特許第6811152号(P6811152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6811152
(24)【登録日】2020年12月16日
(45)【発行日】2021年1月13日
(54)【発明の名称】耐候性試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20201228BHJP
【FI】
   G01N17/00
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-162669(P2017-162669)
(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公開番号】特開2019-39838(P2019-39838A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2019年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】榎 浩之
(72)【発明者】
【氏名】梁井 誠
【審査官】 外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−164502(JP,A)
【文献】 実開昭52−138468(JP,U)
【文献】 特開平10−309647(JP,A)
【文献】 特開2015−211991(JP,A)
【文献】 実公昭47−021224(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
G01N 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に粉粒体が混合された混合液体を被試験体に向けて噴射し、前記被試験体の耐性を試験する耐候性試験装置であって、
前記被試験体に向けて前記混合液体を噴射する噴射部と、
前記混合液体を貯めるタンクと、前記タンクから流出した前記混合液体が前記タンクに向かって流れる流路と、を有する循環回路と、
前記循環回路から前記噴射部に前記混合液体を導く分岐経路と、
前記循環回路において前記混合液体を循環させる動力を発生するポンプと、
前記流路を流れた前記混合液体を前記タンク内に向けて噴射するノズルと、を備え
前記タンクは、前記混合液体が貯まる空間を挟んで互いに対向する一対の側面を有し、
前記ノズルは、前記タンク内に噴射された前記混合液体が前記一対の側面のうち一方に当たって跳ね返ることによって前記空間の中央に向かう前記混合液体の流れを発生させるように配置された第1噴射口と、前記タンク内に噴射された前記混合液体が前記一対の側面のうち他方に当たって跳ね返ることによって前記空間の中央に向かう前記混合液体の流れを発生させるように配置された第2噴射口と、を有することを特徴とする、耐候性試験装置。
【請求項2】
前記ノズルは、
前記一対の側面が対向する方向に延び、前記第1噴射口および前記第2噴射口が設けられている主パイプと、
前記主パイプの長さ方向における中央部から分岐し、先端に第3噴射口が設けられている分岐パイプと、を有することを特徴とする、請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項3】
前記第3噴射口の孔径は、前記第1噴射口の孔径および前記第2噴射口の孔径よりも小さいことを特徴とする、請求項2に記載の耐候性試験装置。
【請求項4】
液体に粉粒体が混合された混合液体を被試験体に向けて噴射し、前記被試験体の耐性を試験する耐候性試験装置であって、
前記被試験体に向けて前記混合液体を噴射する噴射部と、
前記混合液体を貯めるタンクと、前記タンクから流出した前記混合液体が前記タンクに向かって流れる流路と、を有する循環回路と、
前記循環回路から前記噴射部に前記混合液体を導く分岐経路と、
前記循環回路において前記混合液体を循環させる動力を発生するポンプと、
前記流路を流れた前記混合液体を前記タンク内に向けて噴射するノズルと、を備
前記タンクは、底面と側面とが繋がる角部を有し、
前記ノズルは、前記角部の方向に向けて前記混合液体を噴射する噴射口を有することを特徴とする、耐候性試験装置。
【請求項5】
液体に粉粒体が混合された混合液体を被試験体に向けて噴射し、前記被試験体の耐性を試験する耐候性試験装置であって、
前記被試験体に向けて前記混合液体を噴射する噴射部と、
前記混合液体を貯めるタンクと、前記タンクから流出した前記混合液体が前記タンクに向かって流れる流路と、を有する循環回路と、
前記循環回路から前記噴射部に前記混合液体を導く分岐経路と、
前記循環回路において前記混合液体を循環させる動力を発生するポンプであって、前記動力が可変である前記ポンプと、
前記分岐経路に配置され、前記混合液体の流通および遮断を切り替えるバルブと、
前記バルブを開いた状態で前記噴射部から前記被試験体に前記混合液体を噴射すると共に前記循環回路において前記混合液体を循環させる試験運転と、前記バルブを閉じた状態で前記試験運転時と異なる前記ポンプの動力によって前記混合液体を前記循環回路において循環させる待機運転と、を実行する制御部と、を備えることを特徴とする、耐候性試験装置。
【請求項6】
前記タンクは、底面を有し、
前記ノズルは、前記タンク内に噴射された前記混合液体が前記底面に当たって跳ね返ることによって前記底面から上方に向かう前記混合液体の流れを発生させるように配置されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の耐候性試験装置。
【請求項7】
前記タンクは、底面を有し、
前記タンクの前記底面に沿うように配置され、前記タンク内の前記混合液体を冷却するための冷媒が流れるとともに互いに隙間を空けて配置された複数の主管部を有する冷却器をさらに備え、
前記ノズルは、前記隙間に向けて前記混合液体を噴射するように配置されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の耐候性試験装置。
【請求項8】
前記タンクにおける前記混合液体の出口に配置され、前記タンクの底面よりも上側に突出するフィルターをさらに備えることを特徴とする、請求項1〜の何れか1項に記載の耐候性試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1および特許文献2に開示されるように、様々な外部環境に起因する劣化に対する各種部品の耐性を試験する耐候性試験装置について知られている。
【0003】
特許文献1には、自動車部品の耐候性試験の一種である塩害試験を行うための装置について開示されている。この試験装置は、塩水および泥水をそれぞれ貯留するタンクと、塩水および泥水を被試験体である自動車に向けてそれぞれ噴射するノズルと、タンクからノズルに塩水および泥水をそれぞれ導くパイプと、塩水タンクおよび泥水タンクにそれぞれ設けられたプロペラ式の撹拌機と、を備えている。
【0004】
特許文献2には、建物の外壁材などを想定した汚染試験を行うための装置について開示されている。この試験装置は、被試験体を収容する試験槽と、粒状物や粉状物などの汚染源を発生させる汚染源発生機と、被試験体に向けて液体を吐出する液体吐出機と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57−191534号公報
【特許文献2】実開昭60−161851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように泥水を被試験体に噴射して試験を行う装置においては、タンク内における泥の沈殿が問題となる。特許文献1では、タンク内にプロペラ式の撹拌機を設ける構成となっているが、その撹拌効果が十分ではなく、泥の沈殿を防ぐのは困難である。
【0007】
一方、特許文献2に開示される試験装置は、粉粒体と液体とを混合せず、それぞれ別々に被試験体に向けて噴射する構成となっている。ここで、自動車部品の水はね試験(以下、「スプラッシュウォーター試験」ともいう)などにおいては、水(液体)に砂(粉粒体)が混合された混合液体を被試験体に噴射する必要があり、特許文献2の試験装置はこのような試験には適さない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体に粉粒体が混合された混合液体を被試験体に噴射する試験に適し、タンク内における粉粒体の沈殿を防ぐことが可能な耐候性試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に係る耐候性試験装置は、液体に粉粒体が混合された混合液体を被試験体に向けて噴射し、前記被試験体の耐性を試験する装置である。この耐候性試験装置は、前記被試験体に向けて前記混合液体を噴射する噴射部と、前記混合液体を貯めるタンクと、前記タンクから流出した前記混合液体が前記タンクに向かって流れる流路と、を有する循環回路と、前記循環回路から前記噴射部に前記混合液体を導く分岐経路と、前記循環回路において前記混合液体を循環させる動力を発生するポンプと、を備えている。
【0010】
この耐候性試験装置によれば、ポンプの動力によって混合液体を循環回路において循環させることができる。そして、この循環動力によって付勢された混合液体をタンク内に流入させることができる。これにより、混合液体の勢いによってタンク内の混合液体を撹拌することができるため、タンク内で粉粒体が沈殿するのを防ぐことができる。そして、タンク内で撹拌された混合液体を循環回路から分岐経路を通じて噴射部に導き、当該噴射部から被試験体に向けて噴射することにより、混合液体の噴射による衝撃に対する被試験体の耐性を試験することができる。
【0011】
上記耐候性試験装置は、前記分岐経路に配置され、前記混合液体の流通および遮断を切り替えるバルブと、前記バルブを開いた状態で前記噴射部から前記被試験体に前記混合液体を噴射する試験運転と、前記バルブを閉じた状態で前記試験運転時と異なる前記ポンプの動力によって前記混合液体を前記循環回路において循環させる待機運転と、を実行する制御部と、をさらに備えていてもよい。
【0012】
この構成によれば、待機運転時において混合液体の循環によってタンク内を撹拌することができる。しかも、循環回路において循環する混合液体の流量を、試験運転時の流量とは異なる流量であって、タンク内の混合液体の撹拌に適した流量に調整することができる。したがって、タンク内における粉粒体の沈殿をより確実に防ぐことができる。
【0013】
上記耐候性試験装置は、前記流路を流れた前記混合液体を前記タンク内に向けて噴射するノズルをさらに備えていてもよい。
【0014】
この構成によれば、タンク内における特に粉粒体の沈殿が起こり易い場所に向けてノズルから混合液体を噴射することができるため、タンク内における粉粒体の沈殿をより確実に防ぐことができる。
【0015】
上記耐候性試験装置において、前記タンクは、底面を有していてもよい。前記ノズルは、前記タンク内に噴射された前記混合液体が前記底面に当たって跳ね返ることによって前記底面から上方に向かう前記混合液体の流れを発生させるように配置されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、タンク内において混合液体の上昇流を発生させることによって、粉粒体の沈殿を効果的に防止することができる。
【0017】
上記耐候性試験装置において、前記タンクは、前記混合液体が貯まる空間を挟んで互いに対向する一対の側面を有していてもよい。前記ノズルは、前記タンク内に噴射された前記混合液体が前記一対の側面のうち一方に当たって跳ね返ることによって前記空間の中央に向かう前記混合液体の流れを発生させるように配置された第1噴射口と、前記タンク内に噴射された前記混合液体が前記一対の側面のうち他方に当たって跳ね返ることによって前記空間の中央に向かう前記混合液体の流れを発生させるように配置された第2噴射口と、を有していてもよい。
【0018】
この構成によれば、タンク内の広い領域に亘って混合液体の流れを形成することができるため、タンク内の混合液体を効果的に撹拌することができる。
【0019】
上記耐候性試験装置において、前記タンクは、底面を有していてもよい。上記耐候性試験装置は、前記タンクの前記底面に沿うように配置され、前記タンク内の前記混合液体を冷却するための冷媒が流れるとともに互いに隙間を空けて配置された複数の主管部を有する冷却器をさらに備えていてもよい。前記ノズルは、前記隙間に向けて前記混合液体を噴射するように配置されていてもよい。
【0020】
主管部の隙間は液体の淀みが生じ易いため、冷却器よりも下側の領域は粉粒体が特に沈殿し易い場所である。これに対し、主管部の隙間に向けて混合液体を噴射することにより、冷却器をタンク内に配置した場合でも、タンク内における粉粒体の沈殿を防ぐことができる。
【0021】
上記耐候性試験装置は、前記タンクにおける前記混合液体の出口に配置され、前記タンクの底面よりも上側に突出するフィルターをさらに備えていてもよい。
【0022】
この構成によれば、タンク底面に溜まった異物によってフィルターの一部が目詰まりしたとしても、タンク底面よりも上側に位置する部位においては当該異物による目詰まりが起こり難い。したがって、フィルター全体が目詰まりするのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、液体に粉粒体が混合された混合液体を被試験体に噴射する試験に適し、タンク内における粉粒体の沈殿を防ぐことが可能な耐候性試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態1に係る耐候性試験装置の構成を模式的に示す図である。
図2】タンクの外観を模式的に示す図である。
図3】タンクの内側から底面近傍を見たときの構成を模式的に示す図である。
図4】タンクを右側面側から見たときの構成を模式的に示す図である。
図5】タンクを上面側から見たときの構成を模式的に示す図である。
図6】本発明の実施形態2に係る耐候性試験装置におけるフィルターの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る耐候性試験装置について詳細に説明する。
【0026】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係る耐候性試験装置1の構成について説明する。図1は、耐候性試験装置1の主要な構成要素を模式的に示している。
【0027】
耐候性試験装置1は、液体に粉粒体が混合された混合液体L1を被試験体100に向けて噴射し、被試験体100の耐性を試験する装置である。具体的には、耐候性試験装置1は、車載機器のスプラッシュウォーター試験用の装置であって、0℃以上4℃以下に温調された冷水または冷塩水(液体)に砂(粉粒体)が混合された砂水(混合液体L1)を、被試験体100に向けて所定のインターバルで噴射する装置である。
【0028】
スプラッシュウォーター試験は、ISO(国際標準化機構)の16750−4規格に定められるアイスウォーター衝撃試験の1種であって、冷水(または冷塩水)による熱衝撃に対する車載機器の耐性を試験するものである。この試験においては、冷水(または冷塩水)に砂が混合された砂水を被試験体100に当てることにより、自動車の路上運転時における水はねを再現した試験を行うことができる。
【0029】
図1に示すように、耐候性試験装置1は、被試験体100を所定の温度環境下において保持する恒温器10と、シャッター20と、被試験体100に混合液体L1を噴射する散水部30と、制御部60と、を主に備えている。以下、これらの構成要素についてそれぞれ説明する。
【0030】
恒温器10は、被試験体100が収容される内部空間S1が設けられた試験槽11と、この試験槽11に隣接して配置されるとともに、試験槽11の内部空間S1を温調する空調部12と、を主に有している。被試験体100は、例えば、自動車のエンジンコントロールユニット(ECU;Engine Control Unit)などの車載機器であって、試験槽11内に配置される支持台(図示しない)の上面に設置される。なお、被試験体100は、自動車のECUに限定されるものではない。
【0031】
恒温器10においては、空調部12によって、試験槽11の内部空間S1を、例えば自動車のエンジンルームを想定した高温環境(約150℃)に温調することができる。なお、本発明の耐候性試験装置において、恒温器10は必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。この場合、被試験体100をオーブン(図示しない)中で高温に加熱し、当該オーブンから取り出した被試験体100を所定の支持台(図示しない)上に設置し、散水部30から被試験体100に向けて混合液体L1を噴射する。
【0032】
試験槽11は、断熱壁構造を有しており、散水部30側の槽壁11Aにおいて開口部13が設けられている。散水部30から供給される混合液体L1は、この開口部13を通過して試験槽11内に噴射される。また図1に示すように、試験槽11の上部には、試験槽11内で蒸発した水を当該試験槽11の外へ逃がすための蒸気逃がし孔14が設けられている。
【0033】
シャッター20は、試験槽11の開口部13を開閉するものであり、内部空間S1において槽壁11Aに隣接して配置されている。図1に示すように、槽壁11Aの内面とシャッター20の表面との間には隙間が空いている。
【0034】
シャッター20は、槽壁11Aの内面に沿って上下に移動するように、制御部60によって制御される。シャッター20が下りることにより開口部13が開いた状態となり(図1中において実線で示すシャッター20)、一方でシャッター20が上がることにより開口部13が閉じた状態(開口部13がシャッター20により塞がれた状態)となる(図1中において2点鎖線で示すシャッター20)。
【0035】
シャッター20は、例えば断熱部材により構成されている。このため、シャッター20によって開口部13を塞ぐことにより、高温の内部空間S1と低温の散水部30側の領域とを熱的に遮断することができるため、散水部30を構成する各機器が試験槽11内の熱気によって損傷を受けるのを防ぐことができる。なお、シャッター20は、断熱部材により構成されるものに限定されず、任意の材料により構成されるものを用いることができる。
【0036】
散水部30は、試験槽11内に混合液体L1を噴射するものであって、噴射部31と、バルブ50と、循環回路40と、分岐経路41と、流量計42と、ポンプ70と、を主に有している。循環回路40は、混合液体L1を貯めるタンク71と、タンク71から流出した混合液体L1がタンク71に向かって流れる流路43と、を有している。
【0037】
タンク71は、スプラッシュウォーター試験に必要な水量に応じたタンク容積を有している。タンク71には、第1流通口71Aおよび第2流通口71Bがそれぞれ設けられており、流路43を構成する配管の両端が第1および第2流通口71A,71Bにそれぞれ接続されている。本実施形態では、第1流通口71Aがタンク71への混合液体L1の入口として機能し、第2流通口71Bがタンク71からの混合液体L1の出口として機能する。なお、タンク71の詳細な構成については後述する。
【0038】
ポンプ70は、循環回路40において混合液体L1を循環させる動力を発生するものであって、流路43に配置されている。ポンプ70は、例えばインバータモーターにより駆動されるものであって、制御部60によってその運転周波数が制御される。
【0039】
このように、ポンプ70の運転周波数を制御することにより、混合液体L1の流量を適切に調整しつつ当該混合液体L1を循環回路40において循環させることができる。ここで、タンク71内においては、混合液体L1に含まれる粉粒体(砂)が沈殿することにより、混合液体L1中の粉粒体濃度が変動することがある。これに対し、本実施形態に係る耐候性試験装置1では、ポンプ70の循環動力によって付勢された混合液体L1を、第1流通口71Aからタンク71内に流入させることができるため、混合液体L1が流入する時の勢いによってタンク71内の混合液体L1を撹拌することができる。これにより、タンク71内に撹拌機などを設けることなく、混合液体L1の循環動力を利用してタンク71内における粉粒体の沈殿を防ぐことができる。なお、ポンプ70は、インバータモーター式のものに限定されない。
【0040】
分岐経路41は、循環回路40から噴射部31に混合液体L1を導く経路である。分岐経路41は、流路43から分岐した配管により構成されており、バルブ50および流量計42がそれぞれ配置されている。
【0041】
具体的には、図1に示すように、分岐経路41は、流路43におけるポンプ70の吐出口とタンク71の第1流通口71Aとの間に位置する部位P1に一端が接続されるとともに、他端に噴射部31が配置されている。分岐経路41は、当該部位P1から上方に延びる第1部位と、当該第1部位の上端から試験槽11に向かって水平方向に延びる第2部位と、を有している。そして、流路43の部位P1から分岐経路41に混合液体L1を流入させ、分岐経路41を通じて混合液体L1を噴射部31に導くことができる。
【0042】
バルブ50は、分岐経路41における混合液体L1の流通および遮断を切り替えるものである。バルブ50は、例えばピンチバルブであって、ダイヤフラムを空気によって膨らませることにより分岐経路41内の流路を遮断し、また当該ダイヤフラムから空気を抜くことにより分岐経路41内の流路を開放するように構成されている。バルブ50の開閉は、制御部60によって制御される。
【0043】
噴射部31は、被試験体100に向けて混合液体L1を噴射するものであって、ポンプ70およびタンク71よりも上方に配置されている。図1に示すように、噴射部31は、試験槽11における槽壁11Aの外面から水平方向に延設された板材により規定される噴射室S2内に配置されるとともに、噴射口31Aが試験槽11の開口部13に臨むように配置されている。シャッター20が下がって開口部13が開いた時は内部空間S1と噴射室S2とは互いに連通した状態となり、シャッター20が上がって開口部13が閉じた時は内部空間S1と噴射室S2とは互いに隔離された状態となる。
【0044】
耐候性試験装置1は、噴射部31から試験槽11内に噴射された混合液体L1をタンク71に回収するための回収経路80をさらに備えている。図1に示すように、回収経路80は、一端が試験槽11の底部に接続されるとともに、他端がタンク71の壁部に接続されている。これにより、噴射部31から噴射されて試験槽11の底部に溜まった混合液体L1を、回収経路80を通じてタンク71に回収することができるため、混合液体L1の再利用が可能になる。なお、回収経路80は、本発明の耐候性試験装置において必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。
【0045】
制御部60は、例えばパーソナルコンピュータにより構成されており、シャッター20の開閉動作(上下移動)、バルブ50の開閉動作、およびポンプ70の運転周波数をそれぞれ制御可能に構成されている。制御部60は、バルブ50およびシャッター20を開いた状態で噴射部31から被試験体100に混合液体L1を噴射する試験運転と、バルブ50およびシャッター20を閉じた状態で混合液体L1を循環回路40において循環させる待機運転と、を実行するように構成されている。これらの試験運転および待機運転の詳細については後述する。
【0046】
図2は、タンク71の外観を模式的に示している。タンク71は、混合液体L1が貯まる空間S3を内部に有している。タンク71は、底面72と、底面72に対して空間S3を挟んで上下方向に対向する上面76と、前側面75と、前側面75に対して空間S3を挟んで前後方向に対向する後側面74と、右側面73と、右側面73に対して空間S3を挟んで左右方向に対向する左側面79と、を有している。図2に示すように、第1流通口71Aは、後側面74における左右方向の略中央であって上下方向の中央よりも下側に設けられている。第2流通口71Bは、底面72における左右方向の中央よりも右側であって前後方向の中央よりも前側に設けられている。
【0047】
図3は、タンク71の内側から底面72の近傍を見たときの構成を示している。本実施形態に係る耐候性試験装置1は、流路43(図1図2)を流れた混合液体L1をタンク71内に向けて噴射するノズル90と、タンク71内の底面72の略中央に横置き状態で配置されるとともに混合液体L1を冷却するための冷却器81と、タンク71の底面72において第2流通口71Bよりも後側に配置されるとともに混合液体L1を加温するための加温器86と、をさらに備えている。加温器86は、例えば、シーズヒーターによって構成されている。また図3に示すように、第2流通口71Bには、タンク71から流路43に流出する混合液体L1を濾過するためのメッシュ状のフィルター85が配置されている。このフィルター85は、混合液体L1中に含まれる粉粒体(砂)が通過可能な目開きを有しており、底面72に沿って配置されている。
【0048】
図3に示すように、ノズル90は、タンク71内の底面72近傍において後側面74に沿って配置されている。ノズル90は、タンク71の後側面74に沿って左右方向に延びる主パイプ95と、主パイプ95における長さ方向の略中央部から前側に突出する分岐パイプ96と、主パイプ95における長さ方向の略中央部から後側に突出するとともにタンク71の第1流通口71Aに取り付けられた取付パイプ94と、を主に有している。
【0049】
主パイプ95、分岐パイプ96および取付パイプ94は、それぞれ、例えば塩化ビニルなどの樹脂からなるパイプである。分岐パイプ96は、主パイプ95および取付パイプ94よりも配管径が小さくなっている。図3に示すように、主パイプ95は、タンク71の底面72に対して平行に延びる平行パイプ部95Aと、この平行パイプ部95Aの両端に繋がるとともに底面72に対して所定の角度(例えば45°)を成して延びる一対の傾斜パイプ部95B,95Cと、を有している。一対の傾斜パイプ部95B,95Cの先端には第1および第2噴射口92,93がそれぞれ設けられており、分岐パイプ96の先端には第3噴射口91が設けられている。
【0050】
取付パイプ94は、循環回路40における流路43(図1)の一端に接続されている。このため、流路43を流れた混合液体L1は、取付パイプ94を通じて主パイプ95に流入する。そして、主パイプ95において長さ方向の中央部から左右方向に向かって混合液体L1が流れ、第1および第2噴射口92,93からタンク71内に向けてそれぞれ噴射される。第1噴射口92は、タンク71内の第1角部C1(底面72と左側面79と後側面74とが繋がる部分)の近傍に向けて(冷却器81よりも左側に向けて)混合液体L1を噴射する。一方、第2噴射口93は、タンク71内の第2角部C2(底面72と右側面73と後側面74とが繋がる部分)の近傍に向けて(冷却器81よりも右側に向けて)混合液体L1を噴射する。
【0051】
また、主パイプ95に流入した混合液体L1の一部は、分岐パイプ96に流入する。そして、当該一部の混合液体L1は、分岐パイプ96を流れた後、第3噴射口91からタンク71内に向けて(冷却器81の上部に向けて)噴射される。
【0052】
なお、第3噴射口91の孔径は、第1および第2噴射口92,93の孔径よりも小さくなっている。これにより、取付パイプ94から主パイプ95に流入した混合液体L1の大部分が第3噴射口91から噴射されて、第1および第2噴射口92,93からの混合液体L1の噴射量が少なくなるのを防止することができる。
【0053】
ノズル90は、タンク71内に噴射された混合液体L1が底面72に当たって跳ね返ることによって底面72から上面76に向かう混合液体L1の流れを発生させるように配置されている。以下、これについて詳細に説明する。
【0054】
図4は、タンク71を右側面73(図2)側から見たときの構成を示している。図4に示すように、分岐パイプ96は、底面72に対して鋭角である角度θ(例えば45°)を成すように、主パイプ95から底面72に向かって下向きに傾斜している。図4中の破線矢印A1は、分岐パイプ96の先端に設けられた第3噴射口91から噴射される混合液体の流れを示している。また図4に示すように、主パイプ95の端部(図3に示す傾斜パイプ部95C)は、タンク71の右側面73から見たときに、底面72に対して鋭角である角度θ(例えば75°)を成すように、底面72に向かって下向きに傾斜している。また傾斜パイプ部95Bも、タンク71の左側面79から見たときに、底面72に対して鋭角である角度θ(例えば75°)を成すように、底面72に向かって下向きに傾斜している。
【0055】
この破線矢印A1に示すように、第3噴射口91からタンク71内に噴射された混合液体は、まず、底面72に当たって跳ね返る。そして、底面72で跳ね返った混合液体は、タンク71の前側面75側に流れつつ上面76に向かって上昇し、前側面75に当たる。前側面75に当たって跳ね返った混合液体は、タンク71の後側面74側に流れつつ上面76に向かってさらに上昇する。このように、第3噴射口91からタンク71内に噴射された混合液体L1が底面72に当たって跳ね返ることによって、底面72から上面76に向かう混合液体の流れ(上昇流)が発生する。しかも、第3噴射口91から噴射される混合液体の流れと、底面72で跳ね返った混合液体の流れと、は互いに干渉しない。
【0056】
また図3を参照して説明した通り、一対の傾斜パイプ部95B,95Cも、タンク71の前側面75または後側面74から見たときに、タンク71の底面72に対して鋭角(例えば45°)を成すように、平行パイプ部95Aの両端から底面72に向かって下向きに傾斜している。このため、一対の傾斜パイプ部95B,95Cの先端に設けられた第1および第2噴射口92,93から噴射された混合液体も、底面72に当たって跳ね返ることによって、底面72から上面76に向かう混合液体の流れ(上昇流)をタンク71内に発生させる。
【0057】
第1噴射口92は、タンク71内に噴射された混合液体が左側面79(一対の側面のうち一方)に当たって跳ね返ることによってタンク71の空間S3の中央に向かう混合液体の流れを発生させるように配置されている。また第2噴射口93は、タンク71内に噴射された混合液体が右側面73(一対の側面のうち他方)に当たって跳ね返ることによってタンク71の空間S3の中央に向かう混合液体の流れを発生させるように配置されている。
【0058】
図5は、タンク71を上面76側から見たときの構成を示している。図5中において、破線矢印A2−1およびA2−2は第1噴射口92から噴射される混合液体の流れを示し、破線矢印A3−1およびA3−2は第2噴射口93から噴射される混合液体の流れを示している。
【0059】
図5に示すように、第1噴射口92からタンク71内に噴射された混合液体は、左側面79に当たり、A2−1とA2−2の2つの流れに分流する。A2−1は、左側面79に沿って前側面75に向かって流れるとともに、左側面79で跳ね返ることによってタンク71の空間S3の中央に向かって流れる。その後、前側面75に当たって跳ね返った混合液体は、後側面74に向かって流れる。一方で、A2−2は、第1角部C1において混合液体L1を撹拌することにより、粉粒体の沈殿を防ぐ。
【0060】
また第2噴射口93からタンク71内に噴射された混合液体は、右側面73に当たり、A3−1とA3−2の2つの流れに分流する。A3−1は、右側面73に沿って前側面75に向かって流れるとともに、右側面73で跳ね返ることによってタンクの空間S3の中央に向かって流れる。その後、前側面75に当たって跳ね返った混合液体は、後側面74に向かって流れる。一方で、A3−2は、第2角部C2において混合液体L1を撹拌することにより、粉粒体の沈殿を防ぐ。そして、タンク71の空間S3の中央部において、混合液体の流れA1,A2−1,A3−1がそれぞれ衝突する。このように、主パイプ95の両端の角度を調整することによって、第1および第2噴射口92,93から噴射される混合液体の流れを、タンク71の空間S3の中央に向かう流れA2−1,A3−1と、タンク71の角部C1,C2に向かう流れA2−2,A3−2と、に分流することができる。これによって、タンク71内の混合液体L1の撹拌効果を高めることができる。
【0061】
冷却器81は、冷媒との熱交換を介してタンク71内の混合液体L1を冷却するための熱交換器(蒸発器)である。図3に示すように、冷却器81は、タンク71の底面72に沿うようにらせん状に設けられるとともに、冷媒の入口81Aおよび出口81Bがそれぞれ設けられた伝熱管82を有している。この伝熱管82は、タンク71の前後方向に沿って直線状に延びるとともに左右方向に互いに隙間を空けて設けられた複数の主管部83と、隣り合う主管部83の端部同士を接続するU字状の接続管部84と、により構成されている。
【0062】
本実施形態のように、タンク71の底面72において冷却器81を横置き状態で配置する場合、主管部83同士の隙間において液体の淀みが生じ易いため、冷却器81よりも下側の領域には粉粒体が特に沈殿し易くなる。これに対し、本実施形態では、分岐パイプ96の先端に設けられた第3噴射口91から主管部83の隙間に向けて混合液体を噴射するように、ノズル90がタンク71内に配置されている。これにより、冷却器81よりも下側においても混合液体の流れを生じさせることができるため、冷却器81の下側における粉粒体の沈殿を効果的に防ぐことができる。
【0063】
次に、上記耐候性試験装置1を用いて被試験体100の試験を行う方法について説明する。この方法では、所定の時間間隔で所定の時間だけ試験運転(被試験体100に混合液体L1を噴射する運転)を行い、前後の試験運転の間に待機運転(混合液体L1を被試験体100に噴射せずに循環回路40において循環させる運転)を行う。
【0064】
まず、待機運転においては、制御部60は、バルブ50およびシャッター20をそれぞれ閉じるとともに、第1運転周波数でポンプ70を運転する。これにより、混合液体L1がポンプ70の第1運転周波数に応じた流量で循環回路40内を循環する一方、噴射部31から混合液体L1は噴射されない。つまり、タンク71の第2流通口71Bから流出した混合液体L1が、流路43を通じて第1流通口71Aからタンク71内に戻される。そして、ノズル90の第1〜第3噴射口92,93,91から混合液体L1がタンク71内に噴射される。このとき、ポンプ70の循環動力によって付勢された混合液体L1をタンク71内に戻すことにより、タンク71内の混合液体L1を撹拌することができる。これにより、待機運転中にタンク71内において粉粒体の沈殿が起こるのを防ぐことができる。
【0065】
次に、待機運転から試験運転に切り替わる。試験運転においては、まず、制御部60は、バルブ50およびシャッター20を閉じた状態で、ポンプ70の運転周波数を第1運転周波数から当該第1運転周波数よりも高い第2運転周波数(例えば39.8Hz)に上げる。つまり、本実施形態における待機運転では、制御部60は、試験運転時と異なるポンプ70の動力(運転周波数)によって混合液体L1を循環回路40において循環させる。
【0066】
そして、ポンプ70の運転周波数が第2運転周波数に調整された後、制御部60は、シャッター20およびバルブ50を順に開く。これにより、噴射部31から被試験体100に向けて混合液体L1が噴射される。そして、噴射された混合液体L1は、試験槽11の開口部13を通過して試験槽11内に導かれ、被試験体100に当たる。
【0067】
また試験運転中には、上述のように混合液体L1を被試験体100に向けて噴射するとともに、循環回路40における混合液体L1の循環も継続する。つまり、循環回路40においては、待機運転および試験運転の両方に亘って常に混合液体L1を循環させることにより、混合液体L1の温度が保たれる。
【0068】
ここで、上記の通り説明した実施形態1に係る耐候性試験装置1の特徴および作用効果について列記する。
【0069】
耐候性試験装置1は、液体に粉粒体が混合された混合液体L1を被試験体100に向けて噴射し、被試験体100の耐性を試験する装置である。この耐候性試験装置1は、被試験体100に向けて混合液体L1を噴射する噴射部31と、混合液体L1を貯めるタンク71と、タンク71から流出した混合液体L1がタンク71に向かって流れる流路43と、を有する循環回路40と、循環回路40から噴射部31に混合液体L1を導く分岐経路41と、循環回路40において混合液体L1を循環させる動力を発生するポンプ70と、を備えている。
【0070】
この耐候性試験装置1によれば、ポンプ70の動力によって混合液体L1を循環回路40において循環させることができる。そして、この循環動力によって付勢された混合液体L1をタンク71内に流入させることができる。これにより、混合液体L1の勢いによってタンク71内の混合液体L1を撹拌することができるため、タンク71内で粉粒体が沈殿するのを防ぐことができる。しかも、タンク71内に撹拌機などを設置することなく、混合液体L1の循環動力を利用して撹拌することができるため、装置コストの増加を抑えることができる。そして、タンク71内で撹拌された混合液体L1を循環回路40から分岐経路41を通じて噴射部31に導き、噴射部31から被試験体100に向けて噴射することにより、混合液体L1の噴射による衝撃に対する被試験体100の耐性を試験することができる。
【0071】
耐候性試験装置1は、分岐経路41に配置され、混合液体L1の流通および遮断を切り替えるバルブ50と、バルブ50を開いた状態で噴射部31から被試験体100に混合液体L1を噴射する試験運転と、バルブ50を閉じた状態で試験運転時と異なるポンプ70の動力によって混合液体L1を循環回路40において循環させる待機運転と、を実行する制御部60と、を備えている。
【0072】
この構成によれば、待機運転時に循環回路40において循環する混合液体L1の流量を、試験運転時の流量とは異なる流量であって、タンク71内の混合液体L1の撹拌に適した流量に調整することができる。したがって、タンク71内における粉粒体の沈殿をより確実に防ぐことができる。
【0073】
耐候性試験装置1は、流路43を流れた混合液体L1をタンク71内に向けて噴射するノズル90を備えている。
【0074】
この構成によれば、タンク71内における特に粉粒体の沈殿が起こり易い場所に向けてノズル90から混合液体L1を噴射することができるため、タンク71内における粉粒体の沈殿をより確実に防ぐことができる。
【0075】
耐候性試験装置1において、タンク71は、底面72と、底面72に対して上下方向に対向する上面76と、を有している。ノズル90は、タンク71内に噴射された混合液体L1が底面72に当たって跳ね返ることによって底面72から上面76に向かう混合液体L1の流れを発生させるように配置されている。
【0076】
この構成によれば、タンク71内において混合液体L1の上昇流を発生させることによって、粉粒体の沈殿を効果的に防止することができる。
【0077】
耐候性試験装置1において、タンク71は、混合液体L1が貯まる空間S3を挟んで互いに対向する一対の側面(右側面73および左側面79)を有している。ノズル90は、タンク71内に噴射された混合液体L1が一対の側面のうち一方(左側面79)に当たって跳ね返ることによって空間S3の中央に向かう混合液体L1の流れを発生させるように配置された第1噴射口92と、タンク71内に噴射された混合液体L1が一対の側面のうち他方(右側面73)に当たって跳ね返ることによって空間S3の中央に向かう混合液体L1の流れを発生させるように配置された第2噴射口93と、を有している。
【0078】
この構成によれば、タンク71内の広い領域に亘って混合液体L1の流れを形成することができるため、タンク71内の混合液体L1を効果的に撹拌することができる。
【0079】
耐候性試験装置1は、タンク71の底面72に配置され、タンク71内の混合液体L1を冷却するための冷媒が流れるとともに互いに隙間を空けて配置された複数の主管部83を有する冷却器81を備えている。ノズル90は、当該隙間に向けて混合液体L1を噴射するように配置されている。
【0080】
主管部83の隙間は液体の淀みが生じ易いため、冷却器81よりも下側の領域は粉粒体が特に沈殿し易い場所である。これに対し、主管部83の隙間に向けて混合液体L1を噴射することにより、冷却器81をタンク71内の底面72に配置した場合でも、タンク71内における粉粒体の沈殿を防ぐことができる。
【0081】
なお、上記実施形態1において、冷却器81および加温器86の一方または両方が省略されてもよい。
【0082】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係る耐候性試験装置について、図6を参照して説明する。実施形態2に係る耐候性試験装置は、基本的に上記実施形態1に係る耐候性試験装置1と同様の構成を備えているが、タンク71の第2流通口71Bに配置されたフィルターの構成が上記実施形態1と異なっている。以下、上記実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0083】
図6は、実施形態2に係る耐候性試験装置のタンク71の外観を示している。図6に示すように、実施形態2におけるフィルター98は、タンク71における混合液体L1の出口(第2流通口71B)に配置されるとともに、タンク71の底面72よりも上側(上面76側)に突出している。具体的には、フィルター98は、タンク71の底面72から上面76に向かって延びており、その頂部98Aが混合液体L1の液面よりも下側であって底面72よりも上側に位置している。フィルター98は、その全体が混合液体L1中に浸漬されており、また冷却器81(図3)よりも高い位置まで延びていてもよい。
【0084】
耐候性試験装置においては、回収経路80(図1)を通じて試験槽11からタンク71に回収される混合液体L1中に、種々の異物が含まれることがある。この異物は、例えば、混合液体L1の噴射によって被試験体100の表面から剥がれた塗料などである。したがって、この異物がタンク71の底面72に堆積することがある。またこれらの異物には、フィルター98の目開きよりもサイズが大きいものもあるため、フィルター98の目詰まりが問題となることがある。
【0085】
これに対し、実施形態2においては、フィルター98がタンク71における異物の堆積高さよりも上側に突出するよう構成しているため、底面72に堆積した異物によってフィルター98の全体が目詰まりするのを防止することができる。つまり、フィルター98の下部において上記異物による目詰まりが生じたとしても、フィルター98の上部においては上記異物による目詰まりが起こり難い。したがって、実施形態2によれば、フィルターの目詰まりによって循環回路40内の混合液体L1の流れが阻害されるのを防止することができる。なお、実施形態2の耐候性試験装置においても、冷却器81および加温器86の一方または両方が省略されてもよい。
【0086】
(その他実施形態)
最後に、本発明のその他実施形態について説明する。
【0087】
上記実施形態1では、試験運転時よりも待機運転時の方がポンプ70の運転周波数が低い場合について説明したがこれに限定されず、試験運転時よりも待機運転時の方がポンプ70の周波数が高くてもよい。また試験運転時および待機運転時においてポンプ70の運転周波数が同じであってもよい。
【0088】
上記実施形態1において、第1および第2噴射口92,93がそれぞれ省略されてもよい。またノズル90は、タンク71の底面72から上面76に向かう混合液体の流れが発生しないように配置されていてもよい。ノズル90の位置は、タンク71内において粉粒体が沈殿し易い位置に向けて混合液体L1を噴射可能であれば、どの位置であってもよい。またノズル90自体が省略されてもよい。
【0089】
上記実施形態1では、冷却器81がタンク71の底面72に沿って横置きされる場合について説明したがこれに限定されず、冷却器81がタンク71の側面に沿って縦置きされてもよい。また冷却器81がタンク71内に配置される場合に限定されず、タンク71の外側に配置されてもよい。この場合、混合液体L1に含まれる粉粒体によって伝熱管82の外面が摩耗するのを防ぐことができる。
【0090】
タンク71は、上面76を有さず、上側が開放されているものであってもよい。
【0091】
槽壁11Aの内面とシャッター20の表面との間の隙間がなくてもよい。またシャッター20は、制御部60によって自動制御されるものに限定されず、手動制御されるものでもよい。
【0092】
循環回路40を流れる混合液体L1が流入可能なジャケット部を設け、当該ジャケット部の内部に噴射部31を配置してもよい。これにより、待機運転中においても噴射部31の温度を一定に保つことができる。
【0093】
混合液体L1に含まれる粉粒体は砂に限定されず、本発明の耐候性試験装置はスプラッシュウォーター試験用の装置に限定されるものではない。
【0094】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
1 耐候性試験装置
31 噴射部
40 循環回路
41 分岐経路
43 流路
50 バルブ
60 制御部
70 ポンプ
71 タンク
72 底面
73 右側面
76 上面
79 左側面
81 冷却器
83 主管部
85,98 フィルター
89A 上端
90 ノズル
92 第1噴射口
93 第2噴射口
100 被試験体
L1 混合液体
S3 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6