(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6810942
(24)【登録日】2020年12月16日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】壁面構造及びそれに用いる壁面用装飾体
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20201228BHJP
E04F 19/00 20060101ALI20201228BHJP
E04F 19/02 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
E04F13/08 Z
E04F19/00 D
E04F19/02 N
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-20126(P2020-20126)
(22)【出願日】2020年2月7日
【審査請求日】2020年8月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520047635
【氏名又は名称】株式会社吉光工業
(73)【特許権者】
【識別番号】520047646
【氏名又は名称】小笠原 弘
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】特許業務法人大手門国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100111855
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 好昭
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知志
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 弘
【審査官】
前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−133178(JP,A)
【文献】
特開平08−014227(JP,A)
【文献】
米国特許第5018332(US,A)
【文献】
中国実用新案第208777613(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08−13/30
E04F 19/00−19/02、19/10
E04C 2/42
E06B 9/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面を構成する支持体と、前記壁面に沿って交差するように設定された複数の配列方向に配列されて前記支持体に取り付けられた複数の壁面用装飾体とを備え、前記壁面用装飾体は、外部に表出する装飾面が形成された本体部と、前記本体部の両端に配置されるとともに前記支持体に当接する一対の支持部とを備えており、前記配列方向に配列された前記壁面用装飾体は、前記支持部が隣り合うように前記支持体に取り付けられており、隣り合うように配置された前記支持部を覆うように別の前記配列方向に配列された前記壁面用装飾体の前記本体部が配置されている壁面構造。
【請求項2】
前記支持体は、直交する2つの前記配列方向に沿ってメッシュ状に形成されている請求項1に記載の壁面構造。
【請求項3】
前記配列方向に配列された前記壁面用装飾体の複数の配列群は、所定の間隔を空けて配列されている請求項1又は2に記載の壁面構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載された壁面構造に用いられる壁面用装飾体であって、前記本体部は、装飾面側からみて所定幅の帯状に形成されているとともに幅方向からみて湾曲形成されており、前記支持部には、前記支持体に取り付けるための取付穴が形成されている壁面用装飾体。
【請求項5】
前記本体部は、前記支持体に対向する面が前記支持部を収容可能となるように湾曲形成されている請求項4に記載の壁面用装飾体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁、内壁、間仕切り、パーティションといった壁状構造物の壁面に好適な壁面構造及びそれに用いる壁面用装飾体に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋等の建築物では、構造上又はデザイン上の観点から外壁等の様々な壁状構造物が構築されており、こうした壁状構造物では壁面に装飾体を配置して機能性や外観デザイン性の向上が図られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、帯状に配置された縦レンガの上面と底面に、取付金具によって建物躯体と接続された第1横筋を配筋し、縦レンガの横方向に貫通した横孔に第2横筋を挿通し、第2横筋を縦筋の後方(室内側)に位置するように配筋して構成した外壁のレンガ壁面の構築方法が記載されている。また、特許文献2では、支持材と、支柱と、複数のブロックとを備え、支柱を支持材の長手方向に沿って間隔を空けて支持材の上面から複数立設し、ブロックを支柱間に係止して配置した間仕切りが記載されている。また、引用文献3では、上下に間隔をあけて配置される上側及び下側基材と、両基材の間に両者を連結するように設けられ、互いに間隔をあけて並んで配置される上下方向に延びる複数本の支持材と、支持材に貫通孔を挿通して支持材に支持された状態で積み重ねられた同じ高さの複数の意匠材とを備える装飾壁構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−38388号公報
【特許文献2】特開2014−122482号公報
【特許文献3】特表2016−199961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1では、縦レンガを配筋に貫通させて配置することで支持固定するようにしているため、一部の縦レンガの破損等により修繕する際に壁面全体を修繕することが必要となり、維持管理のコスト負担が大きくならざるを得ない。また、配筋へ貫通により配置しているため、2次元配置による平面的な外観デザインに制約されることになり、デザインの自由度が小さくなることが避けられない。
【0006】
また、特許文献2についても、ブロックを支柱間に係止して積層配置するようにしているため、特許文献1と同様に、一部のブロックが破損した場合に間仕切り全体を修繕することが必要となって、維持管理コスト負担が大きくなる。また、支柱間への係止配置によりデザイン的に制約を受けるようになる。特許文献3についても、意匠材を支持材に貫通して積層配置するようになっているため、特許文献1と同様に、維持管理コスト及び外観デザインの制約といった点で課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、装飾効果が高く修繕が容易な壁面構造及びそれに用いる壁面用装飾体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る壁面構造は、壁面を構成する支持体と、前記壁面に沿って交差するように設定された複数の配列方向に配列されて前記支持体に取り付けられた複数の壁面用装飾体とを備え、前記壁面用装飾体は、外部に表出する装飾面が形成された本体部と、前記本体部の両端に配置されるとともに前記支持体に当接する一対の支持部とを備えており、前記配列方向に配列された前記壁面用装飾体は、前記支持部が隣り合うように前記支持体に取り付けられており、隣り合うように配置された前記支持部を覆うように別の前記配列方向に配列された前記壁面用装飾体の前記本体部が配置されている。さらに、前記支持体は、直交する2つの前記配列方向に沿ってメッシュ状に形成されている。さらに、前記配列方向に配列された前記壁面装飾体の複数の配列群は、所定の間隔を空けて配列されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のような構成を備えることで、壁面用装飾体の両端の支持部が別の配列方向に配列された壁面用装飾体の本体部で覆うように配置されるので、配列方向の継ぎ目となる支持部が外部に表出せずに異なる配列方向に連続した織構造のような外観を呈するようになり、これまでにない装飾効果を得ることができる。
【0010】
また、壁面用装飾体を両端の支持部で支持体に取り付けるようにしているので、壁面用装飾体を支持体に安定して取り付けることが可能であり、また、壁面用装飾体を個別に交換することができ、メンテナンス作業を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態に関する正面側からみた一部概略構成図である。
【
図2】
図1に示す実施形態に関する背面側からみた一部概略構成図である。
【
図4】壁面用装飾体を幅方向から見た側面図である。
【
図5】壁面用装飾体を交差する方向に配列する場合の配列状態を示す説明図である。
【
図6】壁面構造の変形例に関する一部概略構成図である。
【
図7】壁面構造の別の変形例に関する一部概略構成図である。
【
図8】壁面用装飾体の変形例に関する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明に係る実施形態に関する正面側から見た一部概略構成図であり、
図2は、
図1に示す実施形態に関する背面側からみた一部概略構成図である。
【0013】
壁面構造1は、基礎100と梁200との間に構築されており、壁面を構成する支持体である支持部材2と、支持部材2に取り付けられた複数の壁面用装飾体3とを備えている。
【0014】
この例では、支持部材2は、複数本の棒状配筋材20を上下方向及び左右方向にメッシュ状に配置して構成されている。また、壁面用装飾体3は、細幅の帯状に形成されており、壁面に沿って上下方向及び左右方向に配列されて配筋材20に取り付けられている。
【0015】
なお、壁面用装飾体3は壁面に沿って交差するように設定された複数の配列方向に配列されていればよく、配列方向は上下方向及び左右方向に限定されない。また、こうした直交する配列方向に限定されることなく、壁面の装飾デザインに対応して様々な交差角度の配列方向に設定することができる。また、配列方向の複数の壁面用装飾体3からなる配列群は、所定の間隔を空けて配列されており、配列群の間に隙間が形成されるようになっている。そのため、間仕切り等に施工された場合に、壁面構造の向こう側が視認できるようになって開放的な装飾デザインを構築することができる。
【0016】
支持部材2は、鉄筋、ステンレス筋等の公知の配筋材を交差させて面状に配置して形成することができる。また、建築物の外壁に壁面構造を施工する場合には、外壁に沿って支持部材2を面状に構築し、構築した支持部材2を外壁の構造部材に取り付けて固定するようにすればよい。
【0017】
壁面用装飾体3は、支持部材2の配筋材20の交差位置において取付部材4により背面側で取り付けている。この例では、取付部材4は、矩形の板状に形成されており、配列方向に隣り合う壁面装飾体3の端部同士を配筋材20の交差位置に位置合わせして背面側から取付部材4が当接するように取り付けている。壁面用装飾体3としては、セラミック材料、樹脂材料、金属材料等の壁面材として用いられている公知の材料で構成することができ、複数種類の材料を組み合わせたものを用いることも可能である。また、種類の異なる材料や異なる色の材料からなる装飾体を組み合わせて用いることもできる。
【0018】
取付部材4は、ネジ等の公知の固定部材により壁面用装飾体3の両端部に形成された取付穴に締付固定することで、交差部分の配筋材20を挟み込むように壁面用装飾体3を支持部材2に支持固定するようになっている。なお、取付部材4としては、壁面用装飾体3を配筋材20に安定して支持固定することができればよく、ネジ等の固定部材を挿通する穴部を形成された板状体以外の部材を用いることも可能で、特に限定されない。例えば、針金等のワイヤを壁面用装飾体に形成された取付穴に挿入して配筋材20に巻き付けて支持固定することもできる。また、コ字状に形成された棒状の取付金具を一対の取付穴に差し込んで取付穴から突出させ、その先端部に固定金具を取り付けて配筋材を挟み込むように支持固定することも可能である。
【0019】
図3は、壁面用装飾体に関する外観斜視図である。壁面用装飾体3は、壁面として表出する装飾面が形成された本体部30と、本体部30の両端に配置されるとともに支持部材2に当接する一対の支持部31とを備えている。この例では、本体部30は、装飾面側からみて帯状に形成されているとともに幅方向からみて湾曲した形状に形成されている。
図4は、壁面用装飾体を幅方向から見た側面図である。壁面用装飾体3は、支持部31の配筋材への当接面と本体部30の中央部分との間の間隔dが支持部31の厚さtよりも広くなるように設定されている。そのため、一方の配列方向に配列された壁面用装飾体3の本体部30と支持部材2との間に他方の配列方向に配列された壁面用装飾体3の支持部31を収容することが可能となる。
【0020】
支持部31には、一対の取付穴31aが厚さ方向に貫通するように形成されており、上述したように、配筋材20の両側に取付穴31aがそれぞれ位置決めされて取付部材4に支持固定されるようになっている。
【0021】
図5は、壁面用装飾体を交差する方向に配列する場合の配列状態を示す説明図である。この例では、左右方向に配列された壁面用装飾体3は、支持部材2の配筋材20の交差位置において支持部31が隣り合うように取り付けられている。そして、隣り合うように配置された一対の支持部31を覆うように上下方向に配列された壁面用装飾体3の本体部30が配置されている。また、上下方向に配列された壁面用装飾体3についても配筋材20の交差位置において支持部31が隣り合うように取り付けられており、隣り合うように配置された一対の支持部31を覆うように左右方向に配列された壁面用装飾体3の本体部30が配置されている。
【0022】
こうして上下方向に配列された壁面用装飾体3及び左右方向に配列された壁面用装飾体3が交差位置で本体部30及び支持部31を互い違いに重なり合うように配置されるようになる。そして、各配列方向の継ぎ目となる支持部31が本体部30で覆われるようになるため、各配列方向に壁面用装飾体3が外観上連続して配列しているように視認され、織物の平織構造と同様の外観を呈するようになる。
【0023】
こうした平織構造以外にも様々な3次元で交差する構造を構成することが可能で、例えば、
図6に示す壁面構造1’では、斜め45度で交差する2つの配列方向に壁面用装飾体3を配列して構成されている。また、
図7に示す壁面構造1”では、斜文織構造を模した壁面構造を構成しており、壁面用装飾体3’及び3”の形状を斜文織構造に合わせて形成している。このように壁面の装飾デザインに合わせて壁面用装飾体の形状を形成することで様々な壁面構造を実現することができる。
【0024】
図8は、壁面用装飾体の変形例に関する側面図である。壁面用装飾体6は、段差状に形成されており、中央部60を支持部61の当接面との間の間隔が支持部61の厚さよりも広くなるように設定されている。
【0025】
以上説明したように、壁面用装飾体3は、両端部に形成された一対の支持部31により支持部材2に個別に固定されているので、壁面構造が一部破損した場合には、破損した壁面用装飾体3のみを取り外して交換することができる。そのため、壁面構造のメンテナンス作業を容易に行うことが可能となる。また、壁面用装飾体を容易に交換することができるので、施工後に壁面用装飾体を交換して模様替え等を行うことも可能となり、利用者の要望に応じて臨機応変に対応することができる。
【符号の説明】
【0026】
1・・・壁面構造、2・・・支持部材、20・・・配筋材、3・・・壁面用装飾体、30・・・本体部、31・・・支持部、4・・・取付部材
【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、装飾効果が高く修繕が容易な壁面構造及びそれに用いる壁面用装飾体を提供する。
【解決手段】壁面構造は、配筋材20を交差させて壁面を構成する支持部材2と、配筋材20に配列されて支持部材2に取り付けられた複数の壁面用装飾体とを備え、壁面用装飾体は、外部に表出する装飾面が形成された本体部30と、本体部30の両端に配置されるとともに支持部材2に当接する一対の支持部31とを備えており、支持部31が隣り合うように支持部材2に取り付けられ、隣り合う支持部31を覆うように別の配列方向に配列された壁面用装飾体の本体部30が配置されている。
【選択図】
図5