(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移動自在な台車本体と、請求項1に記載の乾燥砂入り消火球を発射させるための発射機構と、該発射機構をその発射角度を可変にして前記台車本体側に支持させる発射角調整機構とで構成され、
前記発射機構は、前記台車本体側にその移動方向に沿う方向を面方向として直立配置される垂直板面部と、該垂直板面部の一側面側に配置される第1ローラおよび前記一側面側にて前記第1ローラに対し斜行配置される第2ローラと、これら第1ローラと第2ローラとの間に形成される空隙方向に前記乾燥砂入り消火球を送り込むシュータと、前記垂直板面部の他側面側に配置されて前記第1ローラと同軸回転する第1プーリと、該第1プーリと同径であって前記第2ローラと同軸回転する第2プーリと、テンションプーリと、前記第1・第2プーリと同径なモータプーリと、前記第1ローラには反時計方向への回転力を、前記第2ローラには時計方向への回転力を同じ回転比で付与することで発射方向をそれぞれの回転方向として逆回転させるべくこれら各プーリに架け渡されるベルトと、給電時にインバータを介しての回転制御を自在に配設されて前記モータプーリを回転駆動するモータとを少なくとも備え、
前記発射角調整機構は、前記台車本体側を揺動支点として前記垂直板面部を下支えする揺動部と、前記垂直板面部側から後方に向けて突出させた支腕部と、該支腕部が備える雌ねじ部と螺合させて前記台車本体側に揺振自在に支持されるハンドル付きの操作用螺杆とを少なくとも備え、
それぞれの周端面に前記乾燥砂入り消火球の等圧挟持が可能な弧状溝を設けてなる前記第1ローラと前記第2ローラとを介して前記乾燥砂入り消火球をその発射角度を可変にして発射可能としたことを特徴とする乾燥砂入り消火球発射装置。
前記第2ローラは、第1ローラの回転軸心からの垂線と第2ローラの回転軸心からの水平線とを直交させた際に、第1ローラの前記回転軸心位置にて前記垂線との間に38°±1°の範囲の内角を形成する前下がりの斜線方向に第2ローラの前記回転軸心が位置するように前記第1ローラに対し斜行配置した請求項2ないし4のいずれかに記載の乾燥砂入り消火球発射装置。
前記シュータは、上端部側から順次投入される乾燥砂入り消火球を前下がりの下端方向へと案内する導入用筒状部と、該導入用筒状部の前記下端側に連設されて最先端に位置する乾燥砂入り消火球を前記第1ローラと前記第2ローラとの間の空隙方向に位置させるように前上がりとなって送り出す導出用樋状部とで形成した請求項2ないし5のいずれかに記載の乾燥砂入り消火球発射装置。
【背景技術】
【0002】
マグネシウム、アルキルアルミ、チタニウム、ジクロニウム、ナトリウム、カリウム等が火元となって発生する火災のように注水すると爆発する危険性のある禁水性物質火災については、これらの燃焼金属と反応しない消火剤を用いて消火する必要があり、通常、乾燥砂を消火剤として用いるのが有効であるとされている。
【0003】
このため、上記した特殊な禁水性物質火災については、消防法においても乾燥砂をスコップを用いて火元を覆うように散布して消火するのが効果的であるとされていることから、消火手段として乾燥砂とスコップとを備え付けておかなければならない旨規定されている。
【0004】
しかし、実際の火災現場においては、消火作業従事者が火元に近づき、スコップを用いて乾燥砂を直接散布する手法による消火作業は極めて危険である。このため、禁水性物質を取り扱う各種事業所あっては、万一の火災に備えて安全距離を確保した状態のもとで火元(燃焼物)に対し乾燥砂を安全・確実に散布することができる消火手法の開発が従来から切望されていた。
【0005】
このような背景もあって、禁水性物質火災を安全裡に消火できる手法の開発を模索していた本発明者らは、例えば特許文献1に示されているような一般にピッチングマシンと称されているボール発射装置に着目するに至り、該ボール発射装置を利用して砂入り消火球を火元に向けて発射すれば、安全・確実に乾燥砂を火元に散布して消火することができるのではないかとの着想を得た。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、本発明らは、禁水性物質火災にあっては消火剤に相当するものが比較的重量のある乾燥砂であることに鑑み、例えば実公平2−37113号公報に開示されているような所定の衝撃により破損し得る合成樹脂製の密封容器内に水性塗料を充填してなる「投てき用マーキング物品」等を参考に、水性塗料に代えて乾燥砂を中空球体内に充填させた特製の消火球を形成した上で、該消火球を発射時に割れを生じさせることなく火元に向けて確実に到達させ、その着地時に受ける衝撃により中空球体が破裂した際に乾燥砂を飛散させることで火元を覆うことができる発射装置の開発が急務であるとの認識を得た。
【0010】
また、禁水性物質火災用の特製の消火球については、上記「投てき用マーキング物品」における水性塗料に代えて乾燥砂を用いなければならないため、該乾燥砂を充填する際に用いる小径孔を予め中空球体に設けておき、該小径孔を利用して乾燥砂を充填した後の小径孔をシール材で封止しておく必要があるものの、発射時における割れを回避しながらできるだけ遠方に正確に到達させる観点から、その封止構造にも特段の工夫が必要であるとの問題意識もあった。
【0011】
しかも、上記「投てき用マーキング物品」については、その用途に従い主として人間が手に持って比較的近距離にいる相手(目標)に正確に命中させることができればよく、したがって特許文献1のようなボール発射装置のように遠投する必要がないために、ボール発射装置を用いて発射する際の破裂を回避させるための強度を考慮する必要もなかった。
【0012】
一方、特許文献1に開示されているような相互が高速で逆回転する上下一対のローラを備えるボール発射装置を用いて手投げ用の上記「投てき用マーキング物品」と同様に着地時の衝撃により破裂しやすい構造を備える弾力性の乏しい禁水性物質火災用の特製の消火球を発射しようとする場合には、軟式や硬式の野球ボールとは異なり上下一対のローラの間にやや押し込むようにして通過させる際に割れが生じてしまうほか、比較的重量のある乾燥砂が充填された消火球を水平方向や伏角方向に発射してもその重さ故に10〜30m先にまで到達させることは至難であるという不具合があった。
【0013】
このような背景もあって、本発明者らは、特許文献1の開示技術や上記「投てき用マーキング物品」などの従来技術を参酌するなかで、ボール発射装置における発射機構に特有の改良を加えるとともに、特製の消火球自体の構造にも必要な改良・工夫を加えるならば、発射時に割れを生じさせることなく10〜30m遠方まで飛ばして目標物(火元)に比較的正確に命中させることができるのではないかと考え、種々試行錯誤を繰り返すことにより本発明を開発するに至ったものである。
【0014】
すなわち、本発明は、上記特許文献1を含む従来技術との関係でみられた上記課題に鑑み、比較的重量のある乾燥砂を充填した消火球であっても、これを投入して発射する際に割れを生じさせることなく比較的遠方に位置する火元(燃焼物)に向けて連続的に発射し、その着地時に受ける衝撃により中空球体側が破裂した際に乾燥砂を火元(燃焼物)回りの比較的狭い範囲に飛散させて火元を覆うことにより禁水性物質火災を消火できる乾燥砂入り消火球およびその発射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたものであり、そのうちの第1の発明(乾燥砂入り消火球)は、口径が7.9〜8.1mmの小径孔を備えるアイゾット衝撃強度2.9〜3.1KJ/m
2で、その厚さが0.04〜0.09mmの合成樹脂材からなる外径が72mm±0.1mmの中空球体と、該中空球体内に前記小径孔を介して充填される粒径が0.3mm〜0.8mmの乾燥砂とで構成され、前記中空球体は、飛球時における空気抵抗の偏倚を抑制すべく前記乾燥砂を重量的に偏らないように略満充填した後の前記小径孔を封止栓で封止したことを最も主要な特徴とする。
【0016】
また、第2の発明(乾燥砂入り消火球発射装置)は、移動自在な台車本体と、請求項1に記載の乾燥砂入り消火球を発射させるための発射機構と、該発射機構をその発射角度を可変にして前記台車本体側に支持させる発射角調整機構とで構成され、前記発射機構は、前記台車本体側にその移動方向に沿う方向を面方向として直立配置される垂直板面部と、該垂直板面部の一側面側に
配置される第1ローラ
および前記一側面側にて前記第1ローラに対し斜行配置される第2ローラと、これら第1ローラと第2ローラとの間に形成される空隙方向に前記乾燥砂入り消火球を送り込むシュータと、前記垂直板面部の他側面側に配置されて前記第1ローラと同軸回転する第1プーリと、該第1プーリと同径であって前記第2ローラと同軸回転する第2プーリと、テンションプーリと、前記第1・第2プーリと同径なモータプーリと、前記第1ローラ
には反時計方向への回転力を、前記第2ローラ
には時計方向への回転力を同じ回転比で
付与することで発射方向を
それぞれの回転方向として逆回転させるべくこれら各プーリに架け渡されるベルトと、給電時にインバータを介しての回転制御を自在に配設されて前記モータプーリを回転駆動するモータとを少なくとも備え、前記発射角調整機構は、前記台車本体側を揺動支点として前記垂直板面部を下支えする揺動部と、前記垂直板面部側から後方に向けて突出させた支腕部と、該支腕部が備える雌ねじ部と螺合させて前記台車本体側に揺振自在に支持されるハンドル付きの操作用螺杆とを少なくとも備え、
それぞれの周端面に前記乾燥砂入り消火球の等圧挟持が可能な弧状溝を設けてなる前記第1ローラと前記第2ローラとを介して前記乾燥砂入り消火球をその発射角度を可変にして発射可能としたことを最も主要な特徴とする。
【0017】
この場合、第1ローラと第2ローラとが備える前記弧状溝は、前記乾燥砂入り消火球の半径よりもやや長寸な半径からなる円弧状を呈するものであることが望ましい。
【0018】
また、前記第1プーリと前記第2プーリと前記テンションプーリと前記モータプーリとは、いずれもそれぞれの周端面に台形溝を備え、前記ベルトは、その上下いずれの面側からも前記台形溝との面接触が可能な六角ベルトとするのが望ましい。さらに、前記第2ローラは、第1ローラの回転軸心からの垂線と第2ローラの回転軸心からの水平線とを直交させた際に、第1ローラの前記回転軸心位置にて前記垂線との間に38°±1°の範囲の内角を形成する前下がりの斜線方向に第2ローラの前記回転軸心が位置するように前記第1ローラに対し斜行配置するのが好ましい。
【0019】
一方、前記シュータは、上端側から順次投入される乾燥砂入り消火球を前下がりの下端方向へと案内する導入用筒状部と、該導入用筒状部の前記下端側に連設されて最先端に位置する乾燥砂入り消火球を前記第1ローラと前記第2ローラとの間の空隙方向に位置させるように前上がりとなって送り出す導出用樋状部とで形成するのが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、乾燥砂入り消火球は、アイゾット衝撃強度が2.9〜3.1KJ/m
2で、その厚さが0.04〜0.09mmの合成樹脂材からなる外径が72mm±0.1mmの中空球体内に乾燥砂を重量的に偏らないように略満充填することで形成されているので、禁水性物質火災の消火用として長期に亘り品質を安定化して保管しておくことができるほか、発射時の割れを効果的に防止しながら比較的遠方にまで命中精度よく到達させた際の着地時に受ける衝撃により中空球体側を確実に破裂させて内容物である乾燥砂を遠くへと霧散させることなく火元を含む近傍領域に集中的に覆い被せることで、禁水性物質火災を確実に消火することができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、乾燥砂入り消火球発射装置を構成する発射機構は、上下に斜行配置される第1ローラと第2ローラとを同じ回転比で発射方向を回転方向として逆回転させることで、比較的重量のある乾燥砂入り消火球を回転差のない第1ローラと第2ローラとを介して摩擦を和らげながら放物線を描くようにして火元である比較的遠方にまで発射することができる。また、発射角調整機構は、操作用螺杆が備えるハンドルを時計方向に回転したり、反時計方向に回転したりして発射機構の発射角度を仰角方向はもとより、水平方向や伏角方向へと調整することで、乾燥砂入り消火球の飛距離を可変にして発射することができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、第1ローラと第2ローラとがそれぞれの周端面に備える各弧状溝は、乾燥砂入り消火球の半径よりもやや長寸な半径からなる円弧状を呈するようにして形成されているので、発射時における乾燥砂入り消火球に対する各弧状溝の噛み込みを効果的に緩和して割れをより確実に防止することができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、第1プーリと第2プーリとテンションプーリとモータプーリとの周端面には、それぞれ台形溝が形成されており、ベルトも六角ベルトが用いられているので、該六角ベルトの上下いずれの面側からも対向配置されている各台形溝に面接触させながら各プーリを確実に駆動回転させることで、第1ローラと第2ローラとを同じ回転比のもとでより安定的に逆回転させることができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、第2ローラは、第1ローラの回転軸心からの垂線と第2ローラの回転軸心からの水平線とを直交させた際に垂線との間に38°±1°の範囲の内角を形成する前下がりの斜線方向に第2ローラの回転軸心が位置するように斜行配置されているので、乾燥砂入り消火球を放物線を描くように飛距離10〜30mの範囲で発射することができる。
【0025】
請求項6の発明によれば、シュータは、乾燥砂入り消火球を前下がりの下端方向へと案内する導入用筒状部と、該導入用筒状部の下端側に連設された導出用樋状部とで形成されているので、導入用筒状部の上端側から順次送り込まれる乾燥砂入り消火球のうち、最先端に位置する乾燥砂入り消火球を導出用樋状部を介することで第1ローラと第2ローラとの間の空隙へとばたつきのない状態でより円滑に送り出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明のうち、第1の発明に係る乾燥砂入り消火球の一例を示す縦断面図であり、
図2は、
図1における小径孔周辺の要部拡大図である。これらの図によれば、乾燥砂入り消火球1の全体は、小径孔3を有する中空球体2と、該中空球体2内に小径孔3を介して充填される乾燥砂7と、該乾燥砂7を充填した後に小径孔3を封止する封止栓8とで構成されている。
【0028】
この場合、全体重量が290g前後の砂入り消火球1を形成する際に用いる中空球体2としては、機械的性質や耐薬品性に優れた例えば表1に示す物性を示すアイゾット衝撃強度2.9〜3.1KJ/m
2のポリ塩化ビニルなどの合成樹脂材を用いて形成することができる。
【0030】
上記物性を備える中空球体2は、外径が72mm±0.1mmで、その厚さが0.04〜0.09mmのものを好適に用いることができる。この場合、中空球体2は、
図1にあって小径孔3の周辺領域と、該小径孔3の対面側に位置する周辺領域とを天地面5とし、該天地面5の軸方向と直交する位置関係にある左右側の周面領域を周側面6とするとき、天地面5側の厚さをそれぞれ0.07〜0.09mmとし、周側面6側の厚さを0.04〜0.06mmとすることで、天地面5側の厚さが相対的に厚くなくなり、周面側6の厚さが薄くなるようにして形成されている。
【0031】
中空球体2をアイゾット衝撃強度2.9〜3.1KJ/m
2で、その厚さを0.04〜0.09mmとして形成した理由は、アイゾット衝撃強度が2.9KJ/m
2未満で厚さが0.04mm未満とするときは後述する砂入り消火球発射装置11を介して発射する際に割れを生ずるおそれがあり、アイゾット衝撃強度が3.1KJ/m
2を超え、厚さが0.09mmを超えるときは発射後の着地時に衝撃を受けても破損しないおそれがあることによる。
【0032】
図1に示されているように中空球体2の天地面5のうちの頂面部5a側には、平面視が円形を呈してその内径が7.9〜8.1mmである小径孔3が形成されている。その理由は、内径が7.9mm未満であれば乾燥砂7の充填作業に支障を来し、内径が8.1mm超えるときは中空球体2自体の強度に悪影響を及ぼしやすいことによる。
【0033】
また、小径孔3を介して乾燥砂7が充填された後は、軟質ビニール樹脂からなる封止栓8により小径孔3が封止される。封止栓8は、直径が7.9〜8.1mmで長さが10mm前後の略円柱形を呈して小径孔3内に差し込まれる差込み部8aと、小径孔3の開口縁部4に位置する中空球体2の外周面2a側に当接して差込み部8aの中空球体2内への落ち込みを阻止する直径が10mm前後のフランジ状の拡径部8bとで形成されている。該拡径部8bの厚さは、飛球時における空気抵抗の影響を受けづらくして到達距離を伸ばしたり、命中精度を高めることができるように1mm前後、好ましくは1mmとするのが望ましい。
【0034】
重量的に偏らないように中空球体2内に小径孔3を介して略満充填される乾燥砂7については、禁水性物質火災の消火用として長期に亘り品質を安定化して保管できる乾燥珪砂を好適に用いることができる。また、乾燥砂7の粒径は、0.3mm〜0.8mmのものを好適に用いることができる。その理由は、粒径が0.3mm未満であれば衝撃を受けた際に火元から比較的遠くにまで飛び散ることにより霧散して消火効率を低下させ、粒径が0.8mmを超えるときは中空球体2内に充填した際の砂入り消火球1の全体重量に偏りが生じやすいことによる。
【0035】
一方、
図3は、第2の発明に係る乾燥砂入り消火球発射装置の一例を示す右側面図である。同図によれば、乾燥砂入り消火球発射装置11は、台車本体12と、該台車本体12上に配置される乾燥砂入り消火球1を発射するための発射機構22と、乾燥砂入り消火球1の発射角度を可変にすべく発射機構22側に揺動力を付与する発射角調整機構42とで構成されている。
【0036】
これらのうち、台車本体12は、適宜面サイズの水平基台部13と、該水平基台部13の前端13a側の左右に固定輪として配設される一対の前輪14と、水平基台13の後端13b側の左右に自在輪として配設される一対の後輪15と、同じく後端13b側に配設される手押し用把手16とを少なくとも備えて形成されている。
【0037】
発射機構22は、台車本体12側に該台車本体12の移動方向に沿う方向を面方向として直立配置される垂直板面部23と、
図3および
図5(a)に示されているように該垂直板面部23の一側面23a側に斜行配置される第1ローラ24と第2ローラ27と、これら第1ローラ24と第2ローラ27との間に形成される空隙t方向に乾燥砂入り消火球1を送り込むシュータ37と、
図5(b)に示されているように垂直板面部23の他側面23b側(
図3では裏面側)に配置されて第1ローラ24と回転軸心26を同じくして同軸回転する第1プーリ30と、第2ローラ27の回転軸心29を同じくして同軸回転する第1プーリ30と同径の第2プーリ31と、テンションプーリ32と、第1プーリ30および第2プーリ33と同径なモータプーリ33と、第1ローラ24と第2ローラ27とを同じ回転数のもとで逆回転させるべく各プーリ30,31,32,33に架け渡されるベルト34と、給電時に回転数を制御するためのインバータ52を介しての回転制御を自在に配設されてモータプーリ33を駆動回転軸36を介して回転駆動するモータ35とを少なくとも備えて形成されている。なお、
図3中の引出し符号53は、第1ローラ24と第2ローラ27との側に各別に配設される安全カバーをそれぞれ示し、給電用のAC100V専用の配線関係については図示を省略してある。
【0038】
この場合、同じ外径とローラ幅とを備える第1ローラ24と第2ローラ27とは、
図4に示すように例えば外径が240mmで幅が60mmのアルミホイール部24a,27aと、該アルミホイール部24a,27aの外周側に固着配置された最大厚さが40mmの例えば固さ60番のウレタンゴムなどからなる適宜硬度のゴム状弾性部24b,27bとで形成され、これらゴム状弾性部24b,27bにおける幅が例えば60mmの周端面側にはその周方向と直交する側の断面形状が例えばR75の円弧状を呈する弧状溝25,28がその周方向に各別に凹設されている。なお、
図4中の符号40は、第1ローラ24(第2ローラ27)を第1プーリ30(第2プーリ31)側が備える図示しない回転板に取り付けるための螺着用孔を示す。
【0039】
また、第1ローラ24と第2ローラ27とは、弧状溝25,28相互間に形成される空隙t内への乾燥砂入り消火球1の導入と放物線を描いての前方への発射とを可能に隣接させた状態のもとで斜行配置されている。しかも、第1ローラ24と第2ローラ27とに対しては、その発射方向をそれぞれの回転方向とする逆向きの回転力、つまり第1ローラ24には反時計方向の回転力が、第2ローラ27には時計方向の回転力がそれぞれ付与され、これによりシュータ37を介して投入された乾燥砂入り消火球1の発射ができるようになっている。
【0040】
この場合における第1ローラ24と第2ローラ27とを斜行配置する際の具体的な位置関係は、
図5(a)に示されているように第1ローラ24の回転軸心26からの垂線l
1と第2ローラ27の回転軸心29からの水平線l
2とを直交させた際に、垂線l
1との間に38°±1°の範囲の内角θを形成する前下がりの斜線l
3方向に第2ローラ27の回転軸心29が位置するように第1ローラ24に対し斜行配置するのが好ましい。その理由は、乾燥砂入り消火球1が30mの飛距離を出し、かつ、中空球体2が着地衝撃で割れた際に乾燥砂7が狭い範囲に止まるようにする上で最適な放物線状の飛球軌跡が得られる発射角度が必要であることによる。
【0041】
シュータ31は、
図3からも明らかなように、第1ローラ24の後方位置にある上端38a側から順次投入される乾燥砂入り消火球1を前下がりの下端38b方向へと案内する乾燥砂入り消火球1の外径よりもやや大径な内径が付与された断面円形を呈する導入用筒状部38と、該導入用筒状部38の下端38b側に連設されて最先端に位置する乾燥砂入り消火球1を第1ローラ24と第2ローラ27との間の空隙t方向である前上がり方向へと送り出す断面半円形を呈する導出用樋状39部とで形成されている。
【0042】
また、ベルト34が架け渡される第1プーリ30と第2プーリ31とテンションプーリ32とモータプーリ33とは、第1ローラ24と第2ローラ27とは反対側に位置する垂直板面部23の他側面23b側に
図5(b)に示す位置関係のもとで配設されている。つまり、ベルト34は、第1プーリ30と第2プーリ31とを同じ回転比のもとで逆回転させる関係上、第1プーリ30とテンションプーリ32とモータプーリ33とにはその内側を、第2プーリ31には外側をそれぞれ圧接させるようにして架け渡されることになる。この場合、各プーリ30,31,32,33の外周面側には、それぞれ図示しない台形溝を形成するのが望ましく、ベルト34も各プーリ30,31,32,33のそれぞれの台形溝に表裏両面で対応させるべく六角ベルトを用いるのが望ましい。なお、上記構成からなる発射機構22のうち、垂直板面部23の他側面23b側に配置される第1プーリ30と第2プーリ31とテンションプーリ32とモータプーリ33とベルト34とは、図示しない保護カバーで着脱自在に覆設することで隠蔽されている。
【0043】
一方、発射角調整機構42は、台車本体12側を揺動支点43aとして垂直板面部23を下支えした状態で台車本体12側に配設される揺動支持部43と、垂直板面部23側から後方である手押し用把手16方向に向けて突出させた支腕部44と、該支腕部44が備える雌ねじ部45と螺合させて台車本体12側に揺振自在に支持されるハンドル47付きの操作用螺杆46とを少なくとも備えて形成されている。
【0044】
このため、乾燥砂入り消火球1は、発射角調整機構42を介することで発射機構22側からその発射角度を
図6(a)〜(c)に示されているように可変にして発射させることができることになる。
【0045】
次に、第1の発明に係る乾燥砂入り消火球1を第2の発明に係る乾燥砂入り消火球発射装置11を介して発射する際における本発明の作用・効果について説明する。
【0046】
まず、使用に際しては、乾燥砂入り消火球発射装置11は、後輪15をフリー状態にして手押し用把手16を押すことで必要な位置にまで移動することができる。
【0047】
所望する位置に移動させた後は、垂直板面部23側に配設されているインバータ52が備える図示しない電源スイッチがOFFになっているのを確認した上で、図示しない電源プラグをコンセントに差し込んだ後、電源スイッチをONにしてモータ35の駆動回転軸36を回転させる。
【0048】
発射機構22を構成する第1ローラ24と第2ローラ27とは、モータ35の駆動回転軸36を回転させることによりベルト34を介して同じ回転比で逆回転する。インバータ52は、このように第1ローラ24と第2ローラ27とが回転しだすとHz表示部(図示せず)の表示数値が点滅しながら上がっていき、これと同時に回転速度も速くなっていく。この場合、インバータ52が備える図示しないダイヤルをゆっくり左に回すと回転速度が遅くでき、ゆっくり右に回すと早くでき、その最高速度を60.00Hzで120km/h以上にすることができる。
【0049】
砂入り消火球発射装置11は、図示しないHz表示部の表示数値の点滅が終了した段階で速度設定を完了させることができ、ここでシュータ37を介して第1ローラ24と第2ローラ27との間の空隙tに乾燥砂入り消火球1を順次送り込むことにより、最大約2秒に1球のペースで発射することができる。
【0050】
すなわち、乾燥砂入り消火球発射装置11を構成する発射機構22は、斜行配置される第1ローラ24と第2ローラ27とを同じ回転比のもとで発射方向をそれぞれの回転方向として相互を逆回転させることで、比較的重量のある乾燥砂入り消火球1を放物線を描くようにして発射して火元である比較的遠方にまで飛ばすことができる。
【0051】
また、操作用螺杆46が備えるハンドル47を時計方向に回転したり、反時計方向に回転したりすることにより、支腕部44が備える雌ねじ部45を介して操作用螺杆46を揺動させることで垂直板面部23側も従動させることができ、これにより発射機構22の発射角度を調整することで、乾燥砂入り消火球1を飛距離を可変にして飛ばすことができる。この場合、発射角度は、仰角7度〜伏角8度の範囲で可変とすることができる。
【0052】
すなわち、発射角調整機構42は、ハンドル47を操作して
図6(a)に示すように発射機構22を構成する直立板面部23の位置を仰角方向に移動させることで、第1ローラ24と第2ローラ27とをやや上向きに位置させることができるので、乾燥砂入り消火球1の飛距離を例えば30m程度にまで伸ばすことができる。また、ハンドル47を操作して
図6(b)に示すように直立板面部23の位置を水平方向に移動させることで、乾燥砂入り消火球1の飛距離を例えば15m程度にまで落とすことができる。さらに、ハンドル47を操作して
図6(c)に示すように直立板面部23の位置を伏角方向に移動させることで、乾燥砂入り消火球1の飛距離を例えば10m程度にまでさらに落とすことができる。
【0053】
また、第1プーリ30と第2プーリ31とテンションプーリ32とモータプーリ33との各外周面側にそれぞれ図示しない台形溝が形成され、ベルト34として六角ベルトが用いられる場合には、該六角ベルトの上下いずれの面側からも各台形溝に面接触させながら各プーリ30,31,32,33を確実に駆動回転させることで、第1ローラ24と第2ローラ27とを同じ回転比のもとで安定的に逆回転させることができる。
【0054】
さらに、第1ローラ24の回転軸心26からの垂線l
1と第2ローラ27の回転軸心29からの水平線l
2とを直交させた際に、垂線l
1との間に38°±1°の範囲の内角θを形成する前下がりの斜線l
3方向に第2ローラ27の回転軸心29が位置するように第1ローラ24に対し斜行配置されている場合には、放物線を描きながら乾燥砂入り消火球1を飛距離10〜30mの範囲で発射することができる。
【0055】
また、第1ローラ24と第2ローラ27とが備える各弧状溝25a,27aが乾燥砂入り消火球1の半径よりもやや長寸な半径、例えばR75の円弧状を呈するものである場合には、発射時における乾燥砂入り消火球1に対する各弧状溝25a,27aの噛み込みを効果的に緩和して発射時における割れをより確実に防止することができる。
【0056】
しかも、乾燥砂入り消火球1は、アイゾット衝撃強度が2.9〜3.1KJ/m
2の合成樹脂材からなる外径が72mm±0.1mmの中空球体2内に乾燥砂7を重量的に偏らないように略満充填することで形成されているので、禁水性物質火災の消火用として長期に亘り品質を安定化して保管しておくことができるほか、発射時の割れを効果的に防止しながら比較的遠方にまで命中精度よく到達させた際の着地時に受ける衝撃により中空球体2側を確実に破裂させて内容物である乾燥砂7を遠くへと霧散させることなく火元を含む近傍領域に集中的に覆い被せることで、禁水性物質火災を確実に消火することができる。
【0057】
一方、必要な消火活動が終了した後は、インバータ52が備える電源スイッチをOFFにし、第1ローラ24と第2ローラ27とが完全に停止したことを確認してから 電源プラグを引き抜いた上で、所定の位置まで砂入り消火球発射装置11を移動させて所定の位置に戻して作業を終えることができる。