特許第6811102号(P6811102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧
特許6811102水道の維持管理支援システム及び水処理システム
<>
  • 特許6811102-水道の維持管理支援システム及び水処理システム 図000002
  • 特許6811102-水道の維持管理支援システム及び水処理システム 図000003
  • 特許6811102-水道の維持管理支援システム及び水処理システム 図000004
  • 特許6811102-水道の維持管理支援システム及び水処理システム 図000005
  • 特許6811102-水道の維持管理支援システム及び水処理システム 図000006
  • 特許6811102-水道の維持管理支援システム及び水処理システム 図000007
  • 特許6811102-水道の維持管理支援システム及び水処理システム 図000008
  • 特許6811102-水道の維持管理支援システム及び水処理システム 図000009
  • 特許6811102-水道の維持管理支援システム及び水処理システム 図000010
  • 特許6811102-水道の維持管理支援システム及び水処理システム 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811102
(24)【登録日】2020年12月16日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】水道の維持管理支援システム及び水処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20201228BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   G06Q50/06
   C02F1/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-9315(P2017-9315)
(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公開番号】特開2018-120272(P2018-120272A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2019年8月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】横井 浩人
(72)【発明者】
【氏名】圓佛 伊智朗
(72)【発明者】
【氏名】武本 剛
【審査官】 田中 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−092954(JP,A)
【文献】 特開2011−248695(JP,A)
【文献】 特開2002−259504(JP,A)
【文献】 特開2009−128918(JP,A)
【文献】 特開2002−312455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、水道施設の機器に対する操作情報及びアラート情報を取得する監視制御装置と、
前記監視制御装置により取得される前記操作情報及び前記アラート情報と、業務所要時間の実績値を格納する業務実績データベースと、前記水道施設の機器に関する情報及び管網に関する情報を格納する水道施設データベースと、前記水道施設の機器に対する定常時及び非定常時における業務手順及び業務所要時間を格納する業務手順データベースと、前記業務実績データベースに格納された前記操作情報及び前記アラート情報と、操作やアラートまでに要した時間で前記業務手順データベースに格納される業務手順及び業務所要時間を更新する業務手順再構築部と、を有する維持管理支援サーバと、
前記業務手順データベースに格納される業務手順を表示する維持管理支援端末と、を備え、
前記維持管理支援サーバには、
前記業務実績データベースに格納される非定常時の実績としてかかった業務所要時間の中央値を算出し、当該算出した中央値のタイミングにて、非定常時における業務手順を前記維持管理支援端末に表示させる業務指示出力部を備えることを特徴とする水道の維持管理支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水道の維持管理支援システムにおいて、
前記維持管理支援サーバは、
前記監視制御装置より取得される前記操作情報が前記業務手順データベースに格納済みの業務の条件を満足するか否かを判定し、業務の条件を満足する場合、前記監視制御装置で判定可能な操作の直後、または、前記業務手順データベースに格納される定常時における標準業務には記憶されており、前記監視制御装置が関与しない作業があるか否かを判定し、判定結果に基づき前記維持管理支援端末に新たな業務の入力を可能とする表示領域を表示させる業務実績入力要求部を備えることを特徴とする水道の維持管理支援システム。
【請求項3】
請求項に記載の水道の維持管理支援システムにおいて、
前記業務手順データベースは、更に、少なくとも、適用範囲、使用薬剤、使用資機材、対象設備機器、実施者、実施タイミング、管理点検項目、異常時措置、作業記録方法、及び点検記録方法のうち一つを格納することを特徴とする水道の維持管理支援システム。
【請求項4】
少なくとも、取水施設と、浄水・汚泥処理施設と、送配水施設と、管網施設を備える水道施設と、
少なくとも、前記水道施設の機器に対する操作情報及びアラート情報を取得する監視制御装置と、
前記監視制御装置により取得される前記操作情報及び前記アラート情報と、業務所要時間の実績値を格納する業務実績データベースと、前記水道施設の機器に関する情報及び管網に関する情報を格納する水道施設データベースと、前記水道施設の機器に対する定常時及び非定常時における業務手順及び業務所要時間を格納する業務手順データベースと、前記業務実績データベースに格納された前記操作情報及び前記アラート情報と、操作やアラートまでに要した時間で前記業務手順データベースに格納される業務手順及び業務所要時間を更新する業務手順再構築部と、を有する維持管理支援サーバと、
前記業務手順データベースに格納される業務手順を表示する維持管理支援端末と、を備え、
前記維持管理支援サーバには、
前記業務実績データベースに格納される非定常時の実績としてかかった業務所要時間の中央値を算出し、当該算出した中央値のタイミングにて、非定常時における業務手順を前記維持管理支援端末に表示させる業務指示出力部を備えることを特徴とする水処理システム。
【請求項5】
請求項4に記載の水処理システムにおいて、
前記維持管理支援サーバは、
前記監視制御装置より取得される前記操作情報が前記業務手順データベースに格納済みの業務の条件を満足するか否かを判定し、業務の条件を満足する場合、前記監視制御装置で判定可能な操作の直後、または、前記業務手順データベースに格納される定常時における標準業務には記憶されており、前記監視制御装置が関与しない作業があるか否かを判定し、判定結果に基づき前記維持管理支援端末に新たな業務の入力を可能とする表示領域を表示させる業務実績入力要求部を備えることを特徴とする水処理システム。
【請求項6】
請求項4に記載の水処理システムにおいて、
前記業務手順データベースは、更に、少なくとも、適用範囲、使用薬剤、使用資機材、対象設備機器、実施者、実施タイミング、管理点検項目、異常時措置、作業記録方法、及び点検記録方法のうち一つを格納することを特徴とする水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道施設や設備機器の運転管理及び維持管理を支援するシステムに係り、特に、水処理や送配水の操作に係る情報を収集し、これと標準的な管理方法とを比較し、ユーザーへ支援情報を提供する水道の維持管理支援システム及び水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水道事業は、河川水や地下水などを原水とし、浄水処理や消毒処理を行った後に、最終的には配管を経由して上水を需要家に供給している。水道事業におけるユーザー(運転員)の業務には、水道施設の運転、施設・設備機器の保守、給配水の調整等が含まれる。
水道施設の多くは河川水等の表流水を水源としており、原水水質は季節や天候により変化する。そのため、浄水処理のユーザーは原水水質に応じた運転調整が必要である。平常時は監視制御装置により予め決められたロジックで自動運転が実施できるが、豪雨や渇水等の非定常的な事象に対してはユーザーのノウハウに基づいた運転管理がなされることもある。このような対応方法は、社会インフラとして、水道水の供給停止をできる限り避けるために有効な対応と考えられてきた。
【0003】
一方、ノウハウを有するユーザー、いわゆる熟練職員数は退職により今後減少することが予想されている。また、水道施設は高度成長期に建設されたものが多く、更新時期を迎えるものの、財政状況によっては継続して使用されることも考えられる。この様な状況下では、装置の不具合の増加やノウハウの減少等により、結果的に、水道サービスの質が低下するリスクが高まってしまうことが予想される。
しかし、熟練者のノウハウは暗黙知が多く、これを見える化または形式知化までする方法やシステムの提供が課題である。このことはまた、ほぼ同様な水処理や送配水の業態にもかかわらず、それぞれ異なる管理方法が発展する可能性があるという課題も考えられる。例えば、特許文献1では、製品の生産図面情報からサービスマニュアルを作成するサービスマニュアル作成システムにおいて、生産図面情報記憶手段、サービスマニュアル作成編集手段、サービスマニュアル記憶手段、関連付けデータ記憶手段、生産図面情報検索条件設定手段、類似度データ記憶手段、生産図面情報検索手段、及びサービスマニュアル表示制御手段と、を備える構成が開示されている。
特許文献1では、生産図面情報検索手段は、生産図面情報記憶手段に記憶された生産図面情報から、生産図面情報を構成する要素項目に関する類似度を基に、類似する生産図面情報の検索を行う。また、サービスマニュアル表示制御手段は、生産図面情報検索手段により得られた類似する生産図面情報に対応するサービスマニュアルを、関連付けデータを基にサービスマニュアル記憶手段より抽出して表示する制御を行う旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−140456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、定型的な業務のマニュアル作成においては、特許文献1に示すように、既存の類似する生産図面情報に対応するサービスマニュアルを適用することが可能であるものの、水道分野のように運用のノウハウが要求されるプラント等を対象とした場合、必要十分なマニュアル作成が困難である。
そこで、本発明は、定常時における標準業務手順のみならず、非定常時において過去に実施されていなかった新たな業務手順又は操作履歴に含まれない業務手順を運転員に提示し得る水道の維持管理支援システム及び水処理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る水道の維持管理支援システムは、少なくとも、水道施設の機器に対する操作情報及びアラート情報を取得する監視制御装置と、前記監視制御装置により取得される前記操作情報及び前記アラート情報と、業務所要時間の実績値を格納する業務実績データベースと、前記水道施設の機器に関する情報及び管網に関する情報を格納する水道施設データベースと、前記水道施設の機器に対する定常時及び非定常時における業務手順及び業務所要時間を格納する業務手順データベースと、前記業務実績データベースに格納された前記操作情報及び前記アラート情報と、操作やアラートまでに要した時間で前記業務手順データベースに格納される業務手順及び業務所要時間を更新する業務手順再構築部と、を有する維持管理支援サーバと、前記業務手順データベースに格納される業務手順を表示する維持管理支援端末と、を備え、前記維持管理支援サーバには、前記業務実績データベースに格納される非定常時の実績としてかかった業務所要時間の中央値を算出し、当該算出した中央値のタイミングにて、非定常時における業務手順を前記維持管理支援端末に表示させる業務指示出力部を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る水処理システムは、少なくとも、取水施設と、浄水・汚泥処理施設と、送配水施設と、管網施設を備える水道施設と、少なくとも、前記水道施設の機器に対する操作情報及びアラート情報を取得する監視制御装置と、前記監視制御装置により取得される前記操作情報及び前記アラート情報と、業務所要時間の実績値を格納する業務実績データベースと、前記水道施設の機器に関する情報及び管網に関する情報を格納する水道施設データベースと、前記水道施設の機器に対する定常時及び非定常時における業務手順及び業務所要時間を格納する業務手順データベースと、前記業務実績データベースに格納された前記操作情報及び前記アラート情報と、操作やアラートまでに要した時間で前記業務手順データベースに格納される業務手順及び業務所要時間を更新する業務手順再構築部と、を有する維持管理支援サーバと、前記業務手順データベースに格納される業務手順を表示する維持管理支援端末と、を備え、前記維持管理支援サーバには、前記業務実績データベースに格納される非定常時の実績としてかかった業務所要時間の中央値を算出し、当該算出した中央値のタイミングにて、非定常時における業務手順を前記維持管理支援端末に表示させる業務指示出力部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、定常時における標準業務手順のみならず、非定常時において過去に実施されていなかった新たな業務手順又は操作履歴に含まれない業務手順を運転員に提示し得る水道の維持管理支援システム及び水処理システムを提供することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例に係る実施例1の水処理システムの概略全体構成図である。
図2図1に示す維持管理支援サーバの機能ブロック図である。
図3図1に示す水道施設に設置される機器毎に割り付けられたIDを示す図である。
図4図2に示す維持管理支援サーバを構成する業務手順再構築部の処理フロー図である。
図5図2に示す維持管理支援サーバを構成する業務手順DBのデータ構造を示す図であって、原水が高濁度となった場合の一例を示す図である。
図6】本発明の他の実施例に係る実施例2の水処理システムの概略全体構成図である。
図7図6に示す維持管理支援サーバの機能ブロック図である。
図8図6に示す維持管理支援サーバを構成する業務実績入力要求部の処理フロー図である。
図9図6に示す維持管理支援端末の画面表示例である。
図10図6に示す維持管理支援端末の画面表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の一実施例に係る実施例1の水処理システムの概略全体構成図である。図1に示すように、水処理システム1は、水道の維持管理支援システム2、水道施設3、及び他の水道施設3aから構成される。水道施設3は、少なくとも、取水施設31、浄水・汚泥処理施設32、送配水施設33、及び管網施設34を備える。送配水施設33は、ポンプ場や貯水槽など人が容易にアクセスできる施設であり、管網施設34、地下に埋設されていてアクセスのために掘削を必要とする管路等である。
【0011】
水道の維持管理支援システム2は、維持管理支援サーバ4、監視制御装置5、維持管理支援端末6、及びこれらを相互に通信可能に接続するネットワーク7を備える。また、監視制御装置5と維持管理支援端末6は信号線(無線、有線を問わない)で接続されており、監視制御装置5は、水道施設3内の機器を操作することが可能に構成されている。ここで監視制御装置5として、例えは、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)が用いられる。
また、維持管理支援端末6は、図示しない、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)又は有機ELディスプレイなどの表示装置と、例えば、キーボード及び/又はマウスなどの入力装置を備える。維持管理支援端末6により、ユーザー(運転員)は維持管理支援サーバ4からネットワーク7を介して提供される業務支援情報(業務手順)を入手し、実際の業務で実行する。また、ネットワーク7に接続される他の水道施設3aからも、その施設に応じた業務支援情報を維持管理支援サーバ4から得ることができる。
【0012】
図2は、図1に示す維持管理支援サーバの機能ブロック図である。図2に示すように、維持管理支援サーバ4は、業務実績DB(データベース)11、水道施設DB(データベース)12、業務手順DB(データベース)13、通信I/F14、データ取得部15、業務指示出力部16、及び業務手順再構築部17を備え、これらは内部バス18介して相互に接続されている。ここで、データ取得部15、業務指示出力部16、及び業務手順再構築部17は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、各種プログラムを格納するROM、演算過程のデータを一時的に格納するRAM、外部記憶装置などの記憶装置にて実現されると共に、CPUなどのプロセッサがROMに格納された各種プログラムを読み出し実行し、実行結果である演算結果をRAM又は外部記憶装置に格納する。
【0013】
業務実績DB11は、監視制御装置5にて取得された、操作履歴やアラート情報(警報情報)、水質・プロセスデータを、ネットワーク7及び通信I/F14を介して所定の記憶領域に格納している。また、業務実績DB11は、維持管理支援端末6の入力装置(図示せず)によりユーザー(運転員)が日常管理において入力する、水質分析結果、保守・メンテナンス情報、点検結果、不具合・故障情報、ジャーテスト結果を、ネットワーク7及び通信I/F14を介して所定の記憶領域に格納する。なお、これらの情報の格納に際しては、水道施設3において記録される全ての情報でも良いし、ユーザー(運転員)が設定した所定の項目のデータを定期的に格納しても良い。
【0014】
水道施設DB12は、水道施設3に係る設備機器の資産情報のほか、水道施設3を構成する管網施設34に含まれる管網に関する情報として、管の仕様や埋設された地理情報を含む。これらの各設備機器や管にはそれぞれIDが割り付けられ、これらは業務実績DB11及び後述する業務手順DB13に格納されるデータと紐付けされている。すなわち、業務実績DB11、水道施設DB12、及び業務手順DB13はリレーショナルデータベースを形成している。ここで、設備機器(機器)毎に割り付けられるIDについて説明する。図3は、図1に示す水道施設3に設置される機器毎に割り付けられたIDを示す図である。図3に示すように、「機器名称」毎にユニークな「ID」が割り付けられている。例えば、取水ポンプに割り付けられた「ID」は“P−1”、フロッキュレータに割り付けられた「ID」は“F−2”、凝集剤注入ポンプに割り付けられた「ID」は“P−3”、次亜塩素酸ナトリウム注入ポンプに割り付けられた「ID」は“P−4”、及び、粉末活性炭注入設備に割り付けられた「ID」は“F−5”である。また、濁度計に割り付けられた「ID」は“S−1”、凝集剤貯留槽に割り付けられた「ID」は“F−7”、次亜塩素酸貯留槽に割り付けられた「ID」は“F−8”、及び、ジャーテスタに割り付けられた「ID」は“F−11”などである。図3に示す例では、水道施設3に設置される機器毎に割り付けられたIDを示しているが、埋設された管についても同様にユニークな「ID」が割り付けられている。また、図3では「ID」として、アルファベットと数字の組み合わせを用いる場合を示すがこれに限られるものでは無く、アルファベットのみ、或は数字のみなど、ユニークな値であればいずれを用いても良い。
【0015】
業務手順DB13は、水道施設3の維持管理に必要な業務手順(マニュアル)を格納している。マニュアルは、類似する設備機器の定常・非定常時に実施する標準的な業務を規定している。更に業務手順DB13は、各水道施設3,3aにおいて、詳細後述する維持管理支援サーバ4を構成する業務手順再構築部17により更新されたマニュアルも格納している。マニュアル更新の際は、ハードウェア或はソフトウェアの細かい変更を表す改訂番号であるリビジョンが管理され、改定前の過去のマニュアルも含め参照可能となっている。
【0016】
業務手順DB13に格納される標準的な業務としては、各機器の日常・定期点検、法定点検、水質分析手順や計測頻度がある。更に、非定常時の対応手順として、例えば、水道原水の濁度が上昇した場合や、有害物質の原水への混入(いわゆる、水質事故)、水道施設3の機器の故障、地震時の対応、停電時の対応、渇水時の対応等が業務手順DB13に格納されている。このとき、非定常時の対応手順書で業務手順DB13に格納する項目としては、次に示す項目のうち少なくとも2項目が設けられている。適用範囲、使用薬剤、使用資機材、対象設備機器、実施者、業務方法、業務所要時間、実施タイミング、管理点検項目、異常時措置、検証手段、作業記録方法、点検記録方法などの項目である。
【0017】
データ取得部15は、通信I/F14及び内部バス18を介して監視制御装置5にて取得された、水質・プロセスデータに対し、例えば、ノイズ除去、平滑化、或は正規化など処理を施し、内部バス18を介して、業務実績DB11へ格納する。
業務手順再構築部17は、業務手順DB13に格納される標準的な業務、または、ユーザー(運転員)が改訂した各水道施設向けのマニュアルに基づき、監視制御装置5、維持管理支援端末6、または、業務実績DB11から得られる情報を用いて、その内容を改訂する。以下では、監視制御装置5からネットワーク7及び通信I/F14を介して取得するオンライン情報を元に改訂する処理を一例として説明する。
【0018】
図4は、図2に示す維持管理支援サーバ4を構成する業務手順再構築部17の処理フロー図である。図4に示すように、まず、ステップS101では、業務手順再構築部17は、監視制御装置5からユーザー(運転員)による水道施設3の操作情報及びアラート情報(警報情報)を、ネットワーク7、通信I/F14、及び内部バス18を介して取得する。ここで、操作情報とは、ユーザー(運転員)が監視制御装置5に対して行った操作全般であり、機器の運転操作、設定値の変更、データの閲覧、アラートの警報(音)解除などである。また、アラート情報(警報情報)としては、機器の故障、水質や流量、水道施設3の運転状態の管理基準値からの逸脱などが該当する。
【0019】
次に、ステップS102では、業務手順再構築部17は、内部バス18を介して業務手順DB13にアクセスし、業務手順DB13に格納済みの標準業務またはそれをユーザー(運転員)が改訂した現行のマニュアルの内容を参照する。そして、ステップS101にて監視制御装置5から取得した情報が、マニュアルに記載の業務の条件を満たすか否かを判定する。この判定は、非定常時の対応を開始するトリガーとなる条件に合致したかどうかに相当する。判定の結果、条件を満たし、該当する手順が開始されている間はステップS103へ進む。一方、判定の結果、マニュアルに記載の業務の条件を満していない場合にはステップS101へ戻り上述の処理を繰り返す。
【0020】
ステップS103では、業務手順再構築部17は、その前の操作やアラートまでに要した時間(ti)を計測する。そして、ステップS104では、業務手順再構築部17は、実際に発生しているアラート・操作の内容のつながり(連続性)が業務手順DB13の内容と一致するか否かを判定する。判定の結果、一致する場合は、業務手順DB13の内容の更新は行わず、時間(ti)を図示しない記憶部に一時的に格納し、ステップS101に戻り処理を繰り返す。一方、判定の結果、一致しない場合はステップS105へ進む。
ステップS105では、業務手順再構築部17は、新たな更新版の手順として検出結果を、内部バス18を介して、アラート、操作、時間(ti)を業務手順DB13に格納する。このとき、上述の項目に対応する内容を業務手順DB13に記録する。
【0021】
ここで、業務手順DB13のデータ構造について説明する。図5は、図2に示す維持管理支援サーバ4を構成する業務手順DB13のデータ構造を示す図であって、原水が高濁度となった場合の一例を示す図である。図5に示すように、業務手順DB13は、「項目」毎に、「内容」、「判定情報」、及び「関連機器ID」を対応付けて格納している。例えば、「項目」が“適用範囲”の場合においては、「内容」が“原水高濁度”、「判定情報」が“水質計測値”、及び「関連機器ID」が“S−1”である旨格納されている。「関連機器ID」として“S−1”が割り付けられた機器の名称は、上述の図3に示すように濁度計である。よって、必要に応じて、業務手順再構築部17は、内部バス18を介して業務実績DB11にアクセスし、「ID」が“S−1”に対応する業務実績DB11内に格納される濁度の計測値を参照することができる。
【0022】
また、「項目」が“業務方法”の場合においては、「内容」が“ジャーテスト”、「判定情報」が“作業記録”、及び「関連機器ID」が“F−11”である旨格納されている。「関連機器ID」として“F−11”が割り付けられた機器の名称は、上述の図3に示すようにジャーテスタである。「項目」欄に、特に水道分野で必要な情報として、“業務所要時間”を設けている。図5に示す例では、「判定情報」が“ジャーテスト作業記録”の場合その業務所要時間は“0〜30分”であり、「判定情報」が“凝集剤流入率調整”の場合その業務所要時間は“10分〜6時間”であり、「判定情報」が“取水等の操作”の場合その業務所要時間は“10分〜3時間”である。なお、これら業務手順DB13に格納される業務所要時間は目標値である。
【0023】
水道分野においては、非定常の程度、例えば原水の濁度や地震の規模、停電の継続時間等により業務に必要な時間(業務所要時間)や待機時間が異なる。そのため、維持管理支援サーバ4を構成する業務指示出力部16(図2)は、所定の周期にて内部バス18を介して業務実績DB11へアクセスし、実績としてかかった時間の例えば中央値を演算により算出し、当該求めた中央値のタイミングにて、通信I/F14及びネットワーク7を介して維持管理支援端末6の表示装置の画面上に、例えば、上述の改定された非常時における業務手順などを支援情報として表示する。なお、維持管理支援端末6の表示装置の画面上に非常時における業務手順などを表示するタイミングは、上述の中央値に限らず、例えば、最短の業務所要時間または最長の業務所要時間を求め、求めた業務所要時間に基づき表示するよう構成しても良い。また、業務指示出力部16は、上記実績としてかかった時間に基づき、実際に起こり得る時間の長さの分布として捉え、その発生頻度を基準に業務指示、業務記録指示、及び関連データを支援情報として通信I/F14及びネットワーク7を介して維持管理支援端末6の表示装置の画面上に表示する。この場合、維持管理支援端末6の表示装置の画面上に表示するタイミングとして、例えば、分布における発生確率がピークとなる時刻とすることが好ましい。
【0024】
なお、本実施例では、水道施設3を監視制御対象とする場合を主として説明したが、上述の維持管理支援サーバ4を構成する、業務実績DB11、水道施設DB12、及び業務手順DB13のそれぞれに、水道施設毎に識別可能に所定の記憶領域に格納する。これは、水道施設毎に設置される機器及び設備の規模など異なるため、それぞれの水道施設に対応する情報を格納する構成としている。
【0025】
また、本実施例では、上述の支援情報を維持管理支援端末6の表示装置の画面上に表示する例を説明したが、これに限られるものでは無い。例えば、上述の支援情報をユーザー(運転員)が所持する携帯端末、例えば、携帯電話、電子タブレット等の画面上に表示する構成としても良い。なおこの場合において、維持管理支援端末6の表示装置の画面上及びユーザー(運転員)が所持する携帯端末の画面上の双方に表示しても良い。
【0026】
以上の通り本実施例によれば、定常時における標準業務手順のみならず、非定常時において過去に実施されていなかった新たな業務手順又は操作履歴に含まれない業務手順を運転員に提示し得る水道の維持管理支援システム及び水処理システムを提供することが可能となる。
また、本実施例によれば、熟練ユーザー(熟練運転員)の暗黙知を含めたノウハウを操作履歴から検出し、より現実に沿った管理事項へ更新し、維持管理支援端末6の表示装置に表示することで、正常な運転の維持や運転員のミスを低減することが可能となる。
【実施例2】
【0027】
図6は、本発明の他の実施例に係る実施例2の水処理システムの概略全体構成図であり、図7は、図6に示す維持管理支援サーバの機能ブロック図である。本実施例では、上述の実施例1に示した維持管理支援サーバに、更に業務実績入力要求部19を設けた点が、実施例1と異なる。図6及び図7において、実施例1と同様の構成要素に同一符号を付している。
【0028】
図6に示すように、水処理システム1aは、水道の維持管理支援システム2a、水道施設3、及び他の水道施設3aから構成される。水道施設3は、少なくとも、取水施設31、浄水・汚泥処理施設32、送配水施設33、及び管網施設34を備える。送配水施設33は、ポンプ場や貯水槽など人が容易にアクセスできる施設であり、管網施設34、地下に埋設されていてアクセスのために掘削を必要とする管路等である。
【0029】
水道の維持管理支援システム2aは、維持管理支援サーバ4a、監視制御装置5、維持管理支援端末6、及びこれらを相互に通信可能に接続するネットワーク7を備える。また、監視制御装置5と維持管理支援端末6は信号線(無線、有線を問わない)で接続されており、監視制御装置5は、水道施設3内の機器を操作することが可能に構成されている。ここで監視制御装置5として、例えは、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)が用いられる。
また、維持管理支援端末6は、図示しない、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)又は有機ELディスプレイなどの表示装置と、例えば、キーボード及び/又はマウスなどの入力装置を備える。維持管理支援端末6により、ユーザー(運転員)は維持管理支援サーバ4aからネットワーク7を介して提供される業務支援情報(業務手順)を入手し、実際の業務で実行する。また、ネットワーク7に接続される他の水道施設3aからも、その施設に応じた業務支援情報を維持管理支援サーバ4から得ることができる。
【0030】
図7に示すように、維持管理支援サーバ4aは、業務実績DB11、水道施設DB12、業務手順DB13、通信I/F14、データ取得部15、業務指示出力部16、業務手順再構築部17及びを業務実績入力要求部19備え、これらは内部バス18介して相互に接続されている。ここで、データ取得部15、業務指示出力部16、業務手順再構築部17、及び業務実績入力要求部19は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ、各種プログラムを格納するROM、演算過程のデータを一時的に格納するRAM、外部記憶装置などの記憶装置にて実現されると共に、CPUなどのプロセッサがROMに格納された各種プログラムを読み出し実行し、実行結果である演算結果をRAM又は外部記憶装置に格納する。
【0031】
業務実績DB11、水道施設DB12、業務手順DB13、通信I/F14、データ取得部15、業務指示出力部16、及び業務手順再構築部17については、上述の実施例1と同様であるため、以下では業務実績入力要求部19について説明する。
業務実績入力要求部19は、監視制御装置5が関与しない情報を対象としてユーザー(運転員)の行動を記録させることを促し、得られた情報を用いて、上述の実施例1よりさらに精緻な業務手順を構築する。これは、維持管理支援端末6の表示装置の画面上に適切なタイミングで表示することで実現される。
【0032】
図8は、図6に示す維持管理支援サーバ4aを構成する業務実績入力要求部19の処理フロー図である。図8に示すように、ステップS201では、業務実績入力要求部19は、監視制御装置5から操作情報を、ネットワーク7、通信I/F14、及び内部バス18を介して取得する。ここで、操作情報とは、ユーザー(運転員)が監視制御装置5に対して行った操作全般であり、機器の運転操作、設定値の変更、データの閲覧、アラートの警報(音)解除などである。また、アラート情報(警報情報)としては、機器の故障、水質や流量、水道施設3の運転状態の管理基準値からの逸脱などが該当する。
【0033】
次に、ステップS202では、業務実績入力要求部19は、内部バス18を介して業務手順DB13にアクセスし、ステップS201にて監視制御装置5から取得した操作情報が業務手順DB13に格納済みの業務の条件を満足する否かを判定する。判定の結果、業務の条件を満足しない場合には、ステップS201に戻り処理を繰り返す。一方、判定の結果、業務の条件を満足する場合、さらに2つの判定条件に分岐する。
【0034】
ステップS203では、業務実績入力要求部19は、監視制御装置5で判定可能な操作の直後、または、業務手順DB13に格納される標準業務には記載されており、監視制御装置5が関与しない作業があるか否かを判定する。例えば、監視制御装置5で判定可能な操作とは、監視制御装置5で原水濁度を確認する操作であり、監視制御装置5が関与しない作業とは、所定の池における濁度の手分析やユーザー(運転員)の目視によるフロック形成状態の良否の判定作業等である。判定の結果、該当しない場合には、ステップS201へ戻り処理を繰り返す。一方、判定の結果、該当する場合はステップS204へ進む。
ステップS204では、業務実績入力要求部19は、現状の手順にない作業を実施したかどうかの確認要求(入力要求)を、通信I/F14及びネットワーク7を介して、維持管理支援端末6の表示装置に表示する。ここで、維持管理支援端末6の表示装置の表示形態について説明する。図9に、維持管理支援端末6の表示装置の画面表示例を示す。図9に示すように、維持管理支援端末6の表示装置の表示画面40は、施設一覧を表示する第1表示領域41、及び新たな業務を入力または選択可能とする第2表示領域42から構成される。図9に示すように、第2表示領域42に表示される「新たな業務(確認作業等)を登録しますか?」とのメッセージ表示領域の下側の入力領域に、ユーザー(運転員)により新たな業務内容が入力され「業務登録」ボタンにより登録されると、当該新たな業務内容がネットワーク7及び通信I/F14を介して業務手順DB13に格納される。図8に戻り、上述のステップS203に示した判定基準に代えて、所定の時間間隔でステップS204を実行する構成としても良い。
【0035】
一方、ステップS205の分岐では、業務実績入力要求部19は、次の業務(操作)では監視制御装置5が関与しないものである場合、業務手順DB13に格納される業務所要時間(例えば登録値の中央値)と、実際の業務における経過時間(直前の業務(操作)が終了してからの経過時間)とを比較する。比較の結果、経過時間が業務所要時間(例えば登録値の中央値)よりも短い場合はステップS201へ戻り処理を繰り返す。一方、比較の結果、経過時間が業務所要時間(例えば登録値の中央値)よりも長い場合はステップS206へ進む。
ステップS206では、業務実績入力要求部19は、作業記録要求を、通信I/F14及びネットワーク7を介して、維持管理支援端末6の表示装置に表示する。ここで、維持管理支援端末6の表示装置の表示形態について説明する。図10に、維持管理支援端末6の表示装置の画面表示例を示す。図10に示すように、維持管理支援端末6の表示装置の表示画面40は、施設一覧を表示する第1表示領域41、及び作業記録の実施の有無を登録可能とする第2表示領域42から構成される。図10に示すように、第2表示領域42に、例えば、「業務2に関する作業記録は実施済みですか?」とのメッセージが表示され、ユーザー(運転員)により「実施済み」ボタンが指定されると、処理を終了する。
なお、本実施例では、ステップS205における判定基準として経過時間を用いたが、これに代えて、監視制御装置5と関連しない記録(入力)操作や、画像認識によるユーザー(運転員)の動作の検出、或は音声認識による検出を用いることもできる。
【0036】
本実施例において、業務実績入力要求部19により上述のステップS204又はステップS206により、業務手順DB13が更新され、上述の実施例1において図4に示したステップS102にて参照される業務手順DB13の業務の条件に反映される。
なお、本実施例では、水道施設3を監視制御対象とする場合を主として説明したが、上述の維持管理支援サーバ4を構成する、業務実績DB11、水道施設DB12、及び業務手順DB13のそれぞれに、水道施設毎に識別可能に所定の記憶領域に格納する。これは、水道施設毎に設置される機器及び設備の規模など異なるため、それぞれの水道施設に対応する情報を格納する構成としている。
【0037】
また、本実施例では、上述の支援情報を維持管理支援端末6の表示装置の画面上に表示する例を説明したが、これに限られるものでは無い。例えば、上述の支援情報をユーザー(運転員)が所持する携帯端末、例えば、携帯電話、電子タブレット等の画面上に表示する構成としても良い。なおこの場合において、維持管理支援端末6の表示装置の画面上及びユーザー(運転員)が所持する携帯端末の画面上の双方に表示しても良い。
【0038】
以上の通り、本実施例によれば、実施例1の効果に加え、運転管理上重要な作業のうち、操作履歴に残らない作業に関する記録をユーザー(運転員)に促すことで、より精緻な業務ノウハウをマニュアルに反映し、水道施設の維持管理レベルを向上させることが可能となる。
【0039】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0040】
1,1a・・・水処理システム
2,2a・・・水道の維持管理支援システム
3・・・水道施設
3a・・・他の水道施設
4,4a・・・維持管理支援サーバ
5・・・監視制御装置
6・・・維持管理支援端末
7・・・ネットワーク
11・・・業務実績DB(データベース)
12・・・水道施設DB(データベース)
13・・・業務手順DB(データベース)
14・・・通信I/F
15・・・データ取得部
16・・・業務指示出力部
17・・・業務手順再構築部
18・・・内部バス
19・・・業務実績入力要求部
31・・・取水施設
32・・・浄水・汚泥処理施設
33・・・送配水施設
34・・・管網施設
40・・・表示画面
41・・・第1表示領域
42・・・第2表示領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10