(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のノズルは、多数の吐出口を有し、多数の液滴を吐出する。各吐出口は、数μm〜数十μmの直径を有する微細孔である。各分岐流路に対応する多数の吐出口のうち互いに隣り合う吐出口の中心間の距離は、数百umである。このため、各吐出口から吐出される液滴の径は、数十μmであり、その吐出速度は、10m/s〜60m/sの高速となる。液滴同士の最短距離は、数百μmとなり、多数の液滴が吐出された空間における液滴の密度は高くなる。ノズルの故障等の不具合によって、多数の液滴の分布等が変化すると、多数の液滴が基板に与える衝撃力(洗浄力)が所望の状態からずれて、基板に形成された微細構造物がダメージを受けることがある。
【0005】
しかしながら、多数の液滴が吐出され、吐出される各液滴は、微細で、高速であるため、当該ノズルを備える基板処理装置が、使用現場にインストールされた後は、基板が多数の液滴から受ける衝撃力を計測することが困難であるといった問題がある。
【0006】
本発明は、こうした問題を解決するためになされたもので、基板の主面へ吐出された多数の液滴が基板に与える衝撃力を容易に測定できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、第1の態様に係る衝撃力測定装置は、多数の液滴を吐出可能なノズルが、水平に保持された基板の主面へと吐出した液滴が当該基板に与える衝撃力を測定する衝撃力測定装置であって、前記ノズルが多数の箇所に向けて吐出した多数の液滴を受ける液受部と、前記液受部が前記多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定する測定部と、を備える。
前記液受部は、前記多数の液滴の吐出方向に対して斜めに傾斜する扁平な傾斜面を含み、前記傾斜面によって前記多数の液滴を受ける。
【0008】
第2の態様に係る衝撃力測定装置は、
多数の液滴を吐出可能なノズルが、水平に保持された基板の主面へと吐出した液滴が当該基板に与える衝撃力を測定する衝撃力測定装置であって、前記ノズルが多数の箇所に向けて吐出した多数の液滴を受ける液受部と、前記液受部が前記多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定する測定部と、を備える。第2の態様に係る衝撃力測定装置は、前記衝撃力の総和と前記多数の液滴の平均速度との対応関係を示す対応情報に基づいて、前記測定部により測定された前記衝撃力の総和から前記多数の液滴の平均速度を演算する演算部、を更に備える。
【0009】
第3の態様に係る衝撃力測定装置は、第2の態様に係る衝撃力測定装置であって、前記演算部は、前記多数の液滴の平均速度の時間的変化を演算する。
【0010】
第4の態様に係る衝撃力測定装置は、第2または第3の態様に係る衝撃力測定装置であって、前記対応情報が、前記ノズルの吐出穴径ごと、または前記多数の液滴の液の種類ごとに異なる。
【0011】
第5の態様に係る衝撃力測定装置は、第
2から第4の何れか1つの態様に係る衝撃力測定装置であって、前記測定部が、平面視において複数配置されており、当該複数の測定部のそれぞれが、前記衝撃力の総和を測定し、当該衝撃力測定装置は、前記複数の測定部のそれぞれが受ける前記衝撃力の総和の水平分布を求める演算部をさらに備える。
【0012】
第6の態様に係る衝撃力測定装置は、第
2から第5の何れか1つの態様に係る衝撃力測定装置であって、前記測定部は、前記液受部の下部に隣接する圧電素子である。
【0013】
第7の態様に係る衝撃力測定装置は、第
2から第6の何れか1つの態様に係る衝撃力測定装置であって、前記液受部は、前記多数の液滴の吐出方向に対して斜めに傾斜する扁平な傾斜面を含み、前記傾斜面によって前記多数の液滴を受ける。
【0014】
第8の態様に係る衝撃力測定装置は、
第1の態様または第7の態様に係る衝撃力測定装置であって、前記傾斜面の傾斜角度は、水平面に対して5度〜45度である。
【0015】
第9の態様に係る衝撃力測定装置は、第
2から第6の何れか1つの態様に係る衝撃力測定装置であって、前記液受部は、前記多数の液滴が入る入口開口が一端に形成された筒状の周壁部と、前記入口開口から前記周壁部に囲まれた空間に入った前記多数の液滴を受けるとともに、受けた多数の液滴からなる液体を前記空間に貯留可能なように前記周壁部の他端の開口を塞ぐ底壁部と、を含む容器を備え、前記周壁部には、前記空間内の液体のうち前記底壁部から所定の高さを超える液体を前記容器から排出可能な排出口が設けられている。
【0016】
第10の態様に係る衝撃力測定装置は、第1から第8の何れか1つの態様に係る衝撃力測定装置であって、所定の基板が薄肉化された基部と、一主面が、前記基部の一主面に対向して取り付けられているとともに、貫通孔が設けられている薄板状のスペーサーと、をさらに備え、前記測定部は、前記基部の前記一主面の一部と、前記スペーサーの前記貫通孔の内周壁とによって囲まれる凹み部に設けられた歪みゲージと、前記凹み部に設けられ、前記歪みゲージの出力を記憶可能なメモリと、を含み、当該衝撃力測定装置は、前記基部の周縁部に設けられ、前記メモリに記憶された前記歪みゲージの出力を外部に出力可能な端子をさらに備え、前記液受部は、前記基板が薄肉化された薄板であるとともに、前記歪みゲージと接触して前記凹み部を塞ぎ、前記基部と重なり合うように前記スペーサーの他主面に接合されている。
第11の態様に係る衝撃力測定装置は、多数の液滴を吐出可能なノズルが、水平に保持された基板の主面へと吐出した液滴が当該基板に与える衝撃力を測定する衝撃力測定装置であって、前記ノズルが多数の箇所に向けて吐出した多数の液滴を受ける液受部と、前記液受部が前記多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定する測定部と、を備える。前記液受部は、前記多数の液滴が入る入口開口が一端に形成された筒状の周壁部と、前記入口開口から前記周壁部に囲まれた空間に入った前記多数の液滴を受けるとともに、受けた多数の液滴からなる液体を前記空間に貯留可能なように前記周壁部の他端の開口を塞ぐ底壁部と、を含む容器を備え、前記周壁部には、前記空間内の液体のうち前記底壁部から所定の高さを超える液体を前記容器から排出可能な排出口が設けられている。
第12の態様に係る衝撃力測定装置は、多数の液滴を吐出可能なノズルが、水平に保持された基板の主面へと吐出した液滴が当該基板に与える衝撃力を測定する衝撃力測定装置であって、前記ノズルが多数の箇所に向けて吐出した多数の液滴を受ける液受部と、前記液受部が前記多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定する測定部と、を備える。第12の態様に係る衝撃力測定装置は、所定の基板が薄肉化された基部と、一主面が、前記基部の一主面に対向して取り付けられているとともに、貫通孔が設けられている薄板状のスペーサーと、をさらに備え、前記測定部は、前記基部の前記一主面の一部と、前記スペーサーの前記貫通孔の内周壁とによって囲まれる凹み部に設けられた歪みゲージと、前記凹み部に設けられ、前記歪みゲージの出力を記憶可能なメモリと、を含み、当該衝撃力測定装置は、前記基部の周縁部に設けられ、前記メモリに記憶された前記歪みゲージの出力を外部に出力可能な端子をさらに備え、前記液受部は、前記基板が薄肉化された薄板であるとともに、前記歪みゲージと接触して前記凹み部を塞ぎ、前記基部と重なり合うように前記スペーサーの他主面に接合されている。
【0017】
第1
3の態様に係る基板処理装置は、第1から第1
2の何れか1つの態様に係る衝撃力測定装置と、基板を略水平姿勢で保持しつつ回転可能な回転保持機構と、対象物の多数の箇所に当たるように処理液の多数の液滴を吐出可能なノズルと、前記基板の主面における多数の箇所に当たるように前記ノズルが多数の液滴を吐出可能な第1位置と、前記衝撃力測定装置の前記液受部における多数の箇所に当たるように前記ノズルが多数の液滴を吐出可能な第2位置との間で前記ノズルを移動させるノズル移動機構と、を備える。
【0018】
第1
4の態様に係る衝撃力測定方法は、多数の液滴を吐出可能なノズルが、水平に保持された基板の主面へと吐出した液滴が当該基板に与える衝撃力を測定する衝撃力測定方法であって、前記ノズルが多数の箇所に向けて吐出した多数の液滴を受けることができる液受部によって多数の液滴を受ける液受ステップと、前記液受部が前記多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定する測定ステップと、を備える。
前記液受ステップは、前記多数の液滴の吐出方向に対して斜めに傾斜する扁平な傾斜面によって前記多数の液滴を受けるステップである。
【0019】
第1
5の態様に係る衝撃力測定方法は、
多数の液滴を吐出可能なノズルが、水平に保持された基板の主面へと吐出した液滴が当該基板に与える衝撃力を測定する衝撃力測定方法であって、前記ノズルが多数の箇所に向けて吐出した多数の液滴を受けることができる液受部によって多数の液滴を受ける液受ステップと、前記液受部が前記多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定する測定ステップと、を備える。第15の態様に係る衝撃力測定方法は、前記衝撃力の総和と前記多数の液滴の平均速度との対応関係を示す対応情報に基づき、前記測定ステップにおいて測定された前記衝撃力の総和から前記多数の液滴の平均速度を演算する演算ステップ、を更に備える。
【0020】
第1
6の態様に係る衝撃力測定方法は、第1
5の態様に係る衝撃力測定方法であって、前記演算ステップは、前記多数の液滴の平均速度の時間的変化を演算するステップである。
【0021】
第1
7の態様に係る衝撃力測定方法は、第1
5または第1
6の態様に係る衝撃力測定方法であって、前記対応情報が、前記ノズルの吐出穴径ごと、または前記多数の液滴の液の種類ごとに異なる。
【0022】
第1
8の態様に係る衝撃力測定方法は、第1
5から第1
7の何れか1つの態様に係る衝撃力測定方法であって、前記液
受ステップが、平面視において前記液受部に定められる複数の領域の各領域における多数の箇所に向けて吐出される多数の液滴を各領域によって受けるステップであり、前記測定ステップが、当該液受部の前記各領域が受ける衝撃力の総和を測定するステップであり、当該衝撃力測定方法は、前記各領域が受ける前記衝撃力の総和の水平分布を求める演算ステップをさらに備える。
【0023】
第1
9の態様に係る衝撃力測定方法は、第1
5から第1
8の何れか1つの態様に係る衝撃力測定方法であって、前記測定ステップは前記液受部の下部に隣接する圧電素子によって、前記衝撃力の総和を測定するステップである。
【0024】
第
20の態様に係る衝撃力測定方法は、第1
5から第1
9の何れか1つの態様に係る衝撃力測定方法であって、前記液受ステップは、前記多数の液滴の吐出方向に対して斜めに傾斜する扁平な傾斜面によって前記多数の液滴を受けるステップである。
【0025】
第
21の態様に係る衝撃力測定方法は、
第14の態様または第
20の態様に係る衝撃力測定方法であって、前記傾斜面の傾斜角度は、水平面に対して5度〜45度である。
【0026】
第2
2の態様に係る衝撃力測定方法は、第1
5から第1
9の何れか1つの態様に係る衝撃力測定方法であって、前記液受部は、前記多数の液滴が入る入口開口が一端に形成された筒状の周壁部と、前記入口開口から前記周壁部に囲まれた空間に入った前記多数の液滴を受けるとともに、受けた前記多数の液滴からなる液体を前記空間に貯留可能なように前記周壁部の他端の開口を塞ぐ底壁部と、を含む容器を備え、前記周壁部には、前記空間内の液体のうち前記底壁部から所定の高さを超える液体を前記容器から排出可能な排出口が設けられており、前記液受ステップは、前記入口開口から前記周壁部に囲まれた前記空間に入った前記多数の液滴からなる液体のうち前記底壁部から所定の高さを超える液体を前記排出口から前記容器外に排出しつつ、残りの液体を前記容器に貯留するステップである。
第23の態様に係る衝撃力測定方法は、多数の液滴を吐出可能なノズルが、水平に保持された基板の主面へと吐出した液滴が当該基板に与える衝撃力を測定する衝撃力測定方法であって、前記ノズルが多数の箇所に向けて吐出した多数の液滴を受けることができる液受部によって多数の液滴を受ける液受ステップと、前記液受部が前記多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定する測定ステップと、を備える。前記液受部は、前記多数の液滴が入る入口開口が一端に形成された筒状の周壁部と、前記入口開口から前記周壁部に囲まれた空間に入った前記多数の液滴を受けるとともに、受けた前記多数の液滴からなる液体を前記空間に貯留可能なように前記周壁部の他端の開口を塞ぐ底壁部と、を含む容器を備え、前記周壁部には、前記空間内の液体のうち前記底壁部から所定の高さを超える液体を前記容器から排出可能な排出口が設けられており、前記液受ステップは、前記入口開口から前記周壁部に囲まれた前記空間に入った前記多数の液滴からなる液体のうち前記底壁部から所定の高さを超える液体を前記排出口から前記容器外に排出しつつ、残りの液体を前記容器に貯留するステップである。
【0027】
第2
4の態様に係る衝撃力測定方法は、第1
4から第2
3の何れか1つの態様に係る衝撃力測定方法であって、前記測定ステップは、前記多数の液滴から前記液受部が受ける前記衝撃力の総和を測定部によって測定するステップであり、前記液受部は、所定の基板が薄肉化された薄板であり、前記液受ステップは、前記薄板の一主面によって前記多数の液滴を受けるステップであり、前記測定ステップは、前記薄板の他主面に取り付けられた歪みゲージによって前記薄板が前記多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定するステップである。
【0028】
第2
5の態様に係る基板処理方法は、第1
4から第2
4の何れか1つの態様に係る衝撃力測定方法を備える基板処理方法であって、基板を略水平姿勢で保持しつつ回転させる回転ステップと、対象物の多数の箇所に当たるように処理液の多数の液滴を吐出可能なノズルによって、前記基板の主面における多数の箇所に前記多数の液滴を吐出する吐出ステップと、を備え、前記液受ステップは、前記ノズルから吐出される前記多数の液滴を前記液受部によって受けるステップである。
【発明の効果】
【0029】
第1の態様に係る発明
、第2の態様に係る発明、第11の態様に係る発明、第12の態様に係る発明によれば、衝撃力測定装置は、ノズルが多数の箇所に向けて吐出した多数の液滴を受ける液受部と、液受部が多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定する測定部と、を備える。従って、各液滴が液受部に当たる際の各衝撃力をまとめて測定できるので、多数の液滴が基板に与える衝撃力を容易に測定できる。
【0030】
第2の態様に係る発明によれば、演算部は、衝撃力の総和と多数の液滴の平均速度との対応関係を示す対応情報に基づいて、測定部により測定された衝撃力の総和から多数の液滴の平均速度を演算することができる。
【0031】
第3の態様に係る発明によれば、演算部は、多数の液滴の平均速度の時間的変化を演算することができる。
【0032】
第4の態様に係る発明によれば、対応情報が、ノズルの吐出穴径ごと、または多数の液滴の液の種類ごとに異なるので、多数の液滴の平均速度を、ノズルの吐出穴径、または多数の液滴の液の種類に応じて、より正確に演算することができる。
【0033】
第5の態様に係る発明によれば、演算部が、複数の測定部のそれぞれが受ける衝撃力の総和の水平分布を求めることができる。
【0034】
第1の態様に係る発明、第7の態様に係る発明によれば、液受部は、多数の液滴の吐出方向に対して斜めに傾斜する扁平な傾斜面を含み、傾斜面によって多数の液滴を受ける。これにより、吐出された多数の液滴が傾斜面の上に形成する液膜の厚みの変動を抑制できる。従って、液膜の厚みの変動によって衝撃力の総和の測定結果が変動することを抑制できる。
【0035】
第
11の態様に係る発明によれば、液受部は、多数の液滴が入る入口開口が一端に形成された筒状の周壁部と、周壁部の他端の開口を塞ぐ底壁部と、を含む容器を備える。周壁部には、周壁部に囲まれた空間内の液体のうち底壁部から所定の高さを超える液体を容器から排出可能な排出口が設けられている。これにより、容器に溜まる液体の量を一定に保ちつつ、容器に溜まった当該液体を介して容器が多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定することができる。従って、容器に溜まる処理液の量の変動によって、衝撃力の総和の測定結果が変動することを抑制できる。
【0036】
第1
2の態様に係る発明によれば、衝撃力測定装置の液受部と測定部とを含む部分の形状および大きさを、所定の基板の形状および大きさと同じにすることができる。従って、衝撃力測定装置の液受部が多数の液滴から衝撃力を受けている状態を、所定の基板が多数の液滴から衝撃力を受けている状態に近づけて、液受部が多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定できる。
【0037】
第1
3の態様に係る発明によれば、基板処理装置は、基板の主面における多数の箇所に当たるようにノズルが多数の液滴を吐出可能な第1位置と、衝撃力測定装置の液受部における多数の箇所に当たるようにノズルが多数の液滴を吐出可能な第2位置との間でノズルを移動させることができる。従って、ノズルを基板処理装置から取り外すことなく、基板が多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定できる。
【0038】
第1
4の態様に係る発明
、第15の態様に係る発明、第23の態様に係る発明によれば、衝撃力測定方法は、ノズルが多数の箇所に向けて吐出した多数の液滴を受けることができる液受部によって多数の液滴を受ける液受ステップと、液受部が多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定する測定ステップと、を備える。従って、各液滴が液受部に当たる際の各衝撃力をまとめて測定できるので、多数の液滴が基板に与える衝撃力を容易に測定できる。
【0039】
第2
5の態様に係る発明によれば、基板処理方法は、基板の主面における多数の箇所にノズルから多数の液滴を吐出する吐出ステップと、ノズルから吐出される多数の液滴を液受部によって受ける液受ステップとを備える。従って、ノズルを基板処理装置から取り外すことなく、基板が多数の液滴から受ける衝撃力の総和を測定できる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照しながら、実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。また、以下に参照する各図では、理解容易のため、各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。上下方向は鉛直方向であり、スピンチャックに対して基板側が上である。
【0042】
<1.基板処理装置1の全体構成>
基板処理装置1の構成について、
図1、
図2を参照しながら説明する。
図1、
図2は、実施形態に係る基板処理装置1の構成を説明するための図である。基板処理装置1は、実施形態に係る衝撃力測定装置100を備えている。
図1、
図2は、基板処理装置1の側面模式図、平面模式図である。
図2では、基板処理装置1の構成要素のうち制御部130、飛散防止部4等の一部の構成要素の記載は省略されている。
【0043】
図1、
図2では、ノズル51が退避位置(「第2位置」)に配置された状態で、衝撃力測定装置100の本体部70の上方からノズル51が本体部70に多数の液滴L2を吐出している状態が示されている。また、
図1、
図2では、ノズル51が基板9の上面中央部の上方の位置に配置された状態で、スピンチャック21によって回転軸a1周りに所定の回転方向(矢印AR1の方向)に回転している基板9の主面に多数の液滴L2を吐出している状態が仮想線で示されている。当該ノズル51は、処理液L1の多数の液滴L2を基板9の主面である上面に吐出している。ノズル51が基板9に対して液滴L2を吐出する際には、通常、ノズル移動機構3が、基板9の上面中央部の上方の位置と、基板9の周縁部の上方の位置との間で、経路T1に沿ってノズル51を走査する。基板9の主面は、回転保持機構2に保持された基板9の上面である場合に限られず、下面であってもよい。基板9の主面が下面である場合には、ノズル移動機構3が、基板9の下面中央部の下方の位置と、基板9の周縁部の下方の位置との間で、所定の経路に沿ってノズル51を走査し、ノズル51は、上向きに液滴L2を吐出する。
【0044】
基板9の表面形状は略円形である。基板9の基板処理装置1への搬入搬出は、ノズル51がノズル移動機構3によって待避位置に配置された状態で、ロボット等により行われる。基板処理装置1に搬入された基板9は、スピンチャック21により着脱自在に保持される。
【0045】
基板処理装置1は、回転保持機構2、ノズル移動機構3、飛散防止部4、処理部5、衝撃力測定装置100および制御部130を備える。これら各部2〜5は、制御部130と電気的に接続されており、制御部130からの指示に応じて動作する。衝撃力測定装置100は、本体部70を含む。本体部70は、処理部5のノズル51が本体部70に向けて多数の液滴L2を吐出する際に、多数の液滴L2から受ける衝撃力の総和を測定する。本体部70は、制御部130と電気的に接続されており、本体部70が測定した衝撃力は、制御部130に供給されて、制御部130によって処理される。制御部130は、衝撃力測定装置100の演算部としても動作する。
【0046】
<2.基板処理装置1の各部の構成>
<回転保持機構2>
回転保持機構2は、基板9を、その一方の主面を上方に向けた状態で、略水平姿勢に保持しつつ回転可能な機構である。回転保持機構2は、基板9を、主面の中心c1を通る鉛直な回転軸a1を中心に回転させる。回転保持機構2は、ノズル51が処理液L1を吐出しているときは、例えば、200rpm〜400rpmの回転速度で基板9を回転させる。
【0047】
回転保持機構2は、スピンチャック(「保持部材」、「基板保持部」)21を備える。スピンチャック21は、基板9より若干大きい円板状の部材であるスピンベース21aと、スピンベース21aの周縁部付記に設けられた複数のチャックピン21bとを備える。チャックピン21bは、円形の基板9を確実に保持するために3個以上設けてあればよく、スピンベース21aの周縁部に沿って等角度間隔で配置されている。各チャックピン21bは、基板9の周縁部を下方から支持する基板支持部と、基板支持部に支持された周縁部をその側方から基板9の中心側に押圧して基板9を保持する周縁保持部とを備えている。各チャックピン21bは、周縁保持部が基板9の周縁部を押圧する押圧状態と、周縁保持部が周縁部から離れる解放状態との間を切り替え可能に構成されている。
【0048】
スピンベース21aに対して基板9が受渡しされる際には、基板処理装置1は、複数個のチャックピン21bを解放状態とし、基板9に対して処理液による処理を行う際には、複数個のチャックピン21bを押圧状態とする。押圧状態とすることによって、複数個のチャックピン21bは、基板9の周縁部を把持して基板9をスピンベース21aから所定間隔を隔てて略水平姿勢に保持することができる。これにより、基板9はその表面(パターン形成面)を上方に向け、下面を下方に向けた状態で上面、下面の中心を回転軸a1が通るように支持される。チャックピン21bの動作は、制御部130によって制御される。
【0049】
スピンベース21aは、その上面が略水平となり、その中心軸が回転軸a1に一致するように設けられている。スピンベース21aの下面には、円筒状の回転軸部22が連結されている。回転軸部22は、その軸線を鉛直方向に沿わすような姿勢で配置される。回転軸部22の軸線は、回転軸a1と一致する。また、回転軸部22には、回転駆動部(例えば、サーボモータ)23が接続される。回転駆動部23は、回転軸部22をその軸線まわりに回転駆動する。従って、スピンチャック21は、回転軸部22とともに回転軸a1を中心に回転可能である。回転駆動部23と回転軸部22とは、スピンチャック21を、回転軸a1を中心に回転させる回転機構231である。回転保持機構2は、回転機構231も備えている。回転軸部22および回転駆動部23は、筒状のケーシング24内に収容されている。
【0050】
この構成において、スピンチャック21が基板9を吸着保持した状態で、回転駆動部23が回転軸部22を回転すると、スピンチャック21が鉛直方向に沿った軸線周りで回転される。これによって、スピンチャック21上に保持された基板9が、その面内の中心c1を通る鉛直な回転軸a1を中心に矢印AR1方向に回転される。スピンチャック21として、基板9の下面を吸着保持する真空チャック式のスピンチャックが採用されてもよい。
【0051】
<ノズル移動機構3>
ノズル移動機構3は、回転保持機構2による基板9の保持位置よりも上方で略水平に延在するアーム35と、アーム35を移動させるアーム移動機構30とを備える。ノズル移動機構3は、基板9の主面における多数の箇所に当たるようにノズル51が多数の液滴L2を吐出可能な基板9の上面中央部の上方の位置(「第1位置」)と、衝撃力測定装置100の液受部71における多数の箇所に当たるようにノズル51が多数の液滴L2を吐出可能な退避位置(「第2位置」)との間でノズル51を移動させる。基板9の主面が基板9の下面である場合には、第1位置は、基板9の下面中央部の下方の位置となる。
【0052】
アーム移動機構30は、アーム35の一端を支持して鉛直方向に延設されているアーム支持軸33と、アーム支持軸33に結合された昇降駆動機構31および回転駆動機構32とを備えている。アーム35の他端(先端)からロッド36が下方に向けて延設されている。ロッド36の先端には、ノズル51が取り付けられている。アーム移動機構30は、アーム35を移動することによって、アーム35と一体的にノズル51を移動させる。
【0053】
昇降駆動機構31は、アーム35を昇降可能に構成されている。昇降駆動機構31の駆動力をアーム支持軸33に伝達してアーム支持軸33を昇降させることにより、アーム35とノズル51とを一体的に昇降させる。昇降駆動機構31は、例えば、サーボモーターと、その回転を直線運動に変換してアーム支持軸33に伝達するボールネジなどを備えて構成される。
【0054】
回転駆動機構32は、その駆動力をアーム支持軸33に伝達してアーム支持軸33を、回転軸線a3を中心に回転させる。回転軸線a3は、アーム支持軸33に沿って上下方向に延在する。アーム35は、回転軸線a3を中心に水平面に沿って回転可能に構成されている。アーム35の回転により、ノズル51は、回転軸線a3を中心にアーム35と一体的に回転する。
図2は、ノズル51が、基板9の上面中央部の上方の位置から基板9の回転範囲外に設定されたノズル51の待機位置の上方を通る略円弧状の経路T1に沿って移動させられる例を示している。衝撃力測定装置100の本体部70は、基板9の回転範囲外に設けられている。回転駆動機構32は、例えば、サーボモーターと、その回転をアーム支持軸33に伝達するギア機構などを備えて構成される。
【0055】
ノズル移動機構3は、ノズル51が基板9の上面の多数の箇所に当たるように処理液L1の多数の液滴L2を吐出している状態において、ノズル51を水平面内で移動させることができる。これにより、ノズル51による基板9の上面の処理が行われる。
【0056】
このように、ノズル移動機構3は、ノズル51を昇降させることができるとともに、水平面内で経路T1に沿って移動させることもできる。
【0057】
<飛散防止部4>
飛散防止部4は、基板9に供給された処理液L1の飛散を抑制するためのスプラッシュガード(「カップ」)41を備えている。スプラッシュガード41は、上端部分が上方に向かって縮径している筒状の部材である。スプラッシュガード41の上端の径は、基板9およびケーシング24の径よりも若干大きい。スプラッシュガード41は、図示しない昇降機構によって上端が基板9よりも上方に位置する上方位置と、上端が基板9よりも下方の退避位置との間で昇降される。ノズル51が基板9の上面に向けて処理液L1を吐出するときは、スプラッシュガード41は、上方位置に配置されて、基板9の周縁から排出される処理液L1を内壁面によって受け止める。受け止められた処理液L1は、スプラッシュガード41の下方に設けられた図示しないドレイン配管を介して定められた容器等に回収される。
【0058】
<処理部5>
処理部5は、スピンチャック21上に保持された基板9に対する処理を行う。具体的には、処理部5は、スピンチャック21上に保持された基板9の上面の多数の箇所に当たるように、ノズル51から処理液L1の多数の液滴L2を吐出する。処理部5は、ノズル51と、ノズル51に処理液L1を供給する処理液供給機構55と、電圧印加機構57を備えている。
【0059】
ノズル51は、処理液供給機構55から供給される処理液L1ノズル51の内部に導く流路52と、流路52に連通し、流路52に導入された処理液L1を多数の液滴として吐出するための多数の管状の吐出口53を含む。流路52は、処理液L1を供給する配管56によって処理液供給機構55と接続されている。各吐出口53は、鉛直方向に延在している。吐出口53の一端は、ノズル51の下端面に開口しており、他端は、流路52に連通している。
【0060】
処理液供給機構55は、ノズル51に処理液L1を供給する。処理液供給機構55は、具体的には、配管56に連通する処理液供給源(不図示)と、処理液供給源から配管56への処理液L1の流出を制御する開閉弁(不図示)とを含む。開閉弁の開閉は、制御部130により制御される。開閉弁が開くと処理液供給機構55から配管56に処理液L1が供給され、開閉弁が閉じると、処理液L1の供給が停止される。
【0061】
処理液L1として、例えば、えば、純水(deionized water:脱イオン水)炭酸水、水素水などの洗浄液が用いられる。処理液L1として、SPM、SC−1、DHF、SC−2などの薬液が用いられてもよい。
【0062】
ノズル51は、また、その内部に配置された圧電素子54を含んでいる。圧電素子54は、配線58を介して電圧印加機構57に接続されている。電圧印加機構57は、たとえば、インバータを含む機構である。電圧印加機構57は、交流電圧を圧電素子54に印加する。交流電圧が圧電素子54に印加されると、印加された交流電圧の周波数に対応する周波数で圧電素子54が振動する。制御部130は、電圧印加機構57を制御することにより、圧電素子54に印加される交流電圧の周波数を任意の周波数(たとえば、数百KHz〜数MHz)に変更することができる。
【0063】
処理液供給機構55がノズル51に処理液L1を供給している状態で、電圧印加機構57が圧電素子54に交流電圧を印加すると、圧電素子54が振動し、流路52を流れる処理液L1に圧電素子54の振動が付与される。各吐出口53から吐出される処理液L1は、この振動によって分断されて、液滴L2として各吐出口53から吐出される。これにより、ノズル51は、多数の吐出口53から粒径が均一な多数の液滴L2を均一な速度で同時に吐出できる。ノズル51は、基板9(「対象物」)の多数の箇所に当たるように多数の液滴L2を吐出可能である。
【0064】
基板処理装置1が、ノズル51による基板9の上面への多数の液滴L2の吐出と並行して、純水をカバーリンスとして基板9の上面に吐出するノズルをさらに備えてもよい。
【0065】
<衝撃力測定装置100>
衝撃力測定装置100は、本体部70を備える。本体部70は、液受部71と、測定部72とを備える。液受部71は、扁平な板状部材である。液受部71は、その多数の箇所に向けて吐出される多数の液滴L2を受ける。測定部72は、液受部71が多数の液滴L2から受ける衝撃力の総和を測定する。測定部72としては、例えば、歪みゲージ式ロードセルなどが採用される。液受部71が受けた衝撃力は、測定部72に伝達され、測定部72に歪みが発生する。測定部72は、当該歪みを電気信号に変換する。測定部72が測定した測定結果は、不図示の配線を介して制御部130のCPU11に供給される。測定部72として、液受部71の下部に隣接する圧電素子が採用されてもよい。
【0066】
図1に示される例では、液受部71と測定部72とは、取り付け部材73を介して、例えば、ネジ止め等によって、互いに取り付けられている。本体部70の測定部72が出力する測定結果を制御部130のCPU11が処理する場合には、衝撃力測定装置100は、制御部130を含む。
【0067】
制御部130のCPU11は、例えば、対応情報199に基づいて、測定部72により測定された衝撃力の総和から多数の液滴L2の平均速度を演算する。対応情報199は、衝撃力の総和と多数の液滴L2の平均速度との対応関係を示す情報である。対応情報199は、予め設定されて、記憶装置14に予め記憶されている。CPU11は、多数の液滴L2の平均速度を演算する際に、記憶装置14から対応情報199を読み出す。また、CPU11は、演算した平均速度をRAMなどに順次に記憶することによって、多数の液滴L2の平均速度の時間的変化を演算することもできる。ノズル51の吐出穴径ごと、または多数の液滴L2の液の種類ごとに異なった複数の対応情報199が記憶装置14に記憶されてもよい。また、測定部72が測定した衝撃力の総和と、多数の液滴L2の平均速度と、多数の液滴L2が与える平均の衝撃力との三者間の相互の対応関係を予め取得して対応情報199として記憶装置14に記憶しておき、CPU11が、測定部72が測定した衝撃力の総和から多数の液滴L2の平均速度を演算するのみならず、多数の液滴L2が与える平均の衝撃力を演算してもよい。
【0068】
液受部71は、多数の液滴L2の吐出方向に対して斜めに傾斜する扁平な傾斜面71aを含む。傾斜面71aの傾斜角度は、好ましくは、例えば、水平面に対して5度〜45度に設定される。衝撃力測定装置100は、傾斜面71aによって多数の液滴L2を受ける。なお、液受部71が水平姿勢で保持されて、液受部71が多数の液滴L2から受ける衝撃力の測定が行われてもよい。
【0069】
<制御部130>
基板処理装置1は、その各部の制御のために制御部130を備えている。制御部130のハードウエアとしての構成は、例えば、一般的なコンピュータと同様のものを採用できる。すなわち、制御部130は、例えば、各種演算処理を行うCPU(「演算部」)11、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM(不図示)、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM(不図示)、操作者の入力を受け付ける入力部(不図示)、および各種処理に対応したプログラムPGや、後述する対応情報199などを記憶しておく磁気ディスクなどの記憶装置14を不図示のバスラインに接続して構成されている。
【0070】
制御部130において、プログラムPGに記述された手順に従って主制御部としてのCPU11が演算処理を行うことにより、基板処理装置1の各部を制御若しくは、衝撃力測定装置100の本体部70の測定結果の処理を行う各種の機能部が実現される。
【0071】
回転保持機構2、ノズル移動機構3、飛散防止部4、処理部5などの基板処理装置1の各部は、制御部130の制御に従って動作を行う。
【0072】
<3.液滴L2の吐出速度と、衝撃力の測定結果>
図3は、ノズル51が吐出する液滴L2の吐出速度と、衝撃力測定装置100による衝撃力の測定結果との関係の一例をグラフ形式で示す図である。
図4は、
図3に示されるグラフの一部の拡大図である。
【0073】
図5は、多数の液滴L2の欠落の有無と、衝撃力測定装置100による衝撃力の測定結果との関係の一例をグラフ形式で示す図である。
【0074】
図6は、衝撃力測定装置100の液受部71を水平姿勢にしたときの、液滴L2の吐出速度と、衝撃力測定装置100による衝撃力の測定結果との関係の一例をグラフ形式で示す図である。
【0075】
図3(
図4)、
図6のグラフは、ノズル51が吐出する液滴L2の吐出速度を複数の速度に変更し、各速度において、多数の液滴L2から液受部71が受けた衝撃力の総和を測定部72によって測定した結果を示したものである。
【0076】
図3、
図4に示されるように、測定部72が傾斜面71aを備えて、液滴L2を傾斜面71aで受ける場合には、液受部71が各液滴L2から受ける衝撃力の総和と、液滴の吐出速度との関係は、吐出速度が増加すれば、衝撃力の総和も増加する関係となっている。また、
図4に示されるように、吐出速度が、僅か1m/s変化した場合であっても、その変化は、衝撃力の差として測定できている。なお、
図3、
図4のグラフを得るための測定実験を3回繰り返したところ、各実験において測定された衝撃力の測定精度は、0.5mN以下であった。
【0077】
また、
図5のグラフは、ノズル51の多数の吐出口53のうち一部の吐出口53が詰まったことにより、ノズル51が吐出する多数の液滴L2のうち一部が欠落した場合に、その欠落を測定される衝撃力の差として検出できるか否かを確認した結果を示している。当該測定時には、2〜3個の液滴L2が欠落したときと、欠落していないときとで測定結果の比較を行っている。
図5に示されるように、同時に吐出される多数の液滴のうち2〜3個の液滴が欠落した場合においても、衝撃力の差として検出できている。このことから、傾斜面71aが採用された場合には、傾斜面71a上に吐出された多数の液滴L2が形成する液膜の厚みが安定し、その結果、液滴L2の吐出速度の変化を衝撃力の変化として精度良く測定できていることが判る。
【0078】
図6のグラフは、上述のように、液受部71を水平姿勢にしたときの、液滴L2の吐出速度と、液受部71が受けた衝撃力の測定結果を示している。
図6に示されるように液滴L2の吐出速度が速い場合には、吐出速度の変化に対する、測定された衝撃力の変化が不安定となっている。これは、水性姿勢の液受部71上に、多数の液滴L2が形成する液膜の厚みが、吐出速度が高速になると、不安定になっていることの影響である。しかしながら、液受部71を水平姿勢にした場合においても、各液滴L2が液受部71に当たる際の各衝撃力をまとめて測定できるので、多数の液滴L2が液受部71に当たる際に液受部71が受ける衝撃力を容易に測定できている。従って、液受部71を水平姿勢にしたとしても、本発明の有用性を損なうものではない。
【0079】
<4.衝撃力測定装置100の他の構成例について>
図7は、衝撃力測定装置100の本体部70の他の構成例として、本体部80の構成例を説明するための側面模式図である。
図7は、本体部80の動作を説明するための図でもある。衝撃力測定装置100の本体部70に代えて、本体部80が採用されてもよい。
【0080】
本体部80は、液受部81と、測定部82とを備える。液受部81は、多数の液滴L2が入る入口開口81cが一端に形成された筒状の周壁部81aと、入口開口81cから周壁部81aに囲まれた空間(「収容空間」)89に入った多数の液滴L2を受けるとともに、受けた多数の液滴L2からなる液体を空間89に貯留可能なように周壁部81aの他端の開口を塞ぐ底壁部81bと、を含む容器を備える。周壁部81aには、当該空間89内の液体のうち底壁部81bから所定の高さを超える液体を容器から排出可能な排出口81dが設けられている。測定部82は、例えば、液受部81の下部に隣接する圧電素子である。
【0081】
液受部81の空間89には、配管85を介して純水供給源84が連通されている。配管85の経路途中には、開閉弁86が設けられている。開閉弁86の開閉動作は、制御部130によって制御される。開閉弁86が開かれると、純水供給源84から純水が空間89に供給される。開閉弁86が閉じられると、空間89への純水の供給が停止される。
【0082】
また、液受部81の周壁部81aのうち、入口開口81cと底壁部81bとの間の部分には、ドレイン管87が接続されて空間89と連通している。ドレイン管87の周壁部81aにおける開口は、排出口81dである。ドレイン管87の経路途中には、開閉弁88が設けられている。開閉弁88の開閉動作は、制御部130によって制御される。
【0083】
開閉弁88が開かれると、空間89に溜まった多数の液滴L2からなる液体のうち排出口81dの高さ、すなわち底壁部81bから所定の高さを超える液体は、排出口81dからドレイン管87を通って外部に排出される。開閉弁88が閉じられると、空間89内に溜まった液体は、入口開口81cから液受部81の外部に溢れ出ない限り、空間89に貯留される。
【0084】
以下に
図7を参照して、衝撃力測定装置100の本体部80の動作を説明する。本体部80は、好ましくは、ノズル51の退避位置に設置される。開閉弁88は閉じられて、液受部81の空間89には、ドレイン管87の排出口81dよりも高い位置まで、純水供給源84から予め供給された純水が貯留されている。開閉弁86も閉じられている。
【0085】
ノズル51が退避位置に移動された場合において、ノズル51が吐出する多数の液滴L2によって液受部81が受ける衝撃力の測定が行われない場合には、ノズル51の先端部は、空間89内の純水に浸漬される(
図7のステップS201)。
【0086】
この状態から、液受部81が受ける衝撃力の測定が行われる場合には、開閉弁88が開かれる。これにより、排出口81dを越えて空間89に貯留されている純水は、ドレイン管87から排出される。この結果、貯留された純水の水位は、排出口81dの高さまで低下する(ステップS202)。
【0087】
次に、ノズル51が処理液L1の多数の液滴L2の吐出を開始する。開閉弁88が開かれているので、ノズル51が多数の液滴L2を吐出している間も、空間89内の液体の高さは、排出口81dの高さに維持される。当該液体の表面に多数の液滴L2が当たると、液面が受けた衝撃が振動となって底壁部81bに到達し、測定部82によって振動の大きさ(衝撃力の大きさ)に応じた電気信号に変換される(ステップS203)。当該電気信号は、制御部130のCPU11に供給され、CPU11による処理に用いられる。
【0088】
衝撃力の測定中においても、空間89内の液面の高さは排出口81dの高さに維持されるので、液面の高さの変動によって、測定部82による衝撃力の測定結果が変動することを抑制できる。測定部82として、圧電素子に代えて、例えば、マイクロホンが採用されてもよい。この場合には、マイクロホンは、空間89内の液面に対向する位置に保持され、マイクロホンの出力が制御部130に供給される。
【0089】
また、空間89内に貯留される液体の高さを一定に維持可能な他の手法として、開閉弁86、88を閉じた状態で、ノズル51から液滴L2を吐出し、空間89内の液体が入口開口81cから溢れでるのを待ってから、液受部81がうける衝撃力の測定を開始してもよい。
【0090】
図8は、衝撃力測定装置100の本体部70の他の構成例として、本体部90の構成例を説明するための平面模式図である。
図9は、衝撃力測定装置100の本体部90の側面断面図の一部を拡大して示す図である。
図8は、スペーサー98の上に液受部91が接合される前の状態を示している。衝撃力測定装置100の本体部70に代えて、本体部90が採用されてもよい。
【0091】
本体部90は、液受部91と、測定部92と、スペーサー98と、基部94とを備えている。液受部91は、基板が薄肉化された薄板状の部材である。基部94も所定の基板が薄肉化された薄板状の部材である。スペーサー98は、樹脂等によって成型された薄板状の円形の部材である。スペーサー98には、スペーサー98の一主面から他主面に向けてスペーサー98を貫通する少なくとも1つ(図示の例では、13個)の貫通孔が設けられている。液受部91、基部94、およびスペーサー98の径は同じ大きさである。
【0092】
スペーサー98は、その一主面が、基部94の一主面に対向して接触し、基部94とスペーサー98とが重なり合うように、接着剤などによって、基部94に取り付けられている。これにより、基部94の一主面の一部と、スペーサー98の貫通孔の内周壁98aとによって囲まれた凹み部94aが形成されている。測定部92は、当該凹み部94aに収容されるように設けられる。
【0093】
測定部92は、歪みゲージ95と、歪みゲージ95の出力を記憶可能なメモリ96と、を含む。これらは、1つのチップとされてもよい。測定部92は、歪みゲージ95と、メモリ96との位置を安定させるとともに、歪みゲージ95を液受部91の下面に当接させるためのスペーサーとしても機能する緩衝材97も含んでいる。
【0094】
具体的には、凹み部94aの底面を成している基部94の一主面に、メモリ96と緩衝材97とが設けられる。そして、当該緩衝材97の上に、歪みゲージ95が設けられ、緩衝材97の上に他の緩衝材97が設けられている。スペーサー98の貫通孔は、歪みゲージ95と、メモリ96と、2つの緩衝材97とによって、隙間なく埋められている。歪みゲージ95の上面の高さは、スペーサー98の他主面(上面)と同じか、若しくは、若干高くなるように設定される。スペーサー98の凹み部94aに測定部92が設けられた状態で、スペーサー98の他主面に接着剤が塗布される。
【0095】
接着剤を塗布されたスペーサー98の他主面の上に、スペーサー98の他主面と基部94の一主面とが重なり合うように液受部91が載置されて、スペーサー98に接合される。液受部91は、歪みゲージ95の一主面と接触して凹み部94aを塞ぎ、スペーサー98と測定部92とを間に挟んで基部94と重なり合うようにスペーサー98の他主面に接合される。製造された本体部90の厚みD1は、例えば、直径300mmの基板9の厚みである775μmとなる。
【0096】
歪みゲージ95とメモリ96とは電気的に接続され、歪みゲージ95の出力信号がメモリ96に蓄積される。また、基部94の周縁部には、メモリ96から延びる配線を介して端子99が設けられている。端子99は、メモリ96に記憶された歪みゲージ95の出力を外部に出力可能である。
【0097】
本体部90は、本体部70、80と同様に、ノズル51の退避位置に設置されて使用されてもよいが、スピンチャック21に保持されている基板9に代えて、本体部90が保持された状態で、液受部91が受ける衝撃力の測定が行われてもよい。また、測定部92の歪みゲージ95に代えて、液受部91の下部に隣接する圧電素子が採用されてもよい。
【0098】
また、
図8、
図9に示されるように、本体部90が平面視において、複数の測定部92を備えている場合には、複数の測定部92のそれぞれが、各液受部91が受ける衝撃力の総和を測定をそれぞれ測定する。測定された各測定結果は、各測定部92に対応した各端子99から制御部130のCPU11に供給される。この際、各メモリ96は、各測定部92の位置情報も各端子99を経てCPU11に供給することができる。CPU11は、複数の測定部92の位置情報と液受部91が受けた衝撃力の総和とに基づいて、複数の測定部92のそれぞれが受けた衝撃力の総和の水平分布を求めることができる。
【0099】
<基板処理装置1の動作>
図10は、基板処理装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
図10のフローチャートは、基板9がスピンチャック21に載置されていない状態で、先ず、ノズル51の吐出状態を確認した後に、基板9をスピンチャック21に載置して基板9に対する処理を行う場合の動作フローの一例を示している。以下に、
図10のフローチャートについて説明する。
【0100】
衝撃力測定装置100による衝撃力の測定に行う場合には、ノズル移動機構3は、衝撃力測定装置100の液受部71の上方にノズル51を配置し(
図10のステップS10)、その後、ノズル51が処理液L1の多数の液滴L2を液受部71に吐出する(ステップS20)。ノズル51による多数の液滴L2の吐出が継続されている状態で、衝撃力測定装置100の本体部70は、液受部71が受ける衝撃力の測定処理を行う(ステップS30)。当該測定処理については、
図11、
図12を参照して後述する。ステップS30の測定処理が終了すると、ノズル51は、処理液L1の多数の液滴L2の吐出を停止し(ステップS40)、不図示のロボットが未処理の基板9を回転保持機構2のスピンチャック21に搬送して載置する(ステップS50)。
【0101】
その後、ノズル移動機構3は、ノズル51を基板9の上方に配置し(ステップS60)、回転保持機構2は、スピンチャック21の回転を開始して、基板9の回転を開始させる(ステップS70)。処理部5は、ノズル51に処理液L1を供給してノズル51から多数の液滴L2を基板9の上面に吐出する(ステップS80)。基板9の処理が終了すると、処理部5は、ノズル51からの液滴L2の吐出を停止し(ステップS90)、回転保持機構2は、スピンチャック21の回転を停止して基板9の回転を停止する(ステップS100)。
【0102】
<衝撃力測定装置100の動作>
図11は、衝撃力測定装置100による衝撃力の測定処理の動作の一例を示すフローチャートである。
図12は衝撃力測定装置100の動作の他の例を示すフローチャートである。以下に、
図11、
図12のフローチャートについて説明する。
【0103】
図11のフローチャートにおいては、衝撃力測定装置100は、ノズル51が吐出している多数の液滴L2を液受部71によって受けて(
図11のステップS101)、測定部72によって、液受部71が多数の液滴L2から受けた衝撃力の総和を測定する(ステップS102)。測定結果は、制御部130のCPU11に供給される。
【0104】
CPU11は、記憶装置14に記憶されている衝撃力の総和と多数の液滴L2の平均速度との対応関係を示す対応情報199を記憶装置14から読み出して、対応情報199に基づいて、測定部72により測定された衝撃力の総和から多数の液滴L2の平均速度を演算する(ステップS103)。CPU11は、例えば、測定開始から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS104)、該判定の結果、所定の時間が経過していなければ、処理をステップS101に戻して、衝撃力の測定を繰り返す。該判定の結果、所定時間が経過していれば、CPU11は、時間的に順次に計算された各平均速度に基づいて、液滴L2の平均速度の時間的変化を演算する(ステップS105)。
【0105】
図12のフローチャートは、衝撃力測定装置100の本体部90のように、衝撃力測定装置100が複数の測定部(測定部92など)を備える場合の動作の例を示している。
【0106】
図12のフローチャートにおいては、衝撃力測定装置100は、ノズル51が吐出している多数の液滴L2を本体部90の液受部91によって受ける(
図12のステップS110)。本体部90の複数の測定部92は、それぞれ、液受部71が多数の液滴L2から受けた衝撃力の総和を測定する(ステップS120)。各測定結果は、本体部90の各端子99から制御部130のCPU11に供給される。この際、各測定部92のメモリ96は、当該測定部92の位置情報もCPU11に供給する。
【0107】
CPU11は、供給された各測定部92の位置情報と、各測定部92が測定した衝撃力とに基づいて、液受部91が各測定部92の部位において多数の液滴L2から受けた衝撃力の総和の水平分布を演算する(ステップS130)。CPU11は、記憶装置14から対応情報199を読み出して、対応情報199に基づいて、各測定部92により測定された衝撃力の総和の水平分布から多数の液滴L2の平均速度の水平分布を演算する(ステップS140)。
【0108】
以上のように構成された本実施形態に係る衝撃力測定装置によれば、多数の箇所に向けて吐出される多数の液滴L2を受ける液受部71と、液受部71が多数の液滴L2から受ける衝撃力の総和を測定する測定部72と、を備える。従って、各液滴L2が対象物に当たる際の各衝撃力をまとめて測定できるので、多数の液滴L2が対象物に当たる際に対象物が受ける衝撃力を容易に測定できる。
【0109】
また、本実施形態に係る衝撃力測定装置によれば、CPU11は、衝撃力の総和と多数の液滴L2の平均速度との対応関係を示す対応情報199に基づいて、測定部72により測定された衝撃力の総和から多数の液滴L2の平均速度を演算することができる。
【0110】
また、本実施形態に係る衝撃力測定装置によれば、CPU11は、多数の液滴L2の平均速度の時間的変化を演算することができる。
【0111】
また、本実施形態に係る衝撃力測定装置によれば、対応情報199が、ノズル51の吐出穴径ごと、または多数の液滴L2の液の種類ごとに異なるので、多数の液滴L2の平均速度を、ノズル51の吐出穴径、または多数の液滴L2の液の種類に応じて、より正確に演算することができる。
【0112】
また、本実施形態に係る衝撃力測定装置によれば、CPU11は、複数の測定部92のそれぞれが受ける衝撃力の総和の水平分布を求めることができる。
【0113】
また、本実施形態に係る衝撃力測定装置によれば、液受部71は、多数の液滴L2の吐出方向に対して斜めに傾斜する扁平な傾斜面71aを含み、傾斜面71aによって多数の液滴L2を受ける。これにより、吐出された多数の液滴L2が傾斜面71aの上に形成する液膜の厚みの変動を抑制できる。従って、液膜の厚みの変動によって衝撃力の総和の測定結果が変動することを抑制できる。
【0114】
また、本実施形態に係る衝撃力測定装置によれば、液受部81は、多数の液滴L2が入る入口開口81cが一端に形成された筒状の周壁部81aと、周壁部81aの他端の開口を塞ぐ底壁部81bと、を含む容器を備える。周壁部81aには、周壁部81aに囲まれた空間内の液体のうち底壁部81bから所定の高さを超える液体を容器から排出可能な排出口81dが設けられている。これにより、容器に溜まる処理液の量を一定に保ちつつ、容器が多数の液滴L2から受ける衝撃力の総和を測定することができる。従って、容器に溜まる処理液の量の変動によって、衝撃力の総和の測定結果が変動することを抑制できる。
【0115】
また、本実施形態に係る衝撃力測定装置によれば、液受部91と測定部92とを含む本体部90の形状および大きさを、所定の基板9の形状および大きさと同じにすることができる。従って、衝撃力測定装置の液受部91が多数の液滴L2から衝撃力を受けている状態を、所定の基板9が多数の液滴L2から衝撃力を受けている状態に近づけて、液受部91が多数の液滴L2から受ける衝撃力の総和を測定できる。
【0116】
また、以上のように構成された本実施形態に係る基板処理装置によれば、基板9の主面における多数の箇所に当たるようにノズル51が多数の液滴L2を吐出可能な第1位置と、衝撃力測定装置の液受部71における多数の箇所に当たるようにノズル51が多数の液滴L2を吐出可能な第2位置との間でノズル51を移動させることができる。従って、ノズル51を基板処理装置から取り外すことなく、基板9が多数の液滴L2から受ける衝撃力の総和を測定できる。
【0117】
また、以上のような本実施形態に係る衝撃力測定方法によれば、多数の箇所に向けて吐出される多数の液滴L2を受けることができる液受部71によって多数の液滴L2を受ける液受ステップと、液受部71が多数の液滴L2から受ける衝撃力の総和を測定する測定ステップと、を備える。従って、各液滴L2が対象物に当たる際の各衝撃力をまとめて測定できるので、多数の液滴L2が対象物に当たる際に対象物が受ける衝撃力を容易に測定できる。
【0118】
また、以上のような本実施形態に係る基板9処理方法によれば、基板9の主面における多数の箇所にノズル51から多数の液滴L2を吐出する吐出ステップと、ノズル51から吐出される多数の液滴L2を液受部71によって受ける液受ステップとを備える。従って、ノズル51を基板処理装置から取り外すことなく、基板9が多数の液滴L2から受ける衝撃力の総和を測定できる。
【0119】
本発明は詳細に示され記述されたが、上記の記述は全ての態様において例示であって限定的ではない。したがって、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。