特許第6810928号(P6810928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6810928
(24)【登録日】2020年12月16日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】光学装置及び内視鏡
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20201228BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   A61B1/00 525
   A61B1/00 715
   A61B1/00 523
   G02B23/26 C
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-103233(P2016-103233)
(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-209226(P2017-209226A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】河村 幸則
(72)【発明者】
【氏名】石河 範明
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 誠
(72)【発明者】
【氏名】澤田 廉士
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 文紀
(72)【発明者】
【氏名】村田 正治
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−258699(JP,A)
【文献】 特開2014−212835(JP,A)
【文献】 特開2015−114474(JP,A)
【文献】 特開2012−245104(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0167842(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第105050475(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
G02B 23/24−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共焦点光学系である光学装置であって、
光スキャナと、
前記光スキャナからの光を集光する第1レンズと、
前記第1レンズに対向する第1カバーと、
を備え、
前記第1カバーは、第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有し、
前記第1レンズからの光は、前記第1カバーの前記第1面に入射し、前記第1カバーの前記第2面から出射され、
前記第1レンズは、前記第1レンズの外側に向けて湾曲した焦点面を有しており、
前記第1カバーの前記第2面は、前記第2面の外側に向けて凸に湾曲しており、かつ前記第1レンズの前記焦点面の前後方向にずれた範囲内にあって前記焦点面に沿って湾曲した被写界深度内にある光学装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学装置において、
前記光スキャナは、
第1回転軸に関して回転可能な第1可動反射部と、
前記第1可動反射部と並んでおり、前記第1回転軸とは異なる方向に沿った第2回転軸に関して回転可能な第2可動反射部と、
第1反射面、第2反射面及び第3反射面を有する光学部材と、
を有し、
前記第2反射面は、前記第1反射面と前記第3反射面の間にあり、
前記第1反射面の向いている方向は、前記第2反射面の向いている方向から外側に向けて傾いており、
前記第3反射面の向いている方向は、前記第2反射面の向いている方向から外側に向けて傾いており、
前記第2反射面は、前記第1可動反射部及び前記第2可動反射部に対向しており、
前記第1反射面は、前記第2反射面よりも前記第2可動反射部から離れており、
前記第3反射面は、前記第2反射面よりも前記第1可動反射部から離れている光学装置。
【請求項3】
第1チャネルと、
前記第1チャネルに挿入可能な、共焦点光学系である光学装置と、
を備え、
前記光学装置は、
光スキャナと、
前記光スキャナからの光を集光する第1レンズと、
前記第1レンズに対向する第1カバーと、
を備え、
前記第1カバーは、第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有し、
前記第1レンズからの光は、前記第1カバーの前記第1面に入射し、前記第1カバーの前記第2面から出射され、
前記第1レンズは、前記第1レンズの外側に向けて湾曲した焦点面を有しており、
前記第1カバーの前記第2面は、前記第2面の外側に向けて凸に湾曲しており、かつ前記第1レンズの前記焦点面の前後方向にずれた範囲内にあって前記焦点面に沿って湾曲した被写界深度内にある内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置及び内視鏡に関し、とくに、共焦点光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
共焦点光学系は、例えば、内視鏡又は顕微鏡の分野において、細胞の組織の高解像度の像を得るために用いられている。共焦点光学系では、光源(例えば、レーザダイオード)からの光をレンズによって対象物に集光させる。対象物からの光は、レンズ及びピンホールを介して検出部(例えば、フォトダイオード)に送られる。レンズの焦点からの光は、ピンホールを通過することができるのに対して、レンズの焦点から離れた位置からの光は、ピンホールを通過することができない。これにより、共焦点光学系では、対象物の鮮明な像を得ることができる。
【0003】
特許文献1には、共焦点光学系の一例が記載されている。特許文献1では、共焦点光学系を内視鏡に用いている。特許文献1では、共焦点光学系のレンズを対象物から保護するため、カバーが設けられている。カバーは、レンズに対向する第1面及び第1面とは反対側の第2面を有している。第1面及び第2面は、いずれも平面となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−258699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
共焦点光学系において、対象物に光を集光するためのレンズに例えば凸レンズを用いた場合、一般に、凸レンズの焦点面は湾曲する。このようなレンズにより形成された像においては、例えば、像の中央が鮮明であっても像の縁が不鮮明になることがある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、共焦点光学系において、新規な構造に基づいて像の全体を鮮明にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光学装置は、光スキャナ、第1レンズ及び第1カバーを備えている。第1レンズは、光スキャナからの光を集光する。第1カバーは、第1レンズに対向している。第1カバーは、第1面及び第1面とは反対側の第2面を有している。第1レンズからの光は、第1カバーの第1面に入射し、第1カバーの第2面から出射される。第1カバーの第2面は、第2面の外側に向けて凸に湾曲している。第1カバーの第2面は、第1レンズの被写界深度内にある。
【0008】
本発明に係る内視鏡は、第1チャネル及び上記した光学装置を備えている。光学装置は、第1チャネルに挿入可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、共焦点光学系において、新規な構造に基づいて像の全体を鮮明にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る内視鏡の遠位端を示す図である。
図2図1に示した光学装置を示す図である。
図3図2に示した光スキャナを説明するための図である。
図4図3に示した第1可動反射部(又は第2可動反射部)の一例を説明するための図である。
図5図2に示した光学装置の使用方法の一例を説明するための図である。
図6図2に示した光学装置の使用方法の一例を説明するための図である。
図7図3の第1の変形例を示す図である。
図8図3の第2の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る内視鏡20の遠位端を示す図である。内視鏡20は、光学装置10(図2を用いて詳細を後述)、挿入管200、チャネル202、開口212、ライトガイド214及び対物レンズ216を有している。チャネル202は、挿入管200内にある。挿入管200は、遠位端面210を有している。開口212、ライトガイド214及び対物レンズ216は、遠位端面210上にある。開口212は、チャネル202に通じている。光学装置10は、チャネル202に挿入可能である。光学装置10の先端は、開口212を介して遠位端面210から突出する。図2を用いて説明するように、光学装置10の先端は、第1カバー410を有している。チャネル202には、光学装置10に代えて鉗子(不図示)も挿入可能である。ライトガイド214からは白色光が発せられる。これにより、内視鏡20の対象物が白色光で照射される。対象物は、対物レンズ216を介して撮像される。
【0013】
図2は、図1に示した光学装置10を示す図である。図3は、図2に示した光スキャナ100を説明するための図である。図4は、図3に示した第1可動反射部122(又は第2可動反射部124)の一例を説明するための図である。光学装置10は、光スキャナ100、第1レンズ310及び第1カバー410を備えている。第1レンズ310は、光スキャナ100からの光を集光する。第1カバー410は、第1レンズ310に対向している。第1カバー410は、第1面412及び第2面414を有している。第2面414は、第1面412の反対側にある。第1レンズ310からの光は、第1カバー410の第1面412に入射し、第1カバー410の第2面414から出射される。第1カバー410の第2面414は、第2面414の外側に向けて凸に湾曲している。第1カバー410の第2面414は、第1レンズ310の被写界深度314の範囲内にある。以下、詳細に説明する。
【0014】
図2に示すように、光学装置10は、光スキャナ100、内筒300、第1レンズ310、外筒400、第1カバー410、光源510、ビームスプリッタ520、光ファイバ530、コリメートレンズ540及び検出部550を備えている。光学装置10は、共焦点光学系である。光スキャナ100は、内筒300内にある。第1レンズ310は、内筒300の先端に取り付けられている。内筒300及び第1レンズ310は、外筒400内にある。第1カバー410は、外筒400の先端に取り付けられている。
【0015】
図2に示す例において、光源510は、レーザダイオード(LD)である。より具体的には、光源510は、例えばArレーザであり、488nmの波長(青色)の光を発する。
【0016】
光源510からの光は、ビームスプリッタ520で反射し、光ファイバ530に入射し、光ファイバ530の端部532から出射される。光ファイバ530の端部532から出射された光の照射範囲は、光ファイバ530から離れるにつれて広がる。言い換えると、光ファイバ530の端部532は、点光源を生成するためのピンホールとして機能している。光ファイバ530の端部532からの光は、コリメートレンズ540を通過する。これにより、この光は、コリメート光となる。コリメート光は、光スキャナ100に入射する。
【0017】
図3を用いて、光スキャナ100について説明する。光スキャナ100は、基板102及び光学部材150を有している。基板102は、第1可動反射部122及び第2可動反射部124を有している。光学部材150は、第1反射面152、第2反射面154及び第3反射面156を有している。
【0018】
第1可動反射部122及び第2可動反射部124は、基板102の上面上で並んでいる。基板102は、例えば、SOI(Silicon On Insulator)基板である。例えば、第1可動反射部122及び第2可動反射部124は、SOI基板の半導体層を用いて形成されている。第1可動反射部122は、第1回転軸(例えば、図4の保持部材130)に関して回転可能である。第2可動反射部124は、第2回転軸(例えば、図4の保持部材130)に関して回転可能である。第2可動反射部124の第2回転軸は、第1可動反射部122の第1回転軸とは異なる方向に沿っている。具体的には、第2可動反射部124の第2回転軸の方向は、第1可動反射部122の第1回転軸の方向と90°異なっている。
【0019】
光学部材150は、例えば、セラミックス、金属、ガラス又は樹脂からなる。光学部材150は、第1反射面152、第2反射面154及び第3反射面156が基板102と対向するように位置している。第1反射面152、第2反射面154及び第3反射面156は、例えば金属膜、具体的には、例えばAl膜を有している。この金属膜は、例えば蒸着により形成されている。
【0020】
第2反射面154は、第1反射面152と第3反射面156の間にある。第1反射面152の向いている方向は、第2反射面154の向いている方向から外側に向けて傾いている。第3反射面156の向いている方向は、第1反射面152の向いている方向から外側に向けて傾いている。本図に示す例では、第1反射面152及び第3反射面156は、第2反射面154に斜交している。第2反射面154は、第1可動反射部122及び第2可動反射部124に対向している。第1反射面152は、第2反射面154よりも第2可動反射部124から離れている。第3反射面156は、第2反射面154よりも第1可動反射部122から離れている。
【0021】
より詳細には、第1可動反射部122と第2可動反射部124の中心間距離は、Lである。第1可動反射部122及び第2可動反射部124の上面と第2反射面154の間の距離は、Hである。第1可動反射部122で反射した光は、
tanθ=L/H (1)
となるように入射角θで第2反射面154に入射する。第1反射面152及び第3反射面156は、上方へ向けて第2反射面154に対して角度α傾いている。角度αは、
α=(π/2−θ)/2 (2)
となるように決定されている。
【0022】
コリメートレンズ540(図2)からの光は、第1反射面152によって第1可動反射部122に向けて反射される。さらに、この光は、第1可動反射部122によって第2反射面154に向けて反射される。さらに、この光は、第2反射面154によって第2可動反射部124に向けて反射される。さらに、この光は、第2可動反射部124によって第3反射面156に向けて反射される。さらに、この光は、第3反射面156によって第1レンズ310に向けて反射される。第1可動反射部122の回転角及び第2可動反射部124の回転角を調整することにより、光スキャナ100からの出射光の方向を制御することができる。
【0023】
図4を用いて、第1可動反射部122(又は第2可動反射部124)の一例について説明する。第1可動反射部122は、回転型アクチュエータの一部(可動電極120)である。回転型アクチュエータは、枠体110、可動電極120、保持部材130及び2つの固定電極140を備えている。可動電極120は、保持部材130を介して枠体110に取り付けられている。枠体110は、可動電極120の回転軸(第1可動反射部122の第1回転軸又は第2可動反射部124の第2回転軸)として機能する。2つの固定電極140は、可動電極120を挟んで互いに対向している。
【0024】
回転型アクチュエータは、枠体110として機能する第1領域、可動電極120として機能する第2領域及び保持部材130として機能する第3領域を含む半導体層(例えば、シリコン層)を有している。さらに、回転型アクチュエータは、固定電極140として機能する半導体層(例えば、シリコン層)を有している。例えば、回転型アクチュエータは、SOI基板を用いて形成されている。より具体的には、枠体110、可動電極120、保持部材130及び固定電極140は、SOI基板の半導体層(シリコン層)を用いて形成されている。
【0025】
可動電極120は、2つの櫛歯電極120aを有している。各固定電極140は、櫛歯電極140aを有している。可動電極120は、一方の櫛歯電極120aが一方の櫛歯電極140aと対向し、かつ他方の櫛歯電極120aが他方の櫛歯電極140aと対向するように、2つの固定電極140の間に位置している。櫛歯電極120aと櫛歯電極140aは、隙間を挟んで互いに隣接している。可動電極120と固定電極140の間の電圧によって櫛歯電極120aと櫛歯電極140aの間にはクーロン力が働く。可動電極120は、櫛歯電極120aと櫛歯電極140aの間のクーロン力によって保持部材130に関して回転する。
【0026】
可動電極120の上面は、例えば金属膜、具体的には、例えばAl膜を有している。この金属膜は、例えば蒸着により形成されている。可動電極120(第1可動反射部122又は第2可動反射部124)は、この金属膜によって光を反射する。
【0027】
図2に戻る。光スキャナ100からの光は、第1レンズ310に入射する。本図に示す例において、第1レンズ310は、両凸レンズである。第1レンズ310は、光スキャナ100からの光を集光する。第1レンズ310からの光は、第1カバー410を第1面412から第2面414に向けて透過する。第1カバー410は、第1レンズ310とは反対側に向けて凸に湾曲している。第1カバー410の第2面414は、外筒400の先端よりも前方に突出している。第1カバー410は、光透過性材料(例えば、石英)からなる。第1カバー410は、均一な厚さを有している。このため、第1カバー410は、レンズとして機能しない。
【0028】
第1レンズ310は、光スキャナ100からの光を集光するだけでなく、第1レンズ310の前方の対象物の像を形成する。第1レンズ310によって形成される像は、対象物が第1レンズ310の焦点面312上にある場合に最も鮮明になる。さらに、像は、対象物が焦点面312から前又は後ろに僅かにずれても、ある程度鮮明である。具体的には、像は、対象物が第1レンズ310の被写界深度314の範囲内にある場合、ある程度鮮明になる。
【0029】
第1レンズ310の焦点面312は、第1レンズ310の外側に向けて湾曲している。具体的には、第1レンズ310の焦点面312は、以下の式(3)に示す曲率半径Rで湾曲している。
R=f×n (3)
ただし、fは第1レンズ310の焦点距離を示し、nは第1レンズ310の屈折率を示す。このため、第1レンズ310を用いて鮮明な像を得ることが可能な領域は、焦点面312に沿って湾曲するようになる。
【0030】
本図に示す例では、第1カバー410は、焦点面312に沿って湾曲している。焦点面312は、第1カバー410の第2面414よりも僅かだけ前方に位置している。第1カバー410の第2面414は、被写界深度314の範囲内にある。このため、第1レンズ310によって得られる像は、対象物が第2面414に沿って湾曲している場合、ある程度鮮明になる。なお、焦点面312は、第1カバー410の第1面412と重なっていてもよいし、又は第1カバー410の第1面412の後方に位置していてもよい。
【0031】
対象物からの光は、光ファイバ530からの光の光路を光ファイバ530からの光とは反対方向に進行する。対象物からの光は、対象物の複数の領域から発せられることがある。この場合、焦点面312及びその近傍からの光は光ファイバ530の端部532に入射する一方で、焦点面312から離れた領域からの光は光ファイバ530の端部532に入射することができない。言い換えると、光ファイバ530の端部532は、焦点面312及びその近傍からの光のみを集光するためのピンホールとして機能している。このようにして、光学装置10は、共焦点光学系として機能している。
【0032】
対象物からの光は、光スキャナ100を通過し、光ファイバ530の端部532を介して光ファイバ530に入射し、ビームスプリッタ520に入射する。この光は、ビームスプリッタ520を透過し、検出部550によって検出される。検出部550は、光電変換素子であり、図2に示す例ではフォトダイオード(PD)である。検出部550の検出結果(電気信号)に基づいて、対象物の画像が生成される。具体的には、光スキャナ100により光で対象物を2次元的に走査することで、対象物の2次元画像が得られる。
【0033】
なお、対象物からの光は、光源510からの光によって励起された蛍光であってもよいし、又は光源510からの光の反射光であってもよい。対象物からの光が蛍光である場合、ビームスプリッタ520は、例えばダイクロイックミラーである。この場合、光源510からの光の波長と対象物からの光(蛍光)の波長が互いに異なっている。このため、光源510からの光はビームスプリッタ520で反射し、対象物からの光(蛍光)はビームスプリッタ520を透過する。これに対して、対象物からの光が光源510からの光の反射光である場合、ビームスプリッタ520は、例えばハーフミラーである。
【0034】
図5及び図6は、図2に示した光学装置10の使用方法の一例を説明するための図である。まず、図5に示すように、光学装置10の第1カバー410を組織Tに対向させる。組織Tは、例えば、胃の内壁又は大腸の内壁である。組織Tは、蛍光物質を含んでいる。組織Tの蛍光物質は、光源510からの光によって蛍光(例えば、520nm〜530nmの緑色の波長の光)を発する。
【0035】
次いで、図6に示すように、第1カバー410の第2面414を組織Tの一部に押し当てる。これにより、組織Tのこの一部は、第1カバー410の第2面414に沿って湾曲する。次いで、光源510からの光を、ビームスプリッタ520、光ファイバ530、コリメートレンズ540、光スキャナ100及び第1レンズ310を介して組織Tに照射する。組織T内の蛍光物質は、この光によって蛍光を発する。この蛍光は、光ファイバ530からの光の光路を光ファイバ530からの光とは反対方向に進行して、光ファイバ530の端部532に入射する。さらに、蛍光は、ビームスプリッタ520を透過し、検出部550によって検出される。
【0036】
図6に示す例においては、第1カバー410の第2面414は、第1レンズ310の被写界深度314の範囲内にある。このため、第1カバー410の第2面414に接している対象物(組織Tの一部)の像は、鮮明なものとなる。このため、第1レンズ310によって得られる像は、当該像の中央から当該像の縁までの全体に亘って鮮明なものになる。
【0037】
図7は、図3の第1の変形例を示す図である。本図に示すように、第2反射面154は、第1反射面152及び第2反射面154よりも第1可動反射部122及び第2可動反射部124から離れていてもよい。本図に示す例では、光学部材150は、第1部材150a、第2部材150b及び第3部材150cを含んでいる。第1部材150aの下面は、第1領域、第2領域及び第1領域と第2領域の間の第3領域を含んでいる。第2部材150bは、第1部材150aの下面の第1領域上にある。第3部材150cは、第1部材150aの下面の第2領域上にある。第2反射面154は、第1部材150aの下面の第3領域である。第2部材150bは、第1部材150aの下面の第1領域から第3領域に向かうにつれて下方に傾斜する面(第1反射面152)を有している。第3部材150cは、第1部材150aの下面の第2領域から第3領域に向かうにつれて下方に傾斜する面(第3反射面156)を有している。
【0038】
図8は、図3の第2の変形例を示す図である。本図に示す例では、光学部材150は、透光性部材150d及び反射膜150eを含んでいる。透光性部材150dは、例えば、ガラス又は樹脂からなる。反射膜150eは、例えば金属膜(例えば、Al膜)である。反射膜150eは、透過面158を除いて、反射膜150eによって覆われている。第1反射面152は、透過面158の外側に向かって上方に傾いている。第3反射面156は、透過面158の外側に向かって上方に傾いている。第2反射面154は、透光性部材150dと反射膜150eの界面であって透過面158に対向している。第1可動反射部122からの光は、透過面158から透光性部材150dに入射し、第2反射面154で反射し、透過面158を介して透光性部材150dから出射し、第2可動反射部124で反射される。光は、透過面158に入射する際及び透過面158から出射する際屈折する。
【0039】
以上、本実施形態によれば、第1カバー410の第2面414は、第2面414の外側に向けて凸に湾曲している。さらに、第1カバー410の第2面414は、第1レンズ310の被写界深度314の範囲内にある。このため、第1カバー410の第2面414を組織Tに押し付けることにより、第1カバー410の第2面414に沿った部分の像が鮮明なものになる。
【実施例】
【0040】
図2に示した光学装置10を作製した。光学装置10の光スキャナ100は、図3に示したようにした。光スキャナ100の第1可動反射部122及び第2可動反射部124は、図4に示したようにした。
【0041】
基板102は、SOI基板とした。SOI基板の全体の厚さは0.5mmとした。SOI基板の半導体層の厚さは0.1mmとした。SOI基板の絶縁層の厚さは1μmとした。可動電極120の反射面の形状は、幅1.5mm及び長さ2mmの長方形とした。櫛歯電極140aの長さは、300μmとした。第1可動反射部122と第2可動反射部124の中心間距離2Lは、3.0mmとした。
【0042】
光学部材150の第1反射面152、第2反射面154及び第2反射面154は、厚さ約1μm、反射率95%以上のAl膜とした。Al膜は蒸着により形成した。第1可動反射部122及び第2可動反射部124の上面と第2反射面154の間の距離Hは、0.5mmとした。光学部材150の厚さは、2.5mmとした。第1可動反射部122からの光の第2反射面154への入射角θは、71.6°とした。第2反射面154に対する第1反射面152及び第2反射面154の傾きαは、9.2°とした。
【0043】
第1レンズ310は、次のとおりとした:有効径2.5mm;焦点距離:1.8mm;屈折率:1.52。
【0044】
第1カバー410は、石英ガラスとした。第1カバー410は、次のとおりとした:曲率半径1.8×1.52=2.74mm;厚さ200μm;直径3.0mm。第1カバー410は、第1レンズ310の焦点面312が第1カバー410の第2面414よりも僅かだけ前に位置するように配置させた。
【0045】
第1可動反射部122及び第2可動反射部124の上面に平行なレーザ光を光スキャナ100の第1反射面152に入射させた。固定電極140にDC20V、AC20Vp−pの電圧パルスを印加することにより、可動電極120(第1可動反射部122及び第2可動反射部124)を駆動させた。対象物を2次元的に走査可能な光が第3反射面156から出射されたことが確認された。
【0046】
光学装置10の対象物は、第1カバー410の第2面414に接した蛍光体とした。本実施例に係る光学装置10では、対象物の像は、当該像の中央から当該像の縁までの全体に亘って鮮明になったことが確認された。
【0047】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0048】
10 光学装置
20 内視鏡
100 光スキャナ
102 基板
110 枠体
120 可動電極
120a 櫛歯電極
122 第1可動反射部
124 第2可動反射部
130 保持部材
140 固定電極
140a 櫛歯電極
150 光学部材
150a 第1部材
150b 第2部材
150c 第3部材
150d 透光性部材
150e 反射膜
152 第1反射面
154 第2反射面
156 第3反射面
158 透過面
200 挿入管
202 チャネル
210 遠位端面
212 開口
214 ライトガイド
216 対物レンズ
300 内筒
310 第1レンズ
312 焦点面
314 被写界深度
400 外筒
410 第1カバー
412 第1面
414 第2面
510 光源
520 ビームスプリッタ
530 光ファイバ
532 端部
540 コリメートレンズ
550 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8