(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回動作が可能に搭載された上部旋回体とからなる車体を備え、上部旋回体の前方には、フロント装置が俯仰の動作が可能に設けられている。また、上部旋回体の後方には、フロント装置と重量バランスをとるためのカウンタウエイトが設けられている。
【0003】
車体を構成する上部旋回体には、カウンタウエイトの前側に配置され外装カバーによって覆われた機械室と、機械室内に配置されたエンジンと、エンジンから排出された排気ガスを機械室の外部上方に導く排気管とが設けられている。
【0004】
ここで、油圧ショベルは、土砂の掘削運搬作業以外にも、森林、船内、建屋内を含む様々な環境の作業現場で稼働している。例えば、森林の作業現場では、木材の伐採や集材を行う。また、船内の作業現場では、木材チップの収集や運搬を行う。さらに、建屋内の作業現場では、金属スクラップの解体や仕分けを行う。これらの作業現場では、細かな木屑、塵、埃等の粉塵が舞い上がり、粉塵が上部旋回体や排気管の上側に堆積する。
【0005】
上部旋回体は、その機械室にエンジンの排気ガスが導かれるマフラを備えている。このマフラは、導かれた排気ガスを上部旋回体の上方に向けて排出する排気口を有している。外装カバーの上面カバーには、排気口の上側に位置して前述した排気管が設けられている。この排気管は、マフラの排気口から上面カバーを貫いて上方外部に向かって垂直に延びている。さらに、排気管は、排気ガスを上部旋回体の後方に排出するために、上面カバーから上側に突出した外部位置で後側に屈曲し、排出口が後方に向けて開口している。これにより、粉塵が舞い上がる作業現場では、舞い上がった粉塵が排気管の上部に堆積することがある。
【0006】
一方、油圧ショベルは、エンジンの出力を定格最大出力に保持した状態で作業を行うことが多い。このために、排気管は、エンジンが発生する熱によって高温になり易い。その上、近年では、排出ガス規制に伴って、油圧ショベルに排気ガス処理装置が搭載されている。排気ガス処理装置では、粒子状物質(PM:Particulate Matter)、窒素酸化物(NOx)等の有害物質の浄化が行われる。例えば、排気ガス処理装置は、粒子状物質を燃焼させて排除しており、このときにマフラ内の温度は、例えば600℃以上の高温になることが知られている。従って、排気管は、マフラの熱によって高温になり易く、最も高温となる排気管の上部では、温度は400℃近い高温となる。
【0007】
これらのことから、排気管の上部に粉塵が堆積したり、排気管を通じてマフラ内に粉塵が進入したりすると、上述した高熱による影響を受けてしまう。そこで、油圧ショベルには、外装カバーの上側に、排気管の前方と左,右の側方と上方とを覆う排気管カバーを設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、エンジンを搭載した油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0015】
まず、
図1ないし
図5は本発明の第1の実施の形態を示している。
図1において、油圧ショベル1は、クローラ式の建設機械を構成している。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、前記下部走行体2上に旋回動作が可能に搭載され、前記下部走行体2と共に車体を形成する上部旋回体3と、前記上部旋回体3の前,後方向の前側に俯仰の動作が可能に設けられ土砂の掘削作業等を行うフロント装置4とにより構成されている。
【0016】
旋回フレーム5は、上部旋回体3の支持構造体を形成するものである。
図2に示すように、旋回フレーム5は、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板5Aと、底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板5B,右縦板5Cと、各縦板5B,5Cの左,右方向の外側に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた左サイドフレーム5D,右サイドフレーム5Eと、底板5A、各縦板5B,5Cから左,右方向に張出し、その先端部に前記左,右のサイドフレーム5D,5Eを支持した複数本の張出しビーム5F(
図2中に2本のみ図示)と、前記各縦板5B,5C、各サイドフレーム5D,5E間で底面を形成する複数枚のアンダカバー5Gとにより構成されている。
【0017】
旋回フレーム5は、後述する機械室12の下側を閉塞するものである。例えば、左,右の縦板5B,5C間に位置するアンダカバー5Gには、温まった冷却風を矢示b方向に向けて機械室12の外部に流出させるための流出口5G1が設けられている。
【0018】
カウンタウエイト6は、旋回フレーム5を形成する左,右の縦板5B,5Cの後部に設けられている(
図1参照)。このカウンタウエイト6は、フロント装置4との重量バランスをとるもので、重量物として形成されている。
【0019】
キャブ7は、旋回フレーム5の左前側に設けられている。このキャブ7は、オペレータが搭乗するもので、その内部には、例えば、オペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー(いずれも図示せず)が配設されている。
【0020】
外装カバー8は、後述のエンジン13、マフラ14、油圧ポンプ15、熱交換器16を含む機器を覆うもので、旋回フレーム5上に設けられている。外装カバー8は、カウンタウエイト6とキャブ7との間に設けられている。具体的には、外装カバー8は、熱交換器16の左側を覆うように旋回フレーム5の左サイドフレーム5Dから立上った左面カバー9と、油圧ポンプ15等の右側を覆うように旋回フレーム5の右サイドフレーム5Eから立上った右面カバー10と、エンジン13等の上側を覆うように左面カバー9の上部と右面カバー10の上部との間に亘って水平方向に延びた上面カバー11とを含んで構成されている。左面カバー9には、複数の流入口9Aが設けられている。各流入口9Aは、
図2中に矢示aで示すように、外気を冷却風として後述の機械室12に向けて流入させるものである。
【0021】
上面カバー11は、複数の板体を組合せることにより形成されている。その組合せの一例について述べると、上面カバー11は、左側寄りに位置してエンジン13と熱交換器16の上側を覆うエンジンカバー部11Aと、エンジンカバー部11Aの右側に位置して後述するマフラ14の上側を覆うマフラカバー部11Bと、マフラカバー部11Bと右面カバー10との間に位置して油圧ポンプ15の上側を覆うポンプカバー部11Cとを含んで構成されている。各カバー9,10,11は、内部に位置する機器のメンテナンスを行えるように、少なくとも一部が開閉可能となっている。
【0022】
ここで、上面カバー11を構成するマフラカバー部11Bは、平坦な板状体として形成されている。マフラカバー部11Bには、冷却風の流れ方向の上流側に位置して、
図2中に矢示cで示すように、温まった冷却風を機械室12の外部に流出させるための流出口11B1が設けられている。
【0023】
また、マフラカバー部11Bには、後述するマフラ14の排気口14Cに対応する位置、即ち、冷却風の流れ方向の下流側で、かつ前,後方向の後側位置に排気管挿通開口11B2が形成されている。この排気管挿通開口11B2は、八角形状の開口として形成され、その周囲には、例えば4個のねじ孔11B3が設けられている。排気管挿通開口11B2は、後述する排気管18よりも大きく開口することにより、排気管18との間に後述の冷却風導入口23を形成することができる。なお、排気管挿通開口11B2は、八角形以外にも円形等の形状としてもよい。
【0024】
また、マフラカバー部11Bの上面11B4には、排気管挿通開口11B2の周囲に後述のカバー本体20が取付けられている。一方、マフラカバー部11Bの下面11B5には、一部が排気管挿通開口11B2に対応する位置に後述の導風板24が取付けられている。
【0025】
機械室12は、カウンタウエイト6の前側に配置されている。この機械室12は、旋回フレーム5と外装カバー8とによって覆われた左,右方向に長尺な直方体状の空間として形成されている。また、機械室12は、外装カバー8の左面カバー9と熱交換器16との間に位置する冷却風流入室12Aと、熱交換器16とファイヤウォール17との間に位置するエンジン室12Bと、ファイヤウォール17と右面カバー10との間に位置するポンプ室12Cとに仕切られている。
【0026】
エンジン13は、機械室12のエンジン室12B内に配置されている。エンジン13は、旋回フレーム5の後側に左,右方向に延在する横置き状態で設けられている。エンジン13の上部右側には、排気ガスを排出するエキゾーストマニホールド(図示せず)に接続して後述のマフラ14が設けられている。エンジン13の左側には、熱交換器16と対面する位置に冷却ファン13Aが設けられている。この冷却ファン13Aは、エンジン13によって回転されることにより、
図2中に矢示aで示すように、機械室12内で左から右に向けて冷却風(外気)を流通させるものである。このときに、冷却風を熱交換器16に流通させることで、エンジン冷却水、作動油等を冷却することができる。
【0027】
マフラ14は、エンジン13が排出した排気ガスを処理するもので、エンジン13の上部右側位置に設けられている。マフラ14は、油圧ポンプ15の上方位置に前,後方向に延びて設けられている。このマフラ14は、前,後方向に延びた円筒状容器として形成されたマフラケース14Aと、マフラケース14Aの前側位置から左側に向けて径方向の外側に突出した流入口14B(
図4参照)と、マフラケース14Aの後側位置に上,下方向に延びて設けられた排気口14Cとを含んで構成されている。流入口14Bは、エンジン13のエキゾーストマニホールドに接続されている。
【0028】
ここで、マフラ14のマフラケース14A内には、各種処理装置(図示せず)が収容されている。具体的な処理装置としては、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集して除去するために酸化触媒やフィルタから構成された粒子状物質除去装置、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を尿素水溶液を用いて浄化するNOx浄化装置、排気ガスの騒音を低減する消音装置(排気マフラ)等が知られている。マフラケース14Aは、例えば、ケース取付ブラケット14Dを介して油圧ポンプ15と共にエンジン13の右側部位に取付けられている。
【0029】
マフラ14の排気口14Cは、マフラケース14Aを上,下方向(直径方向)に貫通して延び、マフラケース14A内に位置する中間部分に多数個の連通孔を備えた筒状体として形成されている。排気口14Cの上部は、外装カバー8の上面カバー11を構成するマフラカバー部11Bに設けられた排気管挿通開口11B2に向けて突出している。これにより、
図2、
図4に示すように、排気口14Cは、後述する排気管18に対して下側から挿入されている。この場合、エンジン13側の振動系統に設けられた排気口14Cは、旋回フレーム5側の振動系統に設けられた排気管18に対し、相対的な振動によって干渉しないように所定の隙間をもって挿入されている。
【0030】
油圧ポンプ15は、ポンプ室12C内に位置するようにエンジン13の右側部位に設けられ、エンジン13によって駆動される。油圧ポンプ15は、後述の作動油タンク25から供給される作動油を、圧油として制御弁装置(図示せず)に向け吐出するものである。
【0031】
熱交換器16は、キャブ7の後側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。また、熱交換器16は、冷却風の流れ方向(左から右への流れ方向)に対して冷却ファン13Aよりも上流側、即ち、左面カバー9と冷却ファン13Aとの間に位置して冷却ファン13Aと対面するように設けられている。熱交換器16は、例えばエンジン冷却水を冷却するラジエータ、作動油を冷却するオイルクーラを含む冷却器16Aと、冷却器16Aを取り囲む枠部材16Bとにより構成されている。熱交換器16は、機械室12の左側エリアを冷却風流入室12Aとエンジン室12Bとに仕切る仕切部材を構成している。
【0032】
ファイヤウォール17は、油圧ポンプ15の周囲に位置して旋回フレーム5と外装カバー8の上面カバー11との間に設けられている。ファイヤウォール17は、エンジン13、マフラ14と油圧ポンプ15との間を遮るもので、機械室12の右側エリアをエンジン室12Bとポンプ室12Cとに仕切る仕切部材を構成している。ファイヤウォール17は、例えば複数枚の鋼板を折り曲げて互いに固着することにより構造体として形成されている。ファイヤウォール17は、エンジン13に対する油圧ポンプ15の取付基部を跨ぐように形成されている。これにより、ファイヤウォール17は、油圧ポンプ15の周囲で作動油の漏れが生じた場合でも、漏れ出た作動油がエンジン13側に飛散するのを防止することができる。
【0033】
排気管18は、エンジン13から排出された排気ガスを機械室12のエンジン室12Bの外部上方に導くものである。排気管18は、後述する排気管カバー19の導風板24を介して外装カバー8の上面カバー11に取付けられている。
図4に示すように、排気管18は、マフラ14の排気口14Cよりも大径で、上面カバー11の排気管挿通開口11B2および後述するカバー本体20の縦カバー部20Aよりも小径な円筒状をなして上,下方向に延びた縦筒部18Aと、縦筒部18Aの上部から後側に向け斜め上側に延びた傾斜筒部18Bとにより構成されている。傾斜筒部18Bの開口部は、粉塵の流入を抑制するために、下部よりも上部が後方にせり出すように傾斜筒部18Bの軸線に対して斜めに形成されている。
【0034】
次に、本実施の形態の特徴部分となる排気管カバー19の構成について、詳しく説明する。
【0035】
排気管カバー19は、排気管18を覆うものである。排気管カバー19は、後述のカバー本体20、冷却風導入口23および導風板24によって構成されている。
【0036】
カバー本体20は、下端側が排気管18の周囲を覆った状態で外装カバー8に設置され、上端側が排気管18からの排気ガスを外部へ排出するものである。
図4、
図5に示すように、カバー本体20は、外装カバー8の上面カバー11を構成するマフラカバー部11Bの排気管挿通開口11B2と同等または僅かに大きな八角形状の筒体として上,下方向に延びた縦カバー部20Aと、縦カバー部20Aの上部から後側に向け斜め上側に延びた傾斜カバー部20Bと、縦カバー部20Aの下端部にフランジ状に形成された取付板部20Cとにより構成されている。取付板部20Cは、マフラカバー部11Bの排気管挿通開口11B2と4個のねじ孔11B3を覆う四角形状の板体として形成されている。取付板部20Cの四隅には、各ねじ孔11B3に対応する位置にそれぞれボルト挿通孔20C1が上,下方向に貫通して設けられている。
【0037】
縦カバー部20Aは、排気管18の縦筒部18Aとの間に環状の空間を有し、傾斜カバー部20Bは、排気管18の傾斜筒部18Bとの間に環状の空間を有している。これにより、カバー本体20は、排気管18との間に排出流路21を形成している。この排出流路21は、排気管18の周囲で冷却風を流通させることができる。
【0038】
さらに、傾斜カバー部20Bの開口部は、排気管18と同様に、下部よりも上部が後方にせり出すように傾斜カバー部20Bの軸線に対して斜めに形成されている。この上で、傾斜カバー部20Bは、その開口部側の上端部20B1の位置を、排気管18の傾斜筒部18Bの開口位置よりも所定寸法だけ後側に配置している。これにより、傾斜カバー部20Bは、排気管18およびカバー本体20内(排出流路21)に粉塵が流入するのを抑制している。
【0039】
図5に示すように、カバー本体20は、取付板部20Cで排気管挿通開口11B2と各ねじ孔11B3を覆うように当該取付板部20Cをマフラカバー部11Bの上面11B4上に配置する。この状態で取付板部20Cの各ボルト挿通孔20C1に挿通したボルト22をマフラカバー部11Bの各ねじ孔11B3にそれぞれ螺着することにより、カバー本体20を上面カバー11上に取付けることができる。
【0040】
冷却風導入口23は、外装カバー8を構成する上面カバー11のマフラカバー部11Bに設けられ、排気管カバー19のカバー本体20と連通されている。冷却風導入口23は、マフラカバー部11Bの排気管挿通開口11B2と排気管18の縦筒部18Aとの間の環状通路として形成されている。冷却風導入口23は、機械室12のエンジン室12B内に配置されたエンジン13を含む機器を冷却する冷却風を、排気管18と排気管カバー19のカバー本体20との間の排出流路21に導くものである。
【0041】
導風板24は、冷却風導入口23にエンジン室12B内を流通する冷却風を導入するものである。即ち、導風板24は、マフラカバー部11Bの下面11B5側に位置してエンジン室12B内に配置されており、
図2中に矢示dで示すように、エンジン室12Bの冷却風を取込むことができる。また、導風板24は、エンジン室12B内で排気管18と一体の構造になっている。
【0042】
具体的には、
図5に示すように、導風板24は、底板部24Aと、この底板部24Aの周囲から上側に延びた周壁部24Bとにより構成されている。底板部24Aは、エンジン室12B内を流れる冷却風の上流側から下流側に向けて上向きに傾斜した長方形状の傾斜板部24A1と、この傾斜板部24A1の下流端(右端)から下流側に向けて水平に延びた水平板部24A2とにより形成されている。水平板部24A2は、下流側の端部が八角形状のマフラカバー部11Bの排気管挿通開口11B2に対応するように、大きく面取りされている。また、水平板部24A2には、排気管18の縦筒部18Aが挿通される円形孔24A3が形成され、この円形孔24A3には、縦筒部18Aの下側部分が挿通状態で溶接手段を用いて固着されている。
【0043】
導風板24の周壁部24Bは、底板部24Aの上流側の端縁を除いた周囲から上側に延びたU字状の側壁として形成されている。周壁部24Bは、冷却風の流れ方向の下流側に位置する下流側壁板24B1がマフラカバー部11Bの排気管挿通開口11B2を取り囲む形状となっている。そして、周壁部24Bは、その上端縁が溶接手段を用いてマフラカバー部11Bの下面11B5に固着されている。これにより、導風板24は、マフラカバー部11Bとの間に冷却風を導くための通路を形成している。
【0044】
導風板24は、エンジン室12B内を流通する冷却風を冷却風導入口23を介して排出流路21に導入することができる。これにより、排気管18は、エンジン室12B内で導風板24によって導かれた冷却風により冷却される。このときに、導風板24は、底板部24Aの傾斜板部24A1が上流側に向けて下側に傾斜していることにより、大きく開口することができ、多くの冷却風を排出流路21に効率よく導くことができる。
【0045】
なお、作動油タンク25は、ポンプ室12Cの前側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。作動油タンク25は、油圧ショベル1に搭載された各種油圧アクチュエータに供給する作動油を貯えるものである。また、作動油タンク25の前側には、エンジン13に供給する燃料を貯える燃料タンク(図示せず)が配置されている。
【0046】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
【0047】
まず、オペレータは、キャブ7に搭乗して運転席に着座する。この状態で走行用の操作レバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を作業現場まで移動させることができる。また、オペレータは、作業用の操作レバーを操作することにより、フロント装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0048】
油圧ショベル1を稼動しているときには、エンジン13の冷却ファン13Aにより熱交換器16に冷却風が供給される。そこで、機械室12内での冷却風の流れについて、
図2を参照しつつ説明する。
【0049】
冷却ファン13Aが回転すると、矢示aで示すように、外装カバー8の左面カバー9に設けられた流入口9Aを介して外部の空気が冷却風として冷却風流入室12A内に吸込まれる。熱交換器16は、この冷却風が通過することで、エンジン冷却水、作動油等の流体を冷却することができる。
【0050】
熱交換器16を通過して暖まった冷却風のうち、一部の冷却風は、矢示bで示すように、旋回フレーム5のアンダカバー5Gに設けられた流出口5G1から外部に排出される。また、この他の冷却風は、矢示cで示すように、上面カバー11のマフラカバー部11Bに設けられた流出口11B1から外部に排出される。そして、流出口11B1から排出されずに下流側に流れた冷却風の一部は、矢示dで示すように、導風板24内に取り込まれ、排気管18の冷却や粉塵の排出に利用される。
【0051】
ここで、油圧ショベル1は、土砂の掘削運搬作業以外にも、森林の作業現場で木材の伐採や集材を行ったり、船内の作業現場で木材チップの収集や運搬を行ったり、さらに、建屋内の作業現場で金属スクラップの解体や仕分けを行ったりする。これらの作業現場では、細かな木屑、塵、埃等の粉塵が舞い上がる。
【0052】
このような作業現場において、排気管カバー19は、排気管18を覆っているから、この排気管18の上側に粉塵が堆積するのを抑制することができる。しかし、粉塵の一部は、排気管カバー19内に流入して排気管18の上側に堆積する虞がある。
【0053】
排気管18は、排気ガスの熱によって温度上昇する。特に、マフラ14に処理装置として、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集して除去するために酸化触媒やフィルタから構成された粒子状物質除去装置を備えた場合、マフラ14内の温度は、例えば600℃以上の高温になることが知られている。従って、排気管18に粉塵が堆積したり、排気管18を通じてマフラ14内に粉塵が流入したりすると、粉塵が高熱による影響を受けてしまう。
【0054】
然るに、本実施の形態によれば、排気管18を覆う排気管カバー19は、下端側が排気管18の周囲を覆った状態で外装カバー8の上面カバー11に設置され、上端側が排気管18からの排気ガスを外部へ排出する筒状のカバー本体20と、機械室12内のエンジン13、熱交換器16等の機器を冷却する冷却風を、排気管18と排気管カバー19との間に導く冷却風導入口23と、冷却風導入口23に冷却風を導入するための導風板24とにより構成している。
【0055】
従って、
図2に示すように、エンジン13を駆動して機械室12内で冷却風が流通すると、排気管カバー19は、矢示dで示すように、冷却風の一部を導風板24に取込むことができる。これにより、導風板24は、取込んだ冷却風を冷却風導入口23に向けて導くことができる。この上で、カバー本体20内では、導入された冷却風を排気管18との間に形成した排出流路21で流通させて外部に排出することができる。
【0056】
この結果、粉塵が舞う作業現場でも、排気管カバー19内の排出流路21を流通する冷却風によって、粉塵が排出流路21に流入するのを抑制することができる。また、排気管18の上側に粉塵が堆積したり、排気管カバー19の内面や排気管18の外面に粉塵が付着したりしたとしても、この粉塵を冷却風の流れによって外部に向け容易に排出することができる。しかも、排気管18は、周囲を流通する冷却風によって強制的に冷却することができる。
【0057】
冷却風導入口23は、外装カバー8の上面カバー11に設けられ、排気管カバー19と連通されている。これにより、導風板24によって導かれた冷却風を、冷却風導入口23を介して排気管カバー19に導入させることができる。
【0058】
導風板24は、上面カバー11を構成するマフラカバー部11Bの下面11B5側に位置して機械室12のエンジン室12B内に配置されている。この上で、導風板24は、エンジン室12Bの冷却風を取込むことができる。これにより、従来からエンジン室12B内を流れている冷却風を粉塵排出用に利用することができ、粉塵の排出構造を簡略化することができる。
【0059】
導風板24は、機械室12のエンジン室12B内で排気管18と一体の構造になっている。これにより、排気管18は、導風板24と一緒に上面カバー11に取付けることができる。そして、上面カバー11に取付けられた排気管18は、エンジン室12B内で導風板24によって導かれた冷却風により冷却することができる。
【0060】
次に、
図6および
図7は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、排気管カバーのカバー本体内には、カバー本体内に流入した粉塵を捕捉する捕捉部材を設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0061】
図6において、第2の実施の形態による排気管カバー31は、第1の実施の形態による排気管カバー19とほぼ同様に、カバー本体20、冷却風導入口23および導風板24を含んで構成されている。しかし、第2の実施の形態による排気管カバー31は、カバー本体20内に後述の捕捉部材32が設けられている点で、第1の実施の形態による排気管カバー19と相違している。
【0062】
捕捉部材32は、カバー本体20内に流入した粉塵33を捕捉するものである。捕捉部材32は、例えば、カバー本体20の縦カバー部20A内面の前,後位置に互いに対向して設けられている。この場合、捕捉部材32の形状、取付位置、枚数を含む各種条件は、エンジン13の大きさ、作業環境等によって適宜に設定されるものである。即ち、1枚の捕捉部材32を縦カバー部20A内面に沿って環状に配置したり、3枚以上の捕捉部材32を設けたりする構成とすることもできる。
【0063】
2枚の捕捉部材32は、例えば、釣り針の返しのように、排気管18側となる中央側に向かって上向きに傾斜した板体として形成され、溶接手段を用いて縦カバー部20Aの内面に固着されている。各捕捉部材32は、排出流路21に入り込んだ粉塵33を縦カバー部20Aの内面との間に捕捉するものである。また、
図7に示すように、各捕捉部材32には、板厚方向に貫通して複数個の通気孔32Aが設けられている。各通気孔32Aは、各捕捉部材32が捕捉して溜まった粉塵33が落ちない程度の径寸法をもった貫通孔として形成されている。各通気孔32Aには、排出流路21を流通する冷却風を通過させることができる。
【0064】
このように構成された各捕捉部材32は、エンジン13の停止時に周囲に飛散している粉塵33の一部がカバー本体20内に入り込むと、入り込んだ粉塵33の一部を捕捉することができる。しかも、エンジン13を始動して機械室12内で冷却風が流通するようになると、捕捉部材32は、各通気孔32Aを通じて下側から上側に向けて冷却風を通過させることにより、捕捉した粉塵33を排出流路21の外部に排出させることができる。
【0065】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用、効果を得ることができる。特に、第2の実施の形態では、排気管カバー31のカバー本体20内には、カバー本体20内に流入した粉塵33を捕捉する2枚の捕捉部材32を設けている。これにより、カバー本体20内に粉塵33が流入した場合でも、流入した粉塵33は、各捕捉部材32によって捕捉することができるから、機械室12内を清浄に保つことができる。また、各捕捉部材32には、複数個の通気孔32Aを設けているから、各通気孔32Aに冷却風を流通させることにより、捕捉した粉塵33を排出流路21の外部に排出させることができる。
【0066】
なお、各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、例えば油圧クレーン等のエンジンを備えた他の建設機械にも広く適用できるものである。