込んだテーブルデータTEを参照することにより、光源制御部34から発光部31の紫色LED31aへ供給されている現在の電流値CJに相当する電流値CWを特定し、当該特定した電流値CWに関連付けられた信号出力率SSを取得するとともに、当該取得した信号出力率SSを含む制御信号を色調整処理部42a及び色補正処理部42bへそれぞれ出力する。
【0127】
すなわち、本変形例の制御部44は、V光の発生源である紫色LED31aの現在の動作状態を示すパラメータに相当する現在の電流値CJを検出して得られた検出結果に基づいてテーブルデータTEを参照することにより、ヘモグロビンを含む領域を有する被写体に対するV光の照射に応じて撮像部21から出力される撮像信号の信号強度に係る情報である信号強度情報を取得する。また、本変形例の制御部44は、基準信号強度SVUに対する信号強度SVJの比率として算出される信号出力率SSを信号強度情報として取得する。また、本変形例の制御部44は、信号強度情報に基づいて観察画像生成部43による観察画像の生成に用いられる各画像データの明るさの比率を一定の比率に維持するための制御に相当する動作として、信号出力率SSを含む制御信号を色調整処理部42a及び色補正処理部42bへそれぞれ出力する動作を行う。なお、本変形例の制御部44は、紫色LED31aの現在の動作状態を示すパラメータとして、紫色LED31aの現在の温度CUを検出して検出結果を得るようにしてもよい。また、本変形例の制御部44は、紫色LED31aの現在の動作状態を示すパラメータとして、紫色LED31aの現在の中心波長WQを検出して検出結果を得るようにしてもよい。また、本変形例の制御部44は、紫色LED31aの個体識別番号に応じた信号強度情報(信号出力率SS)を取得するようにしてもよい。
【0128】
色調整処理部42aは、制御部44から出力される制御信号に応じ、特殊光観察モードにおいて、信号処理部41から出力される画像データPGに対して色調整処理を施す。具体的には、色調整処理部42aは、制御部44から出力される制御信号に含まれる信号出力率SSを画像データPGの各画素の画素値に対して乗じる処理を色調整処理として行う。すなわち、このような色調整処理によれば、画像データPVと、画像データPGの各画素の画素値に対して信号出力率SSを乗じて得られた画像データTPGと、が色調整処理部42aから色補正処理部42bへ出力される。
【0129】
なお、本変形例によれば、色調整処理部42aにおいて、例えば、画像データPVの各画素の画素値に対して信号出力率SSの逆数を乗じる処理が行われるようにしてもよい。そして、このような処理が色調整処理部42aにおいて行われた場合には、画像データPVの各画素の画素値に対して信号出力率SSの逆数を乗じて得られた画像データJPVと、画像データPGと、が色補正処理部42bへ出力される。
【0130】
また、本変形例によれば、色調整処理部42aが、画像データTPGを得るための処理、または、画像データJPVを得るための処理のいずれかの処理を色調整処理として行うようにすればよい。すなわち、本変形例の色調整処理部42aは、制御部44の制御に応じて得られる信号出力率SSに基づき、画像データPVの明るさを調整するための処理、または、画像データPGの明るさを調整するための処理のいずれかの処理を色調整処理として行う。
【0131】
色補正処理部42bは、色調整処理部42aから出力される画像データPV及びTPGに基づき、色差Cr及びCbを画素毎に算出するための処理を行う。また、色補正処理部42bは、制御部44から出力される制御信号に含まれる信号出力率SSを取得するための処理を行う。
【0132】
なお、本変形例の色補正処理部42bにより算出される色差Cr及びCbの値は、公知の変換式のB成分及びG成分に画像データPVの画素値を適用し、かつ、当該変換式のR成分に画像データTPGの画素値を適用することにより得ることができる。
【0133】
色補正処理部42bは、色調整処理部42aから出力される各色成分の画像データの中から、色差Cr及びCbの両方の値が正の値となる画素群に相当する注目領域AQを抽出する。また、色補正処理部42bは、下記数式(8)を用いた処理を行うことにより、前述のように算出した色差Cr及びCbに応じた色補正係数Trを、画像データTPGの注目領域AQに含まれる画素毎に設定するための処理を行う。なお、下記数式(8)において、Fp、Fq、Fr及びFsは所定の定数を表し、Crp及びCbpは生体組織の中層に存在する中層血管の基準色に応じて設定される基準色差の値を表し、Crq及びCbqは生体組織の表層に存在する毛細血管の基準色に応じて設定される基準色差の値を表し、Cru及びCbuは注目領域AQに含まれる注目画素において算出された色差の値を表すものとする。また、下記数式(8)において、|Crx|は色差Cruから基準色差Crpを減じて得られる値の絶対値を表し、|Cbx|は色差Cbuから基準色差Cbpを減じて得られる値の絶対値を表し、|Cry|は色差Cruから基準色差Crqを減じて得られる値の絶対値を表し、|Cby|は色差Cbuから基準色差Cbqを減じて得られる値の絶対値を表すものとする。
【0134】

Tr=[(1+Fp×|Crx|)×(1+Fq×|Cbx|)×(1+Fr×|Cry|)×(1+Fs×|Cby|)]/{[(1+Fp×|Crx|)×(1+Fq×|Cbx|)]+[(1+Fr×|Cry|)×(1+Fs×|Cby|)]} …(8)

すなわち、色補正係数Trは、画像データTPGの注目領域AQに含まれる注目画素の色が中層血管の基準色及び毛細血管の基準色の両方に対して離れるに従って単調増加するような値として設定される。
【0135】
なお、本変形例によれば、基準色差Crp及びCbpが、例えば、CrCb座標系における第3象限の座標値としてプロットされる値として設定されればよい(図7参照)。すなわち、本変形例によれば、基準色差Crpの値が0より小さくなるように設定され、かつ、基準色差Cbpの値が0より小さくなるように設定されればよい。図7は、実施形態に係るプロセッサの処理において用いられる基準色差を直交座標系の座標値として示した図である。
【0136】
また、本変形例によれば、基準色差Crq及びCbqが、例えば、CrCb座標系における第4象限の座標値としてプロットされる値として設定されればよい(図7参照)。すなわち、本変形例によれば、基準色差Crqの値が0より大きくなるように設定され、かつ、基準色差Cbqの値が0より小さくなるように設定されればよい。
【0137】
また、本変形例によれば、例えば、電流値CWと、基準色差Crp及びCbpの値と、基準色差Crq及びCbqの値と、の間の対応関係を示すデータがテーブルデータTEに含まれている場合において、紫色LED31aへ供給されている現在の電流値CJの検出結果に応じて基準色差Crp、Cbp、Crq及びCbqの値を変化させるような制御が制御部44により行われるようにしてもよい。
【0138】
色補正処理部42bは、信号出力率SSと、色補正係数Trと、を下記数式(9)に適用して演算を行うことにより、画像データTPGの注目領域AQに含まれる各画素の画素値を補正する。なお、下記数式(9)において、Pgは画像データTPGの注目領域AQに含まれる注目画素の補正前の画素値を表し、Phは当該注目画素の補正後の画素値を表すものとする。
【0139】

Ph=Pg×[1−Tr+(Tr/SS)] …(9)

すなわち、上記数式(9)によれば、制御部44の制御に応じて得られる信号出力率SSと、色調整処理部42aによる色調整処理の処理結果として得られた画像データPV及びTPGを用いて算出した色差Cr及びCbと、に基づき、画像データTPGにおけるヘモグロビンを含まない領域の彩度を抑制するための色補正処理が色補正処理部42bにおいて行われる。そして、上記数式(9)を用いた処理が色補正処理部42bにおいて行われた場合には、画像データPVと、画像データTPGの注目領域AQに含まれる各画素に対して色補正処理を施して得られた画像データTCPGと、が色補正処理部42bから観察画像生成部43へ出力される。
【0140】
また、色補正処理部42bは、例えば、下記数式(10)を用いて画像データPVの注目領域AQに含まれる各画素の画素値を補正する処理を行うようにしてもよい。なお、下記数式(10)において、Piは画像データPVの注目領域AQに含まれる注目画素の補正前の画素値を表し、Pjは当該注目画素の補正後の画素値を表すものとする。
【0141】

Pj=Pi×(1−Tr+SS×Tr) …(10)

すなわち、上記数式(10)によれば、制御部44の制御に応じて得られる信号出力率SSと、色調整処理部42aによる色調整処理の処理結果として得られた画像データPV及びTPGを用いて算出した色差Cr及びCbと、に基づき、画像データPVにおけるヘモグロビンを含まない領域の彩度を抑制するための色補正処理が色補正処理部42bにおいて行われる。そして、上記数式(10)を用いた処理が色補正処理部42bにおいて行われた場合には、画像データPVの注目領域AQに含まれる各画素に対して色補正処理を施して得られた画像データEPVと、画像データTPGと、が観察画像生成部43へ出力される。
【0142】
また、本変形例によれば、色補正処理部42bが、上記数式(9)を用いた処理、または、上記数式(10)を用いた処理のいずれかの処理を色補正処理として行うようにすればよい。
【0143】
観察画像生成部43は、制御部44から出力される制御信号に応じ、特殊光観察モードにおいて、例えば、色補正処理部42bを経て出力される画像データPVを表示装置5のBチャンネル及びGチャンネルに割り当て、かつ、色補正処理部42bを経て出力される画像データTCPGを表示装置5のRチャンネルに割り当てることにより特殊光観察画像を生成し、当該生成した特殊光観察画像を表示装置5へ出力する。
【0144】
ところで、紫色LED31aから発せられるV光の本来の中心波長である410nm付近の波長帯域においては、照明光の波長が短波長側へシフトするに伴ってヘモグロビンの吸光係数が急峻に減少する。また、紫色LED31aから発せられるV光の中心波長は、例えば、光源制御部34から紫色LED31aへ供給される電流値の低下に伴って410nm未満の波長へシフトする。
【0145】
そのため、例えば、明るさ目標値STLに対する現在の明るさSCLの比率を1に近づけるような調光動作を単に行った場合には、近接観察時において、紫色LED31aに供給される電流値の低下に伴ってV光の波長帯域が本来の波長帯域から短波長側へシフトし、血管及び血液等のヘモグロビンを含む領域におけるV光の吸収量の減少に伴って撮像素子21bより撮像されるV光の戻り光の光量が増加する。すなわち、特殊光観察モードにおいて前述の調光動作を単に行った場合には、表示装置5に表示される観察画像におけるヘモグロビンを含む領域の色調が、近接観察時と遠景観察時とにおいて大きく異なってしまうような現象が発生し得る。
【0146】
これに対し、本変形例によれば、テーブルデータTEを参照することにより紫色LED31aへ供給されている現在の電流値CJの検出結果に応じた信号出力率SSを取得し、当該取得した信号出力率SSに応じて画像データPGの明るさを増大させるための処理、または、当該取得した信号出力率SSに応じて画像データPVの明るさを減少させるための処理のいずれかの処理を行うようにしている。さらに、本変形例によれば、前述の注目領域AQに含まれる各画素に対して上記数式(9)を用いた処理または上記数式(10)を用いた処理のいずれかの処理を施すようにしている。
【0147】
そのため、本変形例によれば、特殊光観察モードにおいて、被写体との観察距離に応じた調光動作を行った場合であっても、表示装置5に表示される観察画像における血管及び血液等のヘモグロビンを含む領域の色調を一定の色調に維持することができる。また、本変形例によれば、特殊光観察モードにおいて、被写体との観察距離に応じた調光動作を行った場合であっても、表示装置5に表示される観察画像における結合組織及び処置具等のヘモグロビンを含まない領域の色調を一定の色調に維持することができる。従って、本変形例によれば、例えば、生体内の所望の部位における生体組織の表層に存在する毛細血管を観察しつつ、当該所望の部位に存在する病変の診断を行うユーザの負担を軽減することができる。
【0148】
なお、本発明は、上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更や応用が可能であることは勿論である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7