(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記研磨液組成物中の、前記水溶性高分子に対する前記第4級アンモニウム化合物の質量比(水溶性高分子/第4級アンモニウム化合物)が0.15以上50以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明についてより具体的に説明する。本発明は、シリカ粒子と、第4級アンモニウム化合物と、水溶性高分子とを含むシリコンウェーハ用研磨液組成物(以下、単に「研磨液組成物」と呼ぶ場合がある。)において、特定の第4級アンモニウム化合物を含み、研磨液組成物中の前記第4級アンモニウム化合物のN
+の総モル数(b)と、前記シリカ粒子のシラノール基(SiOH基)の総モル数(a)との比[b/a]を規定することで、高研磨速度を発現できるという知見に基づく。
【0013】
<シリカ粒子>
本発明の研磨液組成物には、砥粒としてシリカ粒子が含まれる。シリカ粒子としては、研磨用に一般に使用される粒子であれば特に制限はなく、好ましくは、コロイダルシリカおよびフュームドシリカが挙げられる。中でも基板の表面平滑性を向上させる観点から、より好ましくはコロイダルシリカである。
【0014】
シリカ粒子の使用形態としては、操作性の観点からスラリー状であることが好ましい。本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子がコロイダルシリカである場合、アルカリ金属やアルカリ土類金属等による半導体基板の汚染を防止する観点から、コロイダルシリカはアルコキシシランの加水分解物から得たものであると好ましい。アルコキシシランの加水分解物から得られるシリカ粒子は、従来公知の方法によって作製できる。
【0015】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径は、一定の研磨速度および表面粗さを維持する観点から、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、15nm以上が更に好ましく、20nm以上が更により好ましく、そして、スクラッチの発生を抑制する観点から、100nm以下が好ましく、90nm以下がより好ましく、80nm以下が更に好ましく、70nm以下が更により好ましい。シリカ粒子の平均一次粒子径は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m
2/g)を用いて算出される。
【0016】
本発明の研磨液組成物におけるシリカ粒子の含有量は、研磨速度の向上の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がより好ましく、0.25質量%以上が更に好ましく、そして、研磨液組成物の保存安定性の向上の観点から、2.5質量%以下が好ましく、1.5重量%以下がより好ましく、1.0重量%以下が更に好ましい。
【0017】
シリカ粒子1gあたりのシラノール基数は、研磨液組成物の保存安定性の向上の観点から、0.01mmol/g以上が好ましく、0.03mmol/g以上がより好ましく、0.05mmol/g以上が更に好ましく、そして、研磨速度を向上させる観点から、4.0mmol/g以下が好ましく、3.0mmol/g以下がより好ましく、2.5mmol/g以下が更により好ましい。シリカ粒子のシラノール基数は、熱重量測定・示差熱分析(TG−DTA)によって測定される値であり、例えば実施例に記載の装置を用いて測定できる。
【0018】
シリカ粒子の会合度は、研磨速度を向上させる観点から、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、1.8以上が更に好ましく、そして、表面粗さ低減の観点から3.0以下が好ましく、2.7以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましい。シリカ粒子がコロイダルシリカである場合、その会合度は、研磨速度をより向上させる観点から、1.1〜3.0が好ましく、1.5〜2.7がより好ましく、1.8〜2.5が更に好ましい。
【0019】
シリカ粒子の会合度とは、砥粒の形状を表す係数であり、下記式により算出される。
会合度=平均二次粒子径/平均一次粒子径
平均二次粒子径は、動的光散乱法によって測定される値であり、例えば、実施例に記載の装置を用いて測定できる。
【0020】
<第4級アンモニウム化合物>
本発明の研磨液組成物は、研磨速度向上の観点から、第4級アンモニウム化合物を含有する。前記第4級アンモニウム化合物の第4級アンモニウム基の炭素数は10以上22以下である。前記第4級アンモニウム基は、対イオンを伴う事で、前記第4級アンモニウム化合物となるものである。前記第4級アンモニウム化合物は、好ましくは下記式(1)で表される化合物であり、好ましくは水酸化物又は第4級アンモニウム塩である。
【化1】
【0021】
上記式(1)中、R
1、R
2、R
3及びR
4は、同一または異なっており、研磨速度向上の観点から、好ましくは炭素数1以上18以下の炭化水素基を示す。前記炭化水素基の炭素数は、同様の観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、7以下が好ましく、6以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。前記炭化水素基は、研磨速度向上の観点、アルキル基であると好ましく、アルキル基の炭素数は、同様の観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、7以下が好ましく、6以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。R
1、R
2、R
3及びR
4の合計炭素数は10以上22以下であり、R
1、R
2、R
3及びR
4の全てが同時に炭素数1以上2以下の炭化水素基とならない。
【0022】
X
-は、対イオンを示し、入手の容易性の観点から、水酸化物イオン、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、有機酸イオン等が好ましく、研磨速度向上の観点から、水酸化物イオン及びハロゲン化物イオンのうちの少なくとも1種がより好ましく、水酸化物イオンが更に好ましい。ハロゲン化物イオンとしては、Cl
-、Br
-、ClO
4-、BH
4-等が挙げられる。
【0023】
第4級アンモニウム化合物の第4級アンモニウム基の炭素数は、研磨速度向上の観点から、10以上であり、12以上が好ましく、14以上がより好ましく、そして、親水性の担保の観点から、22以下であり、20以下が好ましく、18以下がより好ましい。前記式(1)における、R
1、R
2、R
3及びR
4の合計炭素数も同様である。
【0024】
第4級アンモニウム化合物の具体例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、カプリルトリメチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウム、及びステアリルトリメチルアンモニウム等の、水酸化物又はその塩が挙げられる。これらの第4級アンモニウム化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の研磨液組成物に含まれる第4級アンモニウム化合物としては、研磨速度向上及び研磨液組成物の保存安定性の向上の観点から、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、及びラウリルトリメチルアンモニウムの、水酸化物又はその塩がより好ましく、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、及びラウリルトリメチルアンモニウムの、水酸化物又はハロゲン化物が更に好ましく、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、及びラウリルトリメチルアンモニウムの水酸化物が更により好ましく、テトラブチルアンモニウムの水酸化物が更により好ましい。
【0025】
本発明の研磨液組成物における第4級アンモニウム化合物の含有量は、研磨速度向上の観点から、1質量ppm以上が好ましく、10質量ppm以上がより好ましく、50質量ppm以上が更に好ましく、そして、表面粗さ低減及び研磨液組成物の保存安定性の向上の観点から、1,000質量ppm以下が好ましく、500質量ppm以下がより好ましく、400質量ppm以下が更に好ましい。
【0026】
<水溶性高分子>
本発明の研磨液組成物は、水溶性高分子を含有する。水溶性高分子の種類は、特に制限されず、研磨液組成物に含まれる公知の水溶性高分子のなかから適宜選択できる。ここで、「水溶性」とは、水(20℃)に対して2g/100mL以上の溶解度を有することをいう。水溶性高分子は、1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0027】
本発明の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子としては、研磨速度向上の観点から、アミド基を有する高分子、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール系重合体等が好ましく、アミド基を有する高分子、セルロース誘導体がより好ましく、セルロース誘導体が更に好ましく、ヒドロキシエチルセルロースが更により好ましい。
【0028】
アミド基を有する高分子は、好ましくは、下記一般式(2)で表される構成単位を含む。
【化2】
【0029】
上記式(2)中のR
5、R
6は、それぞれ独立に、水素、炭素数1以上8以下の炭化水素基、又は炭素数1以上2以下のヒドロキシアルキル基を示す。好ましくはR
5、R
6が同時に水素となることはない。
【0030】
式(2)で表される構成単位の供給源である単量体としては、好ましくは、例えば、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−イソブチルアクリルアミド、N−ターシャリブチルアクリルアミド、N−ヘプチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−ターシャリオクチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N,N−ジイソブチルアクリルアミド、N,N−ジターシャリブチルアクリルアミド、N,N−ジヘプチルアクリルアミド、N,N−ジオクチルアクリルアミド、N,N−ジターシャリオクチルアクリルアミド、N,N−ジオクタデシルアクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、及びN,N−ジヒドロキシエチルアクリルアミドから選ばれる1種以上である。これらの単量体のなかでも、研磨速度向上及び表面欠陥低減の観点からN−ヒドロキシエチルアクリルアミドがより好ましい。
【0031】
セルロース誘導体の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、及びカルボキシメチルエチルセルロース等が挙げられる。
【0032】
ポリビニルアルコール系重合体の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、アルキレンオキサイド変性PVA、カチオン変性PVA、アニオン変性PVA、アルキル変性PVA等が挙げられる。
【0033】
アミド基を有する高分子の重量平均分子量は、研磨速度向上及び研磨液組成物の保存安定性の向上の観点から、1万〜200万が好ましく、10万〜90万がより好ましく、20万〜80万が更に好ましい。
【0034】
ヒドロキシエチルセルロースの重量平均分子量は、研磨速度向上及び研磨液組成物の保存安定性の向上の観点から、10万〜150万が好ましく、20万〜100万がより好ましく、24万〜90万が更に好ましい。
【0035】
ポリビニルアルコールの重量平均分子量は、研磨速度向上及び研磨液組成物の保存安定性の向上の観点から、1万〜15万が好ましく、1.5万〜10万がより好ましく、2万〜8万が更に好ましい。
【0036】
ここで、水溶性高分子の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される値であり、例えば、実施例に記載の装置を用いて測定できる。
【0037】
本発明の研磨液組成物における水溶性高分子の含有量は、表面粗さの低減及び濡れ性の向上の観点から、1質量ppm以上が好ましく、5質量ppm以上がより好ましく、10質量ppm以上が更により好ましく、そして、研磨速度向上及び研磨液組成物の保存安定性の向上の観点から、1000質量ppm以下が好ましく、800質量ppm以下がより好ましく、600質量ppm以下が更により好ましい。
【0038】
<水系媒体>
本発明の研磨液組成物に含まれる水系媒体としては、イオン交換水や超純水等の水、又は水と溶媒の混合媒体等が挙げられ、上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が好ましい。水系媒体としては、なかでも、イオン交換水又は超純水がより好ましく、超純水が更に好ましい。水系媒体が、水と溶媒の混合媒体である場合、混合媒体全体に対する水の割合は、経済性の観点から、95質量%以上が好ましく、98質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%が更に好ましい。
【0039】
本発明の研磨液組成物における水系媒体の含有量は、好ましくは、シリカ粒子、水溶性高分子、第4級アンモニウム化合物及び後述する任意成分の残余である。
【0040】
〈任意成分〉
本実施形態の研磨液組成物には、本発明の効果が妨げられない範囲で、更に、pH調整剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤及び酸化剤から選ばれる少なくとも1種の任意成分が含まれてもよい。
【0041】
(pH調整剤)
pH調整剤としては、酸性化合物及びその塩等が挙げられる。酸性化合物としては、硫酸、塩酸、硝酸又はリン酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸又は安息香酸等の有機酸等が挙げられる。前記酸性化合物の塩としては、好ましくは、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、アンモニウム塩である。
【0042】
(防腐剤)
防腐剤としては、ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、1,2−ベンズイソチアゾリン-3-オン、(5-クロロ-)2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、過酸化水素、又は次亜塩素酸塩等が挙げられる。
【0043】
(アルコール類)
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、2-メチル-2-プロパノオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。本発明の研磨液組成物におけるアルコール類の含有量は、0.1〜5質量%が好ましい。
【0044】
(キレート剤)
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム等が挙げられる。本発明の研磨液組成物におけるキレート剤の含有量は、0.01〜1質量%が好ましい。
【0045】
(酸化剤)
酸化剤としては、過マンガン酸、ペルオキソ酸等の過酸化物、クロム酸、又は硝酸、並びにこれらの塩等が挙げられる。
【0046】
<研磨液組成物>
研磨液組成物中の、第4級アンモニウム化合物のN
+の総モル数(b)と、シリカ粒子のシラノール基の総モル数(a)との比[b/a]は、高研磨速度を発現させる観点から、0.005以上であり、0.200以上が好ましく、0.500以上がより好ましく、そして、同様の観点から、2.00以下であり、1.70以下が好ましく、1.30以下がより好ましい。
【0047】
研磨液組成物中の、第4級アンモニウム化合物とシリカ粒子の質量比(第4級アンモニウム化合物/シリカ粒子)は、研磨速度向上の観点から、0.02以上が好ましく、0.04以上がより好ましく、0.05以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、0.16以下が好ましく、0.13以下がより好ましく、0.11以下が更に好ましい。
【0048】
研磨液組成物中の、水溶性高分子と第4級アンモニウム化合物の質量比(水溶性高分子/第4級アンモニウム化合物)は、研磨速度向上の観点から、0.15以上が好ましく、0.17以上がより好ましく、0.19以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、50以下が好ましく、8以下がより好ましく、1以下が更に好ましい。
【0049】
本実施形態の研磨液組成物の25℃におけるpHは、研磨速度向上の観点から、7.0以上が好ましく、8.0以上がより好ましく、9.0以上が更に好ましく、そして、同様な観点から、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましい。ここで、25℃におけるpHは、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM−30G)を用いて測定でき、電極の研磨液組成物への浸漬後1分後の数値である。
【0050】
なお、上記において説明した各成分の含有量は、使用時における含有量であるが、本実施形態の研磨液組成物は、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存および供給されてもよい。この場合、製造及び輸送コストを更に低くできる点で好ましい。濃縮液は、必要に応じて前述の水系媒体で適宜希釈して使用すればよい。
【0051】
本実施形態の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、シリカ粒子の含有量は、製造及び輸送コストの低減の観点から、3質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、そして、保存安定性の向上の観点から、20質量%以下が好ましく、17質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0052】
本実施形態の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、上記水溶性高分子の含有量は、製造及び輸送コストの低減の観点から、500質量ppm以上が好ましく、1,000質量ppm以上がより好ましく、1,500質量ppm以上が更に好ましく、そして、保存安定性の向上の観点から、20,000質量ppm以下が好ましく、16,000質量ppm以下がより好ましく、14,000質量ppm以下が更に好ましい。
【0053】
本実施形態の研磨液組成物が上記濃縮液である場合、上記第4級アンモニウム化合物の含有量は、製造及び輸送コストの低減の観点から、60質量ppm以上が好ましく、600質量ppm以上がより好ましく、3,000質量ppm以上が更に好ましく、そして、保存安定性の向上の観点から、60,000質量ppm以下が好ましく、30,000質量ppm以下がより好ましく、20,000質量ppm以下が更に好ましい。
【0054】
次に、本発明の研磨液組成物の製造方法の一例について説明する。
【0055】
本発明の研磨液組成物は、例えば、シリカ粒子と、水溶性高分子と、第4級アンモニウム化合物と、水系媒体と、必要に応じて任意成分とを混合することによって調製できる。
【0056】
シリカ粒子の使用形態としては、水等の水系媒体を分散媒とした分散液であることが好ましい。シリカ粒子の水系媒体への分散は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、湿式ボールミル、又はビーズミル等の撹拌機等を用いて行うことができる。シリカ粒子の凝集等により生じた粗大粒子が水系媒体中に含まれる場合、遠心分離やフィルターを用いたろ過等により、当該粗大粒子を除去すると好ましい。シリカ粒子、好ましくはシリカ粒子の分散液と水系媒体の混合は、水溶性高分子の存在下で行うと好ましい。具体的には、水溶性高分子と水系媒体とを含む溶液と、シリカ粒子の水分散液とを混合し、さらに必要に応じ、当該混合液を水系媒体で希釈すると好ましい。
【0057】
本発明の研磨液組成物は、例えば、半導体基板の製造過程における、シリコンウェーハを研磨する研磨工程や、シリコンウェーハを研磨する研磨工程を含むシリコンウェーハの研磨方法に用いられる。
【0058】
前記シリコンウェーハを研磨する研磨工程には、シリコン単結晶インゴットを薄円板状にスライスすることにより得られたシリコンウェーハを平面化するラッピング(粗研磨)工程と、ラッピングされたシリコンウェーハをエッチングした後、シリコンウェーハ表面を鏡面化する仕上げ研磨工程とがある。本発明の研磨液組成物は、上記粗研磨工程で用いられるとより好ましい。
【0059】
前記半導体基板の製造方法や前記シリコンウェーハの研磨方法では、シリコンウェーハを研磨する研磨工程の前に、本発明の研磨液組成物(濃縮液)を希釈する希釈工程を含んでいてもよい。希釈媒には、水系媒体を用いればよい。
【0060】
前記希釈工程で希釈される濃縮液は、製造及び輸送コスト低減、保存安定性の向上の観点から、例えば、シリカ粒子を3〜20質量%、水溶性高分子を500〜20,000質量ppm、第4級アンモニウム化合物を60〜60,000質量ppm含んでいると好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を、具体例を挙げて詳細に説明するが、これらは一例にすぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
1.各種パラメーターの測定方法
<シリカ粒子の平均一次粒子径>
シリカ粒子の平均一次粒子径(nm)は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m
2/g)を用いて下記式で算出した。
平均一次粒子径(nm)=2727/S
【0063】
シリカ粒子の比表面積は、下記の[前処理]をした後、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁まで精量し、比表面積の測定直前に110℃の雰囲気下で30分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置 フローソーブIII2305、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
【0064】
[前処理]
(a)シリカ粒子を含むスラリーを硝酸水溶液でpH2.5±0.1に調整する。
(b)前記スラリーをシャーレにとり150℃の熱風乾燥機内で1時間乾燥させる。
(c)乾燥後、得られた試料をメノウ乳鉢で細かく粉砕する。
(d)粉砕された試料を40℃のイオン交換水に懸濁させ、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過する。
(e)フィルター上の濾過物を20gのイオン交換水(40℃)で5回洗浄する。
(f)濾過物が付着したフィルターをシャーレにとり、110℃の雰囲気下で4時間乾燥させる。
(g)乾燥した濾過物(シリカ粒子)をフィルター屑が混入しないようにとり、乳鉢で細かく粉砕して測定サンプルを得た。
【0065】
<シリカ粒子の平均二次粒子径>
シリカ粒子の平均二次粒子径(nm)は、シリカ粒子の濃度が0.3質量%となるようにシリカ粒子をイオン交換水に添加した後、得られた水溶液をDisposable Sizing Cuvette(ポリスチレン製10mmセル)に下底から10mmの高さまで入れ、動的光散乱法(装置名:ゼータサイザーNano ZS、シスメックス(株)製)を用いて測定した。
【0066】
<シラノール基数>
シリカ粒子のシラノール基数は、スラリー状のシリカ粒子を凍結乾燥して得られた粉末を15mgはかりとり、TG−DTA測定(装置名:Thermo plus TG8120(理学電機工業株式会社製))を行った。このとき、室温から700℃まで10℃/minの速度で昇温し、200から700℃における重量減少量をシラノール基由来の重量減少量とし、この値に基づいて、シリカ粒子1gあたりのシラノール基数(mmol/g)を算出した。
【0067】
<水溶性高分子の重量平均分子量>
水溶性高分子の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を下記の条件で適用して得たクロマトグラム中のピークに基づいて算出した値である。
装置:HLC−8320 GPC(東ソー株式会社、検査器一体型)
カラム:GMPWXL+GMPWXL(アニオン)
溶離液:200mmol/L リン酸バッファー/CH
3CN=9/1
流量:0.5mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI 検出器
標準物質:分子量既知の単分散ポリエチレングリコール
【0068】
2.研磨液組成物の詳細
(1)研磨液組成物の調製
シリカ粒子(コロイダルシリカ、平均一次粒子径60nm、会合度1.8、シラノール基数0.336mmol/g)、水溶性高分子、第4級アンモニウム化合物、イオン交換水を攪拌混合して、研磨液組成物の濃縮液(pH10.0〜11.0(25℃))を得た。上記濃縮液をイオン交換水で60倍に希釈し、実施例1〜6、比較例1〜6の研磨液組成物を得た。比較例3、4では、第4級アンモニウム化合物に代えて、アンモニア水を用いた。実施例1〜6、比較例1〜6の研磨液組成物中の、シリカ粒子の含有量は、いずれも0.25質量%、水溶性高分子の含有量はいずれも50質量ppm、第4級アンモニウム化合物の含有量及び25℃のpHは、表1に記載のとおりである。なお、実施例5、6、比較例6の研磨液組成物の濃縮液については、25℃のpHが10.0〜11.0となるようにアンモニア水を添加して調製した。
【0069】
(2)水溶性高分子の詳細
表1に示した水溶性高分子の詳細は、下記の通りである。
(a)pHEAA(HEAA単独重合体)
ヒドロキシエチルアクリルアミド102g(0.89mol KJケミカルズ興人社製、純分99.25質量%、水分0.35質量%、重合禁止剤メチルヒドロキノン0.10質量%、APHA色相30)を119gのイオン交換水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’−アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド 0.36g(重合開始剤、V−50 1.30mmol 和光純薬製)を36gのイオン交換水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計および三日月形PTFE製撹拌翼を備えた2Lセパラブルフラスコに、イオン交換水760gを投入した後、セパラブルフラスコ内を窒素置換した。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を68℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を各々3.5時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、温度及び撹拌を4時間保持し、無色透明の10質量%ポリヒドロキシエチルアクリルアミド水溶液1000gを得た。
【0070】
調製されたpHEAAの重量平均分子量(Mw)は720,000、数平均分子量(Mn)は18,0000、分子量分布(Mw/Mn)は4.0、残存モノマー濃度は0.1質量%であった。
【0071】
(b)HEC
ヒドロキシエチルセルロース(HEC、重量平均分子量250,000)は、ダイセルファインケム社製のSE−400を用いた。
【0072】
3.研磨方法
得られた研磨液組成物を用いて、下記の研磨条件で下記シリコンウェーハを研磨した。
〈シリコンウェーハ〉
直径200mmの単結晶シリコンウェーハ
〈研磨条件〉
研磨機:片面8インチ研磨機GRIND−X SPP600s(岡本工作製)
研磨荷重:100g/cm
2
常盤回転数:60rpm
ヘッド回転数:100rpm
研磨時間:10min
研磨液組成物の温度:23℃
研磨液組成物の供給速度150mL/min
上記研磨条件で研磨したシリコンウェーハを洗浄、乾燥させた。
【0073】
4.性能評価方法
<研磨速度>
研磨速度は、研磨前後の質量を測定し下記計算式より求めた。
研磨速度[nm/min]
=(研磨前質量[g]−研磨後質量[g])/研磨時間[min]×13.4[nm/g]
【0074】
【表1】
【0075】
表1に示されるように、研磨液組成物の調製に、第4級アンモニウム基の炭素数が10以上22以下の第4級アンモニウム化合物を用い、第4級アンモニウム化合物のN
+の総モル数と、シリカ粒子のシラノール基の総モル数との比(NR
4+/SiOH)が0.005〜2.00の範囲内の値であると、高研磨速度を発現することが明らかとなった。