(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
末梢血管インターベンション中の末梢血流の評価のためのシステムであって、患者の足部の上に位置付けられるように構成された支持構造体と、前記支持構造体によって支持されているディフューズオプティカルフロー(a diffuse optical flow)(DOF)センサーと、前記支持構造体が患者の足部の上に位置付けられたときに前記DOFセンサー付近の位置において絶対的および/または相対的な血流を決定するために、前記DOFセンサーからのデータを解析するように構成されたアナライザーと、前記アナライザーによって決定された絶対的および/または相対的な血流を示すシグナルを提供するように構成されたフィードバックデバイスとを含むシステムを、本明細書において開示する。
【0006】
いくつかの実施形態では、前記支持構造体は保持リングおよび接着性材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記支持構造体は、前記DOFセンサーが取り付けられているストラップを含むことができる。いくつかの実施形態では、前記DOFセンサーは、前記支持構造体が患者の足部の上に位置付けられたときに前記DOFセンサーの少なくとも2つが、異なる足アンギオソーム(pedal angiosomes)を含む足部内の異なる局所解剖学的部位上にあるように配置することができる。いくつかの実施形態では、前記DOFセンサーは、前記支持構造体が患者の足部上に位置付けられたときに前記DOFセンサーの少なくとも5つが、異なる足アンギオソームを含む足部内の異なる局所解剖学的部位上にあるように配置することができる。いくつかの実施形態では、前記アナライザーはソフトウェア自己相関器を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記アナライザーはハードウェア自己相関器を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記絶対的および/または相対的な血流を示すシグナルは視覚的、聴覚的、または触覚的であり得る。いくつかの実施形態では、本システムは、実質的にリアルタイムで、前記絶対的および/または相対的な血流を示すシグナルを提供するように構成することができる。いくつかの実施形態では、本システムは、測定から1秒以内に、前記絶対的および/または相対的な血流を示すシグナルを提供するように構成することができる。
【0007】
また、末梢血管インターベンション処置中の末梢血流のリアルタイム評価のための方法であって、少なくとも1つのディフューズオプティカルフロー(DOF)センサーを患者の足部上の位置に隣接して配置する工程と、前記DOFセンサーから強度変動の測定値を得る工程と、前記位置において絶対的および/または相対的な血流速度を決定するために、得られた測定値を解析する工程と、決定された絶対的および/または相対的な血流速度をオペレーターにシグナル送信する工程とを含む方法を、本明細書において開示する。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのDOFセンサーを配置する工程は、支持構造体を患者の足部の上に設置することを含むことができ、前記DOFセンサーは前記支持構造体によって支持されている。いくつかの実施形態では、本方法は、複数のDOFセンサーを患者の足部上のそれぞれの複数の位置に隣接して配置することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、前記複数の位置は、異なる足アンギオソームを含む足部内の異なる局所解剖学的部位に対応する少なくとも2つの位置を含むことができる
。いくつかの実施形態では、複数の位置は、異なる足アンギオソームを含む足部内の5つの異なる局所解剖学的部位に対応する少なくとも5つの位置を含むことができる。いくつかの実施形態では、シグナル送信する工程は、絶対的および/または相対的な血流の視覚的、聴覚的、または触覚的な表示を提供することを含むことができる。いくつかの実施形態では、前記決定された絶対的および/または相対的な血流速度をオペレーターにシグナル送信する工程は、測定から1秒未満で行うことができる。
【0009】
さらに、末梢血管インターベンション処置中の末梢血流の評価のための方法であって、複数のディフューズオプティカルフロー(DOF)センサーを患者の末梢部上のそれぞれの複数の位置に隣接して配置する工程(前記位置の少なくとも2つは、異なる足アンギオソームを含む足部内の異なる局所解剖学的部位に対応する)と、前記患者の末梢部内の前記複数の位置の各々において絶対的および/または相対的な血流速度を決定する工程と、決定された絶対的および/または相対的な血流速度をオペレーターにシグナル送信する工程とを含む方法を開示する。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記末梢部は足部であり得る。いくつかの実施形態では、前記末梢部は手部であり得る。いくつかの実施形態では、前記シグナル送信する工程は実質的にリアルタイムで行うことができる。いくつかの実施形態では、インターベンション処置の有効性を評価するために、前記決定された絶対的および/または相対的な血流速度を利用することができる。
【0011】
また、患者の足部と光通信している複数のディフューズオプティカルフロー(DOF)センサーを支持するための患者用インターフェースであって、前記足部上に載せることが可能であり、かつ、前記足部によって支持されるように構成された支持体と、前記支持体によって支持されている少なくとも3つのDOFセンサー(各センサーは、内側足底動脈のアンギオソーム、外側足底動脈のアンギオソーム、後脛骨動脈踵骨枝のアンギオソーム、腓骨動脈踵骨枝のアンギオソーム、および足背動脈のアンギオソームからなる群から選択されるアンギオソームを含む足部内の別々の局所解剖学的部位に対応する)とを含んでなる患者用インターフェースを、本明細書において開示する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本患者用インターフェースは、前記支持体によって支持されている少なくとも4つのセンサーを含むことができ、各センサーは、足アンギオソームを含む足部内の別々の局所解剖学的部位に対応している。いくつかの実施形態では、前記支持体は保持リングおよび接着性材料を含んでなることができる。いくつかの実施形態では、前記支持体は光源ファイバーおよび光検出器ファイバーを含んでなることができる。いくつかの実施形態では、前記光源ファイバーおよび光検出器ファイバーは、前記センサーをアナライザーと解放可能に結合するために少なくとも1つの結合(coupling)をさらに含んでなることができる。いくつかの実施形態では、本患者用インターフェースは、複数組の光源ファイバーおよび検出器ファイバーを含むケーブルを含んでなることができ、各組は別々のセンサーに接続されている。いくつかの実施形態では、各センサーは前記支持体によって解放可能に支持することができる。
【0013】
また、末梢血潅流の評価のためのシステムであって、患者の足部の上に位置付けられるように構成された支持構造体と、前記支持構造体によって支持されているディフューズオプティカルセンサー(diffuse optical sensor)と、前記支持構造体が患者の足部の上に位置付けられたときに前記ディフューズオプティカルセンサー付近の位置において血液の組成または流れを特徴づけるために、前記ディフューズオプティカルセンサーからのデータを解析するように構成されたアナライザーと、前記アナライザーによって決定された血液の組成または流れを示すシグナルを提供するように構成されたフィードバックデバイスとを含むシステムを、本明細書において開示する。
【0014】
さらに、末梢血のリアルタイム評価のための方法であって、少なくとも1つのディフューズオプティカルセンサーを患者の足部上の位置に隣接して配置する工程と、拡散光の測定値を得る工程と、前記位置において血液の組成および/または流速を特徴づけるために、得られた測定値を解析する工程と、決定された組成および/または流速をオペレーターにシグナル送信する工程とを含む方法を、本明細書において開示する。
【0015】
また、末梢血管インターベンション処置中の末梢血流の評価のための方法であって、複数のディフューズオプティカルセンサーを患者の末梢部上のそれぞれの複数の位置に隣接して配置する工程(前記位置の少なくとも2つは、異なる足アンギオソームを含む足部内の異なる局所解剖学的部位に対応する)と、前記患者の末梢部内の前記複数の位置の各々において組成および/または血流速度を特徴づける工程と、前記組成および/または血流速度をオペレーターにシグナル送信する工程とを含む方法を開示する。
【0016】
さらに、患者の足部と光通信している複数のディフューズオプティカルセンサーを支持するための患者用インターフェースであって、前記足部上に載せることが可能であり、かつ、前記足部によって支持されるように構成された支持体と、前記支持体によって支持されている少なくとも3つのセンサー(各センサーは、内側足底動脈のアンギオソーム、外側足底動脈のアンギオソーム、後脛骨動脈踵骨枝のアンギオソーム、腓骨動脈踵骨枝のアンギオソーム、および足背動脈のアンギオソームからなる群から選択されるアンギオソームを含む足部内の別々の局所解剖学的部位に対応する)とを含んでなる患者用インターフェースを、本明細書において開示する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1B】
図1Bは、足部上の5つの測定ポイントを示している。各々は、
図1Aに示したアンギオソームの1つに対応する。
【
図1C】
図1Cは、足アンギオソームに供給する動脈の分岐を示している。
【
図1D】
図1Dは、
図1Bの5つの測定位置の各々におけるディフューズオプティカルフロー(DOF)センサーを用いた測定を示している。
【
図1E】
図1Eは、
図1Bの5つの測定位置の各々におけるディフューズオプティカルフロー(DOF)センサーを用いた測定を示している。
【
図1F】
図1Fは、
図1Bの5つの測定位置の各々におけるディフューズオプティカルフロー(DOF)センサーを用いた測定を示している。
【
図1G】
図1Gは、
図1Bの5つの測定位置の各々におけるディフューズオプティカルフロー(DOF)センサーを用いた測定を示している。
【
図1H】
図1Hは、
図1Bの5つの測定位置の各々におけるディフューズオプティカルフロー(DOF)センサーを用いた測定を示している。
【
図2】
図2は、混濁媒体の測定フローシステムのブロック図である。
【
図3】
図3は、多層組織における拡散光の透過および検出の概略図である。
【
図4】
図4は、異なる流速についての自己相関関数のグラフである。
【
図5A】
図5Aは、カフ閉塞プロトコール中の2つの血流指数(blood flow indices)(BFI)のグラフである。
【
図6A】
図6Aは、側部発射式(side-firing)DOFセンサーの概略図である。
【
図6C】
図6Cは、複数の埋め込み型側部発射式DOFセンサーを備えたカバーソックスを示している。
【
図6D】
図6Dは、DOFセンサーのもう1つの実施形態と保持リングおよび接着性材料とを示している。
【
図7】
図7は、絶対的および/または相対的な血流を解析するための方法のフロー図である。
【
図8A】
図8Aは、DOFセンサーの実施形態と水平センサーヘッドとを示している。
【
図8B】
図8Bは、DOFセンサーの実施形態と水平センサーヘッドとを示している。
【
図8C】
図8Cは、DOFセンサーの実施形態と水平センサーヘッドとを示している。
【
図9A】
図9Aは、水平センサーヘッドを有するDOFセンサーのもう1つの実施形態を示している。
【
図9B】
図9Bは、水平センサーヘッドを有するDOFセンサーのもう1つの実施形態を示している。
【
図9C】
図9Cは、水平センサーヘッドを有するDOFセンサーのもう1つの実施形態を示している。
【
図9D】
図9Dは、水平センサーヘッドを有するDOFセンサーのもう1つの実施形態を示している。
【
図10】
図10は、患者の足部に取り付けられたDOFセンサーを示している。
【
図11】
図11は、患者の手部に取り付けられたDOFセンサーを示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
複数の技術が血流を特徴づけるために存在し、光の拡散の測定に依存する。そのような技術としては、拡散相関分光法(Diffuse Correlation Spectroscopy)(DCS)および拡散スペックルコントラスト解析(Diffuse Speckle Contrast Analysis)(DSCA)が挙げられる。DCSおよびDSCAはどちらも、相対的および/または絶対的な血流を測定するために使用することができる。他の技術は、光の拡散の測定に依存して、生化学的組成、オキシヘモグロビンおよびデオキシヘモグロビンの濃度などの組織の他の特性などを検出する。そのような技術としては、拡散光分光法(Diffuse Optical Spectroscopy)(DOS)、拡散光断層撮影法(Diffuse Optical Tomography)(DOT)、および近赤外分光法(Near-Infrared Spectroscopy)(NIRS)が挙げられる。
【0019】
本明細書において使用されるように、「ディフューズオプティカルセンサー」には、拡散光の測定を介して組織中の血液の特性を特徴づけるように構成された任意のセンサーが含まれる。従って、ディフューズオプティカルセンサーとしては、DCS、DSCA、DOS、DOT、およびNIRSのセンサーが挙げられる。本明細書において使用されるように、用語「ディフューズオプティカルフローセンサー」には、組織中の血流を特徴づけるように構成された任意のセンサーが含まれる。従って、ディフューズオプティカルフロー(DOF)センサーとしては、DCSおよびDSCAのセンサーの両方が挙げられる。
【0020】
近赤外拡散相関分光法(Near-infrared diffuse correlation spectroscopy)(DCS)は、生物学的組織中の血流の非侵襲的連続測定のための新たな技術である。この十年ほどで、脳、筋肉、および乳房などの深部組織血管系における血流情報を非侵襲的に検知するために、DCS技術は開発された。陽電子放出型断層撮影法(positron emission tomography(PET)、単一光子放出型コンピューター断層撮影法(single photon emission computed tomography)(SPECT)、およびキセノン造影コンピューター断層撮影法(xenon-enhanced computed tomography)(XeCT)などのいくつかの他の血流測定技術とは対照的に、DCSは非電離放射線を使用し、造影剤を全く必要としない。DCSは、ペースメーカーや金属インプラントなどの一般的に使用される医療機器に干渉しない。そのため、DCSは、臨床状況における癌療法モニタリングおよびベッドサイドモニタリングにおいて可能性を有する。
【0021】
DCSシステムは、長コヒーレンス長のレーザーなどの光源と、光子計数アバランシェフォトダイオード(a photon-counting avalanche photodiode)(APD)または光電子増倍管(photomultiplier tube)(PMT)などの検出器と、自己相関器とを含むことができる。様々な実施形態では、自己相関器は、ハードウェアまたはソフトウェアの形態をとり得る。DCSシステムの中心的な構成要素の1つとして、自己相関器は、検出器から得られた光強度の時間変動の自己相関関数を計算する。
【0022】
しかしながら、DCSは、長い積分時間、高コスト、および同時測定の低チャネル数の点で不利であり得る。これらの制限に寄与する要因の1つは、強く影響を受ける光検出器とその後の自己相関計算への依存である。拡散スペックルコントラスト解析(DSCA)は、高速時系列データに関する自己相関解析に依存する必要がない統計解析を用いて費用効果の高いリアルタイム測定を可能にする改良された流量測定システムを提供するより新しい技術である。この統計解析は、マルチピクセルイメージセンサーを使用して空間領域内で、または低速カウンターを使用して時間領域内で実施することができる。また、マルチピクセルイメージセンサーは、単独または複数のピクセルが個々の検出器として機能を果たすように、時間領域解析にも使用することができ、マルチチャネルアプリケーションに特に好適である。様々な実施形態では、このアプローチは、血流を、絶対値、相対値、またはその両方であろうと、測定するために使用することができる。
【0023】
DSCAは、空間領域および時間領域の両方で実施することができる。空間DSCA(spatial DSCA)(sDSCA)では、サンプル表面からスペックル原画像が最初に得られる。スペックル原画像は、まず、なめらかな強度バックグラウンドによって正規化し得、複数のスペックル画像にわたって平均化することができる。スペックルコントラスト、K
sは、多くの検出器またはピクセルにわたる平均強度に対する標準偏差の比として定義される、K
s=σ
s/<I>(式中、下付文字のsは、時間的変化と対照する空間的変化を指す)。量K
sは、以下のように、フィールド自己相関関数g
1(τ)と関係している:
【数1】
【0024】
上記式中、Vは画像全体の強度の分散であり、Tはイメージセンサーの露光時間である。半無限媒体における相関拡散方程式の既知の解を用いることによって、流速とK
sとの間の規則的な関係を導出することができる。流れと1/K
s2との間の関係は、身体組織中で見られる流れの範囲では実質的に線形であると分かり、1/K
s2は流速の増加とともに増加する。
【0025】
流量測定のためにこのスペックルコントラスト原理を実施するもう1つの方法は、一定の時間にわたって積分することによって得られた時系列データに関する統計解析を使用することである。この時間領域解析は本明細書においてtDSCAと呼ぶ。tDSCAでの積分時間は、sDSCAでのイメージセンサーの露光時間と類似していると考えることができる。tDSCAの場合、積分回路を有する中位感度の検出器を使用することができる。例えば、CCDチップ上の各ピクセルをこの目的に使用することができるが、この理由は各CCDピクセルが所定の露光時間の間光電子を蓄積し続けるためである。従って、複数の単一モードファイバーを、単一のCCDチップ上のいくつかの位置に直接位置付けることができ、時間分解能を全く失うことなくマルチチャネルtDSCAシステムが結果として生じる。チャネル数は、CCDチップサイズ、ピクセルサイズ、および各ファイバー先端の面積によってのみ制限される。いくつかの実施形態では、tDSCAでは、高感度検出器、例えば、アバランシェフォトダイオード(APD)および/または光電子増倍管(PMT)などを、低速カウンター、例えば、USB接続によりDAQカード内に含まれるカウンターなどとともに使用することができるが、この実施形態のマルチチャネル機器へのスケーリングは、コストがかかり、バルキーである。いずれかの方法によって測定される時系列データは、反復測定により得ることができ、例えば、25回の測定を逐次的に行うことができ、その後、流速を決定するためにデータを統計的に解析することができる。露光時間1msでの設定では、一方の流動指数(フロー指数)は25msごとに得られ、およそ40Hzの操作となる。
【0026】
時系列データの統計解析は、統計(平均強度および強度の標準偏差)が空間領域よりもむしろ時間領域内で計算されることを除いて、sDSCAに関して上に記載したことと実質的に同一であり得る。結果として、tDSCAは、sDSCAよりも低い時間分解能を提供し得る。しかしながら、tDSCAでの検出器領域は、sDSCAの場合よりも著しく小さい可能性がある。空間領域対応解析と同様に、tDSCAは、従来のDCS技術よりも大幅に簡単で、計算集約的でない計装および解析によるアプローチを提供する。
【0027】
DCSおよびDSCAの技術はどちらも、リアルタイムベースで、足部内の絶対的および/または相対的な血流を評価するために使用することができ、それによって、インターベンショナルラジオロジストや足部内の虚血を治療する血管外科医のための重要なツールが提供される。手術室での現在のツールでは、医師は通常、X線透視検査を介して、バルーン血管形成術処置などのインターベンションが、四肢動脈を広げ、開通性(patency)を達成することに成功したかどうかを評価することができる。しかしながら、臨床経験により、透視検査によって観察される構造開通性は、潰瘍傷、虚血組織(例えば、黒くなった足指)または他の臨床症状がある足部の局所解剖学的領域の再潅流の成功についての信頼性のある指標ではないこととなっている。動脈開通性に関する透視検査データを補うために、DCSまたはDSCAシステムのいずれかで使用される複数のDOFセンサーを足部の異なる局所解剖学的領域に位置付けて、それらの異なる領域内の絶対的および/または相対的な血流を評価することができる。例えば、局所解剖学的領域は、異なる足アンギオソームに対応し得る。
【0028】
アンギオソームは、動脈源によって供給され、その伴行静脈によって排出される組織の三次元部分である。アンギオソームは、皮膚、筋膜、筋肉、または骨を含むことができる。足アンギオソームは
図1Aに示している。膝から下には、3つの主要な動脈:前脛骨動脈、後脛骨動脈、および腓骨動脈がある。後脛骨動脈は、少なくとも3つの別々の分枝:踵骨動脈、内側足底動脈、および外側足底動脈を与え、これらはそれぞれ、足部の異なる部分に供給する。前脛骨動脈は、前距腿に供給し、足背動脈として続き、これにより足背の大半に供給する。腓骨動脈踵骨枝は、踵の外側および足底に供給する。腓骨動脈の前貫通枝は、足首の外側前部上方に供給する。結果として、足アンギオソームには、内側足底動脈のアンギオソーム、外側足底動脈のアンギオソーム、後脛骨動脈踵骨枝のアンギオソーム、腓骨動脈踵骨枝のアンギオソーム、足背動脈のアンギオソームが含まれる。腓骨動脈の前貫通枝に対応する別の第6の足アンギオソームが存在するかどうかについてはいくつかの議論がある。
【0029】
図1Bは、足部上の5つの測定ポイントを示している。各々は、
図1Aで確認される足アンギオソームに対応する。これらの各位置において血流を検出することにより、種々な動脈からの血流を独立に評価することができる。例えば、ポイントA(
図1D参照)における血流の測定値は、足背動脈、さらに前脛骨動脈からの血流を示す。同様に、ポイントB(
図1E参照)における血流の測定値は、内側足底動脈に対応し、一方、ポイントC(
図1F参照)は、外側足底動脈に対応し、ポイントD(
図1G参照)は、後脛骨動脈踵骨枝に対応し、ポイントE(
図1H参照)は腓骨動脈踵骨枝に対応する。
【0030】
図1Cは、足アンギオソームに供給する動脈の分岐図である。血流測定ポイントA〜Eは、それぞれの動脈枝の末端として示されているが、実際には、測定ポイントはそれぞれの動脈の最遠位端である必要はない。上記のように、ポイントA〜Eのいずれかでの測定値は局所潅流に関する有益な臨床情報を提供し得る。
【0031】
局所解剖学に基づく末梢血管インターベンション、例えば、アンギオソームに向けられた末梢血管インターベンションなどは、比較的最近開発され、従来のインターベンションと比較して、特に、改善された救肢率に関して、有望な性能を示す。複数のDOFセンサーを使用するシステムは、インターベンショナルラジオロジストまたは血管外科医が標的動脈における特定のインターベンションによって、潰瘍傷、虚血組織または他の臨床症状がある足部の標的とする局所解剖学的領域への十分な血液潅流の回復に成功したかどうかを直ちに評価し得るように、足部内、例えば、アンギオソームごとの異なる局所解剖学的部位の潅流の変化に関してリアルタイムのフィードバックを提供することができる。また、DCSまたはDSCAは、末梢部、例えば、足部内の血流を測定することにより、末梢動脈疾患についてスクリーニングするためのツールとして機能することができる。
【0032】
図2は、混濁媒体の測定フローシステムのブロック図である。サンプル102は、その中に異質マトリックスを含む。このマトリックス内には、ランダムに並んだ微小循環チャネルを有する埋め込まれた流動層(フロー層)があり、これらのチャネルを通って、小粒子207は不規則に移動する。例えば、いくつかの実施形態では、サンプルは、身体組織であり得、末梢細動脈および毛細血管の複雑なネットワークを有する。光源108は、サンプル102へ光を入射する。検出器110は、微小循環チャネル内の移動中の粒子207によって散乱された光を検出することができる。検出器110は、光源からサンプル内へ入りそのサンプルを通って拡散する光を受信するように位置付けることができる。いくつかの実施形態では、検出器は、単一モード光ファイバーによってサンプルと結合することができる。いくつかの実施形態では、検出器は、サンプルの領域を画像化するために使用される、マルチピクセルイメージセンサー、例えば、CCDカメラであり得る。他の実施形態では、検出器は、光子計数アバランシェフォトダイオード(APD)または光電子増倍管(PMT)であり得る。粒子はランダムな方向に流れるため、光源108からの光の散乱は様々であり、そのため、検出器110によって強度変動が検出されることになる。
【0033】
アナライザー112は、検出器110と結合され、検出器110からシグナルを受信するように構成される。アナライザー112は、検出器110によって受信された光の時間強度自己相関関数を測定する自己相関器を含んでなり得る。自己相関関数は、サンプル102中を流れる小粒子の散乱および流動特性(フロー特性)を得るために使用することができる。時間に依存した強度変動は、小粒子207の時間に依存した密度変動を反映し、それに応じて、サンプル102内での流速を決定するために自己相関関数を使用することができる。いくつかの実施形態では、ハードウェア自己相関器を採用し得る一方で、他の実施形態では、ソフトウェア自己相関器を使用することができる。アナライザー112によって決定された流速または他の特性は、ディスプレイ114に出力し得る。そのため、測定された量は、ディスプレイ114を介してオペレーターに提供し得る。様々な実施形態では、オペレーターは、臨床医、診断医、外科医、外科助手、看護師、または他の医療関係者であり得る。いくつかの実施形態では、測定値は、実質的にリアルタイムでディスプレイ114を介して提供し得る。いくつかの実施形態では、測定値は、測定から約1秒以内にディスプレイ114を介して提供し得る、すなわち、検出器によって散乱光が検出される約1秒の時間内に、ディスプレイ114を介して測定値を提供し得る。様々な実施形態では、測定値は、約10分未満内で、約5分未満内で、約1分未満内で、約30秒未満内で、約10秒未満内で、または測定から約1秒未満内で提供し得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記のように、ソフトウェア自己相関器を使用し得る。これは、データの前処理を可能にするため、有利には、ハードウェア自己相関器と比較してさらなる柔軟性を提供し得る。また、ソフトウェア自己相関器は、サイズを縮小し、かつ、フォームファクターを改善すると同時に、DCSシステムのコストも低減し得る。また、データを前処理する能力は測定の精度を向上させることができる。
【0035】
図3は、多層組織における拡散光の透過および検出の概略図である。図に示すように、光源202および検出器204はどちらも組織206のある部分に隣接して位置付けられる。上記のように、いくつかの実施形態では、光ファイバーは、光源および検出器の一方または両方を組織と結合するために使用し得る。組織206は、流動のない上層208および流動のある深層210を含む多層である。複数の光散乱粒子212は、流動層210中の毛細血管内を流れ、それらの粒子には、例えば、赤血球が含まれ得る。光214は、光源202から放出されると、組織206に浸透するように拡散する。図に示すように、光214の一部は、検出器204に入射するように拡散される。光214は、光源202から検出器204までほぼ三日月形の経路をたどり得る。検出器204によって検出される光214の浸透深度は、光源と検出器との間の間隔に依存する。距離が増加するにつれて、浸透深度は、一般的に増加する。様々な実施形態では、分離距離は、約0.5cm〜約10cmの間、またはいくつかの実施形態では、約0.75cm〜約5cmの間であり得る。好ましくは、他の実施形態では、分離距離は、約1cm〜約3cmの間であり得る。様々な実施形態では、分離距離は、約10cm未満、約9cm未満、約8cm未満、約7cm未満、約6cm未満、約5cm未満、約4cm未満、約3cm未満、約2cm未満、約1cm未満、約0.9cm未満、約0.8cm未満、約0.7cm未満、約0.5cm未満、約0.4cm未満、約0.3cm未満、約0.2cm未満、または約0.1cm未満であり得る。浸透深度は変動し得、例えば、いくつかの実施形態では、センサーの浸透深度は、約0.5cm〜約5cmの間、またはいくつかの実施形態では、約0.75cm〜約3cmの間であり得る。好ましくは、他の実施形態では、浸透深度は、約5mm〜約1.5cmの間であり得る。当然、様々な層の組織光学特性もまた、光源の強度、波長、または他の特性と同じように、光の浸透深度に寄与する。これらの変化は、分析する身体の部分、特定の患者、または他の考慮事項に基づいた測定の深度の調整を可能にする。検出器204によって得られた測定値は、その後、自己相関関数を計算するために処理し、解析し得る。
図4に見られるように、自己相関関数は、組織中の流速を決定するために使用し得る。
【0036】
図4は、異なる流速についての自己相関関数のグラフであり、自己相関曲線の減少が急勾配であるほどは流速が速いことを示している。グラフでは、自己相関曲線を片対数目盛でプロットしている。当技術分野で一般的に知られているように、血流データは、各自己相関曲線をモデル、上記の半無限多層拡散モデルにフィッティングすることにより解析することができる。その後、フィッティングを行った自己相関曲線により相対血流速度を提供することができ、これを通常、バルーン血管形成術もしくは外科手術などの末梢インターベンション処置中に、または診断ツールとして適用することができる。
【0037】
ディフューズオプティカルフロー(DOF)センサー(上記のように、DCSおよびDSCAのセンサーの一方または両方を含むことができる)は、微小循環を測定することにおいて、例えば、足部内の血液潅流を測定することにおいて特に有用であり得る。この技術は、足の局所解剖学(pedal topography)の概念を採用することによってさらに改良することができる。足部内の血流の局所解剖学的分析の一例は、上記のように、足アンギオソームの概念を組み込んでいる。
【0038】
多くの場合、血管インターベンションの前に、インターベンショナルラジオロジストまたは血管外科医は、例えば、透視検査、コンピューター断層撮影、超音波、または他の画像化技術を用いて、対象となる血管系を画像化する。そのような画像化によって、いくつかの潜在的な閉塞または病変を識別し得る。末梢インターベンション、例えば、バルーン血管形成術、アテローム切除術、または外科的バイパス手術/移植などは、足部の罹患領域への潅流を回復させる目的で、識別された閉塞または病変(「標的病変」)の1つ以上を再開通するために採用することができる。これらの末梢インターベンションによって救肢に成功するためには、血液潅流は、足部創傷の治癒を可能にする十分なレベルに達しなければならない。リアルタイム潅流モニターがない場合、医師には、インターベンションによって創傷治癒に十分な潅流の改善が達成されたかどうかを確実に知る方法はなく、または全くない。本明細書において記載するように、足部の様々な局所解剖学的部位において血液潅流のリアルタイム測定を用いることにより、この問題に対処する。これによりリアルタイムで客観的定量的潅流データが提供されるため、医師は、標的病変における特定のインターベンションによって、創傷がある足部の局所解剖学的領域への潅流の回復に成功したかどうかを確実に知ることができる。所望の局所解剖学的領域における許容レベルの潅流が達成されたと判断された場合、医師は、さらなるインターベンションに伴う追加的な危険性を回避し、その処置を終わらせることができる。あるいは、標的病変における特定のインターベンションによって、リアルタイム潅流モニターにより測定される潅流改善が得られなかった場合、医師は、それによって、二次標的病変に進むという追加的な危険性を負うよう導かれる。従って、リアルタイム潅流モニターの使用は、所望の潅流改善を達成する前に末梢インターベンション処置が途中終了される状況を防ぐ。また、その使用によって、医師は、(血行再建する場合に)どの標的病変によって最大の潅流改善が足部の所望の局所解剖学的領域にもたらされるかに関して導かれる。このリアルタイムでの認識により、次には、前記病変がある血管の開通性を延長するための薬剤溶出バルーンまたは他の手段の使用に最適な配置に関して医師に知らせることになる。
【0039】
潅流の変化は自己相関関数の形状の変化から直接見ることができるが、血流指数(BFI)を定義するための潜在的により有用な方法が開発されている。
図5Aは、カフ閉塞プロトコール中のそのような2つのBFIの経時的グラフである。縦の破線は、カフ膨張の開始および停止の時間を示す。上のチャートは、自己相関曲線の垂直交差から算出したBFIを示し、一方、下のチャートは、自己相関曲線の水平交差から算出したBFIを示している。
図5Bは、これら2つの異なるBFI算出方法を示すグラフである。実線は、血流ゼロの基準データを表し、一方、点線は、リアルタイム自己相関データを表す。垂直交差指標は、所定の時間におけるリアルタイム自己相関データと基準データのy軸値(g
2)を比較する。例えば、第1の指標は、1/g
2または1.5−g
2として計算することができる。水平交差指標は、所定の流速における自己相関データと基準データとの間の時間差を比較する。例えば、第2の指標は、log(t2/t1)として計算することができる。
【0040】
図5Aに示すようなチャート、または他のそのような血流表示は、聴覚的、視覚的、または触覚的なフィードバックを介してリアルタイムでオペレーターに表示することができる。それによって、医師に、末梢インターベンションの有効性に関して実質的にリアルタイムのフィードバックが提供され得る。例えば、バルーン血管形成術中に、医師は、足部の特定の位置において測定されたBFIをモニタリングすることができる。BFIは、バルーンが膨張している間減少し、収縮後増加する。血管形成術を行うためにバルーンの膨張を繰り返した後、BFIは、血管形成術前のベースラインと比べて増加するはずであり、血管形成術処置によって標的足部組織に潅流の改善がもたらされたことを示す。血管形成術前のベースラインと比べて増加していないBFIは、バルーン血管形成術によって潅流の回復に成功しなかったことを示す。このようなフィードバックのリアルタイムでの提供は、血管インターベンションを行う医師にとって莫大な利益である。潅流が改善されているかどうかを決定するために、術後に数時間または数日間待機し、その時間の間に、足部が切断を必要とする程度まで悪化し得るよりは、血管形成術処置中に選択した足の位置においてDOFセンサーを使用することによって、即時のフィードバックを提供することができ、医師により、必要に応じて処置を継続、変更、または終了することが可能になるほうがよい。上記のように、様々な実施形態では、フィードバックは、測定から約10分未満内で、約5分未満内で、約1分未満内で、約30秒未満内で、約10秒未満内で、または約1秒未満内で提供され得る。
【0041】
上記の例はバルーン血管形成術に関するが、足部内の血流(相対値、絶対値、またはその両方に関わらない)を評価するためのDOFセンサーの使用は、複数の異なるインターベンションの前に、その間に、またはその後に適用することが有利であり得る。例えば、DOFセンサーは、インターベンション、例えば、回転アテローム切除術、溶解物質の送達、バイパス処置、または任意の他のインターベンションなどを支援するために使用することができる。
【0042】
図1D〜1Hに示すように、DOFセンサーは、足部の異なる局所解剖学的領域に別個に設置することができ、例えば、DOFセンサーは、別個の支持構造体を用いて足アンギオソームの各々に設置することができる。しかしながら、もう1つの実施形態では、異なる足の領域、例えば、足アンギオソームの同時測定のために、複数のDOFセンサーを単一支持構造体に組み込むことができる。このような1つの実施形態を、
図6A〜6Cに示している。
図6Aに、側部発射式DOFセンサーを示している。図に示すように、光源からの光は、入力ケーブル604を通ってセンサー602に入ることができ、センサー602から、出力606を通って検出器の方へ出て行くことができる。いくつかの実施形態では、入力ケーブルと出力ケーブルを一緒に束ねることができる。ケーブルが、測定する組織の表面に対して垂直方向に配向されているよりは、この側部発射式センサーでは、ケーブルは内部プリズム、ミラー、または組織に向かって下方に光を向けなおす他の光学要素と、実質的に平行に配向されるほうがよい。結果として、DOFセンサー602は、測定する領域の表面とぴったり接して置くことができ、ケーブル604および606はその表面と実質的に平行に延びる。全体的効果は、快適さ、柔軟性、およびフォームファクターが改善されたより薄型のDOFセンサーである。
【0043】
本明細書において使用されるように、用語「センサー」とは、サンプル、例えば、患者の皮膚と接触するDOFシステムの末端を指す。センサーは、光源と結合された入力光ファイバーと、検出器と結合された出力光ファイバーを含み得る。他の実施形態では、センサーは、そのような光ファイバーを取り外し可能なように受け入れるように構成されたレセプタクルを含んでなり得る。センサーは、入力光がサンプル表面に入射するポイントおよびサンプル表面から散乱光が検出されるポイントを定める。示した実施形態では、DOFセンサー602は実質的に平型である。しかしながら、様々な実施形態では、他の形状も可能である。例えば、DOFセンサーは、湾曲面が設けられ得、例えば、患者の身体の輪郭に対応するように形成され得る。DOFセンサーは、例えば、装着者の足底弓の曲率に対応するように凹面を含み得る。いくつかの実施形態では、DOFセンサーは、曲率および曲げを患者の身体に対応させるために、可鍛性であり得る。上記のように、光源と検出器との間の分離距離は、測定する光の浸透深度に影響を及ぼす。より詳しくは、重要な距離は、光を入射させる組織表面上の位置と、光を検出する組織表面上の位置との間の距離である。従って、側部発射式DOFセンサー602は、血流を測定する身体の部分に応じて異なる浸透深度を提供するために改変し得る。DOFセンサーが比較的深部の血流を測定する際の使用に適している場合、光源−検出器の間隔は、比較的浅部の血流を測定する際の使用に適しているDOFセンサーよりも大きくすることができる。いくつかの実施形態では、この距離は、個別のDOFセンサー内で変えることができる。例えば、光源入力ファイバーおよび/または検出器出力ファイバーをDOFセンサーの長さに沿って移動させて、その間の距離を変更することを可能にする機構を提供し得る。例えば、いくつかの実施形態では、光源入力ファイバーはセンサーに対して実質的に固定し得るが、一方、検出器出力ファイバーは移動可能である。逆に、いくつかの実施形態では、検出器出力ファイバーはセンサーに対して実質的に固定することができるが、一方、光源入力ファイバーは移動可能にすることができる。いくつかの実施形態では、移動可能なファイバーは、センサーに沿って滑動可能にすることができ、予め選択した距離を設定した後に移動可能なファイバーの位置を解放可能に固定するためにラッチ、ネジ、戻り止め、または他の構造が設けられている。いくつかの実施形態では、移動可能なファイバーは、ネジの回転によって支持体、それによって移動可能なファイバーが、固定ファイバーに近づくまたは遠のくように、螺着可能なようにネジとかみ合わせられる支持体上へ取り付けることができる。様々な他の構成が可能である。他の実施形態では、DOFセンサーの内部の様々な光学的構成要素は、有効な光源−検出器距離を変化させるために設けることができる。例えば、ファイバーの位置は固定し得るが、一方、内部プリズムまたはミラーまたは他の光学的構成要素は、異なる位置へまたは異なる位置から光(光源からの入射光または検出器への散乱光)を向けるように調整することができる。
【0044】
図6Bは、支持構造体の一例として、患者の足をすっぽり覆うように設計されたカバーソックス608を示している。
図6Cに示すように、複数の側部発射式DOFセンサー602をカバーソックスによって支持することができる。いくつかの実施形態では、側部発射式DOFセンサー602は、異なる足アンギオソームに対応する位置に配置されている。各DOFセンサー602は、薄く柔軟性のあるものにすることができるため、それらをカバーソックス608に適当な位置で縫い付けるかまたは別の方法で取り付けることができる。光ファイバーは、束ね、フットカバー608の外側に導き、アナライザーに接続することができる。この設計では、複数のDOFセンサーの患者の足部への適用は、迅速かつ基本的に誰にでも行うことができ、これは、手術室またはカテーテル検査室の多忙な環境において特に有利である。
【0045】
図6Dおよび6Eは、支持構造体およびDOFセンサーのもう1つの例を示している。示すように、DOFセンサー610は、そこから延びる束線612を含む。束線612は、上記のように、入力光ファイバーおよび出力光ファイバーの両方を含む。保持リング614は、センサー610の底に面する端を囲むように構成されている。保持リング614は、粘着パッド616を介して表面(例えば、患者の皮膚)に貼付することができる。粘着パッド616は、種々の形態をとることができ、例えば、テガダーム(Tegaderm)(商標)フィルムを含む。他の実施形態では、接着性材料は、別の粘着パッドを使用することなく、保持リング上に堆積される。
【0046】
図に示すように、保持リング614は、その中にDOFセンサー610を受けるように構成された開口部を定めることができる。様々な実施形態では、保持リング614は、DOFセンサー610上の対応する保持要素と解放可能にかみ合うように構成された1つ以上の保持要素を含むことができる。それによる対応する保持要素のかみ合いによって、センサー610は保持リング614に対して解放可能に固定される。様々な実施形態では、ラッチ、ネジ、戻り止め、または他の構造を設けて、DOFセンサー610を保持リング614に解放可能に固定することができる。
【0047】
様々な他の支持構造体が可能である。例えば、いくつかの実施形態では、DOFセンサーは、足の局所解剖学、例えば、異なる足アンギオソームの所望の測定領域に対して適切にDOFセンサーを位置付けるために患者の足部に巻き付けられるように構成された一連のストラップによって支持し得る。いくつかの実施形態では、DOFセンサーは、患者の足部に巻き付けるために可撓性材料のシートによって支持し得る。いくつかの実施形態では、支持構造体は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のDOFセンサーを支持するように構成し得る。いくつかの実施形態では、1名の患者に対して2つ以上の支持構造体を提供し得る。例えば、第1の支持構造体は、2つのDOFセンサーを支持し、患者の足部の第1の部分上に位置付けられ得、一方、第2の支持構造体は、2つの追加のDOFセンサーを支持し、患者の足部の第2の部分上に位置付けられ得る。様々な実施形態では、支持構造体は装着可能であり得る。例えば、それはカバーソックス、靴などのような衣服であり得る。いくつかの実施形態では、支持構造体は、一ストラップまたは一連のストラップを含むことができる。他の実施形態では、支持構造体は、1以上のDOFセンサーを患者の皮膚に取り付けることができる接着性材料を含んでなることができる。例えば、いくつかの実施形態では、DOFセンサーの各々に対し、センサーが皮膚に接触することを保証するために、組織に面する側に接着剤を提供することができる。いくつかの実施形態では、DOFセンサーが皮膚に押し付けられることを保証するために、それらに機械的圧力を加えることができ、例えば、外部ラップを使用し得るし、またはカバーソックスもしくは他のフットカバーの弾力性は、それ自体が、DOFセンサーを皮膚に接して十分に保持することを保証するのに十分なものであり得る。いくつかの実施形態では、DOFセンサーは、足療医によって使用されているようなフットプレートセンサーに埋め込むことができる。個体はフットプレートに乗り得、そのフットプレートによって支持されている1つ以上のDOFセンサーによって、足部上の様々な位置で絶対的および/または相対的な血流を測定することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、各DOFセンサーは、異なる支持構造体によって支持し得る。他の実施形態では、支持構造体は、任意の数のDOFセンサー、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上のものを支持するように構成することができる。様々な実施形態では、支持構造体は、支持構造体が患者の足部上に位置付けられる場合にDOFセンサーの位置が選択した足アンギオソームを含む足部内の異なる局所解剖学的部位に対応するように構成することができる。支持構造体は、足アンギオソームを含む足部内の局所解剖学的部位の任意の組合せに対応するDOFセンサーを支持するように構成することができる。例えば、1つの実施形態では、支持構造体は、後脛骨動脈踵骨枝および腓骨動脈踵骨枝において血流を測定するように構成されたDOFセンサーを支持するように構成し得る。もう1つの実施形態では、支持構造体は、内側足底動脈、外側足底動脈、および後脛骨動脈踵骨枝において血流を測定するように構成されたDOFセンサーを支持するように構成することができる。様々な他の構成が可能であり、所望の測定位置にDOFセンサーを設けるように支持構造体を合わせることができるようなものである。
【0049】
図7は、相対的な血流を解析するための方法のフロー図である。プロセス700は、少なくとも1つのDOFセンサーを患者の足部上の、足アンギオソームに対応する位置へ位置付けするブロック702で開始する。上記のように、いくつかの実施形態では、複数の上記DOFセンサーを、患者の足部上の様々な場所、または患者の身体上の他の場所に位置付け得る。いくつかの実施形態では、異なるアンギオソームを含む足部内の異なる局所解剖学的部位から同時測定を得るために、複数の上記DOFセンサーを使用することができる。プロセス700は、DOFセンサーを使用して絶対的および/または相対的な血流の測定値を得るブロック704に続く。上記のように、DOF技術は、組織内の絶対的および/または相対的な血流を示す自己相関関数を提供することができる。プロセス700は、絶対的および/または相対的な血流をオペレーターにシグナル送信するブロック706に続く。例えば、シグナルは、視覚的、聴覚的、または触覚的な通信を介して提供し得る。いくつかの実施形態では、絶対的および/または相対的な血流は、実質的にリアルタイムで、例えば、測定の1秒以内に、オペレーターにシグナル送信することができる。いくつかの実施形態では、自己相関関数、血流指数(BFI)のチャート、または絶対的および/もしくは相対的な血流の他の指標を示すディスプレイを設け得る。このようなディスプレイは、手術中の意思決定を誘導するためにオペレーターにリアルタイムフィードバックを提供することができる。
【0050】
上記のように、DOFセンサーのセンサーヘッド設計は、従来、ファイバー先端を保護するために金属またはセラミックいずれかのフェルールがついたファイバーを採用する。従って、典型的なセンサーヘッド設計は、ファイバーからの光が直接サンプルにつながる垂直接触方式に制限される。垂直ファイバー設計は、血液潅流モニタリングのための用途で使用される場合、複数の欠点がある:センサーヘッドに嵩、高さおよび位置不安定性が加わり;皮膚との安定かつ一貫した接触を達成するために追加の支援手段を必要とし得;これらの理由で、長時間適用後に患者に不快感をもたらし得る。
【0051】
従って、簡単で費用効果の高い薄型の水平接触センサーヘッドを実装することが有利である。
図8A〜8Cは、そのようなDOFセンサーヘッドの実施形態を示している。
図8Aは、センサーヘッド800の概略断面図を示し、
図8Bおよび8Cは、センサーヘッド800について考えられる2つの実施形態の平面図を示している。図に示すように、支持構造体は、その中に光ファイバー806を収容するための溝を有するレセプタクル部材804と、反射面を有する反射部材808を含む。図に示すように、光ファイバー806は、サンプル810の表面上に水平に適用され、ファイバー本体の一部はレセプタクル部材806の溝内に配置され、ファイバー806の遠位端は、サンプル810の表面と反射部材808の反射面との間に位置付けられるように構成されている。光源ファイバー先端から出てくる光は、このギャップ内に反射面から反射され、サンプル810に向けられる。検出器ファイバーの場合、この逆のことが起こる:受光コーン内に入る光路だけが反射面から反射され、ファイバーによって集光される。いくつかの実施形態では、反射面は、ゴム、シリコーン、または発泡パッドなどのコンプライアンスをもったバッキング上へ取り付けられたアルミニウム箔のシートを含んでなり得る。広範囲の材料をレフレクターとして利用し得、金属箔、金属フィルム、光反射コーティング、干渉格子、ナノ構造メタマテリアル、または好適な光学特性を有する任意の他の材料が含まれることは理解されるであろう。
【0052】
サンプルに適用すると、平面DOFセンサーはファイバーをサンプルとの光通信状態に置く。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光学的に透明な層を含んでなる光学的に透明な無菌バリアは、ファイバーとサンプルとの間に配置し得る。少なくとも1つの光学的に透明な層は、サンプル/組織の表面への平面DOFセンサーの取り付けを容易にするために接着性コーティングを有するように構成し得る。例えば、サージカルテープは、その上にDOFセンサーを受け、かつ、DOFセンサーをサンプルと結合するように構成された支持体を含んでなり得る。
【0053】
図9A〜9Dは、3Dプリントを用いて製造した支持体の一実施形態を示し、支持体は、患者/組織と光ファイバーの間に配置された接着剤層を含んでなる。
図9Aおよび9Bは、支持部材902を示し、
図9Cおよび9Dは、患者の皮膚とファイバーの間に配置するためにサージカル粘着テープ912の層を用いて準備したセンサーヘッド900の上面図および底面図をそれぞれ示している。
図9Cおよび9Dでは、反射パッド908およびファイバー906の先端は、サージカルテープ912の接着性ライナーによって覆い隠されている。他の実施形態では、少なくとも1つの光学的に透明な層は、接着性コーティングを有していなくてもよく、その際、平面DOFセンサーは、サージカルテープ、機械的クランプ、調節可能なストラップ、または他の手段の適用によりサンプルに取り付けられ得る。
【0054】
図10は、患者の足部に取り付けられた複数のDOFセンサー1000を示している。健常ヒト足部上で光源−検出器間隔約1.5cmの場合、動脈カフ閉塞プロトコール観察により典型的な血液潅流変化が表示される−すなわち、閉塞中の急激な減少およびプラトー到達と、カフ圧解放後の急激なオーバーシュートおよびその後のベースライン値への回復。
図11は、患者の手部に取り付けられたDOFセンサーを示している。コンピューター画面は、動脈カフ閉塞およびその後の反応性充血の間の血液潅流の減少を示し、手部内の健康な血流を示している。示したグラフでは、2セットのカフ閉塞は反応性充血の2つの異なるピークによって示されている。
【0055】
平面DOFセンサーヘッドの利点としては、軽量であること、長時間適用中の安定性、および患者の快適度がより高いことが挙げられる。その性能は、垂直センサーヘッド設計と比べて劣っておらず、半無限形状の任意の光透過測定システムに利用することができる。
【0056】
上記のいくつかの実施形態は、足部内の絶対的および相対的な血流の決定へのDOFセンサーの適用に言及しているが、他の適用が可能である。例えば、いくつかの実施形態では、DOFセンサーは、形成および再建外科的皮膚弁における血流を評価するために使用することができる。いくつかの実施形態では、DOFセンサーは、手部内の血流を評価するために使用することができる。いくつかの実施形態では、DOFセンサーは、血流を評価するために、体内に、例えば、自然孔内に、位置付けることができる。様々な上記実施形態では、DOFセンサーは、アンギオソーム理論に従って配置することができる。
【0057】
特定の実施形態および例の文脈において本出願を開示してきたが、本出願は具体的に開示した実施形態を超えて本出願の他の代替実施形態および/または使用ならびにそれらの自明の変更形態および等価物にまで及ぶことは当業者ならば理解するであろう。加えて、上記の方法のいずれかを、任意の適当な装置を使用して実施することができることを当業者ならば認識するであろう。さらに、ある実施形態に関連する任意の特定の特徴についての本明細書における開示は、本明細書において記載する他の開示した実施形態総てにおいて使用することができる。従って、開示した、本明細書における本出願の範囲は上記の特定の開示した実施形態によって限定されるべきではないことが意図される。