(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の発電機は、設置地域の変更により定格電圧や定格周波数が変わったり、定格電圧と異なる電圧で使用したりするたびに、上記電圧調整用のつまみを調整する必要があるのに加えて、上記電流調整用のつまみを調整しなおす必要がある。したがって、調整作業が非常に面倒である。さらに、手作業による調整のため、作業者によって上記電流調整用のつまみの調整値に誤差が生じたり、設定漏れ・変更漏れが発生したりする場合がある。そうすると、適切なブレーカー遮断特性を得ることができない。具体的には、例えば、発電機が過電流状態や過負荷状態になってもブレーカーが遮断されなかったり、出力電流として流すことが可能な電流よりも低い電流でブレーカーが遮断されたりする。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、定格電圧や定格周波数が異なる地域であっても自動的に最適なブレーカー遮断特性が得られる発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係る発電機は、前記発電体の発電体容量を示す発電体容量情報及び前記発電機の出力周波数情報を含む出力情報を取得する出力情報取得部と、配電路に流れる出力電流を測定する電流計と、前記配電路に設けられたブレーカーと、前記出力情報に基づいて、前記出力電流として流すことが可能な許容電流を算出し、前記電流計で測定された測定電流が該許容電流を超えたとき、前記配電路が遮断されるように前記ブレーカーを制御する制御部とを備えている、ことを特徴とする。
【0009】
この構成によると、出力情報取得部によって取得された出力情報に基づいて算出された許容電流に基づいて、ブレーカーの遮断制御をするようにしている。このように取得された情報に基づいて許容電流を決めることにより、許容電流が変わるような環境になった場合にも、自動的に許容電流が算出されるので、最適なブレーカーの遮断特性を得ることができる。
【0010】
例えば、ブレーカーの遮断を、あらかじめ設定された固定値、例えば、発電機の定格出力に応じて定められた固定値に基づいて実行することも考えられる。しかしながら、前述のとおり、同じ定格出力の場合でも、地域による定格電圧の違いや、発電機に接続される負荷の違いによって許容電流が異なる場合がある。そのような場合には、前述のとおり、発電機が過電流状態や過負荷状態になってもブレーカーが遮断されなかったり、出力電流として流すことが可能な電流(許容電流)よりも低い電流でブレーカーが遮断したりすることがある。また、単一仕様の発電機を定格電圧や定格周波数の異なる地域で使用するために、サーマルリレーを用いてブレーカーを遮断する方法も考えられる。しかしながら、サーマルリレーを用いた場合においても、地域ごとに、サーマルリレーの遮断電流特性を調整する必要があるため、前述の調整作業に対する問題点が発生する。また、遮断電流特性の調整なしで使用をすることもできるが、上記の固定値を用いた場合と同様の問題がある。これに対し、本態様に係る技術ではそのようなことがない。
【0011】
前記出力情報取得部は、前記出力周波数情報を測定により取得する周波数測定部をさらに備え、前記制御部は、前記発電体容量情報及び前記測定によって得られた出力周波数情報とを含む出力情報に基づいて、前記発電機の許容電流を算出してもよい。
【0012】
前記出力情報取得部は、前記発電機の出力電圧情報を測定により取得する電圧測定部をさらに備え、前記制御部は、前記発電体容量情報、前記出力周波数情報及び前記出力電圧情報に基づいて、前記許容電流を算出してもよい。
【0013】
このように、測定によって取得された出力周波数情報及び出力電圧情報のうちの少なくとも一方に基づいて許容電流を算出することにより、接続先の環境にあわせた最適なブレーカーの遮断特性を得ることができる。
【0014】
前記制御部は、前記電圧測定部による測定電圧の変化に応じて前記許容電流を変化させてもよい。
【0015】
この構成によると、発電機を使用する過程において、例えば、負荷の電力消費状態が変わったり、接続される負荷自体が変わったりしたことにより、発電機の出力電圧が変わる場合においても、その出力電圧の変化に応じてブレーカーの遮断特性が変化するので、継続的に最適なブレーカーの遮断特性を得ることができる。
【0016】
前記制御部は、前記許容電流が所定の上限電流より大きい場合、前記電流計で測定された測定電流が該上限電流を超えたときに前記配電路が遮断されるように前記ブレーカーを制御してもよい。
【0017】
この構成によると、発電体の発熱に対する保護を強化することができる。
【0018】
前記電流計で測定された出力電流が前記許容電流に対して所定の割合を超えたときに警告を発する警告手段を有するようにしてもよい。
【0019】
これにより、使用者に対して使用状態に対する注意を促すことができる。また、例えば、現在の使用状態が、許容電流に対して余裕があるか否かを使用者が判断できるようにすることができる。
【0020】
本発明の第2態様に係る発電機は、前記発電体の発電体容量を示す発電体容量情報並びに前記発電機の出力周波数情報及び出力電圧情報を含む出力情報を取得する出力情報取得部と、配電路に流れる電流を測定する電流計と、前記配電路に設けられたブレーカーと、前記出力情報に基づいて、前記発電機の定格出力を特定し、前記電流計で測定された測定電流および前記出力電圧情報に基づいて算出された測定出力が該定格出力を超えたとき、前記配電路が遮断されるように前記ブレーカーを制御する制御部とを備えていることを特徴とする。
【0021】
この構成によると、第1態様と同様に、出力情報取得部によって取得された出力情報に基づいて、ブレーカーの遮断制御をするようにしている。これにより、例えば、発電機が異なる地域に移動される等して、定格出力が異なるような環境になった場合にも、自動的に定格出力が特定されるので、その定格出力に基づいた最適なブレーカーの遮断特性を得ることができる。
【0022】
前記出力情報取得部は、前記出力周波数情報を測定により取得する周波数測定部と、前記出力電圧情報を測定により取得する電圧測定部とをさらに備え、前記制御部は、前記発電体容量情報並びに前記測定によって得られた出力周波数情報及び出力電圧情報とを含む出力情報に基づいて、前記発電機の定格出力を特定してもよい。
【0023】
このように、測定によって取得された出力周波数情報及び出力電圧情報に基づいて定格出力を特定することにより、接続先の環境にあわせた最適なブレーカーの遮断特性を得ることができる。
【0024】
前記測定出力が前記定格出力に対して所定の割合を超えたときに警告を発する警告手段を有するようにしてもよい。
【0025】
この構成によると、使用者に対して使用状態に対する注意を促すことができる。また、例えば、現在の使用状態が、定格出力に対して余裕があるか否かを使用者が判断できるようにすることができる。
【0026】
前記発電機は、複数の巻線の直並列を切り替えることにより出力電圧を切り替えることができるように構成され、前記複数の巻線の中間ノードには、直並列を切り替える切替部が設けられ、前記電圧測定部は、前記中間ノードの電圧値を測定し、当該中間ノードの電圧値と前記切替部の接続状態とに基づいて前記出力電圧情報を取得するようにしてもよい。
【0027】
この構成によると、電圧測定部の測定対象となる電圧を下げることができるので、電圧測定部の耐圧を下げることができる。これにより、例えば、電圧測定部の構成を簡素化して低コスト化を図ったり、電圧測定部を小型化したりすることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、出力情報取得部によって取得された情報に基づいて自動的に許容電流が算出されるため、使用環境に応じた最適なブレーカーの遮断特性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0031】
<発電機の構成>
図1及び
図2は実施形態に係る発電機1の概略構成を示す図である。本実施形態に係る発電機1は、第1電圧V1(例えば、400V級)の三相交流出力と、第2電圧V2(例えば、200V級)の三相交流出力とを切り替えて、三相の出力端子R,S,Tに供給することができるように構成されている。
図1及び
図2に示すように、発電機1は、発電体としての三相巻線2(例えば、電機子巻線)と、三相巻線2の出力切替を行うための出力切替手段3と、過電流検出基板4と、表示部とを備えている。発電機1には、さらに、作業者等が出力電圧を調整するための電圧設定部としての電圧調整用のつまみ(図示省略)を含んでいる。電圧調整用のつまみは、例えば、ダイヤルスイッチ等で構成され、このダイヤルスイッチを調整することにより、発電機1に所望の出力電圧を出力させることができるようになっている。例えば、発電機1の設置される地域が異なる場合には、この電圧調整用のつまみによる調整が必要になる場合がある。また、負荷や配線等によって発電機1の出力電圧が下がるような場合があり、そのような場合にも電圧調整用のつまみによる出力電圧の変更が行われる。
【0032】
過電流検出基板4は、三相巻線2からの出力情報を取得する出力情報取得部5と、発電機の各種機能を制御する制御部6とを備えている。さらに、三相巻線2と三相の出力端子R,S,Tとの間を接続する、配電路としての各相の配電線には、それぞれ、ブレーカー7及び電流計としてのCT(Current Transformer)センサ8が取り付けられている。また、三相巻線2の各相は、分離された第1及び第2巻線21,22からなり、第1及び第2巻線21,22のそれぞれの発生電圧が等しくなるように構成されている。出力切替手段3は、例えば、端子台、カムスイッチ、マグネチックスイッチ等で実現することができる。
【0033】
ここで、
図1は第1電圧V1が出力されるように、すなわち第1巻線21と第2巻線22とが直列接続されるように、三相巻線2と出力切替手段3の端子とを接続した例(以下、直列接続構成という)を示しており、
図2は第2電圧V2が出力されるように、すなわち第1巻線21と第2巻線22とが並列接続されるように、三相巻線2と出力切替手段3の端子とを接続した例(以下、並列接続構成という)を示している。
【0034】
−直列接続構成−
図1に示す直列接続構成では、中性点Oと三相の出力端子R,S,Tとの間に、各相の第1巻線21と第2巻線22とが直列接続された構成を有する。具体的には、各相の第1巻線21は、一端が出力切替手段3の共通の中性点端子TOに、他端が出力切替手段3の対応する相の中継端子TR,TS,TTに接続されている。また、各相の第2巻線22は、一端がそれぞれ対応する相の中継端子TR,TS,TTに、他端がブレーカー7の一方の端子に接続されている。そして、ブレーカー7の他方の端子は、それぞれ出力端子R,S,Tに接続されている。なお、図面を見やすくする観点から、中性点Oの出力切替手段3の中性点端子TOへの接続についての図示を省略しており、
図2についても同様である。また、図面及び本実施形態の説明において、R相に対応する中継端子をTRと記載し、同様に、S相、T相に対応する中継端子をTS,TTと記載する。
【0035】
出力情報取得部5は、電圧測定部51と、周波数測定部52と、設定部53とを備えている。電圧測定部51及び周波数測定部52は、中継端子TR,TTに接続されている。
【0036】
電圧測定部51は、出力電圧情報を取得するためのものであり、(1)発電機1が何V級の発電機1かを判定する機能(配線Nv1参照)と、(2)電圧値を測定する電圧計としての機能(配線Nv2参照)と、を有している。すなわち、出力電圧情報には、(1)発電機1のクラス情報(例えば、何V級の発電機1かを示す情報)と、(2)発電機1の出力電圧の測定値(測定電圧)の情報とが含まれる。
【0037】
まず、(1)発電機1のクラス情報の取得について説明する。
図1では、200V級と400V級との切り替えができる発電機1を示しており、電圧測定部51は、中継端子TR,TTの間の電圧の有無によって、発電機が200V級と400V級とのどちらで運転しているかを判定することができるようになっている。具体的には、直列接続構成では、出力切替手段3を介して第1巻線21と第2巻線22とを接続するようにしているので、中継端子TR,TTの間に電圧が発生する。一方で、並列接続構成では、中継端子TR,TTには、第1巻線21及び第2巻線22ともに接続されておらず、中継端子TR,TTの間に電圧が発生しない。
【0038】
次に、(2)発電機1の測定電圧の取得について説明する。
図1では、電圧計として用いる配線Nv2は、中継端子TR,TTに接続されている。すなわち、電圧測定部51は、中継端子TR,TT間の電圧を測定する。そして、電圧測定部51は、中継端子TR,TT間の電圧値と、発電機1のクラス情報とに基づいて、発電機1の出力電圧を算出により求める。なお、この算出により得られた電圧値を、発電機1の測定電圧と呼ぶものとする。例えば、
図1に示す直列接続構成(400V級)の場合、中継端子TR,TTは第1巻線21と第2巻線22の中間に接続されているため、電圧測定部51で測定された電圧値を2倍して発電機1の測定電圧とし、その値を定格出力特定部61に出力する。このような測定方法を用いることにより、電圧計の耐圧を下げることができ、電圧計の小型化、低コスト化をすることができる。なお、定格出力特定部61が、電圧測定部51から発電機1のクラス情報と、中継端子TR,TT間の電圧測定値のみを受け、それらの情報に基づいて発電機1の測定電圧を算出するようにしてもよい。
【0039】
周波数測定部52は、中継端子TR,TTからの入力電圧に基づいて、発電機1の出力周波数を測定する。発電機1の出力周波数は、地域による違いがあるものの、一般的には、50Hzまたは60Hzである。したがって、周波数測定部52は、発電機1の周波数情報として、例えば、発電機が50Hzまたは60Hzのどちらの周波数で駆動されているのかを判定する。なお、発電機1がエンジン式を用いたものである場合、周波数を回転数に換算して測定(判定)するようにしてもよい。また、上記の出力周波数として測定されたものを、発電機1の測定周波数と呼ぶものとする。
【0040】
なお、電圧測定部51及び周波数測定部52への入力電圧は、TR,TT間の電圧に限定されない。例えば、電圧測定部51及び周波数測定部52のうちの少なくとも一方に入力する入力電圧は、TR,TT間の電圧に代えて、TR,TS間の電圧またはTS,TT間の電圧であってもよい。また、例えば、電圧測定部51が、TR,TS,TT間の線間電圧を全てモニタするようにしてもよいし、TR,TS,TT間の各線間電圧を平均して測定電圧としてもよい。また、中性点Oと各相の相電圧を測定電圧として使用してもよい。周波数測定部52により測定位置、測定方法についても同様である。
【0041】
設定部53は、発電機1の種別を設定することができるように構成されている。発電機1の種別とは、例えば、三相巻線2の容量(以下、発電体容量という)の大きさによって分かれた機種であり、発電機1が製造された時点で特定される。出力情報取得部5では、設定部53に設定された発電機1の種別から発電体容量に関する発電体容量情報を取得する。設定部53は、使用者による入力操作ができるように構成されていてもよく、例えば、スイッチ等で構成されている。このような構成にすることで、発電体容量の異なる発電機1に対して、同一の過電流検出基板4を適用することができる。
【0042】
図3では、設定部53としての2つのON/OFF式の設定スイッチ(例えば、ディップスイッチ)により、発電体容量の異なる4つの機種に対して同一の過電流検出基板4を適用できるようにした例を示している。例えば、
図3において、設定部53が両方“OFF”に設定された場合、発電体容量情報として、定格出力20/25[kVA]の発電機1であることが特定できる。なお、設定部53は、例えば過電流検出基板4が特定の定格出力の発電機専用である場合、なくてもかまわない。また、発電体容量情報をあらかじめ工場出荷時等に制御部6の記憶部63に記憶させるようにして、設定部53をなくしてもよい。
【0043】
制御部6は、過電流状態や過負荷状態の発生の有無を監視する。そして、所定の過電流状態及び所定の過負荷状態のうちの少なくとも一方を満たした場合に、警告の報知を行ったり、遮断制御信号CS1を出力してブレーカー7を遮断させたりする機能を有する。具体的に、制御部6は、定格出力特定部61と、許容電流の算出等の各種演算を行う演算部62と、
図3に示すようなテーブルTB等が記憶された記憶部63と、比較部64と、表示制御部65とを備えている。制御部6は、例えば、内蔵または外付けのメモリを有するマイコンで実現することができる。なお、本実施形態では、説明の便宜上、制御部6を上記のようにブロック分けしているが、制御部6の構成は、これに限定されない。例えば、制御部6として同じような機能を実現できるように構成されていればよく、各ブロックの機能を統合し、または、
図1とは異なる機能毎に分類してもかまわない。
【0044】
定格出力特定部61は、出力情報取得部5で取得された出力情報に基づいて定格出力を特定する機能を有する。例えば、出力情報取得部5から設定部53で設定された設定値及び周波数測定部52で測定された測定周波数と、電圧測定部51で判定されたクラス情報及び記憶部63のテーブルTBとを照合し、発電機1の定格出力を特定する。具体的に、例えば、
図3において設定部が両方“OFF”に設定され、周波数が50[Hz]で、クラス情報が400V級の場合、定格出力特定部61は、定格出力が20[kVA]の発電機1であり、上限電流は、Im21[A]であると特定される。
【0045】
演算部62は、定格出力特定部61で特定された定格出力と、電圧測定部51で測定された測定電圧とに基づいて許容電流の算出を行う。
【0046】
比較部64は、所定の基準値と、CTセンサ8で検知された測定電流及び「測定電流×測定電圧×√3」で算出された測定出力のうちの少なくとも一方とを比較する。そして、その比較結果に応じて、表示制御部65を介して警告表示部72(例えば、警告灯72)を表示させたり、遮断制御信号CS1を出力してブレーカー7を遮断させたりする。71は測定電圧を表示する機能を有する電圧表示部であり、73は選択された相の電流を表示する機能を有する電流表示部である。なお、表示部は、具体的な電圧値を表示するものであってもよいし、クラス(200V級/400V級)に応じて異なる態様で点灯/消灯する表示灯のようなものであってもよい。
【0047】
−並列接続構成−
次に、
図2に示す並列接続構成について具体的に説明する。なお、並列接続構成と、
図1の直列接続構成とは、基本的な構成が同様であるため、ここでは、構成の異なる点を中心に説明し、同一または類似の構成については説明を省略する場合がある。
【0048】
並列接続構成では、三相巻線2は、中性点Oと三相の出力端子R,S,Tとの間に、第1巻線21と第2巻線22とが並列接続された構成を有する。具体的には、各相の第1及び第2巻線21,22は、一端が出力切替手段3の共通の中性点端子TOに、他端がそれぞれ対応する相の出力端子R,S,Tと接続された配電路としての配電線に、接続されている。なお、並列接続構成では、中継端子TR,TTには、第1巻線21及び第2巻線22ともに接続されていない。
【0049】
図2の構成では、電圧測定部51は、上記「(2)発電機の出力電圧値の取得」について、R相及びT相に接続されたブレーカー7の三相巻線2側の端子間の電圧を測定するように構成されている。また、上記「(1)発電機のクラス情報の取得」は、
図1と同じような構成で実現されており、中継端子TR,TTの間に電圧が発生しない。したがって、電圧測定部51は、ブレーカー7の三相巻線2側の端子間で測定された電圧を、発電機1の測定電圧として定格出力特定部61に出力する。
【0050】
<発電機のブレーカー遮断動作>
次に、発電機1が過電流状態や過負荷状態になった場合におけるブレーカー7の遮断動作について、
図4及び
図5を用いて詳細に説明する。ここで、発電機の出力電圧は、電圧設定部により、所望の出力電圧に調整されているものとする。具体的には、例えば、発電機1の設置される地域に応じた定格電圧に調整されているものとする。
【0051】
まず、ステップS1において、制御部6は、出力情報取得部5で取得された出力情報に基づいて、定格出力及び上限電流の特定とともに、許容電流を算出する。
【0052】
−定格出力及び上限電流の特定、許容電流の算出−
以下、定格出力及び上限電流の特定、許容電流の算出について、
図5を用いて具体的に説明する。
【0053】
まず、ステップS11において、出力情報取得部5は、設定部53に設定された発電体容量情報を取得する。具体的には、設定部53に設定された設定値を読み出す。また、ステップS12において、周波数測定部52から測定周波数を取得する。
【0054】
ステップS13において、定格出力特定部61は、受信した設定部53の設定値(発電体容量情報)及び測定周波数に基づいて、定格出力を特定する。例えば、設定部53が両方“OFF”で周波数情報が50Hzの場合、定格出力は20[kVA]である。
【0055】
次に、定格出力特定部61は、ステップS14において電圧測定部51で取得された発電機1のクラス情報及び上記ステップS13で特定された定格出力を用いて、テーブルTBを参照し、上限電流を特定する。例えば、定格出力が20[kVA]かつ発電機1が400V級の場合、定格出力特定部61は、上限電流がIm21[A]であると特定する。また、演算部62は、電圧測定部51から発電機1の測定電圧を取得し、測定電圧と定格出力とに基づいて、発電機1の出力電流として許容可能な許容電流を算出する。許容電流は、例えば、
図6の太線で示すような直線近似の式を記憶部63に記憶しておくことで算出することができる。なお、演算部62は、発電機1の動作中、上記演算を繰り返しており、許容電流は、測定電圧の変化に応じて所定の期間毎またはリアルタイムに更新される。具体的には、
図6に示すように、測定電圧が415[V]のとき、許容電流はIm21a[A]に設定される。同様に、測定電圧が400[V]のとき、許容電流はIm21b[A]に設定され、測定電圧が380[V]のとき、許容電流はIm21[A]に設定される。また、測定電圧が380[V]以下になった場合においても、許容電流は上限電流Im21[A]以上には設定されないようになっている。
【0056】
図4に戻り、ステップS2において、比較部64は、CTセンサ8の電流値を取得する。CTセンサ8の電流値は、例えば、保護必要性の高さの観点から、R相、S相、T相のうちで一番大きな電流値を採用する。ただし、各相の電流をすべてモニタするようにしてもよいし、各相の電流を平均して測定値としてもかまわない。その後、ステップS3において、比較部64は、CTセンサ8で測定された測定電流が、定格出力特定部61により特定された上限電流に対して、所定の割合It1を超えていないかどうかを判定する。そして、所定の割合を超えている場合(ステップS3でYES)、ステップS4において警告灯(警告表示部)72を点灯させ、フローはステップS5に進む。所定の割合を超えていない場合(ステップS3でNO)、そのままフローはステップS5に進む。なお、割合It1は、例えば、1未満の数値であり、警告灯72の点灯により、測定電流値が上限電流に近づいていることを使用者に知らせることを主な目的としている。なお、本開示に係る技術は、サーマルリレーのように、電流と温度に依存するような判断手法ではないため、より正確に警告のための判断や、電流遮断に係る判断ができるという特徴がある。
【0057】
なお、ステップS3において測定電流が上限電流に対して、所定の割合It1を超えていないかどうかを判定した後に、または、ステップS3に代えて、定格出力と測定出力とに基づく警告判定をするようにしてもよい。具体的には、例えば、測定出力(測定電流×測定電圧×√3)が、ステップS13で特定された定格出力に対して、所定の割合Ptxを超えている場合に、警告灯72を点灯させるようにしてもよい。
【0058】
次に、ステップS5において、比較部64は、CTセンサ8で測定された測定電流が、上限電流に対して、所定の割合It2(It2>It1)を超えていないかどうかを判定する。そして、所定の割合を超えている場合(ステップS5でYES)、比較部64は遮断制御信号CS1を出力して、ブレーカー7を遮断させる(S6)。一方で、所定の割合It2を超えていない場合(ステップS5でNO)、フローはS7に進む。なお、ステップS6において、比較部64は、測定電流が上限電流に対して所定の割合It2を超えた瞬間にブレーカー7を遮断してもよいし、超えた割合(負荷率)に応じた時間の経過後に、ブレーカー7を遮断するようにしてもよい。以下に説明するステップS7からステップS6に遷移してブレーカー7を遮断する場合においても同様である。
【0059】
ステップS7において、比較部64は、測定出力が、ステップS13で特定された定格出力に対して、所定の割合Pt(Pt>Ptx)を超えていないかどうかを判定する。そして、所定の割合Ptを超えている場合(ステップS7でYES)、比較部64は遮断制御信号CS1を出力して、ブレーカー7を遮断させる(S6)。一方で、所定の割合Ptを超えていない場合(ステップS7でNO)、フローはS1に戻る。
【0060】
以上のように本実施形態によると、定格電圧及び定格周波数が異なる地域であっても、出力情報取得部5によって取得された出力情報に基づいて、出力電流として流すことが可能な許容電流を算出、または、定格出力を特定することができ、それらの値に基づいてブレーカーを遮断することができる。これにより、本実施形態に係る発電機1は、各地域の定格電圧や定格周波数に応じて適切な遮断特性を自動で設定することができる。さらに、測定電圧が変化するような環境においても、適切な遮断特性を自動で設定することができる。
【0061】
例えば、ブレーカー7の遮断をあらかじめ設定された固定値(例えば、固定電流値)に基づいて実行することも考えられる。しかし、固定電流値の場合、負荷の定格電圧が異なれば出力が異なる場合がある。また、負荷の変動によって出力電圧が変わる場合もある。このような場合に、上記のように固定値に基づいてブレーカーを遮断すると、過負荷状態になったり、許容電流より低い電流でブレーカーが落ちたりする場合があるが、本実施形態に係る技術ではそのようなことを防ぐことができる。
【0062】
また、発電機の出力周波数情報や、発電機のクラス情報を測定によって特定できるようにしているので、使用者の利便性を向上することができるとともに、設定ミスや設定の漏れを防止することができる。
【0063】
また、前述のとおり、単一仕様の発電機を定格電圧や定格周波数の異なる地域で使用するために、サーマルリレーを用いてブレーカーを遮断する方法が考えられる。この場合、発電機を使用する地域における定格電圧及び定格周波数に応じて、サーマルリレーの遮断電流を調整する必要がある。さらに、使用者等が負荷に応じて出力電圧を調整したりして、発電機1の出力が変わる場合には、サーマルリレーの遮断電流を調整する必要がある。
【0064】
これに対し、本実施形態に係る発電機1は、出力情報取得部5で取得された出力情報に基づいて出力電流として流すことが可能な許容電流を算出し、許容電流に基づいてブレーカー7を遮断するようにしているので、サーマルリレーを用いる必要がなく、その遮断電流を調整する必要もない。このようにサーマルリレーを用いる必要がないため、ブレーカー遮断に対する内部素子温度や筐体温度の影響を排除することができる。例えば、サーマルリレーは、運転初期において内部素子が冷たい場合に遮断時間が遅れるいわゆるコールドスタートの状態となり、通電状態が継続すると遮断時間が早まるいわゆるホットスタートの状態となるが、本実施形態の発電機はそのようなことがない。さらに、CTセンサを小型化することができるとともに、CTセンサの全測定レンジを使用できるようになる(
図7の実線参照)。具体的に、サーマルリレーを使用する場合、サーマルリレーの型式適用範囲に応じた電流をCTセンサから得る必要がある。そうすると、例えば、
図7に示すように、使用可能なCTセンサの測定レンジが、サーマルリレーの型式によって制限される。さらに、サーマルリレー内部のヒーター素子や電流計の駆動をCTセンサが負担するため、大きな定格負担が必要となりCTが大型化する。これに対し、本実施形態の発電機はそのようなことがない。
【0065】
さらに、本実施形態では、
図4にも示すように、測定電流と上限電流との対比をした後に、測定出力と定格出力との対比をするようにしている。このように、(1)まずは、電流同士を対比することにより、発電機1が過電流状態になっていないかどうかを判断することで、三相巻線2(発電体)の熱的な保護を図る、(2)次いで、出力同士を比較することにより、発電機1が過負荷状態になっていないかどうかの判断をする、というように段階的に判断している。これにより、発電機1をしっかりと保護することができるようになる。具体的には、測定出力と定格出力との対比において、「測定電流×測定電圧×√3」の式に基づいてブレーカーの遮断を判断する場合、測定電圧が小さいほど許容電流が大きくなる。そこで、上記のような上限電流を設定することにより、発電体が過度に加熱することを防止することができる。例えば、発電機1で水中ポンプ(図示省略)を駆動するような場合に、ポンプの起動時に出力電圧が下がる場合があり、このような場合に特に有効である。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態及びその変形例について説明したが、本開示に係る技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え等を行った実施形態にも適用が可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0067】
<その他の実施形態>
例えば、上記実施形態において、出力周波数情報は、周波数測定部52の測定により取得するものとしたが、これに限定されない。例えば、設定部にディップスイッチ等の周波数設定部(図示省略)を設けてもよい。この場合、定格出力特定部61は、周波数測定部52で測定された測定周波数に代えて、周波数設定部の設定値を取得し、定格出力を特定する。
【0068】
また、出力電圧情報は、電圧測定部の測定により取得するものとしたが、これに限定されない。例えば、電圧設定部の設定値を取得するようにしてもよい。具体的には、演算部62は、電圧測定部51で測定された測定電圧に代えて、電圧設定部の設定値を取得し、この設定値と、定格出力特定部61で特定された定格出力とに基づいて上限電流の特定及び許容電流を算出する。また、定格電圧のみの出力等、固定値出力にのみ対応した発電機の場合、出力電圧情報としてその固定値を用いることができる。ただし、測定電圧を用いることにより、前述のとおり、より実際の使用環境に応じた最適な動作を実現することができるメリットがある。