(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の電圧調整装置で時間判定方式を用いた場合、タップ又はスイッチを切り換えるための制御を行うまでに遅延が生じ、電圧が急峻に乱高下する電圧変動に対して、タップ又はスイッチが切り換わらないことがある。また、動作時限より長い周期の電圧変動に対しては、制御の向きと変動の向きが逆となり、頻繁な切り換えや不要な切り換えが発生することもある。一方、積分判定方式を用いた場合、急峻な電圧変動が発生したときにも、適正な電圧となるようにタップを切り換えることができるが、電圧が乱高下する度にタップ又はスイッチの切り換えが発生する可能性があり、不必要にタップ又はスイッチを切り換えてしまうことがある。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、不要なスイッチの切り換えを抑制しつつ電力伝送線の電圧を適正に調整することが可能な電圧調整装置及び電圧調整システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電圧調整装置は、電力伝送線にリアクトル又はコンデンサを並列的に接続するスイッチの切り換えを制御することにより、前記電力伝送線の電圧を調整する電圧調整装置であって、前記電力伝送線の電圧を検出する検出部と、該検出部が検出した電圧をデジタル化するA/D変換部と、該A/D変換部がデジタル化した電圧の実効値を演算して実効値信号を出力する実効値演算部と、該実効値演算部が出力した実効値信号から急峻な電圧変動成分を除去して動作判定電圧信号を出力するデジタルフィルタと、該デジタルフィルタが出力した動作判定電圧信号に基づいて、前記スイッチの切り換えが必要であるか否かを判定する判定部と、該判定部で切り換えが必要と判定した場合、前記電力伝送線の電圧を基準電圧に近づけるように、前記スイッチに切換指令を出力する切換指令部とを備え
、前記デジタルフィルタは、前記実効値演算部が所定の期間中に出力した実効値信号に対してフィルタリング処理を行い、且つ、前記実効値信号をVs、サンプリング周期をTs、前記所定の期間をTperiod、前記所定の期間中の実効値信号の数をNperiod、Z変換演算子をZとして、下記(1)式に示す演算を行うことにより、前記動作判定電圧信号VTpを算出して出力する。
【数1】
【0010】
本発明にあっては、電力伝送線の電圧を標本化してA/D変換し、変換した電圧の実効値信号をデジタルフィルタでフィルタリングして動作判定電圧信号を生成し、生成した動作判定電圧信号に基づいて、リアクトル又はコンデンサを電力伝送線に並列的に接続するスイッチの切り換えが必要と判定した場合に、スイッチの切換指令を出力する。これにより、実効値信号から急峻な電圧変動成分を除去した動作判定電圧信号に基づいて切り換えの要否が判定されるため、スイッチの不要な切り換えが抑制される。
また、本発明にあっては、所定の期間中の実効値信号をフィルタリング処理するため、所定の期間が長いほど電圧変動成分がより多く除去されて、スイッチの不要な切換がより少なくなる。更に、動作判定電圧信号を、(1)式で表されるフィルタリング処理によって算出する。これにより、実効値信号から急峻な電圧変動成分を除去した動作判定電圧信号に基づいて切り換えの要否が判定されるため、スイッチの不要な切換が好適に抑制される。
【0013】
本発明に係る電圧調整装置は、前記判定部は、前記動作判定電圧信号が予め設定された不感帯領域を逸脱した場合に、前記スイッチの切り換えが必要であると判定する。
【0014】
本発明にあっては、動作判定電圧信号が不感帯領域を逸脱した場合に素早く応答して切換指令を出力するため、電力伝送線の電圧が適正範囲を逸脱することが抑制される。
【0017】
本発明に係る電圧調整装置は、
電力伝送線にリアクトル又はコンデンサを並列的に接続するスイッチの切り換えを制御することにより、前記電力伝送線の電圧を調整する電圧調整装置であって、前記電力伝送線の電圧を検出する検出部と、該検出部が検出した電圧をデジタル化するA/D変換部と、該A/D変換部がデジタル化した電圧の実効値を演算して実効値信号を出力する実効値演算部と、該実効値演算部が出力した実効値信号から急峻な電圧変動成分を除去して動作判定電圧信号を出力するデジタルフィルタと、該デジタルフィルタが出力した動作判定電圧信号に基づいて、前記スイッチの切り換えが必要であるか否かを判定する判定部と、該判定部で切り換えが必要と判定した場合、前記電力伝送線の電圧を基準電圧に近づけるように、前記スイッチに切換指令を出力する切換指令部とを備え、前記デジタルフィルタは、
前記実効値演算部が所定の期間中に出力した実効値信号に対してフィルタリング処理を行い、且つ、前記実効値信号をVs、Z変換演算子をZ、所定のフィルタ次数をM,N、所定の係数をai(i=0,1,・・・,M),bj(j=0,1,・・・N)とし、下記(2)式に示す演算を行うことにより、前記動作判定電圧信号VTpを算出して出力し、前記所定のフィルタ次数M,N及び前記所定の係数ai,bjは、前記デジタルフィルタがローパスフィルタ又はバンドパスフィルタとして機能するように設定される。
【数2】
【0018】
本発明にあっては、
電力伝送線の電圧を標本化してA/D変換し、変換した電圧の実効値信号をデジタルフィルタでフィルタリングして動作判定電圧信号を生成し、生成した動作判定電圧信号に基づいて、リアクトル又はコンデンサを電力伝送線に並列的に接続するスイッチの切り換えが必要と判定した場合に、スイッチの切換指令を出力する。これにより、実効値信号から急峻な電圧変動成分を除去した動作判定電圧信号に基づいて切り換えの要否が判定されるため、スイッチの不要な切り換えが抑制される。
また、本発明にあっては、所定の期間中の実効値信号をフィルタリング処理するため、所定の期間が長いほど電圧変動成分がより多く除去されて、スイッチの不要な切換がより少なくなる。更に、動作判定電圧信号を、(2)式で表されるローパスフィルタ又はバンドパスフィルタを用いたフィルタリング処理によって算出する。これにより、実効値信号のうち、フィルタ次数及びフィルタ係数に応じた時間以内の急峻な電圧変動成分を除去したり、フィルタ次数及びフィルタ係数に応じた時間の電圧変動成分のみを通過させたりすることができる。
【0019】
本発明に係る電圧調整装置は、
電力伝送線にリアクトル又はコンデンサを並列的に接続するスイッチの切り換えを制御することにより、前記電力伝送線の電圧を調整する電圧調整装置であって、前記電力伝送線の電圧を検出する検出部と、該検出部が検出した電圧をデジタル化するA/D変換部と、該A/D変換部がデジタル化した電圧の実効値を演算して実効値信号を出力する実効値演算部と、該実効値演算部が出力した実効値信号から急峻な電圧変動成分を除去して動作判定電圧信号を出力するデジタルフィルタと、該デジタルフィルタが出力した動作判定電圧信号に基づいて、前記スイッチの切り換えが必要であるか否かを判定する判定部と、該判定部で切り換えが必要と判定した場合、前記電力伝送線の電圧を基準電圧に近づけるように、前記スイッチに切換指令を出力する切換指令部とを備え、前記デジタルフィルタは、
前記実効値演算部が所定の期間中に出力した実効値信号に対してフィルタリング処理を行い、且つ、前記実効値信号をVs、Z変換演算子をZ、所定のフィルタ次数をM、所定の係数をhi(i=0,1,・・・,M)とし、下記(3)式に示す演算を行うことにより、前記動作判定電圧信号VTpを算出して出力し、前記所定のフィルタ次数M及び前記所定の係数hiは、前記デジタルフィルタがローパスフィルタ又はバンドパスフィルタとして機能するように設定される。
【数3】
【0020】
本発明にあっては、
電力伝送線の電圧を標本化してA/D変換し、変換した電圧の実効値信号をデジタルフィルタでフィルタリングして動作判定電圧信号を生成し、生成した動作判定電圧信号に基づいて、リアクトル又はコンデンサを電力伝送線に並列的に接続するスイッチの切り換えが必要と判定した場合に、スイッチの切換指令を出力する。これにより、実効値信号から急峻な電圧変動成分を除去した動作判定電圧信号に基づいて切り換えの要否が判定されるため、スイッチの不要な切り換えが抑制される。
また、本発明にあっては、所定の期間中の実効値信号をフィルタリング処理するため、所定の期間が長いほど電圧変動成分がより多く除去されて、スイッチの不要な切換がより少なくなる。更に、動作判定電圧信号を、(3)式で表されるローパスフィルタ又はバンドパスフィルタを用いたフィルタリング処理によって算出する。これにより、実効値信号のうち、フィルタ次数及びフィルタ係数に応じた時間以内の急峻な電圧変動成分を除去したり、フィルタ次数及びフィルタ係数に応じた時間の電圧変動成分のみを通過させたりすることができる。
【0021】
本発明に係る電圧調整装置は、
電力伝送線にリアクトル又はコンデンサを並列的に接続するスイッチの切り換えを制御することにより、前記電力伝送線の電圧を調整する電圧調整装置であって、前記電力伝送線の電圧を検出する検出部と、該検出部が検出した電圧をデジタル化するA/D変換部と、該A/D変換部がデジタル化した電圧の実効値を演算して実効値信号を出力する実効値演算部と、該実効値演算部が出力した実効値信号から急峻な電圧変動成分を除去して動作判定電圧信号を出力するデジタルフィルタと、該デジタルフィルタが出力した動作判定電圧信号に基づいて、前記スイッチの切り換えが必要であるか否かを判定する判定部と、該判定部で切り換えが必要と判定した場合、前記電力伝送線の電圧を基準電圧に近づけるように、前記スイッチに切換指令を出力する切換指令部とを備え、前記デジタルフィルタは、前記実効値演算部が所定の期間中に出力した実効値信号に対してフィルタリング処理を行い、前記実効値演算部が前記所定の期間より短い第2の期間中に出力した実効値信号に対してフィルタリング処理を行うことにより、第2の動作判定電圧信号を出力する第2のデジタルフィルタと、前記第2の動作判定電圧信号に基づいて、前記スイッチの切り換えが必要であるか否かを判定する第2の判定部とを更に備え、前記切換指令部は、前記第2の判定部で切り換えが必要と判定した場合、前記電力伝送線の電圧を基準電圧に近づけるように、前記スイッチに切換指令を更に出力する。
【0022】
本発明にあっては、
電力伝送線の電圧を標本化してA/D変換し、変換した電圧の実効値信号をデジタルフィルタでフィルタリングして動作判定電圧信号を生成し、生成した動作判定電圧信号に基づいて、リアクトル又はコンデンサを電力伝送線に並列的に接続するスイッチの切り換えが必要と判定した場合に、スイッチの切換指令を出力する。これにより、実効値信号から急峻な電圧変動成分を除去した動作判定電圧信号に基づいて切り換えの要否が判定されるため、スイッチの不要な切り換えが抑制される。
また、本発明にあっては、所定の期間中の実効値信号をフィルタリング処理するため、所定の期間が長いほど電圧変動成分がより多く除去されて、スイッチの不要な切換がより少なくなる。更に、所定の期間より短い第2の期間中の実効値信号をフィルタリング処理して出力した第2の動作判定電圧信号に基づいてスイッチの切り換えが必要と判定した場合に、スイッチの切換指令を更に出力する。これにより、所定の期間中に出力された動作判定電圧信号に基づいてスイッチの切り換えが不要と判定された場合であっても、第2の期間中の急な電圧変動に応じてスイッチの切り換えが行われる。
【0023】
本発明に係る電圧調整装置は、前記第2の判定部は、前記第2の動作判定電圧信号が予め設定された第2の不感帯領域を逸脱した場合に、前記スイッチの切り換えが必要であると判定する。
【0024】
本発明にあっては、第2の動作判定電圧信号が第2の不感帯領域を逸脱した場合に素早く応答して切換指令が出力されるため、電力伝送線の電圧が適正範囲を逸脱することが抑制される。
【0025】
本発明に係る電圧調整装置は、前記第2のデジタルフィルタは、前記実効値信号をVs
、サンプリング周期をTs、前記第2の期間をTbase、Z変換演算子をZとして、下記(4)式に示す演算を行うことにより、前記第2の動作判定電圧信号VTbを算出して出
力する。
【数4】
【0026】
本発明にあっては、第2の動作判定電圧信号を、(4)式で表されるフィルタリング処理によって算出する。これにより、実効値信号から急峻な電圧変動成分を除去した第2の動作判定電圧信号に基づいて切り換えの要否が判定されるため、スイッチの不要な切換が好適に抑制される。
【0027】
本発明に係る電圧調整装置は、前記第2のデジタルフィルタは、前記実効値信号をVs、Z変換演算子をZ、所定のフィルタ次数をP,Q、所定の係数をck(k=0,1,・・・,P),dl(l=0,1,・・・Q)とし、下記(5)式に示す演算を行うことにより、前記第2の動作判定電圧信号VTbを算出して出力し、前記所定のフィルタ次数P,Q及び前記所定の係数ck,dlは、前記デジタルフィルタがローパスフィルタ又はバンドパスフィルタとして機能するように設定される。
【数5】
【0028】
本発明にあっては、第2の動作判定電圧信号を、(5)式で表されるローパスフィルタ又はバンドパスフィルタを用いたフィルタリング処理によって算出する。これにより、実効値信号のうち、フィルタ次数及びフィルタ係数に応じた時間以内の急峻な電圧変動成分を除去したり、フィルタ次数及びフィルタ係数に応じた時間の電圧変動成分のみを通過させたりすることができる。
【0029】
本発明に係る電圧調整装置は、前記第2のデジタルフィルタは、前記実効値信号をVs、Z変換演算子をZ、所定のフィルタ次数をP、所定の係数をfk(k=0,1,・・・,P)とし、下記(6)式に示す演算を行うことにより、前記第2の動作判定電圧信号VTbを算出して出力し、前記所定のフィルタ次数P及び前記所定の係数fkは、前記デジタルフィルタがローパスフィルタ又はバンドパスフィルタとして機能するように設定される。
【数6】
【0030】
本発明にあっては、第2の動作判定電圧信号を、(6)式で表されるローパスフィルタ又はバンドパスフィルタを用いたフィルタリング処理によって算出する。これにより、実効値信号のうち、フィルタ次数及びフィルタ係数に応じた時間以内の急峻な電圧変動成分を除去したり、フィルタ次数及びフィルタ係数に応じた時間の電圧変動成分のみを通過させたりすることができる。
【0031】
本発明に係る電圧調整装置は、
電力伝送線にリアクトル又はコンデンサを並列的に接続するスイッチの切り換えを制御することにより、前記電力伝送線の電圧を調整する電圧調整装置であって、前記電力伝送線の電圧を検出する検出部と、該検出部が検出した電圧をデジタル化するA/D変換部と、該A/D変換部がデジタル化した電圧の実効値を演算して実効値信号を出力する実効値演算部と、該実効値演算部が出力した実効値信号から急峻な電圧変動成分を除去して動作判定電圧信号を出力する複数のデジタルフィルタと、該複数のデジタルフィルタそれぞれが出力した動作判定電圧信号に基づいて、前記スイッチの切り換えが必要であるか否かを各別に判定する判定部と、該判定部で切り換えが必要と判定した場合、前記電力伝送線の電圧を基準電圧に近づけるように、前記スイッチに切換指令を出力する切換指令部とを備え、前記複数のデジタルフィルタは、前記実効値演算部が互いに異なる所定の期間中に出力した実効値信号に対してフィルタリング処理を行う。
【0032】
本発明にあっては、
電力伝送線の電圧を標本化してA/D変換し、変換した電圧の実効値信号をデジタルフィルタでフィルタリングして動作判定電圧信号を生成し、生成した動作判定電圧信号に基づいて、リアクトル又はコンデンサを電力伝送線に並列的に接続するスイッチの切り換えが必要と判定した場合に、スイッチの切換指令を出力する。これにより、実効値信号から急峻な電圧変動成分を除去した動作判定電圧信号に基づいて切り換えの要否が判定されるため、スイッチの不要な切り換えが抑制される。
また、本発明にあっては、所定の期間中の実効値信号をフィルタリング処理するため、所定の期間が長いほど電圧変動成分がより多く除去されて、スイッチの不要な切換がより少なくなる。更に、複数のデジタルフィルタ夫々が出力した動作判定電圧信号に基づいてスイッチの切り換えの要否を判定するため、各デジタルフィルタがフィルタリングする期間を適当に選択することにより、任意の電圧変動成分が除去されて、スイッチの切り換えがより好適に行われる。
【0033】
本発明に係る電圧調整システムは、上述の電圧調整装置と、前記スイッチと、該スイッチを介して前記電力伝送線に並列的に接続されるリアクトル又はコンデンサとを含む。
【0034】
本発明にあっては、不要なスイッチの切り換えを抑制しつつ電力伝送線の電圧を適正に調整することが可能な電圧調整装置が電圧調整システムに適用される。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、不要なスイッチの切り換えを抑制しつつ電力伝送線の電圧を適正に調整することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る電圧調整システムの構成例を示すブロック図である。電圧調整システム100は、分路リアクトルL1,L2(以下、単にリアクトルL1,L2と言う)と、変電所200からの三相の電力を伝送する配電線201にリアクトルL1,L2夫々を並列的に接続するスイッチS1,S2と、該スイッチS1,S2の切り換えを制御する電圧調整装置10とを含んで構成されている。配電線201は、電力系統に接続された送電線、引込線等の他の電力伝送線であってもよい。
【0038】
電圧調整システム100が、いわゆるSSRに相当する。リアクトルL1,L2及びスイッチS1,S2夫々の数は2つに限定されない。電圧調整システム100が1つのリアクトルL1及び1つのスイッチS1を備える場合、電圧調整システム100は、ShRに相当する。
【0039】
リアクトルL1,L2は、例えば、容量が夫々150kvar,300kvarである。リアクトルL1,L2の一端は、例えば中性点に接続されている。スイッチS1,S2は、例えば電磁接触器(MC:Electromagnetic Contactor )である。電圧調整装置10からの切換指令によってスイッチS1,S2の切り換えが制御されることにより、0kvar、150kvar、300kvar又は450kvarの容量のリアクトルが配電線201に投入される。ここでの切換指令は、スイッチS1,S2夫々をオン/オフする信号を組み合わせたものを言う。
【0040】
電圧調整装置10は、配電線201の電圧を検出する検出部21と、該検出部21が検出した電圧を取り込んで演算した結果に基づいてスイッチS1,S2の切り換えを制御する制御部1とを備える。検出部21は、配電線201の電圧を降圧する計測用変圧器20を介して電圧を検出する。
【0041】
制御部1は、装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit )11を有する。CPU11は、制御プログラム等の情報を記憶するROM(Read Only Memory )12、一時的に発生した情報を記憶するRAM(Random Access Memory )13、及び経過時間等を計時するタイマ14と互いにバス接続されている。制御部1が、CPUを有するマイクロコンピュータを含んで構成されていてもよい。CPU11又は上記マイクロコンピュータは、予め処理手順を定めたコンピュータプログラムを実行するように構成されていてもよい。
【0042】
CPU11には、また、検出部21からの検出結果を取り込んでA/D変換するA/D変換部15と、スイッチS1,S2の切換指令を出力する出力部16とがバス接続されている。出力部16は、出力した切換指令が、次の切換指令の出力までラッチ(保持)されるものであるが、スイッチS1,S2が例えばトグル動作するものである場合は、切換指令がラッチされなくてもよい。
【0043】
A/D変換部15は、検出部21が検出した配電線201の電圧をデジタル化する(デジタル信号に変換する)ものである。A/D変換部15は、所定の周期Tss(例えば0.1秒)毎に、アナログ信号である検出部21の検出結果を標本化及び量子化して、デジタル信号に変換する。CPU11が、検出部21の検出結果を取り込んで標本化及び量子化することにより、A/D変換部15の機能を実現するようにしてもよい。
【0044】
以上のように構成された制御部1のCPU11は、A/D変換部15がデジタル化した電圧に基づいて演算、フィルタリング、判定等の処理を行った結果に基づいて、配電線201の電圧を適正に調整すべく出力部16を用いて切換指令を出力する。即ち、CPU11は、ROM12に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、実効値演算部、デジタルフィルタ、判定部、及び切換指令部の機能を実現する。
【0045】
実効値演算部は、A/D変換部15が周期Tss毎にデジタル化した電圧の実効値を所定のサンプリング周期Ts(Ts=J×Tss:Jは2以上の整数であり、例えばJ=10)で演算し、演算した電圧の実効値を、実効値信号Vsとして出力する。
【0046】
デジタルフィルタは、実効値演算部が出力した実効値信号Vsについて、所定の演算式に基づくフィルタリング処理を所定の期間Tperiod分だけ累積的に行うことにより、配電線201で不規則に発生する電圧変動に含まれる急峻な電圧変動成分を除去する。
【0047】
具体的には、デジタルフィルタは、Z変換演算子をZとし、上述の実効値信号Vs、サンプリング周期Ts、及び所定の期間Tperiodを用いて下記(7)式に示す演算を行うことにより、実効値信号Vsから急峻な電圧変動成分を除去した動作判定電圧信号VTpを算出して出力する。下記(7)式におけるNperiodは、所定の期間Tperiod中のサンプリングデータの数を表わしている。所定の期間Tperiodの長さに応じて、電圧変動が除去される度合い(平滑化の度合い)が変化する。即ち、所定の期間Tperiodが長いほど、急激な電圧変動成分がより多く除去されて動作判定電圧信号VTpの変動が小さくなる(平滑化の度合いが大きい)。一方、所定の期間Tperiodが短いほど、急激な電圧変動成分がより少なく除去されて動作判定電圧信号VTpの変動が大きくなる(平滑化の度合いが小さい)。
【数7】
【0048】
判定部は、デジタルフィルタが出力した動作判定電圧信号VTpが、予め設定された基準電圧を含む所定の不感帯領域を逸脱しているか否かに応じて、スイッチS1,S2の切り換えの要否を判定する。この不感帯領域は、動作判定電圧信号VTpに基づいてスイッチS1,S2の切り換えが必要であるか否かを判定するための上限の閾値と下限の閾値との間の電圧領域である。例えば、基準電圧を6600[V]、基準電圧を中心とした不感帯領域の幅を±1.5%とした場合、不感帯領域は、下限値が6501[V]であり、上限値が6699[V]である。従って「動作判定電圧信号VTpが不感帯領域を逸脱する」場合とは、動作判定電圧信号VTpが不感帯領域の上限値より大きい場合、又は下限値より小さい場合の何れかである。
【0049】
具体的には、判定部は、動作判定電圧信号VTpが不感帯領域の上限値より大きい場合、配電線201の電圧を下げるべくスイッチS1,S2の切り換えが必要であると判定する。また、動作判定電圧信号VTpが不感帯領域の下限値より小さい場合、判定部は、配電線201の電圧を上げるべくスイッチS1,S2の切り換えが必要であると判定する。そして、動作判定電圧信号VTpがこれらの両方を満たさない場合、即ち、不感帯領域の上限値と下限値との範囲内(不感帯領域内)にある場合、判定部は、スイッチS1,S2の切り換えが必要でない(不要である)と判定する。
【0050】
なお、所定の期間Tperiod及び不感帯領域の設定範囲に応じて、動作判定電圧信号VTpが不感帯領域を逸脱する頻度が異なる。具体的には、所定の期間Tperiodが長いほど(平滑化の度合いが大きいほど)、また、不感帯領域が広いほど、動作判定電圧信号VTpが不感帯領域を逸脱し難くなり、スイッチS1,S2の切り換え回数を抑制できるが、配電線201の電圧が適正範囲を逸脱してしまう可能性がある。一方、所定の期間Tperiodが短いほど(平滑化の度合いが小さいほど)、また、不感帯領域が狭いほど、動作判定電圧信号VTpが不感帯領域を逸脱し易くなり、配電線201の電圧が適正範囲を逸脱するのを抑制することができるが、スイッチS1,S2の切り換え回数が多くなる。したがって、配電線201の電圧の不感帯領域からの逸脱抑制、スイッチS1,S2の切り換えの抑制等の効果を総合的に勘案して、所定の期間Tperiodの長さ(平滑化の度合い)、及び不感帯領域の範囲の広さを設定すればよい。
【0051】
切換指令部は、判定部の判定結果に基づき、スイッチS1,S2の切り換えを指示する切換指令を出力部16から出力する。これにより、スイッチS1,S2が切り換わり、配電線201に並列的に接続されるリアクトルL1,L2が変更されて配電線201の電圧が調整される。具体的には、切換指令部は、判定部の判定結果に基づいて配電線201の電圧を上げるべくスイッチS1,S2を切り換える場合、配電線201に接続するリアクトルの容量を1段階下げるように切換指令を出力する。また、判定部の判定結果に基づいて配電線201の電圧を下げるべくスイッチS1,S2を切り換える場合、切換指令部は、配電線201に接続するリアクトルの容量を1段階上げるように切換指令を出力する。一方、判定部の判定結果に基づいてスイッチS1,S2を切り換えない場合、切換指令部は、切換指令を新たに出力しないため、切換指令が変化せずに保持される。なお、配電線201に接続するリアクトルの容量が複数段階だけ上下するような切換指令を出力してもよい。
【0052】
次に、このように構成された実施の形態1に係る電圧調整装置10の制御部1の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。以下に示す処理は、ROM12に予め格納された制御プログラムに従って、CPU11により実行される。
図2は、実施の形態1に係る電圧調整システム100で配電線201の電圧調整処理を実行するCPU11の処理手順を示すフローチャートである。
図2の処理は、CPU11の初期化後に、上記サンプリング周期Tsで起動される。Ts及び後述するTssの計時には、タイマ14が用いられる。
【0053】
図2の処理が起動された場合、CPU11は、A/D変換部15に対し、検出部21の検出結果である配電線201の電圧を周期Tss(Tss=Ts/J)でJ回だけA/D変換させ(S11)、J回の変換結果の実効値を演算する(S12:実効値演算部に相当)。演算結果の実効値信号Vsは、例えばRAM13に記憶(出力)される。
【0054】
次いで、CPU11は、記憶した実効値信号Vsを用いて上記(7)式を演算することにより、実効値信号Vsから急峻な電圧変動成分を除去するフィルタリング処理を行う(S13:デジタルフィルタに相当)。処理結果の動作判定電圧信号VTpは、例えばRAM13に記憶(出力)される。
【0055】
次いで、CPU11は、記憶した処理結果の動作判定電圧信号VTpと、不感帯領域の上限値及び下限値とを比較し(S15)、比較結果に応じてスイッチS1,S2の切り換えの要否を判定する(S16:判定部に相当)。具体的には、動作判定電圧信号VTpが不感帯領域の上限値より大きい場合、CPU11は、配電線201の電圧を下げるべくスイッチS1,S2の切り換えが必要であると判定する。また、動作判定電圧信号VTpが不感帯領域の下限値より小さい場合、CPU11は、配電線201の電圧を上げるべくスイッチS1,S2の切り換えが必要であると判定する。
【0056】
上記の何れでもなく、動作判定電圧信号VTpが不感帯領域内にある場合、CPU11は、スイッチS1,S2の切り換えが不要であると判定し(S16:NO)、切換指令を新たに出力することなく
図2の処理を終了する。この場合、出力部16からの切換指令は以前のまま保持されており、スイッチS1,S2が切り換わることはない。
【0057】
一方、スイッチS1,S2の切り換えが必要と判定した場合(S16:YES)、CPU11は、配電線201の電圧が基準電圧に近づくようにスイッチS1,S2の切換指令を変化させて出力部16から出力し(S17:切換指令部に相当)、
図2の処理を終了する。この切換指令に基づいてスイッチS1,S2がを切り換わることにより、配電線201の電圧が調整される。
【0058】
より具体的には、ステップS16において、配電線201の電圧を下げるべくスイッチS1,S2の切り換えが必要であると判定した場合、CPU11は、配電線201に接続するリアクトルの容量を1段階上げるように切換指令を変化させて出力する。この切換指令に基づき、スイッチS1,S2が切り換わって、配電線201に接続するリアクトルの容量が1段階上がることにより、配電線201の電圧が1段階だけ低下する。また、ステップS16において、配電線201の電圧を上げるべくスイッチS1,S2の切り換えが必要であると判定した場合、CPU11は、配電線201に接続するリアクトルの容量を1段階下げるように切換指令を変化させて出力する。この切換指令に基づき、スイッチS1,S2が切り換わって、配電線201に接続するリアクトルの容量が1段階下がることにより、配電線201の電圧が1段階だけ上昇する。
【0059】
電圧調整装置10のCPU11は、上述の電圧調整処理を繰り返し行うことにより、配電線201の電圧から動作判定電圧信号VTpを算出し、算出した動作判定電圧信号VTpに基づいて、スイッチS1,S2の切り換えを制御する。これにより、配電線201の電圧が、適正範囲となるように自動的に調整される。なお、
図2に示す処理のうち、ステップS11〜S12の処理と、ステップS13〜S17の処理とを2つの異なる処理ルーチン(タスク)に分離することにより、A/D変換処理及び実効値演算処理と、フィルタリング処理、判定処理及び出力処理とを並列的に実行することが好ましい。
【0060】
以上のように実施の形態1によれば、配電線201の電圧を標本化してA/D変換し、変換した電圧の実効値信号Vsをデジタルフィルタでフィルタリングして動作判定電圧信号VTpを生成する。そして、生成した動作判定電圧信号VTpに基づいて、リアクトルL1,L2を配電線201に並列的に接続するスイッチS1,S2の切り換えが必要と判定した場合に、スイッチS1,S2の切換指令を出力する。従って、実効値信号Vsから急峻な電圧変動成分を除去した動作判定電圧信号VTpに基づいて切り換えの要否が判定されるため、スイッチS1,S2の不要な切り換えを抑制することができる。そして、切り換えの回数を抑制することができれば、スイッチS1,S2の寿命が延びる効果も奏する。
【0061】
(実施の形態2)
実施の形態1では、リアクトルL1,L2を配電線201に並列的に接続するスイッチS1,S2の切り換えの要否を判定して切換指令を出力した。これに対し、実施の形態2では、進相コンデンサ(以下、単にコンデンサと言う)を配電線201に並列的に接続するスイッチS1,S2,S3の切り換えの要否を判定して切換指令を出力する。
【0062】
図3は、実施の形態2に係る電圧調整システムの構成例を示すブロック図である。電圧調整システム100aは、コンデンサC1,C2,C3と、配電線201にコンデンサC1,C2,C3夫々を並列的に接続するスイッチS1,S2,S3と、該スイッチS1,S2,S3の切り換えを制御する電圧調整装置10とを含んで構成されている。スイッチS1,S2,S3夫々の一端は、コンデンサC1,C2,C3の突入電流を防止すると共に高周波電流を抑制するためのリアクトル31,32,33を介して配電線201に接続されている。電圧調整システム100aが、いわゆるSSCに相当する。
【0063】
コンデンサC1,C2,C3は、例えば、容量が夫々100kvar,200kvar,300kvarである。コンデンサC1,C2,C3の一端は、例えば中性点に接続されている。リアクトル31,32,33は、例えば容量が夫々6kvar,12kvar,18kvarである。電圧調整装置10からの切換指令によってスイッチS1,S2,S3の切り換えが制御されることにより、0kvar、100kvar、200kvar、300kvar、400kvar、500kvar又は600kvarの容量のコンデンサが配電線201に投入される。ここでの切換指令は、スイッチS1,S2,S3夫々をオン/オフする信号を組み合わせたものを言う。
【0064】
CPU11がROM12に格納されたコンピュータプログラムを実行することによって実現する機能のうち、実効値演算部、デジタルフィルタ及び判定部は実施の形態1と同様であり、切換指令部だけが異なっている。その他、実施の形態1に対応する箇所には同様の符号を付して、その説明を省略する。
【0065】
切換指令部は、判定部の判定結果に基づき、スイッチS1,S2,S3の切り換えを指示する切換指令を出力部16から出力する。これにより、スイッチS1,S2,S3が切り換わり、配電線201に並列的に接続されるコンデンサC1,C2,C3が変更されて配電線201の電圧が調整される。具体的には、切換指令部は、判定部の判定結果に基づいて配電線201の電圧を上げるべくスイッチS1,S2,S3を切り換える場合、配電線201に接続するコンデンサの容量を1段階上げるように切換指令を出力する。また、判定部の判定結果に基づいて配電線201の電圧を下げるべくスイッチS1,S2,S3を切り換える場合、切換指令部は、配電線201に接続するコンデンサの容量を1段階下げるように切換指令を出力する。一方、判定部の判定結果に基づいてスイッチS1,S2,S3を切り換えない場合、切換指令部は、切換指令を新たに出力しないため、切換指令が変化せずに保持される。なお、配電線201に接続するコンデンサの容量が複数段階だけ上下するような切換指令を出力してもよい。
【0066】
このように構成された実施の形態2に係る電圧調整装置10の制御部1の動作のうち、配電線201の電圧調整処理を実行するCPU11の処理手順を示すフローチャートは、実施の形態1の
図2に示すものと同様である。但し、切換指令部に相当するステップS17の処理内容のみが異なっている。
【0067】
具体的には、ステップS16において、配電線201の電圧を下げるべくスイッチS1,S2,S3の切り換えが必要であると判定した場合、CPU11は、配電線201に接続するコンデンサの容量を1段階下げるように切換指令を変化させて出力する(S16)。この切換指令に基づき、スイッチS1,S2,S3が切り換わって、配電線201に接続するコンデンサの容量が1段階下がることにより、配電線201の電圧が1段階だけ低下する。また、ステップS16において、配電線201の電圧を上げるべくスイッチS1,S2,S3の切り換えが必要であると判定した場合、CPU11は、配電線201に接続するコンデンサの容量を1段階上げるように切換指令を変化させて出力する(S16)。この切換指令に基づき、スイッチS1,S2,S3が切り換わって、配電線201に接続するコンデンサの容量が1段階上がることにより、配電線201の電圧が1段階だけ上昇する。
【0068】
以上のように実施の形態2によれば、配電線201の電圧を標本化してA/D変換し、変換した電圧の実効値信号Vsをデジタルフィルタでフィルタリングして動作判定電圧信号VTpを生成する。そして、生成した動作判定電圧信号VTpに基づいて、コンデンサC1,C2,C3を配電線201に並列的に接続するスイッチS1,S2,S3の切り換えが必要と判定した場合に、スイッチS1,S2,S3の切換指令を出力する。従って、実効値信号Vsから急峻な電圧変動成分を除去した動作判定電圧信号VTpに基づいて切り換えの要否が判定されるため、スイッチS1,S2,S3の不要な切り換えを抑制することができる。そして、切り換えの回数を抑制することができれば、スイッチS1,S2,S3の寿命が延びる効果も奏する。
【0069】
また、実施の形態1(又は実施の形態2)によれば、所定の期間中の実効値信号Vsをフィルタリング処理するため、所定の期間が長いほど電圧変動成分がより多く除去されて、スイッチS1,S2(又はS1,S2,S3)の不要な切換がより少なくなる。
【0070】
更に、実施の形態1又は実施の形態2によれば、動作判定電圧信号VTpが不感帯領域を逸脱した場合に素早く応答して切換指令を出力するため、配電線201の電圧が適正範囲を逸脱するのを抑制することができる。
【0071】
更に、実施の形態1(又は実施の形態2)によれば、動作判定電圧信号を、(7)式で表されるフィルタリング処理によって算出する。従って、実効値信号Vsから急峻な電圧変動成分を除去した動作判定電圧信号VTpに基づいて切り換えの要否が判定されるため、スイッチS1,S2(又はS1,S2,S3)の不要な切換を好適に抑制することができる。
【0072】
なお、実施の形態1(又は実施の形態2)における判定部にあっては、動作判定電圧信号VTpが不感帯領域を逸脱したときに、スイッチS1,S2(又はS1,S2,S3)の切り換えが必要であると判定する場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、判定部が、デジタルフィルタから入力される動作判定電圧信号VTpが不感帯領域を逸脱した期間が所定時間以上継続した場合に、スイッチS1,S2(又はS1,S2,S3)の切り換えが必要であると判定してもよい。また、判定部が、動作判定電圧信号VTpと不感帯領域との差電圧を積分し、当該積分値が所定値以上となった場合に、スイッチS1,S2(又はS1,S2,S3)の切り換えが必要であると判定してもよい。更に、判定部が、差電圧ではなく動作判定電圧信号VTpを積分し、当該積分値が所定の範囲を逸脱した場合に、スイッチS1,S2(又はS1,S2,S3)の切り換えが必要であると判定してもよい。このようにすることで、電圧調整装置10が複数台直列に連系されている場合に、動作ハンチング(前後の電圧調整装置10同士で不要動作を繰り返す現象)を防止できる。
【0073】
また、実施の形態1(又は実施の形態2)における判定部にあっては、デジタルフィルタからの動作判定電圧信号VTpに基づいてスイッチS1,S2(又はS1,S2,S3)の切り換えが必要であるか否かを判定する場合を例に説明したが、少なくとも動作判定電圧信号VTpを用いてスイッチS1,S2(又はS1,S2,S3)の切り換えの要否を判定するものであれば、これに限定されない。例えば、判定部は、動作判定電圧信号VTpの他に、検出部21が検出した配電線201の電圧を監視し、動作判定電圧信号VTpが不感帯領域を逸脱した場合、及び配電線201の電圧が該電圧に対する不感帯領域を逸脱した場合の両方を満たす場合に、スイッチS1,S2(又はS1,S2,S3)の切り換えが必要であると判定してもよい。このときの配電線201の電圧は、実効値演算部が演算した実効値信号Vsが用いられる。なお、この配電線201の電圧によるスイッチS1,S2(又はS1,S2,S3)の切り換えの要否判定において、上述した時間判定方式又は積分判定方式を用いてもよい。
【0074】
更に、実施の形態1又は実施の形態2にあっては、リアクトルL1,L2又はコンデンサC1,C2,C3が、スイッチS1,S2又はスイッチS1,S2,S3とリアクトル31,32,33とを介して、実質的には配電線201に並列に接続される場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、配電線201に一次巻線が並列に接続された変圧器の二次巻線にスイッチS1,S2,S3夫々を介してコンデンサC1,C2,C3が並列に接続されていてもよい。また例えば、配電線201に巻線が並列に接続された単巻型変圧器のタップ(スイッチに相当)と、配電線201に接続された巻線の一端とは反対側の他端との間にコンデンサが並列に接続されていてもよい。この場合は、タップ(スイッチ)の切り換えに伴う変圧比の変化に応じて、コンデンサの容量の一次換算値が変化することとなる。
【0075】
(変形例)
実施の形態1では、デジタルフィルタに、上記(7)式の演算式を用いてフィルタリング処理を行う場合を例に説明したが、これに限定されない。例えば、下記(8)式の演算式、又は、下記(9)式の演算式を用いてもよい。この場合、当該デジタルフィルタを、低域の周波数帯域を通過させるローパスフィルタ、又は低域における必要な範囲の周波数帯のみを通過させるバンドパスフィルタとして機能するように、(8)式及び(9)式におけるフィルタ次数及びフィルタ係数を設定しておく。
【数8】
【0076】
例えば、具体例1として上記(8)式を用いた場合、下記(8−1)式のように、フィルタ次数及びフィルタ係数を設定することにより、デジタルフィルタは、10分で追従する2次のローパスフィルタとして機能し、10分以下の急峻な電圧変動成分を除去する。
図4のAは変形例に係る電圧調整装置10における具体例1のデジタルローパスフィルタの周波数特性を示す特性図、Bはステップ応答特性を示す特性図である。
【数9】
【0077】
また、上記(8)式を用いた場合、下記(8−2)式のように、フィルタ次数及びフィルタ係数を設定することにより、デジタルフィルタは、30秒の電圧変動成分のみを抜き出す2次のバンドパスフィルタとして機能する。
図5のAは変形例に係る電圧調整装置10における具体例1のデジタルバンドパスフィルタの周波数特性を示す特性図、Bはステップ応答特性を示す特性図である。
【数10】
【0078】
一方、具体例2として上記(9)式を用いた場合、下記(9−1)式のように、フィルタ次数及びフィルタ係数を設定することにより、デジタルフィルタは、10分で追従する540次のローパスフィルタとして機能し、10分以下の急峻な電圧変動成分を除去する。
図6のAは変形例に係る電圧調整装置10における具体例2のデジタルローパスフィルタの周波数特性を示す特性図、Bはステップ応答特性を示す特性図である。係数Xiは、デジタルフィルタが、
図6のAに示す周波数特性及び
図6のBに示すステップ応答特性となる係数である。また、このときのフィルタ次数は、サンプリング周期を1[s]にして算出した次数であり、実際に適用する場合には、膨大な計算となる可能性があるため、サンプリング周期Tsを大きくする等の対処をしておくことが好ましい。
【数11】
【0079】
また、上記(9)式を用いた場合、下記(9−2)式のように、フィルタ次数及びフィルタ係数を設定することにより、デジタルフィルタは、30秒の電圧変動成分のみを抜き出す46次のバンドパスフィルタとして機能する。
図7のAは変形例に係る電圧調整装置10における具体例2のデジタルバンドパスフィルタの周波数特性を示す特性図、Bはステップ応答特性を示す特性図である。係数Xiは、デジタルフィルタが、
図7のAに示す周波数特性及び
図7のBに示すステップ応答特性となる係数である。
【数12】
【0080】
上述のとおり、デジタルフィルタがローパスフィルタ又はバンドパスフィルタとして機能するように(8)式または(9)式のフィルタ次数及びフィルタ係数を設定することにより、(7)式の代わりに、(8)式又は(9)式を代用してもよい。但し、デジタルフィルタに(7)式の演算式を用いる場合、(8)式及び(9)式のように、フィルタ次数及びフィルタ係数を設定する必要がなく、容易に設計することができる。一方、デジタルフィルタに(8)式又は上記(9)式の演算式を用いた場合、設定するフィルタ次数及びフィルタ係数に応じて、除去したい周波数を調整することができる。従って、除去したい電圧変動成分が分かっている場合に、当該電圧変動成分のみを除去するように、細かく調整することができる。なお、利用する電圧調整装置10に応じて、適宜、(7)式又は(9)式の何れかを利用すればよい。(8−1)式,(8−2)式,(9−1)式,及び(9−2)式におけるフィルタ次数及びフィルタ係数は一例であり、上述したものに限定されるものではない。
【0081】
以上のように本変形例によれば、動作判定電圧信号VTpを、(8)式又は(9)式で表されるローパスフィルタ又はバンドパスフィルタを用いたフィルタリング処理によって算出してもよい。この場合、実効値信号Vsのうち、フィルタ次数及びフィルタ係数に応じた時間以内の急峻な電圧変動成分を除去したり、フィルタ次数及びフィルタ係数に応じた時間の電圧変動成分のみを通過させたりすることができる。
【0082】
(実施の形態3)
実施の形態1が、デジタルフィルタが出力した動作判定電圧信号VTpに基づいてスイッチS1,S2の切り換えの要否を判定する形態であるのに対し、実施の形態3は、2つの相異なるデジタルフィルタが夫々出力した動作判定電圧信号に基づいてスイッチS1,S2の切り換えの要否を判定する形態である。CPU11は、ROM12に格納されたコンピュータプログラムを実行することにより、第2のデジタルフィルタ及び第2の判定部の機能を更に実現する。
【0083】
実施の形態1に係る電圧調整装置10において、デジタルフィルタが行うフィルタリング処理では、所定の期間Tperiodにおいて急峻とされる電圧変動成分を除去できるが、実系統においては、種々の要因による電圧変動が存在している。例えば、短期間で急な変動(乱高下)が発生することもある。このような状況において、実施の形態1におけるデジタルフィルタでは、所定の期間Tperiodにおける急峻な電圧変動を除去するため、当該期間Tperiodと比較して短い期間における急峻な電圧変動をフィルタリング処理により除去してしまう場合がある。このため、実施の形態1では、配電線201に接続された機器に悪影響を及ぼす急な乱高下を無視してしまう可能性があり、この場合はスイッチS1,S2が切り換わらない。そこで、本実施の形態3では、上記のデジタルフィルタとは異なる第2のデジタルフィルタを更に追加し、短期間における急な電圧変動に対応できるようにする。
【0084】
実施の形態3に係る電圧調整システムのブロック構成は、実施の形態1に係る電圧調整システム100と同様であるため、図示を省略すると共に、実施の形態1に対応する箇所には同様の符号を付してその説明を省略する。
【0085】
第2のデジタルフィルタは、実効値信号Vsを入力として、当該実効値信号Vsから、実施の形態1でフィルタリング処理した所定の期間Tperiodよりも短い第2の期間Tbaseにおける急峻な電圧変動成分を除去する。
【0086】
具体的には、第2のデジタルフィルタは、上述の実効値信号Vs、サンプリング周期Ts、第2の期間Tbase、及びZ変換演算子Zを用いて、下記(10)式に示す演算を行うことにより、実効値信号Vsから急峻な電圧変動成分を除去した第2の動作判定電圧信号VTbを算出して出力する。下記(10)式におけるNbaseは、第2の期間Tbase(Tbase<Tperiod)中のサンプリングデータの数を表わしている。第2のデジタルフィルタにおいて、第2の期間Tbaseが所定の期間Tperiodよりも短いため、除去される電圧変動成分は少なくなり、第2の動作判定電圧信号VTbは、同じ期間中の動作判定電圧信号VTpと比較して、電圧変動が大きくなる(平滑化の度合いが小さい)。
【数13】
【0087】
なお、第2のデジタルフィルタにおいても、実施の形態1のデジタルフィルタと同様に、下記(11)式または下記(12)式に示す演算式を用いて、フィルタリング処理を行うようにしてもよい。但し、第2のデジタルフィルタに上記(10)式の演算式を用いる場合は、下記(11)式または下記(12)式の演算式を用いる場合と比較して、第2のデジタルフィルを容易に設計することができる。
【数14】
【0088】
第2の判定部は、第2のデジタルフィルタが出力した第2の動作判定電圧信号VTbが、予め設定された基準電圧を含む第2の不感帯領域を逸脱している場合に、判定部による動作判定電圧信号VTpに基づく判定結果に関わらず、スイッチS1,S2の切り換えが必要であると判定する。この第2の不感帯領域は、第2の動作判定電圧信号VTbに基づいてスイッチS1,S2の切り換えが必要であるか否かを判定するための上限の閾値と下限の閾値との間の電圧領域である。
【0089】
具体的には、第2の判定部は、第2の動作判定電圧信号VTbが第2の不感帯領域の上限値より大きい場合、配電線201の電圧を下げるべくスイッチS1,S2の切り換えが必要であると判定する。また、第2の動作判定電圧信号VTbが第2の不感帯領域の下限値より小さい場合、第2の判定部は、配電線201の電圧を上げるべくスイッチS1,S2の切り換えが必要であると判定する。そして、第2の動作判定電圧信号VTbがこれらの両方を満たさない場合、即ち、第2の不感帯領域の上限値と下限値との範囲内(第2の不感帯領域内)にある場合、引き続いて判定部が、動作判定電圧信号VTpが不感帯領域を逸脱しているか否かに基づいて、スイッチS1,S2の切り換えの要否を判定する。判定部の処理内容については、実施の形態1と同様である。
【0090】
なお、実施の形態1と同様に、配電線201の電圧の不感帯領域からの逸脱抑制、スイッチS1,S2の切り換えの抑制等の効果を総合的に勘案して、第2の不感帯領域の広さ、及び、第2の期間Tbaseの長さ(平滑化の度合い)を設定すればよい。
【0091】
切換指令部は、判定部及び第2の判定部の判定結果に基づき、スイッチS1,S2の切り換えを指示する切換指令を出力部16から出力する。具体的には、切換指令部は、判定部又は第2の判定部の判定結果に基づいて配電線201の電圧を上げるべくスイッチS1,S2を切り換える場合、配電線201に接続するリアクトルの容量を1段階下げるように切換指令を出力する。また、切換指令部は、判定部又は第2の判定部の判定結果に基づいて配電線201の電圧を下げるべくスイッチS1,S2を切り換える場合、配電線201に接続するリアクトルの容量を1段階上げるように切換指令を出力する。一方、判定部及び第2の判定部の判定結果に基づいてスイッチS1,S2を切り換えない場合、切換指令部は、切換指令を変化させずに保持する。
【0092】
次に、このように構成された実施の形態3に係る電圧調整装置10の制御部1の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。
図8は、実施の形態3に係る電圧調整システム100で配電線201の電圧調整処理を実行するCPU11の処理手順を示すフローチャートである。
図8の処理は、CPU11の初期化後に、前述のサンプリング周期Tsで起動される。
【0093】
図8に示すステップS21〜23及びステップS29,S27の処理内容は、実施の形態1の
図2に示すステップS11〜13及びステップS16,S17と同様であるため、その説明の一部を省略する。以下では、実施の形態1で用いたデジタルフィルタによるフィルタリングを第1フィルタリング処理と言い、第2のデジタルフィルタによるフィルタリングを第2フィルタリング処理と言う。
【0094】
図8の処理が起動された場合、CPU11は、A/D変換部15に対し、検出部21の検出結果である配電線201の電圧を周期TssでJ回(J=Ts/Tss)だけA/D変換させ(S21)、J回の変換結果の実効値を演算して(S22:実効値演算部に相当)、演算結果の実効値信号VsをRAM13に記憶する。
【0095】
次いで、CPU11は、記憶した実効値信号Vsを用いて上述の(7)式を演算することにより、第1フィルタリング処理を行い(S23:デジタルフィルタに相当)、第1の処理結果として動作判定電圧信号VTpを算出してRAM13に記憶する。更にCPU11は、記憶した実効値信号Vsを用いて上述の(10)式を演算することにより、第2フィルタリング処理を行い(S24:第2のデジタルフィルタに相当)、第2の処理結果として第2の動作判定電圧信号VTbを算出してRAM13に記憶する。
【0096】
次いで、CPU11は、記憶した第2の処理結果である第2の動作判定電圧信号VTbと、第2の不感帯領域の上限値及び下限値とを比較し(S25)、比較結果に応じてスイッチS1,S2の切り換えの要否を判定する(S26:第2の判定部に相当)。具体的には、第2の動作判定電圧信号VTbが第2の不感帯領域の上限値より大きい場合、CPU11は、配電線201の電圧を下げるべくスイッチS1,S2の切り換えが必要であると判定する。また、第2の動作判定電圧信号VTbが第2の不感帯領域の下限値より小さい場合、CPU11は、配電線201の電圧を上げるべくスイッチS1,S2の切り換えが必要であると判定する。
【0097】
上記の何れでもなく、第2の動作判定電圧信号VTbが第2の不感帯領域内にある場合(S26:NO)、CPU11は、記憶した第1の処理結果である動作判定電圧信号VTpと、不感帯領域の上限値及び下限値とを比較し(S28)、比較結果に応じてスイッチS1,S2の切り換えの要否を判定する(S29:判定部に相当)。動作判定電圧信号VTpが不感帯領域内にある場合、CPU11は、スイッチS1,S2の切り換えが不要であると判定し(S29:NO)、切換指令を新たに出力することなく
図8の処理を終了する。
【0098】
一方、ステップS26にてスイッチS1,S2の切り換えが必要と判定した場合(S26:YES)、又はステップS29にてスイッチS1,S2の切り換えが必要と判定した場合(S29:YES)、CPU11は、配電線201の電圧が基準電圧に近づくようにスイッチS1,S2の切換指令を変化させて出力部16から出力し(S27:切換指令部に相当)、
図8の処理を終了する。
【0099】
電圧調整装置10のCPU11は、上述の電圧調整処理を繰り返し行うことにより、配電線201の電圧から動作判定電圧信号VTp及び第2の動作判定電圧信号VTbを算出し、動作判定電圧信号VTp及び第2の動作判定電圧信号VTbに基づいて、スイッチS1,S2の切り換えを制御する。これにより、配電線201の電圧が、適正範囲となるように自動的に調整される。
【0100】
なお、本実施の形態3にあっては、CPU11によって2種類のデジタルフィルタが実現される場合を例に説明したが、これに限定されず、複数種類のデジタルフィルタが実現されるようにしてもよい。この場合、各デジタルフィルタがフィルタリングする期間をそれぞれ異ならせておくことによって、任意の電圧変動成分が除去されるため、様々な電圧変動成分に対応して、スイッチS1,S2の切り換えを適正に行うことができる。
【0101】
以上のように本実施の形態3によれば、所定の期間Tperiodより短い第2の期間Tbase中の実効値信号Vsをフィルタリング処理して出力した第2の動作判定電圧信号VTbに基づいてスイッチS1,S2の切り換えが必要と判定した場合に、スイッチS1,S2の切換指令を更に出力する。従って、所定の期間Tperiod中に出力した動作判定電圧信号VTpに基づいてスイッチS1,S2の切り換えが不要と判定された場合であっても、第2の期間Tbase中の急な電圧変動に応じてスイッチS1,S2の切り換えを行うことができる。
【0102】
また、実施の形態3によれば、第2の動作判定電圧信号が第2の不感帯領域を逸脱した場合に素早く応答して切換指令が出力されるため、配電線201の電圧が適正範囲を逸脱するのを抑制することができる。
【0103】
更に、実施の形態3によれば、第2の動作判定電圧信号を、(10)式で表されるフィルタリング処理によって算出する、従って、実効値信号Vsから急峻な電圧変動成分を除去した第2の動作判定電圧信号VTbに基づいて切り換えの要否が判定されるため、スイッチS1,S2の不要な切換を好適に抑制することができる。
【0104】
更に、実施の形態3によれば、第2の動作判定電圧信号VTbを、(11)式又は(12)式で表されるローパスフィルタ又はバンドパスフィルタを用いたフィルタリング処理によって算出してもよい。この場合、実効値信号Vsのうち、フィルタ次数及びフィルタ係数に応じた時間以内の急峻な電圧変動成分を除去したり、フィルタ次数及びフィルタ係数に応じた時間の電圧変動成分のみを通過させたりすることができる。
【0105】
更に、実施の形態3によれば、複数のデジタルフィルタ夫々が出力した動作判定電圧信号に基づいてスイッチS1,S2の切り換えの要否を判定してもよい。この場合、各デジタルフィルタがフィルタリングする期間を適当に選択することにより、任意の電圧変動成分が除去されるため、スイッチS1,S2の切り換えをより好適に行うことができる。
【0106】
更に、実施の形態1、2、3又は変形例によれば、不要なスイッチの切り換えを抑制しつつ配電線201の電圧を適正に調整することが可能な電圧調整装置10を電圧調整システム100又は100aに適用することができる。
【0107】
以下では、実施の形態1に係る電圧調整システム100によって配電線201の電圧を調整した場合と、従来の時間判定方式によって調整した場合とをシミュレーションで比較検証した結果について説明する。電圧調整システム100は、(7)式に示す演算を行うデジタルフィルタを用い、スイッチS1を切り換えてリアクトルL1を投入/開放するもの、即ちShRとして動作するものである。解析条件は以下のとおりである。
【0108】
(a)電圧のサンプリング周期Ts:1秒
(b)基準電圧:6600V
(c)基準電圧に対する不感帯領域の幅:1.5%(±99V)
(d)リアクトルL1の投入/開放による制御量:100V
(e)従来の時間判定方式による時限制御の動作時限:15秒
(f)デジタルフィルタリング処理における所定の期間Tperiod:120秒
【0109】
図9のAは調整前の配電線201の電圧の時間推移を示すグラフ、Bは従来の方法による調整後の配電線201の電圧の時間推移を示すグラフ、Cは従来の方法によるリアクトルL1の開放及び投入の時間推移を示すグラフである。
図10のAはデジタルフィルタが出力する動作判定電圧信号VTpの時間推移を示すグラフ、Bは電圧調整システム100による調整後の配電線201の電圧の時間推移を示すグラフ、Cは電圧調整システム100によるリアクトルL1の開放及び投入の時間推移を示すグラフである。
【0110】
図9及び
図10における各グラフの横軸は時間(s)を表し、縦軸は電圧(kV)又はリアクトルL1の開放/投入の状態を表す。
図9のA及びBと、
図10のA及びBとに示す破線は、不感帯領域の上限の電圧及び下限の電圧である。
図10のAに示す破線はリアクトルL1の開放/投入を行う前における仮の動作判定電圧信号の時間推移であり、実線はリアクトルL1の開放/投入を行った後における実際の動作判定電圧信号VTpの時間推移である。
【0111】
シミュレーションの結果、16000秒間における制御回数(スイッチS1の切り換え回数)は、従来の時間判定方式によれば56回であるのに対し、電圧調整システム100によれば20回に低減されている。従って、電圧調整システム100では、従来との比較でスイッチS1の切り換えが好適に抑制されることが示された。以下、
図9及び10を用いて説明する。
【0112】
図9のAに示すように、調整前の配電線201の電圧は、全体的に基準電圧よりも100V前後高く、比較的周期が短い電圧変動によって乱高下している。この電圧を時間判定方式によって調整した結果、
図9のBに示すように、調整後の電圧が、平均的には基準電圧にほぼ一致するように調整されているものの、比較的短い(但し動作時限よりも長い)周期で頻繁に不感帯領域を逸脱していることが分かる。このため、
図9のCに示すように、リアクトルL1の投入及び開放が比較的短い周期で行われている。
【0113】
一方、
図10のAに示すように、配電線201の電圧をA/D変換処理、実効値演算処理及びフィルタリング処理した動作判定電圧信号VTpでは、比較的周期が短い電圧変動が平滑化されていることが分かる。この動作判定電圧信号VTpに基づいて配電線201の電圧を調整した結果、
図10のBに示すように、調整後の電圧が、平均的には基準電圧にほぼ一致するように調整されると共に、比較的短い周期で不感帯領域を逸脱することが抑制されていることが分かる。このため、
図10のCに示すように、リアクトルL1の投入及び開放が比較的短い周期で行われることがなく、トータルの制御回数が十分に抑制されている。よって、本シミュレーションの結果においても、電圧調整システム100は、不要なスイッチS1の切り換えが抑制されていると言える。
【0114】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、各実施の形態で記載されている技術的特徴は、お互いに組み合わせることが可能である。