(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
動力を伝達する伝動ベルトとして、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルトなどの摩擦伝動ベルトが知られている。穀物乾燥機に代表される農業機械に用いられる搬送装置(昇降機)には、米、麦、粟(あわ)、稗(ひえ)、豆、黍(きび)等の穀物(搬送対象物)の乾燥作業において、搬送・乾燥を連続して繰り返し行うために、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルトなどの無端状の摩擦伝動ベルトに、バケットを取り付けたものが使用されている(特許文献1〜3参照)。なお、平ベルトには横振れ防止のためにV桟付きの平ベルトも含まれる。
【0003】
乾燥機を使って穀物を乾燥する工程では、穀物をバケットですくい取り、搬送して吐き出す一連の作業で穀物の取りこぼしが多く見られる。その原因として、バケットの余剰な量のすくい取り、バケットが進行方向(走行方向)に対し縦または横に振れること等が挙げられる。取りこぼした穀物は貯留部に戻ることになるが、Vベルト、Vリブドベルト、V桟付き平ベルトを用いた場合には、こぼれた穀物の一部がプーリの外周に設けられたV形状をした溝に入り込み、ベルトとプーリとの間に押圧されて噛み込むことがある。そして、その噛み込みによりベルトがスリップすると、搬送機能が低下し、乾燥効率も悪化してしまう。また、V形状をした溝の底に穀物が蓄積して、プーリが「底上げ」状態になると、プーリに巻き掛けられたベルトの過張力から、ベルトの耐久性が低下したり、ベルトの溝へのくさび効果の低下により伝達能力が低下したりする。
【0004】
上記問題を解決するために、特許文献4(段落0018参照)には、プーリとベルトの隙間に穀粒が挟まれることによる、プーリとベルトの損傷を防止するために、穀粒噛み込み防止装置がプーリの真上を隙間なく覆った構成が開示されている。即ち、プーリの上方にカバーを別個に設けて、ベルトとプーリとの隙間に穀物の一部が入るのを防止する構成である。
【0005】
もっとも、特許文献4の構成では、別個にカバー(穀粒噛み込み防止装置)を設ける必要があり、搬送装置が大型化(高コスト化)してしまう。また、穀粒噛み込み防止装置がプーリの真上を隙間なく覆ったとしても下方から穀物の一部が入り込む場合もあり、その際にプーリに取り付いた穀物の一部を取り除くときには、カバー(穀粒噛み込み防止装置)を取り外すなどメンテナンスが煩雑化することもある。
【0006】
この点、特許文献5には、2個の円筒体をそれぞれアームを介してボスに固着したプーリを備えたベルト駆動装置において、このプーリの2個の円筒体を対向させて溝部を形成し、各円筒体のアームをそれぞれ対向しないようにして空隙部を設けた構成が開示されている。これにより、カバーのような別個の装置を設けることなく、溝部に進入した穀粒を空隙部から排出することにより溝部に穀粒が蓄積するのを防止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献5に開示されたプーリには、バケットを付設した平ベルトの内周面に溝部に遊嵌する突起状の振れ防止体を一体的に設けたベルトが使用されている。即ち、ベルトの振れ防止体は、溝部に対して遊嵌(当接せず、嵌合もせず、ある程度の隙間がある)しており、ベルトとプーリとの間における摩擦による動力を伝達する機能を有していない。これは、特許文献5の構成においては、摩擦による動力伝達機能は平ベルト部分で行い、振れ防止体は溝部に対して距離をとること(遊嵌)により、振れ防止体と溝部とが当接・嵌合する場合に比べて、振れ防止体と溝部との間に穀粒が入り込み破砕されることによる破米の付着・蓄積のリスクを低減させたものであると考えられる。
【0009】
このように、特許文献5の構成は、動力伝達機能が平ベルト部分とプーリの外周面との間に生じるベルトに適用されるものであり、Vベルト、Vリブドベルト、V桟付の平ベルトのように動力伝達機能が、プーリの溝部とV形状をしたベルト側面(プーリの溝部との嵌合部分)との間に生じるベルトには適用できない発想である。
【0010】
また、特許文献5の構成では、ベルトの振れ防止体は、溝部に対して遊嵌(当接せず、嵌合もせず、ある程度の隙間がある)していることから、ベルトの進行方向(走行方向)に対して垂直方向の振れが生じ、バケットから穀粒がこぼれ易くなってしまう問題が生じる。
【0011】
そこで、本発明は、搬送装置を大型化せず、メンテナンスも簡易なまま、プーリとの嵌合部分がV形状をしたベルトを使用して、ベルトの進行方向(走行方向)に対して垂直方向の振れを防止しつつ、穀物の一部がプーリの外周やプーリの外周に設けられたV形状をした溝に蓄積するのを防止することができる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、プーリとの嵌合部分がV形状をしたベルトを、複数のプーリ間に巻き掛けて使用する搬送装置であって、
前記プーリは、
当該プーリの外周に設けられ、前記ベルトの嵌合部分に嵌合する、V形状をした溝と、
当該プーリの側面に設けられた排出口と、を有し、
前記溝の底部は、前記排出口まで連通していることを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、搬送装置で搬送対象物(穀物など)を搬送する場合に、搬送対象物やその破片がプーリの溝に入ったとしても、搬送対象物やその破片は溝の底部から排出口を通ってプーリの側面から排出される。これにより、溝に排出口のような逃げ道がない従来のプーリのように、溝に搬送対象物やその破片が入り込み、入り込んだ搬送対象物やその破片がベルトとプーリとの間で押圧され噛み込み、この噛み込みによりベルトがスリップするといった搬送機能の低下を防止することができる。また、溝に搬送対象物やその破片が蓄積しにくいことから、溝に搬送対象物やその破片が蓄積した場合にベルトに過張力が掛かることから生じる耐久性の低下やV形状をしたベルトの溝へのくさび効果が低下するといった不具合を防止することができる。
【0014】
また、上記構成は、Vベルト、Vリブドベルト、V桟付の平ベルトのように動力伝達機能が、プーリのV形状をした溝とこれに嵌合するV形状をしたベルトとの間に生じ、ベルトの溝へのくさび効果を生じるベルトにも適用可能である。更に、ベルトの溝へのくさび効果を生じることから、ベルトの進行方向(走行方向)に対して垂直方向の振れを防止して、搬送対象物(穀物など)がベルトからこぼれ難くすることができる。
【0015】
また、本発明は、上記搬送装置において、前記プーリの溝の側面が、前記ベルトの前記V形状をした側面の、当該ベルトの外周面側部分及び内周面側部分を除いた、中央部分のみと接触する形状をしていることを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、プーリの溝の側面とベルトのV形状をした側面とが接触する部分をベルトのV形状をした側面の中央部分のみにすることにより、ベルトのV形状をした側面全体やベルトのV形状をした側面の外周面側部分やベルトのV形状をした側面の内周面側部分とも接触する場合に比べて、接触面積を小さくして、溝に入り込んだ搬送対象物やその破片が押し潰されて溝に付着するリスク(搬送機能の低下のリスク)を低減することができる。また、プーリの溝の側面とベルトのV形状をした側面とが接触する部分をベルトのV形状をした側面の中央部分にすることにより、接触面積を小さくしたとしても、ベルトの伝達性能を十分に維持することができる。
【0017】
また、本発明は、上記搬送装置において、前記プーリの溝の高さが、前記ベルトのV形状をした部分の厚みの50〜90%であることを特徴としている。
【0018】
プーリの溝の高さをベルトのV形状をした部分の厚みの50%未満にすると、プーリの溝の側面とベルトの側面とが接触する面積が低下し過ぎ、ベルトの伝達性能を十分に発揮し得ない場合がある。一方、プーリの溝の高さがベルトのV形状をした部分の厚みの90%を超えると、溝に入り込んだ搬送対象物やその破片が押し潰されて溝に付着するリスク(搬送機能の低下のリスク)が高まってしまう。そこで、上記のようにプーリの溝の高さを、ベルトのV形状をした部分の厚みの50〜90%の範囲にすることにより、ベルトの伝達性能を維持しつつ、溝に入り込んだ搬送対象物やその破片が押し潰されて溝に付着するリスクを低減させることができる。
【0019】
また、本発明は、上記搬送装置において、前記ベルトは、平ベルトの内周面側に前記嵌合部分を備えており、
前記プーリの外周には、前記溝の両側面を構成する2つのフランジを備えており、
前記ベルトの前記嵌合部分を除く、前記平ベルトの内周面側と、前記各フランジの外周側との間には、間隙を有し、
前記各フランジの当該プーリの軸方向の断面形状は、前記平ベルトの内周面に対向する頂点を有する形状をしていることを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、平ベルトの内周面側と対向するフランジの外周側の面積を、フランジの外周側が面状のものに比べて、小さくすることができる。これにより、平ベルトの内周面側と各フランジの外周側との間の間隙に、搬送対象物やその破片が挟まりにくくすることができる。このように、搬送対象物やその破片が、平ベルトの内周面側と各フランジの外周側との間に挟まり、押し潰されて溝等に付着するリスク(搬送機能の低下のリスク)を低減することができる。
【0021】
また、本発明は、上記搬送装置において、前記各フランジの当該プーリの軸方向の断面形状が、三角形状を含んでいることを特徴としている。
【0022】
上記構成によれば、平ベルトの内周面側と各フランジの外周側との間の間隙に入り込んだ搬送対象物やその破片が、各フランジの外周側の三角形状部分の側面を経由して滑り落ちやすくすることができる。
【0023】
また、本発明は、上記搬送装置において、前記溝の側面には、当該プーリの半径方向に、所定間隔で複数の間隙が形成されていることを特徴としている。
【0024】
上記構成によれば、搬送装置で搬送対象物(穀物など)を搬送する場合に、搬送対象物やその破片がプーリの溝に入ったとしても、搬送対象物やその破片は、溝の側面に形成された間隙から排出される。これにより、溝に入り込んだ搬送対象物やその破片が押し潰されて溝に付着するリスク(搬送機能の低下のリスク)を低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
搬送装置を大型化せず、メンテナンスも簡易なまま、穀物の一部がプーリの外周やプーリの外周に設けられたV形状をした溝に蓄積するのを防止することができる搬送装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
本実施形態では、本発明に係る搬送装置が、穀物乾燥機1のバケット式昇降機20として使用される場合について説明する。
【0028】
(穀物乾燥機1)
穀物乾燥機1は、穀物(米、麦、粟、稗、豆、黍等)を乾燥させるための機械である。
図2に示すように、穀物乾燥機1は、穀物を貯留する貯留庫10、貯留された穀物を搬送するバケット式昇降機20、搬送された穀物を乾燥させる乾燥装置30を備えている。
【0029】
(貯留庫10)
貯留庫10は、バケット式昇降機20を収納できる長方体形状をしており、貯留庫10の底部11は、
図2に示すように、断面視U字形状をしている。貯留庫10には、図示しないが、穀物を外部から受け入れる供給口が設けられており、供給口から受け入れた穀物が底部11に貯留される。また、貯留庫10の上部には、後述するバケット式昇降機20から搬送された穀物が投入される投入口12が設けられている。
【0030】
(バケット式昇降機20)
バケット式昇降機20(搬送装置)は、鉛直方向に互いに離隔して配置された駆動プーリ21(上方側)及び従動プーリ22(下方側)、駆動プーリ21と従動プーリ22との間に巻き掛けられたV桟付平ベルト23、V桟付平ベルト23の外周面に所定間隔で、ボルト・ナット・リベット等の固定部材により装着された複数のバケット24(
図1参照)、駆動プーリ21の軸心に回転力を付与する駆動モータ・制御装置(図示せず)を備えた構成をしている。
【0031】
(駆動プーリ21)
駆動プーリ21は、
図3に示すように、駆動モータからの回転力が付与される回転軸211が挿入される、円柱状の軸受212と、軸受212の両端に設けられた一対の、円形状をした第1プーリ側面板213・第2プーリ側面板214とにより構成されている。第1プーリ側面板213と第2プーリ側面板214とが向かい合う面には、外周側から回転軸211に向けて互いの幅が短くなるように設けられた傾斜面213a・傾斜面214aが設けられている。これにより、向かい合った傾斜面213aと傾斜面214aとが、V形状のV溝215を形成している。このV溝215が、後述するV桟付平ベルト23のV桟部232と嵌合する。
【0032】
また、
図4に示すように、傾斜面213a及び傾斜面214a(V溝215の側面に相当)は、後述するV桟付平ベルト23のV桟部232の側面232aにおいて、外周面側部分232b及び内周面側部分232dを除いた、中央部分232cのみと接触する形状(V溝215の高さh1、V溝215の傾斜角度θ、傾斜面213aと傾斜面214aとの間の距離等の条件)をしている。
【0033】
上記のように、V溝215の傾斜面213a・傾斜面214aとV桟付平ベルト23のV桟部232の側面232aとが接触する部分をV桟部232の側面232aの中央部分232cのみにすることにより、V桟部232の側面232a全体や、側面232aの外周面側部分232bや内周面側部分232dとも接触する場合に比べて、接触面積を小さくして、V溝215に入り込んだ穀物やその破片が押し潰されてV溝215に付着するリスク(搬送機能の低下のリスク)を低減することができる。また、V溝215の傾斜面213a・傾斜面214aとV桟付平ベルト23のV桟部232の側面232aとが接触する部分をV桟部232の側面232aの中央部分232cにすることにより、接触面積を小さくしたとしても、ベルトの伝達性能を十分に維持することができる。
【0034】
また、本実施形態のように、VベルトやVリブドベルトではなく、V桟付平ベルト23を使用した場合、V溝215の傾斜面213a・傾斜面214aとV桟付平ベルト23のV桟部232の側面232aにおける外周面側部分232bとが接触しないようにすることで、平ベルト231の内周面231bと第1プーリ側面板213の外周面213e(第2プーリ側面板214の外周面214e)との間に隙間を確保することができる。これにより、平ベルト231の内周面231bと第1プーリ側面板213の外周面213e(第2プーリ側面板214の外周面214e)との間に、穀物やその破片を挟まり難くすることができる。
【0035】
更に、傾斜面213a及び傾斜面214aの高さh1、即ち、V溝215の高さh1は、V桟付平ベルト23のV桟部232の厚みHの50〜90%の範囲内であり、好ましくは60〜80%の範囲内、更に、65〜75%の範囲内であることが好ましい。
【0036】
V溝215の高さh1をV桟付平ベルト23のV桟部232の厚みHの50%未満にすると、V溝215の傾斜面213a・傾斜面214aとV桟部232の側面232aとが接触する面積が低下し過ぎ、V桟付平ベルト23の伝達性能を十分に発揮し得ない場合がある。一方、V溝215の高さh1がV桟付平ベルト23のV桟部232の厚みHの90%を超えると、V溝215に入り込んだ穀物やその破片が押し潰されてV溝215に付着するリスク(搬送機能の低下のリスク)が高まってしまう。そこで、上記のようにV溝215の高さh1を、V桟付平ベルト23のV桟部232の厚みHの50〜90%の範囲内にすることにより、V桟付平ベルト23の伝達性能を維持しつつ、V溝215に入り込んだ穀物やその破片が押し潰されてV溝215に付着するリスクを低減させることができる。
【0037】
また、第1プーリ側面板213の側面には、扇形状にくり抜かれた4つの排出口213bが設けられており、V溝215の底部215aが排出口213bまで連通している。なお、第1プーリ側面板213の側面には、排出口213bが設けられたことにより。排出口213bと排出口213bとの間に合計4つの支持部213cが形成される。また、第2プーリ側面板214の側面にも同様に、排出口214bが設けられており(支持部214cも同様に形成)、V溝215の底部215aが排出口214bまで連通している(図示せず)。
【0038】
(従動プーリ22)
従動プーリ22も駆動プーリ21と同様の構成をしており、
図3に示すように、回転自在な回転軸221が挿入される、円柱状の軸受222と、軸受222の両端に設けられた一対の、円形状をした第1プーリ側面板223・第2プーリ側面板224とにより構成されている。第1プーリ側面板223と第2プーリ側面板224とが向かい合う面には、外周側から回転軸221に向けて互いの幅が短くなるように設けられた傾斜面223a・傾斜面224aが設けられている。これにより、向かい合った傾斜面223aと傾斜面224aとが、V形状のV溝225を形成している。このV溝225が、後述するV桟付平ベルト23のV桟部232と嵌合する。
【0039】
また、
図4に示すように、傾斜面223a及び傾斜面224a(V溝225の側面に相当)は、後述するV桟付平ベルト23のV桟部232の側面232aにおいて、外周面側部分232b及び内周面側部分232dを除いた、中央部分232cのみと接触する形状(V溝225の高さh1、V溝225の傾斜角度θ、傾斜面223aと傾斜面224aとの間の距離等の条件)をしている。
【0040】
更に、傾斜面223a及び傾斜面224aの高さh1、即ち、V溝225の高さh1は、V桟付平ベルト23のV桟部232の厚みHの50〜90%の範囲内であり、好ましくは60〜80%の範囲内、更に、65〜75%の範囲内であることが好ましい。
【0041】
また、第1プーリ側面板223の側面には、扇形状にくり抜かれた4つの排出口223bが設けられており、V溝225の底部225aが排出口223bまで連通している。なお、第1プーリ側面板223の側面には、排出口223bが設けられたことにより。排出口223bと排出口223bとの間に合計4つの支持部223cが形成される。また、第2プーリ側面板224の側面にも同様に、排出口224bが設けられており(支持部224cも同様に形成)、V溝225の底部225aが排出口224bまで連通している(図示せず)。
【0042】
上記駆動プーリ21及び従動プーリ22の構成によれば、バケット式昇降機20で穀物を搬送する場合に、穀物やその破片が駆動プーリ21(従動プーリ22)のV溝215(V溝225)に入ったとしても、穀物やその破片はV溝215(V溝225)の底部215a(底部225a)から排出口213b・214b(排出口223b・224b)を通って第1プーリ側面板213・第2プーリ側面板214(第1プーリ側面板223・第2プーリ側面板224)の側面から排出される。これにより、
図5に示す、溝に排出口のような逃げ道がない従来のプーリのように、溝に穀物やその破片が入り込み、入り込んだ穀物やその破片がV桟付平ベルト23とプーリとの間で押圧され噛み込み、この噛み込みによりV桟付平ベルト23がスリップするといった搬送機能の低下を防止することができる。また、V溝215(V溝225)に穀物やその破片が付着・蓄積しにくいことから、V溝215(V溝225)に穀物やその破片が付着・蓄積した場合にV桟付平ベルト23に過張力が掛かることから生じる耐久性の低下やV桟部232のV溝215(V溝225)へのくさび効果が低下するといった不具合を防止することができる。
【0043】
(V桟付平ベルト23)
V桟付平ベルト23は、
図3に示すように、平ベルト231と、平ベルト231の内周面側に平ベルト231の周長方向に沿って形成された、断面視V字形状(台形形状)をしたV桟部232とを備えた、無端状の摩擦伝動ベルトである。平ベルト231とV桟部232とはゴム組成物(天然ゴム材料等)で形成されており一体形成されている。
【0044】
V桟部232は、駆動プーリ21のV溝215及び従動プーリ22のV溝225に嵌合することにより、V桟付平ベルト23が駆動プーリ21と従動プーリ22との間に巻き掛けられる。このV桟部232によれば、V桟付平ベルト23が駆動プーリ21と従動プーリ22との間を走行させる際の横振れを防止することができる。
【0045】
平ベルト231には、
図1に示すように、外周面231aに、複数のバケット24が所定間隔で、ボルト・ナット・リベット等の固定部材により装着されている。
【0046】
上記V桟付平ベルト23のように動力伝達機能が、駆動プーリ21のV溝215及び従動プーリ22のV溝225とこれに嵌合するV桟部232との間に生じ、V桟部232のV溝215・V溝225へのくさび効果を生じるベルト(Vベルト、Vリブドベルトも含む)にも適用可能である。更に、V桟付平ベルト23のV溝215・V溝225へのくさび効果を生じることから、ベルトの進行方向(走行方向)に対して垂直方向の振れを防止して、穀物がバケット24からこぼれ難くすることができる。
【0047】
(バケット24)
バケット24は、
図1に示すように、V桟付平ベルト23(平ベルト231)の外周面231aに取り付けられる取付部241と、穀物を掬い保持する保持部242とを有する。
【0048】
取付部241は、外周面231aに沿うように延在しており、4つの貫通孔が形成されている。各バケット24は、4つの貫通孔とV桟付平ベルト23に形成された4つの貫通孔とにそれぞれボルト・ナット・リベット等の固定部材を挿入することで、V桟付平ベルト23に固定されている。
【0049】
保持部242は、V桟付平ベルト23の走行方向側に口243を持ち、V桟付平ベルト23の幅方向から見て湾曲形状をしている。
【0050】
(乾燥装置30)
乾燥装置30は、熱風等により穀物を乾燥させる装置である。乾燥装置30には、貯留庫10の投入口12に対応する、投入口31が設けられており、この投入口31に、バケット式昇降機20のバケットにより搬送された穀物が投入される。
【0051】
(穀物乾燥機1の動作態様)
穀物乾燥機1の動作態様について説明する。
貯留庫10に設けられた供給口(図示せず)から、穀物を入れ、穀物を底部11に貯留する。
【0052】
そして、バケット式昇降機20の駆動モータをオンにし、駆動プーリ21と従動プーリ22との間に巻き掛けられた、バケット24付のV桟付平ベルト23を走行させる。
【0053】
V桟付平ベルト23の走行に伴い、貯留庫10の底部11に貯留された穀物が、バケット24の保持部242に、順番に掬われていく。
【0054】
そして、穀物が入ったバケット24は、駆動プーリ21まで上昇し、駆動プーリ21で折り返したところで、バケット24の口243が下方を向くことにより、保持部242に入っている穀物が投入口12(乾燥装置30の投入口31)に投入される。
【0055】
投入口12から投入された穀物は、乾燥装置30に運ばれ、熱風等により乾燥されられる。上記工程を経て穀物は乾燥させられる。
【0056】
上記穀物が入ったバケット24を上昇させる工程や、保持部242に入っている穀物を投入口12に投入する工程で、穀物がバケット24や投入口12からこぼれてしまった場合、こぼれた穀物やその破片が駆動プーリ21(従動プーリ22)のV溝215(V溝225)に入ったとしても、穀物やその破片はV溝215(V溝225)の底部215a(底部225a)から排出口213b・214b(排出口223b・224b)を通って第1プーリ側面板213・第2プーリ側面板214(第1プーリ側面板223・第2プーリ側面板224)の側面から排出されることになる。
【0057】
上記構成によれば、バケット式昇降機20を大型化せず、メンテナンスも簡易なまま、駆動プーリ21・従動プーリ22との嵌合部分がV形状をしたV桟付平ベルト23を使用して、V桟付平ベルト23の進行方向(走行方向)に対して垂直方向の振れを防止しつつ、穀物やその一部が駆動プーリ21・従動プーリ22のV溝215・V溝225に付着・蓄積するのを防止することができる。
【0058】
(第2実施形態)
第2実施形態のバケット式昇降機20´でも、駆動プーリ21´及び従動プーリ22´に巻き掛けられるベルトは第1実施形態と同じV桟付平ベルト23である。このV桟付平ベルト23は、平ベルト231の内周面側に、V溝215´(V溝225´)に嵌合するV桟部232(嵌合部分)を備えている。また、駆動プーリ21´の第1プーリ側面板213´(フランジに相当)と第2プーリ側面板214´(フランジに相当)とが対向して、V溝215´の両側面を構成している(従動プーリ22´も同様)。
【0059】
上記第1実施形態では、駆動プーリ21において、第1プーリ側面板213の外周面213e(第2プーリ側面板214の外周面214e)は、平ベルト231の内周面231bに対向して面状に形成されている(従動プーリ22も同様)。一方、第2実施形態では、駆動プーリ21´は、
図7に示すように、第1プーリ側面板213´の外周部分213e´(第2プーリ側面板214´の外周部分214e´)の、回転軸211の軸方向の断面形状が、三角形状をしている。そして、外周部分213e´(外周部分214e´)の三角形状の一つの頂点213f´(頂点214f´)が平ベルト231の内周面231bに対向している(従動プーリ22´も同様の構成)。また、V桟付平ベルト23のV桟部232を除く、平ベルト231の内周面231bと、第1プーリ側面板213´の外周部分213e´(第2プーリ側面板214´の外周部分214e´)との間には、間隙を設けている。即ち、第1プーリ側面板213´の外周部分213e´の頂点213f´と平ベルト231の内周面231bとの間、及び、第2プーリ側面板214´の外周部分214e´の頂点214f´と平ベルト231の内周面231bとの間には隙間が設けられている。
【0060】
なお、第1プーリ側面板213´の外周部分213e´及び、第2プーリ側面板214の外周部分214e´の断面形状は、三角形状に限らず、平ベルト231の内周面231bに対向する部分が頂点を有する形状であればどのような多角形でもよい。
【0061】
上記構成によれば、平ベルト231の内周面231bと対向する第1プーリ側面板213´の外周部分213e´(第2プーリ側面板214´の外周部分214e´)の面積を、第1実施形態のように第1プーリ側面板213の外周面213e及び第2プーリ側面板214の外周面214eが面状のものに比べて、小さくすることができる。これにより、平ベルト231の内周面231bと第1プーリ側面板213´の外周部分213e´(第2プーリ側面板214´の外周部分214e´)との間の間隙に、搬送対象物やその破片が挟まりにくくすることができる。このように、搬送対象物やその破片が、平ベルト231の内周面231bと第1プーリ側面板213´の外周部分213e´(第2プーリ側面板214´の外周部分214e´)との間に挟まり、押し潰されてV溝215等に付着するリスク(搬送機能の低下のリスク)を低減することができる。
【0062】
また、平ベルト231の内周面231bと第1プーリ側面板213´の外周部分213e´(第2プーリ側面板214´の外周部分214e´)との間の間隙に入り込んだ搬送対象物やその破片が、第1プーリ側面板213´の外周部分213e´(第2プーリ側面板214´の外周部分214e´)の三角形状の側面を経由して滑り落ちやすくすることができる。即ち、搬送対象物やその破片が駆動プーリ21´や従動プーリ22´に付着するリスクをより低減させることができる。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態のバケット式昇降機では、
図8に示すように、第1実施形態の駆動プーリ21の第1プーリ側面板213の側面(V溝215の一方の側面に相当)に、駆動プーリ21の半径方向に放射するように形成されたスリット213g(間隙に相当)が、所定間隔で16個設けられている。各スリット213gは、回転軸211の軸方向に延伸してV溝215に通じている。同様に、第2プーリ側面板214の側面(V溝215の他方の側面に相当)にも、スリット214gが、16個設けられている。また、従動プーリ22でも同様に、第1プーリ側面板223の側面及び第2プーリ側面板224の側面にスリット223g・224gを設けている。
【0064】
なお、本実施形態では、スリット213gとスリット214gとは、駆動プーリ21の側面視で一致する位置に設けられているが、スリット213gとスリット214gとは、駆動プーリ21の側面視で必ずしも一致する位置に設けられなくてもよい。また、スリット213g(スリット214g)は、第1プーリ側面板213の側面、又は、第2プーリ側面板214の側面の何れか一方にだけ設ける構成にしてもよい。
【0065】
上記構成によれば、バケット式昇降機で搬送対象物(穀物など)を搬送する場合に、搬送対象物やその破片が駆動プーリ21のV溝215に入ったとしても、搬送対象物やその破片は、第1プーリ側面板213の側面、及び、第2プーリ側面板214の側面(V溝215の両側面)に形成された、スリット213g及びスリット214gから排出される。これにより、V溝215に入り込んだ搬送対象物やその破片が押し潰されてV溝215に付着するリスク(搬送機能の低下のリスク)を低減することができる。
【0066】
(その他の実施形態)
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、上記の実施形態は更に以下のように変更することができる。
【0067】
上記実施形態では、V桟付平ベルト23を使用したバケット式昇降機20について説明したが、
図6に示すVベルトや、Vリブドベルトを使用してもよい。
【0068】
また、上記実施形態に係る駆動プーリ21及び従動プーリ22を、バケットを使用しない搬送装置に使用してもよい。この場合、駆動プーリ21と従動プーリ22とを水平方向に配置したり、駆動プーリ21と従動プーリ22とを水平方向から傾斜させた角度を持つように配置したりして、バケットを有しないV桟付平ベルト23を、駆動プーリ21と従動プーリ22との間に巻き掛けた搬送装置が例に挙げられる。この場合、穀物等を搬送する場合には、本実施形態で説明した効果と同様の効果が得られる。