(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ロック機構は、前記動作部材に設けられたロック孔と、前記第2の位置にある前記動作部材の前記ロック孔に先端が挿入されることで、前記動作部材を前記第2の位置に保持するロックピンと、前記ロックピンを前記ロック孔に対する挿通方向へと付勢するコイルバネと、を含み、
前記解除機構は、押下操作に伴う前記非常停止ボタンの移動を、前記ロックピンの前記ロック孔に対する引き抜き方向への移動に変換するカム機構を含み、
前記移動機構は、前記動作部材が取り付けられ、回転によって前記動作部材を移動させる軸部と、押下操作に伴う前記復帰ボタンの移動を、前記動作部材を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させる回転方向への、前記軸部の回転運動に変換する変換機構と、を含み、
前記付勢手段は、前記軸部に挿通された状態で、一端側が固定されると共に、他端側が前記動作部材に接触して前記第1の位置へと付勢する、ねじりバネを含むことを特徴とする請求項4記載の列車非常停止スイッチ。
前記筐体は、直方体を成すものであり、前記前面側を構成する蓋部と、前記前面側に対する後面側を構成し、前記蓋部が開閉機構を介して開閉可能かつ着脱可能に取り付けられ、前記筐体の内部に配線を引き込むための配線口が設けられた本体部と、を有し、
前記開閉機構は、前記蓋部に設けられる第1部材と前記本体部に設けられる第2部材とで構成され、前記第1部材が、前記蓋部の端部に設けられると共に、前記第2部材が、正面視形状が対応するように前記蓋部と前記本体部とが重ねられて配置されときの、前記第1部材に対応する位置と、その状態から前記蓋部をそのままに前記本体部のみ前記筐体の後面と直交する軸を回転軸として180°回転したときの、前記第1部材に対応する位置との、双方に設けられることを特徴とする請求項2記載の列車非常停止スイッチ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の列車非常停止スイッチは、非常停止ボタンが操作されて発報状態にあること、及び/又は、非常停止ボタンが操作されずに監視状態にあることを、電気的構造のみによって保持していることが多い。このため、瞬時停電等の電気的な障害が発生すると、発報状態であるにも関わらず発報を停止してしまったり、監視状態であるにも関わらず発報してしまったりと、重大な誤動作に繋がる虞があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、列車非常停止スイッチの信頼性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)プラットホームに設置され、列車非常停止信号の送信を含む発報を行うための列車非常停止スイッチであって、筐体と、プラットホームに設置された状態での前記筐体の前面側から操作可能に設けられる、発報を開始するための非常停止ボタンと、前記筐体の前記前面側から操作可能に設けられる、発報を解除するための復帰ボタンと、前記非常停止ボタン及び前記復帰ボタンに対する操作を受けて、発報を行う発報状態と発報を行わずに待機する監視状態とを機械的に保持する保持機構と、該保持機構により前記発報状態が保持されているときに発報を行うと共に、前記保持機構により前記監視状態が保持されているときに発報を停止する発報手段と、を含むことを特徴とする列車非常停止スイッ
チ。
【0007】
本項に記載の列車非常停止スイッチは、筐体、非常停止ボタン、復帰ボタン、保持機構及び発報手段を含んでいる。筐体は、各構成要素を収容し、プラットホームの設置位置への取付構造等が設けられるものである。非常停止ボタンは、駅員等により操作されることで、列車非常停止信号の送信を含む発報を開始する、すなわち、発報を行わずに待機している監視状態から発報を行う発報状態へ切り替えられるためのボタンであり、プラットホームに設置された状態における筐体の、前面側から操作可能な位置に設けられる。又、復帰ボタンは、駅員等により操作されることで、発報を解除する、すなわち、発報を行う発報状態から発報を行わずに待機する監視状態へ切り替えられるためのボタンであり、非常停止ボタンと同じく、筐体の前面側から操作可能な位置に設けられる。
【0008】
一方、保持機構は、非常停止ボタン及び復帰ボタンに対する操作を受けて、発報状態及び監視状態を機械的に保持するものである。すなわち、保持機構は、非常停止ボタンが操作されると、以降、復帰ボタンが操作されるまで、発報状態であることを機械的に保持し、復帰ボタンが操作されると、以降、非常停止ボタンが操作されるまで、監視状態であることを機械的に保持する。そして、発報手段は、保持機構により発報状態が保持されているときに、列車非常停止信号の送信を含む発報を行い、保持機構により監視状態が保持されているときに、発報を停止するものである。
【0009】
上記のような構成であるため、本項に記載の列車非常停止スイッチは、発報状態及び監視状態を、電気的構成に依存せずに保持機構により機械的に保持することで、瞬時停電等の電気的な障害が発生しても、発報状態及び監視状態を確実に保持するものである。更に、状態の保持に電気的な接点を用いていないため、大電流や摩耗等が要因で接点の溶着が発生することはない。これにより、列車非常停止スイッチの誤動作が防止され、列車非常停止スイッチの信頼性が高められることとなる。しかも、発報を開始するための非常停止ボタンだけでなく、発報を解除するための復帰ボタンも、筐体の前面側から操作可能な位置に設けられる構造を有している。このため、操作性に優れたものとなり、例えば、プラットホームの柱に埋め込まれるように設置される場合であっても、非常停止ボタン及び復帰ボタンが問題なく操作されるものである。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記保持機構は、前記非常停止ボタンの押下操作を受けて、前記発報状態を示す第1の位置に移動されると共に、前記復帰ボタンの押下操作を受けて、前記監視状態を示す第2の位置に移動される動作部材と、前記発報手段に対し、前記動作部材の位置に応じて、前記発報状態或いは前記監視状態を示す情報を電気的に伝達するための伝達手段と、を含む列車非常停止スイッ
チ。
本項に記載の列車非常停止スイッチは、保持機構が、動作部材と伝達手段とを含むものであり、動作部材は、非常停止ボタン及び復帰ボタンの押下操作を受けて、第1の位置及び第2の位置に移動されるものである。より詳しくは、動作部材は、非常停止ボタンの押下操作に連動して、発報状態を示す第1の位置に移動され、復帰ボタンの押下操作に連動して、監視状態を示す第2の位置に移動される。すなわち、保持機構は、第1の位置と第2の位置とに移動可能な動作部材を利用して、発報状態及び監視状態を機械的に保持する。
【0011】
又、伝達手段は、列車非常停止信号の送信を含む発報を行う発報手段に対し、動作部材の位置に応じて、発報状態或いは監視状態を示す情報を、電気的に伝達するものである。すなわち、伝達手段は、動作部材が第1の位置にあるときに、発報手段に対して発報状態であることを電気的に伝達し、動作部材が第2の位置にあるときに、発報手段に対して監視状態であることを電気的に伝達する。これにより、発報状態及び監視状態を機械的に保持しながらも、列車非常停止信号の送信といった電気的制御が必要な発報を行う発報手段に対して、発報状態及び監視状態であることが電気的に伝達されるため、発報手段による発報の開始及び停止が円滑に行われることとなる。
【0012】
ここで、瞬時停電が発生した場合について言及すると、上述したように、保持機構は、動作部材を利用して発報状態及び監視状態を機械的に保持しており、瞬時停電が発生したとしても、動作部材の位置が瞬時停電の発生前後で変わることはない。そして、伝達手段は、発報状態或いは監視状態を示す情報を電気的に伝達するものの、それらを動作部材の位置に応じて伝達するため、瞬時停電の発生前後で伝達手段からの伝達内容が変わることもない。従って、瞬時停電が発生したとしても、停電の前後において、発報状態や監視状態を示す情報が、伝達手段から発報手段へと電気的に正確に伝えられるため、列車非常停止スイッチの誤動作が防止されるものである。
【0013】
(3)上記(2)項において、前記保持機構は、前記動作部材を前記第1の位置へと付勢する付勢手段と、前記動作部材を前記第2の位置において保持するロック機構と、前記非常停止ボタンの押下操作を受けて、前記ロック機構による前記動作部材の保持状態を解除する解除機構と、前記復帰ボタンの押下操作を受けて、前記動作部材を前記第1の位置から前記第2の位置へと移動させる移動機構と、を含む列車非常停止スイッ
チ。
本項に記載の列車非常停止スイッチは、保持機構が、付勢手段、ロック機構、解除機構及び移動機構を含むものである。付勢手段は、動作部材を発報状態を示す第1の位置へと付勢し、移動機構は、復帰ボタンの押下操作を受けて、付勢手段による付勢力に逆らって、動作部材を第1の位置から監視状態を示す第2の位置へと移動させる。又、ロック機構は、動作部材を第2の位置において保持し、解除機構は、非常停止ボタンの押下操作を受けて、ロック機構による動作部材の保持状態を解除する。
【0014】
すなわち、動作部材は、ロック機構により第2の位置に保持された状態から、非常停止ボタンが押下操作されて解除機構を介して保持状態が解除されると、付勢手段の付勢力によって第2の位置から第1の位置へと移動される。更に、動作部材は、第1の位置にある状態で復帰ボタンが押下操作されると、移動機構を介して第1の位置から第2の位置へと移動された後、ロック機構により第2の位置に保持されるものである。本項に記載の列車非常停止スイッチは、上記のような具体的な構成によって、動作部材を利用した発報状態及び監視状態の機械的な保持を、より確実に行うものである。
【0015】
(4)上記(3)項において、前記ロック機構は、前記動作部材に設けられたロック孔と、前記第2の位置にある前記動作部材の前記ロック孔に先端が挿入されることで、前記動作部材を前記第2の位置に保持するロックピンと、前記ロックピンを前記ロック孔に対する挿通方向へと付勢するコイルバネと、を含み、前記解除機構は、押下操作に伴う前記非常停止ボタンの移動を、前記ロックピンの前記ロック孔に対する引き抜き方向への移動に変換するカム機構を含み、前記移動機構は、前記動作部材が取り付けられ、回転によって前記動作部材を移動させる軸部と、押下操作に伴う前記復帰ボタンの移動を、前記動作部材を前記第1の位置から前記第2の位置へ移動させる回転方向への、前記軸部の回転運動に変換する変換機構と、を含み、前記付勢手段は、前記軸部に挿通された状態で、一端側が固定されると共に、他端側が前記動作部材に接触して前記第1の位置へと付勢する、ねじりバネを含む列車非常停止スイッ
チ。
【0016】
本項に記載の列車非常停止スイッチは、保持機構の構成をより具体化するものであり、まず、動作部材を第2の位置において保持するロック機構は、ロック孔、ロックピン及びコイルバネを含んでいる。ロック孔は、動作部材に設けられる貫通孔であり、動作部材が第2の位置にある状態でロックピンの先端が挿入されることで、ロックピンと協働して動作部材を第2の位置において保持する。このため、ロックピンは、軸方向のみの移動ができるように保持され、又、ロック孔は、動作部材が第2の位置にある状態でのみ、ロックピンの保持位置に対応する配置になるように設けられている。そして、コイルバネは、ロックピンをロックピンの軸方向に沿って、ロック孔に対する挿通方向へと付勢するように設けられる。又、ロック機構による動作部材の保持状態を解除する解除機構は、非常停止ボタンが押下操作されたときの、押下操作に伴う非常停止ボタンの移動を、上述したロックピンのロック孔に対する引き抜き方向への移動に変換するカム機構を含んでいる。
【0017】
一方、動作部材を第1の位置から第2の位置へと移動させる移動機構は、軸部及び変換機構を含んでおり、軸部には、軸部の回転によって動作部材を移動させるように、動作部材が取り付けられる。このため、動作部材は、軸部の回転に伴って軸部を回転軸として回動されることで、第1の位置や第2の位置に移動される。そして、変換機構は、復帰ボタンが押下操作されたときの、押下操作に伴う復帰ボタンの移動を、動作部材を第1の位置から第2の位置へと移動させる方向への、軸部の回転運動に変換する。他方、動作部材を第1の位置へと付勢する付勢手段は、ねじりバネを含んでおり、このねじりバネは、移動機構の軸部に挿通された状態で、一端側が固定されると共に、他端側が動作部材に接触して第1の位置へと付勢するように設けられている。
【0018】
上記のような構成により、まず、動作部材がロック機構により第2の位置において保持されている状態で、非常停止ボタンが押下操作されると、解除機構のカム機構によって、非常停止ボタンの移動がロックピンの軸方向移動に変換される。この際、非常停止ボタンを介して伝えられる力が、ロック機構のコイルバネによる付勢力を上回る場合に、ロックピンがロック孔から引き抜かれるように軸方向移動され、ロック機構による動作部材の保持状態が解除される。すると、付勢手段のねじりバネによって付勢されている動作部材が、第2の位置から第1の位置へと移動され、ねじりバネの付勢力によって第1の位置に保持される。
【0019】
更に、第1の位置に保持された状態から、復帰ボタンが押下操作されると、移動機構の変換機構により、復帰ボタンの移動が軸部の回転運動に変換される。この際、復帰ボタンを介して伝えられる力が、付勢手段のねじりバネによる付勢力を上回る場合に、動作部材が取り付けられた軸部が回転され、動作部材が第1の位置から第2の位置へと移動される。そして、動作部材が第2の位置へ移動されると、コイルバネによって付勢されているロックピンの先端が、動作部材のロック孔に挿入され、動作部材が第2の位置において保持される。このように、本項に記載の列車非常停止スイッチは、保持機構のより具体的な構成によって、動作部材を利用した発報状態及び監視状態の機械的な保持を、より一層確実に行うものである。
【0020】
(5)上記(2)から(4)項において、前記動作部材が金属製であり、前記伝達手段が、前記動作部材の接近を検出する磁気形近接スイッチである列車非常停止スイッ
チ。
本項に記載の列車非常停止スイッチは、発報手段に対して、発報状態或いは監視状態を示す情報を電気的に伝達する伝達手段が、金属製の動作部材の接近を検出する磁気形近接スイッチで構成されているものである。例えば、動作部材は、発報状態を示す第1の位置にあるときに、磁気形近接スイッチに接近し、監視状態を示す第2の位置にあるときに、磁気形近接スイッチから離れるように設置される。
【0021】
これにより、磁気形近接スイッチは、金属製の動作部材が接近している第1の位置にあるときに、磁気形近接スイッチから発生している磁界の変化を検出して、動作部材が接近していると判定し、発報状態を示す情報を発報手段に伝達する。又、磁気形近接スイッチは、金属製の動作部材が離れている第2の位置にあるときは、磁気形近接スイッチから発生している磁界の変化を検出しないため、動作部材が離れていると判定し、監視状態を示す情報を発報手段に伝達する。このように、伝達手段として磁気形近接スイッチを利用することで、動作部材を利用して機械的に保持されている情報が、より確実かつ円滑に、発報手段に対して電気的に伝達されるものである。
【0022】
(6)上記(1)から(5)項において、前記筐体は、直方体を成すものであり、前記前面側を構成する蓋部と、前記前面側に対する後面側を構成し、前記蓋部が開閉機構を介して開閉可能かつ着脱可能に取り付けられ、前記筐体の内部に配線を引き込むための配線口が設けられた本体部と、を有し、前記開閉機構は、前記蓋部に設けられる第1部材と前記本体部に設けられる第2部材とで構成され、前記第1部材が、前記蓋部の端部に設けられると共に、前記第2部材が、正面視形状が対応するように前記蓋部と前記本体部とが重ねられて配置されときの、前記第1部材に対応する位置と、その状態から前記蓋部をそのままに前記本体部のみ前記筐体の後面と直交する軸を回転軸として180°回転したときの、前記第1部材に対応する位置との、双方に設けられる列車非常停止スイッ
チ。
【0023】
本項に記載の列車非常停止スイッチは、直方体を成す筐体が、前面側を構成する蓋部と、後面側を構成する本体部とを有するものである。すなわち、蓋部及び本体部共に、正面視で矩形を成すこととなる。本体部には、開閉機構を介して蓋部が開閉可能かつ着脱可能に取り付けられ、又、電源等の配線を筐体の内部に引き込むための配線口が設けられる。本体部に対して蓋部を取り付けるための開閉機構は、蓋部の何れかの端部に設けられる第1部材と、本体部に設けられる第2部材とで構成される。ここで、直方体を成す筐体の前面側を構成する蓋部と、後面側を構成する本体部とは、正面視形状が対応するように重ねられて配置された状態から、本体部のみが、筐体の後面と直交する軸を回転軸として180°回転されても、正面視形状が再度対応するような配置になる。そこで、本体部に設けられる第2部材は、蓋部と本体部とが正面視形状が対応するように重ねられて配置されたときの、蓋部の第1部材に対応する位置と、その状態から上記のように本体部のみが回転されたときの、蓋部の第1部材に対応する位置との、双方に設けられる。すなわち、第2部材は、本体部の正面視で、上記の回転軸を中心とした点対称位置に設けられる。
【0024】
上記のような構成により、筐体を構成する蓋部と本体部とは、以下のような2つの形態で取り付けられるようになる。すなわち、一方の形態では、蓋部に設けられた第1部材と、本体部の2箇所に設けられた一方の第2部材とが組み付けられて構成される、開閉機構を介して取り付けられる。又、他方の形態では、一方の形態から本体部のみが180°回転された状態で、蓋部に設けられた第1部材と、本体部に設けられた他方の第2部材とが組み付けられて構成される、開閉機構を介して取り付けられる。このため、例えば、本体部に設けられる配線口の位置に制約を受けるような場合であっても、本体部には1箇所のみに配線口が設けられているにも関わらず、上述した一方の取り付け形態での、本体部の配線口の位置と、他方の取り付け形態での、本体部の配線口の位置との、2通りの位置に柔軟に対応するものとなる。これにより、配線口の位置変更等の設計変更に伴うコストが、大幅に削減されるものとなる。
【0025】
(7)上記(6)項において、前記本体部は、前記前面側が開口した箱状を成し、前記筐体がプラットホームに設置された状態の正面視で、前記第1部材が、前記蓋部の下端側に設けられ、前記第2部材が、前記本体部の上端側と下端側との双方に設けられ、前記配線口が、前記本体部の上面部或いは下面部に設けられる列車非常停止スイッ
チ。
本項に記載の列車非常停止スイッチは、筐体の後面側を構成する本体部が、筐体の前面側が開口した箱状を成しており、又、プラットホームに設置された状態の筐体の正面視で、以下のように各部位の位置が定められるものである。具体的に、開閉機構を構成する第1部材が、蓋部の下端側に設けられ、同じく開閉機構を構成する第2部材が、本体部の上端側と下端側との双方に設けられるものである。すなわち、蓋部は、その下端側に設けられた第1部材と、本体部の下端側に設けられた第2部材とで構成される開閉機構を介して、下端側を軸として上端側から開かれるように、本体部に対して取り付けられる。このとき、本体部に設けられた配線口は、本体部の上面部(或いは下面部)に位置している。
【0026】
一方、上記(6)項に記載したように、本体部が180°回転された状態で蓋部を取り付けると、蓋部は、その下端側に設けられた第1部材と、本体部の下端側(回転前の上端側に相当)に設けられた第2部材とで構成される開閉機構を介して、下端側を軸として上端側から開かれるように、本体部に対して取り付けられる。このとき、本体部に設けられた配線口は、本体部の回転前とは反対の、本体部の下面部(或いは上面部)に位置している。すなわち、配線口が本体部の上面部或いは下面部の一方に設けられているものの、本体部が180°回転される前、或いは、回転された後の状態で利用されることで、配線口が上面部に位置する形態と下面部に位置する形態との双方に対応するものとなる。ここで、配線口を介して筐体の内部に引き込まれる配線は、プラットホームにおいて上方向或いは下方向から引き回されることが多い。このため、配線口が上面部に位置する形態と下面部に位置する形態との双方に対応していることで、多くの設置場所に適応するものとなる。
【0027】
(8)上記(6)(7)項において、前記保持機構及び前記発報手段が、前記蓋部に固定される列車非常停止スイッ
チ。
本項に記載の列車非常停止スイッチは、保持機構と発報手段との双方が、蓋部に固定されるものである。このため、本体部に対して、開閉機構を介して着脱可能に取り付けられている蓋部は、保持機構及び発報手段が固定された状態のまま、本体部から取り外されることとなる。ここで、筐体の前面側を構成する蓋部には、非常停止ボタン及び復帰ボタンを操作するための構造を含み、保持機構や発報手段で利用する複数の部材が設けられる。従って、仮に、保持機構及び発報手段が本体部に固定されていると仮定すると、上記(6)項に記載したように本体部が180°回転される場合に、保持機構及び発報手段と蓋部に設けられた部材との位置を対応させるために、保持機構及び発報手段を本体部から一旦取り外して、本体部の回転後に再度取り付ける手間や、追加部品等が必要になることが想定される。
【0028】
しかしながら、本項に記載の列車非常停止スイッチは、上述したように、保持機構及び発報手段が蓋部に固定されているため、蓋部と本体部とが分離され、蓋部において保持機構及び発報手段が保持された状態で、本体部のみが回転されることになる。これにより、本体部の2箇所に設けられた第2部材のうち、一方の第2部材を利用して蓋部が取り付けられた形態から、他方の第2部材を利用して蓋部が取り付けられる形態への切り替えが、不本意な手間や追加部品等を必要とすることなく、容易に行われるものとなる。
【0029】
(9)上記(6)から(8)項において、前記蓋部に、前記本体部に対する前記蓋部の開動作を抑止するための、前記前面側から操作可能な抑止手段が設けられる列車非常停止スイッ
チ。
本項に記載の列車非常停止スイッチは、蓋部が開閉機構を介して本体部に取り付けられた状態で、本体部に対する蓋部の開動作を抑止するための抑止手段が、蓋部に設けられていることで、不本意なタイミングで蓋部が開かないように、本体部に対して蓋部が確実に保持されるものである。しかも、抑止手段は前面側から操作可能な位置に設けられるため、メンテナンス時等の必要に応じて抑止状態が解除され、蓋部が容易に開かれるものである。
【0030】
(10)上記(6)から(9)項において、前記開閉機構がヒンジ機構であり、該ヒンジ機構の雄側と雌側との一方が前記第1部材を成し、他方が前記第2部材を成す列車非常停止スイッ
チ。
本項に記載の列車非常停止スイッチは、開閉機構がヒンジ機構により構成されていることで、複雑な構成を用いることなく、蓋部の開閉動作の円滑化や、蓋部と本体部との分離の容易化等を図るものである。
【0031】
(11)上記(1)から(10)項において、前記発報手段は、前記列車非常停止信号を送信する送信部と、光を発生する点灯部と、音を発生する発音部と、を含み、前記筐体の前記前面側から操作可能に、前記発音部による音の発生を停止するための停止ボタンが設けられると共に、前記筐体の前記前面側に、前記点灯部からの光を拡散するためのプリズムが設けられた列車非常停止スイッ
チ。
本項に記載の列車非常停止スイッチは、発報手段が、列車非常停止信号を外部に送信する送信部と、光を発生する点灯部と、音を発生する発音部とを含むものである。すなわち、発報手段は、送信部による列車非常停止信号の送信に加えて、点灯部による光を利用した発報と、発音部による音を利用した発報とを行い、周囲の人々に対し、列車非常停止スイッチが扱われたことを、光と音との双方で伝達する。ここで、これらの送信部、点灯部及び発音部は、何れも、電気的に制御されるものであるため、発報状態や監視状態に関わらず、停電中は発報を停止する。しかしながら、保持機構により機械的に保持されている状態に応じて動作を行うため、復電後は、停電前と同じ動作(発報の実行或いは停止)を行うことになる。
【0032】
更に、本項に記載の列車非常停止スイッチは、筐体の前面側から操作可能な位置に、発音部による音の発生を停止するための停止ボタンが設けられている。停止ボタンは、駅員等により操作されると、保持機構により発報状態が保持されていても、発音部による音の発生を停止させる。これにより、送信部による列車非常停止信号の送信と、点灯部による光の発生とを続けたまま、ときに不快感を与えかねない音による発報のみが停止されることになる。又、筐体の前面側には、点灯部からの光を拡散するためのプリズムが設けられ、点灯部から発生する光は、プリズムによって拡散されることで、視認性が格段に向上されることとなる。なお、発報状態のときに復帰ボタンが操作されると、発報状態から監視状態に切り替えられるため、送信部による列車非常停止信号の送信と、点灯部による光の発生と、発音部による音の発生との全てが停止される。
【発明の効果】
【0033】
本発明は上記のような構成であるため、列車非常停止スイッチの信頼性を高めることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づいて説明する。なお、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は同一符号で示している。又、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については、詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、
図1に示すように、蓋部14と本体部16とを備える筐体12を有しており、蓋部14が筐体12の前面側(
図1(b)における左側)を構成し、本体部16が筐体12の後面側(
図1(b)における右側)を構成している。本実施例では、蓋部14が、その後面側が開口した正面視矩形の箱状を成し、本体部16が、その前面側が開口した正面視矩形の箱状を成すことで、筐体12は、略直方体を成している。筐体12の内部には、後述する保持機構50や発報手段80(
図2〜
図4参照)といった、列車非常停止スイッチ10の機能を実現するための各種の構成部材が収容されている。それらの構成部材は、取付盤34(
図2参照)に搭載された状態で、後面側から蓋部14に固定されている。又、詳しくは後述するが、蓋部14と本体部16とは、開閉機構20を介して、本体部16に対して蓋部14が開閉可能かつ着脱可能に取り付けられている。
【0036】
図1及び
図2に示すように、蓋部14の前面側(
図1(b)及び
図2(b)における左側)には、開閉可能なラッチロック式の3つの蓋32a、42a、44aと、プリズム46と、ボタンカバー40aと、ブザー窓48及びそれを覆うフード49とが設けられている。蓋32a、42a、44aは、夫々、抑止手段32の操作部分、復帰ボタン42及び停止ボタン44を覆うものであり、抑止手段32、復帰ボタン42及び停止ボタン44が操作される際に開かれ、それ以外には不本意なタイミングで操作されないように閉じられている。プリズム46は、発報手段80の点灯部84(
図4参照)によって発生される光(本実施例では複数のLED85からの光)を拡散させるものである。ボタンカバー40aは、非常停止ボタン40を覆うものであり、ボタンカバー40aの上から非常停止ボタン40が操作できるように、例えば弾性を有する樹脂により薄膜状に形成されている。又、ブザー窓48は、発報手段80の発音部86(
図4参照)から発生する音(本実施例ではブザー87からのブザー音)を、筐体12の外側へ伝わり易くするための貫通窓であり、異物の侵入を防ぐように、図中下側が開口したフード49で覆われている。
【0037】
一方、本体部16には、図示の例では上面部16aから筐体12の内部に連通するように、筐体12の内部に各種の配線を導入するための筒状の配線口30が設けられている。又、列車非常停止スイッチ10をプラットホームに設置する際に利用される、板状の取付部材36が、本体部16の背面(
図1(b)及び
図2(b)における右側外面)の上下端部に夫々取り付けられている。又、本体部16は、上面部16a及び下面部16bが、
図2(b)に示す断面でS字状を成していることで、後面側に筐体12の内部空間の一部として凹部16cが形成されると共に、前面側に蓋部14で覆われる凹部16dが形成されている。
【0038】
上述したように、蓋部14は、本実施例ではヒンジ機構によって構成される開閉機構20を介して、本体部16に対し開閉可能かつ着脱可能に取り付けられている。開閉機構20は、
図2に示すように、蓋部14に設けられる第1部材22と、本体部16に設けられる第2部材24とで構成され、本実施例において、第1部材22は、ヒンジ機構の雌側として、蓋部14の図中下端側の内側面14aに設けられている。一方、第2部材24は、本体部16の上面部16aと下面部16bとの夫々の凹部16dに、ヒンジ機構の雄側として設けられている。そして、本実施例では、本体部16の下面部16bに設けられた第2部材24と、蓋部14に設けられた第1部材22とが組み付けられた開閉機構20によって、蓋部14が本体部16に対して取り付けられている。
【0039】
ここで、
図3には、蓋部14と本体部16とを分離し、更に、保持機構50や発報手段80等が搭載された取付盤34を蓋部14から分離した状態を示している。
図3に示されている本体部16は、
図1及び
図2に示した状態から、筐体12の後面と直交する軸S(
図2(b)参照)を回転軸として180°回転された状態である。このため、
図3の本体部16は、筒状の配線口30が設けられた上面部16aが下方に位置し、下面部16bが上方に位置している。そして、
図3のように配置された場合であっても、本体部16は、
図3における下方に位置する上面部16aに設けられた第2部材24に対して、蓋部14に設けられた第1部材22が組み付けられることで、蓋部14が開閉可能に取り付けられるようになっている。なお、
図3の蓋部14は、ブザー窓48を覆うフード49が設けられる前の状態を示しており、又、
図3の取付盤34は、搭載される部材を一部省略して図示している。
【0040】
再度
図2を参照すると、上述した抑止手段32は、蓋部14が本体部16に対して取り付けられた状態で、蓋部14が本体部16から開かないように抑止するものであり、本実施例では蓋部14に設置されている。抑止手段32は、蓋32aが開かれた状態で、蓋部14の前面側から回転操作されることで、蓋部14の開動作を抑止する抑止状態と、蓋部14の開動作が可能な非抑止状態とが切り替えられるようになっている。より詳しくは、抑止状態の抑止手段32は、
図2(b)に示すように、抑止手段32の回転操作に伴って回動する抑止板32bが、本体部16の上面部16a(或いは
図3の状態では下面部16b)の凹部16cにおいて、凹部16cと凹部16dとを隔てる壁部に当接する位置にあることで、蓋部14の開動作を抑止する。一方、非抑止状態の抑止手段32は、
図2(b)に示す状態から回転操作され、抑止板32bが、本体部16の上面部16a(或いは
図3の状態では下面部16b)の凹部16cよりも、図中下方に位置するまで回動されることで、蓋部14の開動作が可能になる。なお、抑止手段32は、操作する人物が制限されるように、例えば特殊な工具によってのみ操作可能な構造であることが好ましい。
【0041】
上述したように、蓋部14に固定される取付盤34には、保持機構50及び発報手段80と共に、非常停止ボタン40、復帰ボタン42、停止ボタン44等が搭載されている。非常停止ボタン40は、発報手段80により発報を開始するための機械式のボタンであり、蓋部14の前面側からボタンカバー40aを介して押下操作される。復帰ボタン42は、発報手段80を介した発報を停止するための機械式のボタンであり、蓋42aが開かれた状態で蓋部14の前面側から押下操作される。又、停止ボタン44は、発報手段80の発音部86(
図4参照)からの音の発生(本実施例ではブザー87からのブザー音)を停止するための電気式のボタンであり、蓋44aが開かれた状態で蓋部14の前面側から押下操作される。
【0042】
続いて、
図4には、取付盤34に搭載される保持機構50及び発報手段80の構成を概略的に示している。保持機構50は、発報手段80から発報を行う発報状態と、発報手段80から発報を行わずに待機する監視状態とを、機械的に保持するものであり、図示のように、動作部材52、伝達手段54、付勢手段56、ロック機構60、解除機構70及び移動機構74を含んでいる。動作部材52は、
図4(b)に示されている第1の位置P1と、
図4(a)に示されている第2の位置P2とに移動されるように構成され、本実施例では、第1の位置P1にあるときに、上記の発報状態であること示し、第2の位置P2にあるときに、上記の監視状態であること示している。動作部材52は、図示の例では金属板により構成され、
図4(b)における左斜め手前からの側面視でコの字状を成し、側板部52a、52bを有している。又、動作部材52は、移動機構74に含まれる軸部76に取り付けられており、軸部76が回転することによって、第1の位置P1及び第2の位置P2に移動するようになっている。
【0043】
伝達手段54は、動作部材52の位置に応じて、保持機構50により発報状態が保持されていること、或いは、監視状態が保持されていることを、発報手段80に対して電気的に伝達するものであり、本実施例では、磁気形近接スイッチにより構成されている。具体的に、磁気形近接スイッチにより構成される伝達手段54は、内蔵する磁石により検知部54a、54bの間に磁界を発生させ、この磁界の変化の有無によって、金属の接近を検知する。すなわち、伝達手段54は、動作部材52が
図4(a)に示す第2の位置P2にあるとき、金属製の動作部材52が検知部54a、54b間の磁界に影響を及ぼさない位置にあるため、動作部材52が伝達手段54から離れた位置(第2の位置P2)にあると判定する。この場合、伝達手段54は、監視状態が保持されていることを示す情報を、発報手段80に対して電気的に出力する。他方、伝達手段54は、動作部材52が
図4(b)に示す第1の位置P1にあるとき、動作部材52の側板部52aが検知部54a、54b間に位置し、検知部54a、54b間の磁界に変化が生じるため、動作部材52が伝達手段54に接近した位置(第1の位置P1)にあると判定する。この場合、伝達手段54は、発報状態が保持されていることを示す情報を、発報手段80に対して電気的に出力する。
【0044】
付勢手段56は、動作部材52を第1の位置P1へと付勢するものであり、軸部76に挿通されたねじりバネ58を含んでいる。ねじりバネ58は、軸部76と共に回転しないように軸部76に遊嵌された状態で、その一端58a側が、取付盤34に立設された固定板59に固定されており、他端58b側が、動作部材52に接触して第1の位置P1へと付勢している。なお、図示の便宜上、固定板59は二点鎖線を用いて仮想的に示している。又、ねじりバネ58の一端58a及び他端58bと固定板59とは、後述する
図5においても図示されている。
【0045】
ロック機構60は、
図5に示すように、動作部材52を第2の位置P2において保持するものであり、動作部材52の側板部52bに設けられたロック孔62と、ロック孔62にその先端が挿入される棒状のロックピン64と、ロックピン64をロック孔62に対する挿入方向(
図5における右下方向)へと付勢するコイルバネ66とを含んでいる。ロックピン64は、その軸方向のみに移動可能に設置されており、ロック孔62は、動作部材52が第2の位置P2にある状態でのみ、ロックピン64の先端が挿入される位置に設けられている。なお、ロックピン64は、動作部材52が第1の位置P1にある状態では、先端がロック孔62から引き抜かれて、コイルバネ66の付勢力によって、側板部52bの内面(
図5に示されている面と反対面)に当接した状態になる。
【0046】
一方、解除機構70は、上記のロック機構60による動作部材52の保持状態を解除するためのものであり、
図6に示すように、非常停止ボタン40が押下操作された際の非常停止ボタン40の移動を、ロックピン64の軸方向移動に変換するカム機構72を備えている。図示の例において、カム機構72は、非常停止ボタン40の押下操作に伴い図中下側に移動されるローラ40bと、ローラ40bが接触する斜面73aを有するシフト部材73とを備えている。シフト部材73は、ローラ40bの移動を斜面73aで受けて、図中左方向に移動するように設置され、又、この移動に伴って、ロックピン64をロック孔62(
図5参照)から引き抜く方向に移動させるように、ロックピン64と接続されている。なお、
図6に示すように、非常停止ボタン40は、コイルバネ41によって、押下操作による移動方向と反対方向(図中上方向)へと付勢されている。
【0047】
他方、移動機構74は、動作部材52を第1の位置P1から第2の位置P2へと移動させるものであり、
図7及び
図8に示すように、動作部材52が取り付けられている上述した軸部76と、変換機構78とを備えている。本実施例において、変換機構78は、軸部76の、動作部材52が取り付けられた側とは反対側の端部に取り付けられたベベルギヤ90、このベベルギヤ90と互いに係合するように設置されたベベルギヤ91、作動板92及び伝達軸93を含んでいる。作動板92は、
図8に示すように、伝達軸93の一端に取り付けられており、押下操作に伴う復帰ボタン42の図中下方向への移動を受けて、伝達軸93を回転軸として図中下方向へと回動するものである。
図8は、作動板92が図中下方向へと回動される前の状態を示している。伝達軸93は、一端に作動板92が取り付けられると共に、他端にベベルギヤ91が取り付けられており、作動板92の回動に伴ってベベルギヤ91を回転させるものである。なお、
図7及び
図8に示すように、復帰ボタン42は、コイルバネ43によって、押下操作による移動方向と反対方向(
図8中上方向)へと付勢されている。
【0048】
次に、
図4を再度参照して、発報手段80は、伝達手段54から発報状態を示す情報を受けている場合に発報を行うと共に、伝達手段54から監視状態を示す情報を受けている場合に発報を停止するものであり、本実施例では、送信部82、点灯部84及び発音部86を含んでいる。送信部82は、発報状態のときに外部に列車非常停止信号を送信するものであり、具体的な説明は差し控えるが、各種の電気回路や電気部品で構成される。点灯部84は、発報状態のときに光を発生して発報を行うものであり、本実施例では、複数のLED85(
図2(a)参照)を点灯或いは点滅させることで発報を行う。又、発音部86は、発報状態のときに音を発生して発報を行うものであり、本実施例では、ブザー87(
図2(a)参照)を利用して発報を行うように構成されている。
【0049】
なお、
図1〜
図8に示した構成は、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10の構成の一例を示したものであり、列車非常停止スイッチ10の構成を限定するものではない。例えば、開閉機構20は、
図2(a)における左右何れかの端部に第1部材22が設けられると共に、
図2(a)における左右端部の双方に第2部材24が設けられる構造であってもよく、ヒンジ機構以外の接続構造であってもよい。又、保持機構50は、発報状態及び監視状態を機械的に保持するものであれば、上記とは別の構成であってもよく、抑止手段32は、蓋部の開動作を抑止するものであれば、上記とは別の構成であってもよい。更に、伝達手段54も、磁気形近接スイッチ以外の部材で構成されていてもよい。
【0050】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、
図1及び
図2に示すように、筐体12、非常停止ボタン40、復帰ボタン42、保持機構50及び発報手段80を含んでいる。筐体12は、各構成要素を収容し、プラットホームに設置するための取付部材36等が設けられるものである。非常停止ボタン40は、駅員等により操作されることで、列車非常停止信号の送信を含む発報を開始する、すなわち、発報を行わずに待機している監視状態から発報を行う発報状態へ切り替えられるためのボタンであり、プラットホームに設置された状態における筐体12の、前面側(
図1(b)及び
図2(b)における右側)から操作可能な位置に設けられる。又、復帰ボタン42は、駅員等により操作されることで、発報を解除する、すなわち、発報を行う発報状態から発報を行わずに待機する監視状態へ切り替えられるためのボタンであり、非常停止ボタン40と同じく、筐体12の前面側から操作可能な位置に設けられる。
【0051】
一方、保持機構50は、非常停止ボタン40及び復帰ボタン42に対する操作を受けて、発報状態及び監視状態を機械的に保持するものである。すなわち、保持機構50は、非常停止ボタン40が操作されると、以降、復帰ボタン42が操作されるまで、発報状態であることを機械的に保持し、復帰ボタン42が操作されると、以降、非常停止ボタン40が操作されるまで、監視状態であることを機械的に保持する。そして、発報手段80は、保持機構50により発報状態が保持されているときに、列車非常停止信号の送信を含む発報を行い、保持機構50により監視状態が保持されているときに、発報を停止するものである。
【0052】
上記のような構成であるため、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、発報状態及び監視状態を、電気的構成に依存せずに保持機構50により機械的に保持することで、瞬時停電等の電気的な障害が発生しても、発報状態及び監視状態を確実に保持することができる。更に、状態の保持に電気的な接点を用いていないため、大電流や摩耗等が要因で接点の溶着が発生することはない。これにより、列車非常停止スイッチ10の誤動作を防止することができ、列車非常停止スイッチ10の信頼性を高めることが可能となる。しかも、発報を開始するための非常停止ボタン40だけでなく、発報を解除するための復帰ボタン42も、筐体12の前面側から操作可能な位置に設けられる構造を有している。このため、操作性に優れたものとなり、例えば、プラットホームの柱に埋め込まれるように設置される場合であっても、非常停止ボタン40及び復帰ボタン42を問題なく操作することができる。
【0053】
又、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、直方体を成す筐体12が、前面側を構成する蓋部14と、後面側(
図1(b)及び
図2(b)における左側)を構成する本体部16とを有するものである。すなわち、蓋部14及び本体部16共に、正面視で矩形を成すこととなる。本体部16には、開閉機構20を介して蓋部14が開閉可能かつ着脱可能に取り付けられ、又、電源等の配線を筐体12の内部に引き込むための配線口30が設けられる。本体部16に対して蓋部14を取り付けるための開閉機構20は、蓋部14の何れかの端部に設けられる第1部材22と、本体部16に設けられる第2部材24とで構成される。
【0054】
ここで、直方体を成す筐体12の前面側を構成する蓋部14と、後面側を構成する本体部16とは、
図1及び
図2に示すように、正面視形状が対応するように重ねられて配置された状態から、本体部16のみが、筐体12の後面と直交する軸Sを回転軸として180°回転されても、
図3に示すように、正面視形状が再度対応するような配置になる。そこで、本体部16に設けられる第2部材24は、蓋部14と本体部16とが正面視形状が対応するように重ねられて配置されたときの、蓋部14の第1部材22に対応する位置と、その状態から上記のように本体部16のみが回転されたときの、蓋部14の第1部材22に対応する位置との、双方に設けられる。すなわち、第2部材24は、
図2(a)に示すように、本体部16の正面視で、上記の回転軸Sを中心とした点対称位置に設けられる。
【0055】
上記のような構成により、筐体12を構成する蓋部14と本体部16とは、以下のような2つの形態で取り付けることができる。すなわち、一方の形態では、蓋部14に設けられた第1部材22と、本体部16の2箇所に設けられた一方の第2部材24とが組み付けられて構成される、開閉機構20を介して取り付けられる。又、他方の形態では、一方の形態から本体部16のみが180°回転された状態で、蓋部14に設けられた第1部材22と、本体部16に設けられた他方の第2部材24とが組み付けられて構成される、開閉機構20を介して取り付けられる。このため、例えば、本体部16に設けられる配線口30の位置に制約を受けるような場合であっても、本体部16には1箇所のみに配線口30が設けられているにも関わらず、上述した一方の取り付け形態での、本体部16の配線口30の位置と、他方の取り付け形態での、本体部16の配線口30の位置との、2通りの位置に柔軟に対応することができる。これにより、配線口30の位置変更等の設計変更に伴うコストを、大幅に削減することが可能となる。
【0056】
更に、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、筐体12の後面側を構成する本体部16が、筐体12の前面側が開口した箱状を成しており、又、プラットホームに設置された状態の筐体12の正面視(
図2(a)参照)で、以下のように各部位の位置が定められるものである。具体的に、開閉機構20を構成する第1部材22が、蓋部14の下端側に設けられ、同じく開閉機構20を構成する第2部材24が、本体部16の上面部16aと下面部16bとの双方に設けられる。すなわち、蓋部14は、その下端側に設けられた第1部材22と、本体部16の下面部16bに設けられた第2部材24とで構成される開閉機構20を介して、下端側を軸として上端側から開かれるように、本体部16に対して取り付けられる。このとき、本体部16の上面部16aに設けられた配線口30は、本体部16の上側に位置している。
【0057】
一方、本体部16が軸Sを回転軸として180°回転された状態(
図3参照)で蓋部14を取り付けると、蓋部14は、その下端側に設けられた第1部材22と、本体部16の上面部16aに設けられた第2部材24とで構成される開閉機構20を介して、下端側を軸として上端側から開かれるように、本体部16に対して取り付けられる。このとき、本体部16の上面部16aに設けられた配線口30は、本体部16の回転前とは反対の、本体部16の下側に位置している。すなわち、配線口30が本体部16の上面部16aに設けられているものの、本体部16が180°回転される前、或いは、回転された後の状態で利用されることで、配線口30が上側に位置する形態と下側に位置する形態との双方に対応することができる。ここで、配線口30を介して筐体12の内部に引き込まれる配線は、プラットホームにおいて上方向或いは下方向から引き回されることが多い。このため、配線口30が上側に位置する形態と下側に位置する形態との双方に対応していることで、多くの設置場所に適応することが可能となる。
【0058】
又、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、
図2に示すように、保持機構50と発報手段80との双方が、取付盤34を介して蓋部14に固定されるものである。このため、本体部16に対して、開閉機構20を介して着脱可能に取り付けられている蓋部14を、保持機構50及び発報手段80を固定した状態のまま、本体部16から取り外すことができる。ここで、筐体12の前面側を構成する蓋部14には、非常停止ボタン40及び復帰ボタン42を操作するための構造を含み、保持機構50や発報手段80で利用する複数の部材が設けられる。従って、仮に、保持機構50及び発報手段80が本体部16に固定されていると仮定すると、上述したように本体部16が180°回転される場合に、保持機構50及び発報手段80と蓋部14に設けられた部材との位置を対応させるために、保持機構50及び発報手段80を本体部16から一旦取り外して、本体部16の回転後に再度取り付ける手間や、追加部品等が必要になることが想定される。
【0059】
しかしながら、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、上述したように、保持機構50及び発報手段80が蓋部14に固定されているため、蓋部14と本体部16とを分離し、蓋部14において保持機構50及び発報手段80を保持した状態で、本体部16のみを回転させることができる。これにより、本体部16の2箇所に設けられた第2部材24のうち、一方の第2部材24を利用して蓋部14が取り付けられた形態から、他方の第2部材24を利用して蓋部14が取り付けられる形態への切り替えを、不本意な手間や追加部品等を必要とすることなく、容易に行うことができる。
【0060】
又、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、
図2(b)に示すように、蓋部14が開閉機構20を介して本体部16に取り付けられた状態で、本体部16に対する蓋部14の開動作を抑止するための抑止手段32が、蓋部14に設けられていることで、不本意なタイミングで蓋部14が開かないように、本体部16に対して蓋部14を確実に保持することができる。しかも、抑止手段32は前面側から操作可能な位置に設けられるため、メンテナンス時等の必要に応じて抑止状態を解除することで、蓋部14を容易に開くことができる。更に、開閉機構20をヒンジ機構により構成することで、複雑な構成を用いることなく、蓋部14の開閉動作の円滑化や、蓋部14と本体部16との分離の容易化等を図ることができる。
【0061】
又、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、
図4に示すように、発報手段80が、列車非常停止信号を外部に送信する送信部82と、光を発生する点灯部84と、音を発生する発音部86とを含むものである。すなわち、発報手段80は、送信部82による列車非常停止信号の送信に加えて、点灯部84による光を利用した発報と、発音部86による音を利用した発報とを行い、周囲の人々に対し、列車非常停止スイッチ10が扱われたことを、光と音との双方で伝達するものである。ここで、これらの送信部82、点灯部84及び発音部86は、何れも、電気的に制御されるものであるため、発報状態や監視状態に関わらず、停電中は発報を停止する。しかしながら、保持機構50により機械的に保持されている状態に応じて動作を行うため、復電後は、停電前と同じ動作(発報の実行或いは停止)を行うことができる。
【0062】
更に、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、
図2に示すように、筐体12の前面側から操作可能な位置に、発音部86による音の発生を停止するための停止ボタン44が設けられている。停止ボタン44は、駅員等により操作されると、保持機構50により発報状態が保持されていても、発音部86による音の発生を停止させる。これにより、送信部82による列車非常停止信号の送信と、点灯部84による光の発生とを続けたまま、ときに不快感を与えかねない音による発報のみを停止することができる。又、
図1及び
図2に示すように、筐体12の前面側には、点灯部84(LED85)からの光を拡散するためのプリズム46が設けられており、点灯部84から発生する光を、プリズム46によって拡散することで、視認性を格段に向上することができる。
【0063】
又、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、
図4に示すように、保持機構50が、動作部材52と伝達手段54とを含むものであり、動作部材52は、非常停止ボタン40及び復帰ボタン42の押下操作を受けて、第1の位置P1及び第2の位置P2に移動されるものである。より詳しくは、動作部材52は、非常停止ボタン40の押下操作に連動して、発報状態を示す第1の位置P1に移動され、復帰ボタン42の押下操作に連動して、監視状態を示す第2の位置P2に移動される。すなわち、保持機構50は、第1の位置P1と第2の位置P2とに移動可能な動作部材52を利用して、発報状態及び監視状態を機械的に保持する。
【0064】
一方、伝達手段54は、送信部82、点灯部84及び発音部86を含む発報手段80に対し、動作部材52の位置に応じて、発報状態或いは監視状態を示す情報を、電気的に伝達するものである。すなわち、伝達手段54は、動作部材52が第1の位置P1にあるときに、発報手段80に対して発報状態であることを電気的に伝達し、動作部材52が第2の位置P2にあるときに、発報手段80に対して監視状態であることを電気的に伝達する。これにより、発報状態及び監視状態を機械的に保持しながらも、列車非常停止信号の送信といった電気的制御が必要な発報を行う発報手段80に対して、発報状態及び監視状態であることを電気的に伝達できるため、発報手段80による発報の開始及び停止を円滑に行うことが可能となる。
【0065】
ここで、瞬時停電が発生した場合について言及すると、上述したように、保持機構50は、動作部材52を利用して発報状態及び監視状態を機械的に保持しており、瞬時停電が発生したとしても、動作部材52の位置が瞬時停電の発生前後で変わることはない。そして、伝達手段54は、発報状態或いは監視状態を示す情報を電気的に伝達するものの、それらを動作部材52の位置に応じて伝達するため、瞬時停電の発生前後で伝達手段54からの伝達内容が変わることもない。従って、瞬時停電が発生したとしても、停電の前後において、発報状態や監視状態を示す情報を、伝達手段54から発報手段80へと電気的に正確に伝えることができるため、列車非常停止スイッチ10の誤動作を防止することができる。
【0066】
更に、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、伝達手段54が、金属製の動作部材52の接近を検出する磁気形近接スイッチで構成されているものである。例えば、動作部材52は、発報状態を示す第1の位置P1にあるときに、磁気形近接スイッチに接近し、監視状態を示す第2の位置P2にあるときに、磁気形近接スイッチから離れるように設置される。これにより、磁気形近接スイッチは、金属製の動作部材52が接近している第1の位置P1にあるときに、磁気形近接スイッチから発生している磁界の変化を検出して、動作部材52が接近していると判定し、発報状態を示す情報を発報手段80に伝達する。又、磁気形近接スイッチは、金属製の動作部材52が離れている第2の位置P2にあるときは、磁気形近接スイッチから発生している磁界の変化を検出しないため、動作部材52が離れていると判定し、監視状態を示す情報を発報手段80に伝達する。このように、伝達手段54として磁気形近接スイッチを利用することで、動作部材52を利用して機械的に保持されている情報を、より確実かつ円滑に、発報手段80に対して電気的に伝達することが可能となる。
【0067】
又、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、保持機構50が、付勢手段56、ロック機構60、解除機構70及び移動機構74を含むものである。付勢手段56は、動作部材52を発報状態を示す第1の位置P1へと付勢し、移動機構74は、復帰ボタン42の押下操作を受けて、付勢手段56による付勢力に逆らって、動作部材52を第1の位置P1から監視状態を示す第2の位置P2へと移動させる。又、ロック機構60は、動作部材52を第2の位置P2において保持し、解除機構70は、非常停止ボタン40の押下操作を受けて、ロック機構60による動作部材52の保持状態を解除する。
【0068】
すなわち、動作部材52は、ロック機構60により第2の位置P2に保持された状態から、非常停止ボタン40が押下操作されて解除機構70を介して保持状態が解除されると、付勢手段56の付勢力によって第2の位置P2から第1の位置P1へと移動される。更に、動作部材52は、第1の位置P1にある状態で復帰ボタン42が押下操作されると、移動機構74を介して第1の位置P1から第2の位置P2へと移動された後、ロック機構60により第2の位置P2に保持されるものである。本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、上記のような具体的な構成によって、動作部材52を利用した発報状態及び監視状態の機械的な保持を、より確実に行うことができる。
【0069】
更に、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、より具体的に、まず、動作部材52を第2の位置P2において保持するロック機構60が、
図5に示すように、ロック孔62、ロックピン64及びコイルバネ66を含んでいる。ロック孔62は、動作部材52の側板部52bに設けられる貫通孔であり、動作部材52が第2の位置P2にある状態でロックピン64の先端が挿入されることで、ロックピン64と協働して動作部材52を第2の位置P2において保持する。このため、ロックピン64は、軸方向のみの移動ができるように保持され、又、ロック孔62は、動作部材52が第2の位置P2にある状態でのみ、ロックピン64の保持位置に対応する配置になるように設けられている。そして、コイルバネ66は、ロックピン64をロックピン64の軸方向に沿って、ロック孔62に対する挿通方向へと付勢するように設けられる。又、ロック機構60による動作部材52の保持状態を解除する解除機構70は、
図6に示すように、非常停止ボタン40が押下操作されたときの、押下操作に伴う非常停止ボタン40の移動を、上述したロックピン64のロック孔62に対する引き抜き方向への移動に変換するカム機構72を含んでいる。図示の例において、カム機構72は、非常停止ボタン40の押下操作に伴って図中下方向へ移動するローラ40bと、斜面73aを有するシフト部材73とを備えている。
【0070】
一方、動作部材52を第1の位置P1から第2の位置P2へと移動させる移動機構74は、
図7及び
図8に示すように、軸部76及び変換機構78を含んでおり、軸部76には、軸部76の回転によって動作部材52を移動させるように、動作部材52が取り付けられる(
図4参照)。このため、動作部材52は、軸部76の回転に伴って軸部76を回転軸として回動されることで、第1の位置P1や第2の位置P2に移動される。そして、変換機構78は、復帰ボタン42が押下操作されたときの、押下操作に伴う復帰ボタン42の移動を、動作部材52を第1の位置P1から第2の位置P2へと移動させる方向への、軸部76の回転運動に変換する。図示の例において、変換機構78は、軸部76の端部に取り付けられたベベルギヤ90、ベベルギヤ90に係合するベベルギヤ91、復帰ボタン42の押下操作に伴って作動する作動板92、及び、作動板92とベベルギヤ91とに接続された伝達軸93を含んでいる。他方、動作部材52を第1の位置P1へと付勢する付勢手段56は、
図4に示すように、ねじりバネ58を含んでおり、このねじりバネ58は、移動機構74の軸部76に挿通された状態で、一端58a側が固定板59に固定されると共に、他端58b側が動作部材52に接触して第1の位置P1へと付勢するように設けられている。
【0071】
上記のような構成により、まず、
図5に示すように、動作部材52がロック機構60により第2の位置P2において保持されている状態で、非常停止ボタン40が押下操作されると、
図6に示すように、シフト部材73の斜面73aを転がりながらローラ40bが図中下側に移動され、それに伴ってシフト部材73が図中左方向へ移動される。すなわち、シフト部材73は、非常停止ボタン40が押下操作されてローラ40bが図中下側に移動されると、ローラ40bの移動を斜面73aによって受けることで、図中左方向へと移動される。すると、シフト部材73に接続されたロックピン64が、シフト部材73の図中左方向への移動に伴い、
図5に示したコイルバネ66の付勢力に逆らって、図中左方向、すなわち、
図5に示したロック孔62から引き抜かれる方向へと移動され、ロックピン64の先端がロック孔62から引き抜かれる。すると、
図4(b)に示すように、付勢手段56のねじりバネ58によって付勢されている動作部材52が、第2の位置P2から第1の位置P1へと移動され、ねじりバネ58の付勢力によって第1の位置P1に保持される。
【0072】
更に、第1の位置P1に保持された状態から、復帰ボタン42が押下操作されると、
図7及び
図8に示すように、移動機構74の変換機構78により、復帰ボタン42の移動が軸部76の回転運動に変換される。より詳しくは、復帰ボタン42の押下操作を受けて、作動板92が
図8における下方向へ回動されると、伝達軸93が
図8における左回り方向へと回転され、この伝達軸93の回転によって、ベベルギヤ91が
図7における右回り方向へと回転される。すると、ベベルギヤ91に係合しているベベルギヤ90が、
図7における右方向からの正面視で左回り方向へと回転される。これによって、軸部76がベベルギヤ90と同方向に回転されると共に、軸部76に取り付けられた動作部材52が、付勢手段56のねじりバネ58による付勢力に逆らって、
図4(a)に示すように、第1の位置P1から第2の位置P2へと回動される。そして、動作部材52が第2の位置P2へ移動されると、
図5に示すように、コイルバネ66によって付勢されているロックピン64の先端が、動作部材52のロック孔62に挿入されて、動作部材52が第2の位置P2において保持されるものである。このように、本発明の実施の形態に係る列車非常停止スイッチ10は、上記のような保持機構50のより具体的な構成によって、動作部材52を利用した発報状態及び監視状態の機械的な保持を、より一層確実に行うことが可能となる。