特許第6811132号(P6811132)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6811132動翼解析装置、動翼解析方法、プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811132
(24)【登録日】2020年12月16日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】動翼解析装置、動翼解析方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20201228BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20201228BHJP
【FI】
   G01H17/00 Z
   F01D25/00 C
   F01D25/00 W
   F01D25/00 V
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-58624(P2017-58624)
(22)【出願日】2017年3月24日
(65)【公開番号】特開2018-162971(P2018-162971A)
(43)【公開日】2018年10月18日
【審査請求日】2019年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(72)【発明者】
【氏名】田村 和浩
(72)【発明者】
【氏名】立石 浩毅
(72)【発明者】
【氏名】宮島 慶一郎
【審査官】 岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−109621(JP,A)
【文献】 特開2012−137335(JP,A)
【文献】 特開2008−107294(JP,A)
【文献】 特開昭63−109334(JP,A)
【文献】 特開2001−074616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00−17/00
G01M 99/00
F01D 21/00,25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンに放射状に複数設けられた動翼より外側に固定されて設けられ前記動翼の通過を検知するセンサと、
時刻の経過に応じて前記センサで得られた翼通過検知信号の信号強度の所定期間の変化を示す第一の翼検知パターンデータを取得し、当該第一の翼検知パターンデータに含まれる複数の動翼についての翼通過検知信号の信号強度の所定期間の変化が示すパルス間隔の中間を含む前記動翼を検知していない不検知期間を特定し、前記翼通過検知信号の所定期間の変化において前記動翼を検知している検知期間と前記不検知期間とのうち、前記不検知期間のみにおいて前記翼通過検知信号の信号強度が閾値よりも高い翼通過検知信号の所定期間の変化を示す翼通過検知信号を前記第一の翼検知パターンデータから除去した第二の翼検知パターンデータを生成する除去部と、
を備える動翼解析装置。
【請求項2】
前記第二の翼検知パターンデータを用いて動翼の状態を解析する解析部と、
を備える請求項1に記載の動翼解析装置。
【請求項3】
前記解析部は前記第二の翼検知パターンデータを用いて前記動翼それぞれの翼振動の状態を解析する
請求項2に記載の動翼解析装置。
【請求項4】
前記所定期間は、前記時刻の経過に応じて前記センサで得られた翼通過検知信号の信号強度の変化の前記タービンの1周期分を、前記動翼の数で分割した期間であって前記不検知期間と、一つの前記パルスを含む前記検知期間と、を含む期間を示す
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の動翼解析装置。
【請求項5】
タービンに放射状に複数設けられた動翼より外側に固定されて設けられ前記動翼の通過を検知するセンサを備えた動翼解析装置が、
時刻の経過に応じて前記センサで得られた翼通過検知信号の信号強度の所定期間の変化を示す第一の翼検知パターンデータを取得し、当該第一の翼検知パターンデータに含まれる複数の動翼についての翼通過検知信号の信号強度の所定期間の変化が示すパルス間隔の中間を含む前記動翼を検知していない不検知期間を特定し、前記翼通過検知信号の所定期間の変化において前記動翼を検知している検知期間と前記不検知期間とのうち、前記不検知期間のみにおいて前記翼通過検知信号の信号強度が閾値よりも高い翼通過検知信号の所定期間の変化を示す翼通過検知信号を前記第一の翼検知パターンデータから除去した第二の翼検知パターンデータを生成する
動翼解析方法。
【請求項6】
前記第二の翼検知パターンデータを用いて動翼の状態を解析する
請求項に記載の動翼解析方法。
【請求項7】
タービンに放射状に複数設けられた動翼より外側に固定されて設けられ前記動翼の通過を検知するセンサを備えた動翼解析装置のコンピュータを、
時刻の経過に応じて前記センサで得られた翼通過検知信号の信号強度の所定期間の変化を示す第一の翼検知パターンデータを取得し、当該第一の翼検知パターンデータに含まれる複数の動翼についての翼通過検知信号の信号強度の所定期間の変化が示すパルス間隔の中間を含む前記動翼を検知していない不検知期間を特定し、前記翼通過検知信号の所定期間の変化において前記動翼を検知している検知期間と前記不検知期間とのうち、前記不検知期間のみにおいて前記翼通過検知信号の信号強度が閾値よりも高い翼通過検知信号の所定期間の変化を示す翼通過検知信号を前記第一の翼検知パターンデータから除去した第二の翼検知パターンデータを生成する除去手段、
として機能させるプログラム。
【請求項8】
前記コンピュータを、前記第二の翼検知パターンデータを用いて動翼の状態を解析する解析手段
として機能させる請求項に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動翼解析装置、動翼解析方法、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
タービンの管理者はタービン運転中にタービンを構成する動翼に発生する振動の計測を行う。管理者はこのような計測を行うことにより動翼の振動特性が設計計画通りであるか否かを検証する。また担当者はこのような計測を行い、運転条件の変化による動翼の振動特性の変化を確認し、タービン製品の信頼性の向上を図る。動翼の振動の計測技術に、一例として、動翼にひずみゲージを貼り付けてタービン装置の運転中に振動を計測するテレメータ計測技術がある。また他の動翼の振動の計測技術に、動翼と対向するケーシング部に動翼の通過を検知するセンサを設置し、動翼がセンサを通過する時間差から動翼の振動を分析する技術がある。なお関連する技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3038382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1に開示されているような、動翼と対向するケーシング部に動翼の通過を検知するセンサを設置し、動翼がセンサを通過する時間差から動翼の振動を計測する場合、次のような問題が生じる。例えばセンサが検出した動翼の通過を示す通過検知信号は通過時に電圧が閾値を超えるような値となる信号となる。しかしながらタービン内部の環境等によってこの通過検知信号にノイズが発生する。このようなノイズの発生した通過検知信号は、動翼の解析結果に悪影響を及ぼす。
【0005】
そこでこの発明は、上述の課題を解決することのできる動翼解析装置、動翼解析方法、プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、動翼解析装置は、タービンに放射状に複数設けられた動翼より外側に固定されて設けられ前記動翼の通過を検知するセンサと、時刻の経過に応じて前記センサで得られた翼通過検知信号の信号強度の所定期間の変化を示す第一の翼検知パターンデータを取得し、当該第一の翼検知パターンデータに含まれる複数の動翼についての翼通過検知信号の信号強度の所定期間の変化が示すパルス間隔の中間を含む前記動翼を検知していない不検知期間を特定し、前記翼通過検知信号の所定期間の変化において前記動翼を検知している検知期間と前記不検知期間とのうち、前記不検知期間のみにおいて前記翼通過検知信号の信号強度が閾値よりも高い翼通過検知信号の所定期間の変化を示す翼通過検知信号を前記第一の翼検知パターンデータから除去した第二の翼検知パターンデータを生成する除去部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上述の動翼解析装置において、前記第二の翼検知パターンデータを用いて動翼の状態を解析する解析部を備えてよい。
【0008】
また上述の動翼解析装置において、前記解析部は前記第二の翼検知パターンデータを用いて前記動翼それぞれの翼振動の状態を解析してよい。
【0009】
また本発明の第2の態様によれば、動翼解析方法は、タービンに放射状に複数設けられた動翼より外側に固定されて設けられ前記動翼の通過を検知するセンサを備えた動翼解析装置が、時刻の経過に応じて前記センサで得られた翼通過検知信号の信号強度の所定期間の変化を示す第一の翼検知パターンデータを取得し、当該第一の翼検知パターンデータに含まれる複数の動翼についての翼通過検知信号の信号強度の所定期間の変化が示すパルス間隔の中間を含む前記動翼を検知していない不検知期間を特定し、前記翼通過検知信号の所定期間の変化において前記動翼を検知している検知期間と前記不検知期間とのうち、前記不検知期間のみにおいて前記翼通過検知信号の信号強度が閾値よりも高い翼通過検知信号の所定期間の変化を示す翼通過検知信号を前記第一の翼検知パターンデータから除去した第二の翼検知パターンデータを生成することを特徴とする。
【0010】
また上述の動翼解析方法において、前記第二の翼検知パターンデータを用いて動翼の状態を解析してよい。
【0011】
また本発明の第3の態様によれば、プログラムは、タービンに放射状に複数設けられた動翼より外側に固定されて設けられ前記動翼の通過を検知するセンサを備えた動翼解析装置のコンピュータを、時刻の経過に応じて前記センサで得られた翼通過検知信号の信号強度の所定期間の変化を示す第一の翼検知パターンデータを取得し、当該第一の翼検知パターンデータに含まれる複数の動翼についての翼通過検知信号の信号強度の所定期間の変化が示すパルス間隔の中間を含む前記動翼を検知していない不検知期間を特定し、前記翼通過検知信号の所定期間の変化において前記動翼を検知している検知期間と前記不検知期間とのうち、前記不検知期間のみにおいて前記翼通過検知信号の信号強度が閾値よりも高い翼通過検知信号の所定期間の変化を示す翼通過検知信号を前記第一の翼検知パターンデータから除去した第二の翼検知パターンデータを生成する除去手段、として機能させることを特徴とする。
【0012】
また上述のプログラムは、前記コンピュータを、前記第二の翼検知パターンデータを用いて動翼の状態を解析する解析手段として機能させてよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、センサが検出した動翼の通過を示す通過検知信号は通過時に電圧が閾値を超えるような値となる信号となるが、タービン内部の環境等によって発生した通過検知信号のノイズを除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態によるタービンの構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による動翼解析装置を示す図である。
図3】本発明の一実施形態による第一の翼通過検知信号を示す図である。
図4】本発明の一実施形態による第二の翼通過検知信号を示す図である。
図5】本発明の一実施形態による動翼解析装置の処理概要を示す第一の図である。
図6】本発明の一実施形態による動翼解析装置の処理概要を示す第二の図である。
図7】本発明の一実施形態による動翼解析装置の処理概要を示す第三の図である。
図8】本発明の一実施形態による動翼解析装置の処理概要を示す第四の図である。
図9】本発明の一実施形態による動翼解析装置のハードウェア構成図である。
図10】本発明の一実施形態による動翼解析装置の機能ブロック図である。
図11】本発明の一実施形態による動翼解析装置の処理フローを示す図である。
図12】本発明の一実施形態による解析結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態による動翼解析装置、動翼解析方法、プログラムを図面を参照して説明する。
図1は本実施形態によるタービンの構成を示す図である。
タービン100は、回転するタービンロータ9(ロータ)と、このタービンロータ9を回転可能に覆うタービンケーシング10とを有している。タービンロータ9は、回転軸9aを軸中心に有し、複数の動翼列Y1,Y2,Y3・・・を備える。動翼列Y1,Y2,Y3・・それぞれはタービンロータ9の軸方向に間を空けて設けられている。タービンケーシング10の内面の複数の動翼列Y1,Y2,Y3・・・の各間には、複数の静翼11が取り付けられている。タービンケーシング10には、動翼Y1,Y2,Y3・・の通過を検出するための第一センサ20が取り付けられている。
【0016】
図2は本実施形態による動翼解析装置を示す図である。
動翼列Y1,Y2,Y3・・はタービンロータ9の周方向に取り付けられた複数の動翼Bによりそれぞれが構成される。図2は一例として動翼列Y1に設けられた複数の動翼B(B1−1,B1−2,B1−3・・・)を示している。動翼解析装置1は動翼Bが回転する周囲に対向するタービンケーシング10の内面の位置に複数の第一センサ20を備える。他の動翼列Yについても同様に第一センサ20が備えられている。第一センサ20は動翼解析装置1の本体と電気信号ケーブルを介して接続されている。第一センサ20は動翼Bに対向する位置にタービンケーシング10に設置されている。動翼解析装置1はタービンロータ9の1回転を検出する第二センサ30を備える。第二センサ30はタービンロータ9の1回転を検出して、その検出時を示す所定のパルス波を出力するための機構を有している。
【0017】
第一センサ20は一例としてレーザ光を照射する光学式センサであってよい。第一センサ20はレーザ光が動翼Bにおいて反射した反射光を検知する。第一センサ20は受光した反射光の強度が大きいほど電圧値の大きい翼通過検知信号を出力する。第一センサ20は動翼Bが第一センサ20の直近を通過する際に大きな受光強度で反射光を受光する。従って翼通過検知信号は、第一センサ20の直近を動翼Bが通過した際に大きな電圧値を示す波形となる。第一センサ20は、静電容量センサ、渦電流センサ、電磁センサなどであってもよい。
【0018】
図3は本実施形態による第一の翼通過検知信号を示す図である。
一つの第一センサ20の出力する翼通過検知信号を図3に示す。この図が示すように翼通過検知信号は第一センサ20の直近を動翼Bが通過した際に大きな電圧値となるので、動翼がタービンロータ9の周方向に放射状に等間隔に設けられている場合には、当該信号の極大値が定期的に現れる波形となる。動翼解析装置1は翼通過検知閾値th1以上の電圧値の翼通過検知信号から各動翼Bの通過時刻を、時間を追って順次検出し、その通過時刻に基づいて動翼Bの状態を解析する。図3はノイズが含まれていない翼通過検知信号を示している。
【0019】
図4は本実施形態による第二の翼通過検知信号を示す図である。
図4はノイズが含まれている翼通過検知信号を示している。図4で示す翼通過検知信号は、10回の翼通過がP1,P2,・・・P10のパルスで表される。当該信号は、P1〜P2、P2とP3のパルス間、P3とP4のパルス間、P4とP5のパルス間、P8とP9のパルス間、P9とP10のパルス間の電圧値が図3と比較して増加し、より速いタイミングで電圧がth1を超えていることを示す。タービン100の内部を流れる作動流体が蒸気などである場合、第一センサ20は、当該作動流体で反射したレーザ光の反射光を受光することにより、図4で示すようなノイズの含まれる翼通過信号を出力する場合がある。この信号は、動翼以外の蒸気等において反射した反射光を第一センサ20で受光すること等により発生する。
【0020】
動翼解析装置1は図4で示すノイズの含まれる信号を第一センサ20から受信すると、通常より早いタイミングで動翼の通過を検知したと判断する。具体的にパルスP2を用いて説明すると、動翼解析装置1は、翼通過信号にノイズが含まれていない場合には時刻t1でP2の電圧値が第一閾値th1を上回ることを検出し、時刻t1がパルスP2の発生タイミングであると判定する。しかしながら翼通過信号に図4で示すようなノイズが含まれている場合、動翼解析装置1は時刻t1よりα分時間早い時刻t1−αでP2の電圧値が第一閾値th1を上回ることを検出し、時刻t1−αをパルスP2の発生タイミングであると判定する。タービンロータ9は単位時間当たりの回転数が高いため、動翼の通過の検知時刻の僅かなずれは、動翼解析装置1の解析結果に大きな影響を与える。翼通過検知信号は、図4で示すノイズの態様以外にも、例えば、図3で示す信号の何れかのパルス間に第一閾値th1の電圧値より僅かに電圧値が大きいパルスが生じるなどの態様を示す場合がある。この場合には動翼解析装置1は電圧値が第一閾値th1をわずかに超えるような異常なパルスの発生時刻を動翼の通過検知時刻と誤認識するおそれがある。したがって、動翼解析装置1はこのようなノイズを除去する処理を行う。
【0021】
図5は動翼解析装置の処理概要を示す第一の図である。
動翼解析装置1は第一センサ20から得られた動翼検知信号を用いて、タービンロータ9の1回転の間に発生したパルスを分割する。例えば動翼解析装置1の動翼列Y1に5つの動翼Bが設けられている場合には、第二センサ30から得られたパルス信号を基準に次の第二センサ30から1回転を示すパルス信号が得られる時刻まで1/5回転周期毎に動翼検知信号を分割する。なお第二センサ30は、タービンロータ9の1回転の検出をパルスとパルスの間の電圧値が低いタイミング、つまり動翼Bを検出しないタイミングで取得できるよう予め設計されている。動翼解析装置1は取得した動翼検知信号を分割して各パルス信号を取得する処理を繰り返す。
【0022】
図6は本実施形態による動翼解析装置の処理概要を示す第二の図である。
図6図5で示す処理によって動翼解析装置1が取得した各パルスを重畳して示したものである。この図において動翼Bを検知したことを示す信号のピークの発生時刻をピーク時刻tPと呼ぶ。また2つの動翼の間の位置を第一センサ20が検出した場合の電圧値の低い時刻をローレベル時刻tLと呼ぶ。一例としてローレベル時刻tLは、ピーク時刻tPを基準としてパルス出現周期の1/2周期前の時刻と設定さる。ローレベル時刻tLは、動翼の検出を示すパルスのピークの間隔の中間の時刻である。この図が示すように、動翼検知信号には、ローレベル時刻tLの近辺において電圧値が第二閾値th2(th2<th1)よりも大きい信号が存在する場合がある。動翼解析装置1はローレベル時刻tLにおいて電圧値が第一閾値th2よりも高い信号を、動翼以外から反射した光の受光による影響を示すノイズ信号と特定し、動翼検知信号から除去する処理を行う。これにより動翼以外の蒸気などの影響により受光した反射光に対応する信号を除去することができる。
【0023】
図7は本実施形態による動翼解析装置の処理概要を示す第三の図である。
動翼解析装置1はローレベル時刻tLを基準とした前後の期間を検知対象区間Dと記憶している。この検知対象区間Dの長さは動翼解析装置1が予め記憶する。検知対象区間Dは動翼検知信号において動翼と動翼の間を検知していると想定される電圧値の低い領域に設定される。本実施形態による動翼解析装置1は、この検知対象区間Dにおいて電圧値が第一閾値th1よりも高い信号を、ノイズの含まれる信号と特定し、動翼検知信号から除去する。
【0024】
図8は本実施形態による動翼解析装置の処理概要を示す第四の図である。
図8の左図81はノイズ除去前の動翼検知信号を示す。図8の右図82はノイズ除去後の動翼検知信号を示す。動翼解析装置1はノイズ除去を行うことにより、パルス波にノイズが含まれることによる動翼解析に生じる悪影響を軽減することができる。
【0025】
図9は本実施形態による動翼解析装置のハードウェア構成を示す図である。
図9で示すように動翼解析装置1は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、HDD(Hard Disk Drive)104、信号受信モジュール105を備えるコンピュータである。
【0026】
図10は本実施形態による動翼解析装置の機能ブロック図である。
動翼解析装置1のCPU101は予め自装置で記憶するプログラムを実行することにより、制御部111、ノイズ除去部112、解析部113、表示部114の各構成を備える。
【0027】
制御部111は動翼解析装置1に備わる他の機能部を制御する。
ノイズ除去部112は時刻の経過に応じて第一センサ20で得られた翼通過検知信号の信号強度の変化を示す第一の翼検知パターンデータを取得する。第一の翼検知パターンデータは図8の左図81で示すデータである。ノイズ除去部112は、当該第一の翼検知パターンデータに含まれる複数の動翼についての翼検知信号に基づいて動翼を検知していない不検知期間を特定する。この不検知期間が翼通過検知信号に含まれるノイズの検知対象区間となる。ノイズ除去部112は当該検知対象区間において翼検知信号の信号強度が閾値th2よりも高い翼検知信号を第一翼検知パターンデータから除去し、第二の翼検知パターンデータを生成する。第二の翼検知パターンデータは図8の右図82で示すデータである。
解析部113は第二の翼検知パターンデータを用いて動翼の状態を解析する処理を行う。
表示部114は動翼の解析結果を出力する処理部である。
【0028】
図11は本実施形態による動翼解析装置の処理フローを示す図である。
次に動翼解析装置1の処理フローについて順を追って説明する。
まず動翼解析装置1は動作中のタービン100に取り付けられた複数の第一センサ20から動翼検知信号を受信する(ステップS101)。また動翼解析装置1はタービン100に取り付けられた第二センサ30から1回転を検知した回転パルス信号を受信する(ステップS102)。
【0029】
制御部111は各信号を受信すると共に、ノイズ除去部112に対してノイズ除去を指示する。ノイズ除去部112は動翼解析装置1の受信した各信号を取得する。ノイズ除去部112は回転パルス信号と、動翼の数に基づいて、回転パルス信号の1周期の間を動翼の数で分割し、動翼の通過検知のパルスを示す第一の翼検知パターンデータを生成する(ステップS103)。ノイズ除去部112は第一の翼検知パターンデータに含まれる各翼検知信号の検知対象区間Dにおける電圧値と電圧閾値th2とを比較する。ノイズ除去部112は検知対象区間Dの時間帯における電圧値が電圧閾値th2以上となる翼検知信号を削除した第二の翼検検知パターンデータを生成する(ステップS104)。
【0030】
ノイズ除去部112は第一センサ20、第二センサ30からの信号の受信を終了するか判定する(ステップS105)。担当者などからの終了指示を入力していない場合には、信号の受信を繰り返し、ノイズ除去を行って第二の翼検知パターンデータを生成する。ノイズ除去部112はノイズ除去判定を終了すると解析部113に解析処理の実行を指示する。解析部113は第二の翼検知パターンデータを用いて解析処理を行う(ステップS106)。
【0031】
解析部113の解析処理の具体例は、例えば第二の翼検知パターンデータを用いて、時刻の経過に応じた第一センサ20それぞれにおける翼通過タイミングを特定する。解析部113は第一センサ20それぞれにおける翼通過タイミングに基づいて、第一センサ20で検出した動翼の通過の振動変位波形を生成する。
【0032】
図12は解析結果の一例を示す図である。
図12の上図121は、第一センサ20−1,20−2,20−3,・・・,20−nで検出した、各動翼B1−1,B1−2,B1−3,・・・,B1−Nの通過検知タイミングを示す。上図121の動翼B1−1についてみると、第一センサ20−1,20−2,20−3,・・・,20−nにおいて、基準のタイミングよりもτ1,τ2,τ3,・・・,τNの時間差が生じている。解析部113は、このような第二の翼検知パターンデータを用いて、図12の下図122で示すような振動変位波形を各動翼ごとに生成する。解析部113は図12の下図122の解析結果を表示部114に出力するようにしもよい。また解析部113はさらに、図12の下図122の振動変位波形に基づいて、動翼Bの不良を解析するようにしてもよい。例えば解析部113は振動変位波形の振幅が所定の閾値以上である場合に、動翼Bが不良であると解析してもよい。
【0033】
上述の動翼解析装置1は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、動翼解析装置1に上述した各処理を行わせるためのプログラムは、当該動翼解析装置1のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムを動翼解析装置1のコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0034】
また、上記プログラムは、前述した各処理部の機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0035】
1・・・動翼解析装置
20・・・第一センサ
30・・・第二センサ
B・・・動翼
Y・・・動翼列
111・・・制御部
112・・・ノイズ除去部
113・・・解析部
114・・・表示部
101・・・CPU
102・・・ROM
103・・・RAM
104・・・HDD
105・・・信号受信モジュール
図1
図2
図3
図4
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図12