【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施例を説明する。
図6は本発明の一実施例に係る乗りかごの上面図である。
図7は本発明の一実施例に係る乗りかごの正面図である。
【0017】
エレベーターの乗りかご1は、エレベーターの昇降路内に設置されたガイドレール2に沿って、昇降路内を上下方向に移動する。乗りかご1の上下には、ガイドレール2に沿って乗りかご1を案内させるガイド装置35、36、37、38が取り付けられている。ガイド装置35、36、37、38は、通常乗りかご1の上下左右の四角に取り付けられている。それぞれのガイド装置35、36、37、38は
図6に示すようにガイドレール2の3つの面に対して3つのローラ25a、25b、25c及び26a、26b、26cが当接している。よってエレベーターとしては上下合わせて12個のローラがガイドレール面に当接していることになる。
【0018】
電動機(図示せず)により乗りかご1が上下に移動するとき、ローラ25、26はガイドレール2に案内される。ガイドレール2にゆがみ等が生じていると、ガイドレール2を走行しているローラ25、26が揺れ、その揺れが乗りかご1に伝達される。
【0019】
乗りかご1の揺れを抑制するため、ガイド装置35、36には振動を抑制するための制振手段が取り付けられている。以下、
図1及び
図2を用いて制振手段の構成を説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施例に係る制振手段を備えたガイド装置を示す図である。
図2は本発明の一実施例に係る制振手段の機構の一部を示す図である。本実施例ではガイド装置35について説明するが、ガイド装置36についても同様の構成である。
【0021】
ガイド装置35はガイドレール2に当接するローラ3を備えている。ローラ3は回転軸7によりレバー5に回転可能に支持されている。レバー5はガイドレール2に沿う方向に延びている。レバー5の一端側は回転軸6を介してローラ支持台4bに回動可能に取り付けられている。ローラ支持台4bはローラ支持台4aに固定され、ローラ支持台4aは乗りかご1に固定されている(ローラ支持台4a、4bを第1の支持部とする。また、ローラ支持台4c、4dを含め支持部とする)。
【0022】
レバー5の回転軸6で支持されていない他端側には、ガイドレール2とは反対方向に延びたリンク8(第1のリンク)が固定されている。レバー5とリンク8は
図2に示すように角度θをなして固定されている。リンク8のレバー5に固定されていない他端側には回転軸9を介して回動可能にリンク11が接続されている。リンク11はL字状に形成されている。回転軸10はリンク11の屈曲した部分(L字状の角部)に設けられている。
【0023】
ローラ支持台4bには、ガイドレール2に沿う方向に延びたローラ支持台4c(第2の支持部)の一端側が取り付けられている。ローラ支持台4cの他端側にはガイドレール2とは反対方向に延びたローラ支持台4d(第3の支持部)が取り付けられている。
【0024】
リンク11は回転軸10によりローラ支持台4dと接続されていてリンク11は回転軸10を中心にして回動可能に支持されている。リンク11には回転軸12を介してダンパ13の一端側と接続され、このダンパ13の他端側は回転軸14を備えたローラ支持台4eを介してローラ支持台4aに接続されている。
【0025】
ローラ3はレバー5に当接されたばね15により所定の力でガイドレール2に圧接されている。ガイドレール2に曲がりや段差等によりローラ3が乗りかご1側に押圧されると、ばね15の付勢力に反して回転軸6を中心としてレバー5が矢印の方向(時計回り)に回動する。レバー5に付与された力はリンク8へ伝達され、さらにリンク11に伝達される。リンク11は回転軸10を介してローラ支持台4dに接続されているので、回転軸10を中心として矢印の方向(反時計回り)に回動する。リンク11には回転軸12を介してダンパ13(減衰手段)が接続されているので、リンク11は回転軸12において矢印の方向(反時計回り)に回動する。これに合わせ、ダンパ13は上方向に引っ張られる。ダンパ13はシリンダ13aとピストン13bより構成され、シリンダ13a内には図示していない油とオリフィスがあり、オリフィスを油が通過する時に発生する抵抗力により減衰効果を発揮する。減衰効果を出すためには所定のピストンのストロークを確保する必要があるが、本実施例ではリンク8及びリンク11を用いることによりダンパ13のピストン13bのストロークを大きくでき、乗りかご1の振動を抑制することができる。
【0026】
さて、ガイドレール2に曲がりや段差等の不整があったときに発生する振動は、ばね15でも緩和することができる。しかしながら、ガイドレール2の不整の周波数と乗りかご1の固有振動数が近くなった場合、乗りかごの振動が大きくなる可能性がある。このため、制振手段が必要となる。
【0027】
制振手段の一部として、例えばダンパを用いた場合、上記したように減衰効果を出すためには所定のピストンのストロークを確保する必要がある。本実施例との比較として、ダンパを用いたガイド装置の一例を
図4及び
図5を用いて説明する。
【0028】
図4及び
図5は制振手段を備えたガイド装置の比較例を示す図である。
図4はレバー5に対してガイドレール2とは反対側の横方向に延びたリンク20の一端側が回転軸7により回動自在に接続されている。リンク20のレバー5に固定されていない他端側には回転軸22を介してダンパ21が接続されている。この構成において、回転軸6と回転軸7との距離をl1とし、回転軸7と回転軸22との距離をl2とすると、ローラ3の変位に対するダンパ21のストロークの増幅率aはa=l2/l1となる。従ってなるべくl1を小さくし、l2を大きくとれば増幅率aも大きくなる。ただし、l1を小さくするにはローラ3を小さくする必要があるが、ローラ3は所定の大きさが必要であるためl1を小さくするには限界がある。またl1を小さくすることに代えて、l2を大きくしていくと横方向の場所を確保する必要があり、l2を大きくするにも限界がある。このように増幅率aは簡単には大きくできない。
【0029】
次に
図5について説明する。
図5ではローラ支持台4cの他端側に、ガイドレール2とは反対側の横方向に延びたローラ支持台4fの一端側が接続されている。ローラ支持台4fの他端側には下方向に延びたローラ支持台4gが接続されている。ローラ支持台4gにはガイドレール2に向かって横向き配置されたダンパ23が取り付けられている。レバー5の回転軸6に接続されていない他端側にはダンパ23を当接させている。ダンパ23はレバー5とローラ支持台4gとの間に配置される。この場合、回転軸6と回転軸7との距離をl1とし、回転軸6とダンパ23を当接させている点との距離をl3とすると増幅率aはa=l3/l1となる。増幅率aを大きくするにはl3を大きくする必要があるが、l3を大きくすると上下方向の場所を確保する必要があるため、l3を大きくするにも限界がある。この場合も増幅率aを簡単に大きくすることはできない。
【0030】
上記したように、
図4及び
図5の構成においては、増幅率aを大きくすることが困難であり、乗りかごの振動を十分に抑制できない。
【0031】
次に本実施例の増幅率aについて説明する。
図1の実施例の増幅率aを計算してみる。
図2に示すレバー5とリンク8とのなすθをここでは仮に90°とする。レバー5の長さをl3とし、リンク8の長さをl4とすると、ローラ3の変位に対する回転軸9の変位の増幅率alは以下の通りとなる。
【0032】
【数1】
【0033】
リンク11を直接レバー5に接続するのではなく、リンク8を介することにより増幅率alを大きくすることができる。ただし、そのためにはレバー5とリンク8とのなす角θを90°以上に設定する必要がある。リンク11における回転軸9と回転軸10との距離をl5とし、回転軸10と回転軸12との距離をl6とすると、リンク11での変位増幅率a2はa2=l6/l5となり、ローラ3変位に対するダンパ13のストロークの増幅率aは以下の通りとなる。
【0034】
【数2】
【0035】
リンク11におけるl5の長さは、回転軸9と回転軸10が取り付けられる寸法を確保すれば良く、かなり小さく値に設定することが可能である。従って、l6もそれほど大きくすることなく増幅率aを大きくすることが可能となる。
【0036】
また、リンク11を図のように屈曲したL字型としてローラ3が変位する横方向から回転軸12が変位する方向を縦方向変位へと方向変換させることにより、ダンパ13を縦置きとすることができる。
【0037】
本実施例においては、ガイド装置35に制振手段としてリンク8、リンク11及びダンパ13を用いている。リンク11には3つの回転軸9、10、12がそれぞれリンク8の他端側、ダンパ13の他端側及びローラ支持台4dに回動可能に取り付けられている。本実施例によれば、上記のように構成することにより横方向への寸法増大を抑制しつつ、ダンパ13のストロークの大きさを確保することが可能となる。
【実施例2】
【0038】
次に
図3を用いて本発明の第2の実施例を説明する。
図3において、第1の実施例と異なるところは、リンク11の形状及びダンパ13の大きさである。その他の構成は第1の実施例と同様である。
【0039】
図3において、リンク8のレバー5に固定されていない他端側には回転軸9を介して回動可能にリンク11が接続されている。回転軸9はリンク11の屈曲した部分に設けられている。ローラ支持台4cの他端側にはガイドレール2とは反対方向に延びたローラ支持台4dが取り付けられている。リンク11は回転軸10によりローラ支持台4dと接続されていてリンク11は回転軸10を中心にして回動可能に支持されている。リンク11には回転軸12を介してダンパ13の一端側と接続され、このダンパ13の他端側は回転軸14を備えたローラ支持台4eを介してローラ支持台4aに接続されている。
【0040】
レバー5、リンク8、リンク11の動作については第1の実施例と同じであり、ローラ3が乗りかご1側に押圧されると、図示した矢印の方向に動作する。本実施例においては、リンク11における回転軸9及び回転軸10の取り付け位置を
図1に対して逆にしている。すなわち、リンク11の屈曲した部分に設けた回転軸9をリンク8と接続している。このため、リンク11の横方向に延びた部分の高さ方向が
図1に比べ低くなっており、リンク11に接続されるダンパ13の長さが
図1に比べ短くなっている。しかしながら、従来技術に比べ、ダンパ13のピストン13bのストロークは大きくすることができる。
【0041】
本実施例においては、ガイド装置35に制振手段としてリンク8、リンク11及びダンパ13用いている。リンク11には3つの回転軸9、10、12がそれぞれリンク8の他端側、ダンパ13の他端側及びローラ支持台4dに回動可能に取り付けられている。本実施例によれば、上記のように構成することにより横方向への寸法増大を抑制しつつ、ダンパ13のストロークの大きさを確保することが可能となる。さらに、ダンパ13も小さくできるので、縦方向の寸法増大を抑制することができる。
【0042】
上述した第1の実施例及び第2の実施例では、制振手段を備えたガイド装置35、36を乗りかご1の上部左右に配置した構成(
図7)で説明したが、乗りかご1の上下左右に配置しても良く、あるいは乗りかご1の下部左右に配置したガイド装置37、38に制振手段を設けるようにしても良い。
【0043】
また、第1の実施例及び第2の実施例で説明したダンパ13は、ピストン13bがシリンダ13aに対して引っ張られる時に減衰効果を大きく発生するような構成のものとした。このような場合、
図1においてレバー5が右側に動く時、回転軸12は上側に動き、相対的にピストン13bはシリンダ13aに対し引っ張られる側に動くので減衰効果が期待できるが、レバー5が左側に動く時は、回転軸12は下側に動き、ピストン13bはシリンダ13aに対して相対的に押し込まれる側に動くので減衰効果はあまり期待できない。乗りかご1の前後方向を見た場合、前後方向にはガイドレール2の面に対して2つのローラ3が当接している。この2つのローラ3にそれぞれダンパ13を設置すると、乗りかご1がガイドレール2によって前方向に動かされると前方向に配置したローラ3のダンパ13が機能し、振動を抑制する。また、乗りかご1が後方向に動かされると後方向に配置したローラ3のダンパ13が機能し、振動を抑制する。このようにダンパ13をガイドレール2に対して対向するように設置することでどちらの方向からの振動でも減衰効果のある構成とすることができる。左右方向も同様であり、ダンパが対となって設置されることになり、どちらの方向でも減衰効果が期待できる。また、第1の実施例及び第2の実施例で説明したダンパ13は、ピストン13bがシリンダ13aに対して引っ張られる時と押し込まれる時のどちらでも減衰効果を大きく発生するような構成のものとしてもよい。このような場合、必要となる減衰効果に合わせてその本数、配置を自由に構成すればよい。
【0044】
また、本実施例においては、減衰手段としてダンパを用いるようにしたが、これにかえてアクチュエータを用いるようにしても良い。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。